液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
【課題】液体噴射部内部の圧力室を押圧することによってノズルからインクを噴射すると、圧力室には押圧による残圧の影響が残り、残圧の影響が消えぬまま、連続的にインクを噴射しようとすると、噴射する液体に加わるエネルギーが変動してしまい、インクの噴射速度に影響し、被記録媒体に印刷ムラが生じる。インク滴の着弾位置精度を向上させ、画質の優れるインクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置を提供する。
【解決手段】駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、初期駆動パルスの立ち下がり部は圧力室内部が初期圧力と同等の圧力時に形成することとし、階調表現する場合に1滴と2滴、3滴などの複数滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴の吐出速度差をなくす。
【解決手段】駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、初期駆動パルスの立ち下がり部は圧力室内部が初期圧力と同等の圧力時に形成することとし、階調表現する場合に1滴と2滴、3滴などの複数滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴の吐出速度差をなくす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体に液体を噴射する装置として複数のノズルから被記録媒体に向かって液滴を噴射する液体噴射記録装置が知られている。このような液体噴射記録装置の一部には、例えば液体が充填されたノズルの外壁部が圧電素子を有するアクチュエータによって弾性変形されることにより、孔部(ノズル)から液体が被記録媒体に向かって飛翔するインクジェット方式等が採用された液体噴射ヘッドを備えたものがある。
【0003】
ところで、そのようなインクジェット方式の中でも、近年では印刷の高精細化に合わせて、印刷の高速化の要求が高まっている。そのため、現在に至るまで印刷の高精細化技術と高速化技術が数多く研究されている。
【0004】
印刷の高精細化としては、グレースケール技術がよく知られている。従来の印刷技術は、被記録媒体に印刷する際に、印刷をしなければならない箇所を判定し、液体噴射記録ヘッドが所定の大きさの液体(インク)を噴射することにより、被記録媒体に印刷記録を行っていた。しかしながら、この方法では色の濃淡を表現することが困難であり、高精細化の分野では用いられにくい方式であった。そこで、液体噴射記録ヘッドが噴射する液体の大きさに変化を付け、濃く印刷したい箇所は比較的大きな液体を噴射し、淡く印刷したい箇所は比較的小さな液体を噴射するグレースケール技術が開発された。これによって、色の濃淡を表現することが可能となり、例え黒一色の液体インクだったとしても、鮮明な印刷紙面を出力することができるようになった。
【0005】
例えば、特許文献1には、前述したグレースケール技術が紹介されている。この特許文献1において紹介されている駆動波形を図12に示す。図12(a)〜(c)は3種類の駆動波形を示し、図12(a)の第一駆動波形は最終駆動パルスP1のみを有し、図12(b)の第二駆動波形は最終駆動パルスP1と初期駆動パルスP2を有し、図12(c)の第三駆動波形は最終駆動パルスP1と初期駆動パルスP2及びP3を有する。各パルスP1、P2、P3はそれぞれ同じ電圧Vのパルス高さである。具体的に、第一駆動波形はパルスP1による1回の駆動により1滴分、第二駆動波形はパルスP1とP2による2回の駆動により2滴分、第三駆動波形はパルスP1とP2とP3による3回の駆動により3滴分のインクがそれぞれ噴射され、大きさの異なるインクによって被記録媒体が印刷されるグレースケール方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−174831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図12の駆動波形を用いる従来のインクジェット・グレースケール方式の駆動方法の場合は図13の残圧の影響と、図14の電圧と吐出速度の関係からわかるように、1滴・2滴・3滴それぞれの吐出速度に差異が発生するという課題がある。1滴吐出時に比べ2滴、3滴分のインク容量時の吐出速度がそれぞれ速くなるのは、初期駆動P2、P3で発生した圧力変化の影響が残り、その振動の余波が加わり吐出速度が大きくなることに起因している。ここで発生した吐出速度の差は、インクジェットプリンタで印字した場合、インク滴の着弾位置の差として現れてしまい、印字物の画質を悪化させてしまうという課題がある。
【0008】
つまり、液体噴射部内部の圧力室を押圧することによってノズルからインクを噴射すると、圧力室には押圧による残圧の影響が残り、圧力の波が存在する。残圧の影響が消えぬまま、連続的にインクを噴射しようとすると、正常状態で圧力室を押圧する場合に比べて、噴射する液体に加わるエネルギーが変動してしまう。このエネルギーの変化はインクの噴射速度に影響し、被記録媒体にインクが着弾するまでの時間に影響を及ぼす。その結果、被記録媒体に印刷ムラが生じる可能性がある。
また、上述した特許文献1には残圧の影響による印刷結果の不鮮明さに加えて、高速化が図られておらず、現在におけるインクジェット技術の要求を十分に満たしているとは言えない。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、噴射する液体量を変化させるグレースケール方式のインクジェット技術において、液体の大きさに依存する噴射速度の差異を低減し、高精細化を実現するとともに、高速化を併せて実現することができる液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の液体噴射ヘッドの第一の形態における特徴は、液体を孔部から被記録媒体へ噴射する液体噴射部と、前記圧力室を押圧する駆動波形を前記駆動電極に供給する駆動回路と、を備え、圧力室を押圧する駆動波形を駆動電極に供給し、圧力室の内部を初期圧力から噴射圧力まで押圧することによって、被記録媒体へ液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいて、駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、初期駆動パルスの立ち下がり部は圧力室内部が初期圧力と同等の圧力時に形成するところにある。
【0011】
本発明の液体噴射ヘッドの第二の形態における特徴は、上述した第一の形態において、最終駆動パルスのパルス幅は液体噴射部の固有周期または液体の吐出速度が最大となる周期の0.5倍の長さであるところにある。
【0012】
本発明の液体噴射ヘッドの第三の形態における特徴は、上述した第一または第二の形態において、初期駆動パルスが2回以上供給されるところにある。
【0013】
本発明の液体噴射ヘッドの第四の形態における特徴は、上述した第一乃至第三の形態の何れかにおいて、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅よりも長いところにある。
【0014】
本発明の液体噴射ヘッドの第五の形態における特徴は、上述した第四の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであるところにある。
【0015】
本発明の液体噴射ヘッドの第六の形態における特徴は、上述した第五の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであるところにある。
【0016】
本発明の液体噴射ヘッドの第七の形態における特徴は、上述した第一乃至第三の形態の何れかにおいて、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅よりも短いところにある。
【0017】
本発明の液体噴射ヘッドの第八の形態における特徴は、上述した第四の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであるところにある。
【0018】
本発明の液体噴射ヘッドの第九の形態における特徴は、上述した第五の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであるところにある。
【0019】
本発明の液体噴射ヘッドの第十の形態における特徴は、上述した第三の形態において、初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ最終駆動パルスのパルス幅よりも長いパルス幅と、最終駆動パルスのパルス幅よりも短いパルス幅によって構成されるところにある。
【0020】
本発明の液体噴射ヘッドの第十一の形態における特徴は、上述した第十の形態において、初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであるパルス幅と、最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであるパルス幅を有するところにある。
【0021】
本発明の液体噴射ヘッドの第十二の形態における特徴は、上述した第十一の形態において、初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであるパルス幅と、最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであるパルス幅を有するところにある。
【0022】
本発明の液体噴射記録装置の態様における特徴は、上述した第一乃至第十二の何れかの形態において記載した液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給部と、液体噴射ヘッドから液体が噴射される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段と、からなるところにある。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、液体噴射ヘッドにおいて、駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、初期駆動パルスの立ち下がり部は圧力室内部が初期圧力と同等の圧力時に形成することとしたので、階調表現する場合に1滴と2滴、3滴などの複数滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴吐出速度差をなくし、インク滴の着弾位置精度を向上させ、画質の優れるインクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの分解図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの駆動の説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る液体噴射記録装置の構成図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る波形の説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例に係る波形の説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る波形の説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る波形の説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る波形の説明図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る波形の説明図である。
【図12】従来技術に係る波形の説明図である。
【図13】従来技術に係る残圧の説明図である。
【図14】従来技術に係る液体速度差の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
本発明において、図1は本実施形態のインクジェットヘッド100(液体噴射ヘッド)全体の正面図、図2は本実施形態のインクジェットヘッド100の概略断面図で、図3は、本実施形態のインクジェットヘッド100の吐出圧力発生部周辺を示す分解図である。
【0027】
図1〜図3に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド100は、ヘッドチップ26と、この一方面側に設けられるインク流路21と、ヘッドチップ26を駆動するための駆動回路等が搭載された駆動回路基板14と、ヘッドチップ26内の圧力変化を緩和させる圧力緩和ユニット20とを有し、これらの各部材は、それぞれベース13に固定されている。
【0028】
続いて吐出のための圧力発生源となるヘッドチップ26周辺の詳細について説明する。図3に示すように、圧電セラミックプレートからなるヘッドチップ26を構成する圧電セラミックプレート1には、ノズル孔11に連通する複数の溝5が並設され、各溝5は、側壁7で隔離されている。
【0029】
各溝5の長手方向の一端部は圧電セラミックプレート1の一端面まで延設されており、他端部は、他端面まで延びておらず、深さが徐々に浅くなっている。また、各溝5の幅方向両側の側壁7には、溝5の開口側に長手方向に亘って駆動電圧印加用の電極4及び電極9が形成されている(図4参照)。
【0030】
圧電セラミックプレート1に形成される各溝5は、例えば、円盤状のダイスカッターにより形成され、深さが徐々に浅くなった部分は、ダイスカッターの形状により形成されてしまう。また、各溝5内に形成される電極4及び電極9は、例えば、公知の斜め方向からの蒸着により形成される。このような溝5の両側の側壁7の開口側に設けられた電極4及び電極9には、電気配線を有するフレキシブル基板19の該電気配線の一端が接合され、フレキシブル基板19の該電気配線の他端側は、駆動回路基板14上の図示しない駆動回路に接合されることで、電極4及び電極9は駆動回路に電気的に接続されている。さらに、圧電セラミックプレート1の溝5の開口側には、インク室プレート2が接合されている。
【0031】
なお、インク室プレート2は、セラミックプレート、金属プレートなどで形成することができるが、圧電セラミックプレート1との接合後の変形を考えると、熱膨張率の近似したセラミックプレートを用いることが好ましい。
【0032】
また、圧電セラミックプレート1とインク室プレート2との接合体の溝5が開口している端面には、ノズルプレート3が接合されており、ノズルプレート3の溝5の各1個おきに対向する位置にはノズル孔11が形成され、ノズル孔11と溝5が連接されている。
【0033】
本実施形態では、ノズルプレート3は、圧電セラミックプレート1とインク室プレート2との接合体の溝5が開口している端面の面積よりも大きくなっている。このノズルプレート3は、ポリイミドフィルムなどに、例えば、エキシマレーザ装置を用いてノズル孔11を形成したものである。また、図示しないが、ノズルプレート3の被記録媒体に対向する面には、インクの付着等を防止するための撥水性を有する撥水膜が設けられている。
【0034】
さらに、この圧電セラミックプレート1とインク室プレート2との接合体の各溝5が開口している端面側の外周面には、ノズルプレート3を支持するヘッドキャップ12が接合されている。このヘッドキャップ12は、ノズルプレート3の接合体端面の外側と接合されて、ノズルプレート3を安定して保持するためのものである。
【0035】
そして、本実施形態のインクジェットヘッド100は、インク室プレート2上に、溝5のそれぞれにインクを供給するためのインク流路21が固定され、インク流路21の中央部にはインク導入のためのインク導入口41が形成され、インク導入口41には印字中の圧力変動を吸収するための圧力緩和ユニット20が接続されている。例えば、初期充填時等にインクタンク(図示せず)からのインクが圧力緩和ユニット20に充填され、更に、インク流路21内にインクが導入され、最終的に溝5にインクが満たされる仕組みである。
【0036】
図3にて詳細に示すヘッドチップ26の構成は、上述したとおり圧電セラミックプレート1に形成した溝5の一部を閉塞するようにインク室プレート2が設けられ、この2枚のプレートを接合して溝5が開口している端面(図面手前側)にノズルプレート3が接合される。これらの接合では、インクによって侵食されない接着剤を用いることで、接着部分が剥離し、インクが漏れてしまうことを防止している。
【0037】
さらに、図3に示す溝5は圧電セラミックプレート1の長手方向に所定間隔を開けて複数設けられているが、そのそれぞれに以下に記載する違いがある。本実施形態において示すインクジェットヘッド100は所謂独立チャネルタイプとして知られている構成で、インクが供給される吐出溝51と非吐出溝52が交互に設けられている。
【0038】
インク室プレート2には、インク流路21を介して供給されるインクを吐出溝51へ供給する前に貯留するためインク室プレート2の一端面に設けられた共通インク室22と、該共通インク室22からインクを各吐出溝51へ供給するためにスリット23を設けている。このスリット23は吐出溝51と対になっており、圧電セラミックプレート1とインク室プレート2を接合する際に、スリット23と吐出溝51が連通するように構成される。上述したノズル孔11は、この吐出溝51に連通しており、共通インク室22−スリット23−吐出溝51−ノズル孔11を介することによってインクが吐出される。
【0039】
一方、非吐出溝はその上部がインク室プレート2によって閉塞され、インク室プレート2の共通インク室22に連通しておらず、インクは供給されない。さらに、ノズルプレート3の非吐出溝に対応する位置にはノズル孔11が設けられていない構成となっている。これらの構成を備えたヘッドチップ26の駆動方法を以下に示す。
【0040】
次に図5及び図4を参照して、電極4及び電極9の駆動制御について説明する。上述したように本実施形態のインクジェットヘッド100は、電極4及び電極9を有するヘッドチップ26と、ヘッドチップ26とフレキシブル基板19で接続されている駆動回路基板14とを備えている。駆動回路基板14はまたヘッド制御部111と画像データ処理部112とを有するインクジェットヘッド駆動制御部110に接続されている。そして、インクジェットヘッド100とインクジェットヘッド駆動制御部110を備えるインクジェット記録装置120は、所定のインターフェースを介してパーソナルコンピュータ200等に接続されている。なお、インクジェット記録装置120は他に図示していないインクジェットヘッド100にインクを供給するインク供給部、インクジェットヘッド100からインクが吐出される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送部等を備えている。
【0041】
駆動回路基板14の駆動回路(印加手段)は、電極4及び電極9に印加する電圧をオン・オフ制御するためのスイッチング素子等からなる回路によって構成されていて、側壁7が構成するアクチュエータを変形動作させてノズル孔11からインクを飛翔させる所定電圧の駆動パルスを、アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら電極4及び電極9に印加する。ヘッド制御部111は、駆動回路基板14に対して電極印加電圧やスイッチング素子のオン・オフ制御等を行う制御信号を供給し、電極4及び電極9に所定電圧の駆動パルスを印加することで、各ノズル孔11における吐出開始や停止制御を行う。画像データ処理部112は、パーソナルコンピュータ200から入力された情報に基づいて各ノズル孔11に対応した画像データを作成する。また画像データ処理部112は、駆動回路基板14に対して、作成した画像データに基づいてどのタイミングで各電極4及び電極9に電圧を印加するかを設定する信号を出力することで、各電極4及び電極9に印加する駆動パルスを複数回発生させて被記録媒体に到達するインク滴の容量を変化させる制御を行う。例えば階調制御を行わない場合には2値データ(0または1)からなる画像データに基づいて各ノズル孔11に対応した電圧印加または停止を指示する信号を出力し、例えば4階調の階調制御を行う場合には4値データ(0、1、2、3)からなる画像データに基づいて、各ノズル孔11に対応する4種類の吐出容積(0滴、1滴、2滴、3滴分)に対応する駆動パルスの発生回数を指示する信号を出力する。
【0042】
続いて、本実施形態の電極の配線方法および駆動方法について図6、図4をもとに説明する。図6は第1実施形態のインクジェットヘッド100の吐出信号波形(電極4及び電極9の駆動パルス波形)とノズル孔11付近の圧力変化を示す図で、図4はインクジェットヘッド100の電極配線状態を示す断面図である。図6(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図6(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図6(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図で、図4(a)は非駆動時の断面図、図4(b)は、駆動時の断面図である。矢印6は分極方向を示しており、側壁7を挟む電極4及び電極9に電圧をかけるとそれぞれの側壁7は所望の方向に変形する構造となっている。
【0043】
図4(a)に示すようにこのインクジェットヘッド100は、溝5に形成された電極4はアース電位(GND)の共通電極となっており、それを挟む電極9は外部からの出力信号を与えられる電極構造である。この電極9に図6(a)に示す正電圧パルス(駆動パルス)を印加すると電極4との電位差によって、図4(b)に示すように側壁7がそれぞれ変形する。この変形は電極9が正の電圧が印加されているTの時間変形しておりT後電位がゼロになると再び図4(a)の状態に戻る。
【0044】
尚、時間Tは最も効率のよい吐出速度が速くなる時間に設定されている。この効率のよい吐出速度になる時間Tの時間幅を有する正電圧パルスP1を最終駆動パルスと呼ぶ。この側壁7の変形によって溝5内に充填されたインクに圧力の変化が起こり、インクがノズル孔11から1滴飛翔する仕組みである。また、Tはインクの吐出速度が最大となるパルス幅であり、複数の実験データから以下に詳細に示す複数の駆動パルスが連続する場合、パルス周期がTの2倍になる時にインクの吐出速度が最大になることがわかっている。ここで、パルス幅とはパルスの立ち上がりから立ち下がりまでで定義し、パルス周期とはインクを吐出する印刷周期内における特定のパルス幅の立ち上がり若しくは立ち下がりから特定のパルスの次のパルスの立ち上がり若しくは立ち下がりまでで定義する。なお、Tの2倍になる周期はヘッドチップ26やヘッドチップ26に充填されるインクによって決定する固有周期に等しい。つまり、最終駆動パルスのパルス幅は液体噴射部の固有周期または液体の吐出速度が最大となる周期の0.5倍の長さである。
【0045】
インクの吐出するメカニズムを詳細に説明すると、例えば所望の吐出溝51を駆動する場合は、上述のとおり電極4をGNDにして、電極9に駆動パルスを印加する。これにより一時的に所望の吐出溝51の両方の側壁7が非吐出溝52側へ、それぞれ膨らむように変形する。この変形は圧電セラミックプレート1の分極方向6と電圧を印加する方向が直交することによって生じるせん断変形であり、両側壁7が変形することによって吐出溝51の容積は一時的に拡大する。この容積拡大に伴って、吐出溝51内の圧力は負圧状態になるため、負圧状態を解消するように共通インク室22およびスリット23を介して吐出溝51内にインクが供給される。供給されたインクの圧力は圧力波となって吐出溝51を進行し、やがてノズル孔11に到達する。このタイミングで、両側壁7の電極に印加した電圧をGNDにすることで、両側壁7を膨らんだ状態から電圧を印加していない平坦な状態に戻す。つまり、膨張状態の吐出溝51を元の状態に戻すことで、一時的に吐出溝51内の容積を縮小する。この動作により、ノズル孔11に到達したインクの圧力波に加えて、両側壁7の元に戻る変形によって吐出溝51内のインクを押圧し、吐出溝51の内部に充填されたインクをノズルから噴射する。
【0046】
また、階調表現するためノズル孔11から飛翔するインクの吐出容積を変えるためには、図6(b)に示す最終駆動パルスの前に時間Tよりも長い時間T2の正電圧パルスP2を時間T4の間隔で印加する。これにより、ノズル孔11から2滴分の容積のインクが飛翔する。同様に、図6(c)に示す正電圧の時間TのパルスP1、時間T2のパルスP2の前に最終駆動パルスの時間Tより短い印加時間T3の正の駆動パルスを時間T5の間隔で動作させる。すると、ノズル孔11から3滴分の容積のインクが飛翔させることができる。
【0047】
第1実施形態において、各波形を詳細に説明する。時間T2と時間T5は数値にして時間Tの1.5倍の長さであり、時間T3と時間T4は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。すなわち、時間T2と時間T5を加えた長さ及び時間T3と時間T4を加えた長さは時間Tの2倍であることとした。
【0048】
図6(b)において、2滴吐出の際の駆動波形は、所望の時間に正電圧パルス(初期駆動パルス)P2を立ち上げ、電圧V[V]で時間T2保持する。時間T2の間、側壁7の変形によって溝5内に充填されたインクに圧力の変化が生じる。なお図6〜図9において、初期圧力を0とし各数値−1、1及び2は変化の割合を示しており、実際の圧力値の数値ではない。なお、以下特に断らない限り、圧力値とはノズル孔11付近の圧力値のことを指す。
【0049】
まず正電圧パルスP2を立ち上げたことによって溝5内の容積が拡大し、圧力値は負圧値−1へと急峻に変化する。そして、溝5の容積が拡大されたことによって、溝5内にインクが引き込まれ、圧力値は正圧側へ次第に変化し初期圧力0まで値が戻る。その後、引続き溝5内へインクが引き込まれることによって、圧力値は初期圧力0以上の正圧になり、正電圧パルスP2の立ち上げから約時間T経過のタイミングで、およそ正圧値1へ比較的なだらかに到達する。正圧値1に圧力値が近づく付近でインクの引き込みの勢いは減少し、正圧値1に近づくまでのインクの引き込みに反発して、次第に負圧方向へ圧力値が変化する。そして、圧力値が初期圧力0に再び到達したとき、すなわち正電圧パルスP2の立ち上げより時間T2経過したときに維持していた電圧V[V]を0[V]へ立ち下げる。
【0050】
この電圧立ち下げにより、溝5内の容積は拡大状態から通常状態に変化し、見掛け上の容積変化では溝5内が圧縮されている。電圧を立ち下げるタイミングは初期圧力0のときであり、溝5内の圧縮によって圧力値は正圧側へ急峻に変化し、圧力値は正圧値1に到達する。このとき、急峻な正圧側への圧力変化を受けて溝5内のインクは素早く加圧され、ノズル孔11から一滴目のインクが吐出される。インクが吐出されることにより、溝5内のインクの量が減少し、時間T4において圧力値は負圧側へ変化して初期圧力0に到達する。このとき、正電圧パルスP2を立ち上げから時間Tの2倍の時間が経過している。
【0051】
以上のとおり、一滴目のインクが吐出されるメカニズムを説明した。なお、一滴目のインク滴が吐出されるのは正電圧パルスP2を立ち上げから時間T2のタイミングで圧力値が正圧値1へ急峻に変化したときであり、正電圧パルスP2を立ち上げから時間Tのタイミングで圧力値が正圧値1へ近づくときではない。比較的なだらかに変化する時間Tのタイミングでは溝5内は正圧の状態であるが、インク滴が吐出されるには、より急峻な圧力変化が必要である。
【0052】
図6(b)に戻って、時間T4の経過後に、正電圧パルスP1が正電圧パルスP2と同じ電圧値V[V]まで立ち上げられ、時間Tの最終駆動パルスとして印加される。正電圧パルスP1は、上述のとおり、電圧値V[V]を時間T保持する。この期間では、正電圧パルスP2の立ち上げから時間Tまでの変化と同様に、溝5内の容積拡大に起因する負圧変化と、インクの引き込みに起因する正圧変化が生じ、時間Tが経過したときに圧力値は正圧値1の近くまで比較的なだらかに変化する。
【0053】
このタイミングで、正電圧パルスP1は維持していた電圧V[V]を0[V]へ立ち下げる。それに伴い、インクにはさらに正圧の圧力変化が生じ、圧力値の割合としては正圧値2に急峻に到達する。この急峻な圧力変化を受けて、二滴目のインクがノズル孔11から吐出される。二滴目のインク吐出後、溝5内は吐出されたインクの分量だけインクが不足するので、圧力値は負圧方向に変化し、残圧の影響を受けて圧力値が減衰振動する。
【0054】
一滴目のインクと二滴目のインクの関係を説明すると、一滴目のインクは圧力値の割合として正圧値1のときに吐出される。しかしながら実際は、この正圧値1の圧力変化では、インクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されていない。具体的に、インクはノズル孔11の近傍で一滴分の分量を持ってノズル孔から溝5の外側に向かって盛り上がり、滴として形成される寸前の形態として設けられる。
【0055】
そして、正電圧パルスP2に続けて正電圧パルスP1を印加する。上述したとおり、正電圧パルスP1による二滴目のインクには、正圧値2の圧力が付加されており、一滴目のインク滴より大きな圧力が掛かっている。これにより、二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。この二滴目のインクは一滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離されていないタイミングで発生するので、一滴目と二滴目のインクが数珠繋がりのように空気中へ放出される。放出された一滴目と二滴目のインクは、互いの表面張力により引き寄せられ、二滴分の分量で一つのインク滴として吐出される。
【0056】
次に、図6(c)において、3滴吐出の駆動波形を示す。この場合、上述した正電圧パルスP1とP2の構成に加えて、正電圧パルスP2の前に正電圧パルス(初期駆動パルス)P3を構成している。つまり、この形態での初期駆動パルスは2回印加される構成である。正電圧パルスP3は、上述した時間T3の電圧Vを保持する時間によって構成され、正電圧パルスP2の電圧立ち上がりのタイミングと、T5の休止期間を挟んで印加される。
【0057】
具体的に、正電圧パルスP3は所望のタイミングで初期圧力0から電圧V[V]まで立ち上げられる。これに伴い、溝5内の容積拡大が発生し圧力値が負圧値−1まで変化することによって、インクが溝5内に引き込まれる。時間T3で電圧Vが保持され、その間に引き込まれたインクに起因して、圧力値が正圧側へ変化する。正圧側に変化した圧力値は、やがて時間T3経過するときに初期圧力0へ変化し、このタイミングで正電圧パルスP3を立ち下げる。
【0058】
正電圧パルスP3が立ち下げられると、圧力値は急峻に正圧側の正圧値1まで変化する。急峻な圧力変化は二滴吐出の場合と同様に、一滴目のインクがノズル孔11から盛り上がり、ノズル孔11のインク界面から完全に切り離されずに形成される。吐出後の圧力値の変化は、インクが吐出されたことに起因して、溝5内のインクが不足するため、圧力値は負圧方向に比較的なだらかに変化する。
【0059】
正電圧パルスP3が立ち上げから時間Tが経過した頃に、圧力値は初期圧力0に到達し、引続き負圧方向へ変化する。そして、およそ正電圧パルスP3が立ち上げから時間1.5Tが経過した頃に圧力値が負圧値−1の近傍へ比較的なだらかに到達する。この正電圧パルスP3による負圧への変化は、電圧の立ち下げによって与えられた正圧値1に反発する負圧値−1が限界値であり、圧力値が負圧値−1を超えて負圧方向へ変化することはない。
【0060】
圧力値が負圧値−1の近傍へ到達すると、負圧方向への変化は減少し、次第に正圧側へ圧力値が変化する。そして正電圧パルスP3が立ち上げから時間2Tが経過したとき、圧力値が初期圧力0に到達する。このタイミングで、正電圧パルスP2が立ち上げられ、図6(b)に関して上述した圧力変化と同様の形態をとる。
【0061】
一滴目、二滴目および三滴目のインクの関係を説明する。一滴目のインクは上述のとおりノズル孔11から盛り上がり、ノズル孔11のインク界面から完全に切り離されずに形成される。二滴目のインクは、上述と同様に、ノズル孔11から盛り上がり、ノズル孔11のインク界面から完全に切り離されずに形成される。このとき、一滴目のインクは二滴目のインクと繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。
【0062】
続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクには、正圧値2の圧力が付加されており、一滴目と二滴目のインク滴より大きな圧力が掛かっている。これにより、三滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。この三滴目のインクは一滴目のインクと繋がる二滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離されていないタイミングで発生するので、一滴目、二滴目および三滴目のインクが数珠繋がりのように空気中へ放出される。放出された一滴目、二滴目および三滴目のインクは、互いの表面張力により引き寄せられ、三滴分の分量で一つのインク滴として吐出される。なお、三滴目のインク吐出後、溝5内は吐出されたインクの分量だけインクが不足するので、圧力値は負圧方向に変化し、残圧の影響を受けて圧力値が減衰振動する。
【0063】
なお、第1実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T2〜T5は上述した数値に限らず、第1実施形態のT2とT5はTの1.3倍〜1.7倍、T3とT4はTの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。この数値の臨界的な意味とその根拠は、どのようなインクにも対応することができるようにするためであり、複数種類のインクを用いて実験的に導き出した数値である。実験では、水性インク、油性インクやソルベントインクなどの複数種類のインク材料を用いて、さらに同種類のインク材料でも粘度などの物性値が異なるインクを用いて詳細に検討した。
【0064】
さらに、第1実施形態以下、本発明においては圧力値の変化の上限下限を割合1と−1の範囲に留めるため、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。これに加えて、圧力変化点である正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0065】
このような第1実施形態の構成を採用することによって、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。つまり、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、最終駆動パルスP1によってインクに与えられる圧力が等しい値となる。これによって、ノズルから吐出されるインク滴にもそれぞれ同等の圧力が付加されるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度が等しくなる。
【0066】
1滴・2滴・3滴のインクを吐出する上で、最終駆動パルスP1で付加される圧力値が2となる条件は、以下のように考えられる。それらは、初期駆動パルスP2、P3を初期圧力(圧力値0)と等しい圧力の時に立ち上げること、初期駆動パルスP2、P3を初期圧力(圧力値0)と等しい圧力の時に立ち下げること、最終駆動パルスP1を直前の初期駆動パルスによって与えられた圧力値が初期圧力(圧力値0)と等しい圧力の時に立ち上げること、最終駆動パルスP1を圧力値が2となるタイミングで立ち下げること、である。
第1実施形態において検討したこれらの条件を満たす形態として、以下に記載する変更例や他の実施形態が実現可能である。
【0067】
(変形例)
図7に本発明の第1実施形態の変形例を示す。図7(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図7(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図7(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
なお、図7(c)における正電圧パルスP3は電圧保持時間T3’の実質的な時間幅は変化させず、休止期間T5’の時間幅を図6(c)の時間T5の三分の一の長さとしている。つまり、T5’は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。その他の符号は図6と同一の符号を付した。
【0068】
この変形例は、図6(a)と図6(b)に記載の第1実施形態における1滴と2滴のインク容量を吐出する駆動波形と全く同じ駆動波形を図7(a)と図7(b)に示し、図7(c)に示す3滴のインク容量を吐出する波形が第1実施形態と異なる点である。具体的に説明すると、図7(c)は正電圧パルスP3を時間方向に時間Tシフトして設けている。すなわち、図6(c)を参照してわかるように、図6(c)では正電圧パルスP3の電圧立ち上げからT時間経過後に圧力値が初期圧力0に到達している。この点を正電圧パルスP2の立ち上げ時に変更した駆動波形が図7(c)に示す駆動波形である。
【0069】
この変形例においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0070】
図7(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0071】
なお、変形例における構成は上述のものに限られるものではない。第1実施形態と同様に、T3’とT5’は上述した数値に限らず、時間Tの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、正電圧パルスP3の立ち上り時間を第1実施形態に比較してT時間シフトさせたため、時間が短縮でき、高速印字に対応することができる。
【0072】
なお、このような変形例の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。特に、第1実施形態において検討したこれらの条件を満たす形態はこの変形例に限られず、以下に記載する実施形態が実現可能である。
【0073】
(第2実施形態)
図8に本発明の第2実施形態を示す。図8(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図8(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図8(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
【0074】
第2実施形態では、図8(b)に示す最終駆動パルスの前に時間Tよりも短い時間T12の正電圧パルスP12を時間T14の間隔で印加する。これにより、ノズル孔11から2滴分の容積のインクが飛翔する。同様に、図8(c)に示す正電圧の時間TのパルスP11、時間T12のパルスP12の前に最終駆動パルスの時間Tより長い印加時間T13の正の駆動パルスを時間T15の間隔で動作させる。すると、ノズル孔11から3滴分の容積のインクが飛翔させることができる。
【0075】
第2実施形態において、各波形を詳細に説明する。時間T12と時間T15は数値にして時間Tの0.5倍の長さであり、時間T13と時間T14は数値にしてT時間の1.5倍の長さとした。すなわち、時間T12と時間T14を加えた長さ及び時間T13と時間T15を加えた長さは時間Tの2倍であることとした。なお、第2実施形態の駆動波形は、図8(c)と図6(c)を比較してわかるように、正電圧パルスP11は正電圧パルスP1と同じであり、正電圧パルスP12は形状が正電圧パルスP3と同一であり、正電圧パルスP13は形状が正電圧パルスP2と同一として構成している。すなわち、一滴目の正電圧パルスと二滴目の正電圧パルスを入れ換えて構成している。
【0076】
図8(a)は第1実施形態と同様に、一滴のインクを吐出するときの正電圧パルスP11を示している。この正電圧パルスP11における電圧パルスの構成や、溝5内の圧力変化は、上述した第1実施形態と同様である。
【0077】
図8(b)は上述した正電圧パルス(最終駆動パルス)P11と、正電圧パルス(初期駆動パルス)P12を示し、二滴吐出の駆動波形を示している。正電圧パルスP12は第1実施形態にかかる正電圧パルスP3と同一であり、時間Tの0.5倍の電圧Vを保持する時間T12と、時間Tの1.5倍の休止時間である時間T14によって構成されている。この場合、第1実施形態での説明と同様に、所望のタイミングで立ち上げた正電圧パルスP12の影響で溝5内に圧力変化が生じ、溝5内の圧力値が初期圧力0であるときに正電圧パルスP12を立ち下げて、一滴目のインクをノズル孔11から外側へ吐出する。
【0078】
電圧を立ち下げた吐出後に、インク吐出による圧力変化が溝5内に生じ、電圧の立ち下げから時間T14の休止時間経過後に溝5内の圧力が初期圧力0に到達する。このタイミングで、正電圧パルスP11を印加し、二滴目のインクをノズル孔11から吐出することで、二滴分のインクをノズル孔から切り離して吐出する。
【0079】
図8(c)は上述の通り、正電圧パルスP11は正電圧パルスP1と同じであり、正電圧パルスP12は形状が正電圧パルスP3と同一であり、正電圧パルスP13は形状が正電圧パルスP2と同一として構成している。すなわち、一滴目の正電圧パルスと二滴目の正電圧パルスを入れ換えて構成している。
【0080】
各パルスにおいても、第1実施形態と同様に電圧立ち上げのタイミングから電圧が立ち下がり休止期間が終了するまでの時間は、時間Tの2倍であり、圧力値を参照すれば正電圧パルスP12も正電圧パルスP13も電圧の立ち下げと立ち上げを初期圧力0の際に実施している。この構成により、第1実施形態で説明した一滴目と二滴目が入れ替わってノズル孔11から吐出され、正電圧パルスP11の三滴目によって、ノズル孔11から完全に切り離され、三滴分のインクとして吐出される。ここで、一滴目を生成する正電圧パルスと二滴目を生成する正電圧パルスが入れ替わっているが、実際にノズル孔11から吐出されるインク滴には何の影響も無く、第1実施形態と同様に三滴分の吐出とすることが可能である。
【0081】
なお、第2実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。第1実施形態と同様に、T12〜T15は上述した数値に限らず、第2実施形態のT12とT15はTの0.3倍〜0.7倍、T13とT14はTの1.3倍〜1.7倍の範囲であれば、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。この数値の臨界的な意味とその根拠も第1実施形態と同様である。
【0082】
なお、このような第2実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0083】
(第3実施形態)
図9に本発明の第3実施形態を示す。図9(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図9(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図9(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
なお、図9(b)における正電圧パルスP2は電圧保持時間T22の実質的な時間幅は図8(b)の時間T12と変化させず、休止期間T24の時間幅を図6(c)の時間T14の三分の一の長さとしている。つまり、T24の時間幅は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。
【0084】
この変形例は、図9(b)は正電圧パルスP2を時間方向に時間Tシフトして設けている。すなわち、図8(b)を参照してわかるように、図8(b)では正電圧パルスP2の電圧立ち上げからT時間経過後に圧力値が初期圧力0に到達している。この点を正電圧パルスP1の立ち上げ時に変更した駆動波形が図9(b)に示す駆動波形である。
【0085】
図9(c)に示す三滴分の駆動波形は、正電圧パルスP2がT時間シフトしたことによって、正電圧パルスP3も時間軸方向にシフトさせている。すなわち、正電圧パルスP3の構成である時間T23とその後の休止期間T25とその後に生じる正電圧パルスP2の電圧立ち上げと電圧保持時間のT22によって、一滴目と二滴目のインクは吐出される。この第三実施形態においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0086】
図9(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0087】
なお、第3実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T2〜T5は上述した数値に限らず、第3実施形態のT22とT24とT25はTの0.3倍〜0.7倍、T23はTの1.3倍〜1.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、正電圧パルスP2の立ち上り時間を第2実施形態に比較してT時間シフトさせたため、時間が短縮でき、高速印字に対応することができる。
【0088】
なお、このような第3実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0089】
(第4実施形態)
図10に本発明の第4実施形態を示す。図10(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図10(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図10(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
【0090】
なお、図10(c)における正電圧パルスP3は電圧保持時間T33の時間幅を図9(c)の時間T23の三分の一の長さとしている。つまり、時間T33は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。この第4実施形態は、図10(b)に示す正電圧パルスP2が電圧立ち上げ後の時間Tで圧力値が初期圧力0に到達していることに着目し、正電圧パルスP2と全く同じ形態である正電圧パルスP3を設けることとした。このため、図9(b)と図10(b)の駆動波形は全く同一の駆動波形である。T33以外の符号は図9と同一の符号を付した。
【0091】
図10(c)に示す三滴分の駆動波形は、正電圧パルスP3の構成である時間T33とその後の休止期間T25とその後に生じる正電圧パルスP2の電圧立ち上げと電圧保持時間のT22によって、一滴目と二滴目のインクは吐出される。この第4実施形態においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0092】
図10(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0093】
なお、第4実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T22とT24とT25とT33は上述した数値に限らず、第4実施形態のT22とT24とT25とT33はTの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、第3実施形態に比較して時間T33は数値にしてT時間の0.5倍の長さとしたため、時間が短縮でき、高速印字に対応することができる。
【0094】
なお、このような第4実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0095】
(第5実施形態)
図11に本発明の第5実施形態を示す。図11(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図11(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図11(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
【0096】
なお、図11(c)における正電圧パルスP3は正電圧パルスP2と同じ電圧保持時間の長さである時間T43としている。つまり、時間T43は数値にしてT時間の1.5倍の長さとした。なお、正電圧パルスP3の時間T43と正電圧パルスP2のT2との間の休止期間は、正電圧パルスP2と正電圧パルスP1(最終駆動パルス)の間の休止期間時間T4と同じ長さである時間T45としている。つまり、時間T45は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。この第5実施形態は、図11(b)に示す正電圧パルスP2が電圧立ち上げ後の時間2Tで圧力値が初期圧力0に到達していることに着目し、正電圧パルスP2と全く同じ形態である正電圧パルスP3を設けることとした。このため、他の実施形態で先に示したように図6(b)、図7(b)と図11(b)の駆動波形は全く同一の駆動波形である。T43以外の符号は図6,7と同一の符号を付した。
【0097】
具体的に、図11(c)に示す三滴分の駆動波形は、正電圧パルスP3の構成である時間T43とその後の休止期間T45とその後に生じる正電圧パルスP2の電圧立ち上げと電圧保持時間のT2によって、一滴目と二滴目のインクは吐出される。この第5実施形態においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0098】
図11(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0099】
なお、第5実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T2とT43とT4とT45は上述した数値に限らず、第5実施形態のT2とT43はTの1.3倍〜1.7倍の範囲であればよく、T4とT45はTの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0100】
なお、このような第5実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0101】
また、本発明においては、以上の通りの実施形態を記載したが、これらの構成に限られるものではない。すなわち、第1実施形態においてスリット23をインク室プレート2に設ける構成を示したが、非吐出溝52が備えられず、全溝が吐出溝51とすることも可能である。この場合は、互いに隣り合う3つの溝を1セットにして、インクジェットヘッドの走査量を制御しながら、それぞれの溝からの吐出行為とインクジェットヘッドの走査行為を繰り返すことによって、実施することが可能である。この場合は、スリット23が設けられておらず、共通インク室22がインク室プレート2の一端面から他端面に貫通し、溝に連通している構成となっている。
【符号の説明】
【0102】
1 ・・・圧電セラミックプレート
2 ・・・インク室プレート
3 ・・・ノズルプレート
4 ・・・電極
5 ・・・溝
7 ・・・側壁
9 ・・・電極
11 ・・・ノズル孔
20 ・・・圧力緩衝ユニット
21 ・・・インク流路
22 ・・・共通インク室
23 ・・・スリット
26 ・・・ヘッドチップ
51 ・・・吐出溝
52 ・・・非吐出溝
100 ・・・ インクジェットヘッド
P1、P2、P3 ・・・正電圧パルス
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体に液体を噴射する装置として複数のノズルから被記録媒体に向かって液滴を噴射する液体噴射記録装置が知られている。このような液体噴射記録装置の一部には、例えば液体が充填されたノズルの外壁部が圧電素子を有するアクチュエータによって弾性変形されることにより、孔部(ノズル)から液体が被記録媒体に向かって飛翔するインクジェット方式等が採用された液体噴射ヘッドを備えたものがある。
【0003】
ところで、そのようなインクジェット方式の中でも、近年では印刷の高精細化に合わせて、印刷の高速化の要求が高まっている。そのため、現在に至るまで印刷の高精細化技術と高速化技術が数多く研究されている。
【0004】
印刷の高精細化としては、グレースケール技術がよく知られている。従来の印刷技術は、被記録媒体に印刷する際に、印刷をしなければならない箇所を判定し、液体噴射記録ヘッドが所定の大きさの液体(インク)を噴射することにより、被記録媒体に印刷記録を行っていた。しかしながら、この方法では色の濃淡を表現することが困難であり、高精細化の分野では用いられにくい方式であった。そこで、液体噴射記録ヘッドが噴射する液体の大きさに変化を付け、濃く印刷したい箇所は比較的大きな液体を噴射し、淡く印刷したい箇所は比較的小さな液体を噴射するグレースケール技術が開発された。これによって、色の濃淡を表現することが可能となり、例え黒一色の液体インクだったとしても、鮮明な印刷紙面を出力することができるようになった。
【0005】
例えば、特許文献1には、前述したグレースケール技術が紹介されている。この特許文献1において紹介されている駆動波形を図12に示す。図12(a)〜(c)は3種類の駆動波形を示し、図12(a)の第一駆動波形は最終駆動パルスP1のみを有し、図12(b)の第二駆動波形は最終駆動パルスP1と初期駆動パルスP2を有し、図12(c)の第三駆動波形は最終駆動パルスP1と初期駆動パルスP2及びP3を有する。各パルスP1、P2、P3はそれぞれ同じ電圧Vのパルス高さである。具体的に、第一駆動波形はパルスP1による1回の駆動により1滴分、第二駆動波形はパルスP1とP2による2回の駆動により2滴分、第三駆動波形はパルスP1とP2とP3による3回の駆動により3滴分のインクがそれぞれ噴射され、大きさの異なるインクによって被記録媒体が印刷されるグレースケール方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−174831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図12の駆動波形を用いる従来のインクジェット・グレースケール方式の駆動方法の場合は図13の残圧の影響と、図14の電圧と吐出速度の関係からわかるように、1滴・2滴・3滴それぞれの吐出速度に差異が発生するという課題がある。1滴吐出時に比べ2滴、3滴分のインク容量時の吐出速度がそれぞれ速くなるのは、初期駆動P2、P3で発生した圧力変化の影響が残り、その振動の余波が加わり吐出速度が大きくなることに起因している。ここで発生した吐出速度の差は、インクジェットプリンタで印字した場合、インク滴の着弾位置の差として現れてしまい、印字物の画質を悪化させてしまうという課題がある。
【0008】
つまり、液体噴射部内部の圧力室を押圧することによってノズルからインクを噴射すると、圧力室には押圧による残圧の影響が残り、圧力の波が存在する。残圧の影響が消えぬまま、連続的にインクを噴射しようとすると、正常状態で圧力室を押圧する場合に比べて、噴射する液体に加わるエネルギーが変動してしまう。このエネルギーの変化はインクの噴射速度に影響し、被記録媒体にインクが着弾するまでの時間に影響を及ぼす。その結果、被記録媒体に印刷ムラが生じる可能性がある。
また、上述した特許文献1には残圧の影響による印刷結果の不鮮明さに加えて、高速化が図られておらず、現在におけるインクジェット技術の要求を十分に満たしているとは言えない。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、噴射する液体量を変化させるグレースケール方式のインクジェット技術において、液体の大きさに依存する噴射速度の差異を低減し、高精細化を実現するとともに、高速化を併せて実現することができる液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の液体噴射ヘッドの第一の形態における特徴は、液体を孔部から被記録媒体へ噴射する液体噴射部と、前記圧力室を押圧する駆動波形を前記駆動電極に供給する駆動回路と、を備え、圧力室を押圧する駆動波形を駆動電極に供給し、圧力室の内部を初期圧力から噴射圧力まで押圧することによって、被記録媒体へ液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいて、駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、初期駆動パルスの立ち下がり部は圧力室内部が初期圧力と同等の圧力時に形成するところにある。
【0011】
本発明の液体噴射ヘッドの第二の形態における特徴は、上述した第一の形態において、最終駆動パルスのパルス幅は液体噴射部の固有周期または液体の吐出速度が最大となる周期の0.5倍の長さであるところにある。
【0012】
本発明の液体噴射ヘッドの第三の形態における特徴は、上述した第一または第二の形態において、初期駆動パルスが2回以上供給されるところにある。
【0013】
本発明の液体噴射ヘッドの第四の形態における特徴は、上述した第一乃至第三の形態の何れかにおいて、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅よりも長いところにある。
【0014】
本発明の液体噴射ヘッドの第五の形態における特徴は、上述した第四の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであるところにある。
【0015】
本発明の液体噴射ヘッドの第六の形態における特徴は、上述した第五の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであるところにある。
【0016】
本発明の液体噴射ヘッドの第七の形態における特徴は、上述した第一乃至第三の形態の何れかにおいて、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅よりも短いところにある。
【0017】
本発明の液体噴射ヘッドの第八の形態における特徴は、上述した第四の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであるところにある。
【0018】
本発明の液体噴射ヘッドの第九の形態における特徴は、上述した第五の形態において、初期駆動パルスのパルス幅は最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであるところにある。
【0019】
本発明の液体噴射ヘッドの第十の形態における特徴は、上述した第三の形態において、初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ最終駆動パルスのパルス幅よりも長いパルス幅と、最終駆動パルスのパルス幅よりも短いパルス幅によって構成されるところにある。
【0020】
本発明の液体噴射ヘッドの第十一の形態における特徴は、上述した第十の形態において、初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであるパルス幅と、最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであるパルス幅を有するところにある。
【0021】
本発明の液体噴射ヘッドの第十二の形態における特徴は、上述した第十一の形態において、初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであるパルス幅と、最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであるパルス幅を有するところにある。
【0022】
本発明の液体噴射記録装置の態様における特徴は、上述した第一乃至第十二の何れかの形態において記載した液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給部と、液体噴射ヘッドから液体が噴射される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段と、からなるところにある。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、液体噴射ヘッドにおいて、駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、初期駆動パルスの立ち下がり部は圧力室内部が初期圧力と同等の圧力時に形成することとしたので、階調表現する場合に1滴と2滴、3滴などの複数滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴吐出速度差をなくし、インク滴の着弾位置精度を向上させ、画質の優れるインクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの分解図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの駆動の説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る液体噴射記録装置の構成図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る波形の説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例に係る波形の説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る波形の説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る波形の説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る波形の説明図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る波形の説明図である。
【図12】従来技術に係る波形の説明図である。
【図13】従来技術に係る残圧の説明図である。
【図14】従来技術に係る液体速度差の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
本発明において、図1は本実施形態のインクジェットヘッド100(液体噴射ヘッド)全体の正面図、図2は本実施形態のインクジェットヘッド100の概略断面図で、図3は、本実施形態のインクジェットヘッド100の吐出圧力発生部周辺を示す分解図である。
【0027】
図1〜図3に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド100は、ヘッドチップ26と、この一方面側に設けられるインク流路21と、ヘッドチップ26を駆動するための駆動回路等が搭載された駆動回路基板14と、ヘッドチップ26内の圧力変化を緩和させる圧力緩和ユニット20とを有し、これらの各部材は、それぞれベース13に固定されている。
【0028】
続いて吐出のための圧力発生源となるヘッドチップ26周辺の詳細について説明する。図3に示すように、圧電セラミックプレートからなるヘッドチップ26を構成する圧電セラミックプレート1には、ノズル孔11に連通する複数の溝5が並設され、各溝5は、側壁7で隔離されている。
【0029】
各溝5の長手方向の一端部は圧電セラミックプレート1の一端面まで延設されており、他端部は、他端面まで延びておらず、深さが徐々に浅くなっている。また、各溝5の幅方向両側の側壁7には、溝5の開口側に長手方向に亘って駆動電圧印加用の電極4及び電極9が形成されている(図4参照)。
【0030】
圧電セラミックプレート1に形成される各溝5は、例えば、円盤状のダイスカッターにより形成され、深さが徐々に浅くなった部分は、ダイスカッターの形状により形成されてしまう。また、各溝5内に形成される電極4及び電極9は、例えば、公知の斜め方向からの蒸着により形成される。このような溝5の両側の側壁7の開口側に設けられた電極4及び電極9には、電気配線を有するフレキシブル基板19の該電気配線の一端が接合され、フレキシブル基板19の該電気配線の他端側は、駆動回路基板14上の図示しない駆動回路に接合されることで、電極4及び電極9は駆動回路に電気的に接続されている。さらに、圧電セラミックプレート1の溝5の開口側には、インク室プレート2が接合されている。
【0031】
なお、インク室プレート2は、セラミックプレート、金属プレートなどで形成することができるが、圧電セラミックプレート1との接合後の変形を考えると、熱膨張率の近似したセラミックプレートを用いることが好ましい。
【0032】
また、圧電セラミックプレート1とインク室プレート2との接合体の溝5が開口している端面には、ノズルプレート3が接合されており、ノズルプレート3の溝5の各1個おきに対向する位置にはノズル孔11が形成され、ノズル孔11と溝5が連接されている。
【0033】
本実施形態では、ノズルプレート3は、圧電セラミックプレート1とインク室プレート2との接合体の溝5が開口している端面の面積よりも大きくなっている。このノズルプレート3は、ポリイミドフィルムなどに、例えば、エキシマレーザ装置を用いてノズル孔11を形成したものである。また、図示しないが、ノズルプレート3の被記録媒体に対向する面には、インクの付着等を防止するための撥水性を有する撥水膜が設けられている。
【0034】
さらに、この圧電セラミックプレート1とインク室プレート2との接合体の各溝5が開口している端面側の外周面には、ノズルプレート3を支持するヘッドキャップ12が接合されている。このヘッドキャップ12は、ノズルプレート3の接合体端面の外側と接合されて、ノズルプレート3を安定して保持するためのものである。
【0035】
そして、本実施形態のインクジェットヘッド100は、インク室プレート2上に、溝5のそれぞれにインクを供給するためのインク流路21が固定され、インク流路21の中央部にはインク導入のためのインク導入口41が形成され、インク導入口41には印字中の圧力変動を吸収するための圧力緩和ユニット20が接続されている。例えば、初期充填時等にインクタンク(図示せず)からのインクが圧力緩和ユニット20に充填され、更に、インク流路21内にインクが導入され、最終的に溝5にインクが満たされる仕組みである。
【0036】
図3にて詳細に示すヘッドチップ26の構成は、上述したとおり圧電セラミックプレート1に形成した溝5の一部を閉塞するようにインク室プレート2が設けられ、この2枚のプレートを接合して溝5が開口している端面(図面手前側)にノズルプレート3が接合される。これらの接合では、インクによって侵食されない接着剤を用いることで、接着部分が剥離し、インクが漏れてしまうことを防止している。
【0037】
さらに、図3に示す溝5は圧電セラミックプレート1の長手方向に所定間隔を開けて複数設けられているが、そのそれぞれに以下に記載する違いがある。本実施形態において示すインクジェットヘッド100は所謂独立チャネルタイプとして知られている構成で、インクが供給される吐出溝51と非吐出溝52が交互に設けられている。
【0038】
インク室プレート2には、インク流路21を介して供給されるインクを吐出溝51へ供給する前に貯留するためインク室プレート2の一端面に設けられた共通インク室22と、該共通インク室22からインクを各吐出溝51へ供給するためにスリット23を設けている。このスリット23は吐出溝51と対になっており、圧電セラミックプレート1とインク室プレート2を接合する際に、スリット23と吐出溝51が連通するように構成される。上述したノズル孔11は、この吐出溝51に連通しており、共通インク室22−スリット23−吐出溝51−ノズル孔11を介することによってインクが吐出される。
【0039】
一方、非吐出溝はその上部がインク室プレート2によって閉塞され、インク室プレート2の共通インク室22に連通しておらず、インクは供給されない。さらに、ノズルプレート3の非吐出溝に対応する位置にはノズル孔11が設けられていない構成となっている。これらの構成を備えたヘッドチップ26の駆動方法を以下に示す。
【0040】
次に図5及び図4を参照して、電極4及び電極9の駆動制御について説明する。上述したように本実施形態のインクジェットヘッド100は、電極4及び電極9を有するヘッドチップ26と、ヘッドチップ26とフレキシブル基板19で接続されている駆動回路基板14とを備えている。駆動回路基板14はまたヘッド制御部111と画像データ処理部112とを有するインクジェットヘッド駆動制御部110に接続されている。そして、インクジェットヘッド100とインクジェットヘッド駆動制御部110を備えるインクジェット記録装置120は、所定のインターフェースを介してパーソナルコンピュータ200等に接続されている。なお、インクジェット記録装置120は他に図示していないインクジェットヘッド100にインクを供給するインク供給部、インクジェットヘッド100からインクが吐出される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送部等を備えている。
【0041】
駆動回路基板14の駆動回路(印加手段)は、電極4及び電極9に印加する電圧をオン・オフ制御するためのスイッチング素子等からなる回路によって構成されていて、側壁7が構成するアクチュエータを変形動作させてノズル孔11からインクを飛翔させる所定電圧の駆動パルスを、アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら電極4及び電極9に印加する。ヘッド制御部111は、駆動回路基板14に対して電極印加電圧やスイッチング素子のオン・オフ制御等を行う制御信号を供給し、電極4及び電極9に所定電圧の駆動パルスを印加することで、各ノズル孔11における吐出開始や停止制御を行う。画像データ処理部112は、パーソナルコンピュータ200から入力された情報に基づいて各ノズル孔11に対応した画像データを作成する。また画像データ処理部112は、駆動回路基板14に対して、作成した画像データに基づいてどのタイミングで各電極4及び電極9に電圧を印加するかを設定する信号を出力することで、各電極4及び電極9に印加する駆動パルスを複数回発生させて被記録媒体に到達するインク滴の容量を変化させる制御を行う。例えば階調制御を行わない場合には2値データ(0または1)からなる画像データに基づいて各ノズル孔11に対応した電圧印加または停止を指示する信号を出力し、例えば4階調の階調制御を行う場合には4値データ(0、1、2、3)からなる画像データに基づいて、各ノズル孔11に対応する4種類の吐出容積(0滴、1滴、2滴、3滴分)に対応する駆動パルスの発生回数を指示する信号を出力する。
【0042】
続いて、本実施形態の電極の配線方法および駆動方法について図6、図4をもとに説明する。図6は第1実施形態のインクジェットヘッド100の吐出信号波形(電極4及び電極9の駆動パルス波形)とノズル孔11付近の圧力変化を示す図で、図4はインクジェットヘッド100の電極配線状態を示す断面図である。図6(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図6(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図6(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図で、図4(a)は非駆動時の断面図、図4(b)は、駆動時の断面図である。矢印6は分極方向を示しており、側壁7を挟む電極4及び電極9に電圧をかけるとそれぞれの側壁7は所望の方向に変形する構造となっている。
【0043】
図4(a)に示すようにこのインクジェットヘッド100は、溝5に形成された電極4はアース電位(GND)の共通電極となっており、それを挟む電極9は外部からの出力信号を与えられる電極構造である。この電極9に図6(a)に示す正電圧パルス(駆動パルス)を印加すると電極4との電位差によって、図4(b)に示すように側壁7がそれぞれ変形する。この変形は電極9が正の電圧が印加されているTの時間変形しておりT後電位がゼロになると再び図4(a)の状態に戻る。
【0044】
尚、時間Tは最も効率のよい吐出速度が速くなる時間に設定されている。この効率のよい吐出速度になる時間Tの時間幅を有する正電圧パルスP1を最終駆動パルスと呼ぶ。この側壁7の変形によって溝5内に充填されたインクに圧力の変化が起こり、インクがノズル孔11から1滴飛翔する仕組みである。また、Tはインクの吐出速度が最大となるパルス幅であり、複数の実験データから以下に詳細に示す複数の駆動パルスが連続する場合、パルス周期がTの2倍になる時にインクの吐出速度が最大になることがわかっている。ここで、パルス幅とはパルスの立ち上がりから立ち下がりまでで定義し、パルス周期とはインクを吐出する印刷周期内における特定のパルス幅の立ち上がり若しくは立ち下がりから特定のパルスの次のパルスの立ち上がり若しくは立ち下がりまでで定義する。なお、Tの2倍になる周期はヘッドチップ26やヘッドチップ26に充填されるインクによって決定する固有周期に等しい。つまり、最終駆動パルスのパルス幅は液体噴射部の固有周期または液体の吐出速度が最大となる周期の0.5倍の長さである。
【0045】
インクの吐出するメカニズムを詳細に説明すると、例えば所望の吐出溝51を駆動する場合は、上述のとおり電極4をGNDにして、電極9に駆動パルスを印加する。これにより一時的に所望の吐出溝51の両方の側壁7が非吐出溝52側へ、それぞれ膨らむように変形する。この変形は圧電セラミックプレート1の分極方向6と電圧を印加する方向が直交することによって生じるせん断変形であり、両側壁7が変形することによって吐出溝51の容積は一時的に拡大する。この容積拡大に伴って、吐出溝51内の圧力は負圧状態になるため、負圧状態を解消するように共通インク室22およびスリット23を介して吐出溝51内にインクが供給される。供給されたインクの圧力は圧力波となって吐出溝51を進行し、やがてノズル孔11に到達する。このタイミングで、両側壁7の電極に印加した電圧をGNDにすることで、両側壁7を膨らんだ状態から電圧を印加していない平坦な状態に戻す。つまり、膨張状態の吐出溝51を元の状態に戻すことで、一時的に吐出溝51内の容積を縮小する。この動作により、ノズル孔11に到達したインクの圧力波に加えて、両側壁7の元に戻る変形によって吐出溝51内のインクを押圧し、吐出溝51の内部に充填されたインクをノズルから噴射する。
【0046】
また、階調表現するためノズル孔11から飛翔するインクの吐出容積を変えるためには、図6(b)に示す最終駆動パルスの前に時間Tよりも長い時間T2の正電圧パルスP2を時間T4の間隔で印加する。これにより、ノズル孔11から2滴分の容積のインクが飛翔する。同様に、図6(c)に示す正電圧の時間TのパルスP1、時間T2のパルスP2の前に最終駆動パルスの時間Tより短い印加時間T3の正の駆動パルスを時間T5の間隔で動作させる。すると、ノズル孔11から3滴分の容積のインクが飛翔させることができる。
【0047】
第1実施形態において、各波形を詳細に説明する。時間T2と時間T5は数値にして時間Tの1.5倍の長さであり、時間T3と時間T4は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。すなわち、時間T2と時間T5を加えた長さ及び時間T3と時間T4を加えた長さは時間Tの2倍であることとした。
【0048】
図6(b)において、2滴吐出の際の駆動波形は、所望の時間に正電圧パルス(初期駆動パルス)P2を立ち上げ、電圧V[V]で時間T2保持する。時間T2の間、側壁7の変形によって溝5内に充填されたインクに圧力の変化が生じる。なお図6〜図9において、初期圧力を0とし各数値−1、1及び2は変化の割合を示しており、実際の圧力値の数値ではない。なお、以下特に断らない限り、圧力値とはノズル孔11付近の圧力値のことを指す。
【0049】
まず正電圧パルスP2を立ち上げたことによって溝5内の容積が拡大し、圧力値は負圧値−1へと急峻に変化する。そして、溝5の容積が拡大されたことによって、溝5内にインクが引き込まれ、圧力値は正圧側へ次第に変化し初期圧力0まで値が戻る。その後、引続き溝5内へインクが引き込まれることによって、圧力値は初期圧力0以上の正圧になり、正電圧パルスP2の立ち上げから約時間T経過のタイミングで、およそ正圧値1へ比較的なだらかに到達する。正圧値1に圧力値が近づく付近でインクの引き込みの勢いは減少し、正圧値1に近づくまでのインクの引き込みに反発して、次第に負圧方向へ圧力値が変化する。そして、圧力値が初期圧力0に再び到達したとき、すなわち正電圧パルスP2の立ち上げより時間T2経過したときに維持していた電圧V[V]を0[V]へ立ち下げる。
【0050】
この電圧立ち下げにより、溝5内の容積は拡大状態から通常状態に変化し、見掛け上の容積変化では溝5内が圧縮されている。電圧を立ち下げるタイミングは初期圧力0のときであり、溝5内の圧縮によって圧力値は正圧側へ急峻に変化し、圧力値は正圧値1に到達する。このとき、急峻な正圧側への圧力変化を受けて溝5内のインクは素早く加圧され、ノズル孔11から一滴目のインクが吐出される。インクが吐出されることにより、溝5内のインクの量が減少し、時間T4において圧力値は負圧側へ変化して初期圧力0に到達する。このとき、正電圧パルスP2を立ち上げから時間Tの2倍の時間が経過している。
【0051】
以上のとおり、一滴目のインクが吐出されるメカニズムを説明した。なお、一滴目のインク滴が吐出されるのは正電圧パルスP2を立ち上げから時間T2のタイミングで圧力値が正圧値1へ急峻に変化したときであり、正電圧パルスP2を立ち上げから時間Tのタイミングで圧力値が正圧値1へ近づくときではない。比較的なだらかに変化する時間Tのタイミングでは溝5内は正圧の状態であるが、インク滴が吐出されるには、より急峻な圧力変化が必要である。
【0052】
図6(b)に戻って、時間T4の経過後に、正電圧パルスP1が正電圧パルスP2と同じ電圧値V[V]まで立ち上げられ、時間Tの最終駆動パルスとして印加される。正電圧パルスP1は、上述のとおり、電圧値V[V]を時間T保持する。この期間では、正電圧パルスP2の立ち上げから時間Tまでの変化と同様に、溝5内の容積拡大に起因する負圧変化と、インクの引き込みに起因する正圧変化が生じ、時間Tが経過したときに圧力値は正圧値1の近くまで比較的なだらかに変化する。
【0053】
このタイミングで、正電圧パルスP1は維持していた電圧V[V]を0[V]へ立ち下げる。それに伴い、インクにはさらに正圧の圧力変化が生じ、圧力値の割合としては正圧値2に急峻に到達する。この急峻な圧力変化を受けて、二滴目のインクがノズル孔11から吐出される。二滴目のインク吐出後、溝5内は吐出されたインクの分量だけインクが不足するので、圧力値は負圧方向に変化し、残圧の影響を受けて圧力値が減衰振動する。
【0054】
一滴目のインクと二滴目のインクの関係を説明すると、一滴目のインクは圧力値の割合として正圧値1のときに吐出される。しかしながら実際は、この正圧値1の圧力変化では、インクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されていない。具体的に、インクはノズル孔11の近傍で一滴分の分量を持ってノズル孔から溝5の外側に向かって盛り上がり、滴として形成される寸前の形態として設けられる。
【0055】
そして、正電圧パルスP2に続けて正電圧パルスP1を印加する。上述したとおり、正電圧パルスP1による二滴目のインクには、正圧値2の圧力が付加されており、一滴目のインク滴より大きな圧力が掛かっている。これにより、二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。この二滴目のインクは一滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離されていないタイミングで発生するので、一滴目と二滴目のインクが数珠繋がりのように空気中へ放出される。放出された一滴目と二滴目のインクは、互いの表面張力により引き寄せられ、二滴分の分量で一つのインク滴として吐出される。
【0056】
次に、図6(c)において、3滴吐出の駆動波形を示す。この場合、上述した正電圧パルスP1とP2の構成に加えて、正電圧パルスP2の前に正電圧パルス(初期駆動パルス)P3を構成している。つまり、この形態での初期駆動パルスは2回印加される構成である。正電圧パルスP3は、上述した時間T3の電圧Vを保持する時間によって構成され、正電圧パルスP2の電圧立ち上がりのタイミングと、T5の休止期間を挟んで印加される。
【0057】
具体的に、正電圧パルスP3は所望のタイミングで初期圧力0から電圧V[V]まで立ち上げられる。これに伴い、溝5内の容積拡大が発生し圧力値が負圧値−1まで変化することによって、インクが溝5内に引き込まれる。時間T3で電圧Vが保持され、その間に引き込まれたインクに起因して、圧力値が正圧側へ変化する。正圧側に変化した圧力値は、やがて時間T3経過するときに初期圧力0へ変化し、このタイミングで正電圧パルスP3を立ち下げる。
【0058】
正電圧パルスP3が立ち下げられると、圧力値は急峻に正圧側の正圧値1まで変化する。急峻な圧力変化は二滴吐出の場合と同様に、一滴目のインクがノズル孔11から盛り上がり、ノズル孔11のインク界面から完全に切り離されずに形成される。吐出後の圧力値の変化は、インクが吐出されたことに起因して、溝5内のインクが不足するため、圧力値は負圧方向に比較的なだらかに変化する。
【0059】
正電圧パルスP3が立ち上げから時間Tが経過した頃に、圧力値は初期圧力0に到達し、引続き負圧方向へ変化する。そして、およそ正電圧パルスP3が立ち上げから時間1.5Tが経過した頃に圧力値が負圧値−1の近傍へ比較的なだらかに到達する。この正電圧パルスP3による負圧への変化は、電圧の立ち下げによって与えられた正圧値1に反発する負圧値−1が限界値であり、圧力値が負圧値−1を超えて負圧方向へ変化することはない。
【0060】
圧力値が負圧値−1の近傍へ到達すると、負圧方向への変化は減少し、次第に正圧側へ圧力値が変化する。そして正電圧パルスP3が立ち上げから時間2Tが経過したとき、圧力値が初期圧力0に到達する。このタイミングで、正電圧パルスP2が立ち上げられ、図6(b)に関して上述した圧力変化と同様の形態をとる。
【0061】
一滴目、二滴目および三滴目のインクの関係を説明する。一滴目のインクは上述のとおりノズル孔11から盛り上がり、ノズル孔11のインク界面から完全に切り離されずに形成される。二滴目のインクは、上述と同様に、ノズル孔11から盛り上がり、ノズル孔11のインク界面から完全に切り離されずに形成される。このとき、一滴目のインクは二滴目のインクと繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。
【0062】
続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクには、正圧値2の圧力が付加されており、一滴目と二滴目のインク滴より大きな圧力が掛かっている。これにより、三滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。この三滴目のインクは一滴目のインクと繋がる二滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離されていないタイミングで発生するので、一滴目、二滴目および三滴目のインクが数珠繋がりのように空気中へ放出される。放出された一滴目、二滴目および三滴目のインクは、互いの表面張力により引き寄せられ、三滴分の分量で一つのインク滴として吐出される。なお、三滴目のインク吐出後、溝5内は吐出されたインクの分量だけインクが不足するので、圧力値は負圧方向に変化し、残圧の影響を受けて圧力値が減衰振動する。
【0063】
なお、第1実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T2〜T5は上述した数値に限らず、第1実施形態のT2とT5はTの1.3倍〜1.7倍、T3とT4はTの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。この数値の臨界的な意味とその根拠は、どのようなインクにも対応することができるようにするためであり、複数種類のインクを用いて実験的に導き出した数値である。実験では、水性インク、油性インクやソルベントインクなどの複数種類のインク材料を用いて、さらに同種類のインク材料でも粘度などの物性値が異なるインクを用いて詳細に検討した。
【0064】
さらに、第1実施形態以下、本発明においては圧力値の変化の上限下限を割合1と−1の範囲に留めるため、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。これに加えて、圧力変化点である正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0065】
このような第1実施形態の構成を採用することによって、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。つまり、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、最終駆動パルスP1によってインクに与えられる圧力が等しい値となる。これによって、ノズルから吐出されるインク滴にもそれぞれ同等の圧力が付加されるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度が等しくなる。
【0066】
1滴・2滴・3滴のインクを吐出する上で、最終駆動パルスP1で付加される圧力値が2となる条件は、以下のように考えられる。それらは、初期駆動パルスP2、P3を初期圧力(圧力値0)と等しい圧力の時に立ち上げること、初期駆動パルスP2、P3を初期圧力(圧力値0)と等しい圧力の時に立ち下げること、最終駆動パルスP1を直前の初期駆動パルスによって与えられた圧力値が初期圧力(圧力値0)と等しい圧力の時に立ち上げること、最終駆動パルスP1を圧力値が2となるタイミングで立ち下げること、である。
第1実施形態において検討したこれらの条件を満たす形態として、以下に記載する変更例や他の実施形態が実現可能である。
【0067】
(変形例)
図7に本発明の第1実施形態の変形例を示す。図7(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図7(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図7(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
なお、図7(c)における正電圧パルスP3は電圧保持時間T3’の実質的な時間幅は変化させず、休止期間T5’の時間幅を図6(c)の時間T5の三分の一の長さとしている。つまり、T5’は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。その他の符号は図6と同一の符号を付した。
【0068】
この変形例は、図6(a)と図6(b)に記載の第1実施形態における1滴と2滴のインク容量を吐出する駆動波形と全く同じ駆動波形を図7(a)と図7(b)に示し、図7(c)に示す3滴のインク容量を吐出する波形が第1実施形態と異なる点である。具体的に説明すると、図7(c)は正電圧パルスP3を時間方向に時間Tシフトして設けている。すなわち、図6(c)を参照してわかるように、図6(c)では正電圧パルスP3の電圧立ち上げからT時間経過後に圧力値が初期圧力0に到達している。この点を正電圧パルスP2の立ち上げ時に変更した駆動波形が図7(c)に示す駆動波形である。
【0069】
この変形例においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0070】
図7(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0071】
なお、変形例における構成は上述のものに限られるものではない。第1実施形態と同様に、T3’とT5’は上述した数値に限らず、時間Tの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、正電圧パルスP3の立ち上り時間を第1実施形態に比較してT時間シフトさせたため、時間が短縮でき、高速印字に対応することができる。
【0072】
なお、このような変形例の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。特に、第1実施形態において検討したこれらの条件を満たす形態はこの変形例に限られず、以下に記載する実施形態が実現可能である。
【0073】
(第2実施形態)
図8に本発明の第2実施形態を示す。図8(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図8(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図8(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
【0074】
第2実施形態では、図8(b)に示す最終駆動パルスの前に時間Tよりも短い時間T12の正電圧パルスP12を時間T14の間隔で印加する。これにより、ノズル孔11から2滴分の容積のインクが飛翔する。同様に、図8(c)に示す正電圧の時間TのパルスP11、時間T12のパルスP12の前に最終駆動パルスの時間Tより長い印加時間T13の正の駆動パルスを時間T15の間隔で動作させる。すると、ノズル孔11から3滴分の容積のインクが飛翔させることができる。
【0075】
第2実施形態において、各波形を詳細に説明する。時間T12と時間T15は数値にして時間Tの0.5倍の長さであり、時間T13と時間T14は数値にしてT時間の1.5倍の長さとした。すなわち、時間T12と時間T14を加えた長さ及び時間T13と時間T15を加えた長さは時間Tの2倍であることとした。なお、第2実施形態の駆動波形は、図8(c)と図6(c)を比較してわかるように、正電圧パルスP11は正電圧パルスP1と同じであり、正電圧パルスP12は形状が正電圧パルスP3と同一であり、正電圧パルスP13は形状が正電圧パルスP2と同一として構成している。すなわち、一滴目の正電圧パルスと二滴目の正電圧パルスを入れ換えて構成している。
【0076】
図8(a)は第1実施形態と同様に、一滴のインクを吐出するときの正電圧パルスP11を示している。この正電圧パルスP11における電圧パルスの構成や、溝5内の圧力変化は、上述した第1実施形態と同様である。
【0077】
図8(b)は上述した正電圧パルス(最終駆動パルス)P11と、正電圧パルス(初期駆動パルス)P12を示し、二滴吐出の駆動波形を示している。正電圧パルスP12は第1実施形態にかかる正電圧パルスP3と同一であり、時間Tの0.5倍の電圧Vを保持する時間T12と、時間Tの1.5倍の休止時間である時間T14によって構成されている。この場合、第1実施形態での説明と同様に、所望のタイミングで立ち上げた正電圧パルスP12の影響で溝5内に圧力変化が生じ、溝5内の圧力値が初期圧力0であるときに正電圧パルスP12を立ち下げて、一滴目のインクをノズル孔11から外側へ吐出する。
【0078】
電圧を立ち下げた吐出後に、インク吐出による圧力変化が溝5内に生じ、電圧の立ち下げから時間T14の休止時間経過後に溝5内の圧力が初期圧力0に到達する。このタイミングで、正電圧パルスP11を印加し、二滴目のインクをノズル孔11から吐出することで、二滴分のインクをノズル孔から切り離して吐出する。
【0079】
図8(c)は上述の通り、正電圧パルスP11は正電圧パルスP1と同じであり、正電圧パルスP12は形状が正電圧パルスP3と同一であり、正電圧パルスP13は形状が正電圧パルスP2と同一として構成している。すなわち、一滴目の正電圧パルスと二滴目の正電圧パルスを入れ換えて構成している。
【0080】
各パルスにおいても、第1実施形態と同様に電圧立ち上げのタイミングから電圧が立ち下がり休止期間が終了するまでの時間は、時間Tの2倍であり、圧力値を参照すれば正電圧パルスP12も正電圧パルスP13も電圧の立ち下げと立ち上げを初期圧力0の際に実施している。この構成により、第1実施形態で説明した一滴目と二滴目が入れ替わってノズル孔11から吐出され、正電圧パルスP11の三滴目によって、ノズル孔11から完全に切り離され、三滴分のインクとして吐出される。ここで、一滴目を生成する正電圧パルスと二滴目を生成する正電圧パルスが入れ替わっているが、実際にノズル孔11から吐出されるインク滴には何の影響も無く、第1実施形態と同様に三滴分の吐出とすることが可能である。
【0081】
なお、第2実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。第1実施形態と同様に、T12〜T15は上述した数値に限らず、第2実施形態のT12とT15はTの0.3倍〜0.7倍、T13とT14はTの1.3倍〜1.7倍の範囲であれば、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。この数値の臨界的な意味とその根拠も第1実施形態と同様である。
【0082】
なお、このような第2実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0083】
(第3実施形態)
図9に本発明の第3実施形態を示す。図9(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図9(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図9(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
なお、図9(b)における正電圧パルスP2は電圧保持時間T22の実質的な時間幅は図8(b)の時間T12と変化させず、休止期間T24の時間幅を図6(c)の時間T14の三分の一の長さとしている。つまり、T24の時間幅は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。
【0084】
この変形例は、図9(b)は正電圧パルスP2を時間方向に時間Tシフトして設けている。すなわち、図8(b)を参照してわかるように、図8(b)では正電圧パルスP2の電圧立ち上げからT時間経過後に圧力値が初期圧力0に到達している。この点を正電圧パルスP1の立ち上げ時に変更した駆動波形が図9(b)に示す駆動波形である。
【0085】
図9(c)に示す三滴分の駆動波形は、正電圧パルスP2がT時間シフトしたことによって、正電圧パルスP3も時間軸方向にシフトさせている。すなわち、正電圧パルスP3の構成である時間T23とその後の休止期間T25とその後に生じる正電圧パルスP2の電圧立ち上げと電圧保持時間のT22によって、一滴目と二滴目のインクは吐出される。この第三実施形態においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0086】
図9(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0087】
なお、第3実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T2〜T5は上述した数値に限らず、第3実施形態のT22とT24とT25はTの0.3倍〜0.7倍、T23はTの1.3倍〜1.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、正電圧パルスP2の立ち上り時間を第2実施形態に比較してT時間シフトさせたため、時間が短縮でき、高速印字に対応することができる。
【0088】
なお、このような第3実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0089】
(第4実施形態)
図10に本発明の第4実施形態を示す。図10(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図10(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図10(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
【0090】
なお、図10(c)における正電圧パルスP3は電圧保持時間T33の時間幅を図9(c)の時間T23の三分の一の長さとしている。つまり、時間T33は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。この第4実施形態は、図10(b)に示す正電圧パルスP2が電圧立ち上げ後の時間Tで圧力値が初期圧力0に到達していることに着目し、正電圧パルスP2と全く同じ形態である正電圧パルスP3を設けることとした。このため、図9(b)と図10(b)の駆動波形は全く同一の駆動波形である。T33以外の符号は図9と同一の符号を付した。
【0091】
図10(c)に示す三滴分の駆動波形は、正電圧パルスP3の構成である時間T33とその後の休止期間T25とその後に生じる正電圧パルスP2の電圧立ち上げと電圧保持時間のT22によって、一滴目と二滴目のインクは吐出される。この第4実施形態においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0092】
図10(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0093】
なお、第4実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T22とT24とT25とT33は上述した数値に限らず、第4実施形態のT22とT24とT25とT33はTの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、第3実施形態に比較して時間T33は数値にしてT時間の0.5倍の長さとしたため、時間が短縮でき、高速印字に対応することができる。
【0094】
なお、このような第4実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0095】
(第5実施形態)
図11に本発明の第5実施形態を示す。図11(a)は本実施形態の1滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図11(b)は本実施形態の2滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図、図11(c)は本実施形態の3滴のインク容量を吐出する場合の吐出信号波形とノズル孔11付近の圧力変化を示す図である。
【0096】
なお、図11(c)における正電圧パルスP3は正電圧パルスP2と同じ電圧保持時間の長さである時間T43としている。つまり、時間T43は数値にしてT時間の1.5倍の長さとした。なお、正電圧パルスP3の時間T43と正電圧パルスP2のT2との間の休止期間は、正電圧パルスP2と正電圧パルスP1(最終駆動パルス)の間の休止期間時間T4と同じ長さである時間T45としている。つまり、時間T45は数値にしてT時間の0.5倍の長さとした。この第5実施形態は、図11(b)に示す正電圧パルスP2が電圧立ち上げ後の時間2Tで圧力値が初期圧力0に到達していることに着目し、正電圧パルスP2と全く同じ形態である正電圧パルスP3を設けることとした。このため、他の実施形態で先に示したように図6(b)、図7(b)と図11(b)の駆動波形は全く同一の駆動波形である。T43以外の符号は図6,7と同一の符号を付した。
【0097】
具体的に、図11(c)に示す三滴分の駆動波形は、正電圧パルスP3の構成である時間T43とその後の休止期間T45とその後に生じる正電圧パルスP2の電圧立ち上げと電圧保持時間のT2によって、一滴目と二滴目のインクは吐出される。この第5実施形態においても、第1実施形態と同様に正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち下がり部は圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとし、正電圧パルスP2およびP3の電圧の立ち上がり部も圧力値が初期圧力0に到達したタイミングとしている。
【0098】
図11(c)の三滴吐出の形態を用いて説明すると、この形態においても上述と同様に、一滴目のインクと二滴目のインクはノズル孔11のインク界面から完全に切り離されず繋がりながら、ノズル孔から遠い順から一滴目、二滴目と並んで設けられている。続いて、正電圧パルスP1による三滴目のインクがノズル孔11のインク界面から完全に切り離され、滴としてノズル孔から溝5の外側に向かって吐出される。
【0099】
なお、第5実施形態における構成は上述のものに限られるものではない。例えば、T2とT43とT4とT45は上述した数値に限らず、第5実施形態のT2とT43はTの1.3倍〜1.7倍の範囲であればよく、T4とT45はTの0.3倍〜0.7倍の範囲であれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0100】
なお、このような第5実施形態の構成を採用することによって、第1実施形態と同様に、最終駆動パルスP1を立ち下げる際の圧力値が1滴・2滴・3滴のインクを吐出するそれぞれの駆動波形において2となるため、1滴・2滴・3滴のインクを吐出する際の各インク滴の速度差を低減することができる。
【0101】
また、本発明においては、以上の通りの実施形態を記載したが、これらの構成に限られるものではない。すなわち、第1実施形態においてスリット23をインク室プレート2に設ける構成を示したが、非吐出溝52が備えられず、全溝が吐出溝51とすることも可能である。この場合は、互いに隣り合う3つの溝を1セットにして、インクジェットヘッドの走査量を制御しながら、それぞれの溝からの吐出行為とインクジェットヘッドの走査行為を繰り返すことによって、実施することが可能である。この場合は、スリット23が設けられておらず、共通インク室22がインク室プレート2の一端面から他端面に貫通し、溝に連通している構成となっている。
【符号の説明】
【0102】
1 ・・・圧電セラミックプレート
2 ・・・インク室プレート
3 ・・・ノズルプレート
4 ・・・電極
5 ・・・溝
7 ・・・側壁
9 ・・・電極
11 ・・・ノズル孔
20 ・・・圧力緩衝ユニット
21 ・・・インク流路
22 ・・・共通インク室
23 ・・・スリット
26 ・・・ヘッドチップ
51 ・・・吐出溝
52 ・・・非吐出溝
100 ・・・ インクジェットヘッド
P1、P2、P3 ・・・正電圧パルス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を孔部から被記録媒体へ噴射する液体噴射部と、前記液体噴射部に連通する圧力室に形成する駆動電極と、前記圧力室を押圧する駆動波形を前記駆動電極に供給する駆動回路と、を備え、前記圧力室の内部を初期圧力から噴射圧力まで押圧することによって、前記被記録媒体へ前記液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいて、
前記駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、前記最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、前記初期駆動パルスの立ち下がり部は前記圧力室内部が前記初期圧力と同等の圧力時に形成することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記最終駆動パルスのパルス幅は前記液体噴射部の固有周期または液体の吐出速度が最大となる周期の0.5倍の長さであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記初期駆動パルスが2回以上供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅よりも長いことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅よりも短いことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ前記最終駆動パルスのパルス幅よりも長いパルス幅と、前記最終駆動パルスのパルス幅よりも短いパルス幅によって構成されることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ前記最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであるパルス幅と、前記最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであるパルス幅を有することを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ前記最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであるパルス幅と、前記最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであるパルス幅を有することを特徴とする請求項11に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
請求項1〜12のうち何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給部と、前記液体噴射ヘッドから液体が噴射される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段と、
からなる液体噴射記録装置。
【請求項1】
液体を孔部から被記録媒体へ噴射する液体噴射部と、前記液体噴射部に連通する圧力室に形成する駆動電極と、前記圧力室を押圧する駆動波形を前記駆動電極に供給する駆動回路と、を備え、前記圧力室の内部を初期圧力から噴射圧力まで押圧することによって、前記被記録媒体へ前記液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいて、
前記駆動波形は最後に供給する最終駆動パルスと、前記最終駆動パルスの前に少なくとも1回供給される初期駆動パルスによって構成され、前記初期駆動パルスの立ち下がり部は前記圧力室内部が前記初期圧力と同等の圧力時に形成することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記最終駆動パルスのパルス幅は前記液体噴射部の固有周期または液体の吐出速度が最大となる周期の0.5倍の長さであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記初期駆動パルスが2回以上供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅よりも長いことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅よりも短いことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記初期駆動パルスのパルス幅は前記最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ前記最終駆動パルスのパルス幅よりも長いパルス幅と、前記最終駆動パルスのパルス幅よりも短いパルス幅によって構成されることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ前記最終駆動パルスのパルス幅の1.3〜1.7倍の長さであるパルス幅と、前記最終駆動パルスのパルス幅の0.3〜0.7倍の長さであるパルス幅を有することを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記初期駆動パルスの各パルス幅はそれぞれ前記最終駆動パルスのパルス幅の1.5倍の長さであるパルス幅と、前記最終駆動パルスのパルス幅の0.5倍の長さであるパルス幅を有することを特徴とする請求項11に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
請求項1〜12のうち何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給部と、前記液体噴射ヘッドから液体が噴射される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段と、
からなる液体噴射記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−224839(P2011−224839A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95522(P2010−95522)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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