説明

液体噴射システム、液体収容容器及び液体噴射装置

【課題】回路基板とコネクタ端子との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能な液体噴射システム、液体収容容器及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体を収容する液体収容容器本体91と、液体収容容器本体91を着脱自在に装着する容器ホルダーと、液体収容容器本体91の装着方向に沿う側面に、移動可能に設けられた回路基板100と、装着方向に平行な容器ホルダーの側面に取り付けられたコネクタ端子110と、容器ホルダーに設けられるとともに、容器ホルダーに液体収容容器本体91を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させる移動部材95と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射システム、液体収容容器及び液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射システムの一種としてインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という)がある。このプリンターは、キャリッジに搭載された液体噴射ヘッド(以下、「ヘッド」という)の複数のノズルからプラテン上に配置された記録媒体にインク(液体)を噴射することで印刷を行っている。
【0003】
このようなプリンターにあっては、複数のインクカートリッジが着脱可能となるようにカートリッジホルダーに支持され、ヘッドに対して各色のインクが供給されるように構成されている。また、各インクカートリッジに収容されたインクの種類、インクの色、インクの残量等の情報を、インクカートリッジ側に持たせ、プリンター本体との間で前記情報の授受を行うことにより、印刷動作の管理がなされている。
【0004】
このために、インクカートリッジ側には、前記情報が格納可能な半導体記憶手段を搭載した回路基板が備えられる。そして、インクカートリッジをカートリッジホルダーに装着した場合において、各インクカートリッジとプリンター本体が電気的に接続され、前記情報の授受がなされるように構成されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、インクカートリッジ側に搭載された回路基板の取付部において、インクカートリッジをカートリッジホルダーに装着する方向の下流側に回路基板の表面方向に突出する突起部が形成されている。これにより、回路基板の端部がカートリッジホルダー内に配置されたコネクタ端子と直接的に接触することを回避し、回路基板の端部が欠ける等して損傷してしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−152297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、回路基板とコネクタ端子とが摺接しながら接続される際に、摺接経路に塵埃があった場合、この塵埃がコネクタ端子に付着して回路基板とコネクタ端子との間に挟みこまれるおそれがある。すると、回路基板とコネクタ端子との接触が不十分となり、回路基板に搭載された半導体記憶手段とのデータの授受が不能となる。これにより、プリンターの正常な印刷動作を不可能にするなどの問題が発生してしまう。
また、回路基板の取付部において突起部が形成されている場合、回路基板がコネクタ端子と摺接接続されると、突起部の表面がコネクタ端子による摩擦を受ける。このため、例えば突起部が樹脂材料により形成されていると、素材が掻き取られる作用を受け、樹脂素材が粉状の塵埃となってコネクタ端子に付着し、上述した問題が発生してしまう。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、回路基板とコネクタ端子との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能な液体噴射システム、液体収容容器及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の液体噴射システムは、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を収容する液体収容容器本体と、前記液体収容容器本体を着脱自在に装着する容器ホルダーと、前記液体収容容器本体の装着方向に沿う側面に、移動可能に設けられた回路基板と、前記装着方向に平行な前記容器ホルダーの側面に取り付けられたコネクタ端子と、前記容器ホルダーに設けられるとともに、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記回路基板を前記コネクタ端子から離間した位置から前記コネクタ端子に接触する位置まで移動させる移動部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この液体噴射システムによれば、容器ホルダーに液体収容容器本体を装着する際に、移動部材の装着方向への移動により回路基板をコネクタ端子から離間した位置からコネクタ端子に接触する位置まで移動させるので、回路基板がコネクタ端子と接触するまでの間、回路基板には何も接触しないようにすることができる。このため、従来のように摺接経路に塵埃がある場合でも、この塵埃がコネクタ端子に付着して回路基板とコネクタ端子との間に挟みこまれることがない。また、回路基板の取付部に突起部が形成されている場合でも、突起部の表面がコネクタ端子による摩擦を受け、突起部の素材が掻き取られる作用を受けることもない。したがって、回路基板とコネクタ端子との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能な液体噴射システムが提供できる。
【0011】
また、上記液体噴射システムにおいて、前記移動部材は、前記液体収容容器本体の位置を規制する位置規制ピンであってもよい。
【0012】
この液体噴射システムによれば、移動部材は、回路基板をコネクタ端子から離間した位置からコネクタ端子に接触する位置まで移動させるとともに、液体収容容器本体の位置を規制する位置規制ピンとして機能する。つまり、位置規制ピンに移動部材としての機能を付与することにより、容器ホルダーに液体収容容器本体を装着する際に、回路基板をコネクタ端子から離間した位置からコネクタ端子に接触する位置まで移動させることができる。このため、位置規制ピンとは別個に移動部材を設ける必要がない。したがって、装置の大型化を抑制することができる。
【0013】
また、上記液体噴射システムにおいて、前記位置規制ピンは、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に前記回路基板に接触する凸部を備え、前記液体収容容器本体は、前記位置規制ピンが差し込まれる位置規制孔を備え、前記位置規制孔は前記凸部に対応する凹部を備えていてもよい。
【0014】
この液体噴射システムによれば、位置規制ピンに凸部を設けることにより、容器ホルダーに液体収容容器本体を装着する際に、回路基板をコネクタ端子から離間した位置からコネクタ端子に接触する位置まで移動させることができる。また、液体収容容器本体側の位置規制孔は凸部に対応する凹部を備えるので、移動部材は凹部に沿って移動可能となる。したがって、シンプルで簡易な構成で位置規制ピンを移動部材として作用させることができる。
【0015】
また、上記液体噴射システムにおいて、前記回路基板は、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記コネクタ端子と接触する面が前記装着方向に対して傾いた状態から前記装着方向に平行な状態に回転動作してもよい。
【0016】
この液体噴射システムによれば、回路基板の回動機構を液体収容容器本体内部に収容することが容易になる。具体的には、回路基板が回転動作しない場合(例えば、スライド移動させる構造)に比べて回路基板の移動スペースは小さくて済むため、スライド機構を設けるためのスペースが必要となることがない。したがって、装置の大型化を抑制することができる。
【0017】
本発明の液体収容容器は、液体を収容する液体収容容器本体と、前記液体収容容器本体の側面に設けられた回路基板と、を有し、前記回路基板は、前記液体収容容器本体を着脱自在に装着する容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記液体収容容器本体から離間する方向に移動可能になっていることを特徴とする。
【0018】
この液体収容容器によれば、容器ホルダーに液体収容容器本体を装着する際に、回路基板が液体収容容器本体から離間する方向に移動可能になっているので、回路基板が所定の位置に移動するまでの間(コネクタ端子と接触するまでの間)、回路基板には何も接触しないようにすることができる。したがって、回路基板とコネクタ端子との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能な液体収容容器が提供できる。
【0019】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上述した液体収容容器本体を着脱自在に装着する容器ホルダーと、前記容器ホルダーの側面に設けられたコネクタ端子と、前記容器ホルダーに設けられるとともに、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記回路基板を前記コネクタ端子から離間した位置から前記コネクタ端子に接触する位置まで移動させる移動部材と、を備えることを特徴とする。
【0020】
この液体噴射装置によれば、容器ホルダーに液体収容容器本体を装着する際に、移動部材の装着方向への移動により回路基板をコネクタ端子から離間した位置からコネクタ端子に接触する位置まで移動させるので、回路基板がコネクタ端子と接触するまでの間、回路基板には何も接触しないようにすることができる。したがって、回路基板とコネクタ端子との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能な液体噴射装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る液体噴射システムの正面の構成を示す概略斜視図である。
【図2】液体噴射システムの背面の構成を示す概略斜視図である。
【図3】液体噴射システムの内部構成を示す概略断面図である。
【図4】容器ホルダーの斜視図である。
【図5】容器ホルダーの正面図である。
【図6】液体収容容器の斜視図である。
【図7】液体収容容器の分解斜視図である。
【図8】第1実施形態に係る回路基板及びその取付部を示す概略断面図である。
【図9】第1実施形態に係るコネクタ端子及び移動部材を示す概略断面図である。
【図10】第1実施形態に係る回路基板の移動のようすを示す概略断面図である。
【図11】第2実施形態に係る回路基板及びその取付部を示す概略図である。
【図12】第2実施形態に係るコネクタ端子及び移動部材を示す概略平面図である。
【図13】第2実施形態に係る回路基板の移動のようすを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る液体噴射システム1の正面側の構成を示す概略斜視図である。図2は、液体噴射システム1の背面の構成を示す概略斜視図である。
【0024】
以下、図1に示したXYZ直交座標系に基づいて説明する。このXYZ直交座標系において、X方向及びY方向は液体噴射システム1が設置される面方向と平行となっており、Z方向は液体噴射システム1が設置される面方向と直交している。実際には、XY平面は水平面に平行な面に設定されており、Z方向は鉛直上方向に設定されている。ここでは、カートリッジホルダー(容器ホルダー)80にインクカートリッジ(液体収容容器)90が装着される装着方向がY方向(−Y方向)、液体噴射ヘッド21aの走査方向がX方向に設定されている。
【0025】
図1に示すように、液体噴射システム1は、例えばJIS規格のA1判やJIS規格のB1判といった比較的大型のサイズの記録用紙に記録するインクジェット方式のラージフォーマットプリンター(LFP)であり、プリンター本体(液体噴射装置)2と、脚部3とを備えた構成になっている。この液体噴射システム1は、プリンター本体2に対して脚部3が取り外し可能に固定されている。以下、液体噴射システムとしてインクジェット式プリンターを例に挙げて説明する。
【0026】
液体噴射システム1は、インク(液体)を噴射する液体噴射ヘッド21aと、前記インクを収容するインクカートリッジ90(インクカートリッジ本体91)(図6参照)と、インクカートリッジ90を着脱自在に装着するカートリッジホルダー80と、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90が装着される装着方向(以下、装着方向と呼ぶ)に沿うインクカートリッジ90の側面に移動可能に設けられた回路基板100(図6参照)と、装着方向に平行なカートリッジホルダー80の側面に取り付けられたコネクタ端子110と、カートリッジホルダー80に設けられるとともに、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させる移動部材95(図5参照)と、を備えて構成されている。
【0027】
なお、インクカートリッジ90は、インクカートリッジ本体91と、回路基板100と、を備えて構成され、液体噴射システム1に使用される。また、プリンター本体2は、液体噴射ヘッド21aと、カートリッジホルダー80と、コネクタ端子110と、移動部材95と、を備えて構成され、液体噴射システム1に使用される。つまり、プリンター本体2は、液体噴射システム1のうちインクカートリッジ90を除いた装置である。
【0028】
また、プリンター本体2は、給紙部10、記録部20及び排紙部30を備えている。給紙部10は、記録部20の上部に設けられており、背面側(+Y方向側)に突出するように設けられている。給紙部10には、ロール紙ホルダー11と、ロール紙カバー12とが設けられている。
【0029】
ロール紙ホルダー11は、1本のロール状の記録用紙(以下、ロール紙という)を設置する部分であり、給紙部10の内部に設けられている。このロール紙ホルダー11は、スピンドル部13及びスピンドル受部14,15を備えている。スピンドル部13は、ロール紙を保持する軸部材でありX方向に延在している。スピンドル部13にはロール紙押さえ部が設けられている。これにより、スピンドル部13に保持されたロール紙は両側から押さえられて位置がずれないようになっている。スピンドル受部14,15は、スピンドル部13を回転可能に支持する軸受部である。
【0030】
ロール紙カバー12は、跳ね上げ式の開閉可能なカバー部材であり、給紙部10の外側に取り付けられている。このロール紙カバー12は、全体が回動可能に支持されている。ロール紙カバー12の下部を押し上げることで開状態としたり、押し下げることにより閉状態としたりすることが可能になっている。図1においてはロール紙カバー12が開状態となっている。ロール紙カバー12は、閉状態でロール紙ホルダー11を覆うようになっている。
【0031】
記録部20は、キャリッジ21、キャリッジ移動機構22、フレキシブルフラットケーブル(FFC)23、カートリッジホルダー(容器ホルダー)80、インクチューブ25、蓋部材26、操作パネル27、キャッピング機構28、及び廃液回収部29を備えている。また、記録部20は、これらの他にも液体噴射システム1の各構成部品の動作を制御する制御部70(図3参照)、紙送りローラー(図示略)などを備えている。
【0032】
キャリッジ21は、液体噴射ヘッド21aを保持する保持部材であり、キャリッジ移動機構22によって主走査方向(X方向)に移動可能になっている。液体噴射ヘッド21aは、ブラックインクを吐出するブラックインク用液体噴射ヘッドと、ライトイエロー、イエロー、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ等の各色のインクを吐出する複数のカラーインク用液体噴射ヘッドとを有している。この液体噴射ヘッド21aは、圧力発生室と当該圧力発生室に繋がるノズル開口とを備えている。圧力発生室にはインクが貯留されるようになっている。そして、インクが貯留された状態で当該圧力発生室内を所定圧で加圧することにより、ノズル開口からロール紙に向けてインク滴が噴射されるようになっている。
【0033】
キャリッジ移動機構22は、レール22aとキャリッジベルト22bとを有している。キャリッジベルト22bにはキャリッジ21が連結されている。キャリッジベルト22bが主走査方向に移動することでキャリッジ21がレール22aに案内されて主走査方向に往復移動するようになっている。
【0034】
FFC23は、液体噴射ヘッド21aと制御部70とを電気的に接続するケーブルであり、一方の端部が液体噴射ヘッド21aのコネクタに接続されると共に他方の端部が制御部70のコネクタに接続された構成になっている。このFFC23を介して、制御部70からの記録信号が液体噴射ヘッド21aに伝達されるようになっている。
【0035】
カートリッジホルダー80は、内部にインクカートリッジ90(図6参照)を備えている。インクカートリッジ90は、上記液体噴射ヘッド21aから噴射される各色(ブラック、ライトイエロー、イエロー、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ等)のインクを収容するカートリッジである。
【0036】
インクチューブ25は、液体噴射ヘッド21aと上記インクカートリッジ90をつなぐチューブ部材であり、上記色毎に別個に設けられている。インクチューブ25には図示しないインク加圧供給機構が接続されている。これにより、当該インク加圧供給機構によって加圧された各色のインクが各インクカートリッジ90から液体噴射ヘッド21aへと送出されるようになっている。
【0037】
蓋部材26は、前蓋26aと、上蓋26bとを有している。前蓋26aは記録部20の正面に設けられており、キャリッジ21、キャリッジ移動機構22、インクチューブ25などを覆うようになっている。この前蓋26aを押し下げることで開状態としたり、押し上げることで閉状態としたりすることが可能に構成されている。図1では、前蓋26aは開状態になっている。上蓋26bは記録部20の上部に設けられており、不図示の給紙ローラーなどを覆うようになっている。この上蓋26bを押し上げることで開状態としたり、押し下げることで閉状態としたりすることが可能に構成されている。図1では、上蓋26bは閉状態になっている。
【0038】
操作パネル27は、液体噴射システム1を操作するための操作部であり、記録部20の上蓋26bの図中右側(+X方向側)に設けられている。この操作パネル27は、例えば液晶装着などからなる表示画面27aと、各種ボタン(図示略)とが設置されており、表示画面を確認しながらボタン操作できるようになっている。操作パネル27の表示画面27aには、例えば印刷動作に関する情報や、インクの交換に関する情報、廃液回収部29に供給されているインクの量に関する情報などが表示されるようになっている。
【0039】
キャッピング機構28は、図2に示すように、液体噴射ヘッド21aのノズル開口近傍のインク粘度が上昇するのを防止するためのメンテナンス機構である。キャッピング機構28には吸引機構が取り付けられており、ノズル開口に付着したインクを吸引できるようになっている。
【0040】
廃液回収部29は、例えばキャッピング機構28によって吸引されたインクや、液体噴射ヘッド21aに初期充填する際に使用されるインク、液体噴射ヘッド21aに至るインク供給系を洗浄する際に使用される洗浄液などの廃液が供給される部分である。この廃液回収部29は、図2に示すようにプリンター本体2の背面側(+Y方向側)、キャッピング機構28の下方に設けられている。この廃液回収部29には、廃液ユニット60が着脱可能に装着されている。
【0041】
排紙部30は、記録部20の下側に設けられており、排紙ローラー(図示略)と、排紙ガイド31bとを有している。排紙ローラーはロール紙に当接可能に設けられており、当該排紙ローラーを介してロール紙が副走査方向(主走査方向の直交方向)へ送出されるようになっている。排紙ガイド31bは記録部20の正面側(−Y方向側)に突出するように設けられており、当該排紙ガイド31bを介してロール紙が副走査方向へ導かれるようになっている。
【0042】
脚部3は、移動用のコロ41を有する2本の支持柱42と、これらの支持柱42の間に掛け渡されている補強棒43とを備えている。支持柱42の上部には記録部20がネジ止め固定されている。支持柱42の間には、排紙部30から排出されてくるロール紙を受ける紙受け装着が配置されるように所定のスペースが設けられている。
【0043】
図3は、液体噴射システム1の内部構成を示す概略断面図である。
図3に示すように、給紙部10から記録部20を経て排紙部30へ向かう用紙搬送経路50は、液体噴射システム1の上部後面側(+YZ方向側)から下部前面側(−YZ方向)にかけて傾斜して設けられている。この用紙搬送経路50は、給紙部10から記録部20にかけて配設された平坦な給紙ガイド51、対向配置された接触・離間可能な紙送りローラー52及び従動ローラー53、キャリッジ21に搭載された液体噴射ヘッド21aと対向配置された平坦な用紙搬送案内部であるプラテン54、記録部20から排紙部30にかけて設けられた平坦な紙吸引部55、排紙部30に設けられた排紙ガイド31bを備えている。
【0044】
給紙ガイド51、排紙ガイド31bの各表面は、用紙搬送面として作用する。紙吸引部55の表面は、用紙搬送面及び用紙吸引面として作用する。この紙吸引部55は、主走査方向に複数並設され、副走査方向に3列配設された吸引口(媒体吸引部)55a、55b、55cを備えている。記録部20の内部に設けられたファン57により外気が各吸引口55a、55b、55cから吸引されることにより、紙吸引部55上を搬送されるロール紙を吸着するようになっている。
【0045】
プラテン54の表面は、用紙搬送案内面として作用すると共に用紙吸引面としても作用する。このプラテン54は、主走査方向に交互に複数並設された吸引口54aを備えており、記録部20の内部に配設されたファン57により外気が各吸引口54aから吸引されることにより、プラテン54上を搬送されるロール紙を吸着するようになっている。従って、記録時において特にロール紙の幅が広くてもロール紙はプラテン54上で全幅にわたって確実に吸引されて略平坦になる。
【0046】
プラテン54と吸引部55との間には隙間56が設けられており、ファン57によって外気が隙間56から吸引され、隙間56上を搬送されるロール紙を吸着するようになっている。このプラテン54は、ロール紙の幅方向のサイズに対応させて分割、例えば4インチの幅で7つに分割されている。各分割部には例えばスポンジや不織布等のインク吸収材が設けられている。
【0047】
図4は、液体収容容器を装着するカートリッジホルダー80の斜視図である。図5は、図4に示したカートリッジホルダー80の正面図である。なお、図5(a)はカートリッジホルダー80の正面図である。また、図5(b)は移動部材95の拡大正面図である。
【0048】
図4及び図5に示すように、カートリッジホルダー80は、L字状のホルダー本体81と、U字状の枠体82とを備えて構成されている。枠体82は、一対の支持側壁82a,82aと、支持側壁82a,82aの上端縁を連結する天壁82bと、を備えている。
【0049】
ホルダー本体81は、平面視矩形状の基板81aと、基板81aの後方の上面に取り付けられた壁体81bと、を備えている。基板81aは、インクカートリッジ90がカートリッジホルダー80に装着された場合に、各インクカートリッジ90を並列して載置するための支持台である。基板81a上には、複数のガイドレール83がY方向と平行に延在して列設されている。ガイドレール83は、インクカートリッジ90をカートリッジホルダー80に着脱する際に、インクカートリッジ90を案内するものである。カートリッジホルダー80の内部は、ガイドレール83によって、5つのカートリッジスロット89A、89B、89C、89D、89Eに区画されている。カートリッジスロット89A〜89Eは、それぞれ各色のインクカートリッジ90を個別に収容する容器装着部として機能する。
【0050】
壁体81bは+Y方向側に開口しており、その上端には矩形状の天板81cが取り付けられている。また、壁体81bには、スライダー部材84が設けられている。スライダー部材84は、図示しない付勢手段によって、前方(+Y方向)、すなわちインクカートリッジ90の装着方向(−Y方向)とは反対の方向に付勢されている。スライダー部材84の奥端面(XZ面)84aは、カートリッジスロット89A〜89Eの装着方向下流側(−Y方向側)の端部が当接する面である。スライダー部材84は、インクカートリッジ90がカートリッジスロット89A〜89Eに装着されていない時は、付勢手段の力によって、前方側(+Y方向側)に位置している。
【0051】
インクカートリッジ90がカートリッジスロット89A〜89Eに挿入されると、スライダー部材84は、インクカートリッジ90の先端面(装着方向下流側の面)に押されながら、後方(−Y方向)に移動する。インクカートリッジ90がカートリッジスロット89A〜89Eに完全に装着されると、スライダー部材84は、所定の位置で停止する。スライダー部材84は、インクカートリッジ90をカートリッジスロット89A〜89Eに装着されている時も、付勢手段の力によって、装着されたインクカートリッジ90に対して、その装着方向とは反対の方向への付勢力を常時付与している。この付勢力は、インクカートリッジ90をカートリッジスロット89A〜89Eから取り外すときに、インクカートリッジ90を前方へ押し出すように作用する。
【0052】
各カートリッジスロット89A〜89Eの壁体81bには、移動部材95、位置規制ピン85、エア連絡口86、インク供給ピン87、識別部材88a〜88eが設けられている。また、各カートリッジスロット89A〜89Eの壁体81bには、インクカートリッジ90に移動可能に設けられた回路基板100(図6参照)と電気的に接続されるコネクタ端子110が固定されている。
【0053】
移動部材95及び位置規制ピン85は、各カートリッジスロット89A〜89Eの上下に設けられている。移動部材95は、本体部95aと、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に回路基板100に接触する凸部95bと、を備えている。なお、正面視において、本体部95aは円形となっており、凸部95bは矩形となっている。
【0054】
移動部材95及び位置規制ピン85は、インクカートリッジ90の位置を規制するためのものである。つまり、移動部材95は、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させるとともに、インクカートリッジ90の位置を規制する位置規制ピンとして機能する。
【0055】
エア連絡口86は、各カートリッジスロット89A〜89Eの下側の位置規制ピン85に近接して設けられている。エア連絡口86は、それら各インクカートリッジ90の位置規制孔98,99に挿入される上下一対の移動部材95及び位置規制ピン85、インクカートリッジ90に空気を供給するためのものである。
【0056】
インク供給ピン87は、各カートリッジスロット89A〜89Eの上側の移動部材95に近接して設けられている。インク供給ピン87は、インクカートリッジ90からのインクを、インクチューブ25(図1参照)を介して液体噴射ヘッド21a(図1参照)に供給するためのものである。
【0057】
識別部材88a〜88eは、カートリッジスロット89A〜89Eのそれぞれに、上側の移動部材95とエア連絡口86とに挟まれた位置に設けられている。識別部材88a〜88eは、インクカートリッジ90の誤装着を防止するためのものである。
【0058】
これら識別部材88a〜88eの先端には、凹凸嵌合部が形成されている。一方、インクカートリッジ90の挿入方向先端面には、各識別部材88a〜88eの凹凸嵌合部の形状に対応する識別部94(図6参照)が形成されている。識別部94の形状は、詳細な図示を省略しているが、インクカートリッジ90の種類によって異なっている。
【0059】
つまり、各識別部材88a〜88eの凹凸嵌合部は、それぞれ一種類のインクカートリッジ90の識別部94とのみ嵌合することができ、他の種類のインクカートリッジ90の識別部94とは嵌合できない形状となっている。このように、本実施形態の液体噴射システム1は、インクカートリッジ90の識別部94と各識別部材88a〜88eの凹凸嵌合部との組み合わせによって、インクカートリッジ90の誤装着が生じないように構成されている。
【0060】
コネクタ端子110は、インクカートリッジ90がカートリッジスロット89A〜89Eに装着された時に、インクカートリッジ90に設けられた回路基板100と接触して導通接続するようになっている。なお、回路基板100及びコネクタ端子110の詳細については後述する。
【0061】
図6は、インクカートリッジ90の斜視図である。図7は、図6に示したインクカートリッジ90の分解斜視図である。
図6及び図7に示すように、インクカートリッジ90は、扁平な略直方体のインクカートリッジ本体(液体収容容器本体)91と、回路基板100と、を備えている。
【0062】
インクカートリッジ本体91の内部には、上部を開放した略箱形の袋体収容部91aと、この袋体収容部91aの前面側(−Y方向側)に位置する検出ユニット収容部91bが形成されている。袋体収容部91aには、液体収容室としてのインクパック92が収容される。また、検出ユニット収容部91bには、インク供給口93a(液体供給口)が設けられた液体残量検出ユニット93が収容される。
【0063】
液体残量検出ユニット93は、インクカートリッジ本体91に対して着脱可能となっている。この、液体残量検出ユニット93には、図示しない残量検出センサー(圧電素子を用いたセンサー)が設けられている。残量検出センサーは、インクカートリッジ90内のインクの残量を検出するためのセンサーである。
【0064】
また、インクカートリッジ本体91には、袋体収容部91a及び検出ユニット収容部91bを覆ってカバー96が装着される。なお、インクカートリッジ90は、縦置きでカートリッジスロット89A〜89Eに装着される。
【0065】
本実施形態において、インクカートリッジ90は5種類ある。5種類のインクカートリッジ90のインクパック92内には、それぞれ異なる5色のインクが貯留されている。これら5種類のインクカートリッジ90は、インクパック92の内部に貯留されているインクの種類と上述した識別部94の形状が異なるだけであり、他の構成は一致している。
【0066】
インクカートリッジ90の先端面(−Y方向側の面)には、インク供給口93aと、エア流入口97とが設けられている。インク供給口93aはインクパック92のインク吐出口92aと接続されている。
【0067】
ここで、インクパック92から液体噴射ヘッド21aへのインクの供給について説明する。インクカートリッジ90がカートリッジスロット89A〜89Eに装着されると、インク供給口93aに、上述したインク供給ピン87が挿入される。インク供給ピン87は、インクチューブ25を介して液体噴射ヘッド21aに接続されている。
【0068】
また、インクカートリッジ90がカートリッジスロット89A〜89Eに装着されると、エア流入口97が、上述したエア連絡口86に挿入される。エア連絡口86は、不図示の加圧空気供給路を介して加圧ポンプに接続されている。加圧ポンプが、加圧空気供給路、エア連絡口86、エア流入口97を介して、袋体収容部91aに加圧空気を供給することで、インクパック92が加圧される。インクパック92が加圧されることにより、インクパック92のインク吐出口92aから流出するインクが、インク供給口93aを介して液体噴射ヘッド21aへと供給される。
【0069】
また、インクカートリッジ90の先端面(−Y方向側の面)には、互いに離間して一対の位置規制孔98,99が設けられている。
【0070】
ここで、位置規制孔98,99及び上述した一対の移動部材95、位置規制ピン85による位置規制について説明する。インクカートリッジ90を各カートリッジスロット89A〜89Eに挿入すると、移動部材95及び位置規制ピン85の先端がそれぞれ位置規制孔98,99に嵌入される。その後、更にインクカートリッジ90をカートリッジスロット89A〜89Eの奥側へ挿入していくと、インクカートリッジ90は、移動部材95及び位置規制ピン85を基準に移動する。
【0071】
インクカートリッジ90が各カートリッジスロット89A〜89Eに完全に装着されると、位置規制孔98,99が、一対の移動部材95、位置規制ピン85と嵌合することにより、インクカートリッジ90の先端面に沿う方向の位置が決められて、インクカートリッジ90の移動が規制される。
【0072】
一方の位置規制孔98は、上側の移動部材95の軸方向と垂直な断面形状にほぼ対応する形状(移動部材95の凸部95bに対応する凹部を備える形状)に設定されている。他方の位置規制孔99は、下側の位置規制ピン85の軸方向と垂直な断面形状にほぼ対応する形状(インクカートリッジ本体91の高さ方向(Z方向)に細長い長穴)に設定されている。このように、他方の位置規制孔99を長穴にすることで、位置決め精度を保つ一方で寸法公差等の許容が容易になる。
【0073】
回路基板100は、装着方向(−Y方向)に沿うインクカートリッジ90(インクカートリッジ本体91)の側面(+Z方向側の面)に回動可能に設けられている。言い換えると、回路基板100は、装着方向に平行なインクカートリッジ90の側面に回動可能に設けられている。ここで、装着方向に「平行」とは完全平行及び略平行のいずれをも含むものとする。また、回路基板100の回動機構は、インクカートリッジ本体91内部に収容されている。なお、回路基板100の回動機構の詳細については後述する。
【0074】
図8は、回路基板100及びその取付部を示す概略断面図である。なお、本図は装着方向下流側(−Y方向側)に平行なインクカートリッジ90の側端部(+Z方向側の端部)を示している。
【0075】
図8に示すように、回路基板100は、回路素子部101と、回路基板本体104と、支持部106と、支持軸107と、ガイド部108と、を備えている。回路素子部101は、回路基板本体104の側端部(+Z方向側の端部)に形成された凹部101b内に取り付けられている。これにより、回路素子部101の位置決めがなされている。
【0076】
回路素子部101の表面(+Z方向側の面)には、後述するコネクタ端子110(図9参照)と電気的に接続される電極パッド101aが形成されている。この電極パッド101aは、上述した残量検出センサーと電気的に接続されている。また、この電極パッド101aには回路パターン(図示略)が導通して形成されている。この回路パターンは、例えばソルダーレジスト膜(図示略)によって被覆されている。また、回路素子部101の裏面(−Z方向側の面)には、例えばEEPROM等のメモリ素子102が搭載されている。このメモリ素子102は、例えばインク残量やカートリッジの使用履歴等の情報を記録するためのものである。そして、メモリ素子102は、モールド樹脂103により回路素子部101の裏面に固着されている。
【0077】
回路基板100は、装着方向(−Y方向)に平行なインクカートリッジ90(インクカートリッジ本体91)の側面(+Z方向側の面)に移動可能に設けられている。この回路基板100は、支持部106を支持する支持軸107を中心軸として回動するようになっている。また、支持軸107はX方向に延在する棒状の部材であり、支持部106の中心部に位置している。また、支持軸107の両端は、インクカートリッジ本体91に固定されている。回路基板100は、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、コネクタ端子110と接触する面が装着方向(−Y方向)に対して傾いた状態から装着方向に平行な状態に回転動作するようになっている。なお、図8においては、便宜上、回路基板100が装着方向に平行な状態を示している。
【0078】
ガイド部108は、回路基板本体104の側端部(−Z方向側の端部)に設けられている。また、ガイド部108の装着方向下流側の端部は傾斜したテーパ状になっている。回路基板100は、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、ガイド部108に移動部材95が接触して移動することにより回転動作することになる。
【0079】
また、回路基板本体104の側端部(+Z方向側の端部)の装着方向下流側には、回路素子部101に近接して、回路基板100の表面側(+Z方向側)に突出する突起部105が形成されている。この突起部105は、回路素子部101の端部(−Y方向側の端部)が後述するコネクタ端子110(図9参照)に接触することを回避するために機能する。具体的には、回路基板本体104がガラスエポキシ等の材料により形成されている場合、コネクタ端子110が直接的に接触すると、回路素子部101の端部が欠ける等して損傷してしまう問題が生じる。このため、回路素子部101の端部がコネクタ端子110に接触しないような構成とされている。
【0080】
ところで、回路基板とコネクタ端子とが摺接しながら接続される際、摺接経路に塵埃があると、この塵埃がコネクタ端子に付着して回路基板とコネクタ端子との間に挟みこまれるおそれがある。すると、回路基板とコネクタ端子との接触が不十分となり、回路基板に搭載されたメモリ素子(半導体記憶手段)とのデータの授受が不能となる。これにより、プリンターの正常な印刷動作を不可能にするなどの問題が発生するおそれがあった。また、回路基板の取付部において突起部が形成されている場合、回路基板がコネクタ端子と摺接接続されると、突起部の表面がコネクタ端子による摩擦を受ける。このため、例えば突起部が樹脂材料により形成されていると、素材が掻き取られる作用を受け、樹脂素材が粉状の塵埃となってコネクタ端子に付着し、上述した問題が発生するおそれがあった。
【0081】
そこで、本発明に係る液体噴射システム1では、装着方向に平行なインクカートリッジ本体91の側面に移動可能に設けられた回路基板100と、装着方向に平行なカートリッジホルダー80に取り付けられたコネクタ端子110と、カートリッジホルダー80に設けられるとともに、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ本体91を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させる移動部材95と、を備えることによって、回路基板100とコネクタ端子110との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することを可能にしている。以下、図9を用いてコネクタ端子110及び移動部材95の詳細について説明する。
【0082】
図9は、コネクタ端子110及び移動部材95を示す概略断面図である。なお、本図は装着方向下流側(−Y方向側)に平行なカートリッジホルダー80の側端部(−Z方向側の端部)を示している。
【0083】
図9に示すように、コネクタ端子110は、装着方向に平行なカートリッジホルダー80の側面に取り付けられている。具体的には、コネクタ端子110は、壁体81の−Y方向側の面にその基端が支持され、弾性的に揺動可能に取り付けられている。なお、コネクタ端子110は、例えば銅などの弾性金属材料によって形成されている。
【0084】
また、コネクタ端子110の表面(−Z方向側の面)には、回路基板100側の電極パッド101aと電気的に接続される接点部110aが形成されている。この接点部110aは、電極パッド101aに対応する位置に設けられている。なお、コネクタ端子110は不図示の配線を介してプリンター本体2側の制御回路に電気的に接続されている。
【0085】
移動部材95は、壁体81の−Y方向側の面にその基端が支持されている。また、移動部材95は、コネクタ端子110と対向する位置に所定の距離だけ離間して配置されている。また、移動部材95の凸部95bの装着方向上流側の端部は傾斜したテーパ状になっている。移動部材95は、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させるものである。
【0086】
このような構成により、インクカートリッジ90がカートリッジホルダー80に装着されると、回路基板100側の電極パッド101aがコネクタ端子110側の接点部110aに接触する。これにより、回路基板100を介して、メモリ素子102や残量検出センサーがプリンター本体2側の制御回路に電気的に接続され、メモリ素子102や残量検出センサーの動作をプリンター本体2側から制御することが可能となっている。
【0087】
図10は、第1実施形態における回路基板100の移動のようすを示す概略断面図である。なお、図10(a)はカートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する前の状態を示す図である。また、図10(b)はカートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着中のときの状態を示す図である。また、図10(c)はカートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を完全に装着した状態を示す図である。なお、図10においては、便宜上、移動部材95が差し込まれる位置規制孔98の図示を省略している。
【0088】
ここでは、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触するまで移動させるときの回路基板100の移動のようすについて説明する。
【0089】
先ず、図10(a)に示すように、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する前、つまり、移動部材95が回路基板100に接触する前の状態を考える。この場合においては、回路基板100が装着方向に対して所定の角度だけ傾いた状態となっている。具体的には、回路基板100は、その端部(−YZ方向側の端部)がインクカートリッジ本体91の内部に入り込んだ状態で、例えばストッパー等の保持部材(図示略)によりその姿勢が保持されている。なお、移動部材95は、回路基板100の支持軸107よりも下側(−Z方向側)に位置している。また、突起部105はコネクタ端子110側の接点部110aから所定の距離だけ離間している。
【0090】
次に、図10(b)に示すように、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着中のとき、つまり、移動部材95が回路基板100に接触して回路基板100を移動させているときの状態を考える。移動部材95は、装着前の状態において回路基板100の支持軸107よりも下側(−Z方向側)に位置するため、移動部材95が位置規制孔98(図7参照)に差し込まれ、その後、回路基板100の下側のガイド部108に接触して装着方向に移動すると、回路基板100は支持軸107を中心として右回りに回動する。つまり、回路基板100は装着方向に対して所定の角度だけ傾いた状態からその角度勾配が小さくなるように回動する。
【0091】
なお、位置規制孔98には移動部材95の凸部95bに対応する凹部備えるので、移動部材95は凹部に沿って移動可能となっている。また、ガイド部108の装着方向下流側の端部、移動部材95の凸部95bの装着方向上流側の端部は、いずれも傾斜したテーパ状になっているため、回路基板100はスムーズに回動するようになっている。
【0092】
また、突起部105は、装着前の状態において接点部110aから所定の距離だけ離間しているため、移動部材95の移動の過程で突起部105には何も接触しないようになっている。また、接点部110aについても、電極パッド101aに接触するまでの間は何も接触しないようになっている。
【0093】
このため、従来のように摺接経路に塵埃がある場合でも、この塵埃がコネクタ端子に付着して回路基板とコネクタ端子との間に挟みこまれることがない。また、回路基板の取付部において突起部が形成されている場合でも、突起部の表面がコネクタ端子による摩擦を受け、突起部の素材が掻き取られる作用を受けることもない。
【0094】
そして、図10(c)に示すように、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を完全に装着した状態を考える。この場合、回路基板100は装着方向に平行な状態になっている。つまり、回路基板100側の電極パッド101aがコネクタ端子110側の接点部110aに接触する。これにより、回路基板100を介して、メモリ素子102や残量検出センサーがプリンター本体2側の制御回路に電気的に接続され、メモリ素子102や残量検出センサーの動作をプリンター本体2側から制御することが可能となる。
【0095】
本実施形態に係る液体噴射システム1によれば、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、移動部材95の装着方向への移動により回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させるので、回路基板100がコネクタ端子110と接触するまでの間、回路基板100には何も接触しないようにすることができる。このため、従来のように摺接経路に塵埃がある場合でも、この塵埃がコネクタ端子に付着して回路基板とコネクタ端子との間に挟みこまれることがない。また、回路基板の取付部に突起部が形成されている場合でも、突起部の表面がコネクタ端子による摩擦を受け、突起部の素材が掻き取られる作用を受けることもない。したがって、回路基板100とコネクタ端子110との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能な液体噴射システム1が提供できる。
【0096】
また、この構成によれば、移動部材95は、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させるとともに、インクカートリッジ90の位置を規制する位置規制ピンとして機能する。つまり、移動部材95が位置規制ピンであるため、位置規制ピンに移動部材としての機能を付与することにより、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させることができる。このため、位置規制ピンとは別個に移動部材95を設ける必要がない。したがって、装置の大型化を抑制することができる。
【0097】
また、この構成によれば、移動部材95としての位置規制ピンに凸部95bを設けることにより、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させることができる。また、インクカートリッジ90側の位置規制孔98は凸部95bに対応する凹部を備えるので、移動部材95は凹部に沿って移動可能となる。したがって、シンプルで簡易な構成で位置規制ピンを移動部材95として作用させることができる。
【0098】
また、この構成によれば、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100が装着方向に対して所定の角度だけ傾いた状態から装着方向に平行な状態に回転動作するので、回路基板100の回動機構をインクカートリッジ本体91内部に収容することが容易になる。具体的には、回路基板100が回転動作しない場合(例えば、スライド移動させる構造)に比べて回路基板100の移動スペースは小さくて済むため、スライド機構を設けるためのスペースが必要となることがない。したがって、装置の大型化を抑制することができる。
【0099】
本実施形態に係るインクカートリッジ90によれば、上述した液体噴射システム1に使用されるので、回路基板100がコネクタ端子110と接触するまでの間、回路基板100には何も接触しないようにすることができる。したがって、回路基板100とコネクタ端子110との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能なインクカートリッジ90が提供できる。
【0100】
本実施形態に係るプリンター本体2によれば、上述した液体噴射システム1に使用されるので、回路基板100がコネクタ端子110と接触するまでの間、コネクタ端子110には何も接触しないようにすることができる。したがって、回路基板100とコネクタ端子110との導通不良を解消し、正常な印字動作を確保することが可能なプリンター本体2が提供できる。
【0101】
なお、本実施形態では、移動部材95が回路基板100のガイド部108に接触して回路基板100を移動させているが、これに限らない。例えば、移動部材95がガイド部108に接触することなく回路基板100を移動させてもよい。具体的には、移動部材95及びガイド部108として磁石等の磁性体を用いることにより、移動部材95と回路基板100が互いに離れた状態であっても、移動部材95とガイド部108の間の磁気力の作用により、回路基板100を移動させることができる。
【0102】
このとき、移動部材95とガイド部108の間には互いにひきあう力が作用(例えば互いに異極の磁石を使用)していてもよいし、互いにしりぞけあう力が作用(例えば互いに同極の磁石を使用)していてもよい。移動部材95とガイド部108の間に互いにひきあう力が作用する場合、コネクタ端子110が配置された側(回路基板100の支持軸107よりも上側(+Z方向側))に磁性体を配置する。また、移動部材95とガイド部108の間に互いにしりぞけあう力が作用する場合、コネクタ端子110が配置された側とは反対側(回路基板100の支持軸107よりも下側(−Z方向側))に磁性体を配置する。このようにして、回路基板100がコネクタ端子110に近づくように磁気力を作用させることが必要である。
【0103】
また、本実施形態では、回路基板100は、インクカートリッジ本体91の+Z方向側の端部に取り付けられているが、これに限らない。例えば、回路基板100は、インクカートリッジ本体91の−Z方向側の端部に取り付けられていてもよいし、インクカートリッジ本体91の+X方向側の端部もしくは−X方向側の端部に取り付けられていてもよい。すなわち、回路基板100は、装着方向に平行なインクカートリッジ本体91の側面に移動可能に設けられていればよい。
【0104】
また、本実施形態では、コネクタ端子110は、壁体81bの−Y方向側の面にその基端が支持されているが、これに限らない。例えば、コネクタ端子110は、天板81cの−Z方向側の面にその裏面(接点部110aが形成された側と反対側の面)が支持されていてもよい。すなわち、コネクタ端子110は、回路基板100が配置された位置に対応する位置であって、装着方向に平行なカートリッジホルダー80の側面に固定されていればよい。
【0105】
また、本実施形態では、移動部材95の形状は、正面視において、本体部95aが円形であり、凸部95bが矩形となっているが、これに限らない。例えば、移動部材95(本体部95a、凸部95b)の形状は、円形、楕円形、矩形、星形などの種々の形状となっていてもよいし、これらの形状を組み合わせた形状となっていてもよい。
【0106】
また、本実施形態では、回路基板100が支持軸107を中心として回動する場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。以下、本実施形態とは異なる回路基板の移動機構について図11及び図12を用いて説明する。
【0107】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る回路基板及びその取付部を示す概略図である。図12は、第2実施形態に係るコネクタ端子及び移動部材を示す概略平面図である。なお、図11は、図8に対応する、装着方向下流側(−Y方向側)に平行なインクカートリッジ90の側端部(+Z方向側の端部)を示している。
また、図12は、図9に対応する、装着方向下流側(−Y方向側)に平行なカートリッジホルダー80の側端部(−Z方向側の端部)を示している。本実施形態においては、回路基板100が支持軸107を基軸としてスライドする点で第1実施形態に係る回動構造と異なる。図11及び図12において、図8及び図9と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0108】
図11に示すように、回路基板100は、装着方向(−Y方向)に平行なインクカートリッジ90(インクカートリッジ本体91)の側面(+Z方向側の面)に移動可能に設けられている。インクカートリッジ本体91には、支持軸107を摺動可能に保持するガイド孔109が形成されている。ガイド孔109はZ方向に延在する長孔である。回路基板100は、支持部106を支持する支持軸107を基軸としてガイド孔109に沿ってスライドするようになっている。また、支持軸107の両端は、インクカートリッジ本体91のガイド孔109に保持されている。回路基板100は、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、コネクタ端子110と接触する面が−Z方向に位置する状態から+Z方向に位置する状態に摺動動作するようになっている。なお、図11においては、便宜上、回路基板100が−Z方向に位置する状態を示している。
【0109】
図12に示すように、移動部材195は、壁体81の−Y方向側の面にその基端が支持されている。また、移動部材195は、コネクタ端子110と対向する位置に所定の距離だけ離間して配置されている。移動部材195は、本体部195aと、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に回路基板100に接触する凸部195bと、を備えている。また、移動部材195の凸部195bの装着方向上流側の端部は傾斜したテーパ状になっている。この凸部195bの高さ(本体部195aの上面から凸部195bの頂点までの距離)は、インクカートリッジ本体91のガイド孔109の長さとほぼ同じになっている。移動部材195は、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触する位置まで移動させるものである。
【0110】
図13は、第2実施形態における回路基板100の移動のようすを示す概略断面図である。なお、図13(a)は、図10(a)に対応する、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する前の状態を示す図である。また、図13(b)は、図10(b)に対応する、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着中のときの状態を示す図である。また、図13(c)は、図10(c)に対応する、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を完全に装着した状態を示す図である。なお、図13においては、便宜上、移動部材195が差し込まれる位置規制孔の図示を省略している。
【0111】
ここでは、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する際に、回路基板100をコネクタ端子110から離間した位置からコネクタ端子110に接触するまで移動させるときの回路基板100の移動のようすについて説明する。
【0112】
先ず、図13(a)に示すように、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着する前、つまり、移動部材195が回路基板100に接触する前の状態を考える。この場合においては、回路基板100が−Z方向に対して所定の距離だけ下がった状態となっている。具体的には、回路基板100は、その端部(−Z方向側の端部)がインクカートリッジ本体91の内部に入り込んだ状態で、例えばストッパー等の保持部材(図示略)によりその姿勢が保持されている。なお、移動部材195の凸部195bのテーパ部は、回路基板100側のガイド部108のテーパ部と対向する位置にある。また、突起部105はコネクタ端子110側の接点部110aから所定の距離だけ離間している。
【0113】
次に、図13(b)に示すように、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を装着中のとき、つまり、移動部材195が回路基板100に接触して回路基板100を移動させているときの状態を考える。移動部材195の凸部195bのテーパ部は、装着前の状態において回路基板100のガイド部108のテーパ部と対向する位置にあるため、移動部材195が位置規制孔(図示略)に差し込まれ、その後、回路基板100の下側のガイド部108に接触して装着方向に移動すると、回路基板100は支持軸107を基軸として+Z方向にスライドする。つまり、回路基板100は装着方向に対して所定の距離だけ離れた状態からその距離が小さくなるように摺動する。
【0114】
なお、ガイド部108の装着方向下流側の端部、移動部材195の凸部195bの装着方向上流側の端部は、いずれも傾斜したテーパ状になっているため、回路基板100はスムーズに摺動するようになっている。
【0115】
また、突起部105は、装着前の状態において接点部110aから所定の距離だけ離間しているため、移動部材195の移動の過程で突起部105には何も接触しないようになっている。また、接点部110aについても、電極パッド101aに接触するまでの間は何も接触しないようになっている。
【0116】
そして、図10(c)に示すように、カートリッジホルダー80にインクカートリッジ90を完全に装着した状態を考える。この場合、回路基板100は+Z方向に上昇した状態になっている。つまり、回路基板100側の電極パッド101aがコネクタ端子110側の接点部110aに接触する。これにより、回路基板100を介して、メモリ素子102や残量検出センサーがプリンター本体2側の制御回路に電気的に接続され、メモリ素子102や残量検出センサーの動作をプリンター本体2側から制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0117】
1…液体噴射システム、21a…液体噴射ヘッド、80…カートリッジホルダー(容器ホルダー)、90…インクカートリッジ(液体収容容器)、91…インクカートリッジ本体(液体収容容器本体)、95,195…移動部材、95b,195b…凸部、98…位置規制孔、100…回路基板、110…コネクタ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する液体収容容器本体と、
前記液体収容容器本体を着脱自在に装着する容器ホルダーと、
前記液体収容容器本体の装着方向に沿う側面に、移動可能に設けられた回路基板と、
前記装着方向に平行な前記容器ホルダーの側面に取り付けられたコネクタ端子と、
前記容器ホルダーに設けられるとともに、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記回路基板を前記コネクタ端子から離間した位置から前記コネクタ端子に接触する位置まで移動させる移動部材と、
を備えることを特徴とする液体噴射システム。
【請求項2】
前記移動部材は、前記液体収容容器本体の位置を規制する位置規制ピンであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射システム。
【請求項3】
前記位置規制ピンは、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に前記回路基板に接触する凸部を備え、
前記液体収容容器本体は、前記位置規制ピンが差し込まれる位置規制孔を備え、前記位置規制孔は前記凸部に対応する凹部を備えることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射システム。
【請求項4】
前記回路基板は、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記コネクタ端子と接触する面が前記装着方向に対して傾いた状態から前記装着方向に平行な状態に回転動作することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体噴射システム。
【請求項5】
液体を収容する液体収容容器本体と、
前記液体収容容器本体の側面に設けられた回路基板と、を有し、
前記回路基板は、前記液体収容容器本体を着脱自在に装着する容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記液体収容容器本体から離間する方向に移動可能になっていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項6】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
請求項5に記載の液体収容容器本体を着脱自在に装着する容器ホルダーと、
前記容器ホルダーの側面に設けられたコネクタ端子と、
前記容器ホルダーに設けられるとともに、前記容器ホルダーに前記液体収容容器本体を装着する際に、前記回路基板を前記コネクタ端子から離間した位置から前記コネクタ端子に接触する位置まで移動させる移動部材と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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