説明

液体噴出ポンプ

【課題】 連続使用の場合における噴射間隔を短縮し、かつ、噴射間隔を短縮した連続吐出時にも押下げヘッドの押下げ操作に重さを感じさせないようにすることにある。
【解決手段】シリンダ3内へ上方付勢状態で挿入したステム20上端部に、ノズルを有する押下げヘッド25を装着させた押下げヘッド式の液体噴出ポンプにおいて、ステム20を上方付勢する手段は、押下げストローク後半におけるバネ弾性変形抵抗力がストローク前半より増大することで、高粘度液体使用時におけるステムの上昇速度を高速化可能な弾性体から構成し、該弾性体は、変形容易部分と、該部分より弾性変形しにくい変形非容易部分とからなるバネ部材30で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押下げヘッドの押下げで液体を噴出可能な液体噴出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
バネにより上方付勢状態でシリンダ内へ挿入されたステムに嵌着されたノズル付き押下げヘッドを介してシリンダ内の環状ピストンを上下動させることにより、容器体内の液を吸込み弁を介してシリンダ内へ吸上げると共に、シリンダ内の液をステムから噴出弁を介してノズルより噴出可能に構成した液体噴出ポンプが知られている (特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−129708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の液体噴出ポンプでは、例えば、容器体液体の粘度が高い場合、ステムを上方付勢するバネの伸長方向への変位速度が容器体内容物の粘性抵抗を受けて遅くなるため、液体の粘度が低い場合に比較して、押下げヘッドが上限位置に戻るまでに時間を要することとなり、したがって、噴射間隔を短くした連続吐出が望まれる場合に充分に対応することができなかった。
【0004】
本発明の目的は、連続使用の場合における噴射間隔を短縮し得る液体噴出ポンプを提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、噴射間隔を短縮した連続吐出時にも押下げヘッドの押下げ操作に重さを感じさせない液体噴出ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリンダ3内へ上方付勢状態で挿入したステム20上端部に、ノズルを有する押下げヘッド25を装着させた押下げヘッド式の液体噴出ポンプにおいて、前記ステム20を上方付勢する手段は、押下げストローク後半におけるバネ弾性変形抵抗力がストローク前半より増大することで、高粘度液体使用時におけるステムの上昇速度を高速化可能な弾性体から構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記弾性体は、変形容易部分と、該部分より弾性変形しにくい変形非容易部分とからなるバネ部材30から構成されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記バネ部材は、コイル状のバネから形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記変形非容易部分は、変形容易部分よりピッチが大きく形成されていることを特徴する。
【0010】
さらに、本発明は、前記変形非容易部分は、変形容易部分より径が大きく形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記変形非容易部分は、変形容易部分よりピッチと径とのそれぞれが大に形成されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、前記変形非容易部分は、断面形状が台形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記変形非容易部分は、変形容易部分より下方に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高粘度液体使用時におけるステムの上昇速度を速くしたので、噴射間隔を短くすることができ、これにより連続使用時における連続吐出を可能にすることができる。
【0015】
また、本発明は、押下げストローク後半における弾性変形抵抗力をストローク前半より増大させたので、ステムの上昇速度が高速化したにも関わらず、押下げヘッドの押下げ操作に重さを感じさせない等操作性が損なわれることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照しながら説明する。図1は液体噴出ポンプの第1の実施形態を示す要部断面図である。
【0017】
1は容器体で、容器体の胴部2上端から口頸部を起立している。
【0018】
3はシリンダ本体で、シリンダ筒4上端から外向きフランジ5を突設して、該外向きフランジ外周部を容器体口頸部上端へ係合させると共に、外向きフランジ上面から嵌合筒6を立設し、さらに、シリンダ筒4の下端から内向きフランジ7を介して垂下筒8を垂設している。該垂下筒の内部には玉弁からなる吸込み弁9が設けられている。
【0019】
10は棒状弁体で、シリンダ筒4内へ垂直に収納された棒部11下端から周壁12を垂下して、該周壁下端の外向きフランジを内向きフランジ7へ載置させてシリンダ筒4の下端部内面へ嵌着させている。周壁12には容器体から吸上げられた液体がシリンダ筒4内へ流入するための流入孔13が形成されていると共に、周壁12内へ垂下棒14が垂設されている。
【0020】
15は筒状ピストンで、シリンダ筒4内周面に上下動自在に嵌合された筒状部16と、該筒状部の内面に突設された内向きフランジ17と、該内向きフランジ内周から起立する保持筒18とから形成され、該保持筒は棒状弁体10へ隙間を介して嵌合されている。なお、19はシリンダ筒4の上部に形成された空気導入孔で、押下げヘッド上限時には、該空気導入孔は筒状ピストン15によって閉塞されている。この空気導入孔は、噴出後、容器体内液体が吸上げられることによって、容器体内が負圧化した際に、容器体内へ空気を導入させるためのものである。
【0021】
20はステムで、ステム下端部は保持筒18外面へ回動自在に嵌合されており、また、ステム上端部内には玉弁からなる吐出弁21が設けられている。
【0022】
25は押下げヘッドで、頂壁26から垂下する内外2重筒のうち内筒27をステム20上端部外面へ嵌着させると共に、ノズル28を内外2重筒へ貫設させている。
【0023】
30はバネ部材で、コイルバネからなり、上端を筒状ピストン15の内向きフランジ17へ当接させると共に、下端をシリンダ筒4の内向きフランジ7へ当接させている。コイルバネのピッチPは上下全長にわたって同じではなく、本実施形態では、上部より下部のピッチを大にしている。
【0024】
しかし、これに限定されることなく、例えば、上記とは反対にバネ上部のピッチをバネ下部のそれよりも大にしてもよく、あるいは上下中間部のピッチを上下両部より大にしてもよい。
【0025】
すなわち、ピッチが小さい部分は大きい部分より変形し易いのであるが、後述する理由により、このように変形容易な部分と該部分に比較して変形が容易でない変形非容易部分とをコイルバネに設けることが本発明の狙いであり、したがって、ピッチが大きい部分と小さい部分とが形成されていれば、これらの位置に限定はない。
【0026】
40は装着筒で、容器体口頸部外面へ嵌合されており、上面に突設された内向きフランジ41はシリンダ筒4の外向きフランジ5を容器体口頸部上面に押圧固定している。
【0027】
50は螺合筒で、内外2重周壁からなり、内外両周壁の環状空間を嵌合筒6へ嵌合させている。内筒51内面には雌ネジが形成されており、該雌ネジには押下げ状態での押下げヘッドの内筒27が螺合自在になっている。
【0028】
60は吸上げパイプで、その上端部が嵌合されたシリンダ筒4の垂下筒8から容器体内へ垂下している。
【0029】
次に、作用について説明する。
【0030】
容器体内の液体を噴出させるには、押下げヘッドを押し下げてステム20を下降させればよく、すると、筒状ピストン15がバネ部材30を圧縮してシリンダ筒4内を下降する。筒状ピストン15の下降によって、加圧されたシリンダ筒4内の液体は棒状弁体10と筒状ピストン15の保持筒18内周面との隙間を通ってステム20内に流入し、吐出弁を開いてノズルから噴出する。
【0031】
噴出後、押下げヘッドに対する押下げを停止すると、バネ部材15が伸長して筒状ピストン15を上昇させる。すると、シリンダ筒4内が負圧化し、これによって吸上げ弁が開き、容器体内液体が吸上げパイプ60を介してシリンダ筒4内へ吸上げられる。
【0032】
ここで、バネ部材15の作用について説明すると、該バネ部材はコイルバネからなり、かつ、該コイルバネの上部のピッチは下部のピッチより小さく形成されているため、ピッチの小さい方が大きい方よりも先に変形することとなり、本実施形態に即して言えば、コイルバネの上部の方が下部より変形し易く、したがって、押下げヘッドを押し下げると、コイルバネの上部が下部よりも先行して圧縮され、次いで、この上部の変形後にコイルバネの下部が変形する。
【0033】
コイルバネの上部ピッチは従来のピッチと同じであるため、下部のピッチは従来のピッチより大になる。したがって、バネ部材全体の弾性変形抵抗力は従来のバネ部材より大になるため、換言すれば、バネ部材全体のバネ力は従来のそれよりも大であるから、押下げヘッドの上昇速度を速くすることができる。
【0034】
このため、容器体内液体の粘度が高い場合でも、押下げヘッドを戻す速さは従来よりも速く、したがって、噴射間隔を従来よりも短縮することができるから、連続吐出が可能となる。
【0035】
ただし、このようにバネ部材のバネ力を従来よりも大にしても、上記のように、コイルバネの上部のピッチは下部のそれよりも大であるから、押下げヘッドの押下げによるストローク前半では押下げに要する力は従来と同様であり、したがって、ストローク後半において弾性変形抵抗力が大になったとしても慣性力により一気に押し込むことが可能であり、このため噴射間隔が短い連続吐出を可能としても押下げヘッドの押下げ操作性が低下することがない。
【0036】
図2はステムの押下げストロークとバネ部材の弾性変形抵抗力との関係を示すもので、実線Aは本発明を示し、破線Bは従来例を示している。このグラフから明らかなように、本発明では、ストローク前半ではバネ部材の弾性変形抵抗力は従来と同様である。
【0037】
図3は第2実施形態を示す。第1の実施形態とはバネ部材の構成が異なるのみであるから、この相違点についてのみ説明する。
【0038】
バネ部材15としてコイルバネを使用する点は図1と同様であるが、図3では、コイルバネの全長にわたってピッチを同一にする。ただし、コイルバネ下部の径は上部よりも大にする。例えば、図4に示すように、コイルバネの下部の断面形状を台形状にする。このように下部の径を大にすることにより、コイルバネの下部が上部よりも変形しにくくなるため、図1においてピッチを異ならせる場合と同様の作用効果が得られる。
【0039】
図3では、コイルバネの下部の径を上部よりも大にしているが、これと反対に上部の径を下部よりも大にすることも可能であり、或いは、上下中間部の径を上下両部よりも大にすることも可能である。このようにしても押下げストロークとバネ部材の弾性変形抵抗力との関係は図2に示すグラフと同じである。
【0040】
なお、上記では、バネ部材のピッチを異ならせる場合と径を異ならせる場合とに分けているが、これらを組み合わせることも可能である。すなわち、例えば、コイルバネの下部のピッチと径とを上部より大にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る液体噴出ポンプの第1の実施形態の要部断面図である。
【図2】押下げストロークとバネ部材の弾性変形抵抗力との関係を示すグラフである。
【図3】第2実施形態の要部断面図である。
【図4】図3に示すバネ部材の下部の形状を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
3 シリンダ
20 ステム
25 押下げヘッド
28 ノズル
30 バネ部材
+

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ3内へ上方付勢状態で挿入したステム20上端部に、ノズルを有する押下げヘッド25を装着させた押下げヘッド式の液体噴出ポンプにおいて、
前記ステム20を上方付勢する手段は、押下げストローク後半におけるバネ弾性変形抵抗力がストローク前半より増大することで、高粘度液体使用時におけるステムの上昇速度を高速化可能な弾性体から構成されていることを特徴とする液体噴出ポンプ。
【請求項2】
前記弾性体は、変形容易部分と、該部分より弾性変形しにくい変形非容易部分とからなるバネ部材30から構成されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴出ポンプ。
【請求項3】
前記バネ部材は、コイル状のバネから形成されていることを特徴とする請求項2記載の液体噴出ポンプ。
【請求項4】
前記変形非容易部分は、変形容易部分よりピッチが大きく形成されていることを特徴する請求項3記載の液体噴出ポンプ。
【請求項5】
前記変形非容易部分は、変形容易部分より径が大きく形成されていることを特徴とする請求項3記載の液体噴出ポンプ。
【請求項6】
前記変形非容易部分は、変形容易部分よりピッチと径とのそれぞれが大に形成されていることを特徴とする請求項3記載の液体噴出ポンプ。
【請求項7】
前記変形非容易部分は、断面形状が台形状に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体噴出ポンプ。
【請求項8】
前記変形非容易部分は、変形容易部分より下方に設けられていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1つに記載の液体噴出ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−247406(P2008−247406A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88522(P2007−88522)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】