説明

液体噴射装置

【課題】大型化が抑えられた、キャップを備える液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】搬送される記録媒体Pに対して液体を噴射し記録媒体Pに記録を行う記録ヘッド5と、記録ヘッド5の記録動作停止時に記録ヘッド5のノズル面12を覆うキャップ15とを有するインクジェットプリンター1において、記録ヘッド5およびキャップ15は、記録媒体Pが搬送される上側面10に対して、記録媒体Pが配置される記録媒体配置側に配置され、記録ヘッド5は、記録媒体配置側において、ノズル面12が記録媒体Pに対して対向させられ記録媒体Pに記録を行う記録動作位置Rと、記録動作停止時にキャップ15により記録ヘッド5が覆われる記録動作停止位置Sとに移動し、キャップ15は、上側面10側において、非キャップ位置Mと、記録動作停止位置Sに移動した記録ヘッド5のノズル面12を覆うキャップ位置Nとに移動することとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一種であるインクジェットプリンターには、記録動作を行っていない期間、記録ヘッドのノズル面をキャップで覆うことでノズル内のインクの蒸発を防いだり、あるいは、ノズル面をキャップで覆った状態でインクを噴射しノズル内の増粘インクの排出を行うメンテナンス動作を行うことができる構成のものがある。上記構成のインクジェットプリンターでは、キャップは、例えば、特許文献1、2に開示されるように、記録ヘッドに対して、記録用紙の搬送面を挟む位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−59559号公報
【特許文献2】特開2004−277023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、記録用紙の搬送方向に沿う方向に、記録ヘッドのノズル面とキャップとが対向することができる位置を確保する必要があることから、勢いインクジェットプリンターが大型化してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、大型化が抑えられた、キャップを備える液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、搬送される記録媒体に対して液体を噴射し記録媒体に記録を行う液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドの記録動作停止時に液体噴射ヘッドのノズル面を覆うキャップとを有する液体噴射装置において、液体噴射ヘッドおよびキャップは、記録媒体が搬送される搬送面に対して、記録媒体が配置される記録媒体配置側に配置され、液体噴射ヘッドは、記録媒体配置側において、ノズル面が記録媒体に対して対向させられ、記録媒体に記録を行う記録動作位置と、記録動作停止時にキャップにより記録ヘッドが覆われる記録動作停止位置とに移動し、キャップは、搬送面側において、非キャップ位置と、記録動作停止位置に移動した液体噴射ヘッドのノズル面を覆うキャップ位置とに移動することとする。
【0007】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、記録動作停止位置を、ノズル面が搬送面に対向していない位置であることとしてもよい。
【0008】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、記録媒体の搬送方向に直交し、かつ、搬送面に沿った方向に配置される回転軸の周りに液体噴射ヘッドを回転させる回転手段により、液体噴射ヘッドを記録動作停止位置に移動させることとしてもよい。
【0009】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、回転軸は、搬送面に直交し回転軸を含む面よりも、液体噴射ヘッドの回転方向の後方に在る液体噴射ヘッドの構成部分における回転軌跡の最大半径が、回転軸と搬送面との間の距離よりも短くなる位置に配置されていることとしてもよい。
【0010】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、回転軸が、液体噴射ヘッドの搬送面に直交する方向における幅の中央に対して、搬送面から離れる方向に偏倚した位置に配置されていることとしてもよい。
【0011】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、キャップが、キャップ位置に移動したときに、キャップの下側となる位置に液体を受ける皿部を設けることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンターの全体的な概略構成を示す概略構成斜視図である。
【図2】図1に示す記録ヘッドが記録動作停止位置に配置される状態を示す図である。
【図3】図1に示すキャップの構成を示す斜視図である。
【図4】図2に示すキャップがキャップ位置に配置される状態を示す図である。
【図5】図1に示す記録ヘッドの回転軸を中心とする回転の状態を示す図である。
【図6】図1に示すプリンターの第1の変形例を示す図である。
【図7】図1に示すプリンターの第2の変形例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態の他の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0014】
(インクジェットプリンター1の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る液体噴射装置としてのインクジェットプリンター(以下、単にプリンターと言う。)1の全体的な概略の構成を示す斜視図である。プリンター1は、ヘッドユニット2と、メンテナンスユニット3と、記録媒体としての記録用紙Pを搬送する搬送機構4等を有する。なお、以下の説明において、図中、矢印Xで示す方向を前方(前側)、その反対方向を後方(後側)とし、矢印Yで示す方向を上方(上側)、その反対方向を下方(下側)として説明する。また、前方から後方を見て、左手側を左方(左側)、右手側を右方(右側)とする。
【0015】
(ヘッドユニット2の構成)
ヘッドユニット2は、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド5と、回転手段としての回転駆動機構6等を有している。本実施の形態では、記録ヘッド5は、記録用紙Pの幅方向(搬送方向と直交する方向)に亘って一度に記録を行うことができる、いわゆるライン型ヘッドとなっている。また、ヘッドユニット2は、回転駆動機構6により、記録ヘッド5を、回転軸7を回転中心として回転させることで、図1に示す記録動作位置Rと図2に示す記録動作停止位置Sとに移動することができるように構成されている。なお、記録動作位置Rは、記録ヘッド5が記録用紙Pに対して液体としてのインクを噴射し、記録を行うことができる位置である。また、記録動作停止位置Sは、例えば、一連の記録動作を終了した後、ホストコンピュタ等から次の記録動作の指令が来るまでの間、あるいはノズル内の増粘インクの排出を行うメンテナンス動作を行う際等、記録動作を行わない記録動作停止時に、記録ヘッド5が配置される位置である。
【0016】
ラインヘッドとして構成される記録ヘッド5は、図2に示すように、記録ヘッド5の左右方向の幅よりも小さな幅の小記録ヘッド5Sが、隣接する小記録ヘッド5S同士が千鳥状の配列となるように、左右方向に複数配置された構成となっている。本実施の形態では、6つの小記録ヘッド5Sを並設し、記録用紙Pの幅方向(左右方向)を一度に記録できるように構成されている。
【0017】
なお、各小記録ヘッド5Sは、図示を省略するベースプレートにより各小記録ヘッド5Sの相互間の相対位置が所定の関係になるように位置決めされている。そして、このベースプレートが筐体8に対して位置決めされた状態で取り付けられる。また、筐体8はプリンター1の図示を省略するフレーム体の所定位置に取り付けられている。したがって、記録ヘッド5はプリンター1の所定の位置に取り付けられていることになる。
【0018】
回転軸7は、記録用紙Pの搬送方向に直交し、かつ、記録用紙Pを搬送する搬送ベルト9の上側面10に対して平行に配置されている。そして、回転駆動機構6は、図示を省略するモーターと、このモーターと回転軸7とをつなぐギア列11等を有し、モーターの回転方向と回転量に応じて、記録ヘッド5を図1に示す記録動作位置Rと図2に示す記録動作停止位置Sとに移動することができるように構成されている。記録動作位置Rに配置される記録ヘッド5は、ノズル面12が上側面10に対して、所定の間隔(ペーパーギャップPG/図5参照)を隔てて平行に対向し、上側面10を搬送される記録用紙Pに対してもノズル面12が平行に対向することができる位置となっている。これに対し、記録動作停止位置Sは、記録動作停止時に記録ヘッド5が配置される位置であり、ノズル面12が前方に向くように記録動作位置Rから90度回転した位置となっている。つまり、記録動作停止位置Sにおいて、ノズル面12は、上側面10に対して90度の角度を成す位置に配置される。
【0019】
なお、ヘッドユニット2には、位置決め片部13および位置決め片部14が備えられている。位置決め片部13は、記録ヘッド5を記録動作位置Rに位置決めするための位置決め手段であり、また、位置決め片部14は、記録ヘッド5を記録動作停止位置Sに位置決めするための位置決め手段である。したがって、記録動作位置Rにおいて、記録ヘッド5は、位置決め片部13により、記録ヘッド5が記録用紙Pに対して液体としてのインクを噴射し、記録を行うことができる位置に位置決めされている。また、記録動作停止位置Sにおいて、記録ヘッド5は、位置決め片部14により、ノズル面12が前方に向くように記録動作位置Rから90度回転した位置に位置決めされている。位置決め片部13,14は、例えば、筐体8に対して固定された状態で設けられる。
【0020】
(メンテナンスユニット3の構成)
メンテナンスユニット3は、キャップ15と、キャップ15を支持するキャップ支持部16と、キャップ支持部16を前後方向に移動させる移動機構17等を有している。メンテナンスユニット3は、ヘッドユニット2の前方に配置されていて、移動機構17により、キャップ15を、図1に示す非キャップ位置Mと、図4に示すキャップ位置Nとに移動することができるように構成されている。なお、非キャップ位置Mは、記録ヘッド5が記録動作位置Rに配置されているときに、キャップ15が配置される位置であり、記録ヘッド5の記録動作の妨げにならない位置である。また、キャップ位置Nは、記録動作停止位置Sに移動した記録ヘッド5のノズル面12をキャップ15により覆うことができる位置である。
【0021】
キャップ支持部16の後側には、図3に示すように、複数のキャップ15が取り付けられている。各キャップ15は、各小記録ヘッド5S毎に備えられている。そして、記録動作停止位置Sに配置される記録ヘッド5に向けて、移動機構17によりキャップ支持部16を移動させたときに、各小記録ヘッド5Sのノズル面12が、それぞれ、キャップ15により覆われるようにキャップ15の取り付け位置が設定されている。
【0022】
キャップ支持部16の下端部には、液体受け部としてのインク受け部18が取り付けられている。このインク受け部18は、左右方向に配置される全てのキャップ15の下方に位置するように左右方向に亘って設けられ、キャップ15内に溜まったインクが下側に垂れ落ちたときに、搬送ベルト9や記録用紙Pに垂れ落ちないように受け止めることができるようになっている。
【0023】
なお、メンテナンスユニット3は、ヘッドユニット2に対して非キャップ位置Mとキャップ位置Nとに移動できるように、筐体8に対して保持されている。したがって、ヘッドユニット2とメンテナンスユニット3は共に筐体8に保持され一つのユニット19として構成されている。
【0024】
(搬送機構4の構成)
搬送機構4は、搬送ベルト9と、この搬送ベルト9を張設する一対のローラー20A,20Bと、ローラー20Aを回転させる搬送モーター21等を有している。搬送ベルト9は、一対のローラー20A,20Bに架け渡される無端ベルトであり、搬送モーター21によって回転させられるローラー20Aの回転を受けて回転移動する。上述のヘッドユニット2およびメンテナンスユニット3は、ローラー20A,20Bに架け渡された搬送ベルト9の上方側に配置される。そして、搬送ベルト9は、ヘッドユニット2およびメンテナンスユニット3に対向する面となる上側面10が、後方から前方に向かって移動するように、搬送モーター21により回転させられる。したがって、上側面10上に後方から供給された記録用紙Pは、搬送ベルト9の回転により前方に向けて搬送される。上述のように、搬送ベルト9の上側面10は、記録用紙Pが搬送される搬送面であり、ヘッドユニット2およびメンテナンスユニット3は、搬送面である上側面10に対して、記録用紙Pが配置される側に配置されていることになる。
【0025】
(キャッピング動作)
次に、上述のように構成されるプリンター1において、記録ヘッド5の記録動作停止時に記録ヘッド5のノズル面12をキャップ15により覆う、いわゆるキャッピング動作について説明する。
【0026】
(記録ヘッド5の動作)
記録動作停止時には、記録ヘッド5は、回転モーター(図示省略)の駆動によりギア列11を介して、記録動作位置Rから記録動作停止位置Sに回転軸7を回転中心に回転移動させられる。記録ヘッド5の記録動作停止位置Sは、プリンター1を右方から見たときに、記録動作位置Rから時計回りに90度回転した位置である。記録ヘッド5は、記録動作位置Rにおいて、ノズル面12が下方に向けられ上側面10に平行に対向するように配置されている。したがって、記録動作停止位置Sに配置される記録ヘッド5は、ノズル面12が上側面10に対して90度の角度を成す配置になっている。
【0027】
(回転軸7の配置位置)
ところで、回転軸7は、図5を参照して以下に説明するように、記録ヘッド5を記録動作位置Rから記録動作停止位置Sに回転移動させる際に、記録ヘッド5が上側面10に干渉しない位置に配置されている。図5に示すように、上側面10に直交し回転軸7の回転中心を含む仮想平面PLを設定し、記録ヘッド5を回転軸7を中心に回転すると、仮想平面PLより後方に在る記録ヘッド5の構成部分5Pは、構成部分5Pの各位置ごとにそれぞれ所定の回転軌跡で移動する。例えば、記録ヘッド5の後側の下側の縁部5Xの回転軌跡は回転軌跡5Gとなる。また、記録ヘッド5の後側の上側の縁部5Yの回転軌跡は回転軌跡5Hとなる。
【0028】
このように構成部分5Pの各部分は、縁部5X、縁部5Yのように、それぞれの回転軌跡で移動する。そして、回転軸7は、回転軸7と上側面10との間の距離Dが、構成部分5Pの各部分の回転軌跡の半径の中で一番大きな半径よりも離れた位置に設定されている。回転軸7を上記の位置に配置することで、記録ヘッド5を記録動作位置Rから記録動作停止位置Sに回転させたときに、記録ヘッド5が上側面10に干渉することを防ぐことができる。
【0029】
記録ヘッド5を回転させたとき、上側面との干渉の問題が発生するのは、仮想平面PLよりも後ろ側の部分となる構成部分5Pである。すなわち、仮想平面PLよりも前側の部分については、記録ヘッド5の回転に伴う上側面10との干渉の問題がない。したがって、構成部分5Pの各部分についての回転軸7に対する回転半径の中で最も大きな半径が距離Dよりも小さければ記録ヘッド5の回転に伴う上側面10との干渉の問題が発生しない。このため、例えば、構成部分5Pの各部分についての回転軸7に対する回転半径を距離Dよりも小さくすることで、ノズル面12と上側面10との距離(ペーパーギャップPG)を短く設定することができる。
【0030】
また、回転軸7は、記録ヘッド5の上側面10に直交する方向における厚さBの中央Cよりも、上側面10から離れる方向に偏倚した位置に配置されている。このように回転軸7を配置することで、記録ヘッド5が記録動作停止位置Sに配置されたときに、仮想平面PLよりも後方に配置される量を少なくすることができる。
【0031】
(キャップ15の動作)
記録ヘッド5が記録動作停止位置Sに配置された状態で、移動機構17が駆動され、キャップ支持部16が後方に移動される。そして、図4に示すように、記録ヘッド5の各ノズル面12が各キャップ15により覆われる。非キャップ位置Mは、キャップ支持部16が、非キャップ位置Mから後方に真っ直ぐ移動してノズル面12をキャップ15で覆うことができる位置に設定されている。つまり、非キャップ位置Mに配置される各キャップ15と、記録動作停止位置Sに配置される記録ヘッド5のノズル面12とは前後方向で互いに対向する位置に配置されている。
【0032】
上述したように、記録動作が終了し記録動作停止位置Sに配置された記録ヘッド5のノズル面12をキャップ15により覆うことで、記録を行わない時間が長時間に亘る場合に、ノズル内のインクが蒸発し増粘してしまうことを防ぐことができる。また、各キャップ15には、図示を省略するチューブを介して同じく図示を省略する吸引ポンプが接続されている。したがって、図4に示すように、記録ヘッド5のノズル面12を覆った状態で、ノズル面12を吸引しながらノズルからキャップ15内にインクを噴射することで、ノズル内に在る増粘したインクを排出することができる。
【0033】
キャップ支持部16の下側には、インク受け部18が取り付けられている。記録動作停止位置Sに配置された記録ヘッド5のノズル面12は、上下方向に沿った状態となる。そのため、ノズル面12に付着したインクが下方に垂れ落ちる虞がある。また、キャップ15内に噴射されたインクがキャップ15から下方に垂れ落ちる虞がある。しかしながら、キャップ支持部16の下側部に、インク受け部18が取り付けられているため、ノズル面12およびキャップ15から下方に垂れ落ちたインクは、インク受け部18に受け止められ、搬送ベルト9や記録用紙Pの上に落ちることを防ぐことができる。
【0034】
上述のようにノズル面12がキャップ15で覆われた記録動作が停止されている状態から記録動作を開始する際には、先ず、移動機構17を駆動して、キャップ位置Nに配置されているキャップ支持部16をキャップ位置Nから前方に移動し、図2に示す非キャップ位置Mに配置する。そして、回転駆動機構6を駆動して、記録動作停止位置Sに配置されている記録ヘッド5を前方に向けて回転し、図1に示す記録動作位置Rに配置する。
【0035】
なお、筐体8の内側(ヘッドユニット2が配置される側)の後方には、記録ヘッド5の左右の両端側に対応する位置に、位置決め片部13と位置決め片部14が備えられている。位置決め片部13は、記録ヘッド5の後面が位置決め片部13に当接した状態で、ノズル面12と上側面10とが所定の間隔(ペーパーギャップPG)を隔てて平行に対向し、記録ヘッド5が記録用紙Pに記録を行うことができる位置に取り付けられている。したがって、記録動作停止位置Sから、反時計回り(プリンター1の右方から見て)に記録動作位置Rに移動された記録ヘッド5の後面部5Bが位置決め片部13に当接するように配置することで、記録ヘッド5は記録動作位置Rに配置されることになる。また、位置決め片部14は、記録ヘッド5の後面が位置決め片部14に当接した状態で、ノズル面12がキャップ15に対向する配置となるように取り付けられている。したがって、記録ヘッド5が、記録動作位置Rから時計回り(プリンター1の右方から見て)に記録動作停止位置Sに移動された際に、記録ヘッド5の後面部5Bが位置決め片部14に当接するように記録ヘッド5を配置することで、記録ヘッド5は記録動作停止位置Sに配置されることになる。
【0036】
プリンター1を上述のように構成することで、ヘッドユニット2およびメンテナンスユニット3が共に、上側面10の上方、すなわち、上側面10に対して搬送される記録用紙Pを挟んだ位置に配置されている。そのため、メンテナンスユニット3を配置するスペースを搬送ベルト9の前後に確保する必要がなく、プリンター1の上側面10に沿う方向の大きさの小型化を図ることができる。
【0037】
また、記録動作停止位置Sに記録ヘッド5が移動されたとき、ノズル面12は上側面10と対向していない配置となっている。すなわち、本実施の形態では、ノズル面12は上側面10に対して90度の角度を成すように配置されている。したがって、メンテナンスユニット3を記録ヘッド5に向かって(後方に向かって)真っすぐに移動することで、ノズル面12をキャップ15で覆うことができる。そのため、移動機構17の構成を簡単にすることができ、また、キャップ15の非キャップ位置Mからキャップ位置Nまでの移動距離も短くでき、キャッピングに要する時間を短くすることができる。
【0038】
また、記録ヘッド5は、回転軸7を回転中心として、記録動作位置Rと記録動作停止位置Sとに移動する。このように記録ヘッド5の記録動作位置Rと記録動作停止位置Sとの間の移動を回転運動とすることで、記録ヘッド5の移動スペースを小さく抑えることができる。
【0039】
また、回転軸7は、上側面10に直交し回転軸7を含む仮想平面PLよりも、記録ヘッド5の記録動作位置Rから記録動作停止位置Sへの移動方向となる回転方向の後方に在る記録ヘッド5の構成部分5Pにおける回転軌跡の最大半径が、回転軸7と上側面10との間の距離よりも短くなる位置に配置されている。このように回転軸7を配置することで、記録ヘッド5を回転させたときに、記録ヘッド5が上側面10に干渉することを防ぐことができる。また、回転軸7をできるだけ記録ヘッド5の後方に配置することで、ノズル面12と上側面10との距離(ペーパーギャップPG)を短くすることができる。
【0040】
さらにまた、回転軸7は、記録ヘッド5の上側面10に直交する方向における厚さBの中央Cよりも、上側面10から離れる方向に偏倚した位置に配置される。このように回転軸7を配置することで、記録ヘッド5が記録動作停止位置Sに配置されたときの後方に配置される量を少なくすることができる。
【0041】
また、キャップ支持部16には、キャップ位置Nに移動したときに、キャップ15の下側となる位置にインクを受けるインク受け部18が設けられている。このように、インク受け部18を設けることで、記録動作停止位置Sに配置された記録ヘッド5のノズル面12に付着したインクや、キャップ15内に溜まったインクが下方に垂れ落ちても、インク受け部18で受け止められるため、搬送ベルト9や記録用紙Pをインクで汚染してしまうことを防止できる。
【0042】
(変形例1)
次に、上述の実施の形態についての変形例を図6を参照しながら説明する。上述の実施の形態では、ヘッドユニット2の記録動作停止位置Sは、ノズル面12が前方に向くように、回転軸7を回転中心に記録動作位置Rから前方に90度回転させた位置となっている。これに対し、図6の(B)に示すように、ヘッドユニット2の記録動作位置Rから記録動作停止位置Sまでの回転量を90度未満、例えば、45度としてもよい。この場合には、メンテナンスユニット3についても記録動作停止位置Sにおけるノズル面12の傾斜に併せて傾斜した配置とすることで、非キャップ位置Mから真っ直ぐに記録ヘッド5に向けて(後方に向けて)移動することで、図6の(C)に示すように、ノズル面12をキャップ15で覆うキャップ位置Nに移動することができる。
(変形例2)
さらに、上述の実施の形態についての他の変形例を図7を参照しながら説明する。上述の実施の形態では、ヘッドユニット2の記録動作停止位置Sは、ノズル面12が前方に向くように、回転軸7を回転中心に記録動作位置Rから前方に90度回転させた位置となっている。これに対し、図7に示すように、ノズル面12が上方に向けられた位置をヘッドユニット2の記録動作停止位置Sとしてもよい。この場合には、記録ヘッド5は、記録動作位置Rから回転軸7を回転中心に前方に180度回転させて記録動作停止位置Sに移動させられることになる。そして、メンテナンスユニット3についても、記録ヘッド5の記録動作停止位置Sの上方に非キャップ位置Mを設定し、記録動作停止位置Sに配置された記録ヘッド5に対して、非キャップ位置Mから下方にメンテナンスユニット3が移動してノズル面12を覆うキャップ位置Nに配置される構成とすることができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の他の実施の形態について図8を参照しながら説明する。ヘッドユニット2およびメンテナンスユニット3は、図8に示すように構成してもよい。つまり、ヘッドユニット2を、上下方向に移動可能に構成する。そして、ヘッドユニット2を、ノズル面12を上側面10に平行に対向させた状態を維持しながら記録動作位置Rから上方に移動した位置を記録動作停止位置Sとする。一方、メンテナンスユニット3については、ヘッドユニット2の前方の位置を非キャップ位置Mとし、ヘッドユニット2の下側をキャップ位置Nとしている。また、キャップ15のノズル面12を覆う開口部15Pが上方に向くように配置されている。
【0044】
このように配置されるヘッドユニット2およびメンテナンスユニット3においては、プリンター1が記録動作を行う際には、記録ヘッド5およびメンテナンスユニット3は、図8の(A)に示すように、記録動作位置Rに配置される記録ヘッド5と非キャップ位置Mに配置されるメンテナンスユニット3は、前後方向に配置されている。そして記録動作停止時には、図8の(B)に示すように、先ず、記録ヘッド5が上方に移動し記録動作停止位置Sに配置される。このように記録ヘッド5が記録動作位置Rから記録動作停止位置Sに変位すると、ノズル面12と上側面10との間の間隔が広くなる。そして、この広くなった間隔に、図8の(C)に示すように、メンテナンスユニット3を非キャップ位置Mから移動し、キャップ15と記録ヘッド5のノズル面12が対向した位置で、図8の(D)に示すように、キャップ15を上方に移動することで、キャップ15は、ノズル面12を覆うことができるキャップ位置Nに配置される。
【0045】
(変形例3)
次に、図9を参照しながら他の変形例について説明する。上述の各実施の形態およびその変形例では、ヘッドユニット2およびメンテナンスユニット3をそれぞれ一つずつ筐体8に保持したユニット19を一つ備えた構成となっている。これに対し、図9に示すように、例えば、インク色毎にユニット19を複数、記録用紙Pの搬送方向に配置する構成としてもよい。各ユニット19は、プリンター1に備えられるフレーム体(図示省略)に取り付けられるユニット固定ガイド22に取り付られている。
【0046】
上述の実施の形態およびその変形例では、記録ヘッド5をライン型ヘッドとして説明したが、記録用紙Pの搬送方向に直交するいわゆる主走査方向に移動しながら記録を行うシリアル型の記録ヘッドとしてもよい。また、本発明の液体噴射装置を、液体インクを記録用紙Pに噴射して付着させるインクジェットプリンター1として説明したが、この限りではなく、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を記録ヘッド(噴射ヘッド)から噴射できる流体噴射装置としても具現化できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・ プリンター(液体噴射装置) 5 ・・・ 記録ヘッド(液体噴射ヘッド) 5P ・・・ 構成部分 6 ・・・ 回転駆動機構(回転手段) 7 ・・・ 回転軸 10 上側面(搬送面) 12 ・・・ ノズル面 15 ・・・ キャップ 18 ・・・ インク受け部(液体受け部) R ・・・ 記録動作位置 S ・・・ 記録動作停止位置 M ・・・ 非キャップ位置 N ・・・ キャップ位置 PL ・・・ 回転軸を含む面 P ・・・ 記録用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録媒体に対して液体を噴射し上記記録媒体に記録を行う液体噴射ヘッドと、
上記液体噴射ヘッドの記録動作停止時に上記液体噴射ヘッドのノズル面を覆うキャップと、
を有する液体噴射装置において、
上記液体噴射ヘッドおよび上記キャップは、上記記録媒体が搬送される搬送面に対して、上記記録媒体が配置される記録媒体配置側に配置され、
上記液体噴射ヘッドは、上記記録媒体配置側において、上記ノズル面が上記記録媒体に対して対向させられ上記記録媒体に記録を行う記録動作位置と、上記記録動作停止時に上記キャップにより上記記録ヘッドが覆われる記録動作停止位置とに移動し、
上記キャップは、上記搬送面側において、非キャップ位置と、上記記録動作停止位置に移動した上記液体噴射ヘッドの上記ノズル面を覆うキャップ位置とに移動する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記記録動作停止位置は、前記ノズル面が前記搬送面に対向していない位置である、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
記録媒体の搬送方向に直交し、かつ、搬送面に沿った方向に配置される回転軸の周りに前記液体噴射ヘッドを回転させる回転手段により、前記液体噴射ヘッドを前記記録動作停止位置に移動させることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記回転軸は、前記搬送面に直交し前記回転軸を含む面よりも、前記液体噴射ヘッドの回転方向の後方に在る前記液体噴射ヘッドの構成部分における回転軌跡の最大半径が、前記回転軸と前記搬送面との間の距離よりも短くなる位置に配置されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置において、
前記回転軸は、前記液体噴射ヘッドの前記搬送面に直交する方向における幅の中央に対して、前記搬送面から離れる方向に偏倚した位置に配置されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1に記載の液体噴射装置において、
前記キャップは、前記キャップ位置に移動したときに、前記キャップの下側となる位置に液体を受ける液体受け部が設けられている、
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−173162(P2010−173162A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17710(P2009−17710)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】