説明

液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】簡便な構造で吐出面を接地でき、位置精度の低下を抑制して印刷品質を向上できる液体噴射ヘッド。
【解決手段】ノズル開口11から液体を噴射するヘッド本体10と、ノズル開口11が開口する吐出面12側を覆うカバーヘッド30と、カバーヘッド30とは反対側に設けられ、前記ヘッド本体10と前記カバーヘッド30が固定されるケース20とを具備し、カバーヘッド30が吐出面12の面方向と同じ面方向を有するフランジ部35を有し、当該カバーヘッド30が、前記ケース20の前記吐出面12と同じ方向を向く固定面22側に、前記吐出面12側から前記フランジ部35を挿通する固定ネジ25が螺合されることで固定され、先端部42が、前記カバーヘッド30の前記フランジ部35の前記吐出面12側又は前記吐出面12とは反対面側に当接して、当該カバーヘッド30を液体の吐出方向又は吐出方向とは反対側に押圧する導電部材40が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及
び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙
げられる。インクジェット式記録ヘッドは、インクを吐出するヘッド本体と、該ヘッド本
体のインクが吐出される吐出面とは反対側に設けられたケースと、ヘッド本体の吐出面側
に設けられて吐出面を覆うカバーヘッドとで構成されている(例えば、特許文献1参照)

【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、紙などの被記録媒体や外部からの静電気
によってインクジェット式記録ヘッドを構成する金属部品が帯電し、インクに圧力を付与
するための圧力変換素子等や、この圧力変換素子等を駆動するためのドライバIC等が破
壊されてしまう虞がある。このため、ノズルプレートをカバーヘッドに導通させて、カバ
ーヘッドを接地することで、ノズルプレートの接地を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電部材をカバーヘッドの側面に当接させて、導電部材によってカバー
ヘッドを吐出面の面方向に向かって押圧することで、カバーヘッドと導電部材との導通を
図ると、導電部材の押圧によってヘッド本体が移動し、ノズル開口の吐出面の面方向の位
置ずれが発生し、着弾位置ずれによって印刷品質が低下してしまう虞があるという問題が
ある。
【0006】
また、カバーヘッドに配線を半田等で接続することも考えられるものの、製造工程が煩
雑になると共に、配線を接続する際の熱によってカバーヘッドとヘッド本体との間に反り
が生じ、位置精度が低下してしまうという問題がある。
【0007】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液
体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、簡便な構造で吐出面を接地することができ、位置精度
の低下を抑制して印刷品質を向上することができる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニ
ット及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、ノズル開口から液体を噴射するヘッド本体と、該
ヘッド本体の前記ノズル開口が開口する吐出面側を覆うカバーヘッドと、前記ヘッド本体
の前記カバーヘッドとは反対側に設けられて、前記ヘッド本体が固定されると共に前記カ
バーヘッドが固定されるケースと、を具備し、前記カバーヘッドが前記吐出面の面方向と
同じ面方向を有するフランジ部を有し、当該カバーヘッドが、前記ケースの前記吐出面と
同じ方向を向く固定面側に、前記吐出面側から前記フランジ部を挿通する固定ネジが螺合
されることで固定され、前記ケースの前記固定面には、基端部が固定されると共に、先端
部が、前記カバーヘッドの前記フランジ部の前記吐出面側又は前記吐出面とは反対面側に
当接して、当該カバーヘッドを液体の吐出方向又は吐出方向とは反対側に押圧する導電部
材が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、導電部材をカバーヘッドの吐出面側又は吐出面とは反対側に当接させ
て、カバーヘッドを液体の吐出方向又は吐出方向とは反対方向に向かって押圧することで
、導電部材とカバーヘッドとを確実に導通させることができると共に、カバーヘッド及び
ヘッド本体の吐出面の面方向への位置ずれを抑制して、液体の着弾位置ずれを低減するこ
とができる。
【0010】
ここで、前記固定面には、当該固定面から吐出方向に突出する突出部が設けられており
、前記フランジ部が、前記突出部の先端面に固定されており、前記導電部材が、前記フラ
ンジ部を前記突出部側から吐出方向に向かって押圧するように設けられていることが好ま
しい。これによれば、突出部の先端面にフランジ部を固定することで、接触面積を低減す
ることができ、さらに吐出面の面方向の位置ずれを抑制することができる。
【0011】
また、前記ケースが前記固定面側から挿入された保持ネジによって保持部材に固定され
ると共に、前記保持ネジが、前記導電部材の基端部を挿通して前記保持部材に螺合するこ
とで、前記導電部材が前記固定面に保持ネジによって固定されていることが好ましい。こ
れによれば、突出部の先端面にフランジ部を固定することで、接触面積を低減することが
でき、保持ネジの螺合する回転方向の位置ずれを低減することができる。
【0012】
また、前記保持部材及び前記固定ネジが導電性を有し、前記導電部材が、前記保持ネジ
を介して前記保持部材に導通していることが好ましい。保持部材を介してカバーヘッドの
接地を行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする
液体噴射ヘッドユニットにある。
かかる態様では、液体の着弾位置ずれを抑制して印刷品質を向上した液体噴射ヘッドユ
ニットを実現できる。
【0014】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニット又は液体噴射ヘッドを
を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体の着弾位置ずれを抑制して印刷品質を向上した液体噴射装置を実
現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係るヘッドの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るヘッドの平面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘ
ッドの斜視図であり、図2はインクジェット式記録ヘッドの平面図であり、図3は図2の
A−A′線断面図であり、図4はインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図で
ある。
【0017】
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッ
ド1(以下、ヘッド1とも言う)は、インクを吐出するノズル開口11が設けられたヘッ
ド本体10と、ヘッド本体10のノズル開口11が開口する吐出面12とは反対側に固定
されたケース20と、ヘッド本体10の吐出面12を覆うカバーヘッド30と、を具備す
る。
【0018】
ヘッド本体10は、インクを吐出する複数のノズル開口11が設けられたノズルプレー
ト13を具備する。本実施形態では、ヘッド本体10の長手方向に沿ってノズル開口11
が並設されたノズル列11Aを短手方向に2列設けるようにした。このようなヘッド本体
10では、ノズル開口11が開口する面がインクを吐出する吐出面12となっている。な
お、ノズルプレート13は、例えば、ステンレス鋼等の金属やシリコンなどの導電性材料
からなる。もちろんノズルプレート13は、絶縁体からなる母材の表面に導電層を設けた
ものであってもよい。
【0019】
また、ヘッド本体10は、内部にノズル開口11と連通する流路14が設けられており
、図示しない圧力発生手段によって流路14内のインクに圧力変化を生じさせることでノ
ズル開口11からインク滴が吐出される。このように流路14内に圧力変化を生じさせる
圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電素子を
用いた圧電アクチュエーターや、流路14内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発
生するバブルによってノズル開口11からインク滴を吐出するものや、振動板と電極との
間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させて流路14内に圧力変化を
生じさせてノズル開口11からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターな
どを用いることができる。
【0020】
ケース20は、ヘッド本体10の吐出面12とは反対側の面に固定されたものであり、
ヘッド本体10が固定された面とは反対側には、両側面にそれぞれ突出する固定部21が
設けられている。本実施形態では、1つのノズル列11Aのノズル開口11の並設方向の
両側の側面に固定部21を設けるようにした。この固定部21の吐出面12側の面が固定
面22となっている。
【0021】
また、ケース20には、図示しない内部にヘッド本体10へのインクを供給する供給路
や、外部からの駆動信号をヘッド本体10に供給するために配線などが設けられている。
【0022】
このようなケース20としては、例えば、樹脂材料を用いることができる。また、ケー
ス20は、樹脂材料を成形することにより、容易に且つ低コストで形成することができる
。ちなみに、ケース20をステンレス鋼等の金属材料で形成することも考えられるものの
、ケース20の内部には流路や配線を通す貫通孔などが設けられており、形状が複雑なた
め、金属材料で形成するのは困難である。また、ケース20を金属材料で形成すると高コ
ストになってしまうという問題がある。本実施形態では、樹脂材料の成形によりケース2
0を形成することで、複雑な形状を有するケース20を低コストで形成することができる

【0023】
カバーヘッド30は、ヘッド本体10の吐出面12のノズル開口11を露出する露出開
口部31を画成すると共に、ヘッド本体10の吐出面12の周縁部側を覆う枠部32を有
する。
【0024】
また、カバーヘッド30は、吐出面12の側面側に、吐出面12の外周縁部に亘って枠
部32から屈曲するように延設された側壁部33を有する。
【0025】
この側壁部33には、カバーヘッド30をケース20に固定するための固定孔34が設
けられたフランジ部35が設けられている。
【0026】
フランジ部35は、図3に示すように、ケース20の固定部21側の側壁部33に設け
られて、吐出面12の面方向と同一方向に突出するように屈曲して設けられている。本実
施形態では、1つのノズル列11Aのノズル開口11の並設方向両側の側壁部33に、そ
れぞれノズル開口11の並設方向に向かって突出するフランジ部35を設けた。このよう
なフランジ部35は、吐出面12の面方向と同じ面方向を有する。
【0027】
このフランジ部35がケース20の固定部21に固定されることで、カバーヘッド30
はインクジェット式記録ヘッド1に一体化されている。ここで、ケース20の固定部21
には、インクの吐出方向に向かって突出した突出部23が設けられている。突出部23は
、固定孔34の内径よりも幅広で、且つフランジ部35の幅(ノズル列11Aの並設方向
)よりも幅狭となる厚さを有する。そして、この突出部23の先端面24側にフランジ部
35が雄ねじからなる固定ネジ25によって固定されることで、カバーヘッド30はケー
ス20に固定されている。すなわち、フランジ部35の固定孔34に固定ネジ25を挿通
し、固定ネジ25を突出部23に螺合させることで、フランジ部35を突出部23の先端
面24に固定することができる。このように突出部23に固定されたフランジ部35は、
図2に示すように、固定ネジ25の両側(ノズル列11Aの並設方向における両側)で庇
状に突出して設けられた庇部36を有する。
【0028】
このようなカバーヘッド30としては、例えば、ステンレス鋼等の金属材料などの導電
性材料を用いることができる。
【0029】
また。本実施形態のカバーヘッド30の枠部32は、図3に示すように、ヘッド本体1
0の吐出面12に導電性接着剤37を介して接着されている。なお、枠部32とヘッド本
体10の吐出面12とは、導電性接着剤37によって接着されていなくても、接触してい
るだけでもよい。本実施形態のように、カバーヘッド30と吐出面12とを導電性接着剤
37で接着することで、吐出面12とカバーヘッド30との段差を減少させることができ
、吐出面12をゴムブレード等で拭うワイピングやノズル開口11からインクを吸引する
吸引動作などを行っても、吐出面12にインクが残留するのを抑制することができる。ま
た、カバーヘッド30と吐出面12とを接着することで、カバーヘッド30とヘッド本体
10との間からインクが侵入し、ケース20側にインクが這い上がるのを抑制することが
できる。また、カバーヘッド30と吐出面12とを接着することで、これらの隙間に被噴
射媒体である紙等が入り込むのを防止してカバーヘッド30の変形及び紙ジャムを防止す
ることができる。
【0030】
また、ケース20には、基端部41が固定されて、先端部42がフランジ部35の庇部
36の吐出面12とは反対側の面に当接して、カバーヘッド30を吐出方向に向かって押
圧する導電部材40が設けられている。
【0031】
導電部材40は、金属材料で形成された板状部材からなり、基端部41側に厚さ方向に
貫通した保持孔43が設けられている。また、先端部42は、図2に示すように、切り欠
き部44によって切り分けられることで、2つに分岐して設けられている。切り欠き部4
4は、突出部23の厚さよりも幅広で、且つフランジ部35の幅(ノズル列11Aの並設
方向)よりも幅狭となる幅で設けられている。この分岐された先端部42と、基端部41
とは、図3に示すように、互いに屈曲して設けられている。
【0032】
このような導電部材40は、保持孔43が、ケース20の固定面22に雄ねじからなる
保持ネジ45を介して固定される。具体的には、ケース20の固定部21には厚さ方向に
貫通する貫通孔26が設けられており、貫通孔26を挿通した保持ネジ45が、保持部材
50に螺合されることで、ケース20は、保持部材50に保持されている。そして、本実
施形態では、このケース20と保持部材50とを固定する保持ネジ45に導電部材40が
共締めされるようにした。すなわち、図4(a)に示すように、保持ネジ45を導電部材
40の保持孔43とケース20の貫通孔26とに挿通し、図4(b)に示すように、保持
ネジ45を保持部材50に保持部材50に螺合することで、保持部材50にケース20を
介してヘッド1を保持させると共に、ケース20の固定面22に導電部材40の基端部4
1を固定させている。このように、基端部41が固定面22に固定された導電部材40は
、先端部42がフランジ部35の庇部36の吐出面12側とは反対側の面に当接し、導電
部材40の弾性力によって、先端部42がカバーヘッド30をインクの吐出方向(ノズル
プレート13の吐出面12に垂直な方向)に押圧する。これにより、ノズルプレート13
と導通するカバーヘッド30は、導電部材40に導通し、導電部材40は保持ネジ45を
介して保持部材50と導通する。ちなみに、保持ネジ45は、ケース20を保持部材50
に固定すると共に、導電部材40をケース20に固定する役割と、導電部材40と保持部
材50とを導通する役割とを有する。したがって、保持ネジ45は、その表面が導電性を
有する材料、例えば、金属材料で形成されている。
【0033】
なお、保持部材50は、例えば、ステンレス鋼等の導電性を有する金属材料で形成され
た板状部材からなり、詳しくは後述するインクジェット式記録装置3の装置本体101に
導通することで、接地されている。これにより、ノズルプレート13は、カバーヘッド3
0、導電部材40、保持ネジ45及び保持部材50を介して接地される。
【0034】
このように、本実施形態では、カバーヘッド30に導通する導電部材40が、カバーヘ
ッド30の吐出面12側とは反対面に当接し、カバーヘッド30を吐出方向に押圧するた
め、導電部材40の押圧によってカバーヘッド30がインクの吐出方向に移動したとして
も、ノズル開口11の吐出面12の面方向の位置ずれが生じ難い。したがって、ノズル開
口11から吐出されたインクが紙等の被記録媒体に着弾した際の着弾位置ずれを抑制して
、印刷精度を向上することができる。ちなみに、導電部材40が、側壁部33に当接し、
カバーヘッド30を吐出面12の面方向に押圧すると、ノズルプレート13が吐出面方向
に移動して、着弾位置ずれが発生し、印刷品質が低下してしまう。
【0035】
さらに、本実施形態では、フランジ部35をケース20の固定面22から突出する突出
部23の先端面24に固定するようにした。また、突出部23の先端面24をフランジ部
35よりも小さい面積とした。このため、フランジ部35を突出部23の先端面24に固
定ネジ25で固定する際に、フランジ部35と突出部23の先端面24との接触面積が小
さいことから、摩擦力が小さくなり、固定ネジ25の螺合によってフランジ部35が固定
ネジ25の締結方向(回転方向)である吐出面12の面方向に移動するのを抑制すること
ができる。
【0036】
ちなみに、導電部材40を設けずに、フランジ部35を延設して、フランジ部35を固
定ネジ25と保持ネジ45とで固定することも考えられるものの、フランジ部35を延設
するには突出部23を回避するための複雑な屈曲形状が必要となり、製造が困難である。
また、フランジ部35を延設して、フランジ部35を固定ネジ25と保持ネジ45との2
つのネジ25、45で固定すると、2つのネジ25、45の締結力によってカバーヘッド
30に吐出面12の面方向に向かう力が掛かり、カバーヘッド30が吐出面12の面方向
に移動して、位置精度が低下してしまう。本実施形態では、カバーヘッド30のフランジ
部35を固定ネジ25で固定するだけなので、カバーヘッド30が吐出面12の面方向に
押圧される力を低減して位置精度を向上することができると共に、複雑な屈曲形状が不要
で、製造が容易でコストを低減することができる。
【0037】
なお、このようなインクジェット式記録ヘッド1が、保持部材50に固定されて、本実
施形態のインクジェット式記録ヘッドユニット2となる。ここで、本実施形態の液体噴射
ヘッドユニットの一例であるインクジェット式記録ヘッドユニットについて説明する。な
お、図5は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドユニットの吐出面側
の平面図である。
【0038】
図5に示すように、保持部材50は、ステンレス鋼等の導電性を有する金属材料で形成
された板状部材からなり、複数のヘッド1の吐出面12とは反対面側のケース20が固定
される。また、保持部材50には、図1及び図3に示すように、ヘッド保持孔51が設け
られており、ヘッド保持孔51を介して、液体供給源からのインクや外部からの駆動信号
を送る配線等が接続される。
【0039】
このような保持部材50には、図5に示すように、複数のヘッド1がノズル開口11の
並設方向である第1の方向Yに向かって並設されている。また、第1の方向Yに並設され
た複数のヘッド1で構成される列は、ノズル開口11が並設された方向(第1の方向Y)
とは交差する方向(第2の方向X)に並んで2列設けられている。これら第2の方向Xに
並設されたにヘッド1の2列は、互いに第2の方向Xに向かって若干ずらした位置に配置
されている。すなわち、ヘッド1の2列は、ヘッド1が千鳥状に配置されるようにヘッド
グループを構成している。そして、1つのヘッドグループにおいて、隣り合うヘッド1は
、一方のヘッド1のノズル列11Aの端部のノズル開口11と、他方のヘッド1のノズル
列11Aの端部のノズル開口11とが、ノズル開口11の並設方向(第1の方向Y)で同
一位置となるように設けられている。これにより、複数のヘッド1によって、第1の方向
Yに沿ってノズル列を連続させることができ、連続するノズル列11Aの幅で広い面積に
亘って印刷を行うことができる。本実施形態では、ヘッドユニット2に6個のヘッド1で
構成されるヘッドグループを設けるようにした。
【0040】
そして、上述したように、本実施形態のヘッド1は、カバーヘッド30が吐出面の面方
向に位置ずれするのを抑制することができるため、ヘッドユニット2において、複数のヘ
ッド1の相対的な位置精度が低下するのを抑制して、筋状の印刷不良などが発生するのを
抑制することができる。
【0041】
このようなヘッドユニット2は、インクジェット式記録装置3に搭載される。ここで、
インクジェット式記録装置について図6を参照して説明する。
【0042】
図6に示すように、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置
3は、ヘッドユニット2が固定されて、被噴射媒体である紙などの記録シートSを搬送す
ることで印刷を行う、所謂ライン式記録装置である。具体的には、インクジェット式記録
装置3は、装置本体101と、複数のヘッド1を具備すると共に装置本体101に固定さ
れたヘッドユニット2と、記録シートSを搬送する搬送手段102と、ヘッドユニット2
の相対向する記録シートSの印刷面とは反対の裏面側を支持するプラテン103とを具備
する。
【0043】
ヘッドユニット2は、ヘッド1のノズル開口11の並設方向(第1の方向Y)が記録シ
ートSの搬送方向と交差する方向となるように装置本体101に固定されている。
【0044】
搬送手段102は、ヘッドユニット2に対して記録シートSの搬送方向の両側に設けら
れた第1の搬送手段104と、第2の搬送手段105とを具備する。
【0045】
第1の搬送手段104は、駆動ローラー104aと、従動ローラー104bと、これら
駆動ローラー104a及び従動ローラー104bに巻回された搬送ベルト104cとで構
成されている。また、第2の搬送手段105は、第1の搬送手段104と同様に駆動ロー
ラー105a、従動ローラー105b及び搬送ベルト105cで構成されている。
【0046】
これらの第1の搬送手段104及び第2の搬送手段105のそれぞれの駆動ローラー1
04a、105aには、図示しない駆動モーター等の駆動手段が接続されており、駆動手
段の駆動力によって搬送ベルト104c、105cが回転駆動することで、記録シートS
をヘッドユニット2の上流及び下流側で搬送する。
【0047】
なお、本実施形態では、駆動ローラー104a、105a、従動ローラー104b、1
05b及び搬送ベルト104c、105cで構成される第1の搬送手段104及び第2の
搬送手段105を例示したが、記録シートSを搬送ベルト104c、105c上に保持さ
せる保持手段をさらに設けてもよい。保持手段としては、例えば、記録シートSの外周面
を帯電させる帯電手段を設け、この帯電手段によって帯電した記録シートSを誘電分極の
作用により搬送ベルト104c、105c上に吸着させるようにしてもよい。また、保持
手段として、搬送ベルト104c、105c上に押えローラーを設け、押えローラーと搬
送ベルト104c、105cとの間で記録シートSを挟持させるようにしてもよい。
【0048】
プラテン103は、第1の搬送手段104と第2の搬送手段105との間に、ヘッドユ
ニット2に相対向して設けられた断面が矩形状を有する金属又は樹脂等からなる。プラテ
ン103は、第1の搬送手段104及び第2の搬送手段105によって搬送された記録シ
ートSを、ヘッドユニット2に相対向する位置で支持する。
【0049】
なお、プラテン103には、搬送された記録シートSをプラテン103上で吸着する吸
着手段が設けられていてもよい。吸着手段としては、例えば、記録シートSを吸引するこ
とで吸引吸着するものや、静電気力で記録シートSを静電吸着するもの等が挙げられる。
【0050】
また、ヘッドユニット100の各ヘッド1には、図示していないが、インクが貯留され
たインクタンクやインクカートリッジなどのインク貯留手段がインクを供給可能に接続さ
れている。インク貯留手段は、例えば、ヘッドユニット2上に保持されていても、また、
装置本体101内のヘッドユニット2とは異なる位置に保持されていてもよい。
【0051】
このようなインクジェット式記録装置3では、搬送手段104によって記録シートSが
搬送され、ヘッドユニット2によってプラテン103上で支持された記録シートSに印刷
が実行される。印刷された記録シートSは、搬送手段102によって搬送される。
【0052】
なお、本実施形態では、複数のヘッド1を有するヘッドユニット2をインクジェット式
記録装置3に搭載するようにしたが、特にこれに限定されず、単数又は複数のヘッド1を
直接インクジェット式記録装置3に搭載してもよい。また、インクジェット式記録装置3
に複数のヘッドユニット2を搭載してもよい。
【0053】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は、上述したもの
に限定されるものではない。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、フランジ部35をケース20の固定面22から突出し
た突出部23の先端面24に固定し、導電部材40がフランジ部35の吐出面12側とは
反対面に当接して、カバーヘッド30をインクの吐出方向に向かって押圧するようにした
が、特にこれに限定されず、導電部材40が、フランジ部35の吐出面12に当接し、カ
バーヘッド30をインクの吐出方向とは反対方向に押圧するようにしてもよい。この場合
には、フランジ部35は、突出部23の先端面24に固定しなくても、導電部材40の基
端部41が固定される固定面22に直接固定されていてもよい。このように、導電部材4
0がカバーヘッド30をインクの吐出方向とは反対方向に押圧しても、ノズル開口11の
吐出面12の面方向での位置ずれが発生し難く、インク滴の記録シートSへの着弾位置ず
れを抑制して、印刷品質を向上することができる。
【0055】
また、上述した実施形態1では、導電部材40をカバーヘッド30と保持部材50とを
固定する保持ネジ45が設けられた2箇所のそれぞれに設けるようにしたが、特にこれに
限定されず、例えば、一方の保持ネジ45側のみに導電部材40を設けるようにしてもよ
い。
【0056】
さらに、上述した実施形態1では、インクジェット式記録装置3として、ヘッド1(ヘ
ッドユニット2)が装置本体101に固定されて、記録シートSを搬送するだけで印刷を
行う、所謂ライン式記録装置を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、ヘッド1(
ヘッドユニット2)を記録シートSの搬送方向と交差する主走査方向に移動するキャリッ
ジに搭載して、ヘッド1(ヘッドユニット2)を主走査方向に移動しながら印刷を行う、
所謂シリアル型記録装置にも本発明を適用することができる。
【0057】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリン
ター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、
液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELデ
ィスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘ
ッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができ
る。
【0058】
また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置3を挙げて説明したが、上
述した他の液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 2 インクジェット式記録ヘ
ッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 3 インクジェット式記録装置(液体噴射
装置)、 10 ヘッド本体、 11 ノズル開口、 12 吐出面、 20 ケース、
21 固定部、 22 固定面、 25 固定ネジ、 30 カバーヘッド、 35
フランジ部、 40 導電部材、 41 基端部、 42 先端部、 45 保持ネジ、
50 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口から液体を噴射するヘッド本体と、
該ヘッド本体の前記ノズル開口が開口する吐出面側を覆うカバーヘッドと、
前記ヘッド本体の前記カバーヘッドとは反対側に設けられて、前記ヘッド本体が固定さ
れると共に前記カバーヘッドが固定されるケースと、を具備し、
前記カバーヘッドが前記吐出面の面方向と同じ面方向を有するフランジ部を有し、当該
カバーヘッドが、前記ケースの前記吐出面と同じ方向を向く固定面側に、前記吐出面側か
ら前記フランジ部を挿通する固定ネジが螺合されることで固定され、
前記ケースの前記固定面には、基端部が固定されると共に、先端部が、前記カバーヘッ
ドの前記フランジ部の前記吐出面側又は前記吐出面とは反対面側に当接して、当該カバー
ヘッドを液体の吐出方向又は吐出方向とは反対側に押圧する導電部材が設けられているこ
とを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記固定面には、当該固定面から吐出方向に突出する突出部が設けられており、前記フ
ランジ部が、前記突出部の先端面に固定されており、前記導電部材が、前記フランジ部を
前記突出部側から吐出方向に向かって押圧するように設けられていることを特徴とする請
求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記ケースが前記固定面側から挿入された保持ネジによって保持部材に固定されると共
に、前記保持ネジが、前記導電部材の基端部を挿通して前記保持部材に螺合することで、
前記導電部材が前記固定面に保持ネジによって固定されていることを特徴とする請求項1
又は2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記保持部材及び前記保持ネジが導電性を有し、前記導電部材が、前記保持ネジを介し
て前記保持部材に導通していることを特徴とする請求項3記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴
射ヘッドユニット。
【請求項6】
請求項5記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴
射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218746(P2011−218746A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92923(P2010−92923)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】