説明

液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】ノズルプレートを確実に接地することができると共に、コストを低減して、液滴の被記録媒体への着弾位置精度を向上することができる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口23が形成された液体噴射面241を有するノズルプレート24と、該ノズルプレート24に連通する圧力発生室25と、該圧力発生室25に圧力変化を生じさせて前記ノズル開口23から液体を噴射させる圧力発生手段20と、を具備し、前記ノズルプレート25が、前記液体噴射面241から液体の噴射方向とは反対側の側面側に屈曲して設けられた屈曲部243を具備し、該屈曲部243が接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及
び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙
げられる。インクジェット式記録ヘッドは、インクを吐出するヘッド本体と、該ヘッド本
体のインクが吐出される吐出面とは反対側に設けられたケースと、ヘッド本体の吐出面側
に設けられて吐出面を覆うカバーヘッドとで構成されている(例えば、特許文献1参照)

【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、紙などの被記録媒体や外部からの静電気
によってインクジェット式記録ヘッドを構成する金属部品が帯電し、インクに圧力を付与
するための圧力変換素子等や、この圧力変換素子等を駆動するためのドライバIC等が破
壊されてしまう虞がある。このため、ノズルプレートをカバーヘッドに導通させて、カバ
ーヘッドを接地することで、ノズルプレートの接地を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カバープレートを設けることによって、コストが増大してしまうという
問題がある。
【0006】
また、カバープレートを設けることによって、液体噴射面と被記録媒体との距離が遠く
なり、着弾位置の精度が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、ノズルプレートを確実に接地することができると共に
、コストを低減して、液滴の被記録媒体への着弾位置精度を向上することができる液体噴
射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口が形成された液体噴射
面を有するノズルプレートと、該ノズルプレートに連通する圧力発生室と、該圧力発生室
に圧力変化を生じさせて前記ノズル開口から液体を噴射させる圧力発生手段と、を具備し
、前記ノズルプレートが、前記液体噴射面から液体の噴射方向とは反対側の側面側に屈曲
して設けられた屈曲部を具備し、該屈曲部が接地されていることを特徴とする液体噴射ヘ
ッドにある。
かかる態様では、ノズルプレートに屈曲部を設け、屈曲部を接地することで、液体噴射
面側にカバープレート等が不要となり、部品点数を減らしてコストを低減することができ
る。また、カバープレートが不要になることから、液体噴射面と被記録媒体との距離を短
くして、被記録媒体への液体の着弾位置精度を向上することができる。さらに、屈曲部に
よって接地することで、カバープレートが不要になることから平坦な液体噴射面が露出す
る。したがって、液体噴射面をゴム等のブレードでワイピングする際のブレードを低い押
圧力で押圧した状態で、ワイピングすることが可能となる。これにより、液体噴射面に形
成された撥水膜やブレードの消耗を抑制することができると共に、液体噴射面に付着して
増粘した液体をブレードがワイピング時にノズル開口に擦り込んで、ノズル開口の目詰ま
りが発生するのを抑制することができる。
【0009】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、当該液体噴射ヘッドを保持
する保持部材と、を具備し、前記保持部材には、前記屈曲部に電気的に接続された導電部
材が設けられており、前記屈曲部は、前記導電部材を介して接地されていることが好まし
い。これによれば、導電部材が液体噴射面に接続されることがなく、液体噴射面と被記録
媒体との距離を短くすることができる。
【0010】
ここで、前記導電部材は、前記ノズルプレートを前記ノズル開口から液体の噴射方向と
は反対方向に向かって付勢することが好ましい。これによれば、ノズルプレートが剥離す
るのを抑制することができると共に、ノズルプレートのノズル開口の位置が液体噴射面の
面方向にずれるのを抑制して、着弾位置精度を向上することができる。
【0011】
また、前記導電部材には、先端部側から基端部側に向かって幅が漸大する複数の第1櫛
歯部が設けられ、前記屈曲部には、先端部側から基端部側に向かって幅が漸大する複数の
第2櫛歯部が設けられ、前記第1櫛歯部と前記第2櫛歯部とが互いに噛み合って接触して
いることが好ましい。これによれば、導電部材とノズルプレートとを確実に導通すること
ができる。
【0012】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特
徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、破壊を抑制すると共にコストを低減して、液滴の被記録媒体への着弾
位置精度を向上した液体噴射装置を実現できる。
【0013】
また、前記屈曲部が、少なくとも前記液体噴射ヘッドユニットの被記録媒体に対して相
対移動する移動方向上流側に設けられていることが好ましい。これによれば、屈曲部を設
けることで、被記録媒体がノズルプレートに当接することによる剥離を抑制することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図及び拡大図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの断面図及び拡大図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの要部斜視図である。
【図7】本発明の実施形態3に係るヘッドユニットの断面図である。
【図8】本発明の実施形態4に係るヘッドユニットの要部斜視図である。
【図9】本発明の実施形態5に係るヘッドユニットの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの断面図及びその
拡大図である。
【0016】
図示するように、インクジェット式記録ヘッド10を構成する保持部材の一例であるカ
ートリッジケース11は、インクカートリッジ(図示なし)が装着されるカートリッジ装
着部12を有する。例えば、本実施形態では、このカートリッジ装着部12に、ブラック
インク及び複数色のカラーインクが充填された各インクカートリッジがそれぞれ装着され
るようになっている。また、カートリッジケース11には、一端が各カートリッジ装着部
12に開口し、他端がカートリッジ装着部12とは反対面側に開口する複数のインク連通
路13がそれぞれ形成された管状の流路形成部14が突設されている(図2参照)。
【0017】
カートリッジケース11のカートリッジ装着部12のインク連通路13の開口部分には
、インクカートリッジに挿入される複数のインク供給針15が、インク内の気泡や異物を
除去するためのフィルター16を介して固定されている。
【0018】
カートリッジケース11のカートリッジ装着部12とは反対面側には、シール部材17
及び回路基板18を挟んで、ヘッド部材19が固定されている。本実施形態に係るヘッド
部材19は、本実施形態の圧力発生手段である複数の圧電素子を有する圧電素子ユニット
20を収容するための中空箱体状の部材であるヘッドケース21と、このヘッドケース2
1のカートリッジケース11とは反対側の端面に固定されるヘッド本体22とで構成され
ている。ヘッド本体22は、図1に示すように、複数のノズル開口23が穿設されたノズ
ルプレート24と、ノズル開口23に連通する圧力発生室25を含む流路が形成された流
路形成基板26と、流路形成基板26のノズルプレート24とは反対面側に配される振動
板27とで構成されている。これらノズルプレート24及び振動板27と流路形成基板2
6とはそれぞれ接着剤によって接合されている。また、ヘッドケース21には、一端側が
圧力発生室25に連通すると共に他端側がカートリッジケース11のインク連通路13に
連通するインク供給路(図示なし)が設けられており、インク連通路13からのインクは
、インク供給路を介して圧力発生室25に供給される。そして、圧力発生室25内に供給
されたインクには、圧電素子ユニット20によって振動板27を変形させることで圧力が
付与されて、ノズル開口23からインク滴として吐出される。
【0019】
このようなインクジェット式記録ヘッド10は、カートリッジケース11のカートリッ
ジ装着部12とは反対面側に、シール部材17、回路基板18、ヘッド部材19を構成す
るヘッドケース21及びヘッド本体22の順で配し、ネジ30によってカートリッジケー
ス11に固定することで形成される。
【0020】
ここで、ノズルプレート24は、ノズル開口23が開口する液体噴射面241となる液
体噴射部242と、液体噴射部242に連続してインク滴の噴射方向とは反対側の側面、
すなわち、ヘッド部材19の側面(液体噴射面241とは交差する方向)側に屈曲された
屈曲部243と、を具備する。
【0021】
本実施形態では、図1に示すように、液体噴射面241側から平面視した際に液体噴射
部242が長方形状に形成され、この4辺に屈曲部243を設けるようにした。
【0022】
このようなノズルプレート24は、例えば、ステンレス鋼等の金属板からなり、屈曲部
243は、金属板を屈曲することで容易に形成することができる。
【0023】
そして、ノズルプレート24の屈曲部243が、接地(GND)されている。本実施形
態では、4つの屈曲部243の一つに後述する導電部材40が係合される開口部244を
設け、開口部244内に挿入した導電部材40をノズルプレート24に当接させることで
、ノズルプレート24を導電部材40を介して接地するようにした。
【0024】
また、このようなノズルプレート24の液体噴射面241には、撥水膜(図示なし)が
形成される。撥水膜としては、例えば、フッ素系高分子を含む金属膜やシロキサン等をプ
ラズマ重合したプラズマ重合膜などを挙げることができる。金属膜からなる撥液膜は、例
えば、共析メッキにより所定の厚さで高精度に形成することができる。また、プラズマ重
合膜からなる撥液膜は、例えば、シロキサンを気化させた原料ガスにアルゴンやヘリウム
等の希ガス、酸素や二酸化炭素等の酸化力を有するガスを混合して原料を重合させ、プラ
ズマ重合装置を用いて形成することができる。本実施形態では、ノズルプレート24は屈
曲部243を介して接地されるため、撥水膜を液体噴射面241のみに設ければ、絶縁性
の撥水膜を用いることもできる。
【0025】
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッド10を具備する液体噴射ヘッドユニッ
トの一例であるインクジェット式記録ヘッドユニット(以下、単にヘッドユニットとも言
う)について詳細に説明する。なお、図3は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッド
ユニットの一例であるインクジェット式記録ヘッドユニットの要部斜視図であり、図4は
、インクジェット式記録ヘッドユニットの断面図及びその拡大図である。
【0026】
図示するように、ヘッドユニット1は、インクジェット式記録ヘッド10と、インクジ
ェット式記録ヘッドを保持する保持部材であるキャリッジ3と、を具備する。
【0027】
キャリッジ3は、インクジェット式記録ヘッド10とインクジェット式記録ヘッド10
に装着されたインクカートリッジ(図示なし)とが内部に保持される中空部材からなる。
【0028】
具体的には、キャリッジ3は、内部にインクジェット式記録ヘッド10が保持されるヘ
ッド保持孔31を具備する。
【0029】
また、キャリッジ3の一方面側には、ヘッド保持孔31と外部とを連通する露出孔32
が設けられている。露出孔32は、インクジェット式記録ヘッド10の液体噴射面241
よりも広い開口面積を有し、且つ液体噴射面241よりも後方(カートリッジケース11
側)よりも幅狭の開口面積を有する。これにより、インクジェット式記録ヘッド10は、
ノズルプレート24が露出孔32から外側に突出した状態で、ヘッド保持孔31内に保持
される。
【0030】
また、キャリッジ3の露出孔32が開口する面には、導電部材40が設けられている。
導電部材40は、金属等の導電性材料からなる。本実施形態では、導電部材40を板状の
弾性変形可能な金属材料で形成した。このような導電部材40は、キャリッジ3の露出孔
32が開口する面に液体噴射面241の面方向と同じ面方向となるようにねじ等の固定部
材50によって固定されている。そして、導電部材40の屈曲部243側の先端部41は
、ノズル開口23からインク滴が吐出される吐出方向とは反対側に屈曲されて設けられて
おり、導電部材40を弾性変形させて、先端部41を屈曲部243に設けられた開口部2
44のカートリッジケース11側の開口縁部に係合させることで、導電部材40はノズル
プレート24をインク滴の吐出方向とは反対側に向かって付勢した状態で当該ノズルプレ
ート24に当接している。これにより、導電部材40とノズルプレート24とは電気的に
接続されている。
【0031】
このように、導電部材40がノズルプレート24をインク滴の吐出方向とは反対方向に
向かって付勢した状態で、導電部材40とノズルプレート24とが導通することで、導電
部材40の当接によるノズルプレート24の剥離や、インク滴の着弾位置ズレなどが生じ
るのを抑制することができる。
【0032】
ちなみに、ノズルプレート24をインク滴の吐出方向に付勢すると、流路形成基板26
とノズルプレート24との接合方向とは反対方向に応力が印加されることになり、ノズル
プレート24が流路形成基板26から剥離してしまう虞がある。
【0033】
また、ノズルプレート24に液体噴射面241の面方向と同じ方向の応力が印加される
と、ノズルプレート24が流路形成基板26から剥離してしまう虞がある。また、ノズル
プレート24に液体噴射面241の面方向の応力が印加されると、導電部材の押圧によっ
てヘッド部材19が移動しノズル開口23の液体噴射面241の面方向の位置ずれが発生
して、着弾位置ずれにより印刷品質が低下してしまう虞がある。
【0034】
本実施形態では、導電部材40がノズルプレート24をインク滴の吐出方向とは反対方
向に向かって付勢した状態でノズルプレート24と導通することで、導電部材40の付勢
力によるノズルプレート24の剥離やノズルプレート24の位置ずれによる着弾位置ずれ
を抑制することができ、印刷品質が低下するのを抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、インクジェット式記録ヘッド10の液体噴射面241側に、ノ
ズルプレート24を覆うカバープレートを設けていない。このため、インクジェット式記
録ヘッド10の液体噴射面241と、インク滴が着弾する被記録媒体との距離(ペーパー
ギャップ)を短くすることができ、インク滴を被記録媒体に高精度に着弾させることがで
きる。また、ノズルプレート24の液体噴射面241にカバープレート等が設けられてお
らず、平坦な液体噴射面241が露出しているため、液体噴射面241をゴム等のブレー
ドでワイピングする際のブレードを低い押圧力で押圧した状態で、ワイピングすることが
可能となる。これにより、液体噴射面241に形成された撥水膜やブレードの消耗を抑制
することができると共に、液体噴射面241に付着して増粘したインクをブレードがノズ
ル開口23に擦り込んで、ノズル開口23の目詰まりが発生するのを抑制することができ
る。ちなみに、液体噴射面241にカバープレートを設けた場合、カバープレートの表面
と液体噴射面241との段差が生じるため、ブレードでワイピングする際の押圧力を強く
しなくてはならない。また、カバープレートと液体噴射面241との段差部分にインクが
滞留し、乾燥することによって増粘してしまう。このように液体噴射面241に増粘した
インクが存在すると、ブレードを液体噴射面241に強い押圧力で押し当てた際に、増粘
したインクをノズル開口23に擦り込み、ノズル開口23が増粘したインクで目詰まりを
起こしてしまう。
【0036】
また、本実施形態では、カバープレートを設けないようにしたため、部品点数を減らし
て、コストを低減することができる。
【0037】
このようなインクジェット式記録ヘッドユニット1は、液体噴射装置の一例であるイン
クジェット式記録装置に搭載される。ここで、インクジェット式記録装置について詳細に
説明する。なお、図5は、インクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【0038】
本実施形態の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置Iは、図5に示すように、
例えば、ブラック(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異
なる色のインクが貯留される貯留室を有するインクカートリッジ(液体貯留手段)2が装
着されたインクジェット式記録ヘッドユニット1を有する。インクジェット式記録ヘッド
ユニット1は、上述のように、インクジェット式記録ヘッド10と、インクジェット式記
録ヘッドを保持するキャリッジ3とを具備する。インクジェット式記録ヘッド10が搭載
されたキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に
設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミ
ングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ3はキャリッジ軸5
に沿って移動される。
【0039】
一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しな
い給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン8上を搬送されるようにな
っている。
【0040】
また、特に図示していないが、キャリッジ3に設けられた導電部材40は、上述のよう
に一端部がノズルプレート24の屈曲部243に当接することで導通し、他端部がキャリ
ッジ軸5に当接する。この導電部材40のキャリッジ軸5への当接は、導電部材40の弾
性変形を利用して、導電部材40がキャリッジ軸5を付勢した状態で当接すればよい。こ
のように、導電部材40をキャリッジ軸5に当接させることで、ノズルプレート24を導
電部材40及びキャリッジ軸5を介して接地することができる。
【0041】
なお、導電部材40は、インクジェット式記録ヘッド10に対して移動方向の一方側、
すなわち、キャリッジ軸5の軸方向の一方側に設けるのが好ましい。これにより、被記録
媒体Sの搬送時に被記録媒体Sが導電部材40に当接するのを抑制して、導通状態が解除
されるのを抑制することができる。
【0042】
このように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10では、ノズルプレート24
に屈曲部243を設け、屈曲部243を接地するようにした。このため、液体噴射面24
1側にカバープレート等が不要となり、部品点数を減らしてコストを低減することができ
る。また、カバープレートが不要になることから、液体噴射面241と被記録媒体Sとの
距離を短くして、インク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ノズルプレート24の液体噴射部242の4辺の全てに屈曲部
243を設けるようにしたため、被記録媒体Sがノズルプレート24に当接した際のノズ
ルプレート24の剥離を抑制することができる。ちなみに、ノズルプレート24に屈曲部
243が設けられていないと、被記録媒体Sが流路形成基板26とノズルプレート24と
を接着する接着剤の部分や、ノズルプレート24の端面などに当接し、ノズルプレート2
4が剥離し易い。本実施形態では、ノズルプレート24に屈曲部243を設けることで、
被記録媒体Sが屈曲部243に当接することで、ノズルプレート24の剥離を抑制するこ
とができる。
【0044】
さらに、ノズルプレート24に導通する導電部材40が、ノズルプレート24をインク
滴の吐出方向と反対方向に向かって付勢した状態でノズルプレート24の屈曲部243に
当接するようにしたため、ノズルプレート24の流路形成基板26からの剥離やヘッド部
材19の位置ずれを抑制することができる。
【0045】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る液体噴射ヘッドユニットの一例であるインクジェット式記録
ヘッドユニットの要部斜視図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の
符号を付して重複する説明は省略する。
【0046】
図6に示すように、本実施形態では、導電部材40Aは、先端部41がノズルプレート
24からカートリッジケース11(図示なし)側に屈曲されており、この屈曲した先端部
41には、さらにU字状に切断して、切断した内側の部分を外側に突出するように屈曲し
た係合部42が設けられている。このような導電部材40Aをインク滴の吐出方向に弾性
変形させて、係合部を図6(b)に示すように、ノズルプレート24の屈曲部243に設
けられた開口部244の開口縁部に係合させることで、導電部材40Aはノズルプレート
24をインク滴の吐出方向と反対方向に付勢する。これにより、導電部材40Aとノズル
プレート24とは導通することができ、ノズルプレート24を導電部材40Aを介して接
地することができる。
【0047】
このように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10では、ノズルプレート24
に屈曲部243を設け、屈曲部243を接地するようにした。このため、液体噴射面24
1側にカバープレート等が不要となり、部品点数を減らしてコストを低減することができ
る。また、カバープレートが不要になることから、液体噴射面241と被記録媒体Sとの
距離を短くして、インク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ノズルプレート24の液体噴射部242の4辺の全てに屈曲部
243を設けるようにしたため、被記録媒体Sがノズルプレート24に当接した際のノズ
ルプレート24の剥離を抑制することができる。ちなみに、ノズルプレート24に屈曲部
243が設けられていないと、被記録媒体Sが流路形成基板26(図2参照)とノズルプ
レート24とを接着する接着剤の部分や、ノズルプレート24の端面などに当接し、ノズ
ルプレート24が剥離し易い。本実施形態では、ノズルプレート24に屈曲部243を設
けることで、被記録媒体Sが屈曲部243に当接することで、ノズルプレート24の剥離
を抑制することができる。
【0049】
さらに、ノズルプレート24に導通する導電部材40Aが、ノズルプレート24をイン
ク滴の吐出方向と反対方向に向かって付勢した状態でノズルプレート24の屈曲部243
に当接するようにしたため、ノズルプレート24の流路形成基板26(図2参照)からの
剥離やヘッド部材19の位置ずれを抑制することができる。
【0050】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドユニットの要部断面図
である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は
省略する。
【0051】
図7に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10Aは、ノズルプレー
ト24Aを有する。ノズルプレート24Aは、ノズル開口23が開口する液体噴射面24
1が設けられた液体噴射部242と、液体噴射部242の4辺から屈曲して設けられた屈
曲部243と、を具備する。
【0052】
また、屈曲部243には、一部をU字状に切断して、切断した内側の部分を外側(ヘッ
ド部材19(図2参照)とは反対側)に屈曲することで突出して設けられた突出部245
が設けられている。突出部245は、ノズルプレート24Aのカートリッジケース11(
図示なし)側がノズルプレート24Aと連続する固定端となり、液体噴射面241側が自
由端となるように屈曲して設けられている。
【0053】
そして、導電部材40は、先端部41が屈曲して設けられており、導電部材40の先端
部41を突出部245の自由端となる先端に当接した状態で、導電部材40を液体噴射面
241の面方向に押圧する。これにより、突出部245は、カートリッジケース11(図
示なし)側の固定端を基点として先端がヘッド部材19(図2参照)側に弾性変形する。
このように突出部245が弾性変形し、且つ液体噴射面241側の先端が回動することで
、ノズルプレート24Aは、インク滴の吐出方向とは反対側に付勢される。すなわち、導
電部材40が液体噴射面241の面方向に押圧した応力は、突出部245の先端が回動し
て弾性変形することによって、液体噴射面241の面方向と、インク滴の吐出方向とは反
対側の方向とに分散する。これにより、ノズルプレート24Aが剥離する方向に働く応力
を低減して、ノズルプレート24Aの剥離を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態であっても、上述した実施形態1と同様に、カバープレート等が不要
となり部品点数を減らしてコストを低減することができる。また、カバープレート等が不
要なことから、液体噴射面241と被記録媒体との距離を短くして、印刷品質を向上する
ことができる。
【0055】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係る液体噴射ヘッドユニットの一例であるインクジェッ
ト式記録ヘッドユニットの要部斜視図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には
同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0056】
図8に示すように、本実施形態では、インクジェット式記録ヘッド10Bのノズルプレ
ート24Bは、液体噴射面241を有する液体噴射部242と、屈曲部243とを具備し
、屈曲部243には、複数の突出部245Aが設けられている。この突出部245Aは、
異なる長さで設けられている。
【0057】
これにより、図8(b)に示すように、導電部材40を液体噴射面241の面方向に移
動させて、突出部245Aの先端(自由端)に当接させる。このとき、例えば、導電部材
40が最も短い突出部245Aに当接しない位置で停止したとしても、導電部材40には
長い方の突出部245Aが当接してノズルプレート24Bと導電部材40とを導通するこ
とができる。これにより、ノズルプレート24Bと導電部材40との導通を確実に行って
、ノズルプレート24Bを確実に接地することができる。
【0058】
また、本実施形態であっても、上述した実施形態1と同様に、カバープレート等が不要
となり部品点数を減らしてコストを低減することができる。また、カバープレート等が不
要なことから、液体噴射面241と被記録媒体との距離を短くして、印刷品質を向上する
ことができる。
【0059】
(実施形態5)
図9は、本発明の実施形態5に係る液体噴射ヘッドユニットの一例であるインクジェッ
ト式記録ヘッドユニットの要部斜視図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には
同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0060】
図9に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10Cのノズルプレート
24Cは、液体噴射面241を有する液体噴射部242と、屈曲部243とを具備し、屈
曲部243には、複数の突出部245Bが設けられている。各突出部245Bは、先端(
自由端)側から固定端側に向かって幅が漸大して設けられている。すなわち、互いに隣り
合う突出部245Bの間隔は、固定端側ほど幅が漸小して設けられている。本実施形態で
は、この突出部245Bを第2櫛歯部と称する。
【0061】
一方、導電部材40Bの屈曲した先端部41には、複数の切り込みによって形成された
複数の第1櫛歯部43が設けられている。第1櫛歯部43は、先端側から基端部側ほど幅
が漸大して設けられている。すなわち、第1櫛歯部43を形成する切り込みは、先端側か
ら基端部に向かって幅が漸小して設けられている。
【0062】
このような導電部材40Bの第1櫛歯部43を液体噴射面241の面方向に移動させて
、ノズルプレート24Cの突出部245Bの間に挿入すると、第1櫛歯部43及び突出部
245B(第2櫛歯部)は、それぞれ先端側から基端部(固定端)側に向かって幅が漸大
しているため、その側面(切断面)同士が当接する。
【0063】
また、導電部材40Bをさらに液体噴射面241の面方向に移動させることで、突出部
245Bは、固定端を基点として第1櫛歯部43と当接した部分が回動して弾性変形する
。これにより、上述した実施形態3と同様に、ノズルプレート24Cは、インク滴の吐出
方向とは反対側に付勢される。これにより、ノズルプレート24Cが剥離する方向に働く
応力を低減して、ノズルプレート24Cの剥離を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態であっても、上述した実施形態1と同様に、カバープレート等が不要
となり部品点数を減らしてコストを低減することができる。また、カバープレート等が不
要なことから、液体噴射面241と被記録媒体S(図5参照)との距離を短くして、印刷
品質を向上することができる。
【0065】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態に基づいて詳細に説明したが、勿論、本発明は上述した実施
形態に限定されるものではない。例えば、上述した各実施形態では、ノズルプレート24
〜24Cの液体噴射部242の4辺に屈曲部243を設けるようにしたが、屈曲部243
は、インクジェット式記録ヘッド10〜10Cが被記録媒体Sに対して相対移動する移動
方向上流側に設けられていればよい。ちなみに、上述した各実施形態のインクジェット式
記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド10〜10Cがキャリッジ3によって主走
査方向に往復移動し、且つ被記録媒体Sが副走査方向に搬送されるため、屈曲部243は
、少なくともインクジェット式記録ヘッド10〜10Cの主走査方向の両側及び副走査方
向の上流側(被記録媒体Sの搬送方向上流側)の3辺に設ければよい。
【0066】
また、上述した各実施形態では、板状の金属などの導電部材40を介してノズルプレー
ト24〜24Cを接地するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、配線等をノズ
ルプレート24〜24Cの屈曲部243に接続し、ノズルプレート24〜24Cを配線を
介して接地するようにしてもよい。なお、ノズルプレート24〜24Cを配線を介して接
地するには、配線を接続する工程が増えてコストが増大するが、上述した各実施形態の導
電部材40〜40Bを用いた方法であれば、配線の接続工程等が不要でコストを低減する
ことができる。
【0067】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド10(
ヘッドユニット1)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが
、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10(ヘッドユニット1
)が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂
ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0068】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリン
ター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、
液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELデ
ィスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘ
ッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができ
る。
【符号の説明】
【0069】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッド
ユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 10〜10C インクジェット式記録ヘッド、
19 ヘッド部材、 20 圧電素子ユニット(圧力発生手段)、 21 ヘッドケー
ス、 22 ヘッド本体、 23 ノズル開口、 24〜24C ノズルプレート、 2
5 圧力発生室、 26 流路形成基板、 27 振動板、 40〜40B 導電部材、
41 先端部、 42 係合部、 43 櫛歯部、 241 液体噴射面、 242
液体噴射部、 243 屈曲部、 244 開口部、 245〜245B 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口が形成された液体噴射面を有するノズルプレートと、
該ノズルプレートに連通する圧力発生室と、
該圧力発生室に圧力変化を生じさせて前記ノズル開口から液体を噴射させる圧力発生手
段と、を具備し、
前記ノズルプレートが、前記液体噴射面から液体の噴射方向とは反対側の側面側に屈曲
して設けられた屈曲部を具備し、
該屈曲部が接地されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドと、当該液体噴射ヘッドを保持する保持部材と、を具
備し、
前記保持部材には、前記屈曲部に電気的に接続された導電部材が設けられており、前記
屈曲部は、前記導電部材を介して接地されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニッ
ト。
【請求項3】
前記導電部材は、前記ノズルプレートを前記ノズル開口から液体の噴射方向とは反対方
向に向かって付勢することを特徴とする請求項2記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
前記導電部材には、先端部側から基端部側に向かって幅が漸大する複数の第1櫛歯部が
設けられ、前記屈曲部には、先端部側から基端部側に向かって幅が漸大する複数の第2櫛
歯部が設けられ、前記第1櫛歯部と前記第2櫛歯部とが互いに噛み合って接触しているこ
とを特徴とする請求項2又は3記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とす
る液体噴射装置。
【請求項6】
前記屈曲部が、少なくとも前記液体噴射ヘッドユニットの被記録媒体に対して相対移動
する移動方向上流側に設けられていることを特徴とする請求項5記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−245687(P2012−245687A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118791(P2011−118791)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】