説明

液体吐出装置

【課題】記録媒体の搬送方向に沿って複数設けられた搬送部の搬送速度が互いに異なる場合においても、記録媒体上に形成される画像の品質低下を抑制することができる液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】搬送方向上流側の第1搬送部から下流側の第2搬送部に記録媒体が受け渡される可能性がある期間Daにおいては、記録媒体が第1搬送部の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第1搬送速度V1aと、記録媒体が第2搬送部の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第2搬送速度V2aとの間の第3搬送速度V3により記録媒体が搬送されているものとして液体吐出ヘッドを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に向けて液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体を搬送する搬送部が記録媒体の搬送方向に沿って複数設けられた液体吐出装置では、記録媒体を搬送方向上流側の搬送部から下流側の搬送部に受け渡す際に、記録媒体上の所定位置に液体を着弾させる(ドットを形成する)ことができず、記録媒体上に形成される画像の品質が低下することがある。そこで、この問題を解決するための技術が、従来から種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された技術では、各搬送ベルト(搬送部)に配設されたエンコーダから出力されるエンコーダ信号に応じて創成された液体吐出タイミング信号に基づいて液体吐出ヘッドから液体を吐出させている。そして、搬送方向上流側の上流側搬送ベルトから下流側搬送ベルトに記録媒体を受け渡す際には、上流側搬送ベルトに配設されたエンコーダから出力される上流側エンコーダ信号と、下流側搬送ベルトに配設されたエンコーダから出力される下流側エンコーダ信号との位相差が所定の閾値以下であるときに、液体吐出タイミング信号を創成するエンコーダ信号を上流側エンコーダ信号から下流側エンコーダ信号に切り替えている。このように構成することで、エンコーダ信号の切り替え時における液体の着弾位置のズレを小さくして、画像の品質低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−265280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、上流側エンコーダ信号と下流側エンコーダ信号との位相差が所定の閾値以下となるまでは、上流側エンコーダ信号に基づいて創成された液体吐出タイミング信号に基づいて、下流側搬送ベルトにより主に搬送されている記録媒体に向けて液体が液体吐出ヘッドから吐出されることになる。従って、搬送方向下流側の搬送部の搬送速度が上流側の搬送部の搬送速度と異なる場合には、上流側エンコーダ信号と下流側エンコーダ信号との位相差が所定の閾値以下となるまでの間は、液体の着弾位置がずれることになるため、記録媒体上に形成される画像の品質が低下することになる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、記録媒体の搬送方向に沿って複数設けられた搬送部の搬送速度が互いに異なる場合においても、記録媒体上に形成される画像の品質低下を抑制することができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、記録媒体を搬送する第1搬送部と、前記第1搬送部から記録媒体を受け取って、前記第1搬送部とは異なる搬送速度で記録媒体を搬送する第2搬送部とを有し、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、前記第1搬送部、及び前記第2搬送部により搬送されている記録媒体に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記第2搬送部よりも前記搬送方向上流側位置の、記録媒体の有無を検知する記録媒体検知手段と、前記液体吐出ヘッドを制御するヘッド制御手段と、前記第1搬送部から前記第2搬送部に記録媒体が受け渡される前に、前記記録媒体検知手段の検知結果に基づいて、記録媒体が受け渡される可能性がある期間を算出して記憶する期間記憶手段とを備え、前記ヘッド制御手段は、前記期間の開始点よりも前の第1期間においては、記録媒体が前記第1搬送部の搬送力のみで搬送されているものとして前記液体吐出ヘッドを制御し、前記期間の終了点よりも後の第2期間においては、記録媒体が前記第2搬送部の搬送力のみで搬送されているものとして前記液体吐出ヘッドを制御し、前記期間においては、記録媒体が前記第1搬送部の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第1搬送速度と、記録媒体が前記第2搬送部の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第2搬送速度との間の第3搬送速度により記録媒体が搬送されているものとして前記液体吐出ヘッドを制御することを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、第1搬送部から第2搬送部に記録媒体が受け渡される可能性がある期間においては、第1搬送速度と第2搬送速度の間の第3搬送速度により記録媒体が搬送されているものとして、前記液体吐出ヘッドから液体が吐出されるので、液体の着弾位置がずれることを抑制することができ、その結果、記録媒体上に形成される画像の品質低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の液体吐出装置においては、前記第2搬送部による記録媒体の搬送速度は、前記第1搬送部による記録媒体の搬送速度よりも速い速度に設定されていてもよい。上記の構成によれば、記録媒体が一定のテンションが付与された状態で搬送されることになるので、記録媒体の撓みにより記録媒体上に形成される画像にムラが生じることを低減することができる。
【0010】
また、本発明の液体吐出装置においては、前記第1搬送部による記録媒体の搬送速度を検出する第1搬送速度検出手段と、前記第2搬送部による記録媒体の搬送速度を検出する第2搬送速度検出手段と、を更に備え、前記ヘッド制御手段は、前記第1期間においては、前記第1搬送速度検出手段により検出した記録媒体の搬送速度に基づいて前記液体吐出ヘッドを制御し、前記第2期間においては、前記第2搬送速度検出手段により検出した記録媒体の搬送速度に基づいて前記液体吐出ヘッドを制御してもよい。上記の構成によれば、第1期間及び第2期間においては、実際の記録媒体の搬送速度に基づいて液体吐出ヘッドが制御されるので、記録媒体上に形成される画像の品質を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の液体吐出装置においては、前記第1搬送速度は、前記第1搬送速度検出手段により検出した記録媒体の搬送速度に基づいていてもよい。上記の構成によれば、第1搬送速度を検出して、この検出された第1搬送速度に基づいて第3搬送速度をより適切な値にすることができる。
【0012】
また、本発明の液体吐出装置において、前記期間の任意の時点における前記第3搬送速度は、当該任意の時点よりも前の時点における前記第3搬送速度と比べて、前記第2搬送速度に近い値にされていてもよい。上記の構成によれば、第1搬送部から第2搬送部への記録媒体の受け渡しが終わっている可能性度合いに対応して第3搬送速度が設定されるので、記録媒体上に形成される画像の品質低下をより適切に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の液体吐出装置において、前記第3搬送速度は、前記期間内において、前記第1搬送速度から前記第2搬送速度に向けて、多段階的に増加してもよい。上記の構成によれば、期間内においては、記録媒体の搬送速度が、第1搬送速度から第2搬送速度に向けて多段階的に増加しているものとして液体吐出ヘッドから液体が吐出されるので、第1搬送部から第2搬送部へ記録媒体が実際に受け渡されたときに生じる液体の着弾位置のずれを視認し難くすることができる。
【0014】
また、本発明の液体吐出装置において、前記期間の任意の時点における前記第3搬送速度は、記録媒体の仮想的な搬送速度である仮想搬送速度を、前記期間の前記開始点と前記終了点との間の中間点よりも前の期間は前記第1搬送速度であり、前記中間点よりも後の期間は前記第2搬送速度であるとして定めたときの、前記任意の時点を中心とした、前記期間以上の所定の期間範囲内の前記仮想搬送速度を平均した値であってもよい。
【0015】
また、本発明の液体吐出装置において、期間記憶手段は、前記第1及び第2搬送部による記録媒体の搬送速度が速くなるほど、又は記録媒体のサイズが大きくなるほど、前記期間が長くなるように記憶してもよい。上記の構成によれば、期間の算出に誤差が生じやすい場合には、その分、期間が長くなるので、記録媒体上に形成される画像の品質低下を確実に抑制することができる。
【0016】
また、本発明の液体吐出装置において、前記第1搬送部、及び前記第2搬送部各々は、記録媒体を挟持しつつ前記搬送方向に搬送する搬送ローラであり、前記第2搬送部による搬送速度は、前記第1搬送部による搬送速度よりも速い速度に設定されており、前記第1搬送部による記録媒体の挟持力は、前記第2搬送部による記録媒体の挟持力よりも大きくされていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
記録媒体の搬送方向に沿って複数設けられた搬送部の搬送速度が互いに異なる場合においても、記録媒体上に形成される画像の品質低下を抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側面図である。
【図2】用紙の搬送速度と用紙センサの出力信号との関係を示す図である。
【図3】図1に示す搬送ユニットによる用紙の挟持搬送について説明する図である。
【図4】図1に示す制御装置の機能ブロック図である。
【図5】期間における用紙の搬送速度の算出方法について説明する図である。
【図6】図1に示すインクジェットヘッドの吐出タイミングについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、記録媒体である用紙Pを搬送する搬送ユニット20(搬送手段)と、搬送ユニット20により搬送されている用紙Pに向けて、ブラックインクを吐出するインクジェットヘッド1(液体吐出ヘッド)と、用紙センサ11(記録媒体検知手段)と、インクジェットプリンタ101全体を制御する制御装置100とを有している。
【0021】
搬送ユニット20は、図1中左方から右方に向かう搬送方向に沿って用紙Pを搬送する搬送機構であり、第1搬送部6、第2搬送部7、プラテン10、剥離プレート13、及び、排紙トレイ14を有している。
【0022】
第1搬送部6は、一対の搬送ローラ6a,6bと、搬送ローラ6a,6bを回転駆動する第1モータ30(図4参照)を有している。一対の搬送ローラ6a,6bは、第1モータ30により互いに異なる方向(図中矢印参照)に回転されることで、用紙給紙ユニット(不図示)から供給された用紙Pを挟持しつつ、当該用紙Pを搬送方向に挟持搬送する。また、搬送ローラ6aの回転軸には、第1ロータリーエンコーダ16(第1搬送速度検出手段)が設置されている。第1ロータリーエンコーダ16は、第1搬送部6による用紙Pの搬送速度V1を検出するものであり、搬送ローラ6aの回転に応じたパルス信号を制御装置100に出力する。
【0023】
第2搬送部7は、搬送ローラ6a,6bと同一の径を有する一対の搬送ローラ7a,7bと、搬送ローラ7a,7bを回転駆動する第2モータ40(図4参照)を有している。搬送ローラ7a,7bは、第2モータ40により互いに異なる方向(図中矢印参照)に回転されることで、第1搬送部6により搬送されている用紙Pを受け取って、当該用紙Pを挟持しつつ、搬送方向にさらに挟持搬送する。なお、搬送ローラ7a,7bの回転速度(以下、搬送速度V2)は搬送ローラ6a,6bの回転速度(搬送速度V1)よりも速くなるように設定されている。これにより、用紙Pが一定のテンションが付与された状態で搬送されるので、用紙Pの弛みにより生じる画像ムラを低減することができ、その結果、用紙P上に高品質の画像形成が可能となる。
【0024】
搬送ローラ7aの回転軸には、第2ロータリーエンコーダ17(第2搬送速度検出手段)が設置されている。第2ロータリーエンコーダ17は、第2搬送部7による用紙Pの搬送速度V2を検出するものであり、搬送ローラ7a,7bの回転に応じたパルス信号を制御装置100に出力する。本実施形態においては、一対の搬送ローラ6a,6bの挟持力(ニップ力)は、搬送ローラ7a,7bの挟持力よりも大きくなるように設定されている。
【0025】
インクジェットヘッド1は、主走査方向に沿って延在しており、搬送方向に関して第1搬送部6と第2搬送部7とで挟まれた位置に配置されている。インクジェットヘッド1の下面は、インクが吐出される吐出口が形成された吐出面1aとなっている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、ライン式のインクジェットプリンタである。インクジェットヘッド1は、搬送ユニット20により搬送されている用紙Pが、当該インクジェットヘッド1のすぐ下方を通過する際に、吐出口からブラックのインク滴を吐出する。これにより、用紙P上に所望のモノクロ画像が形成される。
【0026】
なお、本実施形態において、主走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
【0027】
プラテン10は、搬送方向に関して第1搬送部6と第2搬送部7の間に位置し、インクジェットヘッド1の吐出面1aに対向配置されており、第1搬送部6及び第2搬送部7により搬送されている用紙Pを下方から支持する。このとき、プラテン10の上面とインクジェットヘッド1の吐出面1aとの間には、画像形成に適した所定の間隙が形成される。
【0028】
剥離プレート13は、第2搬送部7よりも搬送方向下流側に配置されており、搬送ローラ7a,7bの外周面から用紙Pを剥離する。剥離プレート13によって搬送ローラ7a,7bの外周面から剥離された用紙Pは、排紙トレイ14に積載される。
【0029】
用紙センサ11は、搬送方向に関して用紙給紙ユニット(不図示)と第1搬送部6との間に配置されており、用紙センサ11の下方の搬送経路上の用紙Pの有無を検知する。具体的には、用紙センサ11は、当該用紙センサ11の下方の搬送経路上の用紙Pがあるときだけ、検出信号を制御装置100に出力する。
【0030】
用紙給紙ユニット(不図示)から送り出された用紙Pは、図1に示すように、まず、第1搬送部6のみにより挟持搬送される。このように、用紙Pが第1搬送部6のみにより挟持搬送される期間D1においては、用紙Pは、図2に示すように、搬送ローラ6a,6bの搬送速度V1で搬送される。その後、搬送中の用紙Pの先端が第2搬送部7(搬送ローラ7a,7b)に到達すると、図3(a)に示すように、第1搬送部6及び第2搬送部7の両方により挟持搬送される。第1搬送部6及び第2搬送部7の両方により挟持搬送されている期間D2においては、上述したように、搬送ローラ6a,6bの挟持力は、搬送ローラ7a,7bの挟持力よりも大きくなるように設定されているので、用紙Pは、搬送ローラ6a,6bの搬送速度V1で搬送される。即ち、期間D1及び期間D2においては、用紙Pは第1搬送部6の搬送力のみで搬送される。その後、図3(b)に示すように、用紙Pの搬送方向後端が第1搬送部6の挟持部分(ニップ部分)から解放されると、第2搬送部7のみにより挟持搬送される。第2搬送部7のみにより挟持搬送される期間D3においては、用紙Pは、図2に示すように、搬送ローラ7a,7bの搬送速度V2で搬送される。なお、本実施形態においては、用紙Pの搬送方向後端が第1搬送部6の挟持部分(ニップ部分)から解放された時点tr(以下、実時点trとも称す)が、第1搬送部6から第2搬送部7に用紙Pが受け渡された時点である。
【0031】
ところで、用紙Pに高画質の画像を形成するためには、用紙Pの搬送速度に応じた適切な吐出タイミングでインクジェットヘッド1からインクを吐出させる必要がある。従って、本実施形態においては、上記期間D1及び期間D2においては、第1搬送部6の搬送速度V1に応じた吐出タイミングでインクを吐出させ、期間D3においては第2搬送部7の搬送速度V2に応じた吐出タイミングでインクを吐出させる必要がある。そのため、用紙Pの搬送速度が搬送速度V1から搬送速度V2に移行する時点、即ち用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に受け渡される実時点trを予め正確に求めておく必要がある。実時点trは、用紙Pが第1搬送部6の挟持部分から解放され、第2搬送部7のみにより挟持搬送される時点でもある。ここで、期間D2において用紙Pが一定の搬送速度V1で搬送されている場合には、用紙センサ11が用紙Pの搬送方向後端を検知した検知時点t2において、用紙センサ11と搬送ローラ6a,6bの挟持部分との距離L(図3参照)を用紙Pの搬送速度V1で除算することで実時点trを正確に求めることができる。この場合、期間D1以前も用紙Pは搬送速度V1で搬送されているものとする。なお、期間D1以前の搬送速度がV1とは異なる場合はそれも考慮して実時点trを求めればよい。
【0032】
しかしながら、実際には、搬送ローラ6a,6bの加工誤差が原因で、第1搬送部6の搬送速度V1が周期的に変動することがある。また、第1搬送部6が用紙Pから受ける摩擦トルクが用紙搬送中に変動するため、第1搬送部6の搬送速度V1が変動することがある。具体的には、第1搬送部6が用紙Pから受ける摩擦トルクは、搬送ローラ6a,6bの挟持部分と接触している部分における用紙Pの厚さや用紙Pの含水量等の性状、及び搬送ローラ6a,6bの挟持力等により決定される。従って、例えば、用紙Pの搬送方向先端と後端において含水量が異なる場合には、搬送ローラ6a,6bにより用紙Pの搬送方向先端が挟持されているときの搬送速度は、用紙Pの搬送方向後端が挟持されているときの搬送速度とは異なることになる。
【0033】
またさらに、用紙Pが第1搬送部6及び第2搬送部7の両方で挟持搬送されている期間D2における用紙Pの搬送速度は、当該期間D2においては2つの搬送部6,7を介して用紙Pにトルク(搬送力)が受け渡されるため、第2搬送部7によるトルクが受け渡されない期間D1における用紙Pの搬送速度とはわずかに異なることになる。
【0034】
以上のように、第1搬送部6の搬送速度V1は変動するため、用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に受け渡される時点として予め求めた予測時点(以下、予測時点tc)が、実時点trとは異なる場合がある。また第1搬送部6の搬送速度V1の変動以外にも、用紙センサ11の検出誤差等により予測時点tcが、実時点trと異なることがある。このように、予め求めた予測時点tcと実時点trが異なると、その予測時点tcと実時点trとの間の期間においては、用紙P上のインクの着弾位置がずれることになる。この着弾位置のずれは、主走査方向のすじとなって画像に反映されるので、例えわずかな値であったとしても画像の悪化につながる。具体的には、予測時点tcが実時点trよりも早い場合には、用紙Pが搬送速度V1で搬送されているにも関わらず、インクジェットヘッド1からは用紙Pが搬送速度V2で搬送されているものとしてインクが吐出されることになり、用紙P上のインクの着弾位置がずれる。一方、予測時点tcが実時点trよりも遅い場合には、用紙Pが搬送速度V2で搬送されているにも関わらず、インクジェットヘッド1からは用紙Pが搬送速度V1で搬送されているものとしてインクが吐出されることになり、用紙P上のインクの着弾位置がずれる。
【0035】
そこで、本実施形態においては、後述するように用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に受け渡される可能性がある期間Daのインク吐出タイミングを調整することで、用紙P上のインクの着弾位置がずれることを抑制する。
【0036】
以下、図4を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御プログラムは、ROMに記憶されている。そして、この制御プログラムがCPUで実行されることにより、図4に示す制御装置100を構成する各機能部が実現される。図4に示すように、制御装置100は、インクジェットプリンタ101全体を制御するものであり、画像データ記憶部131と、搬送速度記憶部132、用紙種類記憶部133、搬送制御部134、平均搬送速度算出部135、期間記憶部136、ズレ量記憶部137、仮想搬送速度算出部138、吐出タイミング生成部139、及びヘッド制御部140とを有している。
【0037】
画像データ記憶部131は、用紙Pに印刷される画像に関する画像データを記憶する。画像データは、用紙P上を搬送方向及び主走査方向に沿って区画する画像の解像度に対応する複数の画素のそれぞれについて、ブラックインクの濃度値を有している。濃度値は、吐出無し、小滴、中滴及び大滴に対応する4値に量子化されている。通常、この画像データは、インクジェットプリンタ101の外部より送信されたデータを変換することで作成される。
【0038】
搬送速度記憶部132は、次に搬送する用紙Pの搬送ユニット20による搬送速度(用紙Pが用紙ユニットから排紙ユニットまでの平均搬送速度)を記憶する。搬送ユニット20による搬送速度は、タッチパネル50を介してユーザから入力される。
【0039】
用紙種類記憶部133は、次に搬送ユニット20により搬送される用紙Pの種類(例えば、上質紙、フォト用紙など)及び用紙サイズを記憶する。用紙Pの種類及び用紙サイズは、タッチパネル50を介してユーザにより入力される。
【0040】
搬送制御部134は、搬送速度記憶部132に記憶されている搬送速度で用紙Pが搬送方向に沿って搬送されるように、第1モータ30、及び第2モータ40を制御する。具体的には、搬送ローラ7a,7bの回転速度が搬送速度V2になるように第2モータ40を制御し、搬送ローラ6a,6bの回転速度が搬送速度V2よりも遅い搬送速度V1になるように第1モータ30を制御する。
【0041】
平均搬送速度算出部135は、用紙センサ11が用紙Pの搬送方向先端を検知した検知時点t1から搬送方向後端を検知した検知時点t2までの平均搬送速度算出期間Db(図2参照)において、第1ロータリーエンコーダ16から出力されたパルス信号をカウントして、当該平均搬送速度算出期間Dbにおける用紙Pの平均搬送速度である第1搬送速度V1aを算出する。なお、本実施形態において、平均搬送速度算出期間Dbは用紙センサ11が搬送方向先端を検知した検知時点t1から搬送方向後端を検知した検知時点t2までの期間にされているが、特にこれに限定されるものではなく、用紙Pが第1搬送部6の搬送力のみにより搬送されている期間内であればよく、例えば、用紙Pの搬送方向先端が第2搬送部7に到達した時点tbから検知時点t2までの期間を平均搬送速度算出期間Dbとしてもよい。
【0042】
期間記憶部136(期間記憶手段)は、第1搬送部6から第2搬送部7に用紙Pが受け渡される前(実時点trよりも前)に、用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に受け渡される(用紙Pの搬送方向後端が搬送ローラ6a,6bの挟持部分から解放される)可能性がある期間Daを求めて記憶する。具体的には、図2に示すように、用紙センサ11と搬送ローラ6a,6bの挟持部分との距離L(図3参照)を、平均搬送速度算出部135により算出された第1搬送速度V1aで除算して時間量Δtを得る。そして、検知時点t2に時間量Δtを加算した時点を、用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に受け渡される予測時点tcとして仮想的に定める。
【0043】
期間記憶部136は、検知時点t2後に生じる用紙Pの搬送速度の変動により、予測時点tcと、用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に実際に受け渡される実時点trとの間でズレが生じることを考慮して、当該予測時点tcを中心として前後にズレ時間量Δxを定める。期間記憶部136は、この予測時点tcからズレ時間量Δxを減算した時点を期間Daの開始時点tsとし、予測時点tcからズレ時間量Δxを加算した時点を期間Daの終了時点teとして記憶する。なおズレ時間量Δxの大きさは、ズレ量記憶部137を参照して、搬送速度記憶部132に記憶されている搬送速度、用紙種類記憶部133に記憶されている用紙Pの種類及び用紙サイズに基づいて決定される。
【0044】
ズレ量記憶部137は、用紙Pの搬送速度、用紙Pの厚み、及び用紙サイズに係る各数値の組合せのそれぞれと、ズレ時間量Δxとの関係を記憶している。ここで、予測時点tcと、用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に実際に受け渡される実時点trとのズレは、用紙Pの搬送速度が速いほど、用紙Pの厚みが厚いほど、及び用紙Pのサイズが大きいほど、そのズレ量が大きくなる。これは、搬送速度が速くなっても第1モータ30と第2モータ40の体格は同じなので、先に述べた搬送速度の変動要因が搬送速度の増加に応じて大きくなると考えられるためである。また、用紙Pの厚みが厚いほど、及び用紙Pのサイズが大きいほどこのズレ量が大きくなるのは、用紙Pから第1搬送部6及び第2搬送部7が受ける摩擦トルクが大きくなるため、先に述べた搬送速度の変動要因が大きくなると考えられる。従って、ズレ量記憶部137は、用紙Pの搬送速度が高くなるに連れてズレ時間量Δxが長くなるように、用紙Pの厚みが大きくなるに連れてズレ時間量Δxが長くなるように、用紙Pのサイズが大きくなるに連れてズレ時間量Δxが長くなるように、各閾値の組み合わせとズレ時間量Δxとの関係が記憶されている。この関係は、テーブルで記憶されていてもよいし、算出式によって記憶されていてもよい。本実施形態においては、期間記憶部136とズレ量記憶部137とで期間記憶手段を構成する。
【0045】
仮想搬送速度算出部138は、第1搬送部6から第2搬送部7に用紙Pが受け渡される前(実時点trよりも前)に、期間Daにおける用紙Pの仮想的な第3搬送速度V3を算出する。以下、第3搬送速度V3の算出方法について説明する。まず、図5(a)に示すように、仮想搬送速度算出部138は、用紙Pの仮想的な搬送速度(以下、仮想搬送速度VA)を定める。具体的には、予測時点tcよりも前の期間における仮想搬送速度VAを、平均搬送速度算出部135により算出された第1搬送速度V1aとする。また、予測時点tcよりも後の期間における仮想搬送速度VAを、用紙Pが第2搬送部7の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第2搬送速度V2aとする。なお、この第2搬送速度V2aは、予め実験的に求められて、仮想搬送速度算出部138に記憶されている。
【0046】
仮想搬送速度算出部138は、期間Daの任意の時点tAにおける第3搬送速度V3を、当該時点tAを中心とした、期間Da以上の所定の算出期間Dc内の仮想搬送速度VAを平均することで求める。このようにして期間Daの全期間に亘って搬送速度V3を求めると、図5(b)に示すように、第3搬送速度V3は、第1搬送速度V1aから第2搬送速度V2aに向けて連続的に変化する値となる。また、期間Daの任意の時点tAにおける第3搬送速度V3は、当該任意の時点tAよりも前の時点における第3搬送速度V3と比べて、第2搬送速度V2aに近い値にされることになる。なお、上述したように第3搬送速度V3を求める際に用いられる第1搬送速度V1aは、予め実験的に求められたのではなく、実際に第1ロータリーエンコーダ16から出力されたパルス信号をカウントして求められたものであるので、当該第3搬送速度V3はより適切な値とされている。
【0047】
吐出タイミング生成部139は、画像データ記憶部131に記憶された画像データの画像が用紙Pに記録されるように、インクジェットヘッド1のインクの吐出タイミングを規定する吐出タイミング信号を生成して、生成した吐出タイミング信号をヘッド制御部140に順次出力する。この吐出タイミング信号の生成間隔は、用紙Pが搬送方向に一定距離進む毎に吐出タイミング信号が生成されるように、用紙Pの搬送速度に応じて決定される。具体的には、吐出タイミング生成部139は、図6に示すように、期間Daの開始時点tsよりも前の第1期間Dpにおいては、吐出タイミング信号の生成間隔を、第1ロータリーエンコーダ16から出力されるパルス信号の出力間隔に応じた間隔とする。即ち、第1期間Dpにおいては、吐出タイミング生成部139は第1搬送部6の搬送速度V1(搬送ローラ6a,6bの回転速度)に基づいて吐出タイミング信号を生成する。また、吐出タイミング生成部139は、期間Daにおいては、仮想搬送速度算出部138により算出された第3搬送速度V3で用紙Pが搬送されていると仮想して、当該第3搬送速度V3に基づいて吐出タイミング信号を生成する。このように、期間Daにおいては、第3搬送速度V3に基づいて吐出タイミング信号を生成することにより、用紙P上のインクの着弾位置がずれることを抑制することができる。
【0048】
また、吐出タイミング生成部139は、期間Daの終了時点teよりも後の第2期間Dlにおいては、吐出タイミング信号の生成間隔を、第2ロータリーエンコーダ17から出力されるパルス信号の出力間隔に応じた間隔とする。即ち、第2期間Dlにおいては、第2搬送部7の搬送速度V2(搬送ローラ7a,7bの回転速度)に基づいて吐出タイミング信号を生成する。
【0049】
ヘッド制御部140は、画像データ記憶部131に記憶された画像データの画像が用紙Pに記録されるように、搬送ユニット20により搬送された用紙Pに対して、所定の体積を有するインク液滴が、吐出タイミング生成部139から出力された吐出タイミング信号で吐出されるようにインクジェットヘッド1を制御する。本実施形態においては、吐出タイミング生成部139とヘッド制御部140とでヘッド制御手段を構成する。
【0050】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、第1搬送部6から第2搬送部7に用紙Pが受け渡される可能性がある期間Daにおいては、第1搬送速度V1aと第2搬送速度V2aの間の第3搬送速度V3により記録媒体が搬送されているものとして、インクジェットヘッド1からインクが吐出されるので、インクの着弾位置がずれることを抑制することができ、その結果、用紙P上に形成される画像の品質低下を抑制することができる。つまり、実際の搬送速度のずれの差を第2搬送速度V2aから第1搬送速度V1aを引いた差未満とできる。
【0051】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、吐出タイミング生成部139は、期間Daの開始時点tsよりも前の第1期間Dp、及び期間Daの終了時点teよりも後の第2期間Dlにおいては、第1ロータリーエンコーダ16及び第2ロータリーエンコーダ17から出力されるパルス信号から求めた、実際の用紙Pの搬送速度に基づいて吐出タイミング信号を生成しているので、用紙P上に形成される画像の品質を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、期間Daの任意の時点における第3搬送速度V3は、当該任意の時点よりも前の時点における第3搬送速度V3と比べて、第2搬送速度V2aに近い値にされている。これにより、第1搬送部6から第2搬送部7への用紙Pの受け渡しが終わっている可能性度合いに対応して第3搬送速度V3が設定されることになるので、用紙P上に形成される画像の品質低下をより適切に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、第3搬送速度V3は、期間Da内において、第1搬送速度V1aから第2搬送速度V2aに向けて、連続的に変化している。これにより、期間Da内においては、用紙Pの搬送速度が、第1搬送速度V1aから第2搬送速度V2aに向けて変化しているものとしてインクジェットヘッド1からインクが吐出されるので、第1搬送部6から第2搬送部7へ用紙Pが実際に受け渡されたときに生じるインクの着弾位置のずれを視認し難くすることができる。
【0054】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、搬送ユニット20による用紙Pの搬送速度、即ち第1搬送部6及び第2搬送部7による用紙Pの搬送速度が速くなるほどズレ時間量Δxが長く、その結果、期間Daが長くされている。また、用紙Pのサイズが大きくなるほどズレ時間量Δxが長く、その結果、期間Daが長くされている。これにより、期間Daの算出に誤差が生じやすい場合には、その分、期間Daが長くなるので、用紙P上に形成される画像の品質低下を確実に抑制することができる。
【0055】
<変形例>
本実施形態においては、搬送ローラ6a,6bの挟持力は、搬送ローラ7a,7bの挟持力よりも大きくなるように設定されているが、搬送ローラ6a,6bの挟持力が搬送ローラ7a,7bの挟持力よりも小さくなるように設定されていてもよい。この場合、第1搬送部6及び第2搬送部7の両方により挟持搬送されている期間D2においては、用紙Pは、搬送ローラ7a,7bの搬送速度V2で搬送されることになる。従って、期間Daは用紙Pの搬送方向先端が搬送ローラ7a,7bの挟持部分に到達する可能性がある期間となる。また、この場合、期間記憶部136は、用紙センサ11と搬送ローラ7a,7bの挟持部分との距離Lを、平均搬送速度算出部135により算出された平均搬送速度で除算して得られる時間量Δtを検知時点t1に加算して求まる時点を、用紙Pが第1搬送部6から第2搬送部7に受け渡される予測時点tcとして仮想的に定めればよい。
【0056】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、用紙センサ11は、搬送方向に関して用紙給紙ユニット(不図示)と第1搬送部6との間に位置する用紙Pの有無を検知するようにされているが、第2搬送部7よりも搬送方向上流側位置の用紙Pの有無を検知するものであれば、特にこれに限定されるものではない。例えば、用紙センサ11が、第1搬送部6と第2搬送部7との間に位置する用紙Pの有無を検知するようにされていてもよい。但し、用紙Pの検出は、受取期間Daが開始される前に行われている必要があるので、用紙センサ11は第2搬送部7に対して、受取期間Daに搬送速度V1を乗じた距離よりも大きい距離を離して搬送方向上流側位置に配置する必要がある。
【0057】
また、上述の実施形態においては、搬送ユニット20による搬送速度が、タッチパネル50を介してユーザから入力される構成であるが、インクジェットプリンタ101の外部より搬送ユニット20による搬送速度が入力される構成であってもよいし、搬送ユニット20による搬送速度が入力されない場合には所定の値に設定(記憶)される構成であってもよい。さらに、入力する手段を設けず、一定の搬送速度に設定(記憶)されていてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態においては、用紙Pの種類及び用紙サイズが、タッチパネル50を介してユーザから入力される構成であるが、インクジェットプリンタ101の外部より用紙Pの種類及び用紙サイズが入力される構成であってもよい。
【0059】
また、上述の実施形態においては、ズレ時間量Δxは、用紙Pの厚みやサイズが大きくなるに連れて長くなるように構成されているが、用紙Pの厚みやサイズに関係なく共通のズレ時間量Δxであってもよい。
【0060】
また、上述の実施形態においては、第3搬送速度V3は第1搬送速度V1aから第2搬送速度V2aに向けて連続的に変化するようにされているが、第1搬送速度V1aから第2搬送速度V2aに向けて多段階的に変化するようにされていてもよい。この場合も、期間Da内においては、用紙Pの搬送速度が、第1搬送速度V1aから第2搬送速度V2aに向けて変化しているものとしてインクジェットヘッド1からインクが吐出されるので、第1搬送部6から第2搬送部7へ用紙Pが実際に受け渡されたときに生じるインクの着弾位置のずれを視認し難くすることができる。また、第3搬送速度V3は、用紙Pが第1搬送部6の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第1搬送速度と、用紙Pが第2搬送部7の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第2搬送速度との間の速度であればよく、期間Daにおいて一定の搬送速度であってもよい。
【0061】
また、上述の実施形態においては、第1搬送部6及び第2搬送部7は、それぞれ一対の搬送ローラで構成されているが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、第1搬送部6及び第2搬送部7が、駆動ローラと従動ローラとに巻回された搬送ベルトであってもよい。
【0062】
また、上述の実施形態においては、第3搬送速度V3の算出に第1搬送速度V1a及び第2搬送速度V2aを用いているが、単に第1搬送速度V1及び第2搬送速度V2を用いてもよい。つまり、実測値などを用いるのではなく搬送速度記憶部に記憶されている値を用いて第3搬送速度V3を算出してもよい。
【0063】
また、上述の実施形態においては、第1搬送速度V1が第2搬送速度V2よりも小さい構成であるが、第1搬送速度V1が第2搬送速度V2よりも大きくてもよい。この場合も第1搬送速度V1が第2搬送速度V2よりも小さい場合と同じ処理が行われ、第1搬送部6から第2搬送部7への用紙Pの受け渡しが終わっている可能性度合いに対応して第3搬送速度V3が設定されるので、用紙P上に形成される画像の品質低下をより適切に抑制することができる。なお、実際の用紙Pは第1搬送部6と第2搬送部7の両方で用紙Pを搬送している間、第1搬送部6と第2搬送部7の間で徐々にたわみつつ搬送されることになる。なお、この場合は、搬送ローラ6a,6bの挟持力の大小関係がどのような関係であっても同じ処理がなされる。
【0064】
本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
6 第1搬送部
7 第2搬送部
11 用紙センサ(記録媒体検知手段)
16 第1ロータリーエンコーダ
17 第2ロータリーエンコーダ
20 搬送ユニット(搬送手段)
100 制御装置
101 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する第1搬送部と、前記第1搬送部から記録媒体を受け取って、前記第1搬送部とは異なる搬送速度で記録媒体を搬送する第2搬送部とを有し、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記第1搬送部、及び前記第2搬送部により搬送されている記録媒体に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記第2搬送部よりも前記搬送方向上流側位置の、記録媒体の有無を検知する記録媒体検知手段と、
前記液体吐出ヘッドを制御するヘッド制御手段と、
前記第1搬送部から前記第2搬送部に記録媒体が受け渡される前に、前記記録媒体検知手段の検知結果に基づいて、記録媒体が受け渡される可能性がある期間を算出して記憶する期間記憶手段と
を備え、
前記ヘッド制御手段は、
前記期間の開始点よりも前の第1期間においては、記録媒体が前記第1搬送部の搬送力のみで搬送されているものとして前記液体吐出ヘッドを制御し、
前記期間の終了点よりも後の第2期間においては、記録媒体が前記第2搬送部の搬送力のみで搬送されているものとして前記液体吐出ヘッドを制御し、
前記期間においては、記録媒体が前記第1搬送部の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第1搬送速度と、記録媒体が前記第2搬送部の搬送力のみで搬送されるとした場合に求まる第2搬送速度との間の第3搬送速度により記録媒体が搬送されているものとして前記液体吐出ヘッドを制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2搬送部による記録媒体の搬送速度は、前記第1搬送部による記録媒体の搬送速度よりも速い速度に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1搬送部による記録媒体の搬送速度を検出する第1搬送速度検出手段と、
前記第2搬送部による記録媒体の搬送速度を検出する第2搬送速度検出手段と、
を更に備え、
前記ヘッド制御手段は、
前記第1期間においては、前記第1搬送速度検出手段により検出した記録媒体の搬送速度に基づいて前記液体吐出ヘッドを制御し、
前記第2期間においては、前記第2搬送速度検出手段により検出した記録媒体の搬送速度に基づいて前記液体吐出ヘッドを制御することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1搬送速度は、前記第1搬送速度検出手段により検出した記録媒体の搬送速度に基づいていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記期間の任意の時点における前記第3搬送速度は、当該任意の時点よりも前の時点における前記第3搬送速度と比べて、前記第2搬送速度に近い値にされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第3搬送速度は、前記期間内において、前記第1搬送速度から前記第2搬送速度に向けて、多段階的に増加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記期間の任意の時点における前記第3搬送速度は、
記録媒体の仮想的な搬送速度である仮想搬送速度を、前記期間の前記開始点と前記終了点との間の中間点よりも前の期間は前記第1搬送速度であり、前記中間点よりも後の期間は前記第2搬送速度であるとして定めたときの、前記任意の時点を中心とした、前記期間以上の所定の期間範囲内の前記仮想搬送速度を平均した値であることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
期間記憶手段は、前記第1及び第2搬送部による記録媒体の搬送速度が速くなるほど、又は記録媒体のサイズが大きくなるほど、前記期間が長くなるように記憶することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第1搬送部、及び前記第2搬送部各々は、記録媒体を挟持しつつ前記搬送方向に搬送する搬送ローラであり、
前記第1搬送部による記録媒体の挟持力は、前記第2搬送部による記録媒体の挟持力よりも大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59869(P2013−59869A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198078(P2011−198078)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】