説明

液体噴射ヘッド、および液体噴射装置

【課題】本発明の目的は、インクジェットヘッドの安価化、インクジェット記録装置におけるインクジェットヘッド配置スペースの縮小化するインクジェットヘッド構造にすることである。
【解決手段】インクジェットヘッド1のカバープレート18におけるスリット19、流路15、また流路15に設置される円柱状ジョイント部21を複数個もたせることによって、インクジェット記録装置における印字品質、印字安定性の向上費用の安価化、インクジェット記録装置におけるインクジェットヘッド配置スペースの縮小化を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは薄膜材料を形成する液体噴射ヘッド、及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字、図形を描画する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、駆動信号に応じて液体噴射ヘッドのインクが充填されたチャンネルの容積を変化させ、チャンネルに連通するノズルからインクを吐出させる。インクの吐出の際には、液体噴射ヘッドや噴射した液体を記録する被記録媒体を移動させて、文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
その中でも、一般にインクを吐出する複数の噴射孔(ノズル)を有するインクジェットヘッドを用いて、被記録媒体に文字や画像を記録するインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録装置では、インクジェットヘッドのノズルが被記録媒体に対向するようにヘッドホルダが設けられている。このヘッドホルダはキャリッジに搭載され、被記録媒体の搬送方向とは直交する方向に走査される装置とヘッドは固定しており記録媒体のみが移動して印字する装置がある。
【0004】
図7に示すようにインクジェットヘッド1にインクを供給するため、インクカートリッジ4が設置され、インクチューブ3の先端に小穴のあいた針9をインクカートリッジ4のインク取出部52に差込み、インクを供給する構造になっている。インクジェットヘッド1とインクカートリッジ4が接続されるとインクジェットヘッド1にインクを供給するために図示しない加圧充填方法または吸引充填方法を用いて、インクを供給し吐出可能な状態にする。そして、インクジェットヘッド1の内部に備えられインクを吐出する駆動部であるヘッドチップに電気信号を印加することでインクジェットヘッド1を駆動させ、ノズルプレート11の噴射孔からインク滴を吐出させる。
【0005】
このようなインクジェットヘッド1では、図11のようにヘッドチップ10にインク滴を吐出するための噴射孔12を設けたノズルプレートを接着し、熱伝導性が良好なアルミなどを使用したノズルキャップを接着固定する。そして、アルミなどで成型したベースに固定し、ヘッドチップ10にインクの供給路となる流路を固定し、ヘッドチップ10に電気信号を送信する回路基板をフレキシブル基板などで接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−166269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるインクジェットヘッド構造で流路のインク供給部が1箇所、また図11に示すように、ヘッドチップ10を形成しているカバープレート18のインク供給口(スリット)19が1箇所となっているため、1つのインクジェットヘッド1からは1色のインクしか吐出できない構造となっていた。そのため、インクジェットヘッドで、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)を印字する場合、4つのインクジェットヘッドが必要となる。また、より高画質な画像を印字させるためには、上記にあげた4色より多くのインクが必要となっているため、その数に応じたインクジェットヘッドが必要となってくる。そのため、インクジェット式記録装置に掛かるインクジェットヘッドの費用が多くなる。またインクジェットヘッドを搭載するキャリッジが大きくなり、インクジェット式記録装置の大型化が問題となっていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、インクジェットヘッドの安価化、インクジェット記録装置におけるインクジェットヘッド配置スペースの縮小化するインクジェットヘッド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第一の態様は、液体を噴射する噴射孔を有する噴射孔部材と、噴射孔に連通する複数の液体室を並設する圧電部材と、液体室に連通し液体を供給する液体供給口を構成する液体供給部材と、を有し、液体室に設けた駆動電極に駆動電圧を印加することによって液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいて、液体供給口は液体供給部材の一端面から他端面へ貫通するとともに互いに並設する第一口部と第二口部によって構成され、第一口部と第二口部はそれぞれ複数の液体室に亘って開口し、それぞれ異なる液体色である複数の液体が供給されることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0010】
かかる第一の態様では、液体供給口として第一口部と第二口部を持つことで、2種類の液体を吐出することを可能にできるため、複数個で行っていた液体噴射ヘッドの機能、すなわち多色印刷を一つの液体噴射ヘッドで補うことができる。また、複数の液体噴射ヘッドを並べて配置するよりも配置個数が少ないため、位置ズレの可能性が減り印字品質が向上する。
【0011】
本発明の第二の態様は、第一の態様において、第一口部と第二口部が液体供給部材の長手方向中央にて対称となる位置に設けられ、第一口部と第二口部の並設方向の開口長さが同一であることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0012】
かかる第二の態様では、第一口部と第二口部が液体供給部材の長手方向中央にて対称となる位置に設けられ、第一口部と第二口部の並設方向の開口長さが同一であるため、2種類の液体を同一数の液体室に供給することができる。これにより、2種類の液体を同一数の液体室によって噴射することができる。
【0013】
本発明の第三の態様は、第一または第二の態様において、液体室の並設方向の圧電部材中央部に第一口部と第二口部の並設方向の液体供給部材中央部が対向し、圧電部材中央部に液体室を設けることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0014】
かかる第三の態様では、圧電部材中央部に液体供給部材中央部が対向し、圧電部材中央部に液体室を構成している。これによって、従来構造のまま、第一口部と第二口部に対応する液体室を連続して加工することができるので、製造コストを低下することができる。
【0015】
本発明の第四の態様は、第一または第二の態様において、液体室の並設方向の圧電部材中央部に第一口部と第二口部の並設方向の液体供給部材中央部が対向し、圧電部材中央部に液体室を設けずに圧電部材と液体供給部材を接合することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0016】
かかる第四の態様では、圧電部材中央部に液体供給部材中央部が対向し、液体室が第一液体室系と第二液体室系によって構成され、圧電部材中央部に液体室を設けずに圧電部材と液体供給部材を接合している。これによって、強硬に圧電部材と液体供給部材を固着することができる。
【0017】
本発明の第五の態様は、第一から第四のいずれかの態様において、第一口部と第二口部の各々に連通し液体に生じる圧力変動を緩衝する複数の圧力緩衝室を有する圧力緩衝器を設けたことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0018】
かかる第五の態様では、第一口部と第二口部の各々に供給される液体に対してまたは液体を噴射する際などに生じる圧力変動を軽減することで安定した液体噴射を行うことができる。
【0019】
本発明の第六の態様は、第五の態様において、複数の圧力緩衝室が単一の圧力緩衝器に設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0020】
かかる第六の態様では、第二の態様と役割は同様に複数の圧力緩衝器を一体成形させ、圧力緩衝室は複数設けたまま、一体成型にすることでより安価で提供することができる。また、圧力緩衝機能を有しないフィルム圧着面を少なくすることができる。そのため圧力緩衝部分の表面積、体積を多くとることができるため、より吐出の際の圧力を軽減することができる。
【0021】
本発明の第七の態様は、液体供給部材の近傍に液体の温度を計測する温度センサを設けたことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0022】
かかる第七の態様では、第一から第六のいずれかの態様において、口部各々の近傍に液体の温度を計測する温度センサを設けたことにより温度管理が行え、吐出性能、吐出安定性、印字品質を向上することができる。
【0023】
本発明の第八の態様は、第一から第七のいずれかの態様において、上述の液体噴射ヘッドと、液体を貯留し流路チューブと液体供給装置を介して第一口部および第二口部へ液体を供給する液体供給系と、を有する液体噴射装置にある。
【0024】
かかる第八の態様は、第一から第七のいずれかの態様において記載した上述の液体噴射ヘッドと、液体を貯留し流路チューブと液体供給装置を介して、第一口部および第二口部へ液体を供給する液体供給系を有することで、この発明によれば、液体供給系に第一液体が供給されるので、液体噴射ヘッドに液体を供給することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の特徴によれば、液体噴射ヘッドの安価化、液体噴射装置における液体噴射ヘッド配置スペースの縮小化する液体噴射ヘッド構造ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る液体噴射装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの分解図である。
【図3】本発明の実施形態に係るヘッドチップの分解図である。
【図4】本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る液体供給系の分解図である。
【図6】本発明の流路実施形態に係る液体供給系の分解図である。
【図7】本発明の実施形態に係る液体噴射装置の概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係るヘッドチップ分解図である。
【図9】本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの概略構成図である。
【図10】本発明の実施例におけるヘッドチップの分解図である。
【図11】本発明の実施形態に係るヘッドチップの断面図である
【図12】本発明の実施形態に係る流路説明図である
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
図3にヘッドチップ10の分解図を、図4にインクジェットヘッド1(液体噴射ヘッド)の全体図を示す。
【0028】
図3および図8に示すヘッドチップ10は、チップ20(圧電部材)とカバープレート18(液体供給部材)を貼り合せることによって構成している。図3のチップ20には後述するチャンバ28が形成され、噴射孔12からインク(液体)を噴射するようになっている。また、カバープレート18は一端面から他端面へ貫通するスリット19(液体供給口)が2箇所(第一口部19aと第二口部19b)設けられることでそれぞれ異なる液体色である複数のインクをチップ20のチャンバ28へ供給することが可能であり、かつ吐出を可能としている。なお、チップ20は第一チップ20aおよび第二チップ20bからなり、第一チップ20aと第二チップ20bのX方向は同等の長さになっており、同数のチャンバ28が形成されている。そして、第一口部19aと第一チップ20aで第一ヘッドチップを構成し、第二口部19bと第二チップ20bで第二ヘッドチップを構成する。
【0029】
より具体的に、第一口部19aと第二口部19bはそれぞれ複数のチャンバ28に亘って開口しており、複数のチャンバ28へインクを供給することができる。なお、カバープレート18の中央部60aにはスリット19が開口していない。これにより、チップ20の中央部60bに対応するチャンバ28へはインクを供給しない構造としている。これに加えて、このインクが供給されない中央部60bに対応するチャンバ28はチップ20とカバープレート18の接合時に余剰の接着剤が流れ込んでいる。この構成により、従来構造のまま、第一口部19aと第二口部19bに対応するチャンバ28を連続して加工することができるので、製造コストを低下することができる。
【0030】
なお、そもそもこの中央部60bに対応する位置にチャンバ28を形成しないように構成することも可能である。この構成により、より強固な接着を実現することができる。
【0031】
また、第一口部19aと第二口部19bはカバープレートの長手方向中央にて対称となる位置に設けられている。さらに、第一口部19aと第二口部19bの開口長さは同一になっているので、第一口部19aと第二口部19bで同数のチャンバ28へインクを供給することができる。
【0032】
さらに具体的に、チップ20とカバープレート18の張り合わせについて説明する。チップ20とカバープレート18は互いに対向する面に接着剤を塗布し張り合わせることで接着している。上述したとおり、チップ20にはチャンバ28が形成され、カバープレート18がスリット19以外の領域を閉塞するように接着している。接着剤の材質としてはエポキシ系接着剤などを使用する。そして、接着剤の量が少ないと十分に接着できず、チップ20とカバープレート18が剥がれてしまう可能性があるため、十分な接着剤の量を持って接着している。
なお、上述したとおり、中央部60bに対応する位置にチャンバ28を形成せず、凡そ平らなチップ20の中央部60bとカバープレート中央部60aを接着することも可能である。これによって、平面と平面との接合になるため、強硬な接着を実施することができる。
【0033】
そして、張り合わせは図3の点線に従い張り合わせる。ここで、詳しく説明すると、チップ20とカバープレート18の長手方向であるX方向の長さは、凡そ同一の長さであり、短手方向であるY方向の長さは、チップ20の方がカバープレート18よりも長く形成されている。そして、互いの図面Y方向下端を面一とし、図面Y方向上端のチップ20を少々余らせて張り合わせている。このチップ20の余った部分、すなわちカバープレート18が張り合っていない部分には、後述する電極から引き出された不図示の引出電極が形成されている。後述する回路基板16はこの引出電極を介し駆動信号を電極へ供給する。
【0034】
また、第一口部19aと第二口部19bにインクを供給する形態を説明すると、図4に示す流路15が中央部でカバープレート18のスリット19a、19bと同様に仕切られており、第一口部19aと第二口部19bに合わせて図示されていない接着剤で接着され、仕切られた流路15の各々にインクが流入するための円柱状ジョイント部21が設置されている。円柱状ジョイント部21にはダンパ22(圧力緩衝器)が設置され、図示していないチューブを通してそれぞれ異なる液体色である複数のインクを供給する。ダンパ22の内部にはインクの圧力変動を緩衝する不図示の2つのダンパ室(圧力緩衝室)がそれぞれ備えられ、この2つのダンパ室はそれぞれ第一口部19aと第二口部19bの各々に連通している。このように、第一口部19aと第二口部19bにインクを供給することによって、第一口部19aと第二口部19bを介して、第一チップ20aおよび第二チップ20bのチャンバ28へインクを充填する。なお、充填方式において具体的には後述するが、図示しないメンテナンス装置をインクジェット式記録装置に搭載し、ヘッドチップ10に対向する位置に吸引部材を設けることにより、吸引充填しても構わないし、後述するインクカートリッジとヘッドチップ10の間に押圧ポンプを設け、加圧充填しても構わない。
【0035】
なお、本実施形態では、圧力緩衝室は第一口部と第二口部の各々に連通する圧力室を別部材として構成したが、それぞれの圧力緩衝室に対応する圧力緩衝器を設ける構成を採用した。これに代えて複数の圧力緩衝室が単一の圧力緩衝器に設けられている構成を採用しても構わない。これにより、複数の圧力緩衝器を一体成型にすることでより安価で提供することができ、圧力緩衝機能を有しないフィルム圧着面を少なくすることができる。そのため圧力緩衝部分の表面積、体積を多くとることができるため、より吐出の際の圧力を軽減することができる。
【0036】
次に、本発明の全体構成を説明するため、図1にインクジェット式記録装置25(液体噴射装置)の概略図を示す。図1に示すインクジェット式記録装置25は、色毎に設けられた複数のインクジェットヘッド1と、このインクジェットヘッド1が主走査方向に複数並設されて搭載されたキャリッジ2と、フレキシブルチューブからなるインクチューブ3(流路チューブ)を介してインクを供給するインクカートリッジ4とを具備し、キャリッジ2は、一対のガイドレール5a,5b上に軸方向に移動自在に搭載されている。また、ガイドレール5a,5bの一端側には駆動モータ6が設けられており、この駆動モータ6による駆動力が、当該駆動モータ6に連結されたプーリと、ガイドレール5a,5bの他端側に設けられたプーリとの間に掛け渡されたタイミングベルトに沿って移動されるようになっている。
【0037】
また、キャリッジ2の搬送方向と直交する方向の両端部側には、ガイドレール5a,5bに沿ってそれぞれ一対の搬送ローラ7,8が設けられている。これらの搬送ローラ7、8は、キャリッジ2の下方に当該キャリッジ2の搬送方向とは直交する方向に被記録媒体Sを搬送するものである。
【0038】
本実施形態のインクジェットヘッド1は、多色のインクを吐出するものであり、本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)とC(シアン)、B(ブラック)の2色ずつに対応して2つ並設されてキャリッジ2に搭載されている。
【0039】
また、インク貯蔵手段であるインクカートリッジ4は、2つのインクジェットヘッドで4色吐出可能なため、4つ設けられている。このようなインクカートリッジ4は、キャリッジ2の主走査方向の移動や、被記録媒体Sの移動の邪魔にならない位置で、且つインクジェットヘッド1内に負圧を与えるように、インクジェットヘッド1のインク吐出面よりも所定量低い位置に設けられている。
【0040】
なお、上述したインクジェット式記録装置には、図示しないが、インク吐出面からインクを吸引、または加圧充填するいわゆるクリーニング動作に用いられるインク充填手段(液体供給装置)が設けられている。そして、このようなインク充填手段によって、インク吐出面側からインクを所定のタイミングで吸引、または加圧充填することによりインクジェットヘッドにはインクカートリッジからインクが供給され、ヘッドチップ内にインクが入る。入ったインクはヘッドチップのポンプ作用によって噴射孔を通過して印字メディアに着弾する。このポンプ作用時の負圧によってインクが供給され続ける。なお、本実施形態では、4色のインクカートリッジ4を搭載したインクジェット式記録装置25を例示して説明したが、これに限定されず、5〜8色のインクカートリッジ4を搭載したインクジェット式記録装置25であってもよい。なお、これらインクチューブ3とインク充填手段がインクを供給する液体供給系として用いられている。
【0041】
次に本実施形態におけるインクジェットヘッド1について示す。図2に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド1は、ヘッドチップ10と、このヘッドチップ10の一方面側に設けられるベース14と、ヘッドチップ10の他方面側に設けられる流路15と、ヘッドチップ10を駆動するための駆動回路26が搭載された回路基板16とを有する。流路15の形状について説明する。図5に示すように、流路15をインレットベース23aは一体物にして、インレットカバー24aを被せるような形態にすることで、ヘッドチップ10に接着する際、位置決めが正確かつ位置決めに要する時間を削減することができる。そのことにより、小型化、軽量化の効果を得ることができる。
【0042】
このようなインクジェットヘッド1では、図2のようにヘッドチップ10にインク滴を吐出するための噴射孔12を設けたノズルプレート11(噴射孔部材)を接着し、熱伝導性が良好なアルミなどを使用したノズルキャップ13を接着固定する。そして、アルミなどで成型したベース14に固定し、ヘッドチップ10にインクの供給路となる流路15を固定し、ヘッドチップ10に電気信号を送信する回路基板16をフレキシブル基板17などで接続した構造である。
【0043】
まず、ヘッドチップ10について詳しく説明する。図2及び図3及び図8に示すように、ヘッドチップ10には、噴射孔12に連通してインクを吐出させるチャンバ28(液体室)が複数並設され、各チャンバ28は、側壁29で分離されている。なお、チップ20は例えばチタン酸ジルコン酸鉛などの圧電部材により構成されている。
【0044】
各チャンバ28の長手方向一端部は、ヘッドチップ10の一端面まで延設されており、他端部は、他端面までは延びておらず、深さが徐々に浅くなっている。なお、各チャンバ28は、例えば、円盤状のダイスカッターにより形成され、深さが徐々に浅くなった部分は、ダイスカッターの形状を利用して形成される。
【0045】
また、各チャンバ28内の両側の側壁29の開口側表面には、長手方向に亘って、チャンバ28毎に独立した駆動信号が出力される一対の個別電極30(駆動電極)がそれぞれ形成されている。この一対の個別電極30は、例えば、公知の斜め方向からの蒸着によって各チャンバ28内の各側壁29にそれぞれ形成される。
【0046】
さらに、ヘッドチップ10のチャンバ28の開口側には、カバープレート18が接合されている。このカバープレート18には、各チャンバ28の浅くなった他端部のみと連通する凹部となるインク室32と、このインク室32の底部からチャンバ28とは反対方向に貫通するスリット19とが設けられている。
【0047】
ここで、本実施形態では、各チャンバ28は、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色のインクに対応したグループに分かれており、インク室32及びスリット19は、それぞれ2つずつ設けられている。
【0048】
なお、カバープレート18は、例えば、セラミックプレート、金属プレート等で形成することができるが、チップ20との接合後の変形等を考えると、熱膨張率の近似したセラミックプレートを用いるのが好ましい。
【0049】
また、チップ20とカバープレート18の接合体とのチャンバ28が開口している端面には、ノズルプレート11が接合されている。このノズルプレート11の各チャンバ28に対向する位置には噴射孔12が形成されている。
【0050】
さらに、ノズルプレート11は、チップ20とカバープレート18との接合体のチャンバ28が開口している端面の面積よりも大きくなっている。このノズルプレート11は、ポリイミドフィルムなどに、例えば、エキシマレーザ装置を用いて噴射孔12を形成したものである。また、図示しないが、ノズルプレート11の被印刷物に対向する面には、インクの付着等を防止するために撥水性を有する撥水膜が設けられている。
【0051】
なお、本実施形態では、チップ20とカバープレート18との接合体のチャンバ28が開口している端部の周囲には、ノズルキャップ13が配置されている。このノズルキャップ13は、ノズルプレート11の接合体端面の外側と接合されて、ノズルプレート11を安定して保持するためのものである。
【0052】
ここで、上記インクジェットヘッド1について詳細に説明する。
【0053】
図2及び図3及び図8に示すように、インクジェットヘッド1は、ヘッドチップ10の噴射孔12側とは反対側の端部に、例えば、ボンディングワイヤ等を介して一対の個別電極30に接続される図示しない配線パターンが形成されている。
【0054】
また、チップ20とカバープレート18との接合体のノズルキャップ13の後端側には、チップ20側のアルミニウム製のベース14と、カバープレート18側の流路15とが組み付けられる。図12に示すようにこの流路15には、ノズルキャップ13のスリット19のそれぞれに連通するインク導入路36が設けられている。
【0055】
また、チップ20の後端側に突出したベース14上には回路基板16が固着されている。この回路基板16上には、ヘッドチップ10を駆動するための駆動ICを有する駆動回路26が搭載され、駆動回路26とフレキシブル基板17とが接続される。これにより、図2のインクジェットヘッド1が完成する。
【0056】
ここで、各チャンバ28内の側壁29に設けられた一対の個別電極30に駆動信号を出力する駆動手段を駆動回路26に表して説明する。なお、図9は、駆動回路とヘッドチップとの配線の接続状態を示す概略図である。
【0057】
図9に示すように、駆動回路26には、外部からの電源と、印刷信号等の外部信号とからなる外部回路35とが外部配線51を介して接続されている。これにより、外部信号が外部配線51を介して外部回路35から駆動回路26に出力される。
【0058】
また、駆動回路26は、フレキシブル基板17を介して各チャンバ28内の側壁29に設けられた一対の個別電極30にそれぞれ接続されている。これにより、駆動回路26に入力された外部信号は、各チャンバ28内の一対の個別電極30に駆動信号としてそれぞれ出力されることになる。そしてこれらの駆動信号を印加することによってインクを噴射孔12より噴射する。
【0059】
なお、本実施形態では、各チャンバ28の側壁29を形成するヘッドチップ10の分極方向は、チャンバ28の底部からノズルキャップ13側に向かって各側壁29が突出する方向と同一方向である。
【0060】
(第2実施形態)
図6は、本発明の実施例2に係わる流路部材15bの斜視図を示す。
【0061】
図6に示すように、流路15bをインレットベース23b、インレットカバー24bを各々設ける形態にすることで、従来使用していた流路の転用が可能なためより安価で作業内容を変更することない。またインレットベースも分離されているため、インクの混色の可能性を軽減することができる。
【0062】
(第3実施形態)
図10は、本発明の実施例10に係わるヘッドチップ10bの斜視図を示す。
【0063】
図10に示すように、チップ20における第一チップ20cと第二チップ20dを別部材として構成した。またこのチップ20の構成に対応して、カバープレート18も第一カバープレート18cと第二カバープレート18dを別部材として構成し、それぞれ第一チップ20cと第一カバープレート18cによって第一ヘッドチップ、第二チップ20dと第二カバープレート18dによって第二ヘッドチップとして構成した。このようにすることで、ヘッドチップが完全に分離している形態になることで、インクの混色を確実に防止することができる。なお、図示するように、第一口部19cと第二口部19dもそれぞれ分離して構成している。
また、この構成によれば、第一チップ20cと第一カバープレート18cによって形成する第一ヘッドチップと、第二チップ20dと第二カバープレート18dによって形成する第二ヘッドチップを個別に製造することができる。そのため、従来と同様の製造工程であるチップ作成工程(チップにチャンバを形成する工程)とチップ貼合せ工程(チップとカバープレートを貼り合わせる工程)にて製造することができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、チップ20とカバープレート18の両方を別部材として構成し、それぞれ互いに張り合わせることで第一ヘッドチップと第二ヘッドチップを構成したが、この形態に限られるものではない。すなわち、チップ20のみ別部材で構成し、カバープレート18を単一部材で構成しても構わないし、同様に、カバープレート18のみ別部材で構成し、チップ20を単一部材で構成しても構わない。
【0065】
なお、第1〜第3の実施形態において、カバープレートの近傍にインクの温度を計測する温度センサを設けても構わない。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェットヘッド
2 キャリッジ
3 インクチューブ
4 インクカートリッジ
5 ガイドレール
6 モータ
7 搬送ローラ
8 搬送ローラ
9 針
10 ヘッドチップ
11 ノズルプレート
12 噴射孔
13 ノズルキャップ
14 ベース
15 流路
16 回路基板
17 フレキシブル基板
18a カバープレート
18b カバープレート(分離状態)
19a スリット
19b スリット(分離状態)
20a チップ
20b チップ(分離状態)
21 円柱状ジョイント部
22 ダンパ
23 インレットベース
24 インレットカバー
25 インクジェット記録装置
26 駆動回路
28 チャンバ
29 側壁
30 個別電極
31 ノズルキャップ
32 インク室
36 インク導入路
50 外部回路
51 外部配線
52 インク取出分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する噴射孔を有する噴射孔部材と、前記噴射孔に連通する複数の液体室を並設する圧電部材と、前記液体室に連通し前記液体を供給する液体供給口を構成する液体供給部材と、を有し、前記液体室に設けた駆動電極に駆動電圧を印加することによって前記液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいて、
前記液体供給口は前記液体供給部材の一端面から他端面へ貫通するとともに互いに並設する第一口部と第二口部によって構成され、前記第一口部と前記第二口部はそれぞれ前記複数の液体室に亘って開口し、それぞれ異なる液体色である複数の液体が供給されることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第一口部と前記第二口部が前記液体供給部材の長手方向中央にて対称となる位置に設けられ、前記第一口部と前記第二口部の並設方向の開口長さが同一であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記液体室の並設方向の圧電部材中央部に前記第一口部と前記第二口部の並設方向の液体供給部材中央部が対向し、前記圧電部材中央部に前記液体室を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記液体室の並設方向の圧電部材中央部に前記第一口部と前記第二口部の並設方向の液体供給部材中央部が対向し、前記圧電部材中央部に前記液体室を設けずに前記圧電部材と前記液体供給部材を接合することを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第一口部と前記第二口部の各々に連通し前記液体に生じる圧力変動を緩衝する複数の圧力緩衝室を有する圧力緩衝器を設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
複数の前記圧力緩衝室が単一の圧力緩衝器に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記液体供給部材の近傍に前記液体の温度を計測する温度センサを設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載されている液体噴射ヘッドと、
前記液体を貯留し流路チューブと液体供給装置を介して前記第一口部および前記第二口部へ前記液体を供給する液体供給系と、を有する液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−156766(P2011−156766A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20666(P2010−20666)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】