説明

液体噴射型印刷装置

【課題】装置そのものの振動を抑制防止することが可能な液体噴射型印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体1への印刷時、印刷用キャリッジ14の移動に対し、当該印刷用キャリッジ14と同等の速度で且つ逆向きに画像読取り用キャリッジ4を移動させることにより、特に加減速時の作用力が相殺し、装置の振動を抑制防止することが可能となる。また、バランス用移動体である画像読取り用キャリッジ4に、画像読取り光学ヘッド5を搭載したことにより、液体噴射型印刷装置に画像読取り装置の機能を付加して、効率的な複合型印刷装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な液体を複数のノズルから噴射して、その微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした液体噴射型印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射型印刷装置は、一般に安価で且つ高品質なカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このような液体噴射型印刷装置のうち、液体噴射ノズルの形成された液体噴射ヘッドをキャリッジと呼ばれる移動体に載せて印刷媒体の搬送方向と交差する方向に移動させるものを一般に「マルチパス型印刷装置」と呼んでいる。これに対し、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に長尺な液体噴射ヘッドを配置して、所謂1パスでの印刷が可能なものを一般に「ラインヘッド型印刷装置」と呼んでいる。
【0003】
この種の液体噴射型印刷装置では、液体噴射ヘッドに液体を噴射するためのノズルを複数形成し、各ノズルには圧電素子などのノズルアクチュエータを配設し、各ノズルアクチュエータの夫々に駆動信号を印加することで該当するノズルから印刷媒体に向けて液体を噴射する。下記特許文献1では、マルチパス型印刷装置において、液体を噴射する液体噴射ヘッドと共に、画像読取り光学ヘッドを1つのキャリッジに搭載し、画像読取り装置と液体噴射型印刷装置とを兼ね備えた複合型印刷装置を提案している。
【特許文献1】特開平6−336018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したマルチパス型印刷装置では、液体噴射ヘッドを搭載したキャリッジを、例えば印刷媒体の搬送方向と交差する方向に往復移動しながら、当該液体噴射ヘッドから液体を噴射して印刷を行う。このような液体噴射ヘッドの大きさが限られているマルチパス型印刷装置で印刷速度を速める、つまり印刷所要時間を短縮するためには、液体噴射ヘッドを搭載したキャリッジの移動速度を速くしなければならない。キャリッジを往復移動させるためには、一つの移動過程の初期と終期に、夫々、加速と減速の工程があり、キャリッジの到達移動速度を速くすると、加減速時の作用力が大きくなる。このキャリッジ加減速時の作用力が大きくなると、液体噴射ヘッドを搭載するキャリッジは質量体であるから、印刷装置そのものを振動させる力が作用する。その結果、例えばPCラックと呼ばれる台上にマルチパス型の液体噴射型印刷装置を載置し、印刷を行うと、台が振動してしまうという問題が生じる。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、装置そのものの振動を抑制防止することが可能な液体噴射型印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記諸問題を解決するため、本発明の液体噴射型印刷装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し且つ印刷媒体に対して所定の方向に往復移動しながら前記液体噴射ヘッドから液体を噴射して印刷を行う印刷用移動体と、前記印刷用移動体と逆方向に往復移動可能なバランス用移動体と、前記印刷用移動体を往復移動させながら印刷を行うと共に、前記バランス用移動体を、前記印刷用移動体と同じ速度で且つ逆方向に往復移動させる制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
この液体噴射型印刷装置によれば、バランス用移動体を、印刷用移動体と同じ速度で且つ逆方向に往復移動させることで、印刷用移動体を高速移動させるときの加減速時の作用力を、バランス用移動体のそれで相殺することができ、これにより装置そのものの振動を抑制防止することができる。
また、本発明の液体噴射型印刷装置は、前記バランス用移動体に、画像読取り光学ヘッドを搭載したことを特徴とするものである。
この液体噴射型印刷装置によれば、液体噴射型印刷装置に画像読取り装置の機能を付加して、効率的な複合型印刷装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の液体噴射型印刷装置の一実施形態について、図面を用いながら説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置を含めた全体図であり、PCラックと呼ばれる台100には、モニタ101、キーボード102、マウス103、パーソナルコンピュータ本体104が載置され、最上段の棚に本実施形態の液体噴射型印刷装置3が載置されている。なお、図中の符号1は、印刷媒体であり、液体噴射型印刷装置3の奥方から手前側に搬送される。この印刷媒体1の搬送方向を副走査方向とも記す。
【0008】
図2には、図1の液体噴射型印刷装置3の詳細を示す。図2aは、装置の上部カバーを取り外した状態を示し、図2bは、装置の前方部分を除去した状態を示す。装置の前方、即ち図1の手前側に設けられている図2aの符号4は、バランス用移動体としての画像読取り用キャリッジであり、ガイド6に沿って、図の横方向に直線的に往復移動可能に取付けられている。画像読取り用キャリッジ4には、画像読取り用搬送ベルト10が取付けられており、画像読取り用搬送ベルト10は、画像読取り用駆動プーリ8及び画像読取り用従動プーリ9に巻回され、画像読取り用駆動プーリ8には、画像読取り用キャリッジモータ7が接続されている。従って、画像読取り用キャリッジモータ7を正逆方向に回転させると、画像読取り用搬送ベルト10が図の横方向に往復移動し、これに伴って画像読取り用キャリッジ4が、図の横方向、即ち副走査方向と交差する方向に往復移動される。このキャリッジの移動方向を主走査方向とも記す。なお、画像読取り用キャリッジモータ7は、パルス信号毎に所定角度ずつ回転するパルスモータなどで構成されている。
【0009】
また、この画像読取り用キャリッジ4には画像読取り光学ヘッド5が搭載されている。画像読取り光学ヘッド5は、既存のスキャナと同等の機能を有するものであり、例えば印刷媒体1上の画像に光を照射し、その反射の状態から、画像の形状や色を読取るものである。そして、バランス用移動体を、後述する印刷用移動体と同じ速度で且つ逆方向に往復移動させる制御手段として機能する制御装置13が画像読取り用キャリッジモータ7の回転状態を制御することによって、画像読取り用キャリッジ4を加速・一定速度・減速・反転・加速・一定速度・減速・反転して主走査方向に往復移動し、画像読取り用キャリッジ4が一定速度で移動しているときに画像読取り光学ヘッド5が印刷媒体1上の画像を読取る。なお、画像読取り光学ヘッド5で読取られた内容は、フレキシブルフラットケーブル11を介して制御装置13に伝送される。また、印刷媒体1は、図の奥方にある給紙ローラ(図示せず)によって、図の奥方から手前側に、即ち副走査方向に搬送され、手前側の上下一対の排紙ローラ(図示せず)に渡されることにより、そこから装置外に排出される。その際印刷媒体1は、案内位置決めとして機能するプラテンローラ12上で対向する液体噴射ヘッド2のノズルから噴射されるインクによって印刷される。
【0010】
装置の後方、即ち図1の奥側に設けられている図2bの符号14は、印刷用移動体としての印刷用キャリッジであり、ガイド16に沿って、図の横方向に直線的に往復移動可能に取付けられている。印刷用キャリッジ14には、印刷用搬送ベルト20が取付けられており、印刷用搬送ベルト20は、印刷用駆動プーリ18及び印刷用従動プーリ19に巻回され、印刷用駆動プーリ18には、印刷用キャリッジモータ17が接続されている。従って、印刷用キャリッジモータ17を正逆方向に回転させると、印刷用搬送ベルト20が図の横方向、即ち前述した主走査方向に往復移動し、これに伴って印刷用キャリッジ14が、図の横方向、即ち主走査方向に往復移動される。従って、印刷用キャリッジ14と画像読取り用キャリッジ4は、互いに平行に往復移動される。なお、印刷用キャリッジモータ17も、パルス信号毎に所定角度ずつ回転するパルスモータなどで構成されている。
【0011】
印刷用キャリッジ14の上部には、インクなどの液体が収納されたカートリッジ22が搭載され、印刷用キャリッジ14の下部には、カートリッジ22から供給されたインクなどの液体を噴射するための液体噴射ヘッド2が搭載されている。液体噴射ヘッド2の図示下面には、多数のノズル(図示せず)が形成されており、このノズルから液体を噴射して印刷媒体1への印刷を行う。カートリッジ22には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が収納されている。そして、液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成することができる。これを各色毎に、印刷用キャリッジ14を主走査方向に往復移動させながら且つ印刷媒体1を副走査方向に搬送しながら行うことにより、印刷媒体1の印刷面全面に印刷を行うことができる。
【0012】
各ノズルには、圧電素子などのノズルアクチュエータが配設され、このノズルアクチュエータに後述する駆動信号を印加することで、各ノズルから液体が噴射される。液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、ノズルアクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ(圧力室)の壁部をなす振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液滴がノズル開口部から噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液滴の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。また、液体噴射ヘッド2、正確には液体噴射ヘッド2中のノズルアクチュエータは、フレキシブルフラットケーブル21を介して制御装置13に接続されている。
【0013】
印刷媒体1を副走査方向に搬送する給紙ローラ(図示せず)は、給紙ローラモータ23によって駆動される。この給紙ローラモータ23も、パルス信号毎に所定角度ずつ回転するパルスモータなどで構成されている。給紙ローラモータ23の回転状態を制御装置13で制御することによって、印刷媒体1を副走査方向に所定量ずつ搬送することができる。また、制御装置13が前記印刷用キャリッジモータ17の回転状態を制御することによって、印刷用キャリッジ14を加速・一定速度・減速・反転・加速・一定速度・減速・反転して主走査方向に往復移動し、液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータを駆動制御することによって、印刷用キャリッジ14が一定速度で移動しているときに印刷媒体1上に液体を噴射する。即ち、印刷用キャリッジ14の加速・減速・反転などは、印刷媒体1から外れた、所謂非印刷領域で行われる。
【0014】
印刷用キャリッジ14が移動可能な非印刷領域には、液体噴射ヘッド2をクリーニングするクリーニング装置24や、非印刷時に液体噴射ヘッド2を封止してノズル開口の乾燥を防止するキャッピング装置25が設けられている。クリーニング装置24は、液体噴射ヘッド2のノズル面に密着し、そのノズル面を摺動することにより、ノズル近傍に付着したゴミや紙粉あるいは残留インク滴を除去したりするためのものである。また、キャッピング装置25は、前記給紙ローラモータ23でポンプユニット26を駆動し、そのポンプユニット26でキャッピング装置25とノズル面との間の空間を吸引することでノズルから液体を吸引する。さらに、キャッピング装置25は、非印刷状態で、液体噴射ヘッド2のノズルから液体を噴射して、例えば増粘した液体を排出するフラッシングの液体受けとしても機能する。
【0015】
図3には、制御装置13の概略構成を示す。この制御装置13は、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行ったり、画像読取りを行ったりするものである。そして、例えばホストコンピュータ60から入力された印刷データを読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ(図示せず)に接続されている給紙ローラモータ23を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、前記印刷用キャリッジモータ17を駆動制御する印刷用キャリッジモータドライバ64と、液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記画像読取り用キャリッジモータ7を駆動制御する画像読取り用キャリッジモータドライバ66と、各ドライバ63〜66と給紙ローラモータ23、印刷用キャリッジモータ17、液体噴射ヘッド2、画像読取り用キャリッジモータ7を接続するインタフェース67とを備えて構成される。
【0016】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、例えば印刷制御全般に関しては、入力インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れの液体噴射ヘッド2の何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動信号選択データ)を算出し、この印刷データや駆動信号選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63〜66に制御信号を出力する。各ドライバ63〜66からは駆動信号が出力され、給紙ローラモータ23、印刷用キャリッジモータ17、画像読取り用キャリッジモータ7、液体噴射ヘッド2内のノズルアクチュエータなどが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0017】
図4には、本実施形態の印刷装置の制御装置13から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるノズルアクチュエータを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電位を中心に電位が変化する信号とした。この駆動信号COMは、ノズルアクチュエータを駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、各駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液滴がノズルから噴射される。
【0018】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液滴の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液滴を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができる。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液滴を噴射せずに、例えばノズル部のインクの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0019】
各液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置13から制御信号として、印刷データに基づいて噴射するノズルを選択すると共に圧電素子などのノズルアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動信号選択データSI&SP、駆動信号選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動信号選択データSI&SPをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号CLKが入力されている。
【0020】
図5には、印刷制御のためのジェネリックな演算処理のフローチャートを示す。この演算処理では、まずステップS1で、前記駆動信号選択データSI&SPを読込む。
次にステップS2に移行して、印刷用キャリッジ14及び印刷媒体1の位置と選択する駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の関係を記憶する。
次にステップS3に移行して、図示しない個別の演算処理に従って、前述のように印刷用キャリッジ14の移動制御及び印刷制御を行う。移動制御とは、前述のように印刷用キャリッジ14の位置及び速度を制御することであり、印刷制御とは、印刷用キャリッジ14の位置に関連して駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を選択し、液体を印刷媒体1の所定位置に噴射することである。なお、印刷制御は、後のステップS6における印刷媒体1の搬送状態にも関連して行う。
【0021】
次にステップS4に移行して、図示しない個別の演算処理に従って、画像読取り用キャリッジ4を印刷用キャリッジ14と等速で且つ逆向きに移動制御する。具体的には、前記ステップS3における印刷用キャリッジ14の移動制御の速度制御を読込み、同じ速度で且つ画像読取り用キャリッジ4が逆向きに移動するように画像読取り用キャリッジモータ7の回転状態を制御する。
次にステップS5に移行して、図示しない個別の演算処理に従って、印刷媒体1の移動制御を行ってからメインプログラムに復帰する。具体的には、印刷用キャリッジ14が印刷媒体1を主走査方向に移動完了するたびに、給紙ローラモータ23を所定回転ずつ回転し、印刷媒体1を所定量ずつ搬送する。
【0022】
この演算処理によれば、印刷媒体1への印刷時、印刷用キャリッジ14の移動に対し、当該印刷用キャリッジ14と同等の速度で且つ逆向きに画像読取り用キャリッジ4が移動するので、特に加減速時の作用力が相殺し、装置の振動を抑制防止することが可能となる。また、バランス用移動体である画像読取り用キャリッジ4に、画像読取り光学ヘッド5を搭載したことにより、液体噴射型印刷装置に画像読取り装置の機能を付加して、効率的な複合型印刷装置を得ることができる。
なお、前記実施形態では、印刷時、単に、印刷用キャリッジ14と同等の速度で、且つ逆向きに画像読取り用キャリッジ4を移動するようにしたが、例えば画像読取り光学ヘッド5の読込み速度が速くなれば、印刷用キャリッジ14の液体噴射ヘッド2から噴射された液体による印刷状態を、印刷用キャリッジ14と同等の速度で逆向きに移動される画像読取り用キャリッジ4の画像読取り光学ヘッド5で読込み、その読込まれた内容を印刷制御にフィードバックすることも可能である。
【0023】
また、前記実施形態では、本発明の液体噴射型印刷装置をインクなどの液体を噴射するものに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の液体噴射型印刷装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の液体噴射型印刷装置の詳細説明図である。
【図3】図1の液体噴射型印刷装置の制御装置のブロック図である。
【図4】図2の液体噴射ヘッド内のノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。
【図5】図3の制御部で行われる印刷制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は液体噴射型印刷装置、4は画像読取り用キャリッジ(バランス用移動体)、5は画像読取り光学ヘッド、6はガイド、7は画像読取り用キャリッジモータ、8は画像読取り用駆動プーリ、9は画像読取り用従動プーリ、10は画像読取り用搬送ベルト、11はフレキシブルフラットケーブル、12はプラテンローラ、13は制御装置、14は印刷用キャリッジ(印刷用移動体)、16はガイド、17は印刷用キャリッジモータ、18は印刷用駆動プーリ、19は印刷用従動プーリ、20は印刷用搬送ベルト、21はフレキシブルフラットケーブル、22はカートリッジ、23は給紙ローラモータ、24はクリーニング装置、25はキャッピング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し且つ印刷媒体に対して所定の方向に往復移動しながら前記液体噴射ヘッドから液体を噴射して印刷を行う印刷用移動体と、前記印刷用移動体と逆方向に往復移動可能なバランス用移動体と、前記印刷用移動体を往復移動させながら印刷を行うと共に、前記バランス用移動体を、前記印刷用移動体と同じ速度で且つ逆方向に往復移動させる制御手段とを備えたことを特徴とする液体噴射型印刷装置。
【請求項2】
前記バランス用移動体に、画像読取り光学ヘッドを搭載したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射型印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137362(P2010−137362A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312991(P2008−312991)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】