説明

液体噴射装置、及び、液体噴射方法

【課題】ノズルを迅速にキャッピングするとともに、キャッピングされたノズルにおいて、その開口近傍にある液体が空気に触れるのを抑制する。
【解決手段】(A)ノズルの開口が形成されたノズル面を備え、前記ノズルから媒体に第1液体を噴射する噴射部と、(B)前記第1液体とは異なる第2液体が溜められた溜め部を備え、該溜め部内の前記第2液体を前記ノズル面に対して露出させた状態で該ノズル面と当接しているキャップ部材と、(C)前記キャップ部材を前記ノズル面に沿ってスライドさせる駆動機構であって、前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射する場合には前記開口が該媒体と対向するように前記キャップ部材をスライドさせ、前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射しない場合には前記開口が前記溜め部内の前記第2液体によって覆われるように前記キャップ部材をスライドさせる駆動機構と、(D)を有する液体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置、及び、液体噴射方法に関する。特に、ノズルの開口が形成されたノズル面にキャップ部材を当接させる液体噴射装置、及び、液体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体噴射装置は既に知られており、ノズルの開口が形成されたノズル面を備え前記ノズルからインク等の液体を媒体に噴射する噴射部、を有する。また、液体噴射装置の中には、ノズル面と当接することによりノズルの開口を覆って該ノズルをキャッピングするキャップ部材と、該キャップ部材がノズルの開口を覆う位置まで該キャップ部材を移動させる駆動機構を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−157103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な駆動機構は、ノズル面の直下に位置したキャップ部材を、該ノズル面の法線方向に沿って移動させることにより該ノズル面に当接させていた。このような要領でキャップ部材を移動させると、ノズルをキャッピングするのに時間がかかってしまう。
【0005】
また、キャップ部材がノズルをキャッピングしている間、該ノズルの開口近傍にある液体が空気と接触していると、その溶媒成分の蒸発による上記液体の増粘を進行させてしまう。さらに、上記液体が空気と接触し続けると、該液体中に気泡が混入し、この気泡が、噴射部が媒体に液体を噴射する際に悪影響を及ぼしてしまう。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノズルを迅速にキャッピングするとともに、キャッピングされたノズルにおいて、その開口近傍にある液体が空気に触れるのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、主たる発明は、(A)ノズルの開口が形成されたノズル面を備え、前記ノズルから媒体に第1液体を噴射する噴射部と、(B)前記第1液体とは異なる第2液体が溜められた溜め部を備え、該溜め部内の前記第2液体を前記ノズル面に対して露出させた状態で該ノズル面と当接しているキャップ部材と、(C)前記キャップ部材を前記ノズル面に沿ってスライドさせる駆動機構であって、前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射する場合には前記開口が該媒体と対向するように前記キャップ部材をスライドさせ、前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射しない場合には前記開口が前記溜め部内の前記第2液体によって覆われるように前記キャップ部材をスライドさせる駆動機構と、(D)を有することを特徴とする液体噴射装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンター1の構成を示すブロック図である。
【図2】プリンター1の主要構成要素を示す模式断面図である。
【図3】ノズル面21bを示す図である。
【図4】メンテナンスユニット40の主要構成要素を示す模式図である。
【図5】キャッププレート41の斜視図である。
【図6】キャッププレート41の平面図である。
【図7】図6中のA−A断面を示す図である。
【図8】図8A〜図8Cは、駆動機構42によるキャッププレート41のスライド移動についての説明図である。
【図9】メンテナンスユニット40の動作についてのタイミングチャートである。
【図10】図10Aは、キャッププレート41がキャッピング位置に到達した直後の、ノズルNzの開口周辺を示す拡大図である。図10Bは、流路41a内の洗浄液とノズルNzの開口近傍のインクとの理想的な接触状態を示す図である。
【図11】他のメンテナンスユニット60を示す模式図である。
【図12】ノズルNz内のインク中に気泡が発生した様子を示す図である。
【図13】図13A及び図13Bは、第1変形例に係るキャッププレート41A、41Bを示す図である。
【図14】図14A〜図14Cは、第2変形例に係るキャッププレート41A、41Bを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
【0010】
先ず、(A)ノズルの開口が形成されたノズル面を備え、前記ノズルから媒体に第1液体を噴射する噴射部と、(B)前記第1液体とは異なる第2液体が溜められた溜め部を備え、該溜め部内の前記第2液体を前記ノズル面に対して露出させた状態で該ノズル面と当接しているキャップ部材と、(C)前記キャップ部材を前記ノズル面に沿ってスライドさせる駆動機構であって、前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射する場合には前記開口が該媒体と対向するように前記キャップ部材をスライドさせ、前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射しない場合には前記開口が前記溜め部内の前記第2液体によって覆われるように前記キャップ部材をスライドさせる駆動機構と、(D)を有する液体噴射装置。
【0011】
上記の液体噴射装置では、ノズル面と当接したキャップ部材をノズル面に沿ってスライドさせることにより、ノズルの開口が媒体と対向する状態と、該開口がキャップ部材に設けられた溜め部内の第2液体によって覆われる状態との切替えを迅速に行うことが可能である。つまり、ノズルを迅速にキャッピングすることが出来る。また、キャッピングされたノズルの開口が第2液体により水封されるので、当該開口近傍にある第1液体が空気に触れるのを抑制することが可能になる。
【0012】
また、上記の液体噴射装置において、前記ノズル面と対向し媒体を支持する支持部を備え、該支持部上の媒体を搬送する搬送機構を有し、前記キャップ部材は、前記支持部と該ノズル面との間に形成された隙間内に配置されていることとしてもよい。かかる液体噴射装置であれば、キャップ部材の設置スペースが上記隙間内に確保される結果、液体噴射装置の小型化を図ることが出来る。
【0013】
また、上記の液体噴射装置において、前記溜め部は、前記第2液体が流れる溝状の流路であり、前記流路の上流側端から下流側端に向けて前記第2液体を流す送液機構を有し、前記送液機構は、前記流路の上流側端に供給される前記第2液体を収納している収納タンクと、前記流路の下流側端から該流路内の前記第2液体を吸い出す吸出ポンプとを有することとしてもよい。かかる液体噴射装置であれば、ノズルがキャッピングされている間、流路内を流れる第2液体によって前記ノズルをクリーニングすることが出来る。
【0014】
また、上記の液体噴射装置において、前記送液機構は、前記収納タンクと前記流路の上流側端との間に設けられ、該流路内を流れる前記第2液体の流量を調整するための流量調整弁を有し、前記流量調整弁の開度は、前記流路の上流側端に供給される前記第2液体の量が、前記吸出ポンプが前記流路の下流側端から吸い出す前記第2液体の量よりも少なくなるような開度に設定されていることとしてもよい。かかる液体噴射装置では、ノズルのクリーニング時、流路内の第2液体の液圧が負圧になるため、ノズルの開口近傍の第1液体が流路側に吸い寄せられるようになりノズルを適切にクリーニングすることが出来る。
【0015】
また、上記の液体噴射装置において、前記キャップ部材は、前記ノズル面と対向する側の表面から突出した突出部を備え、該突出部の先端部にて前記ノズル面と当接しており、前記駆動機構が前記キャップ部材を前記ノズル面に沿ってスライドさせることにより、前記先端部が前記ノズル面に付着した前記第1液体を拭き取ることとしてもよい。かかる液体噴射装置では、キャップ部材(詳しくは、突出部の先端部)がノズル面に付着した第1液体を拭き取る機能を兼ね備えることになる。
【0016】
また、上記の液体噴射装置において、前記第2液体は、前記第1液体よりも固形分濃度が低い洗浄液であることとしてもよい。当該洗浄液を第2液体として用いれば、ノズルやノズル面を清潔な状態で維持することが出来る。
【0017】
さらに、(a)第1液体が噴射されるノズルの開口が形成されたノズル面に、前記第1液体とは異なる第2液体が溜められた溜め部を備えたキャップ部材を、該溜め部内の前記第2液体を前記ノズル面に対して露出させた状態で当接させることと、(b)前記ノズル面に当接している前記キャップ部材を該ノズル面に沿ってスライドさせる処理であって、前記第1液体が媒体に噴射される場合には前記開口が該媒体と対向するように前記キャップ部材をスライドさせ、前記第1液体が媒体に噴射されないときには前記開口が前記溜め部内の前記第2液体によって覆われるように前記キャップ部材をスライドさせる処理を行うことと、(c)を有する液体噴射方法も実施可能である。かかる液体噴射方法であれば、ノズルを迅速にキャッピングするとともに、キャッピングされたノズルにおいて、その開口近傍にある液体が空気に触れるのを抑制することが可能になる。
【0018】
===本実施形態の液体噴射装置===
本発明の液体噴射装置について説明するために、以下では、インクジェットプリンター(以下、プリンター1)を一例に挙げて説明する。プリンター1は、第1液体の一例としてのインクを用いて、媒体の一例としての用紙Pに画像を印刷する。ここで、プリンター1を用いて用紙Pに画像を印刷するためにインクを噴射する方法は、液体噴射方法の一例に相当する。なお、インクは、水性インク及び油性インクのいずれであっても良い。
【0019】
プリンター1の基本構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、プリンター1の構成を示すブロック図である。図2は、プリンター1の主要構成要素を示す模式断面図である。プリンター1は、図1に示すように、コントローラー10と、ヘッドユニット20と、搬送機構としての搬送ユニット30と、メンテナンスユニット40とを備えている。
【0020】
コントローラー10は、ホストコンピューターHCから送信される印刷データを受信し、ユニット制御回路11を介して上記各ユニット20、30、40、50を制御する。コントローラー10は、例えば、印刷データに基づいてヘッドユニット20及び搬送ユニット30を制御して、上記印刷データに応じた画像を用紙Pに印刷する印刷動作を実行する。なお、プリンター1内の状況は検出器群50に監視され、その検出結果に基づいて、コントローラー10が各ユニット20、30、40を制御する。
【0021】
ヘッドユニット20は、プリンター1内に給紙された用紙Pに画像を印刷するために、当該用紙Pにインクを噴射する。ヘッドユニット20は、図2に図示された噴射部の一例としてのヘッド21を有する。ヘッド21は、ノズルNzを備え、インクカートリッジ22内のインクをノズルNzから用紙Pに噴射する。ノズルNzは、ヘッド21の下部に備えられたノズルプレート21aに形成されている。ノズルプレート21aの下表面(以下、ノズル面21b)には、図3に示すようにノズルNzの開口が形成されている。図3は、ノズル面21bを示す図である。
【0022】
また、ノズルNzには、インク室23及びピエゾ素子24(図12参照)が設けられている。ピエゾ素子24の駆動によりインク室23が収縮・膨張されると、ノズルNzの開口近傍に形成されたインクの自由表面(メニスカス)が微振動することにより、滴状のインクが噴射される。インク滴は、用紙P上に着弾してドットを形成する。
【0023】
なお、本実施形態に係るヘッド21は、所定方向(図2において紙面を貫く方向)に長く、所定位置に固定された状態で用紙Pにインクを噴射する。つまり、本実施形態のプリンター1は、ラインヘッド方式のプリンターであり、ノズルプレート21aには複数のノズルNzが形成されている。複数のノズルNzは、図3に示すように、ヘッド21の長手方向に沿って一定のノズルピッチで列状に並んでいる。また、同図に示す形態では、複数のノズルNzが千鳥列状に並び、一対のノズル列を形成している。そして、ヘッド21は、複数のノズルNzの各々からインクを噴射することにより、用紙Pの紙幅分のドットを一度に形成することが可能である。なお、本実施形態に係るヘッド21は、YMCK4色のカラーインクを噴射し、上記一対のノズル列がインク色の数だけノズルプレート21aに形成されている(図3参照)。
【0024】
搬送ユニット30は、用紙Pがヘッド21の下方を通過するように、当該用紙Pを搬送するものである。搬送ユニット30は、図2に示すように、支持部としてのプラテン31と、ヘッド21の長手方向に沿う回転軸を中心にして回転する搬送ローラー32とを備えている。プラテン31は、ヘッド21の下方位置でノズル面21bと対向し、その対向面にて用紙Pを支持する。搬送ローラー32は、その外周面を用紙Pに摺擦させながら回転することにより用紙Pを搬送する。以上のような構成の搬送ユニット30は、搬送ローラー32の回転により、プラテン31上の用紙Pを搬送する。なお、鉛直方向においてヘッド21のノズル面21bとプラテン31との間には、隙間(以下、ペーパーギャップPG)が形成されている。
【0025】
メンテナンスユニット40は、非印刷期間中に、ヘッド21の各ノズルNzに対してクリーニング動作を実行するためのものである。クリーニング動作は、各ノズルNzの状態を良好にインクが噴射される状態に維持するための動作である。具体的に説明すると、ノズルNzの開口近傍にあるインクから溶媒成分が蒸発して当該インクが増粘する可能性があり、この増粘インクによってノズルNzの目詰まりが発生するのを防止するために、クリーニング動作が実行される。なお、クリーニング動作は、コントローラー40がメンテナンスユニット40の各部を制御することにより実行される。
【0026】
===メンテナンスユニット40について===
次に、上述したメンテナンスユニット40について詳細に説明する。
【0027】
<<メンテナンスユニット40の構成>>
先ず、メンテナンスユニット40の構成について説明する。メンテナンスユニット40は、図4に示すように、キャップ部材の一例としてのキャッププレート41と、駆動機構42と、送液機構43とを備えている。図4は、メンテナンスユニット40の主要構成要素を側方(具体的には、ヘッド21の長手方向に沿った方向の一端側)から見た模式図である。同図には、ヘッド21とメンテナンスユニット40との位置関係を示すためにヘッド21が併せて図示されている。以下、上述したメンテナンスユニット40の各構成要素について説明する。
【0028】
<キャッププレート41>
キャッププレート41は、ヘッド21のノズル面21bに当接しており、非印刷期間中にノズルNzの開口を覆って当該ノズルNzをキャッピングする金属製の板状部材である。キャッププレート41は、ヘッド21の下方位置に位置し、常にノズル面21bに当接している。本実施形態では、キャッププレート41が前述のペーパーギャップPG内に配置されている(図2参照)。また、キャッププレート41は、駆動機構42からの駆動力を受けて、ヘッド21の長手方向と交差する方向(交差方向)へノズル面21bに沿ってスライド可能である。
【0029】
キャッププレート41についてより詳細に説明すると、図5に示すような外形形状を有する。図5は、キャッププレート41の斜視図である。キャッププレート41を上方から見ると、図6に示すように略矩形状をなし、その長手方向はヘッド21の長手方向に沿っている。図6は、キャッププレート41の平面図である。また、キャッププレート41の上部には、キャッププレート41の長手方向に沿って溝状の流路41aが形成されている(図6参照)。流路41a内には第2液体としての洗浄液が溜まっている。すなわち、流路41aは、洗浄液が溜められた溜め部に相当する。そして、キャッププレート41は、流路41a内の洗浄液をノズル面21bに対して露出させた状態で該ノズル面21bと当接している。なお、流路41a内の洗浄液は、該流路41aの上流側端から下流側端に向けて流れるようになっている。
【0030】
ここで、洗浄液とは、インク(第1液体)とは異なる液体であり、その固形分濃度はインクの固形分濃度よりも低くなっている。なお、本実施形態の希釈液は、グリセリン、1.2−ヘキサンジオール、トリエタノールアミン、シリコン系界面活性剤、及び、超純水等によって構成された液体であるが、これに限定されるものではない。例えば、インクが染料インクである場合には、水(望ましくは超純水)のみからなる希釈液でも良い。
【0031】
なお、流路41aの長手方向はヘッド21の長手方向に沿っており、該流路41aの長さはヘッド21の長手方向長さよりも幾分長くなっている。本実施形態では、流路41aが複数形成されており、2つずつ対をなしている。この対をなす2つの流路41aが流路部41bを構成しており、当該流路部41bは、前記交差方向に沿って一定間隔毎に複数(本実施形態では、4つ)配置されている。
【0032】
また、図7に示すように、キャッププレート41は、ノズル面21bと対向する側の表面、すなわち、上表面41hから突出した突出部41cを備えている。図7は、図6中のA−A断面を示す図である。突出部41cは、各流路41aの両脇に設けられ、当該各流路41aに沿って伸びている。突出部41cの先端部41d(上端部)はゴム等の弾性部材からなり、当該先端部41dにてキャッププレート41はノズル面21bと当接している。なお、突出部41cは、流路41a内を流れる洗浄液に対する堤として機能する。換言すると、各流路41aは、突出部41c間に形成され該突出部41cにより仕切られた空間である。かかる流路41a内には、液面が突出部41cの先端近傍まで達する程度に、洗浄液が溜められている。
【0033】
また、キャッププレート41の上表面41hの長手方向両端部には、図5に示すように、マニホールド41eが取り付けられており、各マニホールド41eの内空間には洗浄液が一時的に収納される。複数の流路41aの各々は、マニホールド41e間に配置されており、各マニホールド41eの内空間と連通している。そして、一方のマニホールド41cの内空間から各流路41aに洗浄液が分流し、当該各流路41aを流れた洗浄液が他方のマニホールド41の内空間にて合流するようになっている。
【0034】
さらに、キャッププレート41は、流路部41bの間に形成された略矩形状の穴41fを備えている。穴41fの長手方向長さは、流路41aの長さと略等しく、ヘッド21の長手方向長さよりも幾分長くなっている。
【0035】
<駆動機構42>
駆動機構42は、ノズル面21bに当接した状態のキャッププレート41を、交差方向へ前記ノズル面21bに沿ってスライドさせるものである。本実施形態において、駆動機構42は、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射する場合にはノズルNzの開口が用紙Pと対向するようにキャッププレート41をスライドさせ、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射しない場合には前記開口が流路41a内の洗浄液によって覆われるようにキャッププレート41をスライドさせる。
【0036】
以上の動作について、図8A〜図8Cを参照しながら分かり易く説明する。図8A〜図8Cは、駆動機構42によるキャッププレート41のスライド移動についての説明図であって、ノズル面21b側からキャッププレート41を見た図である。なお、キャッププレート41と各ノズルNzの開口との間の位置関係を示すため、図8A〜図8Cの各図には、当該各ノズルNzの開口が図示されている。また、図を簡略化するため、図8A〜図8Cの各図では、ノズルNzの開口の数が実際の数よりも少なくなっている。
【0037】
ヘッド21が待機状態(すなわち、用紙Pに向けてインクを噴射しない状態)にある間、キャッププレート41は、図8Aに示す位置に位置している。当該位置にキャッププレート41が位置している状態では、各ノズル列を構成するノズルNzの開口の直下に、当該各ノズル列と対応する流路41aが位置するようになる。
【0038】
具体的に説明すると、ノズルプレート21aにおいて一対のノズル列がインク色毎に形成されている一方で、キャッププレート41には、各一対のノズル列に対して流路部41bが形成されている(すなわち、インク色の数分の流路部41bが形成されている)。そして、ヘッド21が待機状態にある間、一対のノズル列の直下には、当該一対のノズル列に対応する流路部41bの流路41aが位置する。例えば、ブラック(K)のインクが噴射される一対のノズル列は、キャッププレート41の短手方向(交差方向)において最も一端側の流路部41bの流路41aと対応している。なお、一対のノズル列のうち、より交差方向一端側にあるノズル列の直下には、流路部41bのうち、より交差方向一端側の流路41aが位置し、より交差方向他端側にあるノズル列の直下には、より交差方向他端側の流路41aが位置する。
【0039】
上記の状態において、各ノズル列を構成するノズルNzの開口は、当該各ノズル列と対応する流路41a内の洗浄液により覆われる。つまり、各ノズルNzの開口が洗浄液により水封される。以上のようにして、キャッププレート41は、非印刷期間中、図8Aに示す位置に位置し、ノズルNzの開口を流路41a内の洗浄液により覆って該ノズルNzをキャッピングする。換言すると、図8Aに示す位置は、キャッププレート41がノズルNzをキャッピングするための位置であり、以下、キャッピング位置と呼ぶ。
【0040】
ヘッド21が待機状態から用紙Pにインクを噴射する状態に移行するとき、駆動機構42は、図8B中、記号Daにて示す向きに所定距離だけキャッププレート41をスライドさせる。これにより、キャッププレート41は、交差方向において図8Bに示す位置まで移動する。当該位置にキャッププレート41が位置している状態では、各ノズル列を構成するノズルNzの開口は、その直下を通過する用紙Pと対向するようになる。
【0041】
具体的に説明すると、キャッププレート41が図8Bに示す位置に位置した状態では、インク色毎に形成された一対のノズル列のうち、キャッププレート41が図8Bに示す位置までスライドしてきた際の向きDaにおいて最も後方の一対のノズル列が、キャッププレート41から外れた位置に位置する。他の一対のノズル列は、それぞれ、前述した穴41fの直上位置に位置する。したがって、各ノズルNzの開口は、いずれも露出し、用紙Pがヘッド21の直下を通過する際には当該用紙Pと対向するようになる。以上のようにして、印刷時にはキャッププレート41が図8Bに示す位置まで移動して、ノズルNzのキャッピングが解除される。これにより、ヘッド21はノズルNzからインクを噴射することが可能となる。換言すると、図8Bに示す位置は、キャッププレート41によるノズルNzのキャッピングが解除される位置であり、以下、非キャッピング位置と呼ぶ。
【0042】
ヘッド21が用紙Pにインクを噴射する状態から再び待機状態からに移行すると、駆動機構42は、向きDaとは反対の向き(図8Cにて記号Dbにて示す向き)に所定距離だけキャッププレート41をスライドさせる。これにより、キャッププレート41は、図8Aに示す位置、すなわち、キャッピング位置へ移動する。そして、再度、ヘッド21が待機状態から用紙Pにインクを噴射する状態に移行すると、駆動機構42は、向きDbに所定距離だけキャッププレート41をスライドさせて、図8Cに示す位置まで移動させる。当該位置では、キャッププレート41が図8Cに示す位置までスライドしてきた際の向きDbにおいて最も後方の一対のノズル列が、キャッププレート41から外れた位置に位置し、他の一対のノズル列が、それぞれ、穴41fの直上位置に位置するようになる。したがって、ノズル列中の各ノズルNzの開口は、いずれも露出し用紙Pと対向するようになる。つまり、図8Cに示す位置も非キャッピング位置に相当する。
【0043】
<送液機構43>
送液機構43は、キャッププレート41に形成された各流路41aの上流側端に洗浄液を供給するとともに、当該各流路41aの上流側端から下流側端に向けて洗浄液を流す機構である。送液機構43は、図4に示すように、収納タンク44と、吸出ポンプ45と、流量調整弁Vとを有する。
【0044】
収納タンク44は、洗浄液を収納している密閉タンクである。収納タンク44内の洗浄液は、キャッププレート41に設けられた2つのマニホールド41eのうちの一方を通じて、各流路41aの上流側端に供給される。具体的に説明すると、図4に示すように、収納タンク44aとキャッププレート41の間には、配管やチューブ等からなる供給ライン46が配設されている。供給ライン46の一端部は、収納タンク44の天井壁を貫いて該収納タンク44の内部に入り込んでいる。供給ライン46の他端部は、一方のマニホールド41eに取り付けられた接続部41gに接続されている。したがって、収納タンク44の内部と一方のマニホールド41eの内空間とは供給ライン46を介して連通している。そして、収納タンク44内の洗浄液は、供給ライン46を通じて一方のマニホールド41eの内部空間に流れ込んだ後に各流路41eの上流側端部に供給される。
【0045】
なお、収納タンク44内の洗浄液の液面が供給ライン46の一端(収納タンク44の内部に位置する側の端)よりも常に上方に位置するように、不図示の補給機構によって洗浄液が収納タンク44内に補給されるようになっている。
【0046】
吸出ポンプ45は、各流路41aの下流側端から当該各流路41a内の洗浄液を吸い出す吸引ポンプである。他方のマニホールド41e(供給ライン46が接続されていない方のマニホールド41e)には接続部41gが取り付けられており、この接続部41gに接続された配管やチューブ等からなる吸出ライン47を通じて、吸出ポンプ45が各流路41a内の洗浄液を吸引する。この結果、各流路41a内の洗浄液は、当該各流路41aの下流側端を通過した後、他方のマニホールド41eの内部空間を経て吸出ポンプ45側に向かって吸出ライン47を流れるようになる。なお、吸出ポンプ45が各流路41aの下流側端から吸い出した洗浄液については、不図示の回収器に回収される。
【0047】
流量調整弁Vは、収納タンク44と各流路41aの上流側端との間(具体的には、供給ライン46中)に設けられた開閉自在の弁であり、当該各流路41aを流れる洗浄液の流量を調整するための機器である。
【0048】
以上のような構成の送液機構43では、吸出ポンプ45が起動することにより、各流路41a内の洗浄液が当該各流路41aの下流側端から吸い出されると共に、収納タンク44内の洗浄液が上記各流路41aの上流側端に向けて供給される。なお、本実施形態において、吸出ポンプ45は、プリンター1の電源がONになっている間、常時運転している。また、流量調整弁Vの開度は、各流路41aの上流側端に供給される洗浄液の量が吸出ポンプ45が当該各流路41aの下流側端から吸い出す洗浄液の量よりも少なくなるような開度に設定されている。
【0049】
<<メンテナンスユニット40の動作例>>
次に、前述のクリーニング動作を含むメンテナンスユニット40の動作例について図9を参照しながら説明する。図9は、メンテナンスユニット40の動作についてのタイミングチャートである。
【0050】
先ず、プリンター1の電源がONになると、コントローラー10は、吸出ポンプ45を起動すると共に、各流路41a内の洗浄液をノズル面21bに対して露出させた状態でキャッププレート41を該ノズル面21bと当接させる。本実施形態では、前述したように、キャッププレート41が常時ノズル面21bと当接しているので、プリンター1の電源がONになると必然的にキャッププレート41が前記ノズル面21bと当接した状態となる。また、吸出ポンプ45の起動に伴い、各流路内41aの洗浄液は、前ノズル面21bに対して露出した状態で当該各流路41aを流れるようになる。
【0051】
なお、プリンター1の電源がONになった時点では、ヘッド21は待機状態にあり、キャッププレート41はキャッピング位置(図8Aに示す位置)にて各ノズルNzをキャッピングしている。そして、プリンター1が印刷動作を実行する際、コントローラー10は、図9に示すように、駆動機構42を制御して、キャッププレート41をキャッピング位置から非キャッピング位置(図8Bあるいは図8Cに示す位置)にスライドさせる。これにより、キャッププレート41によるノズルNzのキャッピングが解除され、ヘッド21が待機状態から用紙Pにインクを噴射する状態に移行する。
【0052】
また、プリンター1が印刷動作を終了すると、コントローラー10は、図9に示すように、駆動機構42を制御して、キャッププレート41を非キャッピング位置からキャッピング位置にスライドさせる。これにより、各ノズルNzの開口が流路41a内の洗浄液により覆われ(すなわち、キャッププレート41が各ノズルNzをキャッピングし)、ヘッド21が再び待機状態へと移行する。
【0053】
以上のように、コントローラー10は、図9に示すように、印刷動作の実行期間と非印刷期間とが切り替わるタイミングで、駆動機構42を制御して、ノズル面21bに当接しているキャッププレート41を該ノズル面21bに沿ってスライドさせる処理を行う。当該処理では、インクが用紙Pに噴射される場合には各ノズルNzの開口が用紙Pと対向するようにキャッププレート41を非キャッピング位置へスライドさせ、インクが用紙Pに噴射されないときには前記開口が流路41a内の洗浄液によって覆われるようにキャッププレート41をキャッピング位置へスライドさせる。
【0054】
そして、図9に示すように、非印刷期間中、キャッププレート41がキャッピング位置に位置した状態で、各流路41a内の洗浄液が当該各流路41aに沿って流れることにより、前述のクリーニング動作が各ノズルNzに対して実行される。具体的に説明すると、キャッププレート41がキャッピング位置に位置する間、各流路41a内の洗浄液が、ノズルNzの開口近傍にあるインクを接触し、当該インクを浚うように前記各流路41aを流れる。ノズルNzの開口近傍にあるインクについては、溶媒成分の蒸発による増粘が進行している可能性が高いため、当該インクを放置しておくとノズルNzの目詰まりを発生させてしまう虞がある。本実施形態では、流路41a内の洗浄液がノズルNzの開口近傍のインクと接触しながら該流路41aを流れる結果、上記インクがノズルNzから取り除かれるようになる。
【0055】
特に、本実施形態では、流路41a内を流れる洗浄液の液圧が若干負圧になっている。これは、流量調整弁Vの開度が前述した開度に設定されており、流路41aの上流側端に供給される洗浄液の量が、該流路41aの下流側端から吸い出される洗浄液の量よりも少なくなるように、該流路41a内における洗浄液の流量が調整されているためである。これにより、キャッププレート41がノズル面21bに吸い付けられて該キャッププレート41とノズル面21bとの密着性が向上し、流路41a内の洗浄液は、その液面がノズルNzの開口と同じ位置に達した状態で上記流路41aを流れることになる。この結果、ノズルNzの開口近傍のインクが流路41a側に吸い寄せられるようになる。
【0056】
より分かり易く説明すると、キャッププレート41がキャッピング位置に到達した直後、ノズルNzの開口近傍には、図10Aに図示された微小な気相領域が形成されている。図10Aは、キャッププレート41がキャッピング位置に到達した直後の、ノズルNzの開口周辺を示す拡大図である。かかる状態において、ノズルNzの開口直下を洗浄液が流れると、ベルヌーイ効果により、当該開口近傍にあるインクが流路41a側に吸い寄せられ、該流路41a内を流れる洗浄液によって運び去られるようになる。さらに、流路41aを流れる洗浄液の液圧が負圧になっているので、上記インクは流路41a側により一層吸い寄せられることになる。
【0057】
なお、このとき、洗浄液がノズルNz内に流れ込むことはなく、流路41a内を流れる洗浄液の流速が好適な流速となっていれば、図10Bに示すように、インクと洗浄液との界面がノズルNzの開口に位置するようになる。図10Bは、流路41a内の洗浄液とノズルNzの開口近傍のインクとの理想的な接触状態を示す図である。
【0058】
また、流路41a内を流れる洗浄液は、ノズルNzの開口近傍のインクと接触しているため、所謂呼び水として機能する。この結果、上記インクがノズルNzから速やかに取り除かれるようになる。つまり、流路41a内の洗浄液がノズルNzの開口近傍のインクと接触する結果、当該開口近傍に当初形成されていた気相領域が消滅し、当該開口近傍のインクが洗浄液の流れに乗ってノズルNzの外へ流出し易くなる。さらに、ノズルNzの開口近傍のインクについては、前述したように、増粘が進行しているために流動性が低下している可能性があるが、インクよりも固形分濃度が低い洗浄液が上記インクと接触して該インクを希釈するので、該インクの流動性が次第に回復し、該インクをより速やかにノズルNzから除去することが可能になる。
【0059】
以上のようなクリーニング動作が実行されることにより、ノズルNzが目詰まる原因となる開口近傍のインク(つまり、増粘が進行したインク)がノズルNzから取り除かれる。
【0060】
また、キャッププレート41は、前述の突出部41cの先端部41dがノズル面21bを摺擦するようにスライド移動する。これにより、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射した際に発生するミスト状のインクがノズル面21bに付着したとしても、当該インクが上記突出部41cの先端部41dにより拭き取られるようになる。なお、各流路41a内の洗浄液の液面が突出部41cの先端に達しているので、キャッププレート41は、各流路41a内の洗浄液をノズル面21bに接触させながらスライド移動する。これにより、先端部41dにて拭き取り切れなかったインクを洗浄液にて洗い流すことが可能である。
【0061】
===本実施形態のプリンター1の有効性について===
以上までに説明してきたように、本実施形態では、洗浄液が溜められた流路41aを備えるキャッププレート41が、前記流路41a内の洗浄液をノズル面21bに対して露出させた状態で、該ノズル面21bに当接している。かかる状態のキャッププレート41をノズル面21bに沿ってスライドさせる駆動機構42は、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射する場合にはノズルNzの開口が該用紙Pと対向するようにキャッププレート41をスライドさせ、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射しない場合には前記開口が流路41a内の洗浄液によって覆われるようにキャッププレート41をスライドさせる。これにより、ノズルNzを迅速にキャッピングし、キャッピングされたノズルNzにおいて、その開口近傍にあるインクが空気に触れるのを抑制することが可能となる。
【0062】
本実施形態のプリンター1の有効性について、図11を参照しながら具体的に説明する。図11は、本実施形態のメンテナンスユニット40とは構成が異なる他のメンテナンスユニット60を示す模式図である。
【0063】
他のメンテナンスユニット60は、図11に示すように、他のキャップ部材61と、他の駆動機構62とを備えている。他のキャップ部材61は、有底箱状の部材であり、その上端は開放端となっている。他の駆動機構62は、ノズル面21bの法線方向(例えば、鉛直方向)に沿って他のキャップ部材61を移動させる。そして、他のメンテナンスユニット60では、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射する状態から待機状態へ移行すると、他のキャップ部材61がノズル面21bの直下に位置し、他の駆動機構62が当該他のキャップ部材61をノズル面21bに向けて上昇させる。この結果、他のキャップ部材61が、ノズル面21bから離間した位置(図11中、破線にて示した他のキャップ部材61の位置)からノズル面21bと当接する位置(図11中、実線にて示した他のキャップ部材61の位置)へ移動してノズルNzをキャッピングするようになる。
【0064】
以上の動作は、発明が解決しようとする課題の項で説明したように、ノズルNzをキャッピングするための一般的な動作である。しかしながら、ノズル面21bから離間した位置からノズル面21bに当接する位置まで他のキャップ部材61を上昇させるので、ノズルNzをキャッピングするのに時間が掛かってしまう。なお、印刷時において他のキャップ部材61は、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射するのを妨げないようにペーパーギャップPGの外に配置されている。したがって、非印刷期間に他のキャップ部材61をノズル面21bに当接させるためには、ペーパーギャップPGの外に位置する他のキャップ部材61をペーパーギャップPG内まで移動させる必要がある。その分、ノズルNzをキャッピングするのに掛かる時間が更に長くなる。
【0065】
また、他のキャップ部材61がノズル面21と当接した状態において、ノズルNzの開口は、ノズル面21bとキャップ61の壁面により仕切られる密閉空間61aに臨んでいる。つまり、ノズルNzは、その開口近傍のインクが密閉空間61a内の空気に触れた状態でキャッピングされることになる。このような場合、ノズルNzの開口近傍のインクが増粘し易くなってしまう。また、ノズルNzの開口近傍のインクが空気に接触させたままでは、やがてインク中に空気が混入し、図12に示すようにインク中に気泡が発生してしまう。この気泡がインク中に存在した状態で、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射すると、インクの噴射量が所定量にならない等の不具合が生じる。図12は、ノズルNz内のインク中に気泡が発生した様子を示す図である。
【0066】
さらに、他のメンテナンスユニット60は、キャップ61がノズル面21bに当接している間に、図11に図示された吸気ポンプ63によって上記密閉空間61a内の空気を吸気し、該密閉空間61a内の気圧を負圧状態にする。この結果、ノズルNzの開口近傍のインクが密閉空間61a側に吸引されてノズルNzから排出されるようになる。このように他のメンテナンスユニット60では、ヘッド21側の圧力(インク室23内やノズルNz内のインクの圧力)と密閉空間61a内の気圧との間の圧力差を利用してノズルNzの開口近傍のインクを強制的に排出させてノズルNzをクリーニングする。但し、かかるクリーニング動作では、吸気ポンプ63を起動してから密閉空間61a内の気圧を負圧状態にさせるまでに時間を要すると共に、比較的多量のインクを排出することになる。
【0067】
一方、本実施形態では駆動機構42が、ノズル面21bに当接しているキャッププレート41を、ノズル面21bに沿ってキャッピング位置と非キャッピング位置との間でスライドさせる。これにより、ノズルNzの開口が用紙Pと対向する状態と、前記開口がキャッププレート41に設けられた流路41a内の洗浄液によって覆われる状態とが迅速に切替わる。すなわち、本実施形態では、ノズルNzのキャッピング、及び、キャッピングの解除をより迅速に行うことが可能である。なお、キャッププレート41がペーパーギャップPG内に配置されているので、ノズルNzをキャッピングするための時間を更に短縮させることが可能である。また、キャッププレート41の配置スペースがペーパーギャップPG内に確保されているため、プリンター1の小型化が図られている。
【0068】
また、本実施形態では、ノズルNzがキャッピングされている間、ノズルNzの開口が流路41a内の洗浄液により水封されるので、当該開口近傍のインクが空気と接触するのを抑制し、以って、当該開口近傍におけるインクの増粘、及び、該インク中での気泡の発生を抑制することが可能である。このため、非印刷期間が長期化する場合であっても、ノズルNzの状態をインクが良好に噴射される状態に維持することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態では、流路41a内の洗浄液が該流路41aの上流側端から下流側端に向けて流れている間に、キャッププレート41がキャッピング位置へ移動してノズルNzをキャッピングする。そして、流路41a内の洗浄液がノズルNzの開口近傍のインクと接触しながら流路41a内を流れる結果、上記インクが洗浄液に運び去られ、ノズルNzがクリーニングされる。このように本実施形態では、キャッププレート41がキャッピング位置にスライドしてノズルNzをキャッピングすると直ちにクリーニング動作が実行される。つまり、本実施形態では、ノズルNzをクリーニングするのに時間を要することもない。なお、ノズルNzからのインクの排出量は、流路41aを流れる洗浄液がノズルNzの開口近傍のインクを運び去る分だけであるので、他のメンテナンスユニット60の場合と比較してインクの排出量が削減されることになる。
【0070】
さらに、本実施形態では、流量調整弁Vの開度が、流路41aの上流側端に供給される洗浄液の量が、該流路41aの下流側端から吸い出される洗浄液の量よりも少なくなるような開度に設定されている。この結果、流路41a内を流れる洗浄液の液圧が負圧状態となり、ノズルNzの開口近傍のインクが流路41a側に吸い寄せられる。これにより、ノズルNzの開口近傍のインクを効率良く取り除くことができ、以って、ノズルNzを適切にクリーニングすることが可能となる。なお、流量調整弁Vの代わりに、例えば、オリフィス等の流量絞り機構を設けて、流路41aの上流側端に供給される洗浄液の量を該流路41aの下流側端から吸い出される洗浄液の量よりも少なくしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、駆動機構42がキャッププレート41をノズル面21bに沿ってスライドさせることにより、キャッププレート41に設けられた突出部41cの先端部41dが、ノズル面21bを摺擦して該ノズル面21bに付着したインクを拭き取る。すなわち、本実施形態のキャッププレート41(詳しくは、突出部41cの先端部41d)は、ノズル面21dに付着したインクを拭き取る機能を兼ね備えている。このため、ワイパー等の拭き取り部材、及び、該拭き取り部材をノズル面21bに当接させながら移動させる機構を別途設ける必要がなく、プリンター1の省機器化が実現される。
【0072】
また、本実施形態では、インクよりも固形分濃度が低い洗浄液を用いてノズルNzをクリーニングしたり、ノズル面21bに付着したインクを洗い流したりするので、ノズルNzやノズル面21bを清潔な状態で維持することが可能である。
【0073】
===キャッププレート41の変形例===
キャッププレート41については、以上までに説明してきた実施形態に係る例(以下、本件例)に限定されず、他の例(以下、変形例)も考えられる。以下、キャッププレート41の変形例について説明する。なお、以下の説明中、本件例と重複する内容については省略する。また、説明を分かり易くするために、変形例に係るヘッド21のノズルプレート21aには、一対のノズル列が1組のみ形成されていることとする(図13A及び図13B、図14A〜図14C参照)。
【0074】
<<第1変形例>>
第1変形例では、図13A及び図13Bに示すように、一対のキャッププレート41A、41Bがノズル面21bと当接している。図13A及び図13Bは、第1変形例に係るキャッププレート41A、41Bを示す図である。一方のキャッププレート41Aは、交差方向一端部(他方のキャッププレート41Bが位置する側の端部)に、突出部41cと、該突出部41cと隣接する部分を掘り込んで形成された流路41aとを有する。同様に、他方のキャッププレートノ41Bは、交差方向他端部(一方のキャッププレート41Aが位置する側の端部)に、突出部41cと流路41aとを有する。第1変形例に係る駆動機構42は、一対のキャッププレート41A、41Bの各々をスライドさせて両キャッププレート41A、41Bを互いに離間させたり(図13A参照)近接させたりする(図13B参照)。
【0075】
また、第1変形例に係るヘッド21のノズルプレート21aには、ノズル列が形成された領域から幾分外側に、ヘッド21の長手方向に沿った窪み21cが形成されている(図13A、図13B参照)。窪み21cは一対形成され、当該窪み21cの間にノズル列が形成された領域が位置している。
【0076】
そして、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射する場合には、駆動機構42が、一対のキャッププレート41A、41Bの各々を互いに離間させるようにスライドさせて図13Aに示す位置まで移動させる。これにより、キャッププレート41A、41B間に隙間が形成され、当該隙間の上方に各ノズルNzの開口が位置するようになる。つまり、各ノズルNzの開口が用紙Pと対向するようになる。また、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射しない場合には、駆動機構42が、一対のキャッププレート41A、41Bの各々を互いに近接させるようにスライドさせて図13Bに示す位置まで移動させる。当該位置では、一対のキャッププレート41A、41Bが交差方向端面にて接合し合う。かかる状態において、各ノズルNzの開口が流路41a内の洗浄液により覆われる。
【0077】
なお、一対のキャッププレート41A、41Bの各々が図13Aに示す位置と図13Bに示す位置との間を移動する際に、上述の窪み21cが流路41aと連なるようになる。かかる状態において、流路41a内を流れる洗浄液が窪み21c内へ流入し、該窪み21c内にも洗浄液が溜まるようになる。この結果、例えば、流動性の向上を目的として加熱されたインクにより昇温したノズルプレート21aが、窪み21c内の洗浄液により冷却され、該ノズルプレート21aの温度を維持することが可能になる。かかる点で、第1変形例は本件例と相違する。但し、それ以外については、本件例と同様であり、当該本件例と同様の作用効果を奏する。
【0078】
<<第2変形例>>
第2変形例では、図14A〜図14Cに示すように、一対のキャッププレート41A、41Bがノズル面21bと当接している。図14A〜図14Cは、第2変形例に係るキャッププレート41A、41Bを示す図である。一方のキャッププレート41Aは、交差方向一端部(他方のキャッププレート41Bが位置する側の端)に、突出部41cと、該突出部41cと隣接する部分を掘り込んで形成された流路41aを有する。さらに、一方のキャッププレート41Aは、流路41aを挟んで突出部cと対向する第2突出部41iと、第2突出部41iと隣接する部分を掘り込んで形成された流路41aとを有する。同様に、他方のキャッププレートノ41Bは、交差方向他端部(一方のキャッププレート41Aが位置する側の端部)に突出部41cと流路41aを有し、更に上述した第2突出部41i、及び、第2突出部41iと隣接する部分を掘り込んで形成された流路41aを有する。
【0079】
なお、第2変形例に係るヘッド21のノズルプレート21aには、前述の窪み21cが形成されている。第2変形例に係る駆動機構42は、第1変形例と同様に、一対のキャッププレート41A、41Bの各々をスライドさせて両キャッププレート41A、41Bを互いに離間させたり近接させたりする。
【0080】
そして、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射する場合には、駆動機構42が、一対のキャッププレート41A、41Bの各々を互いに離間させるようにスライドさせて図14Aに示す位置まで移動させる。これにより、キャッププレート41A、41B間に隙間が形成され、各ノズルNzの開口が当該隙間の上方に位置して用紙Pと対向するようになる。また、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射しない場合、駆動機構42が、一対のキャッププレート41A、41Bの各々を互いに近接させるようにスライドさせ、図14Bに示す位置を経て最終的に図14Cに示す位置まで移動させる。
【0081】
より詳しく説明すると、一対のキャッププレート41A、41Bの各々が互いに近接するようにスライドすると、先ず、各ノズルNzの開口が、突出部41cと第2突出部41iとの間に位置する流路41a内の洗浄液により覆われる(図14B参照)。この際、上記流路41a内の洗浄液が各ノズルNzの開口近傍のインクと接触しながら流れる結果、各ノズルNzの開口近傍のインクが当該各ノズルNzから排出される。そして、一対のキャッププレート41A、41Bの各々は、更にスライドすると、交差方向端面で接合し合うようになる(図14C参照)。かかる状態では、各ノズルNzの開口直下に第2突出部41iが位置し、当該第2突出部41iが各ノズルNzの開口を塞ぐようになる。各キャッププレート41A、41Bを上記の位置に配置させておけば、適切にノズルNzがキャッピングされると共に、キャッピング中における洗浄液のノズルNz内への逆流が防止される。この結果、非印刷期間が長期化する場合であっても、ノズルNzの状態をインクが良好に噴射される状態に維持することが可能になる。
【0082】
なお、一対のキャッププレート41A、41Bの各々がスライドする間に前述の窪み21cが各流路41aと連なるため(図14A〜図14C参照)、当該各流路41a内を流れる洗浄液が前記窪み21c内へ流入して溜まる結果、第1変形例と同様にノズルプレート21aを上記洗浄液によって冷却することが可能になる。また、一対のキャッププレート41A、41Bの各々が互いに近接するようにスライドする間、突出部41cの先端部41dがノズル面21b(特に、ノズル列が形成された領域付近)に付着したインクを拭き取り、流路41a内の洗浄液が、突出部41cの先端部41dにより拭き取り切れなかったインクを洗い流す。そして、図14Cに示す状態では、ノズル面21bのうち、ノズル列が形成された領域の略全面が、流路41a内の洗浄液に浸されるようになる。この結果、非印刷期間中、ノズル面21bが清潔な状態で維持することが可能になる。
【0083】
以上のように、第2変形例では、ヘッド21が用紙Pにインクを噴射しない場合、ノズルNzの開口が流路41a内の洗浄液により覆われるように各キャップレート41A、41Bをスライドさせた後に、前記開口が第2突出部41iにより塞がれる位置まで前記各キャッププレート41A、41Bを更にスライドさせる。かかる点で、第2変形例は本件例と相違するが、それ以外については本件例と同様であり、当該本件例と同様の作用効果を奏する。
【0084】
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態に基づき、プリンター1を一例に挙げて、本発明に係る液体噴射装置及び液体噴射方法について説明したが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0085】
また、上記実施形態では、ノズルNzをクリーニングするために、ノズルNzの開口近傍のインクと接触しながら流路41a内を流れる洗浄液、の液圧を負圧状態にして当該インクを流路41a側に吸い寄せてノズルNzから取り除くこととした。但し、ノズルNzをクリーニングする方法は上記の方法に限定されるものではなく、例えば、前記流路41a内の洗浄液がノズルNzの開口近傍のインクと接触しながら流れている状態で、ピエゾ素子24を駆動してノズルNzからインクを強制的に噴射することにより該ノズルNzの開口近傍のインクを排出しても良い。あるいは、流路41a内を流れる洗浄液をノズルNzの開口近傍のインクに接触させることにより当該インクを洗い流すこととしても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、所定位置に固定されたヘッド21からインクを噴射することにより、紙幅分のドットを一度に形成可能なラインヘッド方式のプリンター1について説明した。但し、用紙Pの紙幅方向に沿って移動しながらインクを噴射するヘッドを有するプリンター1(所謂シリアルプリンター)にも本発明を適用することが可能である。
【0087】
また、上記実施形態では、第1液体の一例としてのインクを噴射するプリンター1について説明したが、これに限定されるものではない。溶媒成分の蒸発により増粘する液体である限り、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような液状体を含む)であっても良い。このような液体を噴射する液体噴射装置であれば、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であっても良い。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流体噴射装置であっても良い。以上のうちのいずれの液体噴射装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース、12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、20 ヘッドユニット、21 ヘッド、21a ノズルプレート、21b ノズル面、21c 窪み、22 インクカートリッジ、23 インク室、24 ピエゾ素子、30 搬送ユニット、31 プラテン、32 搬送ローラー、40 メンテナンスユニット、41 キャッププレート、41A キャッププレート、41B キャッププレート、41a 流路、41b 流路部、41c 突出部、41d 先端部、41e マニホールド、41f 穴、41g 接続部、41h 上表面、41i 第2突出部、42 駆動機構、43 送液機構、44 収納タンク、45 吸出ポンプ、46 供給ライン、47 吸出ライン、50 検出器群、60 他のメンテナンスユニット、61 他のキャップ部材、61a 密閉空間、62 他の駆動機構、63 吸気ポンプ、HC ホストコンピューター、Nz ノズル、P 用紙、PG ペーパーギャップ、V 流量調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの開口が形成されたノズル面を備え、前記ノズルから媒体に第1液体を噴射する噴射部と、
前記第1液体とは異なる第2液体が溜められた溜め部を備え、該溜め部内の前記第2液体を前記ノズル面に対して露出させた状態で該ノズル面と当接しているキャップ部材と、
前記キャップ部材を前記ノズル面に沿ってスライドさせる駆動機構であって、
前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射する場合には前記開口が該媒体と対向するように前記キャップ部材をスライドさせ、前記噴射部が媒体に前記第1液体を噴射しない場合には前記開口が前記溜め部内の前記第2液体によって覆われるように前記キャップ部材をスライドさせる駆動機構と、
を有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記ノズル面と対向し媒体を支持する支持部を備え、該支持部上の媒体を搬送する搬送機構を有し、
前記キャップ部材は、前記支持部と該ノズル面との間に形成された隙間内に配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記溜め部は、前記第2液体が流れる溝状の流路であり、
前記流路の上流側端から下流側端に向けて前記第2液体を流す送液機構を有し、
前記送液機構は、
前記流路の上流側端に供給される前記第2液体を収納している収納タンクと、
前記流路の下流側端から該流路内の前記第2液体を吸い出す吸出ポンプとを有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記送液機構は、
前記収納タンクと前記流路の上流側端との間に設けられ、該流路内を流れる前記第2液体の流量を調整するための流量調整弁を有し、
前記流量調整弁の開度は、
前記流路の上流側端に供給される前記第2液体の量が、前記吸出ポンプが前記流路の下流側端から吸い出す前記第2液体の量よりも少なくなるような開度に設定されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、
前記キャップ部材は、前記ノズル面と対向する側の表面から突出した突出部を備え、該突出部の先端部にて前記ノズル面と当接しており、
前記駆動機構が前記キャップ部材を前記ノズル面に沿ってスライドさせることにより、前記先端部が前記ノズル面に付着した前記第1液体を拭き取ることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、
前記第2液体は、前記第1液体よりも固形分濃度が低い洗浄液であることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
第1液体が噴射されるノズルの開口が形成されたノズル面に、前記第1液体とは異なる第2液体が溜められた溜め部を備えたキャップ部材を、該溜め部内の前記第2液体を前記ノズル面に対して露出させた状態で当接させることと、
前記ノズル面に当接している前記キャップ部材を該ノズル面に沿ってスライドさせる処理であって、
前記第1液体が媒体に噴射される場合には前記開口が該媒体と対向するように前記キャップ部材をスライドさせ、前記第1液体が媒体に噴射されないときには前記開口が前記溜め部内の前記第2液体によって覆われるように前記キャップ部材をスライドさせる処理を行うことと、
を有することを特徴とする液体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−179534(P2010−179534A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24183(P2009−24183)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】