説明

液体噴射装置及び液体残量判定方法

【課題】差動アンプからの出力信号によりインク残量を判定する方法において、ノイズの影響を低減することができないという課題がある。
【解決手段】圧電素子53を有するインクカートリッジ50と液体噴射ヘッドと、を設けたキャリッジを移動させるキャリッジ移動手段と、二つの入力信号の差分を増幅して出力信号を出力する差動アンプ40と、周波数測定部44と、振幅測定部46と、ノイズが発生したか否かを判定するノイズ判定部23と、ノイズ判定部23によってノイズが発生したとして判定されたとき、キャリッジ移動手段によって、キャリッジを移動させるキャリッジ移動部24と、圧電素子駆動部21と、圧電素子駆動部21が圧電素子53に対して駆動波形を出力した後に、周波数測定値に基づいて、インクカートリッジ50のインク残量を判定する液体残量判定部22と、を備えた液体噴射装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置及び液体残量判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例であるインクジェット式プリンターは、液体であるインクを収容するための液体容器としてのインクカートリッジを備え、インクカートリッジから供給されるインクを液体噴射ヘッドから噴射する。インクカートリッジ内のインク残量を検出する方法として、インクカートリッジにおけるインクの流路の途中に圧電素子を設け、この圧電素子に所定の駆動電圧を印加して歪を生じさせ、駆動電圧を停止した際に、圧電素子から発生した、残存するインクの量に応じて変化する逆起電力を、信号の周波数として検出する方法が知られている。しかし、インクは導電性があるため、インクカートリッジにおけるインクの収容部がアンテナとして機能してしまう。そのため、インクジェット式プリンターの外部に電子装置などのノイズ発生源が置かれると、ノイズの混入により、逆起電力を信号の周波数として検出する際の検出精度が低下してしまうことがある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、圧電素子の両端の電極から出力する互いに逆相の二つの検出信号を差動アンプに入力し、二つの検出信号の差分が増幅された一つの出力信号を差動アンプから出力させる方法が提案されている。インクジェット式プリンターの外部で発生し、インクを経由して、両端の電極から混入される二つのノイズは、差動アンプの入力の正極と負極で互いに同相のコモンモードノイズであることから、差分は小さく、差動アンプによってコモンモードノイズは除去される。コモンモードノイズが除去されると、圧電素子から発生した、検出信号のみが差動アンプで増幅、出力されるので、ノイズの影響が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−268057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧電素子の両端の電極のうち、一方の電極がインクに近接して備えられるため、導電性を有するインクの収容部がアンテナとなってノイズを受信するとき、一方の電極から差動アンプに入力されるまでのノイズの経路と、一方の電極から圧電素子を介して他方の電極から差動アンプに入力されるまでのノイズの経路と、の二つの経路から二つのノイズがそれぞれ差動アンプに入力される。そのため、二つの経路には圧電素子の静電容量分の差異があることから、差動アンプに入力される二つのノイズには位相のずれと振幅のずれが生じている。二つのノイズに位相のずれと振幅のずれがあると、完全なコモンモードノイズではないため、差動アンプによって完全には除去できず、二つのノイズの差分が増幅されてしまう。従って、差動アンプから出力される一つの出力信号に対するノイズの影響を低減することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]圧電素子を有する液体容器と前記液体容器から供給される液体を噴射する液体噴射ヘッドとを設けたキャリッジを移動させるキャリッジ移動手段と、前記圧電素子に接続される、第1の電極と第2の電極とからそれぞれ入力される二つの入力信号の差分を増幅して出力信号を出力する差動アンプと、前記出力信号における周波数を測定し、周波数測定値として出力する周波数測定部と、前記出力信号における電圧振幅を測定し、振幅測定値として出力する振幅測定部と、前記第1の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第1のスイッチと、前記第2の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第2のスイッチと、前記圧電素子に対して駆動波形を出力する圧電素子駆動部と、前記圧電素子駆動部が前記圧電素子に対して前記駆動波形を出力した後に、前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとを接続状態とし、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとを接続状態とし、前記周波数測定値に基づいて、前記液体容器内の液体残量を判定する液体残量判定部と、前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとを接続状態とし、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとを非接続状態とし、前記振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定部と、前記ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、前記キャリッジ移動手段によって、前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動部と、を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【0008】
この構成によれば、第1のスイッチにより第1の電極と差動アンプとを接続状態とし、第2のスイッチにより第2の電極と差動アンプとを非接続状態とし、振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定部と、ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、キャリッジ移動手段によって、キャリッジを移動させるキャリッジ移動部と、を備える。これにより、ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたときは、キャリッジ移動部は、キャリッジに設けられた、圧電素子を有する液体容器を移動させて、圧電素子をノイズの発生源から遠くすることができる。従って、圧電素子に接続された第1の電極と第2の電極に混入するノイズを抑制できるので、差動アンプから出力される出力信号への影響を低減することが可能となる。
【0009】
[適用例2]1回目の前記ノイズ判定処理を行った後、前記キャリッジ移動手段によって前記液体容器を一方方向に移動させ、2回目の前記ノイズ判定処理を行ったとき、2回目の前記ノイズ判定処理における前記振幅測定値が、1回目の前記ノイズ判定処理における前記振幅測定値を超える場合、前記キャリッジ移動部は、前記キャリッジ移動手段によって前記液体容器を反対方向の1回目の前記ノイズ判定処理を行った位置を越える位置に移動させ、3回目の前記ノイズ判定処理を行うことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0010】
この構成によれば、2回目のノイズ判定処理の位置における振幅測定値が、1回目のノイズ判定処理の位置における振幅測定値を超えたときは、圧電素子がノイズ発生源に近くなったとして判定できる。そこで、キャリッジ移動部が、キャリッジ移動手段によって液体容器を反対方向の1回目のノイズ判定処理の位置を越える位置に移動させ、3回目のノイズ判定処理を行えば、圧電素子をノイズ発生源から遠くすることができる。従って、圧電素子と接続する、第1の電極と第2の電極に混入するノイズを抑制できるので、3回目のノイズ判定処理では、差動アンプから出力される出力信号への影響を低減することが可能となる。
【0011】
[適用例3]前記第1の電極は、前記液体容器に収容される液体に近接し、前記第1の電極と前記差動アンプとの間に、前記圧電素子と略同じ静電容量のコンデンサーを備えたことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0012】
この構成によれば、一方の電極から差動アンプに入力されるノイズの経路と、一方の電極から圧電素子を介して他方の電極から差動アンプに入力されるノイズの経路と、の二つの経路における静電容量分の差異を小さくすることができる。そのため、第1の電極から入力されるノイズと、第2の電極から入力されるノイズとの位相と振幅のずれを小さくすることができる。これにより、二つのノイズの差分が差動アンプによって増幅されることを抑制できるので、差動アンプから出力される出力信号への影響を低減できる。
【0013】
[適用例4]圧電素子を有する液体容器と前記液体容器から供給される液体を噴射する液体噴射ヘッドとを設けたキャリッジを移動させるキャリッジ移動手段と、前記圧電素子に接続される、第1の電極と第2の電極とからそれぞれ入力される二つの入力信号の差分を増幅して出力信号を出力する差動アンプと、前記第1の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第1のスイッチと、前記第2の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第2のスイッチと、を備えた液体噴射装置における前記液体容器の液体残量を判定する液体残量判定方法であって、前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとが接続状態にあり、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとが非接続状態にあるとき、前記出力信号における電圧振幅を測定し、振幅測定値として出力する振幅測定工程と、前記振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定工程と、前記ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、前記キャリッジ移動手段によって、前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動工程と、前記圧電素子に対して駆動波形を出力する圧電素子駆動工程と、前記圧電素子駆動工程において前記圧電素子に対して前記駆動波形を出力した後に、前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとが接続状態にあり、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとが接続状態にあるとき、前記出力信号における周波数を測定し、周波数測定値として出力する周波数測定工程と、前記周波数測定値に基づいて、前記液体容器内の液体残量を判定する液体残量判定工程と、を含むことを特徴とする液体噴射装置における前記液体容器の液体残量を判定する液体残量判定方法。
【0014】
この構成によれば、振幅測定工程で測定された振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定工程と、ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、キャリッジ移動手段によって、キャリッジを移動させるキャリッジ移動工程、を含む。これにより、ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたときは、キャリッジに設けられた、圧電素子を有する液体容器を移動させて、圧電素子をノイズの発生源から遠くすることができる。従って、圧電素子に接続された第1の電極と第2の電極に混入するノイズを抑制できるので、差動アンプから出力される出力信号への影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液体噴射装置の概略構成を示した図。
【図2】制御部、回路基板、インクカートリッジの電気的な構成を示し、ノイズ判定期間におけるスイッチの状態を示す図。
【図3】周波数測定部と振幅測定部との電気的な構成を示す図。
【図4】(a)は、第1の電極に発生する信号波形を示す図、(b)は、第2の電極に発生する信号波形を示す図、(c)は、差動アンプの出力側に発生する信号波形を示す図。
【図5】制御部、回路基板、インクカートリッジの電気的な構成を示し、圧電素子駆動期間におけるスイッチの接続状態を示す図。
【図6】制御部、回路基板、インクカートリッジの電気的な構成を示し、液体残量判定期間におけるスイッチの接続状態を示す図。
【図7】第1実施形態における液体残量を判定する処理プログラムのフローチャート。
【図8】第2実施形態における液体残量を判定する処理プログラムのフローチャート。
【図9】第3実施形態における制御部、回路基板、インクカートリッジの電気的な構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は第1実施形態における液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以降はプリンターと称する)1の概略構成を示した図である。
【0017】
本実施形態におけるキャリッジ移動手段は、キャリッジ6を固定する駆動ベルト5、駆動ベルト5を回転駆動させるキャリッジモーター7、キャリッジモーター7によって駆動される駆動ローラー8とともに駆動ベルト5を張設するプーリー4、キャリッジ6の移動方向をガイドするガイド軸10を含んで構成される。
【0018】
キャリッジモーター7の駆動により、駆動ベルト5が回転駆動され、キャリッジ6が、ガイド軸10の軸方向に沿って図面左右方向に移動する。キャリッジモーター7は、パルス数に応じて回転軸の回転角度が変化するステッピングモーターであり、パルス数に応じてキャリッジ6の位置を決めることができる。
【0019】
紙送りモーター9の駆動により、プラテン11が回転し、記録媒体としての用紙Pが、キャリッジ6の移動方向と交わる方向に搬送される。
【0020】
ブラックインク,イエロー,マゼンタ,シアンのカラーインクがそれぞれ収容された、液体容器としての4個のインクカートリッジ50が、キャリッジ6にそれぞれ着脱可能に搭載される。
【0021】
キャリッジ6の用紙P側には、液体噴射ヘッド(不図示)が備えられる。液体噴射ヘッドには、インクカートリッジ50からインクが供給され、液体噴射ヘッドに設けられた複数のノズル(不図示)から液滴が噴射される。
【0022】
プリンター1は、コネクター2を介して、コンピューター200と接続される。コンピューター200からは文字データや画像データが制御部20に入力される。制御部20は、キャリッジモーター7、紙送りモーター9の駆動制御と、液体噴射ヘッドからの液滴の吐出制御とを行うことにより、コンピューター200から入力された文字データや画像データに基づいて用紙Pに画像を形成する。
【0023】
プリンター1には、ユーザーがプリンター1の各種設定を行ったり、プリンター1の各種設定状態を確認したりするための操作パネル3が備えられる。また、プリンター1には、液晶パネルなどによって構成される表示部12が備えられる。表示部12には、プリンター1の設定状態などが表示される。
【0024】
キャリッジ6には、インクカートリッジ50内の液体残量としてのインク残量を検出するための電子回路が設けられた回路基板30が備えられる。
【0025】
図2は、制御部20、回路基板30、インクカートリッジ50の電気的な構成を示す図である。ブラックインクを収容するインクカートリッジ50が、図1のキャリッジ6に装着されると、インクカートリッジ50に設けられた端子54,55と、回路基板30に設けられた端子31,32とがそれぞれ当接し、電気的に接続される。
【0026】
図示しないが、同様に、図1のイエロー,マゼンタ,シアンのカラーインクを収容するインクカートリッジ50がそれぞれキャリッジ6に装着されると、インクカートリッジ50に設けられた端子54,55と、回路基板30に設けられた端子31,32とがそれぞれ当接し、電気的に接続される。
【0027】
制御部20は、ブラックインク,イエロー,マゼンタ,シアンのカラーインクを収容する各インクカートリッジ50に対応する回路基板30にそれぞれ設けられた端子31,32と、チャンネルを切り替えることによって、各インクカートリッジ50内のインク残量を個別に検出することができる。
【0028】
制御部20は、液体噴射ヘッドから吐出されたインクの吐出量をドットカウント値として、ブラックインク,イエロー,マゼンタ,シアンの色別にカウントすることができる。
【0029】
インクカートリッジ50には、第1の電極51と第2の電極52に接続される圧電素子53が備えられる。第1の電極51は、インクカートリッジ50におけるインクを収容する液体収容部56に近接して備えられる。
【0030】
回路基板30には、一方が端子31に接続され、他方がコンデンサー37に接続される第1のスイッチとしてのスイッチ35が備えられる。コンデンサー37は、直流成分を伝達せずに、交流成分を伝達する。
【0031】
コンデンサー37に接続されるバンドパスフィルター(BPF)39は、所定の帯域の周波数を通過させる。所定の帯域の周波数は、圧電素子から発生した、残存するインクの量に応じて変化する逆起電力の、信号の周波数で定められる。例えば、インク有りの状態での逆起電力の信号周波数が約30KHz、インクなしの状態での逆起電力の信号周波数が約110KHzであれば、所定の帯域の周波数は、約30KHz〜約110KHzに定まり、所定の帯域外の周波数の信号は減衰し、除去される。BPF39と差動アンプ40の入力側とは、信号線41によって接続される。
【0032】
回路基板30には、一方が端子32に接続され、他方がコンデンサー36に接続される第2のスイッチとしてのスイッチ34が備えられる。コンデンサー36は、直流成分を伝達せずに、交流成分を伝達する。
【0033】
コンデンサー36に接続されるバンドパスフィルター(BPF)38は、所定の帯域の周波数を通過させる。所定の帯域の周波数は、BPF39と同一である。BPF38と差動アンプ40の入力側とは、信号線42によって接続される。BPF38,39のコンデンサー36,37側は、基準電圧V1が印加される。
【0034】
差動アンプ40の出力側と、周波数測定部44と振幅測定部46とは、信号線43によって接続される。周波数測定部44は、差動アンプ40から出力された出力信号における周波数を測定し、周波数測定値として出力する。
【0035】
振幅測定部46は、差動アンプ40から出力された出力信号における電圧振幅を測定し、振幅測定値を出力する。
【0036】
図3は、本実施形態における周波数測定部44と振幅測定部46との電気的な構成を示す図である。周波数測定部44には、信号線43と接続される電圧比較部441、計測カウンター443が備えられる。
【0037】
電圧比較部441の入力側における一方には信号線43が接続され、入力側における他方には、一方が接地された電源444が接続される。図2の差動アンプ40の出力電圧は、電圧比較部441により、電源444の電圧と比較され、電圧比較部441から信号線442を介して計測カウンター443にパルス信号が出力される。
【0038】
電圧比較部441から出力されたパルス信号は、計測カウンター443によってカウントされ、信号線45を介して、周波数測定値として図2の液体残量判定部22に出力される。
【0039】
振幅測定部46には、アナログデジタルコンバーター(ADC)461、移動平均処理部463が含まれる。
【0040】
ADC461は、信号線43を介して差動アンプ40から受信した出力信号における電圧振幅(peak to peak電圧)を測定し、信号線462を介して移動平均処理部463に振幅測定値を出力する。
【0041】
移動平均処理部463は、電圧振幅の平均処理を行い、電圧振幅の精度を高める。平均処理後の結果が、信号線47を介して、振幅測定値として図2のノイズ判定部23に出力される。
【0042】
図2の回路基板30には、一方が端子32と接続され、他方が制御部20に備えられた圧電素子駆動部21と接続されるスイッチ33が設けられる。
【0043】
制御部20には、圧電素子駆動部21、液体残量判定部22、ノイズ判定部23、キャリッジ移動部24が備えられる。圧電素子駆動部21は、電子回路から構成され、圧電素子53に駆動波形を出力して圧電素子53を駆動させる。制御部20には、CPU(不図示)、RAM(不図示)、ROM(不図示)が備えられる。液体残量判定部22、ノイズ判定部23、キャリッジ移動部24は、CPUがROMからプログラムをRAMに読み出して実行することによって機能する。
【0044】
図4(a)は、図2の第1の電極51に発生する信号波形を示す図である。図4(b)は、第2の電極52に発生する信号波形を示す図である。図4(c)は、差動アンプ40の出力側の信号線43に発生する信号波形を示す図である。
【0045】
図2には、図4のノイズ判定期間T1におけるスイッチ35,34,33の接続状態が示される。ノイズ判定期間T1においては、スイッチ35は、接続状態にあり、スイッチ34は、非接続状態にあり、スイッチ33は、非接続状態にある。そのため、第1の電極51と差動アンプ40とは接続状態にあり、第2の電極52と差動アンプ40とは非接続状態にあり、第2の電極52と圧電素子駆動部21とは非接続状態にある。
【0046】
プリンター1の外部における近傍に置かれた電子機器装置などがノイズ発生源となるとき、図2のインクカートリッジ50の液体収容部56に収容されたインクがアンテナとして機能し、ノイズN1を受信する場合がある。このとき、図4(a)に示すように、ノイズN1が第1の電極51に入力される。
【0047】
第1の電極51に入力されたノイズN1は、端子31、スイッチ35、コンデンサー37、BPF39、信号線41を介して差動アンプ40に入力される。ノイズN1は、差動アンプ40によって増幅され、図4(c)に示すように、ノイズ増幅波形N2が信号線43に出力される。
【0048】
図2の信号線43を介して入力されたノイズ増幅波形N2は、振幅測定部46によって測定され、振幅測定値としてノイズ判定部23に出力される。
【0049】
ノイズ判定部23は、ノイズ判定期間T1において、振幅測定部46によって測定された振幅測定値が所定の振幅測定値を超えたとき、ノイズが発生したとして判定する。
【0050】
図2のキャリッジ移動部24は、キャリッジ移動処理期間T2において、キャリッジ移動手段を用いて、キャリッジ6をガイド軸10の軸方向に沿って移動させる。キャリッジ移動部24は、1回のキャリッジ6の移動処理において、キャリッジモーター7に所定の数のパルス信号を送信し、キャリッジ6を所定の距離だけ移動させる。例えば、1回のキャリッジ6の移動処理により、キャリッジ6が5cm移動する。
【0051】
これにより、キャリッジ6に備えられたインクカートリッジ50がノイズ発生源から遠くなるので、図4(a)に示すように、キャリッジ移動処理期間T2においては、第1の電極51にノイズN1の発生がなくなる。
【0052】
図5には、図4の圧電素子駆動期間T3におけるスイッチ35,34,33の接続状態が示される。図5は、図2の制御部20、回路基板30、インクカートリッジ50の電気的な構成と同じであり、スイッチ35,34,33の接続状態が異なる。
【0053】
圧電素子駆動期間T3においては、スイッチ35は、非接続状態にあり、スイッチ34は、非接続状態にあり、スイッチ33は、接続状態にある。そのため、第1の電極51と差動アンプ40とは非接続状態にあり、第2の電極52と差動アンプ40とは非接続状態にあり、第2の電極52と圧電素子駆動部21とは接続状態にある。
【0054】
図5の圧電素子駆動部は、図4(b)の圧電素子駆動期間T3において、スイッチ33、端子32、端子55を介して第2の電極52に駆動波形Dを印加し、圧電素子53を駆動させる。
【0055】
図6には、図4の液体残量判定期間T4におけるスイッチ35,34,33の接続状態が示される。図6は、図2,図5の制御部20、回路基板30、インクカートリッジ50の電気的な構成と同じであり、スイッチ35,34,33の接続状態が異なる。
【0056】
液体残量判定期間T4においては、スイッチ35は、接続状態にあり、スイッチ34は、接続状態にあり、スイッチ33は、非接続状態にある。そのため、第1の電極51と差動アンプ40とは接続状態にあり、第2の電極52と差動アンプ40とは接続状態にあり、第2の電極52と圧電素子駆動部21とは非接続状態にある。
【0057】
図6の液体残量判定部22は、液体残量判定期間T4において、信号線45を介して周波数測定部44から出力された周波数測定値に基づいて、インク残量を判定する。
【0058】
液体残量判定期間T4においては、第1の電極51には、図4(a)に示すように、戻り波形W1が生じ、第2の電極52には、図4(b)に示すように、戻り波形W2が生じる。戻り波形W1と戻り波形W2とは、互いに逆相となる。
【0059】
このとき、差動アンプ40の信号線43には、図4(c)に示すように、差動増幅波形W3が出力される。
【0060】
図6の周波数測定部44は、差動増幅波形W3を測定し、周波数測定値として出力し、液体残量判定部22に出力する。
【0061】
液体残量判定部22は、周波数測定部44から受信した周波数測定値に基づいて、インクカートリッジ50内のインク残量を判定する。例えば、周波数測定値が約30KHzであれば、インク有りとして判定し、周波数測定値が約110KHzであれば、インク無しとして判定する。
【0062】
次に、液体残量判定方法について、液体残量を判定する処理プログラムのフローチャートを用いて説明する。図7は、液体残量を判定する処理プログラムのフローチャートである。
【0063】
ステップS100では、ノイズ判定処理の回数Kを「1」の値に設定する。ステップS110では、ノイズ判定部23は、図4のノイズ判定期間T1において、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を行う。ノイズ判定期間T1において、図2のノイズ判定部23は、スイッチ35を接続状態とし、スイッチ34を非接続状態とし、スイッチ33を非接続状態として設定する。これにより、第1の電極51と差動アンプ40の信号線41と接続される入力側とが導通され、第2の電極52と差動アンプ40の信号線42と接続される入力側とが非導通となる。
【0064】
ステップS120では、ノイズ判定部23は、振幅測定部46から出力される振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したとして判定されたときは(Yes)、ステップS150に進む。ノイズが発生しなかったとして判定されたときは(No)、ステップS130に進む。
【0065】
ステップS130では、図4の圧電素子駆動期間T3における圧電素子駆動処理が行われる。図5の圧電素子駆動部21は、スイッチ35を非接続状態とし、スイッチ34を非接続状態とし、スイッチ33を接続状態として設定する。これにより、圧電素子駆動部21と第2の電極52とが接続され、第2の電極52に図4(b)の駆動波形Dが印加され、圧電素子53が駆動される。
【0066】
ステップS140では、図4の液体残量判定期間T4における液体残量判定処理が行われる。図6の液体残量判定部22は、スイッチ33を非接続状態とし、スイッチ34を接続状態とし、スイッチ35を接続状態として設定する。これにより、第1の電極51と差動アンプ40の一方の入力側とが導通され、第2の電極52と差動アンプ40の他方の入力側とが導通される。
【0067】
液体残量判定部22は、周波数測定部44から出力される周波数測定値に基づいて、インクカートリッジ50の液体収容部56内のインク残量を判定する。
【0068】
ステップS150では、ノイズ判定部23は、ノイズ判定処理の回数Kは所定の回数であるか否かを判定する。所定の回数を、例えば2回として設定すると、ノイズ判定処理の回数Kが1回目であるときは(No)、ステップS170に進む。
【0069】
ステップS170では、図4のキャリッジ移動処理期間T2におけるキャリッジ6の一方方向への移動処理が行われる。図2のキャリッジ移動部24は、キャリッジモーター7に所定の数のパルス信号を送信し、キャリッジ6を移動させる。
【0070】
ステップS180では、ノイズ判定処理の回数Kに「1」の値が加算され、回数Kの値は「2」になり、ステップS110に戻る。上述したように、ステップS110でノイズ判定処理が行われ、ステップS120でノイズが発生しなかったと判定されたときは(No)、ステップS130での圧電素子駆動処理が行われ、ステップS140での液体残量判定処理が行われる。
【0071】
ステップS120で、ノイズ判定部23は、再びノイズが発生したとして判定されたときは(Yes)、ステップS150に進む。ステップS150では、ノイズ判定処理の回数Kが所定の回数である2回目に一致するので(Yes)、ステップS160に進む。
【0072】
ステップS160では、液体残量判定部22は、インク残量の判定が不能であることをプリンター1に備えられた表示部12に表示することにより、使用者に通知する。このような場合、使用者は、ノイズの発生源となる電子機器装置を移動させたり、電子機器装置の電源スイッチを遮断したりするなどの対応を行う。
【0073】
本実施形態では、ステップS150で、所定のノイズ判定処理の回数を2回として設定して説明したが、3回以上に設定してもよい。これにより、さらに、キャリッジ6をノイズ発生源から遠く離れた位置に移動させることができる。
【0074】
本実施形態では、ステップS150でノイズ判定処理の回数Kが所定の回数であったとき、ステップS160に進み、判定不能を通知したが、ノイズ判定処理の回数Kが所定の回数であるときノイズN1が検出された場合には、ステップS160に進む前に、ノイズ判定処理の回数Kにおけるキャリッジ6の位置で圧電素子駆動処理を行い、次に液体残量判定処理を行うようにしてもよい。
【0075】
そのようなノイズ判定処理の回数Kが所定の回数であるとき、「インク有り」または「インク無し」としての液体残量判定処理の結果と、制御部20によってカウントされたドットカウント値に基づいて算出された「インク有り」または「インク無し」としての結果と比較を行う。
【0076】
液体残量判定部22の結果とドットカウント値より算出された結果とが一致する場合には、ノイズN1の影響はあるが、誤検出はしておらず、液体残量判定が可能と判断する。液体残量判定部22の結果とドットカウント値より算出される結果が一致しない場合には、誤検出している可能性があるため、ステップS160に進む。液体残量判定処理の結果、「インク有り」でも、「インク無し」でもない場合(例えば、逆起電力周波数が30KHz、110KHz以外)には誤検出している可能性があるため、ステップS160に進み、判定不能を通知する。
【0077】
以上、本実施形態で説明した液体噴射装置としてのプリンター1は、圧電素子53を有する液体容器としてのインクカートリッジ50とインクカートリッジ50から供給される液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッドとを設けたキャリッジ6を移動させるキャリッジ移動手段と、圧電素子53に接続される、第1の電極51と第2の電極52とからそれぞれ入力される二つの入力信号の差分を増幅して出力信号を出力する差動アンプ40と、差動アンプ40からの出力信号における周波数を測定し、周波数測定値として出力する周波数測定部44と、差動アンプ40からの出力信号における電圧振幅を測定し、振幅測定値として出力する振幅測定部46と、第1の電極51と差動アンプ40との接続状態を切り替える第1のスイッチとしてのスイッチ35と、第2の電極52と差動アンプ40との接続状態を切り替える第2のスイッチとしてのスイッチ34と、圧電素子53に対して駆動波形Dを出力する圧電素子駆動部21と、圧電素子駆動部21が圧電素子53に対して駆動波形Dを出力した後に、スイッチ35により第1の電極51と差動アンプ40とを接続状態とし、スイッチ34により第2の電極52と差動アンプ40とを接続状態とし、周波数測定値に基づいて、インクカートリッジ50内の液体残量としてのインク残量を判定する液体残量判定部22と、スイッチ35により第1の電極51と差動アンプ40とを接続状態とし、スイッチ34により第2の電極52と差動アンプ40とを非接続状態とし、振幅測定部46から出力された振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定部23と、ノイズ判定部23によるノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、キャリッジ移動手段によって、キャリッジ6を移動させるキャリッジ移動部24と、を備える。
【0078】
この構成によれば、ノイズ判定部23によるノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、キャリッジ移動部24は、キャリッジ6に設けられた、圧電素子53を有するインクカートリッジ50を移動させて、圧電素子53をノイズの発生源から遠くすることができる。従って、圧電素子53に接続された、第1の電極51と第2の電極52に混入するノイズを抑制できるので、差動アンプ40から出力される出力信号への影響を低減することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態のプリンター1におけるインク残量の判定方法は、圧電素子53を有する液体容器としてのインクカートリッジ50とインクカートリッジ50から供給される液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッドとを設けたキャリッジ6を移動させるキャリッジ移動手段と、圧電素子53に接続される、第1の電極51と第2の電極52とからそれぞれ入力される二つの入力信号の差分を増幅して出力信号を出力する差動アンプ40と、第1の電極51と差動アンプ40との接続状態を切り替える第1のスイッチとしてのスイッチ35と、第2の電極52と差動アンプ40との接続状態を切り替える第2のスイッチとしてのスイッチ34と、を備えたプリンター1におけるインクカートリッジ50のインク残量を判定する液体残量判定方法であって、スイッチ35により第1の電極51と差動アンプ40とが接続状態にあり、スイッチ34により第2の電極52と差動アンプ40とが非接続状態にあるとき、差動アンプ40からの出力信号における電圧振幅を測定し、振幅測定値として出力する振幅測定工程と、出力された振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定工程と、ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、キャリッジ移動手段によって、キャリッジ6を移動させるキャリッジ移動工程と、圧電素子53に対して駆動波形Dを出力する圧電素子駆動工程と、圧電素子駆動工程において圧電素子53に対して駆動波形Dを出力した後に、スイッチ35により第1の電極51と差動アンプ40とが接続状態にあり、スイッチ34により第2の電極52と差動アンプ40とが接続状態にあるとき、差動アンプ40からの出力信号における周波数を測定し、周波数測定値として出力する周波数測定工程と、出力された周波数測定値に基づいて、インクカートリッジ50内のインク残量を判定する液体残量判定工程と、を含む。
【0080】
この構成によれば、ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、キャリッジ6に設けられた、圧電素子53を有するインクカートリッジ50をキャリッジ移動工程によって移動させ、圧電素子53をノイズの発生源から遠くすることができる。従って、圧電素子53と接続する、第1の電極51と第2の電極52に混入するノイズを抑制できるので、差動アンプ40から出力される出力信号への影響を低減することが可能となる。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態では、前回測定した振幅測定値と比較することによって、キャリッジ6の移動方向を変える方法について説明する。図8は、第2実施形態における液体残量を判定する処理プログラムのフローチャートである。
【0082】
ステップS200では、ノイズ判定処理の回数Kを「1」の値に設定する。ステップS210では、図4のノイズ判定期間T1における1回目のノイズ判定処理が1回目の判定位置で行われる。ノイズ判定期間T1において、図2のノイズ判定部23は、スイッチ35を接続状態とし、スイッチ34を非接続状態とし、スイッチ33を非接続状態として設定する。これにより、第1の電極51と、差動アンプ40の信号線41に接続される入力側とが導通され、第2の電極52と差動アンプ40の信号線42に接続される入力側とが非導通となる。
【0083】
ステップS220では、ノイズ判定部23は、振幅測定部46から出力される振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したとして判定されたときは(Yes)、ステップS250に進み、ノイズが発生しなかったとして判定されたときは(No)、ステップS230に進む。
【0084】
ステップS230では、図4の圧電素子駆動期間T3における圧電素子駆動処理が行われる。図5の圧電素子駆動部21は、スイッチ35を非接続状態とし、スイッチ34を非接続状態とし、スイッチ33を接続状態として設定する。これにより、圧電素子駆動部21と第2の電極52とが接続され、第2の電極52に図4(b)の駆動波形Dが印加され、圧電素子53が駆動される。
【0085】
ステップS240では、図4の液体残量判定期間T4における液体残量判定処理が行われる。図6の液体残量判定部22は、スイッチ35を接続状態とし、スイッチ34を接続状態とし、スイッチ33を非接続状態として設定する。これにより、第1の電極51と差動アンプ40の信号線41に接続される入力側とが導通され、第2の電極52と差動アンプ40の信号線42に接続される入力側とが導通される。
【0086】
液体残量判定部22は、周波数測定部44から出力される周波数測定値に基づいて、インクカートリッジ50の液体収容部56に収容されるインク残量を判定する。
【0087】
ステップS250では、ノイズ判定部23は、ノイズ判定処理の回数Kが3回目であるか否かを判定する。ノイズ判定処理の回数Kが1回目であるので(No)、ステップS270に進む。
【0088】
ステップS270では、ノイズ判定部23は、ノイズ判定処理の回数Kが2回目であるか否かを判定する。ノイズ判定処理の回数Kが1回目であるので(No)、ステップS280に進む。
【0089】
ステップS280では、ノイズ判定部23は、キャリッジ6が1回目の判定処理の位置で振幅測定部46によって測定された、差動アンプ40から出力された出力信号における振幅測定値を取得し、1回目の判定処理における振幅測定値として制御部20のRAMに記憶させる。
【0090】
ステップS290では、図4のキャリッジ移動処理期間T2において、図2のキャリッジ移動部24は、キャリッジモーター7に所定の数のパルス信号を送信し、キャリッジ6を一方方向へ移動させる。ステップS300では、ノイズ判定処理の回数Kに「1」の値を加算し、ステップS210に戻る。ステップS210では、回数Kが2回目となるノイズ判定処理が行われる。
【0091】
ステップS220では、上述したように、振幅測定部46から出力される振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したとして判定されたときは(Yes)、ステップS250に進む。ノイズが発生しなかったとして判定されたときは(No)、ステップS230に進む。
【0092】
ステップS250では、ノイズ判定処理の回数Kが2回目であるので(No)、ステップS270に進む。ステップS270では、ノイズ判定処理の回数Kが2回目であるので(Yes)、ステップS310に進む。
【0093】
ステップS310では、ノイズ判定部23は、キャリッジ6が2回目の判定処理の位置で振幅測定部46によって測定された、差動アンプ40から出力された出力信号における振幅測定値を取得し、2回目の判定処理における振幅測定値として制御部20のRAMに記憶させる。
【0094】
ステップS320では、ノイズ判定部23は、2回目のノイズ判定処理における振幅測定値は、1回目のノイズ判定処理における振幅測定値を超えるか否かを判定する。2回目のノイズ判定処理における振幅測定値が、1回目のノイズ判定処理における振幅測定値を超えるときは(Yes)、ステップS340に進み、超えないときは(No)、ステップS330に進む。
【0095】
ステップS330では、キャリッジ移動部24は、キャリッジモーター7に所定の数のパルス信号を送信し、キャリッジ6を、さらに一方方向へ移動させ、ステップS300に進む。
【0096】
ステップS340では、図2のキャリッジ移動部24は、キャリッジモーター7に所定の数のパルス信号を送信し、キャリッジモーター7をステップS330における回転方向とは反対の回転方向に駆動回転させ、キャリッジ6を、1回目の判定処理を行った判定位置を越える反対方向へ移動させ、ステップS300に進む。
【0097】
ステップS300では、ノイズ判定処理の回数Kは「1」の値が加算されて回数Kの値は「3」となり、ステップS210に戻る。ステップS210では、3回目のノイズ判定処理が行われる。
【0098】
ステップS220では、ノイズ判定部23は、上述したように、振幅測定部46から出力される振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したとして判定されたときは(Yes)、ステップS250に進む。ノイズが発生しなかったとして判定されたときは(No)、ステップS230において圧電素子駆動処理を行い、ステップS240において液体残量判定処理を行う。
【0099】
ステップS250では、ノイズ判定処理の回数Kが3回目であるので(Yes)、ステップS260に進む。ステップS260では、液体残量判定部22は、インク残量の判定が不能であることをプリンター1に備えられた表示部12に表示することにより、使用者に通知する。このような場合、使用者は、ノイズの発生源となる電子機器装置を移動させたり、電子機器装置の電源スイッチを遮断したりするなどの対応を行う。
【0100】
以上、説明した本実施形態におけるプリンターは、1回目のノイズ判定処理を行った後、キャリッジ移動手段によってインクカートリッジ50を一方方向に移動させ、2回目のノイズ判定処理を行ったとき、2回目のノイズ判定処理における振幅測定値が、1回目のノイズ判定処理における振幅測定値を超える場合、キャリッジ移動部24は、キャリッジ移動手段によってインクカートリッジ50を反対方向の1回目のノイズ判定処理を行った位置を越える位置に移動させ、3回目のノイズ判定処理を行う。
【0101】
この構成によれば、2回目のノイズ判定処理の位置における振幅測定値が、1回目のノイズ判定処理の位置における振幅測定値を超えたときは、圧電素子53がノイズ発生源に近くなったとして判定できる。そこで、キャリッジ移動部24が、キャリッジ移動手段によってインクカートリッジ50を反対方向の1回目のノイズ判定処理の位置を越える位置に移動させ、3回目のノイズ判定処理を行えば、圧電素子53をノイズ発生源から遠くすることができる。従って、圧電素子53と接続する、第1の電極51と第2の電極52に混入するノイズを抑制できるので、3回目のノイズ判定処理では、差動アンプ40から出力される出力信号への影響を低減することが可能となる。
【0102】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1の電極51と差動アンプ40との間に、圧電素子53と略同じ静電容量のコンデンサーをさらに備えた場合について説明する。
【0103】
図9は、第3実施形態における制御部、回路基板、インクカートリッジの電気的な構成を示した図である。第1実施形態、第2実施形態と同様に、第1の電極51は、インクカートリッジ50に収容されるインクに近接して備えられている。
【0104】
第1の電極51と差動アンプ40との間に、圧電素子53と略同じ静電容量のコンデンサー60を備える。本実施形態では、回路基板30において、スイッチ35とコンデンサー37との間に、圧電素子53と略同じ静電容量のコンデンサー60を備える。
【0105】
この構成によれば、第1の電極51から差動アンプ40に入力されるノイズの経路と、第1の電極51から圧電素子53を介して第2の電極52から差動アンプ40に入力されるノイズの経路と、の二つの経路における静電容量分の差異を小さくすることができる。そのため、第1の電極51から入力されるノイズと、第2の電極52から入力されるノイズとの位相のずれを小さくすることができる。これにより、二つのノイズの差分が差動アンプによって増幅されることを抑制できるので、差動アンプから出力される出力信号としての差動増幅波形W3への影響を低減することが可能となる。
【0106】
上述した第1実施形態〜第3実施形態においては、液体としてのインクを収容する液体容器を装着し、インクを噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置について説明したが、インク以外の液体を収容する液体容器を装着し、液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用することができる。その他の液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた液体噴射装置等が挙げられる。
【符号の説明】
【0107】
1…インクジェット式プリンター、6…キャリッジ、21…圧電素子駆動部、22…液体残量判定部、23…ノイズ判定部、24…キャリッジ移動部、33,34,35…スイッチ、36,37,60…コンデンサー、38,39…BPF、40…差動アンプ、44…周波数測定部、46…振幅測定部、50…インクカートリッジ、51…第1の電極、52…第2の電極、53…圧電素子、441…電圧比較部、443…計測カウンター、444…電源、461…アナログデジタルコンバーター(ADC)、463…移動平均処理部、K…ノイズ判定処理の回数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有する液体容器と前記液体容器から供給される液体を噴射する液体噴射ヘッドとを設けたキャリッジを移動させるキャリッジ移動手段と、
前記圧電素子に接続される、第1の電極と第2の電極とからそれぞれ入力される二つの入力信号の差分を増幅して出力信号を出力する差動アンプと、
前記出力信号における周波数を測定し、周波数測定値として出力する周波数測定部と、
前記出力信号における電圧振幅を測定し、振幅測定値として出力する振幅測定部と、
前記第1の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第1のスイッチと、
前記第2の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第2のスイッチと、
前記圧電素子に対して駆動波形を出力する圧電素子駆動部と、
前記圧電素子駆動部が前記圧電素子に対して前記駆動波形を出力した後に、前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとを接続状態とし、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとを接続状態とし、前記周波数測定値に基づいて、前記液体容器内の液体残量を判定する液体残量判定部と、
前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとを接続状態とし、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとを非接続状態とし、前記振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定部と、
前記ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、前記キャリッジ移動手段によって、前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動部と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
1回目の前記ノイズ判定処理を行った後、前記キャリッジ移動手段によって前記液体容器を一方方向に移動させ、2回目の前記ノイズ判定処理を行ったとき、2回目の前記ノイズ判定処理における前記振幅測定値が、1回目の前記ノイズ判定処理における前記振幅測定値を超える場合、前記キャリッジ移動部は、前記キャリッジ移動手段によって前記液体容器を反対方向の1回目の前記ノイズ判定処理を行った位置を越える位置に移動させ、3回目の前記ノイズ判定処理を行うことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置であって、
前記第1の電極は、前記液体容器に収容される液体に近接し、前記第1の電極と前記差動アンプとの間に、前記圧電素子と略同じ静電容量のコンデンサーを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
圧電素子を有する液体容器と前記液体容器から供給される液体を噴射する液体噴射ヘッドとを設けたキャリッジを移動させるキャリッジ移動手段と、前記圧電素子に接続される、第1の電極と第2の電極とからそれぞれ入力される二つの入力信号の差分を増幅して出力信号を出力する差動アンプと、前記第1の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第1のスイッチと、前記第2の電極と前記差動アンプとの接続状態を切り替える第2のスイッチと、を備えた液体噴射装置における前記液体容器の液体残量を判定する液体残量判定方法であって、
前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとが接続状態にあり、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとが非接続状態にあるとき、前記出力信号における電圧振幅を測定し、振幅測定値として出力する振幅測定工程と、
前記振幅測定値に基づいて、ノイズが発生したか否かのノイズ判定処理を実行するノイズ判定工程と、
前記ノイズ判定処理においてノイズが発生したとして判定されたとき、前記キャリッジ移動手段によって、前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動工程と、
前記圧電素子に対して駆動波形を出力する圧電素子駆動工程と、
前記圧電素子駆動工程において前記圧電素子に対して前記駆動波形を出力した後に、前記第1のスイッチにより前記第1の電極と前記差動アンプとが接続状態にあり、前記第2のスイッチにより前記第2の電極と前記差動アンプとが接続状態にあるとき、前記出力信号における周波数を測定し、周波数測定値として出力する周波数測定工程と、
前記周波数測定値に基づいて、前記液体容器内の液体残量を判定する液体残量判定工程と、を含むことを特徴とする液体噴射装置における前記液体容器の液体残量を判定する液体残量判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−255585(P2011−255585A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131737(P2010−131737)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】