説明

液体噴射ヘッドユニット、液体噴射ヘッドモジュール、及び、液体噴射装置

【課題】払拭時の液滴の飛散を防止することが可能な液体噴射ヘッドユニット、液体噴射ヘッドモジュール、及び、液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル開口28からインクを吐出する単位ヘッド11をベース部27に保持した液体噴射ヘッドユニット3であって、単位ヘッドのノズル形成面44aを、ワイパーブレード46に対して摺接させるように単位ヘッドとワイパーブレードとを相対移動させて、ノズル形成面を払拭するように構成し、ベース部における単位ヘッドの矢印Y方向の下流側に付着抑制板29を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射ヘッドユニット、液体噴射ヘッドモジュール、及び、液体噴射装置に係り、特に、払拭時の液滴の飛散を防止することが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドモジュール、及び、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口から液滴として吐出(噴射)させる液体噴射ヘッドとしては、例えば、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンタという)などの画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)、液晶ディスプレーなどのカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)などの電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどがある。
【0003】
例えば、上記の記録ヘッドでは、リザーバから圧力発生室を経てノズルに至る一連の液体流路が形成された流路ユニットや圧力発生室の容積を変動可能な圧力発生素子を有するアクチュエータユニットなどを樹脂製のヘッドケースに取り付けて構成されている。上記流路ユニットには、ノズルを開設した金属製のノズルプレートが接合されている。
【0004】
ところで、上記のプリンタでは、複数の記録ヘッド(単位ヘッド)を記録媒体の搬送方向に配置してヘッドユニットを構成し、このヘッドユニットを搬送方向と直交する方向に千鳥配置してヘッドモジュールを構成している。この構成によれば、記録ヘッドの主走査方向の移動が不要となり、例えば、記録媒体の副走査方向への搬送のみで画像等の記録を行うことができるので、シリアルヘッドを用いる構成と比較して記録時間を短縮化することができる。
【0005】
このような記録ヘッドは、弾性を有すると共に、自由端側をノズルプレートの表面に当接させながら摺動する払拭部材となるワイパーブレードを備えており、ノズルプレートの表面に付着した液滴を払拭するように構成されている。このワイパーブレードによる払拭(ワイピング)の際に、ノズルプレートの表面を摺接したワイパーブレードの自由端がノズルプレートの端を通過すると、ワイパーブレードは屈曲した状態から復帰して、ノズルプレートから払拭されてワイパーブレードに付着した液滴が、このワイパーブレードの復帰動作に伴って飛翔することがあった。そして、ワイパーブレードの弾性変形によって液滴が飛翔すると、記録ヘッドの側面に付着したり、ノズルプレートに飛翔した液滴が付着してしまうことがある。このため、ワイパーブレードの近傍に液滴の散乱を防止する飛散防止板を設けているプリンタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−283581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、払拭部材が弾性変形によって液滴を飛翔させることや、払拭動作が速い場合には、払拭部材が弾性変形しない場合であってもノズル形成面から払拭部材が離れた瞬間に液滴を飛翔させてしまうことがあり、それらを防止するためには、ワイパーブレードの周辺の空間全体を覆わなければならなくなる。また、複数の記録ヘッドが隣接している場合には、飛散防止板に覆われていない空間から隣の記録ヘッドに向かって液滴が飛翔すると、記録ヘッドの側面或いはノズルプレートに飛翔した液滴が付着してしまって、記録ヘッドの不具合やノズルプレートに飛翔した液滴が固着することによる印字不良が発生する虞があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、払拭時の液滴の飛散を防止することが可能な液体噴射ヘッドユニット、液体噴射ヘッドモジュール、及び、液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射ヘッドユニットは、上記目的を達成するために提案されたものであり、ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドをキャリッジに保持した液体噴射ヘッドユニットであって、
前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を、払拭部材に対して摺接させるように前記液体噴射ヘッドと当該払拭部材とを相対移動させて、当該ノズル形成面を払拭するように構成し、
前記キャリッジにおける前記液体噴射ヘッドの払拭方向の下流側に付着抑制板を設けたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、液体噴射ヘッドのノズル形成面を、払拭部材に対して摺接させるように液体噴射ヘッドと払拭部材とを相対移動させて、ノズル形成面を払拭するように構成し、キャリッジにおける液体噴射ヘッドの払拭方向の下流側に付着抑制板を設けたので、ノズル形成面を払拭して屈曲した払拭部材に付着した液体が、払拭部材の弾性状態からの復帰によって飛翔したとしても、飛翔した液滴の進路を付着抑制板によって遮ることで付着抑制板に着弾させることができる。このため、液滴が液体噴射ヘッドの周囲に散乱することを極力防止できる。この結果、液体噴射ヘッドの側面に液滴が付着することによる液体噴射ヘッドの不具合や、ノズルプレートのノズルに液滴が付着することによる印字不良の発生を抑制することができる。
【0011】
また、上記構成において、前記付着抑制板を吸収材から構成することが望ましい。
【0012】
この構成によれば、付着抑制板を吸収材から構成するので、付着抑制板に着弾した液滴を保持することができ、印字時に着弾した液滴が付着抑制板から吐出対象物などに落下することを極力防止できる。
【0013】
また、上記構成において、前記付着抑制板が、払拭時以外は前記キャリッジに収納されていることが望ましい。
【0014】
この構成によれば、付着抑制板が、払拭時以外はキャリッジに収納されているので、付着抑制板に着弾した液滴の落下をより確実に防止できる。
【0015】
また、上記構成において、収納された前記付着抑制板が使用される際は、前記液体噴射ヘッドの吐出面よりも下方まで突き出ることが望ましい。
【0016】
この構成によれば、収納された付着抑制板が使用される際は、液体噴射ヘッドの吐出面よりも下方まで突き出るので、払拭部材の弾性運動によって飛翔する液滴の飛翔軌跡を遮る範囲を広げることができ、液体噴射ヘッドに液滴が着弾することを極力防止できる。
【0017】
また、上記構成において、前記液体噴射ヘッドをキャップする第一キャップ部と、前記付着抑制板をキャップする第二キャップ部を有することが望ましい。
【0018】
この構成によれば、液体噴射ヘッドをキャップする第一キャップ部と、付着抑制板をキャップする第二キャップ部を有するので、液体噴射ヘッドのノズルからその内部の液体が乾燥することを極力防止できると共に、付着抑制板に着弾した液滴を回収することができる。
【0019】
そして、本発明の液体噴射ヘッドモジュールは、複数の前記液体噴射ヘッドを前記キャリッジに保持した液体噴射ヘッドモジュールであって、
上記各構成の液体噴射ヘッドユニットを備え、
前記液体噴射ヘッド毎に配置した前記付着抑制板同士を連結する連結板を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、液体噴射ヘッド毎に配置した付着抑制板同士を連結する連結板を備えるので、キャリッジの剛性を高めることができる。また、液体噴射装置ヘッドを覆う面積が広くなるので、払拭部材から飛翔した液滴が、液体噴射装置ヘッドに着弾することをより確実に防止できる。
【0021】
そして、本発明の液体噴射装置は、上記構成の液体噴射ヘッドモジュールを備えたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。なお、本実施形態では、液体噴射装置の一形態である画像記録装置、詳しくは、ノズル開口群を等間隔ピッチで噴射対象物(又は記録媒体)となる記録紙の最大記録幅に相当する長さに配置した長尺な液体噴射ヘッド(以下、ラインヘッドという)を搭載したインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るプリンタ1の概略構成を説明する一部欠截斜視図である。本実施形態のプリンタ1は、筐体2の内部に、複数の単位ヘッド11(本発明の液体噴射ヘッドの一種)を千鳥状に配設して構成されるラインヘッド3(本発明の液体噴射ヘッドモジュールの一種)と、記録紙4を積層状態で収納する給紙トレイ5と、該給紙トレイ5から記録紙4を1枚ずつ送り出してラインヘッド3の下流側(搬送部7側)へと供給する給紙部6と、給紙部6により供給された記録紙4を搬送する搬送部7と、ラインヘッド3によって記録が行われて排出された記録紙4を保持する排紙トレイ10とを備え、ラインヘッド3を走査することなく記録紙4の記録領域の全幅にテキストや画像等を記録できるように構成されている。なお、本発明のプリンタ1は、複数の単位ヘッドを備えたラインヘッド以外にも、一つの単位ヘッド11を備えた液体噴射ヘッドユニット(シリアルヘッド)を用いることができる。
【0024】
筐体2の内部には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源の一種)が配設される。そして、エアポンプ等によるインクカートリッジ内の加圧によって、カートリッジ内に貯留されているインクがインク供給チューブを通じてラインヘッド3の各ヘッドユニット11に供給(圧送)されるように構成されている。
【0025】
また、筐体2の内部には、搬送部7の上方の領域であってラインヘッド3がインクを噴射して記録紙4に対し画像等の記録(印刷)を行う記録ポジションと、ラインヘッド3が記録を行わない場合に記録ポジションから外れて待機する待機ポジション(ホームポジション)が設定されている。ラインヘッド3は、この記録ポジションと待機ポジションに渡って延設されたガイド軸12に移動可能に支持されており、ヘッド移動機構(図示せず)の作動によってガイド軸12に沿って待機ポジションと記録ポジションとの間で進退移動(相対移動)するように構成されている。なお、待機ポジションの詳細については後述する。
【0026】
給紙部6は、ピックアップローラ16と、上下一対の給送ローラ17a,17bと、駆動ローラ18及び従動ローラ19に架け渡された無端状の給送ベルト20とを備えている。図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラ16は、給紙トレイ5にセットされた記録紙4の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の記録紙4を給紙トレイ5から繰り出す。また、給送ローラ17a,17bは、給紙トレイ5から繰り出された最上位の記録紙4を互いにニップした状態で1枚ずつ給送ベルト20へと給送する。駆動ローラ18は、図示しない回転駆動源により回転されることで給送ベルト20を駆動し、この給送ベルト20上に載置された記録紙4を下流側の搬送部7へと送るように構成されている。
【0027】
搬送部7は、搬送駆動ローラ22及び搬送従動ローラ23に架け渡された搬送ベルト24と、搬送ベルト24に載置される記録紙4を搬送ベルト24の内側から支持するガイド板25a,25b(プラテン)とから構成されている。搬送駆動ローラ22は、図示しない回転駆動源により、ラインヘッド3の記録動作に同期して回転されることで無端状の搬送ベルト24を駆動する。搬送ベルト24は、給紙部6から給送されてきた記録紙4をラインヘッド3の下方を通過させて画像等の記録を行った後に排出トレイ10側へと搬送する。
【0028】
図2は、本実施形態におけるラインヘッド3の構成を示す平面図であり、ノズル形成面側から見た図である。ラインヘッド3は、図示するように、複数の単位ヘッド11を記録紙4の搬送方向(相対送り方向。以下、第一方向X)に対して直交する方向(以下、第二方向Y)に2段の千鳥状に並べてベース部27(本発明におけるキャリッジの一種)に取り付け(保持し)、各単位ヘッド11に形成されたノズル開口28が全体として記録紙4の最大記録幅に対応可能な長さに配設されている。
【0029】
ベース部27には、各単位ヘッド11の矢印Y方向の下流側に付着抑制板29が設けられている(図2及び図4参照)。付着抑制板29は、基端をベース部27に取り付けた状態で、先端を下方に向けて立設している。付着抑制板29は、長手方向を矢印X方向に延在させており、矢印X方向の幅が単位ヘッド11の矢印X方向の幅よりも広く設定されている。このベース部27は、ガイド軸12に移動可能に取り付けられており、ベース部27が図示しないヘッド移動機構によってガイド軸12に沿って移動することにより、ラインヘッド3が待機ポジションと記録ポジションとの間で進退するようになっている。
【0030】
図3は、本発明に係る単位ヘッドの要部断面図である。単位ヘッド11は、複数の圧電振動子30を備えたアクチュエータユニット31、共通インク室32(液体室)からインク供給口33及び圧力発生室34を通ってノズル開口28に至る一連のインク流路を形成する流路ユニット35、及び、ヘッドケース36などを備えて概略構成されている。
【0031】
ヘッドケース36は中空箱体状のケーシングであり、その内部には、インクカートリッジ側からのインクを共通インク室32側に導入するための流路であるケース流路37と、各アクチュエータユニット31を個別に収容する収容室38とが形成されている。このヘッドケース36は、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂によって成型されており、流路取付面(下面)に流路ユニット35が固定される。
【0032】
上記のアクチュエータユニット31は、圧力発生手段としての圧電振動子30と、この圧電振動子30が接合される金属製の固定板39と、圧電振動子30に配線基板40からの駆動信号を印加するためのフレキシブルケーブル41等から構成される。各圧電振動子30は、自由端部が固定板39の先端面よりも外側に突出した所謂片持ち梁の状態で、ステンレス鋼などの金属製板材からなる固定板39上に取り付けられている。なお、圧力発生手段としては、上記圧電振動子以外にも、静電アクチュエータ、磁歪素子、発熱素子等を用いることができる。
【0033】
流路ユニット35は、振動板42、流路基板43、及びノズル基板44(ノズルプレート)からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接合して一体化することにより作製されている。この流路ユニット35における圧力発生室34は、ノズル開口28の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室32は、インクカートリッジ側からのインクが導入される室である。そして、この共通インク室32に導入されたインクは、インク供給口33を通じて各圧力発生室34に分配供給されるようになっている。
【0034】
流路ユニット35の底部に配置されるノズル基板44は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口28を、列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板44は、ステンレス鋼の板材によって作製され、ノズル開口28の列(ノズル列(ノズル群の一種))が、矢印Y方向に沿って複数並べて設けられている。そして、1つのノズル列は、例えば360個のノズル開口28によって構成される。
【0035】
次に、待機ポジションの構成について説明する。図4は、単位ヘッド11のノズル形成面44aに対するワイピングを説明する説明図である。プリンタ1の非記録領域である待機ポジションには、各単位ヘッド11のノズル形成面44a(ノズル基板44の露出面)を払拭する払拭部材となるワイパーブレード46と、単位ヘッド11のノズル形成面44a及び付着抑制板29をキャップするキャッピング機構47と、が配設されている。ここで、払拭部材としてワイパーブレード46を挙げたが、ゴムからなるブレード形状ではなく、布地からなりノズル形成面44aと接する部分が複数の突起になっているものでも良い。つまり、ノズル形成面44aを払拭し、その目的を達成するものであれば、材質や形状は限定されない。
【0036】
以下、払拭部材としてワイパーブレード46を用いたもので説明する。ワイパーブレード46は、ゴムやエラストマーなどの弾性材からなり、ガイド軸12に沿ってラインヘッド3を矢印Y方向(本発明の払拭方向の一種)に向かって通過させる際に、各単位ヘッド11のノズル形成面44aに摺接して、このノズル形成面44aに付着しているインクAなどを払拭する。なお、本発明のプリンタ1は、ラインヘッド3を固定させた状態でワイパーブレード46を矢印Y方向とは反対方向に移動させる構成としても良い。即ち、ワイパーブレード46がノズル形成面44aに対して相対的に摺動する構成であれば良い。
【0037】
ここで、ワイパーブレード46による単位ヘッド11のノズル形成面44aの払拭(ワイピング)について説明する。ワイパーブレード46の自由端(先端)を、単位ヘッド11のノズル形成面44aよりも上方に位置付けた状態(図4(a))で、ヘッドモジュール3をワイパーブレード46に対して矢印Y方向に沿って移動させる。すると、ワイパーブレード46の自由端側が矢印Y方向とは反対側に向かって屈曲したままで摺接し(図4(b))、ノズル形成面44aに付着したインクAを払拭して、ワイパーブレード46側に付着させる(図4(c))。そして、ワイパーブレード46がノズル形成面44aの縁を越えて、屈曲した状態から復帰しようとすると、ワイパーブレード46に付着したインクAが付着抑制板29に向かって飛翔して着弾する(図4(d))。なお、この付着抑制板29が設けられていない場合には、ワイパーブレード46から飛翔したインクA´(図4(d)中に破線で示す)が、付着抑制板29よりも矢印Y方向の下流側に隣接する単位ヘッド11´に付着することとなる。
【0038】
図5は、本発明に係るキャッピング機構47を説明する断面図である。キャッピング機構47は、各単位ヘッド11のノズル形成面44aをキャップするヘッドキャップ48(本発明の第一キャップ部の一種)と、付着抑制板29をキャップする付着抑制板キャップ49(本発明の第二キャップ部の一種)と、を備えている。
【0039】
ヘッドキャップ48は、エラストマー等の弾性部材からなるトレイ状に形成され、底面48aが各単位ヘッド11のノズル形成面44aに対向する状態で台板58上に配されている。このヘッドキャップ48は、台板58を対応する単位ヘッド11のノズル形成面44aに向けて進出(上昇)させることで、ノズル形成面44aに対して底面48aを圧接させて封止する。これにより、ヘッドキャップ48は、ノズル開口28(図2等参照)からのインク溶媒の蒸発を防止して、インクの増粘を抑制することができる。
【0040】
付着抑制板キャップ49は、インクなどの液体を吸着させる吸収材51を内面に配した椀状に形成されており、台板58の付着抑制板29に対向する位置に配されている。このヘッドキャップ48は、台板58を付着抑制板29に向けて進出(上昇)させることで、吸収材51を付着抑制板29に当接させる。これにより、付着抑制板29に付着したインクを吸収材51に吸着させて、付着抑制板29に着弾したインクAを回収することができる。
【0041】
なお、本発明の付着抑制板29は、吸収材から構成することもできる。この構成によれば、付着抑制板29に着弾したインクAを吸収材によって吸着させて、付着抑制板29に付着したインクAが記録紙4に向かって落下することを防止することができる。
【0042】
本実施形態によれば、単位ヘッド11のノズル形成面44aを、弾性を有するワイパーブレード46に対して摺接させるように単位ヘッド11とワイパーブレード46とを矢印Y方向に沿って相対移動させて、ノズル形成面を払拭するように構成し、ベース部27における単位ヘッド11の矢印Y方向の下流側に付着抑制板29を設けたので、ノズル形成面44aを払拭して屈曲したワイパーブレード46に付着したインクAが、ワイパーブレード46の弾性状態からの復帰によって飛翔したとしても、飛翔したインクAの進路を付着抑制板29によって遮ることで付着抑制板29に着弾させることができる。このため、インクAが単位ヘッド11の周囲に散乱することを防止できる。この結果、単位ヘッド11の側面に液滴が付着することによる単位噴射ヘッド11の不具合や、ノズル基板44のノズル開口28にインクAが付着することによる印字不良の発生を抑制することができる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図6は、第2実施形態におけるラインヘッド3の構成を説明する断面図である。この第2実施形態においては、ベース部27にスリット53が開設されていると共に、昇降機構54を有している。昇降機構54は、筐体2に設けられた軸56を中心に回動する回動板57a、57bと、ヘッドキャップ48が設けられた台板58と、付着抑制板29が設けられた天板59と、を備えている。スリット53は、ベース部27を貫通しており、付着抑制板29の矢印Y方向の幅よりも僅かに広い寸法に設定されており、付着抑制板29を上下に抜き差しするように構成されている。回動板57a、57bは、その両端から立設したピン60a、60bが設けられている。そして、台板58及び天板59は、回動板57a、57bによって支持された状態で互いに平行に配置されており、その両端にピン60a、60bを挿入させて矢印Y方向に沿って摺動させる程度の寸法に横長に形成されたガイド穴61a、61bが設けられている。
【0044】
そして、ワイピング状態(使用状態)には、図6(a)に示すように、昇降機構54が下降しており、スリット53に付着防止板29を挿入させて、付着防止板29の天板59から離れた(台板58側の)先端が単位ヘッド11のノズル形成面44aよりも下方に位置している(突き出している)。このため、ワイパーブレード46から飛翔するインクAの飛翔軌跡を遮ることができ、隣接する単位ヘッド11に液滴が着弾することを防止できる。
【0045】
一方、ワイピング時以外の状態(不使用状態)には、図6(b)に示すように、台板58のガイド穴61a、61bに挿入されたピン60a、60b同士を互いに近づける方向に摺動させるとともに、天板59のガイド穴61a、61bに挿入されたピン60a、60b同士を互いに近づける方向に摺動すると、回動板57a、57bが軸56を中心に回動して、天板59と台板58とが互いに離れる方向に離間する。そして、さらに回動板57a、57bを回動させると、昇降機構54が上昇することで、付着抑制板29がスリット53から抜き取られて、ベース部27に付着抑制板29を収納する。このため、付着抑制板29がワイピング時以外はベース部27に収納されて、付着抑制板29にインクAが着弾していても、記録紙4に落下することをより確実に防止できる。
【0046】
また、図7は、第3実施形態におけるラインヘッド3の構成を示す平面図である。この第3実施形態においては、単位ヘッド11毎に配置した付着抑制板29同士を互いに連結する連結板63を備えていることに特徴を有している。即ち、連結板63は、各単位ヘッド11の矢印X方向の両側面に配されている。このため、ベース部27の剛性を高めることができる。また、付着抑制板29及び連結板63によって単位ヘッド11の側面を囲むことで、単位ヘッド11を覆う面積が広くなるので、ワイパーブレード46から飛翔したインクAが、単位ヘッド11に着弾することをより確実に防止できる。
【0047】
また、本発明は、複数の液体噴射ヘッドから成るヘッドモジュールを備えたものであれば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の他の液体噴射ヘッド、及び、これを備える液体噴射装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】プリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】ラインヘッドの構成を示す平面図である。
【図3】単位ヘッドの要部断面図である。
【図4】単位ヘッドのノズル形成面に対するワイピングを説明する説明図である。
【図5】キャッピング機構を説明する断面図である。
【図6】第2実施形態におけるラインヘッドの構成を説明する断面図である。
【図7】第3実施形態におけるラインヘッドの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…プリンタ、3…ラインヘッド,11…単位ヘッド,27…ベース部,28…ノズル開口,29…付着抑制板,44a…ノズル形成面,46…ワイパーブレード,48…ヘッドキャップ,49…付着抑制板キャップ,63…連結板,A…インク,Y…払拭方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドをキャリッジに保持した液体噴射ヘッドユニットであって、
前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を、払拭部材に対して摺接させるように前記液体噴射ヘッドと当該払拭部材とを相対移動させて、当該ノズル形成面を払拭するように構成し、
前記キャリッジにおける前記液体噴射ヘッドの払拭方向の下流側に付着抑制板を設けたことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
前記付着抑制板を吸収材から構成したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
前記付着抑制板が、払拭時以外は前記キャリッジに収納されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
収納された前記付着抑制板が使用される際には、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面よりも下方まで突き出ることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
前記液体噴射ヘッドをキャップする第一キャップ部と、前記付着抑制板をキャップする第二キャップ部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
ノズル開口から液滴を吐出する複数の液体噴射ヘッドをキャリッジに保持した液体噴射ヘッドモジュールであって、
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニットを備え、
前記液体噴射ヘッド毎に配置した前記付着抑制板同士を連結する連結板を備えたことを特徴とする液体噴射ヘッドモジュール。
【請求項7】
前記請求項6に記載の液体噴射ヘッドモジュールを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−36346(P2010−36346A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198091(P2008−198091)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】