説明

液体噴射ヘッド及びその製造方法

【課題】性能の低下を抑制できる液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッドは、ノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、流路形成基板上に配置された振動板と、圧力発生室に対応するように振動板上に配置された圧電素子と、圧電素子から引き出されたリード電極と、振動板と接着剤を介して接合され、振動板との間で圧電素子が配置される封止空間を形成する接合基板と、を備える。リード電極は、封止空間内において圧電素子に接続される第1部分と、接合基板と振動板との間に配置され、第1部分と結ばれる第2部分と、接合基板と振動板との間に配置され、第2部分と結ばれる第3部分と、封止空間外に配置され、第3部分と結ばれる第4部分と、を有する。第2部分の幅は、第1部分の幅及び第3部分の幅よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、液体が噴射されるノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、流路形成基板上に配置された振動板と、圧力発生室に対応するように振動板上に配置された圧電素子と、圧電素子と接続され、圧電素子から引き出されたリード電極と、振動板の少なくとも一部と接着剤を介して接合され、振動板との間で圧電素子が配置される封止空間を形成する接合基板とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009―184247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路形成基板上の振動板と接合基板とを接着剤を介して接合する場合、その接着剤の一部がリード電極に沿って流れる可能性がある。例えば、その接着剤が圧力発生室を形成する振動板の一部の領域に付着すると、液体噴射ヘッドの性能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、性能の低下を抑制できる液体噴射ヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、液体が噴射されるノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、前記流路形成基板上に配置された振動板と、前記圧力発生室に対応するように前記振動板上に配置された圧電素子と、前記圧電素子と接続され、前記圧電素子から引き出されたリード電極と、前記振動板の少なくとも一部と接着剤を介して接合され、前記振動板との間で前記圧電素子が配置される封止空間を形成する接合基板と、を備え、前記リード電極は、前記リード電極の一端部を含み、前記封止空間内において前記圧電素子に接続される第1部分と、少なくとも一部が前記接合基板と前記振動板との間に配置され、前記第1部分と結ばれる第2部分と、少なくとも一部が前記接合基板と前記振動板との間に配置され、前記第2部分と結ばれる第3部分と、前記リード電極の他端部を含み、前記封止空間外に配置され、前記第3部分と結ばれる第4部分と、を有し、前記第2部分の幅は、前記第1部分の幅及び前記第3部分の幅よりも小さい液体噴射ヘッドが提供される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、リード電極が、リード電極の一端部を含み、封止空間内において圧電素子に接続される第1部分と、少なくとも一部が接合基板と振動板との間に配置され、第1部分と結ばれる第2部分と、少なくとも一部が接合基板と振動板との間に配置され、第2部分と結ばれる第3部分と、リード電極の他端部を含み、封止空間外に配置され、第3部分と結ばれる第4部分とを有し、第2部分の幅が、第1部分の幅及び第3部分の幅よりも小さいので、流路形成基板上の振動板と接合基板とを接着剤を介して接合する場合、その接着剤の一部がリード電極に沿って流れても、隣接するリード電極の第2部分どうしの間にためることができる。したがって、例えば、その接着剤が圧力発生室を形成する振動板の一部の領域に付着することが抑制され、液体噴射ヘッドの性能の低下が抑制される。
【0008】
前記第3部分の幅は、前記第1部分の幅よりも大きく、前記第4部分の幅とほぼ等しい構成でもよい。これにより、例えば毛管現象により、接着剤の一部は接合基板と振動板との間において拡がり、その接着剤の流れを調整できる。
【0009】
前記封止空間外に配置される駆動回路と、一端が前記駆動回路と接続され、他端が前記第4部分と接続される接続配線と、前記第4部分と前記接続配線とを固定するモールド剤と、を備える構成でもよい。これにより、第4部分と接続配線とは良好に接続される。また、第3部分の幅は、第1部分の幅よりも大きく、第4部分の幅とほぼ等しい場合、モールド剤が封止空間内に浸入することが抑制される。
【0010】
本発明の第2の態様に従えば、液体が噴射されるノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、前記流路形成基板上に配置された振動板と、前記圧力発生室に対応するように前記振動板上に配置された圧電素子と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、一端部を含む第1部分、前記第1部分と結ばれる第2部分、前記第2部分と結ばれる第3部分、及び他端部を含み、前記第3部分と結ばれる第4部分を有するリード電極の前記第1部分と前記圧電素子とを接続する工程と、前記振動板との間で前記圧電素子及び前記第1部分が配置される封止空間が形成されるように、前記振動板の少なくとも一部と接着剤を介して接合基板を接合する工程と、を有し、前記接合する工程では、前記第2部分の少なくとも一部及び前記第3部分の少なくとも一部が前記接合基板と前記振動板との間に配置され、前記第4部分が前記封止空間外に配置されるように、前記振動板と前記接合基板とが接合され、前記第2部分の幅は、前記第1部分の幅及び前記第3部分の幅よりも小さい液体噴射ヘッドの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、リード電極が、リード電極の一端部を含み、封止空間内において圧電素子に接続される第1部分と、少なくとも一部が接合基板と振動板との間に配置され、第1部分と結ばれる第2部分と、少なくとも一部が接合基板と振動板との間に配置され、第2部分と結ばれる第3部分と、リード電極の他端部を含み、封止空間外に配置され、第3部分と結ばれる第4部分とを有し、第2部分の幅が、第1部分の幅及び第3部分の幅よりも小さいので、流路形成基板上の振動板と接合基板とを接着剤を介して接合する場合、その接着剤の一部がリード電極に沿って流れても、隣接するリード電極の第2部分どうしの間にためることができる。したがって、例えば、その接着剤が圧力発生室を形成する振動板の一部の領域に付着することが抑制され、液体噴射ヘッドの性能の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例を示す平面図である。
【図3】図3は、図2のA−A’断面図である。
【図4】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例を示す模式図である。
【図5】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係る液体噴射装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例を示す分解斜視図である。図2は、図1の平面図である。図3は、図2のA−A’断面図である。液体噴射ヘッドIJは、例えばインクジェット式記録ヘッドとして使用される。
【0014】
図1、図2、及び図3に示すように、液体噴射ヘッドIJは、液体(インク、液滴)が噴射されるノズル開口21に連通する複数の圧力発生室12が並設された流路形成基板10と、流路形成基板10上に配置された振動板34と、圧力発生室12に対応するように振動板上に配置された圧電素子300と、圧電素子300と接続され、圧電素子300から引き出されたリード電極90と、振動板34の少なくとも一部と接着剤39を介して接合され、振動板34との間で圧電素子300が配置される封止空間SPを形成する接合基板30とを備えている。
【0015】
流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0016】
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。圧力発生室12は、液体(液滴)が噴射されるノズル開口21に連通している。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
【0017】
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。
【0018】
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
【0019】
また、流路形成基板10の圧力発生室12が開口する面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10−6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
【0020】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側の面には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70、及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。本実施形態では、下電極膜60を複数の圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を各圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部320が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300を所定の基板上(流路形成基板10上)に設け、当該圧電素子300を駆動させた装置をアクチュエータ装置と称する。
【0021】
なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55、及び下電極膜60が振動板34として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0022】
なお、圧電体層70は、下電極膜60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜である。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜2μm前後の厚さで形成した。
【0023】
さらに、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
【0024】
このような圧電素子300が配置された流路形成基板10上の振動板34には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する接合基板30が接着剤39を介して接合されている。本実施形態においては、接合基板30は、リード電極90の一部と接触するように、振動板34(絶縁体膜55)と接合される。
【0025】
このリザーバ部31は、本実施形態では、接合基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
【0026】
また、接合基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の封止空間SPを有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の封止空間SPを有していればよい。なお、封止空間SPは、密封されているが、密封されていなくてもよい。
【0027】
また、接合基板30には、接合基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。すなわち、リード電極90の一部は、封止空間SP外に配置される。
【0028】
また、接合基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。具体的には、接合基板30上には、図3に示す接続配線121と接続される配線122が形成されており、この配線122上に駆動回路120が実装されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、配線122とリード電極90とは、貫通孔33を挿通させたボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。リード電極90と接続配線121とは、例えば導電性接着剤からなるモールド剤35によって電気的に接続される。
【0029】
このような接合基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料、すなわち、表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を用いて形成した。なお、接合基板30は、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることで、熱による変形を防止することができる。また、接合基板30として、結晶基板を用いることで、リザーバ部31及び圧電素子保持部32及び貫通孔33を異方性エッチングにより高精度に形成することができる。
【0030】
ここで、接合基板30にリザーバ部31、圧電素子保持部32及び貫通孔33を形成する異方性エッチングは、結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。本実施形態では、接合基板30が面方位(110)のシリコン単結晶基板からなるため、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と70.5度の角度をなし且つ上記(110)面に垂直な第2の(111)面とが出現する。かかる異方性エッチングにより二つの平行する面である第1の(111)面と二つの平行する面である第2の(111)面とで形成される平行四辺形状を基本として精密加工を行うことができ、リザーバ部31、圧電素子保持部32及び貫通孔33を高精度に形成することができる。
【0031】
また、このような接合基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。なお、コンプライアンス基板40は、接着剤を用いて接合基板30に接合することも、封止膜41を加熱することで、接合基板30と固定板42とを封止膜41を介して接合することもできる。
【0032】
図4は、本実施形態に係る液体噴射ヘッドIJを模式的に示す側断面図、図5は、平面図である。
【0033】
図4及び図5に示すように、液体噴射ヘッドIJは、圧力発生室12に対応するように振動板34上に配置された圧電素子300と、圧電素子300と接続され、圧電素子300から引き出されたリード電極90と、振動板34の少なくとも一部と接着剤39を介して接合され、振動板34との間で圧電素子300が配置される封止空間SPを形成する接合基板30とを備えている。
【0034】
リード電極90は、第1部分90Aと、第1部分90Aと結ばれる第2部分90Bと、第2部分90Bと結ばれる第3部分90Cと、第3部分90Cと結ばれる第4部分90Dとを有する。
【0035】
第1部分90Aは、リード電極90の一端部を含み、封止空間SP内において圧電素子300に接続される。第2部分90Bは、少なくとも一部が接合基板30と振動板34との間に配置される。第3部分90Cは、少なくとも一部が接合基板30と振動板34との間に配置される。第4部分90Dは、リード電極90の他端部を含み、封止空間SP外に配置される。本実施形態において、第4部分90Dは、貫通孔33内に露出するように配置される。
【0036】
本実施形態において、第2部分90Bの幅W2は、第1部分90Aの幅W1よりも小さい。また、第2部分90Bの幅W2は、第3部分90Cの幅W3よりも小さい。すなわち、第2部分90Bにおいて、リード電極90の凹部90Uが形成されている。
【0037】
また、本実施形態においては、第3部分90Cの幅W3は、第1部分90Aの幅W1よりも大きい。また、第3部分90Cの幅W3は、第4部分90Dの幅W4とほぼ等しい。
【0038】
また、液体噴射ヘッドIJは、封止空間SP外に配置される駆動回路120と、一端が駆動回路120と接続され、他端が第4部分90Dと接続される接続配線121とを備える。第4部分90Dと接続配線121とは、例えば導電性接着剤からなるモールド剤35によって固定され、電気的に接続される。
【0039】
次に、液体噴射ヘッドIJの製造方法の一例について説明する。流路形成基板10上の振動板34上に圧電素子300が配置される。次いで、リード電極90の第1部分90Aと圧電素子300とが接続される。次いで、振動板34との間で圧電素子300及び第1部分90Aが配置される封止空間SPが形成されるように、振動板34の少なくとも一部と接着剤39を介して接合基板30が接合される。接合する工程では、第2部分90Bの少なくとも一部及び第3部分90Cの少なくとも一部が接合基板30と振動板34との間に配置され、第4部分90Dが封止空間SP外に配置されるように、振動板34と接合基板30とが接合される。
【0040】
本実施形態においては、接合基板30の下面の内端部E1と外端部E2との間に、第2部分90B及び第3部分90Cの少なくとも一部が配置される。本実施形態においては、内端部E1と振動板34との間に第2部分90Bが配置され、外端部E2と振動板34との間に第3部分90Cが配置される。
【0041】
また、駆動回路120が接合基板30上に配置され、駆動回路120と第4部分90Dとが接続配線121を介して電気的に接続される。第4部分90Dと接続配線121とは、モールド剤35によって固定される。
【0042】
本実施形態によれば、振動板34と接合基板30とを接着剤39を介して接合する工程において、その接着剤39の一部がリード電極90に沿って流れる可能性がある。本実施形態によれば、第2部分90Bの幅W2が、第1部分90Aの幅W1及び第3部分90Cの幅W3よりも小さく、第2部分90Bにおいて凹部90Uが形成されているため、図5に示すように、リード電極90に沿って流れた接着剤39は、隣接するリード電極90の第2部分90Bどうしの間にためられる。したがって、接着剤39が封止空間SP内に流入したり、圧力発生室12を形成する振動板34の一部の領域に付着したりすることが抑制される。これにより、液体噴射ヘッドIJは、液体噴射を安定的に実行でき、性能の低下が抑制される。
【0043】
また、本実施形態においては、第3部分90Cの幅W3は、第1部分90Aの幅W1よりも大きく、第4部分90Dの幅W4とほぼ等しい。これにより、図5に示すように、例えば毛管現象により、接着剤39の一部は、接合基板30の外端部E2と振動板34との間において拡がるように流れる。これにより、例えば接着剤39が第4部分90Dに付着したり、貫通孔33に流れたりすることを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、液体噴射ヘッドIJは、封止空間SP外に配置される駆動回路120と、一端が駆動回路120と接続され、他端が第4部分90Dと接続される接続配線121と、第4部分90Dと接続配線121とを固定するモールド剤35とを備えるので、第4部分90Dと接続配線121とは良好に接続される。また、第3部分90Cの幅W3は、第4部分90Dの幅W4とほぼ等しく、毛管現象により、モールド剤35が封止空間SP内に浸入することが抑制される。したがって、液体噴射ヘッドIJの性能の低下が抑制される。
【0045】
このような本実施形態の液体噴射ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)IJでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21から液体(インク)が吐出する。
【0046】
また、上述した実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電素子300を有するアクチュエータ装置を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のアクチュエータ装置や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型のアクチュエータ装置などを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエータなどを使用することができる。
【0047】
なお、このようなインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図6は、そのインクジェット式記録装置(液体噴射装置)の一例を示す概略図である。図6に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0048】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0049】
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0050】
10…流路形成基板、12…圧力発生室、21…ノズル開口、30…接合基板、34…振動板、35…モールド剤、39…接着剤、90…リード電極、90A…第1部分、90B…第2部分、90C…第3部分、90D…第4部分、120…駆動回路、121…接続配線、300…圧電素子、IJ…液体噴射ヘッド、SP…封止空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が噴射されるノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、
前記流路形成基板上に配置された振動板と、
前記圧力発生室に対応するように前記振動板上に配置された圧電素子と、
前記圧電素子と接続され、前記圧電素子から引き出されたリード電極と、
前記振動板の少なくとも一部と接着剤を介して接合され、前記振動板との間で前記圧電素子が配置される封止空間を形成する接合基板と、を備え、
前記リード電極は、前記リード電極の一端部を含み、前記封止空間内において前記圧電素子に接続される第1部分と、少なくとも一部が前記接合基板と前記振動板との間に配置され、前記第1部分と結ばれる第2部分と、少なくとも一部が前記接合基板と前記振動板との間に配置され、前記第2部分と結ばれる第3部分と、前記リード電極の他端部を含み、前記封止空間外に配置され、前記第3部分と結ばれる第4部分と、を有し、
前記第2部分の幅は、前記第1部分の幅及び前記第3部分の幅よりも小さい液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第3部分の幅は、前記第1部分の幅よりも大きく、前記第4部分の幅とほぼ等しい請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記封止空間外に配置される駆動回路と、
一端が前記駆動回路と接続され、他端が前記第4部分と接続される接続配線と、
前記第4部分と前記接続配線とを固定するモールド剤と、を備える請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
液体が噴射されるノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、前記流路形成基板上に配置された振動板と、前記圧力発生室に対応するように前記振動板上に配置された圧電素子と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、
一端部を含む第1部分、前記第1部分と結ばれる第2部分、前記第2部分と結ばれる第3部分、及び他端部を含み、前記第3部分と結ばれる第4部分を有するリード電極の前記第1部分と前記圧電素子とを接続する工程と、
前記振動板との間で前記圧電素子及び前記第1部分が配置される封止空間が形成されるように、前記振動板の少なくとも一部と接着剤を介して接合基板を接合する工程と、を有し、
前記接合する工程では、前記第2部分の少なくとも一部及び前記第3部分の少なくとも一部が前記接合基板と前記振動板との間に配置され、前記第4部分が前記封止空間外に配置されるように、前記振動板と前記接合基板とが接合され、
前記第2部分の幅は、前記第1部分の幅及び前記第3部分の幅よりも小さい液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−213957(P2012−213957A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81662(P2011−81662)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】