説明

液体噴出器

【課題】比較的簡単な構造でありながら、内容液の効率的な吸入と良好なシール性との両立を可能にする液体噴出器を提供する。
【解決手段】液体噴出器は、下端に吸入口が形成されたシリンダと、容器内に収容された液体の充填空間をシリンダとの間に形成するピストンと、このピストンの押し下げにより充填空間内の液体を外界に噴射させるヘッドと、ピストンの押し下げにより吸入口を封止する一方、ピストンの復帰により吸入口を開放する吸入弁10とを有する。吸入弁10は、周壁2c上に開閉可能に当接する弁体10dと、周壁2cの周縁に載置された支持筒10aと、支持筒10aの内周面に連結した第1の端部10cから弁体10dの外縁に沿って延び第2の端部10cで弁体10dの外縁に連結する、線対称配置になる2つの連結片10fとにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘッドを操作することにより、容器口部の内側に配置したシリンダ内のピストンを押し下げ及び復帰させることで、容器内部に収容した液体の噴出を可能とする液体噴出器に関するものであり、特に内容液の効率的な吸入と良好なシール性の両立を可能にする。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴出器には、例えば、容器内に下部を垂下した状態で固定させるシリンダと、このシリンダ上端より上方に付勢された状態で上下動可能に突出したステムの上端に噴出ヘッドを嵌着した作動部材と、シリンダ下端の内側に設けた弁座上に開閉可能に弁体を当接させて吸入弁を形成した弁部材とを備え、作動部材の上下動により容器体内の液を吸い上げてヘッドの噴出口より噴出するよう構成したものが知られている。しかし、このような液体噴出器では、内容液の充填後から消費者の使用時までの間は内容液の噴出は行われず、弁体は弁座と接触し続けているため、使用の際に弁体が弁座とくっついて離れないという不都合を生じる場合がある。特に、最初にポンプを使用する際の初期作動時にはシリンダ内の空気の負圧力により開弁させるため、弁体の離れ難さがより顕著となる。
【0003】
比較的簡単な構造でありながら、このような弁体の離れ難さを解消し、確実な吸入弁の作動ひいてはポンプの作動を行える液体噴出器として、例えば特許文献1には、シリンダ下端の内側に設けた弁座上に開閉可能に弁体を当接させ、一方の端部を支持筒内周面に連結し、他方の端部を弁体の外縁に連結した連結片を1つ又は周方向に略等間隔に配置し、これによって弁体を支持して吸入弁を形成したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3828336号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の液体噴出器において、1つの連結片により弁体を支持した場合には、弁体の動きが拘束されることが少ないため、吸入弁の開放時の流路が大きく、シリンダの充填空間内への液体の吸入量を確保しやすいものの、弁体の復元が遅いことからシール性が悪くなり、シリンダの充填空間内に吸入した液体が容器に逆流し、次回の噴出量が不足するおそれがあるという問題があった。一方、複数の連結片により弁体を支持した場合には、弁体の動きがその外縁付近で強く拘束されるため、弁体の復元が早くシール性は良くなるものの、吸入弁の開放時の流路が小さく、したがって流量の確保が難しいため、シリンダの充填空間内を満たすために必要な量の液体を吸入するまでに時間がかかるという問題があった。そして、これらの問題は特に内容物の粘性が高い場合に顕著であった。
【0006】
したがって、この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、比較的簡単な構造でありながら、内容液の効率的な吸入と良好なシール性との両立を可能にする液体噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明は、容器口部の内側に配置され、その下端に容器に通じる吸入口が形成されたシリンダと、このシリンダの内側に配置され、容器内に収容された液体の充填空間を該シリンダとの間に形成するピストンと、このピストンの押し下げにより充填空間内の液体を外界に噴射させるヘッドと、ピストンの押し下げにより前記吸入口を封止する一方、ピストンの復帰により前記吸入口を開放する吸入弁とを有する液体噴出器において、前記吸入弁は、前記シリンダ下端の内側に設けられた弁座上に開閉可能に当接する弁体と、前記弁座の周縁に載置された支持筒と、前記支持筒の内周面に連結した第1の端部から前記弁体の外縁に沿って延び第2の端部で前記弁体の外縁に連結する、線対称配置になる2つの連結片とにより構成されることを特徴とするものである。かかる構成を採用することにより、弁体の動きが拘束されることが少なくなり、吸入弁の開放時の流路を大きく確保することができ、かつ、2つの連結片により弁体を支持していることから吸入終了時の弁体の復元を早くすることができる。
【0008】
なお、ここでいう「弁体の外縁に沿って延び」るとは、平面視にて、連結片の長手方向軸線が、弁体の外縁と実質的に平行に延びている状態を意味し、「線対称配置」とは、平面視にて、弁体の中心を通る仮想線に対して2つの連結片が対称となるように配置することを意味し、したがって2つの連結片の第1端部同士及び第2端部同士がそれぞれ隣接して配置される関係となる。
【0009】
このように構成された液体噴出器においては、連結片を平板状に形成してもよいが、両端部間で弁体の外縁に沿って延びる腕部をシリンダの軸線方向に湾曲させて形成してもよい。
【0010】
また、2つの連結片の第1端部の間に、支持筒の内周面に連結した一方の端部から弁体の中心に向かって延び他方の端部で弁体の外縁に連結する補助連結片をさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、支持筒の内周面から延びる2つの連結片により弁体を支持するという簡単な構造でありながら、吸入弁の開放時の流路を大きく確保して、内容液の効率的な吸入を可能としつつも、吸入終了時の弁体の復元を早めて良好なシール性も同時に得ることができる。
【0012】
また、連結片を湾曲して形成したり、補助連結片を設けたりすることで、シリンダの充填空間の容積や内容液の粘性に適合した吸入弁の設計が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に従う液体噴出器を容器に装着した状態で示す要部断面図である。
【図2】図1に示す液体噴出器の領域Xの拡大断面図であり、吸入弁の閉鎖状態を示す。
【図3】(a)は、図1に示す液体噴出器の吸入弁の平面図であり、(b)はその開放状態を示す断面図である。
【図4】開放状態にある吸入弁を模式的に示す斜視図である。
【図5】この発明の他の実施形態に従う液体噴出器の吸入弁を模式的に示す斜視図である。
【図6】(a)は、この発明の他の実施形態に従う液体噴出器の吸入弁の平面図であり、(b)はその開放状態を示す断面図である。
【図7】従来の液体噴出器の吸入弁を示しており、(a)は平面図であり、(b)は開放状態を示す断面図である。
【図8】従来の液体噴出器の吸入弁を示しており、(a)は平面図であり、(b)は開放状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施形態に従う液体噴出器を容器に装着した状態で示す要部断面図であり、図2は、図1に示す液体噴出器の領域Xの拡大断面図であり、吸入弁の閉鎖状態を示す。
【0015】
この発明に従う液体噴出器1は、乳液に代表される粘度の高い内溶液Cを充填した液体容器(以下、「容器」)30に装着され、使用者が後述の開閉式噴出ヘッド(以下、「ヘッド」)9を操作することで、このヘッド9を通してその押し下げ及び復帰動作に応じた所定量だけ、容器30に充填された内溶液Cを外界に取り出すことができる。
【0016】
容器30の口部31の内側にはシリンダ2が配置されており、その下端部2a(以下「シリンダ下端部」という)には、容器30に通じる吸入口A1が形成されている。さらに、シリンダ下端部2aの外側には、吸入口A1を取り囲む筒状壁2bが一体に垂下している。筒状壁2bには、容器30の内溶液Cを吸引するためのチューブTが装着されている。
【0017】
また、シリンダ下端部2aの内側には、吸入口A1を取り囲む、弁座としての周壁2cが一体に設けられている。これにより、吸入口A1は、シリンダ2内からも直接的に接触できないように構成されている。
【0018】
さらに、シリンダ2の内側には、シリンダ2との間に内容液Cの充填空間Rを形成するピストン3と、ピストン3を脱落不能に保持する下端部4aを有しその内側にピストン3の内側を貫通するシャフト(以下、「ピストンガイドシャフト」)4bが形成されたピストンガイド4とが配置されている。
【0019】
ピストンガイドシャフト4bの外側にはステム5が嵌合されており、互いを抜け止め保持している。ステム5の下方内側にはピストン3が摺動可能に保持されており、ステム5の下端部5aは、ピストン3の上昇を規制するストッパとして機能する。
【0020】
ステム5を貫通させる開口を有するリング部材6が、シリンダ2の上方内側で嵌合保持されており、これによってステム5の抜け止めとして機能する。
【0021】
ステム5の上方外側には、フランジ部材7が固定されており、リング部材6と共にリターンスプリング8を保持している。これにより、ステム5は、フランジ部材7を介してリターンスプリング8から上向きの付勢力(弾性力)を受け、リング部材6から常に一定の高さをもって露出する。
【0022】
使用者がリターンスプリング8の付勢力に抗してヘッド9を押し下げると、ステム5を介してピストン3の押し下げが行われる。使用者がヘッド9の押し下げを止めると、リターンスプリング8の付勢力の作用によりステムを介してピストン3が元の位置に復元し、これに伴って容器内の内容液が充填空間Rに吸い上げられる。そして、ヘッド9を繰り返し押し下げることにより、容器から吸い上げられた充填空間R内の内容液Cが外界に噴射される。
【0023】
ヘッド9は、ステム5に通じる通路を有しステム5に連結されるジョイント9aと、このジョイント9aに通じる通路を有しジョイント9aに対して上下動可能に連結され、その押し下げ及び復帰によりステム5を通した内容物の給排を生起させるヘッド本体9bと、このヘッド本体9bに通じる通路を有しヘッド本体9bから横向きに突出するノズル9cと、このノズル9cの通路内に進退可能に配置されノズル9cの注出口A2の開閉を生起させるノズルピン9dと、このノズルピン9dの進退をヘッド本体9bの押し下げ及び復帰に応じて生起させる機構9eとを備える。
【0024】
梃子機構9eが、ジョイント9aとヘッド本体9bとの間に配置されており、ノズルピン9dの進退をヘッド本体9bの押し下げ及び復帰に応じて生起させる。梃子機構9eは、ヘッド本体9bに固定される支持盤9e1と、この支持盤9e1に回転可能に支持されるレバー9e2と、このレバー9e2に付勢力を与えるためのリターンスプリングに代表される弾性部材9e3とを有する。
【0025】
レバー9e2は、支持盤9e1に回転可能に保持される軸部9e2(s)を基点に延在する一端e9(a)を有し、この一端e9(a)には、ノズルピン9dの後端9d1を、自由度をもって嵌合させる切欠が形成されている。これにより、ノズルピン9dの後端9d1は、レバー9e2の一端e9(a)に対し、その進退動作が許容されるように連結される。
【0026】
これに対し、レバー9e2の他端e9(b)は、軸部9e2(s)を基点に左右(図面では紙面表裏側)に二股に分かれ、それぞれがジョイント9aに接触する。これにより、レバー9e2の他端e9(b)は、ヘッド本体9bの押し下げに伴いジョイント9aを押圧するため、当該ジョイント9aを押圧するときの反力によりレバー9e2の後傾を生起させる。
【0027】
弾性部材9e3は、ヘッド本体9bとノズルピン9dとの間に介在し、図1に示すように、その弾性力(復元力)によってノズルピン9dを前方(注出口A2方向)に付勢する。
【0028】
これにより、レバー9e2は、ヘッド本体9bを押し下げないと、ノズルピン9dが弾性部材9e3の弾性力により前方に向かって付勢されることで、図1に示すように位置決めされるのに対し、ヘッド本体9bを押し下げると、レバー9e2がジョイント9aを押圧するときの反力により弾性部材9e3の弾性力に抗して、ノズルピン9dは図1に示す位置よりも後退する。
【0029】
即ち、この実施形態では、ヘッド本体9bを押し下げることなく、ノズルピン9dに弾性部材9e3の弾性(復元)力が加わるときには、図1に示すように、ノズルピン9dが弾性部材9e3の復元力により注出口A2を封止するのに対し、ヘッド本体9bの押し下げによってレバー9e2の他端e9(b)に弾性部材9e3の弾性(復元)力に抗した外力が加わるときには、ノズルピン9dの後退に伴い注出口A2を開放する。
【0030】
また、シリンダ下端部2aの内側には、吸入口A1の開閉を司る吸入弁10が配置されている。ここでの吸入弁10は、逆止弁として構成されており、好適には合成樹脂等の可撓性材料から形成される。
【0031】
シリンダ2の内側面(以下、「シリンダ内側面」)f1と周壁2cの外側面(以下、「周壁外側面」)f2との間には、環状の凹部Dが形成されている。この凹部Dには、吸入弁10の下端をなす環状の支持筒10aが載置されている。支持筒10aは、図2等に示すように、シリンダ内側面f1の一部を内向きに膨出させた突部fpにより、支持筒10aの外側面に設けた突部f10が係合し、シリンダ2内に抜け止め保持されている。
【0032】
また、吸入弁10は、支持筒10aの上端面に、充填空間Rへの流通口を残して掛け渡され、吸入口A1から間隔を空けて配置された掛け渡し部10bを一体に有する。支持筒10aと掛け渡し部10bとで囲繞された空間内には、吸入弁10の弁体10dが周壁2cに開閉可能に当接している。
【0033】
弁体10dは、図3(a)に示すように、その外観形状が、周壁2cの上面(以下、「周壁上面」)f3を覆うように形成された薄肉の円形をなしている。弁体10dは、第1の端部10cを支持筒10aの内周面に連結し、第2の端部10cを弁体10dの外縁e10に連結した、弁体10dの外縁e10に沿って延びる2つの連結片10fにより支持されている。これら2つの連結片10fは、弁体10の中心を通る仮想線(対称軸)Asに対して線対称に配置されている。
【0034】
従って、使用者がヘッド9を操作しない定常状態であるとき、又は、使用者がヘッド9を押し込んで噴出動作を生起させるとき、吸入弁10は、図2に示すように、弁体10dが周壁上面f3に接触した状態であるので、吸入口A1を封止して内溶液Cの吸入を阻止する一方、使用者が操作を止めてヘッド9を復帰させるとき、吸入弁10は、図3(b)に示すように、弁体10dが充填空間R内に生じた負圧により周壁上面f3から離間するので、吸入口A1を開放して内溶液Cの吸入を許容する。
【0035】
即ち、吸入弁10は、ピストン3の押し下げにより周壁2cを介して吸入口A1を封止する一方、ピストン3の復帰によりピストン3との間に生じた負圧で吸入口A1を開放する。なお、弁体10dは、支持筒10aによって取り囲まれ、これによって保護されているので、弁体10dに対しての外界からの干渉を抑制でき、吸入弁10の生産時やその生産後における変形や破損を防止することができる。
【0036】
従来の技術は、複数の連結片10fを用いる場合には、図7(a)に示すように、周方向に等間隔に配置するため、連結片の長さが比較的短くなる上、隣接する連結片の間で、第1端部と第2端部が近接配置されることになり、弁体の動きがその外縁付近で強く拘束されるため、弁体の復元が早くシール性は良くなるものの、図7(b)に示すように、吸入弁10の開放時の流路が小さかった。また、図8(a)に示すように、1つの連結片10fのみを用いる場合には、弁体の動きが拘束されることが少ないため、図8(b)に示すように、吸入弁10の開放時の流路が大きく、シリンダの充填空間内への液体の吸入量を確保しやすいものの、弁体10dの復元に寄与する連結片10fにより支持されている部分から最遠位の位置(中心を挟んで対向する位置)において弁体10のシリンダ軸線方向への変位が最大となるため、弁体10dの復元が遅いことからシール性が悪くなっていた。また、このように構成してなる液体噴出器では、初めて使用をするとき、充填空間R内に未だ内容液が吸い上げられていない状態でヘッドの押し下げが行われるが、このような状態では弁体10dの動きを妨げるものがないことから、弁体10dが連結片10fの弾性変形領域を越えて開き動作する場合がある。このような場合には、連結片10fは変形して白化してしまい、元の形状に復元できなくなることがあり、これがシール性を低下させていた。
【0037】
これに対し、この発明では、連結片10fを弁体10dの外縁e10に沿って延ばすことで、比較的長い連結片10fを介して支持筒10aに弁体10dを連結させ、弁体10dのシリンダ軸線方向への可動距離を確保し、しかも2つの連結片10fを線対称に配置し、第1端部10cと第2端部10cとをできるだけ離して配置しているので、弁体10dのシリンダ軸線方向への動きが拘束されることが少なくなる。その結果、図3(b)及び図4に示すように、吸入弁の開放時の流路を大きく確保することができる。また、2つの連結片10fにより、弁体10dの最もシリンダ軸線方向への変位が大きくなる位置近傍を支持していることから、吸入終了時の弁体10dの復元を早くすることができる。
【0038】
従って、開放時における流路面積の拡大が図れることで、例えば、粘度の高い内容液Cであっても、シリンダ2内への容易な吸入が可能になる。また、弁体10dを吊下げ保持する掛け渡し部10bを有するため、この掛け渡し部10bの上面からシャフト10eを一体に設けることで、このシャフト10eで図1に示すように、ピストンガイド4の内側を摺動可能に保持することができる。
【0039】
連結片10fは、平板状に形成してもよいが、例えば内容液の粘性が高く、吸入時の流量を大きくすることが望ましい場合には、第1端部10cと第2端部10cの間で弁体の外縁に沿って延びる部分である腕部10gを、図5に示すように、シリンダの軸線方向に湾曲させて形成してもよい。これにより、腕部10gの長さを、平板状に形成した場合に比べて大きくなるので、弁体10dのシリンダ軸線方向への可動距離を大きくすることができ、開放時における流路面積がより一層拡大できる。
【0040】
また、シール性が重視される場合には、図6に示すように、2つの連結片10fの第1端部10cの間に、支持筒2aの内周面に連結した一方の端部から弁体10dの中心に向かって延び他方の端部で弁体10dの外縁に連結する補助連結片10hをさらに設けてもよい。これにより、弁体10dの動きの拘束が増し、弁体10dの復元が早くなる。補助連結片10hは、弾性材料で構成するか、又は、図5に示した連結片10fと同様に、腕部がシリンダ軸線方向に湾曲していることが好ましく、これにより弁体10dの可動距離を確保する。
【0041】
なお、本形態の液体噴出器1は、シリンダ2の上端部に形成したフランジ2dに、容器口部31に対して着脱可能に螺合する外装体11を嵌合させて抜け止め保持すると共に、容器口部31に装着したとき、当該容器口部31の上端をシールするシール部材12を、フランジ2dの下方に位置するシリンダ2の外周面に抜け止め保持させている。即ち、本形態の液体噴出器1は、容器30と別体にユニット化されている。但し、本発明に従えば、液体噴出器1を容器30に直接組み付ける構成を否定するものではない。また、本形態は、外装体11に着脱可能に嵌合するオーバーキャップ13を有するが、このオーバーキャップ13も必要に応じて設けることができる。
【0042】
上述したところは、この発明の実施形態の一部を示したに過ぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。例えば、本発明は、ヘッドに対する操作に応じてシリンダ内に配置したピストンを動かすと共に、その動きに応じて逆止弁(吸入弁)を開閉する構成であれば、様々な液体噴出器に適用できる。また、本発明に係るヘッドとしても、上記形態の如くの開閉式噴出ヘッドではなく、ピストンの動きを生起させることでステムを通して容器の内溶液を外界に噴出させるに過ぎない単純構造のヘッドを流用できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上の説明から明らかなように、この発明によって、簡単な構造でありながら、吸入弁の開放時の流路を大きく確保しつつも、吸入終了時の弁体の復元を早めることで、内容液の効率的な吸入と良好なシール性との両立させた液体噴出器を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0044】
1 液体噴出器
2 シリンダ
2c 周壁
3 ピストン
4 ピストンガイド
5 ステム
6 リング部材
7 フランジ部材
8 リターンスプリング
9 開閉式噴出ヘッド
10 吸入弁(逆止弁)
10a 支持筒
10b 掛け渡し部
10c 第1端部
10c 第2端部
10d 弁体
10e シャフト
10f 連結片
10g 腕部
10h 補助連結片
11 外装体
12 シール部材
13 オーバーキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部の内側に配置され、その下端に容器に通じる吸入口が形成されたシリンダと、このシリンダの内側に配置され、容器内に収容された液体の充填空間を該シリンダとの間に形成するピストンと、このピストンの押し下げにより充填空間内の液体を外界に噴射させるヘッドと、ピストンの押し下げにより前記吸入口を封止する一方、ピストンの復帰により前記吸入口を開放する吸入弁とを有する液体噴出器において、
前記吸入弁は、前記シリンダ下端の内側に設けられた弁座上に開閉可能に当接する弁体と、前記弁座の周縁に載置された支持筒と、前記支持筒の内周面に連結した第1の端部から前記弁体の外縁に沿って延び第2の端部で前記弁体の外縁に連結する、線対称配置になる2つの連結片とにより構成されることを特徴とする液体噴出器。
【請求項2】
前記連結片は、両端部間で弁体の外縁に沿って延びる腕部をシリンダの軸線方向に湾曲させて形成させてなる、請求項1に記載の液体噴出器。
【請求項3】
前記2つの連結片の第1端部の間に、前記支持筒の内周面に連結した一方の端部から弁体の中心に向かって延び他方の端部で前記弁体の外縁に連結する補助連結片をさらに備える、請求項1又は2に記載の液体噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11128(P2011−11128A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156117(P2009−156117)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】