説明

液体噴射ヘッド

【課題】液体の粘度を効率良く調整することで、安定して液体を吐出することが可能な液体噴射ヘッドを提供することにある。
【解決手段】記録ヘッド1は、複数のノズル開口33を列設したノズルプレート31と、ノズル開口に連通する圧力発生室36が形成された金属製の流路形成基板30と、を有する流路ユニット5と、圧力発生室に圧力変動を与えるアクチュエータユニット3と、を備えた記録ヘッドであって、流路形成基板のノズル形成部材側に、その表面から窪んだ凹部47を形成し、該凹室内にヒータ45を収容した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドに係り、特に、ノズル開口に連通する圧力発生室に圧力変動を与えて、圧力発生室内の液体をノズル開口から吐出させる液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口(ノズルの一種)から液滴として吐出(噴射)させる液体噴射ヘッドとしては、例えば、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンタという)などの画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)、液晶ディスプレーなどのカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)などの電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどがある。
【0003】
例えば、上記の記録ヘッドでは、リザーバから圧力発生室を経てノズルに至る一連の液体流路が形成された流路ユニットや圧力発生室の容積を変動可能な圧力発生素子を有するアクチュエータユニットなどを樹脂製のヘッドケースに取り付けて構成されている。上記流路ユニットには、ノズルを開設した金属製のノズルプレート(ノズル形成部材の一種)が接合されている。
【0004】
このような記録ヘッドから吐出する液体には、液体の種類に応じて、例えば、常温でおよそ4mPa・sなどのように、吐出に適した粘度がある。液体の粘度は、温度と相関関係にあるために、温度が低いほど粘度が高くなり、温度が高いほど粘度が低くなる特性がある。そのため、通常使用する液体の粘度に適するように設計された記録ヘッドが、低温(高温)環境に置かれた場合や、粘度の高い(低い)液体を吐出する場合などには、液体を加熱(冷却)するための温度調節部を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この温度調節部は、リング状に形成され、ノズルに至るまでの一連の液体流路の一部に近接させて配置されており、液体流路内の液体を直接加熱(冷却)している。そのため、液体流路の内であっても温度調節部に近接していない部分は、液体を所望温度まで効率良く加熱(冷却)することができなかった。即ち、このような構成の記録ヘッドは、液体流路内の液体を所望温度に調整するまでに長時間を必要とし、実用に供することができなかった。そして、効率良く加熱するために、液体流路と温度調節部とを近接させて、尚且つ長尺に亘って配置する必要があった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−270090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液体流路と温度調節部との距離が離れてしまうと、熱伝導率が低く、また伝わる方向も制御できないので、液体流路内の液体を効率良く加熱(冷却)することができなかった。また、温度調節部を液体流路に近接させて、尚且つ長尺に亘って配置しようとすると、配置が限定されてしまうために、記録ヘッドの大型化の虞や、記録ヘッドの形状の自由度を損なう虞があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体の粘度を効率良く調整することで、安定して液体を吐出することが可能な液体噴射ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射ヘッドは、上記目的を達成するために提案されたものであり、複数のノズル開口を列設したノズル形成部材と、前記ノズル開口に連通する圧力発生室が形成された金属製の流路形成基板と、を有する流路ユニットと、
前記圧力発生室に圧力変動を与えるアクチュエータユニットと、
を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記流路形成基板の前記ノズル形成部材側に、その表面から窪んだ凹部を形成し、該凹部内に加熱手段を収容したことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、流路形成基板のノズル形成部材側に、その表面から窪んだ凹部を形成し、該凹部内に加熱手段を収容したので、加熱手段の熱を流路形成基板の圧力発生室及びノズル形成部材のノズル開口に伝導させて、液体の粘性や流量に拘らずに、液体を効率良く温めて供給することができる。これにより、液体の粘度を吐出に適した粘度に調整して、ノズル開口から安定して吐出させることが可能となる。
【0011】
また、上記構成において、前記加熱手段を、前記ノズル形成部材に接触させることが望ましい。
【0012】
上記構成によれば、加熱手段を、ノズル形成部材に接触させるので、加熱手段の熱をノズル形成部材に直接伝導させて、ノズル開口を効率良く温められる。この結果、吐出する直前の液体の粘度を効率良く調節できる。
【0013】
上記構成において、前記凹部を、前記流路形成基板の厚み方向に隔壁を介して前記圧力発生室と重畳する状態で形成し、前記加熱手段を、前記圧力発生室と前記ノズル形成部材との間に配することが望ましい。
【0014】
上記構成によれば、凹部を、流路形成基板の厚み方向に隔壁を介して圧力発生室と重畳する状態で形成し、加熱手段を、圧力発生室とノズル形成部材との間に配したので、圧力発生室及びノズル開口を同時に加熱することができる。このため、液体の温度を効率良く調整することができる。
【0015】
上記構成において、前記凹部内に充填剤を充満させて前記加熱手段を埋設することが望ましい。
【0016】
上記構成によれば、凹部内に充填剤を充満させて加熱手段を埋設したので、凹部内が加熱手段と充填剤とによって満たされる。そのため、圧力発生室に生じた圧力変動が隔壁の撓みによって逃げてしまうことを抑制することができ、液体噴射ヘッドの吐出不良を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、本実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」という)を例に挙げて説明する。
【0018】
図1は液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドと略す)の外観を示す分解斜視図、図2は、流路ユニットとヘッドケース(以下、ケースと略す)の一部の内部構造を示す要部断面図である。記録ヘッド1は、圧電素子群2を有するアクチュエータユニット3と、このアクチュエータユニット3を収納するケース4と、ケース4の一方の面に接合される流路ユニット5と、流路ユニット5とは反対側のケース4の他方の面に配置される接続基板6と、接続基板6の上方に取り付けられる供給針ユニット7と、流路ユニット5に収容されるヒータ45(本発明における加熱手段の一種)等から概略構成されている。
【0019】
上記のアクチュエータユニット3は、櫛歯状の圧電素子群2と、この圧電素子群2の基端部分が接合される固定板8と、圧電素子群2に駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル9とにより構成される。
【0020】
圧電素子群2は、列状に形成された複数の圧電素子10を備える。これらの各圧電素子10は、列の両端に位置する一対のダミー素子と、これらのダミー素子の間に配置された複数の駆動素子とから構成されている。そして、各駆動素子は、例えば、50μm〜100μm程度の極めて細い幅の櫛歯状に切り分けられ、180本設けられる。また、ダミー素子は、駆動素子よりも十分広い幅であり、駆動素子を衝撃等から保護する保護機能と、アクチュエータユニット3を所定位置に位置付けるためのガイド機能とを有する。
【0021】
圧電素子群2は、固定端部を固定板8上に接合することにより、自由端部を固定板8の先端面よりも外側に突出させている。即ち、圧電素子群2は、所謂片持ち梁の状態で固定板8上に支持されている。そして、圧電素子群2の自由端部は、圧電体と内部電極とを交互に積層して構成されており、対向する電極間に電位差を与えることで素子長手方向に伸縮するようになっている。
【0022】
フレキシブルケーブル9は、固定板8とは反対側となる固定端部の側面で圧電素子群2と電気的に接続されている。そして、このフレキシブルケーブル9の表面には、各圧電素子10の駆動等を制御するための制御用IC(図示せず)が実装されている。また、圧電素子群2を支持する固定板8は、圧電素子群2からの反力を受け止め得る剛性を備えた金属製の板状部材であり、本実施形態においては、ステンレス鋼を用いている。
【0023】
接続基板6は、記録ヘッド1に供給する各種信号用の電気配線が形成されると共に、信号ケーブルを接続可能なコネクタ11が取り付けられた配線基板である。そして、この接続基板6は、フレキシブルケーブル9の電気配線が半田付け等によって接続される。また、コネクタ11には、制御装置(図示せず)からの信号ケーブルの先端が挿入される。
【0024】
上記のケース4は、例えば、形状の加工が容易なエポキシ系樹脂等の合成樹脂で成型されたブロック状部材である。そして、このケース4の内部には、アクチュエータユニット3が収納される収納空部12と、インク(本発明における液体の一種)の流路の一部を構成するインク供給路13(液体供給路)とが形成されている。
【0025】
ケース4の流路ユニット5との接合面側には、共通インク室(共通液体室)16となる空部が形成されている。
インク供給路13は、ケース4の高さ方向を貫通するように形成され、一端は、共通インク室16に連通するようになっている。また、インク供給路13における上面側の端部は、ケース4の上面から突設した接続口13´内に形成されている。なお、高さ方向とは、後述するノズルプレート31を基準(最下部)とした、ヘッド構成部材の積層方向を示す。
【0026】
上記の供給針ユニット7は、インクカートリッジ(図示せず)が接続される部分であり、針ホルダ21と、インク供給針22と、フィルタ23とから概略構成される。
【0027】
インク供給針22は、インクカートリッジ内に挿入される部分であり、インクカートリッジ内に貯留されたインクを導入する。このインク供給針22の先端部は円錐状に尖っており、インクカートリッジ内に挿入し易くなっている。また、この先端部には、インク供給針22の内外を連通するインク導入孔が穿設されている。
【0028】
針ホルダ21は、インク供給針22を取り付けるための部材であり、その表面にはインク供給針22の根本部分を止着するための台座24を形成している。この台座24の底面には、針ホルダ21の板厚方向を貫通するインク排出口25を形成している。また、この針ホルダ21は、フランジ部を側方に延出している。
【0029】
フィルタ23は、埃や成型時のバリ等のインク内の異物の通過を阻止する部材であり、例えば、目の細かな金属網によって構成され、台座24内に形成されたフィルタ保持溝に接着されている。
【0030】
そして、この供給針ユニット7は、ケース4の上面に配設される。この配設状態において、供給針ユニット7のインク排出口25と、ケース4のインク供給路13とは、パッキン26を介して液密状態で連通する。
【0031】
次に、上記の流路ユニット5について説明する。この流路ユニット5は、流路形成基板30の一方の面にノズルプレート31(本発明におけるノズル形成部材の一種)を、他方の面に振動板32をそれぞれ配置して積層し、接着して一体化することで構成される。
【0032】
ノズルプレート31は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口33を列状に開設したステンレス鋼製のプレートである。本実施形態では、例えば、180dpiのピッチで180個のノズル開口33により1つのノズル列を構成し、インクの種類に対応してノズル列を横並び(ヘッド主走査方向)に開設している。
【0033】
流路形成基板30は、圧力発生室36となる空部を隔壁で区画した状態で各ノズル開口33に対応させて複数形成した板状の部材である。上記の圧力発生室36は、ノズル開口33の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、流路形成基板30には、共通インク室16における後述するコンプライアンス部42の作動空間となる逃げ凹部37が形成されている。この流路形成基板30は、ステンレス鋼やニッケル等の金属等の基板が好適に用いられるが、本実施形態では、ステンレスの基板をプレス加工することで作製している。
【0034】
振動板32は、図2に示すように、支持板38と弾性体膜39とからなる2層構造の板材である。本実施形態では、支持板38としてステンレス板を用い、弾性体膜39としてステンレスフィルム(金属箔の一種)を用いている。なお、弾性体膜39としては、上記のステンレスフィルム以外のもの、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂フィルムを用いることも可能である。即ち、この場合、振動板32は金属板と樹脂フィルムの2層構造となる。
【0035】
振動板32には、ダイヤフラム部40と、インク供給口41と、コンプライアンス部42とが形成されている。図2に示すように、ダイヤフラム部40は、流路形成基板30の圧力発生室36の開口面を封止する機能を有し、各圧力発生室36に対応させて圧電素子列設方向に列設されている。このダイヤフラム部40は、圧力発生室36に対応する部分を環状に薄くして弾性体膜39のみとすることで作製され、この環内には島部43を形成し、この島部43に圧電素子10の先端面が接合されている。
【0036】
インク供給口41は、圧力発生室36と共通インク室16とを連通するための孔であり、振動板32の板厚方向を貫通している。このインク供給口41も、ダイヤフラム部40と同様に、各圧力発生室36毎に形成されている。
【0037】
コンプライアンス部42は、共通インク室16の一部を区画する部分である。即ち、コンプライアンス部42は、共通インク室16となる空部の一方の開口面を封止している。このコンプライアンス部42もまた、弾性体膜39によって構成される。
【0038】
この振動板32では、圧電素子10を駆動して素子長手方向に伸長させると、島部43が圧力発生室36側に押圧され、島部43周辺の弾性体膜39が変形して圧力発生室36が収縮する。一方、圧電素子10を素子長手方向に収縮させると、弾性体膜39の弾性により圧力発生室36が膨張する。
そして圧力発生室36の膨張や収縮を制御すると、圧力発生室36内のインク圧力が変動するので、ノズル開口33からインク滴(液滴)が吐出される。
【0039】
次に、流路形成基板30に設ける加熱手段であるヒータ45について説明する。本実施形態に示すヒータ45は、平板状に形成され、セラミックや電熱線などの発熱体を金属ケースで封止した、所謂カートリッジヒータであり、リード線46に電流を流すことによって発熱する。そして、このヒータ45は、流路形成基板30のノズルプレート31との接合面に、その表面から窪んだ状態で形成された凹部47に収容される。
【0040】
凹部47は、圧力発生室36の列設方向に沿って溝状に設けられており、流路形成基板30の厚み方向に隔壁48を介して圧力発生室36と重畳する状態で設けられている。この隔壁48は、圧力発生室36と凹部47とを隔てる薄い板状に形成されている。そのため、凹部47は、図2に示すように、各圧力発生室36とノズルプレート31との間に位置付けられている。なお、凹部47は、ヒータ45よりも僅かに大きな寸法に形成されているので、ヒータ45全体を確実に収容することができる。
【0041】
このように形成された凹部47には、流路形成基板30とノズルプレー31とを接着する工程の前に、その内部に充填剤48を充填した後にヒータ45を押し込んで、凹部47内にヒータ45を埋設する。すると、凹部47内が、充填剤48及びヒータ45によって充満すると共に、ヒータ45のノズルプレート31側の表面(露出面)が、流路形成基板30のノズルプレート31との接合面に沿った状態で位置付けられる。このような状態で、流路形成基板30とノズルプレー31とを接着固定すると、ヒータ45がノズルプレート31と密着した状態で接触する。
なお、凹部47内にヒータ45を装填した後に、充填剤48を隙間を埋めるようにして充填しても良い。このように、凹部47とヒータ45との隙間を充填剤48で埋めると、硬化した後に隔壁48の強度が補強され、撓みを防止できる。
【0042】
そして、凹部47に収容されたヒータ45に電流を流すと、ヒータ45が発熱し、その熱が流路形成基板30から隔壁47を介して圧力発生室35に伝導され、圧力発生室36内のインクが加熱される。また、ヒータ45のノズルプレート31側の表面(露出面)が、ノズルプレート31に接触しているために、ヒータ45の熱がノズルプレート31に直接伝導され、ノズル開口33内のインクが加熱される。
【0043】
この状態で、圧電素子10を駆動させると、凹部47内が充填剤48で満たされているために、圧力発生室36に生じた圧力変動により、隔壁48が撓んで圧力が逃げることを防止できる。そして、圧力発生室36の圧力変動により、ヒータ45によって圧力発生室36及びノズル開口33で温められたインクが、ノズル開口33から吐出され、このインク滴は、温められて粘度が低くなっているので、安定した状態で設計通りの量が吐出される。
【0044】
さらに、本実施形態においては、流路形成基板30に、温度センサとして熱電対51を収容するための凹部52が形成されている。この凹部52は、流路形成基板30の振動板32との接合面に、その表面から窪んだ状態で、隣り合うノズル列に属する圧力発生室36列の間に設けられ、ノズル列方向に沿って延びている。このように形成された凹部52内に、熱電対48が接着剤などによって接着固定される。
なお、流路ユニット5の接着工程の際に、凹部52内にも接着剤を同時に充填して、熱電対51を凹部52内に接着固定すると、熱電対51を別途固定する工程を省くことができる。
【0045】
そして、凹部52内に収容された熱電対51は、流路形成基板30の温度を測定して、圧力発生室36及びノズル開口33内のインクの温度を測定することができる。したがって、この測定値に基づいて、ヒータ45の温度を調整することで、インクの温度を吐出に適した粘度に調整することができる。また、凹部52をその内部に熱電対51を完全に収容する寸法に形成することで、熱電対51が流路ユニット5から突出する虞がなくなり、ノズルプレート31表面をワイピング(払拭)する際にも邪魔にならない。
【0046】
このように、本発明の記録ヘッド1は、ヒータ45の熱を、流路形成基板30に伝導して圧力発生室36内のインクを加熱すると共に、ノズルプレート31に直接伝導して吐出される寸前のノズル開口33内のインクを効率良く加熱することができる。このため、インク供給路13から供給されたインクの粘度に拘らずに、吐出に適した粘度に調整することができ、ノズル開口33からインクを安定して吐出させることができる。この結果、液体噴射ヘッド1の信頼性を高めることができる。
【0047】
ところで、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。上記実施形態では、凹部52を流路形成基板30の振動板32との接合面に形成する例を説明したが、これに限られずに、例えば、図3に示すように、凹部52を流路形成基板30のノズルプレート31との接合面に形成して、熱電対51とノズルプレート31とを接触させても良い。このように構成すると、吐出される直前のノズル開口33内のインクの温度を熱電対51によって間近で測定できるので、その計測結果に基づいてヒータ45の温度を調整することができる。
【0048】
以上は、インクジェット式記録ヘッドに本発明を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】記録ヘッドの要部断面図である。
【図3】他の実施形態における記録ヘッドの要部断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…記録ヘッド、3…アクチュエータユニット、5…流路ユニット、30…流路形成基板、31…ノズルプレート、33…ノズル開口、36…圧力発生室、45…ヒータ、47…凹部、48…隔壁、49…充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル開口を列設したノズル形成部材と、前記ノズル開口に連通する圧力発生室が形成された金属製の流路形成基板と、を有する流路ユニットと、
前記圧力発生室に圧力変動を与えるアクチュエータユニットと、
を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記流路形成基板の前記ノズル形成部材側に、その表面から窪んだ凹部を形成し、該凹部内に加熱手段を収容したことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記加熱手段を、前記ノズル形成部材に接触させたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記凹部を、前記流路形成基板の厚み方向に隔壁を介して前記圧力発生室と重畳する状態で形成し、
前記加熱手段を、前記圧力発生室と前記ノズル形成部材との間に配したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記凹部内に充填剤を充満させて前記加熱手段を埋設したことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−23258(P2010−23258A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184455(P2008−184455)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】