説明

液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】フィルターの位置ズレや変形を抑制して吐出不良を抑制することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液体供給路90を介して供給された液体を噴射するノズルを有するヘッド本体と、第1液体供給路91を有する第1供給部材31と、第2液体供給路92が設けられた第2供給部材32と、前記第1供給部材31と前記第2供給部材32との間に前記液体供給路90を横断して設けられたフィルター33と、前記第1供給部材31と前記第2供給部材32とを樹脂により固定している一体成型部34と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記第1供給部材31または前記第2供給部材32の吸引孔92、97を介して前記フィルター33を吸引吸着して位置決めした状態で、前記第1供給部材31と前記第2供給部材32とによって前記フィルター33を挟持する位置決め工程と、前記一体成型部を形成する工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例であるインクジェット式記録ヘッドでは、一般的に、インクが充填された液体貯留手段であるインクカートリッジから、このインクカートリッジに着脱可能に挿入されるインク供給針及びインクカートリッジが保持されるカートリッジケース等の供給部材に形成されたインク流路(液体供給路)を介してヘッド本体にインクが供給される。インクが供給されたヘッド本体には、圧電素子等の圧力発生手段が設けられ、圧力発生手段を駆動させることにより、ノズルからインクが吐出される。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、インクカートリッジ内のインクに含まれる気泡、あるいはインクカートリッジを着脱する際にインク内に混入した気泡がヘッド本体に供給されてしまうと、この気泡によるドット抜け等の吐出不良が発生するという問題がある。このため、インクカートリッジに挿入されるインク供給針と供給部材との間にインク内の気泡やゴミ等を除去するためのフィルターを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、インク供給針と供給部材とを一体成型により形成した一体成型部(アウター部)によって一体化したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−211130号公報
【特許文献2】特開2009−132135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インク供給針と供給部材とでフィルターを挟持する際に、供給部材の所定位置からフィルターがずれてしまうことや、フィルター自体に皺が寄るように変形してしまう虞があるという問題がある。そして、フィルターの位置ズレや変形の発生によって、インク中の気泡等がフィルターに捕捉されずにノズルに達し、インク滴が吐出されないドット抜けや吐出方向がずれるといった吐出不良が発生してしまうという問題がある。
【0007】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法だけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法においても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、フィルターの位置ズレや変形を抑制して吐出不良を抑制することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体供給路を介して供給された液体を噴射するノズルを有するヘッド本体と、前記液体供給路の一部を構成する第1液体供給路を有する第1供給部材と、前記第1供給部材の下流側に配置され、前記第1液体供給路と連通して前記液体供給路の一部を構成する第2液体供給路が設けられた第2供給部材と、前記第1供給部材と前記第2供給部材との間に前記液体供給路を横断して設けられたフィルターと、前記第1供給部材と前記第2供給部材との間で前記フィルターを挟持した状態で前記第1供給部材と前記第2供給部材とを樹脂により固定している一体成型部と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記第1供給部材または前記第2供給部材に前記フィルターを配置する配置工程と、前記第1供給部材または前記第2供給部材の吸引孔を介して前記フィルターを吸引吸着して位置決めした状態で、前記第1供給部材と前記第2供給部材とによって前記フィルターを挟持する位置決め工程と、前記第1供給部材と前記第2供給部材との間で前記フィルターを挟持した状態で、前記一体成型部を形成する工程と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、フィルターを第1供給部材または第2供給部材に吸引吸着することで、第1供給部材と第2供給部材とによってフィルターを挟持させた際の衝撃や摩擦によってフィルターが位置ズレすることや変形するのを抑制することができる。
【0010】
ここで、前記吸引孔は、前記液体供給路を含むことが好ましい。これによれば、液体供給路を介して吸引することで、供給部材にフィルターを吸引する吸引孔を別途設ける必要がない。
【0011】
また、前記吸引孔は、前記フィルターの周縁部に向けて開口するように前記第1供給部材または前記第2供給部材に設けられている貫通孔を含むことが好ましい。これによれば、フィルターの周縁部を吸引することで、フィルターが周縁部を引っ張られた状態で吸着されるため、フィルターの変形をさらに抑制することができる。
【0012】
また、前記第1供給部材及び前記第2供給部材の少なくとも一方の内壁面には、前記フィルターに向かって突出する支持突起が設けられており、前記位置決め工程では、前記支持突起が設けられた前記第1供給部材側又は前記第2供給部材側から吸引動作を行うことが好ましい。これによれば、支持突起によってフィルターの周縁部よりも内側の領域が吸引により変形するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る供給部材の上面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る供給部材の断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る供給針の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態1に係るヘッド本体の分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態1に係るヘッド本体の断面図である。
【図8】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係る供給部材の断面図である。
【図12】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態3に係る供給部材の断面図である。
【図15】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
【0015】
図1に示すように、インクジェット式記録装置10を構成するインクを吐出する液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドとも言う)11がキャリッジ12に固定され、この記録ヘッド11には、ブラック(B)、ライトブラック(LB)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異なる色のインクが貯留された液体貯留手段であるインクカートリッジ13がそれぞれ着脱可能に固定されている。
【0016】
記録ヘッド11が搭載されたキャリッジ12は、装置本体14に取り付けられたキャリッジ軸15に軸方向に移動自在に設けられている。そして駆動モーター16の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト17を介してキャリッジ12に伝達されることで、キャリッジ12はキャリッジ軸15に沿って移動される。一方、装置本体14には、キャリッジ軸15に沿ってプラテン18が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン18上を搬送されるようになっている。
【0017】
また、キャリッジ12のホームポジションに対応する位置、すなわち、キャリッジ軸15の一方の端部近傍には、記録ヘッド11のノズル形成面を風刺するキャップ部材19を有するキャッピング装置20が設けられている。このキャップ部材19によってノズル開口が形成されたノズル形成面を封止することにより、インクの乾燥を防止している。また、キャップ部材19は、クリーニング動作時のインク受けとしても機能する。
【0018】
ここで、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド11について説明する。なお、図2は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【0019】
図2に示すように、記録ヘッド11は、液体貯留手段であるインクカートリッジ13が固定されるカートリッジケース等の供給部材30と、供給部材30のインクカートリッジ13とは反対側の面に固定されたヘッド本体220と、ヘッド本体220の液体噴射面側に設けられたカバーヘッド240とを具備する。
【0020】
まず、供給部材30について詳細に説明する。なお、図3は、供給部材の上面図であり、図4は、図3のA−A′断面図であり、図5は、供給針の斜視図である。
【0021】
図3及び図4に示すように、供給部材30は、第1供給部材である供給針31と、複数の供給針31が一方面側に設けられた第2供給部材である供給部材本体32と、供給針31と供給部材本体32との間に挟持されたフィルター33と、これらの供給針31、供給部材本体32及びフィルター33を一体化する一体成型部34とを備えている。
【0022】
供給部材30は、その一方面に上述したインクカートリッジ13がそれぞれ装着される供給体装着部35を有する。勿論、この供給体装着部35に直接インクカートリッジ13を装着せずに、インクを貯留する液体貯留手段からチューブ等を介して供給体装着部35にインクを供給するようにしてもよい。
【0023】
また、供給部材30は、供給体装着部35とは反対側の他方面にヘッド本体220が接合される。そして、供給部材30には、一方面に設けられたインクカートリッジ13からのインクを他方面に設けられたヘッド本体220に供給する液体供給路90が設けられている。そして、供給部材30の内部には、フィルター33がこの液体供給路90を横断して設けられている。
【0024】
ここで、供給部材30を構成する各部材について詳細に説明する。
供給部材本体32には、後述するフィルター33よりも下流側にあって、一端が供給部材本体32の供給針31が設けられる面(供給部材本体32の一方面)に開口し、他端がヘッド本体220側に開口する第2液体供給路92が設けられている。この第2液体供給路92が液体供給路90の一部を構成している。なお、供給部材30には、複数のヘッド本体220、本実施形態では、5つのヘッド本体220が設けられており、液体供給路90は、1つのヘッド本体220につき2つ設けられ、この2つの液体供給路90には、1つのインクカートリッジ13からのインクがそれぞれ独立して導入される。また、第2液体供給路92の供給体装着部35側には、供給針31側から下流に向けて内径が漸減する第2フィルター室93が設けられている。このように、本実施形態の第2液体供給路92は、第2フィルター室93と、第2フィルター室93のヘッド本体220側の開口部であるインク供給口94で連通する内径が略同一の供給路とで構成されている。
【0025】
また、供給部材本体32の表面には、突出した土手部36が形成されている。土手部36は、供給針31の外周(裾部40の外周)を取り囲んでおり、供給針31の位置決めが行われる。さらに、供給部材本体32の供給針31が固定される一方面には、突出する壁部37が形成されている。壁部37の内側には、後述する製造工程で形成される一体成型部34が設けられている。
【0026】
供給針31は、供給部材本体32の一方面に固定されるものであり、先端部39から底面側に向けて拡幅する裾部40を有する。供給針31は、先端部39に設けられたインク導入口95に連通して液体供給路90の一部を構成する第1液体供給路91を有しており、第1液体供給路91は、フィルター33を介して供給部材本体32の第2液体供給路92に連通している。すなわち、供給部材30の液体供給路90は、供給針31の第1液体供給路91と供給部材本体32の第2液体供給路92とで構成されている。また、第1液体供給路91は、第2液体供給路92側に向けて内径が拡幅した空間、すなわち、幅広部である第1フィルター室96を有する。
【0027】
また、図5に示すように、供給針31の第1液体供給路91内には、フィルター33側に向かって突出した第1支持突起41が設けられている。第1支持突起41は、供給針31のフィルター33に相対向して第1フィルター室96を画成する内壁面96aに、フィルター33側に向かって突出して設けられている。言い換えると、第1支持突起41は、フィルター33の周縁部側から中央部に向かって突出して設けられており、第1支持突起41のフィルター33側の端面は、裾部40の端面と面一となるように設けられている。このため、第1支持突起41は、裾部40の端面と同一端面でフィルター33を支持するものである。
【0028】
また、第1支持突起41は、フィルター33を支持する先端面が長方形状を有し、2つの第1支持突起41が、その先端面の長辺が180度以下の角度となるように配置されているのが好ましい。このように、2つの第1支持突起41を先端面の長辺が180度以下となるように配置することで、第1支持突起41によってフィルター33の変形を確実に低減することができる。本実施形態では、第1支持突起41として、フィルター33(第1液体供給路91)の中央部側に向かって突出する2つの第1支持突起41を約90度の角度で配置するようにした。この2つの第1支持突起41の端部は、第1液体供給路91の中央部側で接触することなく、隙間が生じるように設けられている。これにより、2つの第1支持突起41によって第1液体供給路91内のインクの流れが阻害されるのを抑制することができる。
【0029】
さらに、供給針31の裾部40には、厚さ方向に貫通する貫通孔97が、周方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。本実施形態では、裾部40に貫通孔97を8個設けるようにした。
【0030】
この供給針31に設けられた貫通孔97は、詳しくは後述するが、記録ヘッド11の製造時にフィルター33を吸引する吸引孔の一部として機能するものであるが、製造後には、後述する一体成型部34の一部で埋められるものである。
【0031】
また、供給針31及び供給部材本体32は、フィルター33を挟持する領域である挟持領域42を有する。本実施形態では、挟持領域42は、供給部材本体32の一方面における第2液体供給路92の開口縁部であるフィルター挟持部43と、供給針31の供給部材本体32側の開口縁部である針側フィルター挟持部44とが互いに相対向する領域である。
【0032】
さらに、供給針31の針側フィルター挟持部44の外側には、供給部材本体32側に突出するフィルターガイド46が設けられている。フィルターガイド46は、針側フィルター挟持部44の周囲に亘って設けられており、供給針31にフィルター33を吸引吸着させた際に、フィルター33の供給針31への位置決めを行うためのものである。フィルターガイド46の突出量をフィルター33の厚さよりも低くすることで、フィルター挟持部43と針側フィルター挟持部44との間でフィルター33を確実に挟持させることができる。
【0033】
フィルター33は、液体供給路90を横断するように供給針31と供給部材本体32との間、すなわち、フィルター挟持部43と針側フィルター挟持部44との間で挟持されている。
【0034】
このようなフィルター33は、金属を細かく編み込むことで複数の微細孔が形成されたシート状のものである。また、フィルター33は、第2液体供給路92の開口形状よりも大きく、且つフィルターガイド46よりも小さい大きさで設けられている。なお、フィルター33は、金属を細かく編み込んだものに限定されず、例えば、複数の貫通孔が形成された1枚の金属板や樹脂板等であってもよく、また、不織布等であってもよい。このフィルター33により、液体供給路90を流れるインク内の気泡や異物が除去される。
【0035】
一体成型部34は、フィルター33を挟持した供給針31と供給部材本体32とを接合している。この接合とは、供給針31と供給部材本体32との両方に接触するように一体成型部34を成型することにより供給針31と供給部材本体32とを接合して、供給針31と供給部材本体32とフィルター33とを一体化することをいう。
【0036】
また、一体成型部34は、挟持領域42の外側に供給針31の周方向に亘って設けられている。本実施形態では、一体成型部34は、挟持領域42の外側、すなわち、土手部36から裾部40を覆い、壁部37の内側全体に亘って連続して設けられている。このように、一体成型部34が挟持領域42の外側を覆うことで、挟持領域42からインクが外部に流出するのを抑制する役割を有する。なお、本実施形態では、一体成型部34は、全ての供給針31に共通して連続するように設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、供給針31毎や、2つ以上の供給針31で構成される供給針31群毎に独立して設けるようにしてもよい。
【0037】
ちなみに、供給部材本体にフィルターを熱溶着等で固定し、さらに供給針を供給部材本体に超音波溶着等で固定する場合、供給部材本体にフィルターを溶着する領域を設け、さらにフィルターの溶着する領域の外側に供給針を溶着する領域が必要となり、供給部材本体が大型化してしまい、供給部材30が大型化してしまう。これに対して、本発明では、一体成型部34によって供給部材本体32と供給針31とを固定しているため、溶着のための領域が不要となって、隣り合う供給針31の間隔を短くすることができ、記録ヘッド11を小型化することができる。また、本発明では、記録ヘッド11の小型化が可能なことから、フィルターの面積を小さくしてヘッドの小型化を図ることが不要となる。なお、フィルターの面積を過度に小さくすると、動圧が上がるため、圧電素子や発熱素子等の圧力発生手段を駆動する駆動電圧を上げなくてはならないが、本発明では、フィルターの面積を小さくして記録ヘッドを小型化する必要がないので、動圧は上昇せず、駆動電圧を上げる必要がない。
【0038】
また、供給針と供給部材本体とを溶着により固定すると、隙間が発生する虞があり、隙間からインクが漏出してしまうが、本発明では、供給針31と供給部材本体32とが一体成型部34によって固定されているため、これらの間に隙間が生じることがなく、隙間からインクが漏出するのを抑制することができる。また、仮に隙間ができたとしても、その隙間は一体成型部34によって覆われるので、インクの漏出を確実に抑制できる。
【0039】
このような供給部材30の液体供給路90のインクカートリッジ13とは反対側にはヘッド本体220が設けられている。ここで、ヘッド本体220について説明する。なお、図6はヘッド本体の分解斜視図であり、図7はヘッド本体の断面図である。
【0040】
図示するように、ヘッド本体220を構成する流路形成基板60は、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなり、その一方面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。この流路形成基板60には、その他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室62が、幅方向に並設された列が2列形成されている。また、各列の圧力発生室62の長手方向外側には、後述する保護基板80に設けられるマニホールド部81と連通し、各圧力発生室62の共通のインク室となるマニホールド100を構成する連通部63が形成されている。また、連通部63は、供給路64を介して各圧力発生室62の長手方向一端部とそれぞれ連通されている。すなわち、本実施形態では、流路形成基板60に形成された液体流路として、圧力発生室62、連通部63及び供給路64が設けられている。
【0041】
また、流路形成基板60の開口面側には、ノズル開口71が形成されたノズルプレート70が接着剤400を介して固着されている。具体的には、複数のヘッド本体220に対応するように複数のノズルプレート70が設けられており、当該ノズルプレート70は後で詳述するカバーヘッド240の露出開口部241よりも若干広い面積を有してカバーヘッド240と重畳する領域で接着剤等によって固定されている。なお、ノズルプレート70のノズル開口71は、各圧力発生室62の供給路64とは反対側で連通する位置に穿設されている。本実施形態では、流路形成基板60に圧力発生室62が並設された列を2列設けたため、1つのヘッド本体220にノズル開口71の並設されたノズル列71Aが2列設けられている。そして、本実施形態では、このノズルプレート70のノズル開口71が開口する面が液体噴射面となっている。このようなノズルプレート70としては、例えば、シリコン単結晶基板やステンレス鋼(SUS)等の金属基板などが挙げられる。
【0042】
一方、流路形成基板60の開口面とは反対側には、弾性膜50上に、金属からなる下電極膜と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料からなる圧電体層と、金属からなる上電極膜とを順次積層することで形成された圧電素子300が形成されている。
【0043】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板60上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部81を有する保護基板80が接合されている。このマニホールド部81は、本実施形態では、保護基板80を厚さ方向に貫通して圧力発生室62の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板60の連通部63と連通されて各圧力発生室62の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
【0044】
また、保護基板80の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部82が設けられている。
【0045】
さらに、保護基板80上には、各圧電素子300を駆動するための半導体集積回路(IC)等からなる駆動回路110が設けられている。この駆動回路110の各端子は、図示しないボンディングワイヤー等を介して各圧電素子300の個別電極から引き出された引き出し配線と接続されている。そして、駆動回路110の各端子には、フレキシブルプリント基板(FPC)等の外部配線111を介して外部と接続され、外部から外部配線111を介して印刷信号等の各種信号を受け取るようになっている。
【0046】
また、このような保護基板80上には、コンプライアンス基板140が接合されている。コンプライアンス基板140のマニホールド100に対向する領域には、マニホールド100にインクを供給するためのインク導入口144が厚さ方向に貫通することで形成されている。また、コンプライアンス基板140のマニホールド100に対向する領域のインク導入口144以外の領域は、厚さ方向に薄く形成された可撓部143となっており、マニホールド100は、可撓部143により封止されている。この可撓部143により、マニホールド100内にコンプライアンスを与えている。
また、コンプライアンス基板140上には、ヘッドケース230が固定されている。
【0047】
ヘッドケース230は、インク導入口144に連通すると共に供給部材30の液体供給路90に連通して、供給部材30からのインクをインク導入口144に供給するインク供給連通路231が設けられている。このヘッドケース230には、コンプライアンス基板140の可撓部143に対向する領域に溝部232が形成され、可撓部143の撓み変形が適宜行われるようになっている。また、ヘッドケース230には、保護基板80上に設けられた駆動回路110に対向する領域に厚さ方向に貫通した駆動回路保持部233が設けられており、外部配線111は、駆動回路保持部233を挿通して駆動回路110と接続されている。
【0048】
ヘッド本体220を構成する各部材には、組立時に各部材を位置決めするためのピンが挿入されるピン挿入孔234が角部の2箇所に設けられている。そして、ピン挿入孔234にピンを挿入して各部材の相対的な位置決めを行いながら部材同士を接合することで、ヘッド本体220が一体的に組み合わせられる。
【0049】
また、ヘッドケース230を介して供給部材30に保持されたヘッド本体220は、図2に示すように、5つのヘッド本体220の液体噴射面側を覆うように箱形状を有するカバーヘッド240によって相対的に位置決めされて保持されている。カバーヘッド240は、ノズル開口71を露出する露出開口部241と、露出開口部241を画成すると共にヘッド本体220の液体噴射面の少なくともノズル列71Aの並設されたノズル開口71の両端部側に接合されるヘッド接合部242とを具備する。
【0050】
ヘッド接合部242は、本実施形態では、複数のヘッド本体220に亘って液体噴射面の外周に沿って設けられた枠部243と、隣接するヘッド本体220の間に延設されて露出開口部241を分割する梁部244とで構成されており、枠部243及び梁部244がヘッド本体220の液体噴射面、すなわちノズルプレート70の表面に接合されている。
【0051】
また、カバーヘッド240には、ヘッド本体220の液体噴射面の側面側に、液体噴射面の外周縁部に亘って屈曲するように延設された側壁部245が設けられている。
【0052】
このようにカバーヘッド240は、ヘッド接合部242をヘッド本体220の液体噴射面に接着するようにしたため、液体噴射面とカバーヘッド240との段差を減少させることができ、液体噴射面のワイピングや吸引動作などを行っても、液体噴射面にインクが残留するのを防止することができる。また、梁部244によって隣接するヘッド本体220の間が塞がれているため、隣接するヘッド本体220の間にインクが侵入することがなく、圧電素子300や駆動回路110などのインクによる劣化及び破壊を防止することができる。また、ヘッド本体220の液体噴射面とカバーヘッド240との間は、接着剤によって隙間なく接着されているため、隙間に被記録媒体Sが入り込むのを防止してカバーヘッド240の変形及び紙ジャムを防止することができる。さらに、側壁部245が、複数のヘッド本体220の外周縁部を覆うことで、ヘッド本体220の側面へのインクの回り込みを確実に防止することができる。また、カバーヘッド240に、ヘッド本体220の液体噴射面と接合されるヘッド接合部242を設けるようにしたため、複数のヘッド本体220の各ノズル列71Aをカバーヘッド240に対して高精度に位置決めして接合することができる。
【0053】
このようなカバーヘッド240としては、例えば、ステンレス鋼などの金属材料が挙げられ、金属板をプレス加工により形成してもよく、成型により形成するようにしてもよい。また、カバーヘッド240を導電性の金属材料とすることで、接地することができる。なお、カバーヘッド240とノズルプレート70との接合は、特に限定されず、例えば、熱硬化性のエポキシ系接着剤や、紫外線硬化型の接着剤による接着などが挙げられる。
【0054】
このような本実施形態の記録ヘッド11は、インクカートリッジ13からのインクを液体供給路90(第1液体供給路91及び第2液体供給路92)を介して取り込み、インク供給連通路231及びインク導入口144を介して、マニホールド100からノズル開口71に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路110からの記録信号に従い、各圧力発生室62に対応するそれぞれの圧電素子300に電圧を印加し、弾性膜50及び圧電素子300をたわみ変形させることにより、各圧力発生室62内の圧力が高まりノズル開口71からインク滴が吐出する。
【0055】
ここで、このような記録ヘッド11、特に供給部材30に係る製造方法について詳細に説明する。なお、図8〜図10は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【0056】
まず、図8(a)に示すように、供給針31の供給部材本体32側の端面である針側フィルター挟持部44にフィルター33を吸引吸着させて位置決めする(配置工程を含む)。このフィルター33の吸引は、供給針31の第1液体供給路91と貫通孔97とを利用する。すなわち、本実施形態では、供給針31の第1液体供給路91と貫通孔97とが吸引孔となっている。ちなみに、第1液体供給路91と貫通孔97とを吸引孔として利用するには、図8(a)に示す保持治具120を用いる。
【0057】
ここで保持治具120は、供給針31の外形形状と略同一形状を有する凹部121が設けられている。また、保持治具120には、供給針31のインク導入口95と貫通孔97とに連通する吸引連通孔122が設けられている。吸引連通孔122の供給針31とは反対側には、真空ポンプ等の吸引ポンプ(図示なし)が設けられており、吸引ポンプによって吸引連通孔122、インク導入口95(第1液体供給路91)及び貫通孔97を介してフィルター33を吸引することで、フィルター33を供給針31に吸着させる。
【0058】
このとき、第1液体供給路91だけではなく、貫通孔97からも吸引することで、フィルター33の中央部のみが第1液体供給路91側に向かって凸状に変形するのを抑制することができる。すなわち、図9に示すように、第1液体供給路91(インク導入口95)のみを吸引すると、フィルター33の周縁部は針側フィルター挟持部44によって規制されているため、フィルター33の中央部のみが第1液体供給路91内に突出するように凸状に変形してしまう。これに対して、本実施形態のようにフィルター33の周縁部を貫通孔97によって同時に吸引してフィルター33を針側フィルター挟持部44に吸着させることで、フィルター33が針側フィルター挟持部44に所定の張力で張られて、フィルター33の中央部が吸引されてもフィルター33の中央部がインク導入口95側に突出するように変形するのを抑制することができる。
【0059】
また、供給針31には、第1支持突起41が設けられている。この第1支持突起41によっても、フィルター33の変形が規制される。すなわち、第1支持突起41があれば、フィルター33の中央部がインク導入口95側に突出して凸状に変形するのを抑制することができるため、フィルター33の周縁部を吸引する貫通孔97を設けなくてもよい。勿論、貫通孔97で吸引すると共に、第1支持突起41を設けることで、フィルター33の変形をより確実に抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、吸引孔として第1液体供給路91及び貫通孔97を用いるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、貫通孔97のみを吸引孔として利用するようにしてもよい。すなわち、貫通孔97のみでフィルター33の周縁部のみを供給針31に吸引吸着するようにしてもよい。
【0061】
次に、図8(b)に示すように、フィルター33を吸引吸着した供給針31と供給部材本体32とでフィルター33を挟持する(位置決め工程)。このとき、フィルター33が供給針31に吸引吸着されて保持されているため、供給針31と供給部材本体32とをフィルター33を介して当接させた際の衝撃や摩擦によってフィルター33の位置ずれや、変形が生じるのを抑制することができる。また、フィルター33を供給針31に吸引吸着しているため、供給針31と供給部材本体32とをフィルター33の面が鉛直方向となる向きで当接させてもフィルター33が落下するのを抑制することができる。したがって、後の工程で型枠の向きに制限が無くなり、製造効率を向上することができる。
【0062】
次に、図10に示すように、型枠の一例である第1の金型510と第2の金型520とでフィルター33を挟持した供給針31及び供給部材本体32を保持する。
【0063】
第1の金型510及び第2の金型520は、フィルター33を挟持した供給針31と供給部材本体32とを挟持すると共に、樹脂の注入により一体成型部34(図4参照)が形成される空間部600を有する。具体的には、第1の金型510には、供給部材本体32が嵌合される第1の凹部511が形成されている。また、第2の金型520には、空間部600の一部を構成する第2の凹部521が形成され、供給針31の先端部39が嵌合される針保持孔522が形成されている。さらに、第2の金型520には、樹脂注入孔523が設けられている。樹脂注入孔523は、一端側が第2の凹部521に連通し、他端側から樹脂が注入される。
【0064】
また、第2の金型520には、供給針31の第1液体供給路91に連通する金型吸引孔524が設けられている。この金型吸引孔524は、空間部600に樹脂を注入して一体成型部34を成型する際に、金型吸引孔524及び第1液体供給路91を介してフィルター33を吸引することで、フィルター33を供給針31側に吸引吸着させるものである。
【0065】
そして、フィルター33を金型吸引孔524及び第1液体供給路91を介して供給針31側に吸引吸着させながら、空間部600内に加熱した樹脂を注入し、冷却して樹脂を硬化させることにより一体成型部34を形成する(図4参照)。これにより、供給針31、供給部材本体32及びフィルター33が一体成型部34で一体化された供給部材30を形成することができる。
【0066】
ここで、本実施形態では、第1支持突起41が設けられた供給針31の第1液体供給路91から吸引することで、フィルター33の両側の第1フィルター室96(第1液体供給路91)と、第2フィルター室93(第2液体供給路92)との間に、第1フィルター室96側が第2フィルター室93に比べて低い圧力となるように圧力差を生じさせている。このため、フィルター33は、第1フィルター室96側に、すなわち、供給針31側に押しつけられた状態(吸引吸着された状態)で、一体成型部34が形成される。
【0067】
この一体成型部34を形成する際に、空間部600内の気体は、第1液体供給路91及び金型吸引孔524を介して吸引されて外部に排出されているため、加熱された樹脂を空間部600内の隅々に至るまで十分に充填することができる。
【0068】
また、一体成型部34を形成する際に、フィルター33は、供給針31側に吸引吸着されているため、樹脂が空間部600に充填された際の充填圧力や、樹脂が硬化する際の収縮による圧力が印加されても、フィルター33の変形を抑制することができる。具体的には、本実施形態では、第1液体供給路91側から吸引しているため、フィルター33が供給部材本体32側に凸状となるように変形するのを抑制することができる。ちなみに、フィルター33が供給部材本体32側に凸状に変形すると、フィルター33と第2液体供給路92の第2フィルター室93の内壁との間に十分な空間を画成することができず、このフィルター33の突出した領域と内壁との間に気泡が溜まってしまい、フィルター33の有効面積が減少するという問題がある。
【0069】
また、本実施形態では、供給針31側に第1支持突起41を設け、供給針31の第1液体供給路91側から吸引するようにしたため、供給針31側に吸引吸着されたフィルター33は、第1支持突起41によって供給針31側への変形が規制される。したがって、フィルター33は、供給針31側にも凸状に変形するのが抑制されて、供給針31と供給部材本体32との間に表面が平坦となるように保持される。
【0070】
なお、本実施形態では、供給針31側に第1支持突起41を設け、一体成型部34を形成する際に、供給針31の第1液体供給路91側から吸引するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、供給部材本体32の第2液体供給路92側から吸引するようにしてもよい。この場合には、空間部600内に加熱された樹脂を十分に充填することができると共に、フィルター33が供給針31側に凸状に変形するのを抑制することができるという効果を奏する。
【0071】
このように形成した供給部材30に、複数のヘッド本体220を固定し、この複数のヘッド本体220を覆うようにカバーヘッド240を取り付けることで、図2に示す本実施形態の記録ヘッド11が形成される。
【0072】
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係る供給部材の断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0073】
図示するように、実施形態2に係る供給部材30Aは、第1の供給部材である供給針31Aと、供給針31Aが一方面側に複数配置された第2の供給部材である供給部材本体32Aと、フィルター33と、一体成型部34とを備えている。
【0074】
本実施形態の供給針31Aには、第1液体供給路91内に第1支持突起41が設けられていない。また、供給針31Aには、フィルターガイド46が設けられておらず、針側フィルター挟持部44が、供給部材本体32A側に面一となるように設けられている。
【0075】
また、供給部材本体32Aには、フィルター33に向かって突出した第2支持突起45が設けられている。
【0076】
第2支持突起45は、供給部材本体32Aの第2液体供給路92の第2フィルター室93の内壁面に設けられた円柱形状を有する。本実施形態では、インク供給口94の周りに
3つの第2支持突起45を設けるようにした。この第2支持突起45は、基端部が第2フィルター室93の内壁面に固定され、先端部がフィルター33に向かって突出して設けられており、その先端面でフィルター33を支持する。
【0077】
さらに、第2支持突起45は、供給部材本体32Aのフィルター33に対向する内壁面とフィルター33との間隔が、インク供給口94からフィルター33までの距離の半分以下となる領域に設けられている。なお、本明細書において距離とは最短距離のことをいう。また、第2支持突起45は、フィルター33を挟持する挟持領域42とは接しておらず、間に空間が画成されることで、インクが停滞せずに通過するようになっている。
【0078】
このように第2支持突起45を設けることで、フィルター33が供給部材本体32A側に凸状に変形するのを抑制することができる。
【0079】
このような実施形態2に係る供給部材30Aを有する記録ヘッド11の製造方法について説明する。なお、図12及び図13は、本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【0080】
まず、図12(a)に示すように、供給部材本体32Aの供給針31A側の端面であるフィルター挟持部43にフィルター33を吸引吸着させて位置決めする(配置工程を含む)。このフィルター33の吸引は、第2液体供給路92を利用する。すなわち、本実施形態では、供給部材本体32Aの第2液体供給路92が吸引孔となっている。
【0081】
このフィルター33の吸引では、供給部材本体32Aに第2支持突起45が設けられているため、フィルター33が第2液体供給路92を介して吸引されても、フィルター33の中央部が供給部材本体32A側に凸状に変形するのを第2支持突起45によって規制して、フィルター33の変形を抑制することができる。ちなみに、本実施形態では、第2液体供給路92のみを吸引孔として利用するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、上述した実施形態1と同様に、供給部材本体32Aに、フィルター33の周縁部に開口する貫通孔を設け、この貫通孔を吸引孔としてもよく、また、貫通孔及び第2液体供給路92を吸引孔としてもよい。
【0082】
次に、図12(b)に示すように、フィルター33を吸引吸着した供給部材本体32Aと供給針31Aとでフィルター33を挟持する(位置決め工程)。このとき、フィルター33が供給部材本体32Aに吸引吸着されて保持されているため、供給針31Aと供給部材本体32Aとをフィルター33を介して当接させた際の衝撃や摩擦によってフィルター33の位置ずれや、変形が生じるのを抑制することができる。また、フィルター33を供給針31Aに吸引吸着しているため、供給針31Aと供給部材本体32Aとをフィルター33の面が鉛直方向となる向きで当接させてもフィルター33が落下するのを抑制することができる。したがって、後の工程で型枠の向きに制限が無くなり、製造効率を向上することができる。
【0083】
次に、図13に示すように、型枠の一例である第1の金型510と第2の金型520とでフィルター33を挟持した供給針31A及び供給部材本体32Aを保持する。
【0084】
その後は、フィルター33を第2液体供給路92を介して供給部材本体32A側に吸引吸着させながら、第1の金型510と第2の金型520と間に画成された空間部600内に加熱した樹脂を注入し、樹脂を冷却して硬化させることにより一体成型部34を形成する(図11参照)。これにより、供給針31A、供給部材本体32A及びフィルター33が一体成型部34で一体化された供給部材30Aを形成することができる。
【0085】
ここで、本実施形態では、第2支持突起45が設けられた供給部材本体32Aの第2液体供給路92から吸引することで、フィルター33の両側の第1フィルター室96(第1液体供給路91)と、第2フィルター室93(第2液体供給路92)との間に、第2フィルター室93側が第1フィルター室96に比べて低い圧力となるように圧力差を生じさせている。このため、フィルター33は、第2フィルター室93側に、すなわち、供給部材本体32A側に押しつけられた状態(吸引吸着された状態)で、一体成型部34が形成される。
【0086】
この一体成型部34を形成する際に、空間部600内の気体は、第2液体供給路92を介して吸引されて外部に排出されているため、加熱された樹脂を空間部600内の隅々に至るまで十分に充填することができる。
【0087】
また、一体成型部34を形成する際に、フィルター33は、供給部材本体32A側に吸引吸着されているため、樹脂が空間部600に充填された際の充填圧力や、樹脂が硬化する際の収縮による圧力が印加されても、フィルター33の変形を抑制することができる。具体的には、本実施形態では、第2液体供給路92側から吸引しているため、フィルター33が供給針31A側に凸状となるように変形するのを抑制することができる。ちなみに、フィルター33が供給針31A側に凸状に変形すると、フィルター33と第1液体供給路91の第1フィルター室96の内壁との間に十分な空間を画成することができず、このフィルター33の突出した領域と内壁との間に気泡が溜まってしまい、フィルター33の有効面積が減少するという問題がある。
【0088】
また、本実施形態では、供給部材本体32A側に第2支持突起45を設け、供給部材本体32Aの第2液体供給路92側から吸引するようにしたため、供給部材本体32A側に吸引吸着されたフィルター33は、第2支持突起45によって供給部材本体32A側への変形が規制される。したがって、フィルター33は、供給部材本体32A側にも凸状に変形するのが抑制されて、供給針31Aと供給部材本体32Aとの間に表面が平坦となるように保持される。
【0089】
(実施形態3)
図14は、本発明の実施形態3に係る供給部材の断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0090】
図14に示すように、実施形態3の供給部材30Bは、第1の供給部材である供給針31と、第2の供給部材である供給部材本体32Aと、フィルター33と、一体成型部34とを備えている。
【0091】
供給針31は、上述した実施形態1と同様の部材、すなわち、第1支持突起41が設けられたものである。
【0092】
供給部材本体32Aは、上述した実施形態2と同様の部材、すなわち、第2支持突起45が設けられたものである。
【0093】
そして、フィルター33は、供給針31の第1支持突起41と、供給部材本体32Aの第2支持突起45との間で挟持されている。なお、本実施形態では、供給針31の第1支持突起41と供給部材本体32Aの第2支持突起45とは、先端面でフィルター33を挟持可能な位置に配置されている。もちろん、第1支持突起41と第2支持突起45とは相対向しない異なる位置となるように配置してもよい。
【0094】
このような構成の場合、型枠に設置する前に、フィルター33を供給針31側に吸引吸着させてもよく、また、フィルター33を供給部材本体32A側に吸引吸着させてもよい。
【0095】
また、一体成型部34を形成する際の吸引も、上述した実施形態1と同様に供給針31側(第1液体供給路91)から行ってもよく、また実施形態2と同様に供給部材本体32A側(第2液体供給路92)から行ってもよい。ちなみに、一体成型部34を形成する際に、図15に示すように、供給針31側(第1液体供給路91)と供給部材本体32A(第2液体供給路92)との両方から吸引してもよいが、両方から吸引することで、フィルター33の両側に圧力差が生じない場合であっても、第1支持突起41及び第2支持突起45によってフィルター33の変形は抑制される。
【0096】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1〜3では、第1液体供給路91又は第2液体供給路92から吸引することで、フィルター33の両側の第1フィルター室96と第2フィルター室93との間に圧力差を生じさせるようにしたが、特にこれに限定されず、第1液体供給路91又は第2液体供給路92から気体を送風することで、フィルター33の両側の第1フィルター室96と第2フィルター室93との間に圧力差を生じさせるようにしてもよい。具体的には、実施形態1においては、第1支持突起41が設けられていない供給部材本体32の第2液体供給路92から気体を送風するようにすればよく、同様に、実施形態2においては、第2支持突起45が設けられていない供給針31Aの第
1液体供給路91から気体を送風するようにすればよい。勿論、気体の送風と吸引とを同時に行うようにしてもよい。
【0097】
また、例えば、上述した実施形態1〜3では、供給針31、31A又は供給部材本体32、32Aの何れか一方又は両方に支持突起(第1支持突起41や第2支持突起45等)を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、供給針又は供給部材本体の両方に支持突起を設けなくてもよい。支持突起を何れの部材にも設けない場合には、上述した実施形態1のように、供給針や供給部材本体に、フィルター33の周縁部に開口する貫通孔を設け、貫通孔を介してフィルター33の周縁部を吸引吸着するようにすれば、一体成型部34を形成する前のフィルター33の設置時の変形を抑制することができる。
【0098】
また、上述した実施形態1〜3では、供給部材本体32、32Aのインク供給口94を、第2フィルター室93の中央部に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、インク供給口94は、第2フィルター室93の一方向に偏心した位置に開口してもよい。
【0099】
さらに、上述した実施形態1〜3では、第1供給部材を供給針31、31Aとし、第2供給部材を供給部材本体32、32Aとしたが、その他の部材であってもよいことは言うまでもない。
【0100】
また、上述した実施形態1〜3では、2つの液体供給路90に対して1つのヘッド本体220が設けられた構成を例示したが、インクの色毎に複数のヘッド本体を設けるようにしてもよい。このような場合には、各液体供給路が、各ヘッド本体に連通する。すなわち、各液体供給路が、各ヘッド本体に設けられたノズル開口が並設されたノズル列毎に連通するように設けられていてもよい。もちろん、液体供給路は、ノズル列毎に連通しなくてもよく、1つの液体供給路が複数のノズル列に連通していてもよく、また、1列のノズル列を2つに分け、それぞれに液体供給路が連通していてもよい。すなわち、液体供給路は、複数のノズル開口からなるノズル開口群に連通していればよい。
【0101】
さらに、上述の実施形態では、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッド11を例示して本発明を説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0102】
10 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 11 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 30、30A、30B 供給部材、 31、31A 供給針(第1供給部材)、 32、32A 供給部材本体(第2供給部材)、 33 フィルター、 34 一体成型部、 41 第1支持突起、 45 第2支持突起、 90 液体供給路、 91 第1液体供給路(吸引孔)、 92 第2液体供給路(吸引孔)、 97 貫通孔(吸引孔)、 220 ヘッド本体、 230 ヘッドケース、 240 カバーヘッド、 510 第1の金型、 520 第2の金型、 600 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給路を介して供給された液体を噴射するノズルを有するヘッド本体と、
前記液体供給路の一部を構成する第1液体供給路を有する第1供給部材と、
前記第1供給部材の下流側に配置され、前記第1液体供給路と連通して前記液体供給路の一部を構成する第2液体供給路が設けられた第2供給部材と、
前記第1供給部材と前記第2供給部材との間に前記液体供給路を横断して設けられたフィルターと、
前記第1供給部材と前記第2供給部材との間で前記フィルターを挟持した状態で前記第1供給部材と前記第2供給部材とを樹脂により固定している一体成型部と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記第1供給部材または前記第2供給部材に前記フィルターを配置する配置工程と、
前記第1供給部材または前記第2供給部材の吸引孔を介して前記フィルターを吸引吸着して位置決めした状態で、前記第1供給部材と前記第2供給部材とによって前記フィルターを挟持する位置決め工程と、
前記第1供給部材と前記第2供給部材との間で前記フィルターを挟持した状態で、前記一体成型部を形成する工程と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記吸引孔は、前記液体供給路を含むことを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記吸引孔は、前記フィルターの周縁部に向けて開口するように前記第1供給部材または前記第2供給部材に設けられた貫通孔を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第1供給部材及び前記第2供給部材の少なくとも一方の内壁面には、前記フィルターに向かって突出する支持突起が設けられており、前記位置決め工程では、前記支持突起が設けられた前記第1供給部材側又は前記第2供給部材側から吸引動作を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−37094(P2011−37094A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185499(P2009−185499)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】