説明

液体噴射装置

【課題】液体の安定した吐出(噴射)を可能とする他の技術を提供する。
【解決手段】液体噴射装置であって、液体を貯留する液体貯留部と、液体貯留部から供給される液体を噴射する液体噴射部と、液体を加熱する加熱部と、加熱部を制御する制御部とを備え、制御部は、液体貯留部から液体噴射部に供給される液体の流速に基づいて、加熱部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターにおいて、高粘度のインクを用いた場合には、インクを噴射するためのインクヘッドからのインクの吐出が不安定になる可能性がある。このような問題に対して、インクタンク内のインクの温度を検知する温度検知手段と、その検知結果に基づいて、インクタンクとインクヘッドとをつなぐ供給路を加熱する加熱手段と、を備えるインクジェットプリンターが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−127417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、インクタンク内のインクの温度のみに基づいて加熱手段を制御しても、インクの吐出が安定しない場合がある。
【0005】
なお、このような問題は、インクジェットプリンターに限定されず、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造装置等、液体を噴射する液体噴射部を備える液体噴射装置に共通する問題であった。
【0006】
そこで、本発明は、液体の安定した吐出(噴射)を可能とする他の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
液体噴射装置であって、
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給される液体を噴射する液体噴射部と、
前記液体を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記液体貯留部から前記液体噴射部に供給される前記液体の流速に基づいて、前記加熱部を制御する、液体噴射装置。
【0009】
本明細書中において、流速は、単位時間(例えば、1ms)当たりの液体流量に限定されない。例えば、1ページ当たり、10ページ当たり、1主走査当たり、1回の噴射当たりの液体流量等を用いてもよい。また、液体流量としては、例えば、液体噴射部から噴射される液体の量、液体噴射部に供給される液体の量、ドットの数等の情報を含む。
【0010】
液体の流速が速い場合には、流速が遅い場合と同様に加熱していても液体が十分に温まらず、液体の低粘度化が十分でないために、液体の吐出(噴射)が安定しない場合がある。この問題に対して、この液体噴射装置によれば、液体の流速に基づいて、加熱部を制御しているため、液体の流速が速い場合にも、液体の低粘度化が向上され、液体の吐出(噴射)の安定性が向上される。
【0011】
[適用例2]
適用例1に記載の液体噴射装置であって、
前記液体の温度に関する情報を取得する温度関連情報取得部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記液体の流速と、前記温度関連情報取得部によって取得された温度関連情報と、に基づいて前記加熱部を制御する、液体噴射装置。
【0012】
このようにすると、さらに、液体の温度に基づいて、液体の加熱が制御されるため、液体の吐出(噴射)の安定性が、さらに向上される。なお、温度関連情報は、液体の温度に関する抵抗、電圧、電流等の情報であってもよいし、温度そのものを表す情報であってもよい。
【0013】
[適用例3]
適用例2に記載の液体噴射装置であって、
前記液体を冷却する冷却部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記温度関連情報に基づいて、前記冷却部を制御する、液体噴射装置。
【0014】
このようにすると、液体の温度が目標の温度より上がりすぎた場合等に、冷却することができる。これにより、例えば、液体の温度を一定に保つことができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1に記載の液体噴射装置であって、
前記制御部は、
画像を表す画像データに基づいて、前記液体噴射部を制御すると共に、前記画像データに基づいて、前記液体の流速を導出する、液体噴射装置。
【0016】
このようにすると、容易に、液体の流速を導出することができる。
【0017】
[適用例5]
液体噴射装置であって、
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給される液体を噴射する液体噴射部と、
前記液体を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
画像を表す画像データに基づいて、前記液体噴射部を制御すると共に、前記画像データに基づいて、前記加熱部を制御する、液体噴射装置。
【0018】
ここで、「画像データ」は、写真、絵、図形、文字、記号等を表すデータを含む。この液体噴射装置によれば、画像データに基づいて、加熱部を制御する。例えば、R,G,Bデータの各値に基づいて、加熱部を制御することができる。また、C,M,Y,Kデータの各値に基づいて、加熱部を制御することができる。このようにすると、制御回路を簡易化することができる。
【0019】
なお、本発明は、上記した液体噴射装置の態様に限ることなく、液体噴射装置の制御方法、液体噴射装置を制御するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体としての態様等、種々の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェットプリンターの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例としてのインクジェットプリンターの要部の構成を概念的に示す説明図である。
【図3】印刷ヘッドの要部の断面構成を模式的に示す模式図である。
【図4】本実施例における制御部において実行される供給路冷熱装置の制御ルーチンを表わすフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施例としてのインクジェットプリンターの要部の構成を概念的に示す説明図である。
【図6】本実施例におけるサブタンクの構成と第1加熱装置の配置を模式的に示す模式図である。
【図7】本実施例における印刷ヘッドの構成と第3加熱装置の配置を模式的に示す模式図である。
【図8】本実施例における制御部において実行される加熱装置の制御ルーチンを表わすフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施例としてのインクジェットプリンターの要部の構成を概念的に示す説明図である。
【図10】本実施例における制御部において実行される加熱装置の制御ルーチンを表わすフローチャートである。
【図11】インクカートリッジの構成と加熱装置および温度検知部の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて、以下の順序で説明する。
A.インクジェットプリンターの全体構成:
B.第1の実施例:
C.第2の実施例:
D.第3の実施例:
E.変形例:
【0022】
A.インクジェットプリンターの全体構成:
図1は、インクジェットプリンターの一例を示す斜視図である。図1(A)に示すインクジェットプリンター1000Aは、主走査方向に移動するキャリッジ200Aを有しており、また、印刷用紙PPを副走査方向に搬送する搬送機構を有している。キャリッジ200の下端には印刷ヘッド(図示省略)が設けられており、この印刷ヘッドを用いて印刷用紙PP上に印刷が行われる。
【0023】
キャリッジ200Aにはインクカートリッジは搭載されておらず、プリンター本体の外側(キャリッジの移動範囲の外側)にカートリッジ収納部220が設けられている。インクカートリッジ100とキャリッジ200Aとの間は、インク供給チューブ210で接続されている。このように、キャリッジ以外の場所にインクカートリッジが搭載されるプリンターは、「オフキャリッジタイプのプリンター」とも呼ばれている。
【0024】
図1(B)に示すインクジェットプリンター1000Bは、インクジェットプリンター1000Aと同様に、キャリッジ200Bと、印刷用紙PPを副走査方向に搬送する搬送機構を有している。しかしながら、図1(A)に示すインクジェットプリンター1000Aと異なり、キャリッジ200B上には、複数のインクカートリッジ100を搭載可能なカートリッジ収納部が設けられている。このように、キャリッジ上にインクカートリッジが搭載されるプリンターは、「オンキャリッジタイプのプリンター」とも呼ばれている。
【0025】
以下では、オフキャリッジタイプのインクジェットプリンターを用いた場合について主に説明するが、その内容はオンキャリッジタイプのインクジェットプリンターにも同様に適用可能である。
【0026】
B.第1の実施例:
B1.インクジェットプリンターの要部の構成:
図2は、本発明の第1の実施例としてのインクジェットプリンターの要部の構成を概念的に示す説明図である。図2では、本実施例におけるインクの加熱制御に関する部分を、要部として、図示している。インクジェットプリンター1100Aは、インクカートリッジ100と、インク供給チューブ210と、キャリッジ200Aと、制御部600と、を主に備える。なお、図2では、1色分(例えば、ブラックインク)のインクカートリッジ100と、それに対応する各部(サブタンク300、供給路400等)を例示しているが、図1に図示するように、インクジェットプリンター1100Aは、複数色のインクカートリッジ100(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー等)を備え、各インクカートリッジ100に対応するインク供給チューブ210、サブタンク300、供給路400等が設けられている。
【0027】
インクカートリッジ100は、内部に液体のインクを収容する。図1(A)に示すように、インクカートリッジ100は、プリンター本体の外側(キャリッジ200Aの移動範囲の外側)に配置され、インクカートリッジ100とキャリッジ200Aとの間は、インク供給チューブ210で接続されている。インクカートリッジ100内部のインクは、インク供給チューブ210を介して、キャリッジ200Aに供給される。
【0028】
キャリッジ200Aは、サブタンク300と、供給路400と、印刷ヘッド500と、供給路冷熱装置420Aと、ヘッド温度検知部514と、を備える。サブタンク300には、インク供給チューブ210が接続されており、インクカートリッジ100内に貯留された液体のインクが、インク供給チューブ210を通って、サブタンク300内に流入する。サブタンク300は、圧力ダンパーとしての機能を備えるため、インクの圧力変動が吸収される。サブタンク300は、供給路400を介して印刷ヘッド500に接続されている。したがって、インクは、サブタンク300内で圧力変動が吸収された状態で供給路400を介して印刷ヘッド500に供給される。印刷ヘッド500の構成については、後述する。
【0029】
供給路冷熱装置420Aは、ペルチェ素子を備え、後述する制御部から出力される制御信号に基づいて、発熱・吸熱する。供給路冷熱装置420Aは、供給路400の外部に接触して設けられ、供給路400を介して、供給路400内のインクを加熱または冷却する。ヘッド温度検知部514は、温度センサーを備え、印刷ヘッド500内のインクの温度を計測して、制御部600に対して計測信号を出力する。
【0030】
制御部600は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成されている。詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPU602と、CPU602で各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、同じくCPU602で各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAMとを備えるメモリー604と、各種の信号を入出力する入出力ポート606等を備える。
【0031】
この制御部600は、外部装置(例えば、コンピュータ)から送信された印刷データをドットパターンに対応した吐出データに展開して印刷ヘッド500に送信する。また、制御部600は、入力された印刷データに基づいて、インクの使用量(消費量)を算出する。具体的には、制御部600は、印刷ヘッド500によるインク滴の吐出回数に、吐出するインク滴の設計液量を乗ずることにより、インク使用量を算出するようになっている。例えば、小ドットのインク滴の設計液量が2ngに設定されている場合、当該小ドットの吐出回数が1000である場合には、この吐出回数に設計液量である2ngを乗ずることで、インク使用量として2000ngが得られる。
【0032】
また、制御部600は、印刷ヘッド500に設けられたヘッド温度検知部514の計測信号を取得して、取得した信号に基づいて、供給路冷熱装置420Aを制御するための制御信号を出力する。また、制御部600は、インクジェットプリンター1100Aのキャリッジ200A、搬送機構、印刷ヘッド500等、印刷に関わる各部を制御する制御信号を出力する。
【0033】
図3は、印刷ヘッド500の要部の断面構成を模式的に示す模式図である。印刷ヘッド500の下面には、複数(例えば、180個)のノズル開口508が、1列に整列して配置されている。なお、本実施例において、印刷ヘッド500は、説明を簡単にするために、複数のノズル開口508が1列に配列される場合を例示しているが、複数列に配列されるように構成してもよい。また、図3では、図2に対応して、要部として、1色のインク(例えば、ブラックインク)を吐出するための、印刷ヘッド500内の構成を図示しているが、上述の通り、印刷ヘッド500は、他の各色のインクについても、同様の構成を備える。
【0034】
印刷ヘッド500の内部は、複数の空間に区画されている。具体的には、ヘッド内流路502、共通インク室504、圧力室506、アクチュエーター室509に区画されている。ヘッド内流路502には、供給路400が接続され、サブタンク300内で圧力変動が吸収された状態のインクが、供給路400を介してヘッド内流路502に流入する。また、印刷ヘッド500には、ヘッド内流路502内のインクの温度を測定する、ヘッド温度検知部514が設けられている。
【0035】
共通インク室504は、ヘッド内流路502と連通しており、ヘッド内流路502からのインクが導入される室である。圧力室506は、ノズル開口508の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として、各ノズル開口508に対応させて、複数形成されている。共通インク室504に導入されたインクは、インク供給口505を通じて各圧力室506に分配供給される。
【0036】
アクチュエーター室509内には、インク滴を吐出させるための駆動素子としてのピエゾ素子510が設けられている。アクチュエーター室509と圧力室506との間は、振動板511によって区画されており、ピエゾ素子510は振動板511に接するように配置されている。上述の制御部600から、印刷データに応じた駆動信号がピエゾ素子510に供給されると、ピエゾ素子510が伸縮する。ピエゾ素子510が伸張すると、これに伴い、振動板511が変形する。その結果、圧力室506の容積が減少し、圧力室506の容積の減少分がインク滴となって、ノズル開口508から吐出される。
【0037】
B2.供給路冷熱部の制御ルーチン:
図4は、本実施例における制御部において実行される供給路冷熱装置の制御ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、インクジェットプリンター1100Aの電源が投入されると、実行される。
【0038】
制御部600は、外部装置から印刷指令が入力されると(ステップS102)、印刷指令と共に外部装置から入力された印刷データに基づいて、1ページ当たりのインク噴射量を算出する(ステップS104)。
【0039】
制御部600は、ステップS104において算出された、1ページ当たりのインク噴射量が、予め定められた設定量よりも多いか否か判断する(ステップS106)。本実施例において、後述する弱加熱で3秒間加熱しても、設定温度(例えば、35℃)に達しないようなインク量を、設定量とする。
【0040】
ステップS106において、1ページ当たりのインク噴射量が、設定量よりも多い場合(ステップS106において、YES)、制御部600は、供給路冷熱装置420Aに対して、駆動信号を出力して、供給路冷熱装置420Aに強加熱をさせる(ステップS108)。本実施例において、例えば、1秒間加熱することにより、インクの温度を10℃上昇させるような熱量で加熱することを、「強加熱」と称する。
【0041】
そして、制御部600は、ヘッド温度検知部514から出力される計測信号に基づいて、印刷ヘッド500内のインクの温度が設定温度よりも高いか否か判断する(ステップS110)。インクの検出温度が設定温度よりも低い場合には(ステップS110において、NO)、制御部600は、引き続き、供給路冷熱装置420Aに強加熱をさせる(ステップS108)。すなわち、インクの検出温度が設定温度よりも高くなるまで、供給路冷熱装置420Aにおいて、強加熱が継続される。ステップS110において、インクの検出温度が設定温度よりも高くなると、制御部600は、ステップS116へ進む。
【0042】
一方、ステップS106において、1ページ当たりのインク噴射量が、設定量以下の場合(ステップS106において、NO)、制御部600は、供給路冷熱装置420Aに対して、駆動信号を出力して、供給路冷熱装置420Aに弱加熱をさせる(ステップS112)。本実施例において、例えば、3秒間加熱することにより、インクの温度を10℃上昇させるような熱量で加熱することを、「弱加熱」と称する。
【0043】
そして、制御部600は、ヘッド温度検知部514から出力される計測信号に基づいて、印刷ヘッド500内のインクの温度が設定温度よりも高いか否か判断する(ステップS114)。インクの検出温度が設定温度よりも低い場合には(ステップS114において、NO)、制御部600は、引き続き、供給路冷熱装置420Aに弱加熱をさせる(ステップS112)。すなわち、インクの検出温度が設定温度よりも高くなるまで、供給路冷熱装置420Aにおいて、弱加熱が継続される。ステップS114において、インクの検出温度が設定温度よりも高くなると、制御部600は、ステップS116へ進む。
【0044】
ステップS116において、制御部600は、インクの検出温度が、〔設定温度+5℃〕よりも高いか否か判断する。インクの検出温度が、〔設定温度+5℃〕よりも高い場合には(ステップS116において、YES)、制御部600は、供給路冷熱装置420Aに対して、駆動信号を出力して、供給路冷熱装置420Aに冷却をさせる(ステップS118)。制御部600は、インクの検出温度が、〔設定温度+5℃〕以下になるまで、供給路冷熱装置420Aに冷却をさせる(ステップS116、S118)。
【0045】
本実施例において、制御部600は、本ルーチンとは別に、キャリッジ200A、印刷ヘッド500、搬送機構等の印刷を実行する各部を制御する印刷制御ルーチンを実行して、印刷を実行させる。外部装置から印刷指令が入力されると、制御部600は、ヘッド温度検知部514から出力される計測信号に基づいて、インクの検出温度が設定温度より高いか否か判断し、インクの検出温度が設定温度より高くなると、上述の各部に制御信号を出力して、印刷を開始させる。そして、1ページ分の印刷が終了すると、制御部600は、メモリー604に予め記憶されている印刷終了フラグをONにする。なお、次の印刷を開始する際に、制御部600は、上記印刷フラグをOFFにする。
【0046】
供給路冷熱部の制御ルーチンのステップS116において、インクの検出温度が〔設定温度+5℃〕以下になると(ステップS116においてNO)、制御部600は、1ページ分の印刷が終了したか否か判断する(ステップS120)。具体的には、上述のメモリー604に記載された印刷終了フラグがONの場合には(ステップS120においてYES)、制御部600は、ステップS122に進み、次の印刷データがあるか否か判断する(ステップS122)。
【0047】
一方、上述のメモリー604に記載された印刷終了フラグがOFFの場合には(ステップS120においてNO)、制御部600は、ステップS106に戻り、1ページ当たりのインク噴射量と、インクの検出温度に基づいて、供給路冷熱装置420Aを制御して、強加熱(ステップS108)または弱加熱(ステップS112)、冷却(ステップS118)を実施させる。すなわち、1ページ分の印刷が終了するまで、制御部600は、ステップS106〜S120までを、繰り返し実行して、インクの温度を略設定温度に維持する。
【0048】
ステップS122において、制御部600は、次の印刷データ(例えば、2ページ目の印刷データ)があると判断すると、ステップS104に戻る。一方、次の印刷データがない場合は、制御部600は、本ルーチンを終了する。
【0049】
B3.実施例の効果:
インクカートリッジ内のインクが印刷ヘッドに供給されて、印刷ヘッドにおいて噴射される、インクジェットプリンターにおいて、インクカートリッジに貯留されるインクとして、温度上昇に伴って低粘度化する高粘度インク(例えば、粘度が10mPa・S以上のインク、UV光(紫外線)を照射することにより硬化し定着するUVインク等)が用いられる場合がある。高粘度インクは、インクの温度が低いと粘度が高く、インクの粘度が高いと、例えば、供給路内で流路抵抗による圧力損失が増大し、印刷ヘッドへのインクの供給が不安定になったり、印刷ヘッドにおけるインクの吐出(噴射)が不安定になるおそれがある。
【0050】
これに対して、本実施例のインクジェットプリンター1100Aでは、供給路400を加熱・冷却する供給路冷熱装置420Aを備え、供給路冷熱装置420Aによって供給路400を加熱して、インクの温度を上昇させることにより、インクを低粘度化している。
【0051】
また、上述のとおり、本実施例のインクジェットプリンター1100Aは、さらに制御部600を備え、制御部600は、1ページ当たりのインク噴射量に基づいて、供給路冷熱装置420Aを制御して、強加熱または弱加熱を行わせる。
【0052】
例えば、文字だけで構成されるページ(以下「文字ページ」とも称する。)を印刷する場合と、1ページの一面に写真が表示されるページ(以下、「写真ページ」とも称する。)を印刷する場合とを比べると、1ページを印刷するのに使用するインクの量は、文字ページよりも写真ページの方が多い。すなわち、インクカートリッジ100から印刷ヘッド500に供給されるインクの流速(単位時間当たりのインクの流量)は、文字ページよりも写真ページの方が大きい。
【0053】
仮に、文字ページを印刷する場合も、写真ページを印刷する場合も、共に、供給路冷熱装置420Aによって弱加熱を行ったとすると、写真ページを印刷する場合には、供給路冷熱装置420Aを流通するインクの流速が速いために、インクが十分に加熱されず、インクの低粘度化が十分に行われない可能性がある。
【0054】
これに対して、本実施例のインクジェットプリンター1100Aでは、上述のとおり、制御部600は、1ページ当たりのインク噴射量に基づいて、供給路冷熱装置420Aにおける加熱を強加熱と弱加熱とに使いわけている。そのため、1ページ当たりのインク噴射量が設定量よりも多い場合(流速が大きい場合)にも、インクの加熱状態が良好になり、インクの低粘度化が向上される。その結果、印刷ヘッド500におけるインクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。
【0055】
本実施例のインクジェットプリンター1100Aは、さらに、印刷ヘッド500内のインク温度を検知するヘッド温度検知部514を備える。そして、制御部600は、印刷を実行している間中、ヘッド温度検知部514の計測信号に基づいて、供給路冷熱装置420Aを制御して、強加熱または弱加熱を行わせる。したがって、インクの温度を略一定に維持することができる。
【0056】
C.第2の実施例:
図5は、本発明の第2の実施例としてのインクジェットプリンターの要部の構成を概念的に示す説明図である。本実施例のインクジェットプリンター1100Bが第1の実施例のインクジェットプリンター1100Aと構成が異なる点は、サブタンク300を加熱する第3加熱装置340と、印刷ヘッド500を加熱する第1加熱装置512が追加されている点と、供給路冷熱装置420Aに換えて第2加熱装置420Bが設けられている点と、ヘッド温度検知部514を備えない点である。すなわち、本実施例におけるインクジェットプリンター1100Bにおいて、加熱装置が3つ設けられている。本実施例における第1加熱装置512、第2加熱装置420Bおよび第3加熱装置340は、駆動時、第1の実施例における「強加熱」と同様の熱量で加熱する。
【0057】
図6は、本実施例におけるサブタンクの構成と第1加熱装置の配置を模式的に示す模式図である。図6(A)は非印刷状態、(B)は印刷状態を示す。図6(A)に示すように、サブタンク300の内部は、複数の空間に区画されている。具体的には、インク導入路321、インク供給室322、圧力室323、インク導出路324に区画されている。インク導入路321には、インク供給チューブ210が接続され、インクカートリッジ100内のインクが、インク供給チューブ210を介してインク導入路321に流入する。
【0058】
インク供給室322内には、インク供給室322と圧力室323とをつなぐ流路325を開閉する開閉部材330が設けられている。開閉部材330は、ばね部332と、蓋部334と、シールリング336と、を備える。インク供給室322は、円柱状の空間を形成する。蓋部334は、円板の中心から円柱が突設された形状を成し、円柱部分が、流路325に挿通されている。図6(A)に示すように、印刷ヘッド500が印刷しない場合、すなわち、インクを消費しない状態において、ばね部332は、蓋部334を、圧力室323の方へ押し上げるように、付勢している。このとき、蓋部334と、シールリング336とが接触することにより、流路325が封止された状態になっている。
【0059】
圧力室323は、その一部が、フィルム部材352によって構成されている。フィルム部材352の略中央部分には、受圧板354が取り付けられている。受圧板354は、フィルム部材352よりも硬質の材料により形成されている。本実施例において、フィルム部材352は、高密度ポリエチレンフィルムに塩化ビニリデン(サラン)をコーティングしたナイロンフィルムを接着ラミネートした構成である。フィルム部材352として、本実施例以外の構成を用いることもできるが、負圧状態を効率的に感知できるように軟質であると共に、インク性状に化学的な影響を及ぼさないこと、さらに、水分透過度や、酸素や窒素透過度の低い材質を用いることが好ましい。
【0060】
また、本実施例において、受圧板354は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料で形成される。受圧板354として、他の材料を用いてもよい。受圧板354は、印刷動作等により、キャリッジ200Aが動いた場合に、受圧板354自体の自重とキャリッジ200Aの加速度とによりフィルム部材352を動かして圧力室323内の圧力を変化させることがないように、軽量であることが好ましい。
【0061】
圧力室323は、流路325を介してインク供給室322と接続されている。図6(B)に示すように、印刷ヘッド500が印刷状態になり、インクが消費された場合には、圧力室323内のインクの減少に伴い、フィルム部材352がインク供給室322側(紙面下側)に変位する。そして、フィルム部材352の中央部が、蓋部334に当接する。
【0062】
印刷ヘッド500において、さらにインクが消費されると、圧力室323内には負圧が生じる。このように負圧が生じることにより、一定の条件が満たされると、フィルム部材352が蓋部334を押圧し、蓋部334による流路325の封止が解かれる。そうすると、図6(B)に矢印で示すように、インク供給室322内のインクが、流路325を介して圧力室323に供給される。なお、印刷動作中において、蓋部334は、シールリング336と僅かに隙間が生じる状態を保ち、圧力室323に対して、インクが逐次供給されるように作用する。
【0063】
また、圧力室323はインク導出路324と接続され、圧力室323内のインクはインク導出路324を介して、供給路400に流入する。
【0064】
サブタンク300の底面には、第3加熱装置340が設けられている(図6(A))。第3加熱装置340は、一般的な電熱ヒーターを備え、制御部600から出力される制御信号に基づいて、発熱する。第3加熱装置340は、サブタンク300の外部に接触して設けられ、サブタンク300を介して、サブタンク300の内部空間(インク導入路321、インク供給室322、圧力室323、インク導出路324)内のインクを加熱する。
【0065】
図7は、本実施例における印刷ヘッドの構成と、第3加熱装置の配置を模式的に示す模式図である。本実施例における印刷ヘッド500の構成は、第1の実施例における印刷ヘッド500の構成と同様であるため、第1の実施例と同一の符号を付して、印刷ヘッド500の構成の説明は省略する。
【0066】
第1加熱装置512は、印刷ヘッド500におけるヘッド内流路502を構成する壁面の外側に設けられている。第1加熱装置512は、第3加熱装置340と同様に、一般的な電熱ヒーターを備え、制御部600から出力される制御信号に基づいて、発熱する。第1加熱装置512は、印刷ヘッド500を介して、印刷ヘッド500の内部空間(ヘッド内流路502、共通インク室504、インク供給口505、圧力室506)内のインクを加熱する。
【0067】
また、これらの構成の相違に伴い、制御部600におけるインクの加熱制御の流れも異なる。図8は、本実施例における制御部において実行される加熱装置の制御ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、インクジェットプリンター1100Bの電源が投入されると、実行される。
【0068】
制御部600は、外部装置から印刷指令が入力されると(ステップT102)、印刷指令と共に外部装置から入力された印刷データに基づいて、1ページ当たりのインク噴射量を算出する(ステップT104)。
【0069】
制御部600は、ステップT104において算出された、1ページ当たりのインク噴射量を、「少」、「中」、「多」に分ける(ステップT106)。本実施例において、1ページ当たりのインク噴射量が印刷ヘッド500内のインク量よりも少ない場合を「少」、1ページ当たりのインク噴射量が印刷ヘッド500内のインク量より多く(印刷ヘッド500+供給路400)内のインク量よりも少ない場合を「中」、1ページ当たりのインク噴射量が(印刷ヘッド500+供給路400)内のインク量よりも多い場合を「多」としている。
【0070】
ステップT106において、1ページ当たりのインク噴射量が、「少」の場合(ステップT106において、「少」)、制御部600は、第1加熱装置512に対して、駆動信号を出力して、第1加熱装置512を駆動させる(ステップT108)。
【0071】
ステップT106において、1ページ当たりのインク噴射量が、「中」の場合(ステップT106において、「中」)、制御部600は、第1加熱装置512と、第2加熱装置420Bに対して、駆動信号を出力して、第1加熱装置512と第2加熱装置420Bを駆動させる(ステップT110)。
【0072】
ステップT106において、1ページ当たりのインク噴射量が、「多」の場合(ステップT106において、「多」)、制御部600は、第1加熱装置512と、第2加熱装置420Bと、第3加熱装置340に対して、駆動信号を出力して、第1加熱装置512と、第2加熱装置420Bと、第3加熱装置340を駆動させる(ステップT108)。
【0073】
そして、所定の時間が経過した後、制御部600は、キャリッジ200A、印刷ヘッド500、搬送機構等の印刷を実行する各部を制御して、印刷を実行させる(ステップT114)。なお、所定の時間は、加熱された箇所のインク温度が、設定温度(例えば、35℃)になるのに要する時間であり、予め、定められている。
【0074】
1ページ分の印刷が終了すると、制御部600は、次の印刷データがあるか否か判断する(ステップT116)。制御部600は、次の印刷データ(例えば、2ページ目の印刷データ)があると判断すると、ステップT104に戻る。一方、次の印刷データがない場合は、制御部600は、本ルーチンを終了する。
【0075】
本実施例におけるインクジェットプリンター1100Bでは、第1の実施例におけるインクジェットプリンター1100Aとは異なり、1ページあたりのインク噴射量に応じて、加熱装置の駆動数を変えている。1ページあたりのインク噴射量が「少」の場合、1ページを印刷するのに使用されるインク量は、印刷ヘッド500内のインク量よりも少ない。したがって、印刷ヘッド500に設けられている第1加熱装置512のみを駆動させて、印刷を開始する前に印刷ヘッド500内のインクの低粘度化を図っておくことにより、1ページ分を印刷する間のインクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。
【0076】
1ページあたりのインク噴射量が「中」の場合、1ページを印刷するのに、印刷ヘッド500内のインクだけでなく、供給路400内のインクも使用する。したがって、印刷ヘッド500に設けられている第1加熱装置512だけでなく、第2加熱装置420Bも駆動させて、印刷を開始する前に印刷ヘッド500および供給路400内のインクの低粘度化を図っておくことにより、1ページ分を印刷する間のインクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。
【0077】
1ページあたりのインク噴射量が「多」の場合、1ページを印刷するのに、印刷ヘッド500、供給路400、およびサブタンク300内のインクも使用する。したがって、第1加熱装置512、第2加熱装置420B、第3加熱装置340と全ての加熱装置駆動させて、印刷を開始する前に印刷ヘッド500、供給路400、およびサブタンク300内のインクの低粘度化を図っておくことにより、1ページ分を印刷する間のインクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。
【0078】
以上説明したように、本実施例のインクジェットプリンター1100Bによれば、1ページあたりのインク噴射量に応じて、加熱装置の駆動数を変えることによって、例えば、文字ページを印刷する場合も、写真ページを印刷する場合も、適切にインクの低粘度化を図ることができ、インクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。
【0079】
また、本実施例のインクジェットプリンター1100Bは、印刷開始前に、必要な量のインクを温めているため、第1の実施例のように、印刷中に、インクの温度に基づく加熱装置の制御を行っていない。したがって、制御部600の回路構成を簡略化することができる。
【0080】
D.第3の実施例:
図9は、本発明の第3の実施例としてのインクジェットプリンターの要部の構成を概念的に示す説明図である。本実施例のインクジェットプリンター1100Cが第2の実施例のインクジェットプリンター1100Bと構成が異なる点は、第3加熱装置340と第2加熱装置420Bとを備えない点である。すなわち、本実施例におけるインクジェットプリンター1100Cは、加熱装置を1つ(第1加熱装置512)備える。それ以外のインクジェットプリンター1100Cの要部の構成は、第2の実施例と同様であるため、第2の実施例と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0081】
また、これらの構成の相違に伴い、制御部600におけるインクの加熱制御の流れも異なる。図10は、本実施例における制御部において実行される加熱装置の制御ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、インクジェットプリンター1100Cの電源が投入されると、実行される。
【0082】
制御部600は、外部装置から印刷指令が入力されると(ステップT102)、印刷指令と共に外部装置から入力された印刷データに基づいて、1ページ当たりのインク噴射量を算出する(ステップU104)。
【0083】
制御部600は、ステップU104において算出された、1ページ当たりのインク噴射量が設定量よりも予め定められた設定量よりも多いか否か判断する(ステップU106)。本実施例において、印刷ヘッド500内のインク量を設定量としている。
【0084】
ステップU106において、1ページ当たりのインク噴射量が、設定量よりも多い場合(ステップU106において、YES)、制御部600は、第1加熱装置512に対して、駆動信号を出力して、第1加熱装置512に3秒間、加熱をさせる(ステップU108)。
【0085】
一方、ステップU106において、1ページ当たりのインク噴射量が、設定量以下の場合(ステップU106において、NO)、制御部600は、第1加熱装置512に対して、駆動信号を出力して、第1加熱装置512に1秒間、加熱をさせる(ステップU110)。
【0086】
本実施例において、制御部600は、本ルーチンとは別に、キャリッジ200A、印刷ヘッド500、搬送機構等の印刷を実行する各部を制御する印刷制御ルーチンを実行して、印刷を実行させる。外部装置から印刷指令が入力されると、制御部600は、第1加熱装置512における加熱が開始されてから1秒経過後に、上述の各部に制御信号を出力して、印刷を開始させる。そして、1ページ分の印刷が終了すると、制御部600は、メモリー604に予め記憶されている印刷終了フラグをONにする。なお、次の印刷を開始する際に、制御部600は、上記印刷フラグをOFFにする。
【0087】
すなわち、本実施例のインクジェットプリンター1100Cにおいて、短時間加熱が終了した後、印刷が開始される。したがって、1ページ当たりのインク噴射量が設定量よりも多い場合には、印刷が開始された後、2秒間、加熱が継続される。
【0088】
加熱装置の制御ルーチンにおいて、加熱が終了すると、制御部600は、1ページ分の印刷が終了したか否か判断する(ステップU112)。具体的には、上述のメモリー604に記載された印刷終了フラグがONの場合には(ステップU112においてYES)、制御部600は、ステップU114に進み、次の印刷データがあるか否か判断する(ステップU114)。
【0089】
一方、上述のメモリー604に記載された印刷終了フラグがOFFの場合には(ステップU112においてNO)、制御部600は、ステップU112に戻る。すなわち、1ページ分の印刷が終了するまで、制御部600は、ステップU112を、繰り返す。
【0090】
ステップU114において、制御部600は、次の印刷データ(例えば、2ページ目の印刷データ)があると判断すると、ステップU104に戻る。一方、次の印刷データがない場合は、制御部600は、本ルーチンを終了する。
【0091】
本実施例におけるインクジェットプリンター1100Cによれば、1ページ当たりのインク噴射量に応じて、加熱時間を変えている。例えば、1ページ当たりのインク噴射量が印刷ヘッド500内のインク量よりも少ない場合には、印刷ヘッド500内のインクを予め温めておくことにより、1ページ分を印刷する間のインクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。一方、1ページ当たりのインク噴射量が印刷ヘッド500内のインク量よりも多い場合には、印刷ヘッド500内に流入してくるインクも温めることによって、1ページ分を印刷する間のインクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。したがって、1ページ当たりのインク噴射量に応じて、加熱時間を変えることにより、例えば、文字ページを印刷する場合も、写真ページを印刷する場合も、適切にインクの低粘度化を図ることができ、インクの吐出(噴射)の安定性を向上させることができる。
【0092】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0093】
(1)上記実施例において、印刷データが外部装置から入力される例を示したが、例えば、インクジェットプリンターが外部メモリーインターフェイスを備え、印刷データが、USBメモリー、SDメモリーカード、メモリースティック等の外部メモリーから入力される構成にしてもよい。また、外部装置として、スキャナー、デジタルカメラ等を用いてもよい。
【0094】
(2)上記実施例において、液体噴射装置として、インクジェットプリンターを例示したが、これに限定されず、本発明は、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造装置等、液体を噴射する液体噴射部を備える種々の液体噴射装置に適用することができる。
【0095】
(3)上記実施例において、制御部600は、1ページ当たりのインク噴射量に基づいて、インクの加熱・冷却を制御しているが、例えば、印刷ヘッド500に供給されるインクの量、ドット数等、インク噴射量を表す情報に基づいてインクの加熱・冷却を制御するようにしてもよい。
【0096】
(4)上記実施例において、制御部600は、印刷データに基づいて、インクの加熱・冷却を制御する例を示しているが、例えば、インクカートリッジ内に流量センサーを設け、単位時間当たりに、インクカートリッジから流出するインクの流量を検知して、その検知結果に基づいて、印刷ヘッド500の加熱・冷却を制御するようにしてもよい。
【0097】
(5)上記実施例において、インクの流速を、1ページ当たりのインク噴射量を用いて表し、1ページ当たりのインク噴射量に基づいて、冷熱装置、加熱装置を制御する例を示しているが、1ページ当たりのインク噴射量に限定されず、流速を表す種々の情報に基づいて、冷熱装置、加熱装置を制御することができる。例えば、ユーザが、10ページ分を1Jobとして印刷指令をした場合に、10ページ当たり(1Job当たり)のインク噴射量に基づいて、冷熱装置、加熱装置を制御してもよい。また、1ページを複数に分割して、その分割単位当たりインク噴射量に基づいて制御してもよい。1主走査当たりのインク噴射量でもよいし、1回の噴射当たりの噴射量も基づいて制御してもよい。また、単位時間(例えば、1ms)当たりの噴射量に基づいて制御してもよい。
【0098】
(6)上記第2の実施例において、印刷を開始する前に、各加熱装置の駆動を終了する例を示したが、印刷中も、1ページ当りのインク噴射量に応じた加熱装置を駆動し続ける制御を行ってもよい。
【0099】
(7)上記実施例において、供給路冷熱装置を備える場合と、加熱装置を備える場合を例示したが、加熱装置と冷却装置を別個に備える構成にしてもよい。
【0100】
(8)冷熱装置および加熱装置の制御の流れは、上記実施例に限定されない。上記第1〜第3の実施例の制御の内容を組み合わせてもよい。例えば、第2、3実施例における加熱装置の制御において、第1の実施例のように、インク温度に基づく制御を組み合わせて行うようにしてもよい。また、加熱温度、加熱時間、加熱装置の個数、設定量は、上記実施例に限定されない。
【0101】
(9)加熱装置の配置は、上記実施例に限定されない。インク供給チューブ210やインクカートリッジ100に設けてもよい。図11は、インクカートリッジの構成と、加熱装置および温度検知部の配置を示す模式図である。インクカートリッジ100内は、インク室104と、バッファ室106とに区画されている。インク室104は、インクカートリッジ100の内部に大気を導入するための大気開放孔102と連通している。バッファ室106は、インク供給口110と連通し、インクカートリッジ100内のインクがインク供給口110を介してインク供給チューブ210に流入される。インク室104とバッファ室106とは、連通路108を介して連通される。連通路108は、インク内に混入した気泡を補足して連通路108より下流のインクに気泡が混入することを抑制する機能を備える。
【0102】
図11に示すように、加熱装置112は、バッファ室106の底面に接触して設けられ、バッファ室106、インク室104内のインクを加熱する。温度検知部114は、バッファ室106内のインク温度を検出して、制御部600に送信すると、制御部600は、バッファ室106内のインク温度に基づいて、加熱装置112を制御することができる。
【0103】
(10)上記実施例において、インク貯留部として、インクカートリッジ100、インク供給チューブ210、サブタンク300、供給路400、印刷ヘッド500を備える構成を例示したが、インク貯留部の構成は上記実施例に限定されない。例えば、サブタンク300を備えない構成にしてもよい。
【0104】
(11)加熱装置、冷却装置は、上記した実施例に限定されない。加熱装置として、例えば、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱照射によって加熱する装置を用いてもよい。また、温水路を設け、温水の熱によって加熱する構成にしてもよい。また、冷却装置として、冷却水路を設け、冷却水によって、放熱させる構成にしてもよい。
【0105】
(12)上記第1の実施例において、インクの温度が[設定温度+5℃]よりも高くなった場合に、冷却する制御を例示したが、例えば、冷却装置を備えない構成にして、インクの温度が[設定温度+5℃]よりも高くなった場合に、加熱を停止する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
100…インクカートリッジ、102…大気開放孔、104…インク室、106…バッファ室、108…連通路、110…インク供給口、112…加熱装置、114…温度検知部、200…キャリッジ、200A…キャリッジ、200B…キャリッジ、210…インク供給チューブ、220…カートリッジ収納部、300…サブタンク、321…インク導入路、322…インク供給室、323…圧力室、324…インク導出路、325…流路、330…開閉部材、332…ばね部、334…蓋部、336…シールリング、340…第3加熱装置、352…フィルム部材、354…受圧板、400…供給路、420A…供給路冷熱装置、420B…第2加熱装置、500…印刷ヘッド、502…ヘッド内流路、504…共通インク室、505…インク供給口、506…圧力室、508…ノズル開口、509…アクチュエーター室、510…ピエゾ素子、511…振動板、512…第1加熱装置、514…ヘッド温度検知部、600…制御部、602…CPU、604…メモリー、606…入出力ポート、1000A、1000B、1100A、1100B、1100C…インクジェットプリンター、PP…印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置であって、
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給される液体を噴射する液体噴射部と、
前記液体を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記液体貯留部から前記液体噴射部に供給される前記液体の流速に基づいて、前記加熱部を制御する、液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記液体の温度に関する情報を取得する温度関連情報取得部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記液体の流速と、前記温度関連情報取得部によって取得された温度関連情報と、に基づいて前記加熱部を制御する、液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置であって、
前記液体を冷却する冷却部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記温度関連情報に基づいて、前記冷却部を制御する、液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記制御部は、
画像を表す画像データに基づいて、前記液体噴射部を制御すると共に、前記画像データに基づいて、前記液体の流速を導出する、液体噴射装置。
【請求項5】
液体噴射装置であって、
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給される液体を噴射する液体噴射部と、
前記液体を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
画像を表す画像データに基づいて、前記液体噴射部を制御すると共に、前記画像データに基づいて、前記加熱部を制御する、液体噴射装置。
【請求項6】
液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部から供給される液体を噴射する液体噴射部と、前記液体を加熱する加熱部と、前記加熱部を制御する制御部と、を備える、液体噴射装置を制御する制御方法であって、
前記液体貯留部から前記液体噴射部に供給される前記液体の流速に基づいて、前記加熱部を制御する工程を備える、液体噴射装置の制御方法。
【請求項7】
液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部から供給される液体を噴射する液体噴射部と、前記液体を加熱する加熱部と、を備える液体噴射装置を、コンピュータによって制御させるためのプログラムであって、
前記液体貯留部から前記液体噴射部に供給される前記液体の流速に基づいて、前記加熱部を制御する機能を、前記コンピュータに実現させる、プログラム。
【請求項8】
請求項7記載のプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−221466(P2010−221466A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69723(P2009−69723)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】