説明

液体吸着式空気清浄機

【課題】大気中の粉塵、花粉、埃等をフィルターを用いることなく、液体表面に吸着除去できる空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】図1のような円筒の容器上部に液面に向け送風するための送風用ファンを固定し、該ファンと水面の途中側面に横穴を開け、排気パイプ2を図のようにほぼ中央まで差し込む。すると水面に対する風圧差とファンのプロペラ回転の粘性による回転力の相互作用により回転波動が発生する。空気は液面を斜めに低い方の内壁に向かって移動し、質量の有る粉塵は水面及び濡れた壁面に吸着除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気清浄機は専ら空気中の粉塵等をフィルターで濾過するものであった。水面吸着式のものに於いては単に水面との狭い隙間に気体を通過させ粉塵の吸着を行うものであった(参考文献1)。その吸着原理は重力加速度と空気を加圧、または負圧により加速し、水面へ直線的に衝突させるというものであった。
【特許文献1】特許出願2001−363205
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大気中の粉塵、花粉、埃等をフィルターを用いることなく、液体表面に効果的に吸着除去することが可能な装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
図1のような円筒容器1の上部に液面に向け送風する送風用ファン3を固定し、該ファンと水面の途中の側面に横穴を開け、排気パイプ2を差し込むと水面に掛かる風圧差と該ファンのプロペラの回転によって生ずる空気の粘性により、回転波動が発生する。排気パイプの形状は図4のように斜めにカットし、該排気パイプを回すことにより、切り口の方向を変化させると波動の形状、強さを制御したかたちでの回転気流とこれに伴う、回転波動が生じる。空気中の粉塵は回転気流の遠心力により、側壁に押しつけられ、波によって洗われる。
【0005】
この波の発生により、空気と接触する液面の面積は増大する。また、この波が回転した直後の円筒容器内壁面には濡れた状態となり、吸着除去できる面積は大幅に増大する。
【0006】
この液面にピンポン玉のような軽量浮体を浮かべると円筒の筒内部で内側の容壁に沿って回転を始め、その濡れた表面でも粉塵の吸着除去と洗浄が行われる。
【0007】
前記、軽量浮体の表面に光触媒となる2酸化チタン塗装を施し、透明の円筒容器を用いるか、容器内の液面上の適当な場所に紫外線発光手段を組み込み親水性を持たせ、そこに吸着された臭い分子等の有機物の分解することも出来る。
【0008】
容器内に水を入れる場合、活性炭粉末塗布、銀、銅金属粉や金属片等を単体でまたはこれら何れかを複数組み合わせて、塗布または付着させ、水質の悪化を防ぐことが出来る。
【0009】
また、円筒容器に界面活性剤を少量入れた水溶液を入れ、散気石等を経由して空気を送り込み水面に泡を発生させ、泡の表面で粉塵吸着をおこなうことも出来る。この場合、泡が排気パイプを塞ぐ事を防止するため、排気パイプと水面の間に適当な大きさの網体などを設ける。
【0010】
霧化用の超音波振動子を液体中に入れ、液体を霧化させ空気中の汚れ成分を吸着することも出来る。
【0011】
請求項1の水に香料、殺菌効果のある檜エキス、カテキン等を少量加えアロマ効果をもたらす。
【0012】
請求項1から請求項6、および請求項8の円筒形容器(透明)の内面に透明タイプの光触媒塗料をスプレーし、周辺の蛍光ライトまたは紫外線発光手段を容器内に施すことにより壁面での光触媒反応をもたらす。
【0013】
請求項1から請求項6の円筒形容器を3角柱以上の多角形の筒とし、波動の動きを活発化する事も出来る。
【0014】
ファン下部に風が側壁に流れる様なガイドを設けると、質量のある粉塵は壁面に沿って、吸着除去され、クリーンなエアーを選択的に排気パイプから取り出す。
【発明の効果】
【0015】
本発明に於いては従来の空気清浄機がフィルター濾過を行うのに対し、専ら水またはその水溶液を用いることにより、回収した粉塵等の処理にフィルター等の資源的な無駄を生じさせない。
【0016】
光触媒等により、分解できない、黄砂や花粉等比較的大きな粉塵ほど、重力並びに遠心力により、効率的に回収することが出来る。
【0017】
水面が図4に示すように前後左右に傾斜しながら回転することにより、水面の拡大と濡れた容壁を生み出し、空気中の汚濁成分との接触面積が増大し、その分浄化効果が向上する。汚濁物質を吸収した容壁は回転波によって洗浄される。
【0018】
波が引いた直後の塗れた壁面に付着した粉塵は次の波により洗い流され水中に捕獲される。
【0019】
水面が傾斜した瞬間に送られた粉塵は水面と容器内壁で構成される鋭角なコーナーに導かれ、同時に同コーナーに粉塵を誘導した状態で回転する。この際、質量のある粉塵は内壁に押しつけられ、効率よく除去される。
【0020】
粉塵を吸収した水の水質は次第に悪化し、臭気を放つようになるが攪拌による酸素供給により好気的な分解を行う。
【0021】
水質の浄化と視覚効果のため、図1の11の様な植採用パイプに10に示す植物を植栽し、汚れ成分中のチッソ、リン等を除去できる。
【0022】
粉塵は専ら水の持つ吸着力(ファンデル・ワールス力、水素結合力)で捕獲するので、フィルターの目詰まりによる吸引力の低下、それに伴うフィルター交換等の必要が無く、資源とコストの両面からの環境効果がある。
【0023】
水面上に軽量な球体浮体を浮かべることにより、空気と接する濡れた面積を増やし、吸着機能を高める事ができた。
【0024】
また、前記軽量浮体上に2酸化チタン塗装を施すことにより、透明な筒体であれば光触媒活性効果が生ずる。
【0025】
また、同様に活性炭粉末を接着剤等のバインダーにより、塗布した場合も同様の効果が期待できる。
【0026】
溶液に水を用いている場合、銀、銅金属粉やその金属片等を付着させることにより、その水質を保持することができる。
【0027】
されに、前記何れかのまたはすべてを組み合わせて、塗布することにより、細菌繁殖を押え、粉塵等の吸着、臭いの分解等を一度に行う効果をもたらしうる。
【実施するための最良の形態】

【実施例】
【0028】
本発明は図に示すように透明の塩ビ管(直径約114mm、高さ400mm)の底部に塩ビ板を張り、水を貯められる円筒容器を作る。この円筒容器の上部に80mmの角形ファンのファンブレードに2酸化チタン塗装を施し、ファンの樹脂フレームにUV−LEDをはめ込んだ、光触媒ファンを下方向に送風する様に固定する。この様なファンは市場で調達することが出来るOA機器冷却用ファンのフレームに紫外線LEDをはめ込んだものを利用した。ファンの回転は上から見て反時計回りとなる。このファンの下の円筒容器の側面に直径60mm横穴を設け、先端を斜めにカットした外径60mmの排気パイプを図5のように中央付近まで差し込む。次に前記、排気パイプの下端から50mmから70mm程度下の位置に水面がくるよう水を張りファンから一定量の送風を行った。毎分1.5m3程の風量とすると気流の回転と共に細かく水面が波立ち始め、次第に共振し波が成長し、反時計回りの回転波動となった。風量を2m3程度まで上げると50mmから60mm程の高さの波が約毎秒1回転の周期で回転を始めた。空気中の粉塵等は斜めに拡張した水面と濡れた円筒容器内面に吸着・捕集され除去された。
【0029】
水面上にピンポン玉を浮かべると波高は小さくなるが、反時計周りの気流により、回り始めるが、この際、ピンポン玉の表面に水幕が出来、埃などが捕集され、球の回転により水中に拡散した。
【0030】
ピンポン玉にスプレータイプの透明酸化チタンを塗布した物の場合、ファン及び周辺からの紫外光により、臭い等の有機物の分解を行う。
【0031】
また、前記浮体に活性炭粉末を塗布したケースでは撥水性を示したが空気中の化学物質の吸着効果がある。
【0032】
同ピンポン玉に銀辺、銅辺、金属粉を接着したところ、金属イオンの殺菌作用により、水の汚濁速度を緩和出来た。
【0033】
水にシャンプーを少量入れ、該垂直保水管の底部より散気石を通した空気を送り大量の泡を発生させ、泡の表面に汚濁物質を付着除去することが確認できた。この場合、泡が排気パイプを詰まらせないよう水面の位置を低く押さえ、一定量以上の泡の上昇を制御する網体を用いることが必要であった。
【0034】
水を入れた前記垂直保水管に加湿器用の霧発生型超音波振動子を入れ、内部に霧を発生させると粉塵、臭い成分、細菌・ウイルス等を捕集除去だけでなく、周辺の冷却効果が確認できた。
【0035】
水に若干のリンスを入れると壁面と液体の摩擦が軽減され、波の回転速度が増すと同時に香料を含んだ排気がもたらされた。
【0036】
檜エキスを数滴垂らすと周辺に香りが拡散され、癒しと防かび効果をもたらす事が判明した。
【0037】
透明な円筒容器の内面にスプレー式の2酸化チタン塗料噴霧し、十分乾燥させる。ここに周囲からの紫外光が照射されることにより、光触媒効果が生じる。
【0038】
円筒形容器を3角柱以上の多角形の筒とすると波動の形状が複雑に変化し、粉塵との接触面積を大きくする事が出来る。
【0039】
円筒容器の底面付近に図7に示すようにもう1つ(複数でも良い)以上の穴を開け、エルボを介し、円筒容器にほぼ並行に60mmのパイプを設け、植物繊維等の適当な保持素材を用い植物を植栽し、水質の保全と癒し効果の向上を行うことが出来た。
【0040】
夏場などで有れば保持水の中に氷や冷水を入れ、冷房機として使うことも出来る。
【0041】
排気パイプの網体6を図4のように斜めにカットした部分に付けることにより、粉塵と空気の分離効果を高める構造となった。
【0042】
図4に示すような斜めにカットした排気パイプを図5のように円筒容器に差し込み、ファンの回転方向を反時計回りとするとaからdまでの4つの区画にb>a>c>dの違う風圧が掛かる。この圧力バランスとファンブレードの回転による生ずる、回転気流が加わり、円筒容器内の液体は図6の様な形状で連続的に回り続け、その壁面に於いては粉塵の吸着と回転波動による洗浄を繰り返した。図4のパイプを差し込み方向を軸として回転させると波動の形状、速度を乱流の発生場所等を制御することが出来た。
【0043】
紫外線UV−LEDがはめ込まれ、ブレードに光触媒塗料が塗られた、光触媒ファンを使用したケースに於いて、図8に示すようにファン上部に紫外線吸光板(紫外線があたると発光する)を透き間を空けて設置したところ、コバエや蚊を誘引し、液面に捕獲する事が明らかになった。
【0044】
同様に紫外線吸光樹脂片をファンと液面の間に紐でつるしたところ、風により揺れ動き、夜間などの害虫誘因効果が特に高いことが判明した。
【0045】
前記ファンに代わり、掃除機の排気ホースを組入れ、中間粉塵処理機としての利用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明はその構造が簡単で管理が容易である点に於いて、生活や職場だけでなく、粉塵の多い、工場、工事現場等の空気浄化に用いる事が出来る。水に香り成分を入れ、アロマ効果を必要とする場所でのアメニティー、インテリアとしての利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の横断面を記した概念図
【図2】本発明の正面からの概念図
【図3】本発明の上方からの概念図
【図4】本発明の改良型排気パイプ構造図
【図5】本発明における回転波動発生原理説明図
【図6】本発明における回転波動の状況を示す概念図
【符号の説明】
【0048】
1 円筒容器
2 排気パイプ
3 ファン
4 風向ガイド
5 水(水溶液を含む液体可)
6 網体
7 紫外線集光板
8 プロペラ回転方向を示す矢印
9 回転波動の波面ライン
10 植物
11 植採用パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1の様な水(水溶液や水以外の液体でも良い)を保持できる円筒容器1の水面上の側面に、横穴を開け排気パイプ2を差し込み、その上方から水面に向け、ファン3にて送風する事を特徴とする空気浄化装置
【請求項2】
請求項1に於いて水面上に浮体(図示せず)を浮かべ、その表面に湿面水幕を形成する事を特徴とする空気浄化装置
【請求項3】
請求項2の浮体表面に2酸化チタン塗装、活性炭粉末塗布、銀、銅金属粉や金属片等を単体でまたはこれら何れかを複数組み合わせて、塗布または付着させる事を特徴とする請求項1の空気浄化装置
【請求項4】
請求項1の水に界面活性剤を入れ、該液体下部より散気を行い該パイプ内の水面を発生させることを特徴とする空気清浄装置
【請求項5】
請求項1の液体に中に超音波振動子を入れ、該パイプ内の液体を霧化させる事を特徴とする空気清浄装置
【請求項6】
請求項1の液体が香料、殺菌効果のある薬剤、薬草であることを特徴とする請求項1から請求項5、請求項7および請求項8の空気清浄装置
【請求項7】
請求項1から請求項6、および請求項8の円筒容器の内面に光触媒塗料を施すことを特徴とする前記各号記載の空気清浄装置
【請求項8】
請求項1から請求項7の円筒容器が3角柱以上の多角形の筒である事を特徴とする前記各号記載の空気清浄装置
【請求項9】
ファンからの風を導く風向ガイド4を設けることを特徴とする前記各号記載の空気清浄装置
【請求項10】
排気パイプの形状が図4に示すように斜めにカットしたものであることを特徴とする前記各号記載の空気清浄装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−28704(P2009−28704A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216477(P2007−216477)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(507282288)
【Fターム(参考)】