説明

液体噴射ヘッドの製造方法及び結晶基板のエッチング方法

【課題】歩留まりの低下を防止することができる液体噴射ヘッドの製造方法及び結晶基板
のエッチング方法を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が形成されている流路形成基
板10を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、流路形成基板の表面に開口部20
2を有する膜を形成してマスク200とするマスク形成工程と、流路形成基板を開口部を
介してウェットエッチングすることで液体流路を形成するエッチング工程と、マスクを除
去する除去工程とを具備し、マスクは、少なくとも前記開口部の周囲に第一の凹凸部20
1が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法及び結晶基板のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドなどのマイクロデバイスの代表的な例であるインクジェット式記録ヘッ
ドとしては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室とこの圧力発生室に連通する連通
部が形成されると共に、その一方面側に圧電素子が設けられた流路形成基板を具備するも
のがある。そして、流路形成基板としては、例えば、結晶面方位が(110)面のシリコ
ン単結晶基板が用いられ、これらの基板は、平行四辺形に開口する開口部を有するマスク
を介してウェットエッチング(異方性エッチング)することによって形成されていた(例
えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−261215号公報(第12図、第24〜25頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、流路形成基板のような結晶基板をウェットエッチングして液体流路を形
成した際に、マスクが庇状に残存することがあり、この庇状のマスクが屈曲して内壁に付
着(密着)することがある。この付着したマスクは洗浄でも除去することができないので
異物となって残留してしまい、歩留まりを低下させてしまうという問題がある。さらに、
この屈曲したマスクと内壁との間にウェットエッチングに用いる溶液中の鉄が析出してし
まうことがあり、これも歩留まりの低下の原因となるという問題がある。
【0005】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに限定されず
、他のデバイスに用いられる結晶基板のエッチング方法においても同様に存在する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、歩留まりの低下を防止することができる液体噴射ヘッ
ドの製造方法及び結晶基板のエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路
が形成されている流路形成基板を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記流路
形成基板の表面に開口部を有する膜を形成してマスクとするマスク形成工程と、前記流路
形成基板を前記開口部を介してウェットエッチングすることで前記液体流路を形成するエ
ッチング工程と、前記マスクを除去する除去工程とを具備し、前記マスクは、少なくとも
前記開口部の周囲に第一の凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法では、第一の凹凸部を有するマスクを形成すること
で、庇状に残ったマスクが屈曲したり、破損して液体流路の壁面に付着したとしても、付
着部分の面積が小さいため、密着しにくく除去しやすい。これにより、マスクの残留に起
因する異物の発生を抑制して歩留まりを向上することができる。
【0009】
ここで、前記マスク形成工程が、前記流路形成基板の表面に第二の凹凸部を設ける工程
と、この第二の凹凸部が設けられた前記流路形成基板の表面に前記膜を形成することで、
この第二の凹凸部に対応した前記第一の凹凸部を形成する工程とを具備することが好まし
い。流路形成基板の表面に第二の凹凸部を設けることにより、簡易に第一の凹凸部を有す
るマスクを形成することができる。
【0010】
また、前記マスクが、ストライプ状の凸部及び凹部が交互に現れる波状の第一の凹凸部
を有し、この第一の凹凸部の各凸部の長手方向が、前記開口部の開口辺と交差することが
好ましい。この場合、波状の第一の凹凸部が設けられることにより、庇状に残ったマスク
が屈曲したり、破損して液体流路の壁面に付着したとしても、より壁面との接地面積が小
さいため、密着しにくく除去しやすい。また、この第一の凹凸部の各凸部の長手方向が、
前記開口部の開口辺と交差するように形成されていることで、平坦なマスクよりもマスク
自体の強度が上昇するので、庇状に残ったマスクが屈曲して隔壁に付着したり、破損した
りするのを抑制できる。これにより、マスクの残留に起因する異物の発生を抑制して歩留
まりを向上することができる。
【0011】
本発明の結晶基板のエッチング方法は、結晶基板に溝部を形成する結晶基板のエッチン
グ方法であって、前記結晶基板の表面に開口部を有する膜を形成してマスクとするマスク
形成工程と、前記結晶基板を前記マスクの前記開口部を介してウェットエッチングするこ
とで、前記溝部を形成するエッチング工程と、前記マスクを除去する工程とを具備し、前
記マスクは、前記開口部の周囲に第一の凹凸部が形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の結晶基板のエッチング方法は、第一の凹凸部を有するマスクを形成することで
、庇状に残ったマスクが屈曲したり、破損して流路形成基板に付着したとしても、付着部
分の面積が小さいため、密着しにくく、除去しやすい。これにより、マスクの残留に起因
する異物の発生を抑制して歩留まりを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。図示
するように、本実施形態の結晶基板である流路形成基板10は、本実施形態では面方位(
110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シ
リコンからなる弾性膜50が形成されている。
【0014】
流路形成基板10には、他方面側からウェットエッチングすることにより、複数の隔壁
11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。ま
た、各列の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13
と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路
15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板30のリザーバー部31
と連通して圧力発生室12の列毎に共通のインク室となるリザーバーの一部を構成する。
インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧
力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。本実施形態では、イン
ク供給路14は、圧力発生室12及び連通路15の一方の幅を狭めることで形成されてい
るが、特にこれに限定されず、例えば圧力発生室12及び連通路15の両側の幅を狭める
ことでインク供給路14を形成するようにしてもよい。
【0015】
すなわち、流路形成基板10には、第1の流路として圧力発生室12及び連通路15が
設けられ、第2の流路として第1の流路(圧力発生室12及び連通路15)よりも並設方
向(短手方向)の幅が幅狭の液体供給路であるインク供給路14が設けられている。そし
て、本実施形態では、これら圧力発生室12、インク供給路14及び連通路15からなる
液体流路が、隔壁11により区画されてその幅方向(短手方向)に複数並設されている。
【0016】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反
対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や
熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラ
スセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0017】
一方、このような流路形成基板10のノズルプレート20とは反対側の面には、上述し
たように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、弾性膜50とは異なる材料か
らなる絶縁体膜55が形成されている。勿論、絶縁体膜55は、例えば、酸化ジルコニウ
ム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化タンタル、窒化タング
ステン、窒化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭化珪素、炭化チタン、炭
化タングステン、炭化タンタルの少なくとも1種を主成分とする材料から形成してもよい
。さらに、この絶縁体膜55上には、下電極膜60と圧電体層70と上電極膜80とが後
述するプロセスで積層形成されて圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子30
0は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧
電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力
発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子3
00の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路
や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
【0018】
また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、流路形成基板10のインク供
給路14とは反対側の端部近傍まで延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ
接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加さ
れる。
【0019】
さらに、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、連通部13に対向する
領域にリザーバー部31が設けられた保護基板30が接着剤35を介して接合されている
。このリザーバー部31は、上述したように、流路形成基板10の連通部13と連通され
て各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。
【0020】
また、保護基板30には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を
阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。なお、圧電素子保
持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空
間は密封されていても、密封されていなくてもよい。また、流路形成基板10の連通部1
3を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバー部31のみをリザーバーとしてもよ
い。すなわち、流路形成基板10に圧力発生室12とインク供給路14のみを形成しても
よい。
【0021】
また、保護基板30上には、圧電素子300を駆動するための駆動回路120が実装さ
れている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等
を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とはボンディングワイ
ヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0022】
保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス
、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一
材料の面方位(110)のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0023】
また、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基
板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する有機絶縁材
料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また
、固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板42のリザーバー100
に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ
ー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0024】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部インク供
給手段からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をイ
ンクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそ
れぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55
、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の
圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0025】
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドIの製造方法について、図3〜図7を参
照して説明する。なお、図3〜図5は、インクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断
面図であり、図6は、図5のB−B′線における一部拡大断面図であり、図7は、図5の
C−C′線におけるインクジェット式記録ヘッドの概略断面斜視図である。
【0026】
まず、図3(a)に示すように、面方位(110)のシリコン単結晶基板からなるシリ
コンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化
シリコン膜51を形成する。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジル
コニウムからなる絶縁体膜55を形成する。
【0028】
次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金(Pt)とイリジウム(Ir)とを絶
縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定
形状にパターニングする。次に、図4(a)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸
鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを
流路形成基板用ウェハー110の全面に形成した後、図4(b)に示すように、これら圧
電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧
電素子300を形成する。
【0029】
次に、図4(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って金(A
u)からなるリード電極90を形成後、圧電素子300毎にパターニングする。
【0030】
次に、図5(a)に示すように、保護基板用ウェハー130を、流路形成基板用ウェハ
ー110上に接着剤35によって接着する。ここで、この保護基板用ウェハー130には
、リザーバー部31及び圧電素子保持部32が予め形成されている。なお、この保護基板
用ウェハー130は、例えば、400μm程度の厚さを有するため、保護基板用ウェハー
130を接合することによって流路形成基板用ウェハー110の剛性は著しく向上するこ
とになる。
【0031】
次いで、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄く
する。本実施形態においては、ウェハー110を所定の厚みになるように薄くする際に、
ウェハー110の表面150に、図6(a)の一部拡大図に示すように断面視において波
状となる凹凸部(第二の凹凸部)151を形成する。即ち、表面150には、凹凸部15
1としてストライプ状の凸部と凹部とが交互に現れる波状面が形成されている。このよう
な凹凸部151は、例えばグラインダー等の切削手段により凹部を設けることにより形成
することができる。
【0032】
次に、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上に、例えば、窒化シ
リコン(SiN)からなる膜を形成してマスク200とする。本実施形態においては、マ
スク200が形成される流路形成基板用ウェハー110の表面150には、凹凸部151
が設けられている。このため、図6(b)の一部拡大図に示すように表面150の凹凸部
151上に設けられたマスク200も断面視において波状の凹凸部201(第一の凹凸部
)を有するものとなる。即ち、マスク200は、流路形成基板用ウェハー110の凹凸部
151に対応した凹凸部201からなる波状面として構成されている。そして、このマス
ク200を所定形状にパターニングして開口部202を形成する。
【0033】
次いで、このマスク200を介して流路形成基板用ウェハー110をKOH等のアルカ
リ溶液を用いたウェットエッチングすることにより、流路形成基板用ウェハー110の開
口部202に対応する領域に圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部
13を形成する。
【0034】
ここで、図7を用いて、図6で示した工程について詳細に説明する。図7は、図5のA
−A′断面模式図であり、説明のために流路形成基板用ウェハー110及びマスク200
については強調して記載してある。
【0035】
図7(a)に示したように、波状の凹凸部151(図6参照)(図7中は省略する)が
設けられた表面150に形成されたマスク200も断面視において波状となる。そして、
流路形成基板用ウェハー110をウェットエッチングした際に、マスク200の開口部2
02の縁部203、204の下の領域も徐々にオーバーエッチングされる。そして、マス
ク200の開口部202の縁部203、204は、このウェットエッチングの際に、図7
(a)に示すように凹凸形状を残したまま庇状に残留する。これは、マスク200自体の
剛性によるものである。
【0036】
そして、この庇状に残留したマスク200の縁部203は、エッチング中及びエッチン
グ後に隔壁11側に屈曲された状態で付着する。この場合に、マスク200に波状の凹凸
部201が形成されているので、縁部203が屈曲して隔壁11に付着しても接地面積が
小さいため、密着しにくいので、後述するように洗浄により除去しやすい(剥がしやすい
)。また、本実施形態においては、マスク200が、ストライプ状の凹凸部201の各凸
部の長手方向が、開口部202の開口辺と交差するように波状に設けられているので、縁
部203、204の強度は平坦な(凹凸形状が形成されていない)マスクに比べて強度が
高い。従って、図7(b)に示すように、破損しにくいだけではなく、縁部204が屈曲
せずに庇状となって残る場合もある。このように、本実施形態においては、縁部203が
付着しても除去しやすく、かつ、付着しない場合にも、強度が高く破損しにくい。このた
め異物の発生を抑制できる。
【0037】
その後は、マスク200を除去する。マスク200の除去は、ウェットエッチング又は
ドライエッチングなどで行うことができる。この場合に、庇状に残存した縁部204はこ
のエッチングにより除去しやすい。
【0038】
次に、流路形成基板用ウェハー110を洗浄液を用いて液体洗浄する。この場合に、エ
ッチングによりマスク200が除去され、マスク200のうち屈曲した縁部203のみが
隔壁11に残って付着していても、縁部203の隔壁11の付着面には凹凸部151が形
成されているので接地面積が小さく、その結果洗浄によって除去しやすい。また、マスク
200(縁部203)と隔壁11との間に析出した鉄も縁部203と一緒に除去すること
が可能である。
【0039】
このように、本発明の製造方法では、マスク200を波状に形成したことで、ウェット
エッチングによりマスク200の庇状に残留した縁部203、204も波状面として構成
されるので、隔壁11との接地面積が少ない。その結果、隔壁11に密着しにくく、さら
に除去されやすい。このように残留したマスクが除去されやすいので、マスク200の縁
部203と隔壁11との間に析出した鉄も除去することも可能である。従って、流路形成
基板用ウェハー110の液体流路に異物が発生するのを抑制でき、その結果保護膜のカバ
レッジ不良やノズル開口21の目詰まりを抑制して歩留まりを向上することができる。
【0040】
即ち、本実施形態においては、流路形成基板用ウェハー110の表面150に凹凸部1
51を設けることによりマスク200に凹凸部201を設けることで、縁部203、20
4が隔壁11に張り付いたとしても隔壁11との付着面積が小さいので除去しやすい。こ
の場合の凹凸部151の高さは、例えば数μm以下、好ましくは3μm以下であることが
好ましい。また、このような凹凸部151は、連続的に、例えば本実施形態のようなスト
ライプ状に設けられていてもよく、また、不連続的に1以上設けられていてもよい。
【0041】
連続的に設ける場合には、図7に示すように各凸部の長手方向が、開口部202を構成
する辺部(開口辺)と交差するように設けることが好ましい。このように設けることで、
凹凸部201のない平坦なマスクに比べて強度が高くなるので庇状に残存して屈曲しない
場合もあり、より除去しやすいからである。不連続的に設ける場合には、凹凸部201は
、突起として表面150にランダムに又は規則的に配置することができる。この場合、縁
部203、204が隔壁11に付着したとしても除去しやすいように構成されていれば突
起の形状は限定されない。例えば、柱状、角錐状等の平面で構成されるもの、半球状等の
曲面で構成されるものや、これらの組み合わせで構成されるもの等が挙げられる。このよ
うな凹凸部151は、開口部202の少なくとも周囲の庇状に残りやすい領域に設けられ
ていればよい。また、本実施形態においては、マスク200の両面に凹凸部201が形成
されているが、少なくともマスク200の一方面に形成されていれば、例えば破損して隔
壁11に付着した場合に除去しやすい。好ましくは、隔壁11に付着したとしても除去し
やすいように表面150側に凹凸部201が形成されていることである。なお、このよう
な凹凸部151は、本実施形態では凹部を形成することにより相対的に凸部を形成して設
けたが、凸部を形成することにより相対的に凹部を形成してもよい。
【0042】
その後は、特に図示しないが、流路形成基板用ウェハー110の圧力発生室12、連通
部13、インク供給路14及び連通路15等の流路の内面に耐インク性(耐液体性)を有
する保護膜を形成する。この場合に、隔壁11に付着したマスク200を除去したので、
保護膜のカバレッジが向上する。そして、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用
ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによ
って除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは
反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合する。この場合、流
路形成基板用ウェハー110のノズルプレート20の接合面に凹凸部151が残っている
ことになるが、ノズルプレート20を接合するための接着剤層があるためノズルプレート
20の接合は問題がない。そして、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板4
0を接合し、これら流路形成基板用ウェハー110を、図1に示すような一つのチップサ
イズの流路形成基板10毎に分割することによって上述した構造のインクジェット式記録
ヘッドIが製造される。
【0043】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1について説明したが、本発明は、もちろん上述した実施形態
に限定されるものではない。上述した実施形態1では、マスク200として、窒化シリコ
ンを用いるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、シリコン単結晶基板からなる
流路形成基板用ウェハー110(結晶基板)を熱酸化したり、CVD法やスパッタリング
法等で形成した二酸化シリコン(SiO2)などをマスク200として使用してもよい。
このようにマスク200を形成する場合であっても、流路形成基板の表面150に凹凸部
151を設けることにより、マスク200に凹凸部201を簡易に設けることが可能であ
る。
【0044】
さらに、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの製造方法の一例としてインクジェ
ット式記録ヘッドIの製造方法を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドの製
造方法を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法
にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター
等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタ
ーの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディス
プレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられ
る生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0045】
また、本発明は液体噴射ヘッドの製造方法に限定されず、結晶面方位が(110)面の
結晶基板をウェットエッチングすることにより微細加工を行う結晶基板のエッチング方法
に広く適用することができるものである。例えば、MgO基板のエッチング方法などにも
用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す一部拡大断面図である。
【図7】実施形態1に係る記録ヘッドの概略断面斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板(結晶基
板)、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、
20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバー
部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電
極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ
ー、 110 流路形成基板用ウェハー、 120 駆動回路、 121 接続配線、
130 保護基板用ウェハー、 200 マスク、 202 開口部、 203、204
縁部、 300 圧電素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が形成されている流路形成基板を具備す
る液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記流路形成基板の表面に開口部を有する膜を形成してマスクとするマスク形成工程と

前記流路形成基板を前記開口部を介してウェットエッチングすることで前記液体流路を
形成するエッチング工程と、
前記マスクを除去する除去工程とを具備し、
前記マスクは、少なくとも前記開口部の周囲に第一の凹凸部が形成されていることを特
徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記マスク形成工程が、
前記流路形成基板の表面に第二の凹凸部を設ける工程と、
この第二の凹凸部が設けられた前記流路形成基板の表面に前記膜を形成することで、こ
の第二の凹凸部に対応した前記第一の凹凸部を形成する工程とを具備することを特徴とす
る請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記マスクが、ストライプ状の凸部及び凹部が交互に現れる波状の第一の凹凸部を有し
、この第一の凹凸部の各凸部の長手方向が、前記開口部の開口辺と交差することを特徴と
する請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
結晶基板に溝部を形成する結晶基板のエッチング方法であって、
前記結晶基板の表面に開口部を有する膜を形成してマスクとするマスク形成工程と、
前記結晶基板を前記マスクの前記開口部を介してウェットエッチングすることで、前記
溝部を形成するエッチング工程と、
前記マスクを除去する工程とを具備し、
前記マスクは、前記開口部の周囲に第一の凹凸部が形成されることを特徴とする結晶基
板のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137488(P2010−137488A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318010(P2008−318010)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】