説明

液体噴出装置

【課題】高密度化と小型化に加えて良好な生産性を図ることができる液体噴出装置の提供。
【解決手段】前面及び後面にそれぞれチャネル112の出口と入口とが配置された1列のチャネル列を有する第1のヘッドチップ11と、チャネル122が基板の表面に対して前端から後端側の中途部まで凹設された1列又は2列のチャネル列を有する第2のヘッドチップ12と、2つの第1のヘッドチップの間に第2のヘッドチップを、全ての前面が同一面となるように積層し、第2のヘッドチップの後端は、第1のヘッドチップの後端よりも後方に突出していると共に、第2のヘッドチップのチャネル内の駆動電極と導通する第2の引き出し電極124が、各チャネル内から第2のヘッドチップの後端にかけて引き出されており、第2のヘッドチップの後端において、第2の引き出し電極に対して駆動回路からの信号を印加するための第2の電気配線部材5B、5Cが電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体噴出装置に関し、詳しくは、3列又は4列のチャネル列を有するヘッドチップからの電極の引き出し構造が改良され、高密度化及び小型化を図ることのできる液体噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、せん断モード型のいわゆるハーモニカタイプのヘッドチップを有する液体噴出装置が知られている。このようなヘッドチップは、圧電素子基板に多数のチャネルを平行に研削すると共に該チャネルを区画する駆動壁に駆動電極を形成し、この駆動壁の両側の駆動電極に駆動回路からの所定の電圧を印加することにより該駆動壁をせん断変形させ、チャネル内の液体を前面に設けられたノズルから吐出させる。このようなヘッドチップは六面体からなり、チャネルの開口部が前面(出口側開口部)と後面(入口側開口部)とに対向状に配置されているためにハーモニカタイプと呼ばれている。このような液体噴出装置は、インクジェット画像を記録するインクジェットプリンタ、半導体の回路パターンを印刷する半導体製造装置、液晶パネルのカラーフィルタの製造装置等に広く利用されている。
【0003】
ところで、ハーモニカタイプのヘッドチップは、チャネル長さがそのままヘッドチップの液体吐出方向の長さとなるため、小型化が可能であり、これを多数並設することで、複数列のチャネル列を有するヘッドチップを構成することも容易であるため、高密度化を図り得る利点があるものの、駆動電極がチャネルの内部にあって表面に露出していないため、駆動電極と駆動回路とを電気的に接続することが難しい。特に、チャネル列が3列以上となると、内側に位置するチャネル列の駆動電極と駆動回路とを電気的に接続することが難しい。このため従来から様々な工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ハーモニカタイプのヘッドチップの駆動電極を、ヘッドチップの上面又は下面において、後方に向けて延びるように接合された電極引き出し用基板の表面を利用して引き出す技術が開示されている。このインクジェットヘッドによれば、各駆動電極と駆動回路との間をつなぐFPC(フレキシブルプリント基板)の接合面が全てヘッドチップの前面及び後面に対して直交する面となるので、各チャネル列に対応するFPCを全てヘッドチップの後方に向けて延びるように接続させることができる。
【0005】
しかしながら、このインクジェットヘッドでは、ヘッドチップの上面又は下面に電極引き出し用基板を接合しているため、上面と下面とにそれぞれ電極引き出し用基板を接合しても最大2列のチャネル列までしか駆動電極を引き出すことはできない。3列以上のチャネル列を形成する場合、上下が電極引き出し用基板に挟まれた2列を1単位とするヘッドチップを複数並設していくことになるが(特許文献1の図17、図19、図20)、これでは2列のチャネル列毎に、間に電極引き出し用基板等の基板材料が必ず挟まれる構造となるため、それだけチャネル列間隔が広くなってしまい、ヘッドチップの小型化が難しい問題がある。
【0006】
しかも、特許文献1記載のインクジェットヘッドの構造では、各チャネルに共通にインク供給を行うためにヘッドチップの後面側に設けられる共通インク室へのインク供給は、ヘッドチップの後方側から行なうことが困難となる問題もある。これは、ヘッドチップの後方に電極引き出し用基板やFPCが張り出すため、これらが邪魔となるからである。この場合、インク供給路は、共通インク室におけるチャネル列方向の端部側、つまり、ヘッドチップのサイド部に設置せざるを得ない。しかし、共通インク室にサイド部からインク供給を行うと、各チャネルへのインク供給がチャネル列方向でばらついてしまい、その結果、インクジェットヘッドの端部側と中央とで吐出されるインクの液滴量に差が生じてしまう不具合がある。このような問題は、チャネル数が多くなる程、すなわち長尺ヘッドとなる程、顕著に見られるようになる。
【0007】
また、特許文献2には、ハーモニカタイプのヘッドチップの後面に、該後面に沿ってヘッドチップの上面側及び下面側に延びる配線基板を接合し、各チャネル内の駆動電極を、後面を通って配線基板の端部まで引き出すようにすることで、配線基板の端部でFPCとの電気的接続を行うようにしたインクジェットヘッドが開示されている。3列又は4列のチャネル列を有するヘッドチップの場合、内側のチャネル列の各駆動電極を、配線基板を表裏に貫通する貫通電極によって配線基板の背面側に配線し、配線基板の背面において端部まで引き出すことで、配線基板の表裏両面の両端部を利用して最大4列分のFPCとの電気的接続を行うようにしている(特許文献2の図9)。
【0008】
しかしながら、このインクジェットヘッドの場合、3列以上のチャネル列となると、内側のチャネル列の各駆動電極に正確に対応するように配線基板に貫通電極を形成しなくてはならず、駆動電極の引き出し構造が複雑となり、作製上の困難さを有している。しかも、この場合、特に問題となるのは、配線基板の表裏両面に電極が配線されるため、各チャネルに共通にインクを供給するための共通インク室を配線基板の背面側に設けることができないことである。
【0009】
特許文献2の図9では、配線基板におけるヘッドチップとの接合面に共通インク室を凹設しているが、これでは大容量の共通インク室を形成することができず、また、大容量の共通インク室とするために配線基板の厚みを大きくすると、貫通電極の形成がますます難しくなるといった問題がある。
【0010】
すなわち、3列以上のチャネル列を有するハーモニカタイプのヘッドチップの駆動電極を配線基板を用いて側方に引き出す構成では、配線基板の厚みを大きくすることなく、ヘッドチップの後方に大容量の共通インク室を設置することができなかった。
【0011】
しかも、この特許文献2の図9に記載のインクジェットヘッドも、共通インク室へのインク供給は、ヘッドチップのサイド部から行なわざるを得ず、共通インク室へのインク供給路の設置に制約を受ける問題を有している。
【0012】
更に、特許文献3には、ハーモニカタイプのヘッドチップの後面において、内側のチャネル列の各チャネルから引き出された電極を、絶縁層と金属膜層からなる積層体を用いて、外側のチャネル列の空気チャネルを跨いでヘッドチップの端部に引き出す技術が提案されている。ヘッドチップの後面の端部まで引き出された電極は、更にヘッドチップの後面に設けた配線基板を利用してその端部においてFPCと電気的接続を行うようにしている。この技術によれば、4列のチャネル列を有するヘッドチップでも、両端部に2列ずつのチャネル列からの各電極を、配線基板に貫通電極を形成することなく引き出すことができる(特許文献3の図18、図19)。
【0013】
しかしながら、このインクジェットヘッドでは、ヘッドチップの後面に対して絶縁層をパターニングする必要があることに加え、金属膜層とヘッドチップの後面に形成される電極とを確実に導通させる必要があるため、積層体の作製が煩雑となってしまい、生産性の観点で解決すべき課題を有している。また、積層体を形成する絶縁層には、一般に有機樹脂フィルムが用いられるが、強溶剤インクや酸、アルカリインクに対する耐久性が十分でなく、このような耐久性の面でも解決すべき課題を有している。更に、絶縁層に用いられる有機樹脂フィルムは、一般に熱膨張係数が高く、また、湿度や張力に対する寸法変化が大きいという問題があり、ヘッドチップが長尺(50mm以上)になってくると、特に後面に対する接合が困難になってくるという問題もある。
【0014】
特許文献4には、基板の前端から後端側の中途部に至る溝を形成することによってチャネルを形成したいわゆるチョッパートラバースタイプのヘッドチップを用いた多列のインクジェットヘッドが記載されている。チョッパートラバースタイプのヘッドチップは、各チャネル内の駆動電極を、チャネルの浅溝部分を経由して基板後端の表面に容易に引き出すことができるため、この基板後端にFPCを接続することで、各駆動電極と駆動回路との間の電気的接続が比較的簡単に行える。ここでは、両面にチャネルを形成した1枚の基板の各面に、片面にチャネルを形成した1枚ずつの基板を、間にカバー基板を挟んでチャネルの形成面が互いに向き合うようにそれぞれ積層することで、4列のチャネル列を有するインクジェットヘッドを構成している。この場合、共通インク室は、互いに向き合わせた2枚の基板の間にそれぞれ形成される(特許文献4の図4)。
【0015】
しかし、チョッパートラバースタイプのヘッドチップを用いて多列のヘッドチップを構成すると、共通インク室は、必ず、チャネルを形成した基板の間に挟まれた構造となるため、共通インク室へのインク供給はヘッドチップのサイド部から行なわざるを得ず、やはり、大容量の共通インク室を形成することができず、また、インク供給路の設置に制約を受ける問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−358751号公報
【特許文献2】特開2006−82396号公報
【特許文献3】特開2008−143167号公報
【特許文献4】特開2005−66924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明は、3列又は4列のチャネル列を有するヘッドチップを備えた液体噴出装置において、ヘッドチップの小型化を図り得ると同時に、内側の1列又は2列のチャネル列の各駆動電極に対しても、駆動回路からの駆動信号を印加するための電気配線部材を容易に接続できるようにすることにより、高密度化と小型化に加えて良好な生産性を図ることができる液体噴出装置を提供することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、3列又は4列のチャネル列を有するヘッドチップを備えた液体噴出装置において、ヘッドチップの小型化を図り得ると同時に、内側の1列又は2列のチャネル列の各駆動電極に対しても、駆動回路からの駆動信号を印加するための電気配線部材を容易に接続できるようにすることにより、高密度化と小型化に加えて良好な生産性を図ることができ、更に、各チャネルに共通に液体を供給するための液体供給室を大容量とすることができ、その液体供給室への液体供給路の設置の自由度が高い液体噴出装置を提供することを課題とする。
【0019】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0021】
請求項1記載の発明は、圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に配置されたチャネル列が3列又は4列並設されると共に、前記チャネル内に臨む前記駆動壁の壁面に駆動電極が形成されてなるヘッドチップを有し、該駆動電極に電圧を印加することにより前記駆動壁を変形させて前記チャネル内の液体を前記ヘッドチップの前端面に配置されたノズルから吐出させるようにした液体噴出装置において、
前記ヘッドチップは、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置された1列のチャネル列を有する第1のヘッドチップと、チャネルが基板の表面に対して前端から後端側の中途部まで凹設された1列又は2列のチャネル列を有する第2のヘッドチップとを有し、2つの前記第1のヘッドチップの間に前記第2のヘッドチップを、全ての前面が同一面となるように積層することによって形成されており、
前記第2のヘッドチップの後端は、前記第1のヘッドチップの後端よりも後方に突出していると共に、該第2のヘッドチップの前記チャネル内の前記駆動電極と導通する第2の引き出し電極が、各チャネル内から前記第2のヘッドチップの後端にかけて引き出されており、該第2のヘッドチップの後端において、前記第2の引き出し電極に対して駆動回路からの信号を印加するための第2の電気配線部材が電気的に接続されていることを特徴とする液体噴出装置である。
【0022】
請求項2記載の発明は、前記第1のヘッドチップの後面に、該第1のヘッドチップの前記チャネル内の前記駆動電極と導通する第1の引き出し電極が、前記チャネルから前記第2のヘッドチップと反対方向に延びるように形成され、該後面に、2つの前記第1のヘッドチップの周囲からそれぞれ張り出す大きさを有する配線基板が接合されており、
前記配線基板の前記第1のヘッドチップとの接合面に、前記第1の引き出し電極と電気的に接続される配線電極が設けられ、該配線基板の前記配線電極に対して駆動回路からの信号を印加するための第1の電気配線部材が電気的に接続されており、
前記配線基板の前記第1のヘッドチップとの接合面の反対面に、前記第1のヘッドチップ及び前記第2のヘッドチップの前記チャネルに液体を供給するための液体供給室を形成するマニホールド部材が接合されていると共に、前記第2のヘッドチップの後端は、前記マニホールド部材よりも更に後方に突出していることを特徴とする請求項1記載の液体噴出装置である。
【0023】
請求項3記載の発明は、前記マニホールド部材は、前記ヘッドチップの全ての前記チャネルと連通し、該全ての前記チャネルに対して共通に液体を供給する1つの液体供給室を有することを特徴とする請求項2記載の液体噴出装置である。
【0024】
請求項4記載の発明は、前記マニホールド部材は、前記第2のヘッドチップを挟んで、2つの前記第1のヘッドチップに対してそれぞれ独立して液体を供給する2つの液体供給室に分かれていることを特徴とする請求項2記載の液体噴出装置である。
【0025】
請求項5記載の発明は、前記第1のヘッドチップの後面に、該第1のヘッドチップの前記チャネル内の前記駆動電極と導通する第1の引き出し電極が、前記チャネルから前記第2のヘッドチップと反対方向に延びるように形成されていると共に、該後面に、前記第1の引き出し電極に対して駆動回路からの信号を印加するための第1の電気配線部材が、前記第2のヘッドチップと反対方向に延びるように電気的に接続されており、
前記第1の電気配線部材の前記第1のヘッドチップとの接合面の反対面に、前記第1のヘッドチップ及び前記第2のヘッドチップの前記チャネルに液体を供給するための液体供給室を形成するマニホールド部材が接合されていると共に、前記第2のヘッドチップの後端は、前記液体供給室よりも更に後方に突出していることを特徴とする請求項1記載の液体噴出装置である。
【0026】
請求項6記載の発明は、前記マニホールド部材は、前記第1のヘッドチップ及び前記第2のヘッドチップの全ての前記チャネルと連通し、該全ての前記チャネルに対して共通に液体を供給する1つの液体供給室を有することを特徴とする請求項5記載の液体噴出装置である。
【0027】
請求項7記載の発明は、前記マニホールド部材は、前記第2のヘッドチップを挟んで、2つの前記第1のヘッドチップに対してそれぞれ独立して液体を供給する2つの液体供給室に分かれていることを特徴とする請求項5記載の液体噴出装置である。
【0028】
請求項8記載の発明は、前記マニホールド部材の前記第1の電気配線部材との接合端面の内周縁は、前記第1の電気配線部材の前記第1のヘッドチップとの接合端部よりも前記第2のヘッドチップ側に向けて突出していると共に、前記マニホールド部材の前記第1の電気配線部材との接合端面と前記第1の電気配線部材の前記第1のヘッドチップとの接合端部との間で形成される隙間に、接着剤が充填されていることを特徴とする請求項5、6又は7記載の液体噴出装置である。
【0029】
請求項9記載の発明は、前記第2のヘッドチップは2列のチャネル列を有し、
前記チャネルの凹設面が反対方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体噴出装置である。
【0030】
請求項10記載の発明は、前記第2のヘッドチップは2列のチャネル列を有し、
前記チャネルの凹設面が対面するように配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体噴出装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、3列又は4列のチャネル列を有するヘッドチップを備えた液体噴出装置において、ヘッドチップの小型化を図り得ると同時に、内側の1列又は2列のチャネル列の各駆動電極に対しても、駆動回路からの駆動信号を印加するための電気配線部材を容易に接続できるようにすることにより、高密度化と小型化に加えて良好な生産性を図ることができる液体噴出装置を提供することができる。
【0032】
また、本発明によれば、3列又は4列のチャネル列を有するヘッドチップを備えた液体噴出装置において、ヘッドチップの小型化を図り得ると同時に、内側の1列又は2列のチャネル列の各駆動電極に対しても、駆動回路からの駆動信号を印加するための電気配線部材を容易に接続できるようにすることにより、高密度化と小型化に加えて良好な生産性を図ることができ、更に、各チャネルに共通に液体を供給するための液体供給室を大容量とすることができ、その液体供給室への液体供給路の設置の自由度が高い液体噴出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る液体噴出装置の断面図
【図2】第1のヘッドチップを示す斜視図
【図3】第2のヘッドチップを示す斜視図
【図4】(a)は配線基板を接合したヘッドチップを後面側から見た図、(b)は配線基板を接合したヘッドチップを前面からみた図
【図5】第1の実施形態に係る液体噴出装置を後面側から見た斜視図
【図6】第2の実施形態に係る液体噴出装置を後面側から見た斜視図
【図7】第3の実施形態に係る液体噴出装置の断面図
【図8】第4の実施形態に係る液体噴出装置の断面図
【図9】第5の実施形態に係る液体噴出装置の断面図
【図10】第6の実施形態に係る液体噴出装置の断面図
【図11】第7の実施形態に係る液体噴出装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る液体噴出装置は、圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に配置されたチャネル列が3列又は4列並設されると共に、チャネル内に臨む駆動壁の壁面に駆動電極が形成されてなるヘッドチップを有し、該駆動電極に電圧を印加することにより駆動壁をせん断変形させ、チャネル内の液体に吐出のための圧力変化を与え、ヘッドチップの前端面に配置されたノズルから微小液滴として吐出させる。
【0035】
ヘッドチップは、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが対向して配置された1列のチャネル列を有する第1のヘッドチップと、チャネルが基板の表面に対して前端から後端側の中途部まで凹設された溝によって形成された1列又は2列のチャネル列を有する第2のヘッドチップとを有している。
【0036】
第1のヘッドチップは、前面、後面、上面、下面及び両側面を有する六面体からなるいわゆるハーモニカタイプのヘッドチップである。チャネルの両側壁は駆動壁によって形成され、そのチャネルの上壁及び下壁がそれぞれ基板によって塞がれている。各チャネルは入口から出口にかけて断面形状が変わらないストレート形状である。本発明では、このようなハーモニカタイプの第1のヘッドチップにおいて、ノズルが配置されて液体が吐出される側の面を「前面」、該面が向いている方向を「前方」、その端部を「前端」、その反対側の面を「後面」、該面が向いている方向を「後方」、その端部を「後端」と定義する。
【0037】
一方、第2のヘッドチップは、基板の表面にチャネルとなる溝が凹設されたいわゆるチョッパートラバースタイプのヘッドチップである。チャネルは基板の前端から後端に向かって延び、後端に向かう中途部から徐々に浅溝となり、やがて消滅し、それよりも後端側は溝が形成されない平板面となっている。本発明では、このようなチョッパートラバースタイプの第2のヘッドチップにおいて、ノズルが配置されて液体が吐出される側の面を「前面」、該面が向いている方向を「前方」、その端部を「前端」、その反対側の面を「後面」、該面が向いている方向を「後方」、その端部を「後端」と定義する。
【0038】
第2のヘッドチップは、多数のチャネルが並設されてなるチャネル列を、1列又は2列有している。2列のチャネル列は、1列のチャネル列が凹設された第2のヘッドチップを2つ使用し、チャネルの凹設面が外側となるように接着剤を用いて背中合わせに接合することによって形成したものでもよいし、第2のヘッドチップを構成する単一の基板の表裏両面にそれぞれ1列ずつのチャネル列を凹設することによって2列のチャネル列を形成したものであってもよい。
【0039】
本発明におけるヘッドチップは、それぞれ1列のチャネル列を有する2つの第1のヘッドチップの間に、1列又は2列のチャネル列を有する第2のヘッドチップを、これら第1及び第2のヘッドチップの全ての前面が同一面となるように積層することによって形成される。これによってヘッドチップは平行に並列された3列又は4列のチャネル列を有する。
【0040】
第1及び第2のヘッドチップが積層された状態で、第2のヘッドチップの後端は、第1のヘッドチップの後端よりも後方に突出すると共に、該第2のヘッドチップのチャネル内の駆動電極と導通する第2の引き出し電極が、各チャネル内から、浅溝部分を利用して第2のヘッドチップの後端にかけて引き出され、該第2のヘッドチップの後端においてチャネルの凹設面と同一表面に露出し、配列される。駆動回路と導通する第2の電気配線部材は、この第2の引き出し電極の端部に対して電気的に接続される。各駆動電極には、この第2の電気配線部材を介して駆動回路からの駆動信号が印加される。第2の電気配線部材としては、絶縁基板の表面に第2の引き出し電極と同ピッチで配線電極が形成されたものを用いることができ、好ましくは樹脂製絶縁性基板の表面に配線電極が形成されたFPC(フレキシブルプリント基板)が好適に用いられる。
【0041】
第2の引き出し電極と第2の電気配線部材との接合面は、ヘッドチップの前面及び後面に対して直交し、且つ、チャネル列の並設方向に面している。しかも、この接合面は第1のヘッドチップよりも後方に突出している。このため、第2のヘッドチップへの第2の電気配線部材は、両側の第1のヘッドチップの各チャネル列と干渉することなく、ヘッドチップの後方に延びるように接続することができる。従って、本発明に係る液体噴出装置は、3列又は4列のチャネル列のうちの内側の1列又は2列のチャネル列でも、各駆動電極に対して駆動回路からの駆動信号を印加するための第2の電気配線部材を容易に接続することができるようになる。しかも、第2のヘッドチップは、いわゆるチョッパートラバースタイプのヘッドチップをそのまま利用することができるため、従来のように貫通電極を形成したり、絶縁層と金属膜層からなる積層体をパターン形成したりする必要もなく、良好な生産性を得ることができる。
【0042】
両外側に位置する第1のヘッドチップのチャネル内の駆動電極に対して駆動回路からの信号を印加するには、両側に位置する第1のヘッドチップの後面に、該第1のヘッドチップのチャネル内の駆動電極と導通する第1の引き出し電極が、各チャネルから第2のヘッドチップと反対方向に延び、第1のヘッドチップのチャネル列と平行な外側端縁にかけて形成され、この第1のヘッドチップの後面に、2つの第1のヘッドチップの周囲からそれぞれ大きく張り出す大きさを有する配線基板が接合される。この配線基板には、第1のヘッドチップとの接合面に、第1の引き出し電極と電気的に接続される配線電極が設けられており、該配線基板の張り出した部位に露出する配線電極に対して第1の電気配線部材が電気的に接続される。第1の電気配線部材は、絶縁基板の表面に第1の引き出し電極と同ピッチで配線電極が形成されたものを用いることができ、好ましくは樹脂製絶縁性基板の表面に配線電極が形成されたFPC(フレキシブルプリント基板)が好適に用いられる。
【0043】
この配線基板には、第1のヘッドチップとの接合面の反対面に対してマニホールド部材が接合される。マニホールド部材は、内部に第1のヘッドチップ及び第2のヘッドチップのチャネルに液体を供給する液体供給室を形成する。第2のヘッドチップの後端は、このマニホールド部材よりも更に後方に突出しており、このマニホールド部材から突出した後端に、第2の電気配線部材が接合される。
【0044】
この構成によると、3列以上のチャネル列を有するヘッドチップであっても、その後方に大容量のマニホールド部材を設置することができる。マニホールド部材は、チャネル列方向にも大きく張り出すように形成することもでき、第2のヘッドチップを挟んだ両方の空間を一つに連通させることも可能となる。
【0045】
このマニホールド部材は、配線基板との接合面以外の面が広く開放した構造となるため、マニホールド部材内の液体供給室への液体供給路を配線基板との接合面以外の任意の面に設置することができ、しかも、マニホールド部材の広く開放した面を利用して数多くの液体供給路を設けることができる。これにより、液体供給路の設置の自由度は高くなり、液体供給路の設置位置に起因するチャネル列方向の液滴量の変動を抑制することが可能となって、均一な量の液滴吐出が可能となる。
【0046】
第1のヘッドチップの駆動電極を引き出すには、このような配線基板に代えて、第1の電気配線部材を第1のヘッドチップの後面に直接接合することもできる。マニホールド部材は、この第1の電気配線部材に対して後方から接合される。
【0047】
この場合も、配線基板を用いた場合と同様の効果が得られることに加え、配線基板を省略することによって部品点数が削減され、製造工数の削減化及び低コスト化を図ることができる。
【0048】
本発明において、2列のチャネル列を有する第2のヘッドチップは、チャネルの凹設面が反対方向となるように配置されていてもよいし、チャネルの凹設面が対面するように配置されていてもよい。
【0049】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を用いて説明する。
【0050】
図1は、第1の実施形態に係る液体噴出装置100を示す断面図であり、図中、1はヘッドチップ、2はノズルプレート、3は配線基板、4はマニホールド、5A〜5Dは電気配線部材としてのFPC(フレキシブルプリント基板)である。ここではFPC5A、5Dが本発明における第1の電気配線部材、FPC5B、5Cが本発明における第2の電気配線部材である。
【0051】
ヘッドチップ1は、図1において上から順に第1列、第2列、第3列及び第4列からなる4列のチャネル列を有している。このヘッドチップ1のうち、図中の上と下の最外側に位置する第1列及び第4列のチャネル列は、六面体からなるいわゆるハーモニカタイプのヘッドチップ(以下、HAチップという。)11によって形成されている。このHAチップ11が本発明における第1のヘッドチップである。また、このHAチップ11に挟まれた内側の第2列及び第3列のチャネル列は、いわゆるチョッパートラバースタイプのヘッドチップ(以下、CTチップという。)12によって形成されている。このCTチップ12が本発明における第2のヘッドチップである。
【0052】
HAチップ11の詳細を図2に示す。図2はHAチップ11を後面側から見た斜視図である。
【0053】
HAチップ11は、圧電素子からなる駆動壁111とチャネル112とが交互に並設されており、HAチップ11の前面11aには各チャネル112の出口が開口し、後面11bには各チャネル112の入口が開口し、これら出口と入口とが対向するように配置されている。駆動壁111は、分極方向が反対方向となる圧電素子が積層されて形成されており、チャネル112内には、少なくとも両駆動壁111の表面及びチャネル112の上壁面に駆動電極113が形成されている。
【0054】
また、HAチップ11の後面11bには、各チャネル112内の駆動電極113と導通する第1の引き出し電極114が形成されている。この第1の引き出し電極114は、一端がチャネル112内の駆動電極113と繋がり、他端はHAチップ11の後面11bにおいて上面11c側の端縁まで延びている。従って、第1の引き出し電極114は、HAチップ11の後面11bにおいて、チャネル112と同一ピッチで配列されている。
【0055】
次に、CTチップ12の詳細を図3に示す。図3はCTチップ12を前面側から見た斜視図である。
【0056】
CTチップ12は、圧電素子からなる平板状の基板120の表面から所定の深さでチャネル122となる複数の溝が平行に凹設されることにより、圧電素子からなる駆動壁121とチャネル122とが交互に並設されている。各チャネル122は、基板120の前端120aから後端120b側の中途部まで一定の深さで凹設され、中途部から徐々に浅くなって浅溝部122aとなり、ついには消滅する。従って、各チャネル122は、両側の駆動壁121と基板120からなる底壁とによって囲まれているが、上方は開放されている。また、チャネル122が凹設されていない基板120の後端120b側の表面は平板状のままとなっている。
【0057】
駆動壁121は、分極方向が反対方向となる圧電素子が積層されて形成されており、チャネル122の内面全面には駆動電極123が形成されている。駆動電極123は、チャネル122の内面から浅溝部122aを経由して基板120の表面に引き出され、そのまま基板120の後端120bまで延びている。チャネル122の浅溝部122aから基板120の表面に引き出された部分が、第2の引き出し電極124を形成している。従って、この第2の引き出し電極124は、基板120表面の後端120bにおいて、チャネル122と同一ピッチで配列されている。
【0058】
ヘッドチップ1は、このCTチップ12を2枚用い、そのチャネル122の凹設面側が外側を向くように配置させ、背中合わせに接着剤を用いて接合することによって、第2列及び第3列のチャネル列を形成している。また、第1列及び第4列のチャネル列は、上述のHAチップ11を、各CTチップ12においてチャネル122が開放されている上面を覆うように、それぞれ接着剤を用いて接合することによって形成される。2つのHAチップ11及び2つのCTチップ12は、それらの前面(図1における左側の端面)が同一面となるように積層され、その前面に対して1枚のノズルプレート2が接着剤を用いて接合されている。ノズルプレート2には、各チャネル112、122に対応する位置にノズル21が開設されている。
【0059】
HAチップ11は、チャネル112の長さ(L長)が液体の吐出特性を決定付ける重要な要素となる。一方、CTチップ12は、チャネル122の上方が覆われている部分の長さがL長に相当するが、このL長は、HAチップ11の長さ、すなわちチャネル112の長さによって規定されることになるため、HAチップ11とCTチップ12のL長を容易に一致させることができる。
【0060】
このようにHAチップ11とCTチップ12とが積層された状態で、CTチップ12の後端は、HAチップ11の後端よりも後方(図1における右方)に突出して延びている。CTチップ12の各チャネル122は、浅溝部122aの部位が、HAチップ11の後端よりも後方に位置しており、それぞれHAチップ11の後方に向けて開口し、液体の入口を形成している。
【0061】
配線基板3は、ヘッドチップ1における2つのHAチップ11の後面に対して接合されている。この配線基板3の詳細を図4(a)(b)に示す。(a)は後面側から見た図、(b)は前面側から見た図であり、いずれもマニホールド部材4及びFPC5A〜5Dは図示省略している。
【0062】
配線基板3は、例えばガラス、セラミックス、窒化アルミ等の剛性を有する平板状の基板によって、ヘッドチップ1の四方から大きく張り出す大きさの矩形状に形成されている。配線基板3の中央には、横寸法がヘッドチップ1の幅(チャネル列方向の長さ)と同程度であり、縦寸法がヘッドチップ1の厚さ(チャネル列の並設方向の長さ)よりも僅かに小さな矩形状の開口31を有している。ヘッドチップ1には、この1枚の配線基板3が、開口31からCTチップ12、12の後端を挿通させて、各HAチップ11の後面11bにおける第1の引き出し電極114が配列されている端部と異方導電性フィルム等を用いて接合されている。
【0063】
配線基板3のHAチップ11との接合面には、開口31におけるチャネル列方向に沿う各縁部31aから、配線基板3におけるチャネル列方向に沿う各外縁部3aにかけて、各第1の引き出し電極114と1対1に対応するように、配線電極32が形成されており、対応する第1の引き出し電極114と電気的に接続されている。HAチップ11の各駆動電極113は、この第1の引き出し電極114及び配線電極32によって、チャネル112の長さ方向(液体の吐出方向)と直交し、且つ、チャネル列の並設方向に沿う方向である図中のヘッドチップ1の上側方及び下側方に引き出されている。この配線基板3の外縁部3aは、チャネル112、122の長さ方向(液体の吐出方向)と直交し、且つ、HAチップ11よりもCTチップ12と反対方向に張り出している。そして、この配線基板3の張り出した両端部には、FPC5A、5Dが接続され、図示しない駆動回路からの駆動信号が、FPC5A、5D、配線電極32及び第1の引き出し電極114を経由して、各駆動電極113に印加されるようになっている。
【0064】
マニホールド部材4は、例えばステンレス等の金属やエンジニアリングプラスチック等の合成樹脂によって、一面が開放された箱形状に形成されており、配線基板3のHAチップ11との接合面の反対面の周縁に対して接着剤を用いて接合されている。これにより、ヘッドチップ1との間に液体供給室41となる空間を形成している。マニホールド部材4の後部壁42には、ヘッドチップ1のCTチップ12の後端120b側を、接着剤等を介して液密状となるように挿通させる開口43が形成されている。CTチップ12の後端120bは、この開口43から更に後方に延びて突出している。
【0065】
図5は、液体噴出装置100をマニホールド部材4側から見た斜視図である。ここではFPC5A〜5Dは図示省略している。
【0066】
マニホールド部材4は、HAチップ11よりも後方に突出したCTチップ12の周囲を取り囲むようにしてヘッドチップ1の後面側を覆っており、その内部にヘッドチップ1の全てのチャネル112、122の入口を収容している。従って、液体供給室41内の液体は、ヘッドチップ1の全てのチャネル112、122に対して共通に供給されるようになっている。なお、図5において、符号44は液体供給室41内に液体を供給するインレット、45は液体供給室41内から液体を排出するアウトレットである。
【0067】
このマニホールド部材4の後部壁42から後方に突出している各CTチップ12の後端120bには、その表面にそれぞれ第2の引き出し電極124が露出して配列されている。そして、この第2の引き出し電極124に対して、それぞれFPC5B、5Cが異方導電性フィルム等を用いて接合され、図示しない駆動回路からの駆動信号が、FPC5B、5C、第2の引き出し電極124を経由して、各駆動電極123に印加されるようになっている。
【0068】
ここで、CTチップ12の第2の引き出し電極124とFPC5B、5Cとの接合面は、HAチップ11の後面11bに対して直交し、且つ、チャネル列の並設方向に向いた面となり、これがHAチップ11よりも後方、更にはマニホールド部材4よりも後方に突出しているため、FPC5B、5Cが、隣接するHAチップ11の各チャネル列と干渉することなく、各FPC5B、5Cをヘッドチップ1の後方に向けて延ばすように接続することができ、接続作業は容易である。しかも、マニホールド部材4の後方には、FPC5B、5Cの接合部位を突出させる程度で済むため、液体噴出装置100の小型化を阻害することはない。
【0069】
しかも、配線基板3を使用した本実施形態では、マニホールド部材4の配線基板3との接合面以外の面が広く開放しているため、インレット44、アウトレット45の設置部位が、FPC5A〜5D等によって邪魔されることはなく、図示する位置に限らず、配線基板3との接合面以外の面の任意の位置に設けることができ、また、その数も多く設置することができ、マニホールド部材4への液体供給路を設置する自由度は高い。
【0070】
図6は、第2の実施形態に係る液体噴出装置101を示している。図5と同一符号の部位は同一構成を示しているので、それらの詳細な説明は省略する。また、ここでもFPC5A〜5Dは図示省略している。
【0071】
この液体噴出装置101は、マニホールド部材が、CTチップ12を挟んで、第1列及び第2列のチャネル列の各チャネル112、122のみに対して共通に液体を供給するための第1のマニホールド部材4Aと、第3列及び第4列のチャネル列の各チャネル112、122のみに対して共通に液体を供給するための第2のマニホールド部材4Bの2つに独立して分かれている。
【0072】
これによれば、各マニホールド部材4A、4Bに対して異なる種類の液体を供給することで、第1列及び第2列の各チャネル列と第3列及び第4列の各チャネル列とで、異なる種類の液体、例えば異なる色の液体を吐出させることができる。
【0073】
また、この場合も、インレット44とアウトレット45は、各マニホールド部材4A、4Bの任意の位置に設けることができる。
【0074】
なお、第1のマニホールド部材4Aと第2のマニホールド部材4Bは、第1列及び第2列のチャネル列と第3列及び第4列のチャネル列とで別々に液体を供給できるものであれば、1つのマニホールドの内部に区画された2つの液体供給室を有するものであってもよい。
【0075】
図7は、第3の実施形態に係る液体噴出装置102を示している。図1と同一符号の部位は同一構成を示しているので、それらの詳細な説明は省略する。
【0076】
この液体噴出措置102は、配線基板3を用いておらず、HAチップ11の後面11bに対して、それぞれFPC5A、5Dを異方導電性フィルム等を用いて直接接合している。このようにHAチップ11の後面11bに対してFPC5A、5Dを直接接合することで、部品点数及び工数の削減を図ることができる。マニホールド部材4は、このFPC5A、5Dに対してその後方から取り付けられ、該FPC5A、5Dの後面に接着剤を用いて接合されている。この場合、FPC5A、5Dを、配線基板3と同様に、ヘッドチップ1の四方から大きく張り出す大きさに形成された大判の1枚のFPCによって形成すれば、ヘッドチップ1の後面に対して大型のマニホールド部材4との接合を行うことができるようになる。
【0077】
この液体噴出装置102においても、マニホールド部材4は、第2の実施形態に係る液体噴出装置101のように、2つに独立して液体供給可能に形成されていてもよい。
【0078】
図8は、第4の実施形態に係る液体噴出装置103を示している。図1、図7と同一符号の部位は同一構成を示しているので、それらの詳細な説明は省略する。
【0079】
この液体噴出装置103も、HAチップ11の後面11bに対して、それぞれFPC5A、5Dを直接接合している点で、第3の実施形態に係る液体噴出装置102と同じであるが、このマニホールド部材4は、FPC5A、5DにおけるHAチップ11との接合面と反対面を完全に被覆するように接合している点で異なっている。
【0080】
このマニホールド部材4は、ヘッドチップ1との接合面側の開口端部が内側に折れ曲がることにより、HAチップ11の後面11bとの接合部位となる接合端面46を有している。この接合端面46は、FPC5A、5DにおけるHAチップ11との接合面と反対面を完全に覆っている。FPC5A、5Dと接する接合端面46の内周縁46aは、FPC5A、5Dの内側の接合端部51A、51Dよりも更に内側(CTチップ12側)に向けて突出した位置にある。このため、FPC5A、5Dの内側の接合端部51A、51Dは、HAチップ11の後面11bとマニホールド部材4の接合端面46との間に完全に隠れた状態となっている。
【0081】
HAチップ11の後面11bとマニホールド部材4の接合端面46の内周縁46aとFPC5A、5Dの内側の接合端部51A、51Dとによって形成される隙間には、マニホールド部材4を接合する際に塗布される接着剤200が充填されている。これにより、FPC5A、5Dは液体供給室41内の液体と直に接触することが防止されている。
【0082】
この液体噴出装置103によれば、第3の実施形態に係る液体噴出装置102が有する効果に加えて、FPC5A、5Dが液体と直に接触することが避けられる。従って、第1の電気配線部材として使用される基板材料を侵食するおそれのある液体でも使用することができるようになり、使用可能な液体の選択範囲を広げることができる。
【0083】
また、この液体噴出装置103においても、マニホールド部材4は、第2の実施形態に係る液体噴出装置101のように、内部が2つに独立して液体供給可能に形成されていてもよい。
【0084】
図9は、第5の実施形態に係る液体噴出装置104を示している。図1と同一符号の部位は同一構成を示しているので、それらの詳細な説明は省略する。
【0085】
この液体噴出装置104は、ヘッドチップ1のチャネル列が3列の場合であり、両外側に位置するHAチップ11の間に、1つのCTチップ12を積層している。
【0086】
この液体噴出装置104において、FPC5A、5Dは、第3、第4の実施形態に係る液体噴出装置102、103のように、HAチップ11の後面11bに直接接合してもよい。また、マニホールド部材4は、第2の実施形態に係る液体噴出装置101のように、内部が2つに独立して液体供給可能に形成されていてもよいし、第4の実施形態に係る液体噴出装置103のように、FPC5A、5Dを被覆するように接合してもよい。
【0087】
図10は、第6の実施形態に係る液体噴出装置105を示している。図1と同一符号の部位は同一構成を示しているので、それらの詳細な説明は省略する。
【0088】
この液体噴出装置105は、電極引き出し用基板6を用いてHAチップ11の駆動電極113の取り出しを行っている。電極引き出し用基板6は、各HAチップ11をCTチップ12との間でそれぞれ挟みつけるように、HAチップ11のそれぞれ外側面(CTチップ12との接合面の反対面)に、前端面がHAチップ11及びCTチップ12と同一面となるように揃えられて接合されている。
【0089】
この態様では、HAチップ11の第1の引き出し電極114は、HAチップ11の後面からHAチップ11の外側面にかけて形成されている。電極引き出し用基板6の表面には、この第1の引き出し電極114におけるHAチップ11の外側面に引き出された部位と電気的に接続される配線電極61が形成されており、この配線電極61の形成面がHAチップ11の外側面に接するようにして接合されている。
【0090】
電極引き出し用基板6の後端は、HAチップ11の後面よりも後方に延びているが、CTチップ12の後端よりも短く、CTチップ12後端側のチャネル122が形成されていない平板部分と対面している。この電極引き出し用基板6とCTチップ12との間には、それぞれマニホールド7が設けられている。
【0091】
このマニホールド7は、電極引き出し用基板6とCTチップ12との間において、HAチップ11の後方を包囲するように設けられており、これにより、HAチップ11の後面と電極引き出し用基板6とCTチップ12との間に亘って液体供給室71を形成している。各液体供給室71は、HAチップ11のチャネル112とCTチップ12のチャネル122の全ての入口を収容している。
【0092】
マニホールド7は、電極引き出し用基板6の後端よりも更に後方に突出していると共に、この電極引き出し用基板6との接合面に、該電極引き出し用基板6に形成された配線電極61と電気的に接続される配線電極72がそれぞれ形成されている。FPC5A、5Dは、このマニホールド7の後端の配線電極72に対して接合され、FPC5B、5Cと同様にヘッドチップ1の後方に向けて延びている。
【0093】
この液体噴出装置105では、両外側のHAチップ11に対する駆動回路からの駆動信号の印加のための配線部材の取り出し方向を、ヘッドチップ1の後方に全て揃えることができ、側方への張り出し量を小さくすることができる。
【0094】
図11は、第7の実施形態に係る液体噴出装置106を示している。図1と同一符号の部位は同一構成を示しているので、それらの詳細な説明は省略する。
【0095】
この液体噴出装置106は、CTチップ12が2列のチャネル列を有しているが、CTチップ12を構成する2枚の基板120が、チャネル122の凹設面が対面するように配置させて形成されている。各基板120の間には、前端面をHAチップ11と同一面に揃えた1枚のカバー基板125が配置されており、各チャネル122の対向する開放面を共通に覆っている。カバー基板125はHAチップ11とチャネルの長さ方向が同一長さとなるように形成されており、これによりHAチップ11とCTチップ12の各チャネル112、122のL長が同一となるように形成されている。
【0096】
また、各基板120の後端側の間には、1枚の接続基板126が、各基板12の後端から更に後方に突出するように配置されている。接続基板126の各基板120との接合面には、それぞれ電極127が形成され、各基板120に形成された第2の引き出し電極124と電気的に接続されることで、該第2の引き出し電極124が基板120の後方に突出する接続基板126の表面まで更に引き出されている。FPC5B、5Cは、この接続基板126の後端にそれぞれ接合されている。
【0097】
この液体噴出装置106では、各基板120の間とカバー基板8及び接続基板126との間で、CTチップ12固有の液体供給室40が形成される。マニホールド部材4をCTチップ12のチャネル列方向から張り出す大きさに形成することで、この液体供給室40をマニホールド部材4内の他の液体供給室41と連通させることができる。
【0098】
また、マニホールド部材4内を、CTチップ12の部分で区画すれば、各HAチップ11とCTチップ12とでそれぞれ異なる種類(例えば色)の液体を供給することも可能となる。
【0099】
この液体噴出装置106では、CTチップ12のFPC5B、5Cが、基板120から更に後方に突出した接続基板126に接合できるため、マニホールド部材4の後方の突出量を基板120の後端まで延ばすことができ、それだけ大容量の液体供給室を形成することができる。
【0100】
なお、この第7の実施形態に係る液体噴出装置106において、HAチップ11の駆動電極113の引き出しは、図7に示した第3の実施形態に係る液体噴出装置102、図8に示した第4の実施形態に係る液体噴出装置103のように第1の電気配線部材を直接接合することによって行ってもよい。
【符号の説明】
【0101】
100〜106:液体噴射装置
1:ヘッドチップ
11:HAチップ(第1のヘッドチップ)
11a:前面
11b:後面
111:駆動壁
112:チャネル
113:駆動電極
114:第1の引き出し電極
12:CTチップ(第2のヘッドチップ)
120:圧電素子からなる基板
120a:前端
120b:後端
121:駆動壁
122:チャネル
122a:浅溝部
123:駆動電極
124:第2の引き出し電極
125:カバー基板
126:接続基板
127:引き出された第2の引き出し電極
2:ノズルプレート
21:ノズル
3:配線基板
3a:外縁部
31:開口
31a:縁部
32:配線電極
4:マニホールド
4A:第1のマニホールド
4B:第2のマニホールド
40、41:液体供給室
42:後部壁
43:開口
44:インレット
45:アウトレット
46:接合端部
46a:内周縁
5A〜5D:FPC
51A、51D:接合端部
6:電極引き出し用基板
61:配線電極
7:マニホールド
71:液体供給室
72:配線電極
200:接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に配置されたチャネル列が3列又は4列並設されると共に、前記チャネル内に臨む前記駆動壁の壁面に駆動電極が形成されてなるヘッドチップを有し、該駆動電極に電圧を印加することにより前記駆動壁を変形させて前記チャネル内の液体を前記ヘッドチップの前端面に配置されたノズルから吐出させるようにした液体噴出装置において、
前記ヘッドチップは、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置された1列のチャネル列を有する第1のヘッドチップと、チャネルが基板の表面に対して前端から後端側の中途部まで凹設された1列又は2列のチャネル列を有する第2のヘッドチップとを有し、2つの前記第1のヘッドチップの間に前記第2のヘッドチップを、全ての前面が同一面となるように積層することによって形成されており、
前記第2のヘッドチップの後端は、前記第1のヘッドチップの後端よりも後方に突出していると共に、該第2のヘッドチップの前記チャネル内の前記駆動電極と導通する第2の引き出し電極が、各チャネル内から前記第2のヘッドチップの後端にかけて引き出されており、該第2のヘッドチップの後端において、前記第2の引き出し電極に対して駆動回路からの信号を印加するための第2の電気配線部材が電気的に接続されていることを特徴とする液体噴出装置。
【請求項2】
前記第1のヘッドチップの後面に、該第1のヘッドチップの前記チャネル内の前記駆動電極と導通する第1の引き出し電極が、前記チャネルから前記第2のヘッドチップと反対方向に延びるように形成され、該後面に、2つの前記第1のヘッドチップの周囲からそれぞれ張り出す大きさを有する配線基板が接合されており、
前記配線基板の前記第1のヘッドチップとの接合面に、前記第1の引き出し電極と電気的に接続される配線電極が設けられ、該配線基板の前記配線電極に対して駆動回路からの信号を印加するための第1の電気配線部材が電気的に接続されており、
前記配線基板の前記第1のヘッドチップとの接合面の反対面に、前記第1のヘッドチップ及び前記第2のヘッドチップの前記チャネルに液体を供給するための液体供給室を形成するマニホールド部材が接合されていると共に、前記第2のヘッドチップの後端は、前記マニホールド部材よりも更に後方に突出していることを特徴とする請求項1記載の液体噴出装置。
【請求項3】
前記マニホールド部材は、前記ヘッドチップの全ての前記チャネルと連通し、該全ての前記チャネルに対して共通に液体を供給する1つの液体供給室を有することを特徴とする請求項2記載の液体噴出装置。
【請求項4】
前記マニホールド部材は、前記第2のヘッドチップを挟んで、2つの前記第1のヘッドチップに対してそれぞれ独立して液体を供給する2つの液体供給室に分かれていることを特徴とする請求項2記載の液体噴出装置。
【請求項5】
前記第1のヘッドチップの後面に、該第1のヘッドチップの前記チャネル内の前記駆動電極と導通する第1の引き出し電極が、前記チャネルから前記第2のヘッドチップと反対方向に延びるように形成されていると共に、該後面に、前記第1の引き出し電極に対して駆動回路からの信号を印加するための第1の電気配線部材が、前記第2のヘッドチップと反対方向に延びるように電気的に接続されており、
前記第1の電気配線部材の前記第1のヘッドチップとの接合面の反対面に、前記第1のヘッドチップ及び前記第2のヘッドチップの前記チャネルに液体を供給するための液体供給室を形成するマニホールド部材が接合されていると共に、前記第2のヘッドチップの後端は、前記液体供給室よりも更に後方に突出していることを特徴とする請求項1記載の液体噴出装置。
【請求項6】
前記マニホールド部材は、前記第1のヘッドチップ及び前記第2のヘッドチップの全ての前記チャネルと連通し、該全ての前記チャネルに対して共通に液体を供給する1つの液体供給室を有することを特徴とする請求項5記載の液体噴出装置。
【請求項7】
前記マニホールド部材は、前記第2のヘッドチップを挟んで、2つの前記第1のヘッドチップに対してそれぞれ独立して液体を供給する2つの液体供給室に分かれていることを特徴とする請求項5記載の液体噴出装置。
【請求項8】
前記マニホールド部材の前記第1の電気配線部材との接合端面の内周縁は、前記第1の電気配線部材の前記第1のヘッドチップとの接合端部よりも前記第2のヘッドチップ側に向けて突出していると共に、前記マニホールド部材の前記第1の電気配線部材との接合端面と前記第1の電気配線部材の前記第1のヘッドチップとの接合端部との間で形成される隙間に、接着剤が充填されていることを特徴とする請求項5、6又は7記載の液体噴出装置。
【請求項9】
前記第2のヘッドチップは2列のチャネル列を有し、
前記チャネルの凹設面が反対方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体噴出装置。
【請求項10】
前記第2のヘッドチップは2列のチャネル列を有し、
前記チャネルの凹設面が対面するように配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体噴出装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−6181(P2012−6181A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141976(P2010−141976)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】