説明

液体噴射装置

【課題】フラッシングボックス内に吐出されるインクが高粘度であっても洗浄液の供給に
よりフラッシングボックス内を確実に洗浄することができ、かつ、供給された洗浄液がフ
ラッシングボックスから漏れ出すことのない液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体噴射装置が液体受容手段をノズル面と対向する状態から水平状態へと傾
動させる傾動手段と、液体受容手段に対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備え、
洗浄液供給手段は液体受容手段が水平状態のときに洗浄液を供給する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関し、特に、傾斜状態から水平状態へ傾動可能なフラッシン
グボックスを備える液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一形態であるインクジェット式プリンター(以下、単にプリンターとい
う。)は、インクタンクから供給されるインクを噴射する記録ヘッドを備え、この記録ヘ
ッドに設けられたノズルから印刷紙等の被記録媒体に対してインクを噴射することにより
印刷が実行されるようになっている。
このようなプリンターでは、印刷休止中等にノズル内に存在するインク中のインク溶媒
の揮発によりインクが増粘することで、ノズルが目詰まりしてドット抜け等の印刷不良を
招くことがある。また、長時間の印刷による連続使用によりノズルやインク内に気泡が生
じ、ノズルが目詰まりしてドット抜け等の印刷不良を招くことがある。
このような不具合を解消するため、プリンターには記録ヘッドのノズル面を封止するキ
ャッピング装置やフラッシング動作により吐出されるインクを受容するフラッシングボッ
クスを備えたクリーニングユニットが設けられる。
キャッピング装置は、液体噴射ヘッドにおけるノズル面側のインクの乾燥を防止する蓋
体としての機能と、ノズル面を覆ってシールした状態で吸引ポンプからの負圧を印加する
ことによりノズル面側からインクを強制的に吸引,排出してノズルの目詰まりを解消する
吸引機能とを有している。
一方、フラッシングボックスは、印刷とは無関係にインクを吐出させるフラッシング動
作により吐出されたインクを受容する箱体であって、フラッシングボックス内に噴射され
たインクは、フラッシングボックス内の底部に停留し、後に供給される洗浄液とともにフ
ラッシングボックス底部に設けられた排出口から排出される。
このようなプリンターにおいて、近年、記録ヘッドが水平面に対して所定角度傾斜した
状態で設けられたプリンターが提案されており、記録ヘッドが傾斜していることに対応し
てフラッシングボックス自体も傾斜して配置される。
そして、このような構成を有するフラッシングボックスに対してフラッシング動作の実
行により噴射された低粘度のインクは、傾斜する受容面に沿って重力方向下側に流動しな
がらフラッシングボックス底部の一方に偏った状態でフラッシングボックス内に滞留し、
この滞留する部分に設けられた排出口から排出されることとなる。
【0003】
しかしながら、高粘度のインクを使用する場合には、フラッシングボックス内に滞留し
たインクが流動せずにフラッシングボックス内全域に亘って滞留し、高粘度のインクを外
部に排出できないという欠点があった。また、フラッシングボックス内全域に滞留した高
粘度のインクを洗い流すために外部から洗浄液を供給することも考えられるが、フラッシ
ングボックス自体が傾斜しているため、供給された洗浄液が外部に漏れ出すおそれがあり
、採用し難いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−192679号公報
【特許文献2】特開2009−101634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決するため、フラッシングボックス内に吐出されるイン
クが高粘度であっても洗浄液の供給によりフラッシングボックス内を確実に洗浄すること
ができ、かつ、供給された洗浄液がフラッシングボックスから漏れ出すことのない液体噴
射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の構成として、傾斜したノズル面を有する液体噴射ヘッドと、前記液
体噴射ヘッドから噴射される液体を前記ノズル面と対向する状態で受容する液体受容手段
とを備える液体噴射装置であって、液体噴射装置が前記液体受容手段をノズル面と対向す
る状態から水平状態へと傾動させる傾動手段と、前記液体受容手段に対して洗浄液を供給
する洗浄液供給手段とを備え、前記洗浄液供給手段は前記液体受容手段が水平状態のとき
に洗浄液を供給する構成とした。
本発明によれば、液体受容手段に洗浄液を供給する洗浄液供給手段が、傾動手段により
ノズル面と対向する状態から水平状態へと傾動した液体受容手段に対して洗浄液を供給す
ることにより、液体受容手段の洗浄に伴って洗浄液が液体受容手段から漏れ出すことがな
くなり、かつ、洗浄液を液体受容手段全体に満たすことができるから液体受容手段内部を
所謂漬け置き洗浄することが可能となる。
【0007】
本発明に係る第2の構成として、前記液体噴射装置は、前記液体受容手段の開口部を封
止する封止手段を備え、前記封止手段は前記洗浄液が供給された後の前記液体受容手段の
開口部を水平状態で封止する構成とした。
本発明によれば、前記構成から生じる効果に加え、液体受容手段の開口部を封止手段に
より封止することから液体噴射装置の搬送に伴う振動,傾き等に起因して液体受容手段か
ら洗浄液が漏れ出すことを確実に防止することができる。さらに、液体噴射装置の長期間
に渡る不使用に起因する洗浄液の蒸発に伴う液体受容手段内へのインク残留,こびりつき
を確実に防止することができる。
【0008】
本発明に係る第3の構成として、前記液体受容手段は前記洗浄液を外部に排出する排出
口を備え、前記排出口からの前記洗浄液の排出は前記液体受容手段が水平状態から傾斜状
態となる前に行われることを特徴とする。
本発明によれば、前記構成から生じる効果に加え、液体受容手段に設けられた排出口か
らの洗浄液の排出は、液体受容手段が水平状態から傾斜状態となる前に行われることから
、傾斜状態となることに起因する洗浄液の漏れ出しを確実に防止することができる。
【0009】
本発明に係る第4の構成として、前記傾動手段は前記液体噴射ヘッドを搭載するキャリ
ッジの走査方向と平行な回転軸により前記液体受容手段の傾斜角度を変位させる構成とし
た。
本構成によれば、前記構成から生じる効果に加え、液体受容手段の傾斜角度を極めて容
易に変位させることが可能となる。
【0010】
本発明に係る第5の構成として、前記傾動手段は前記液体受容手段を搭載する湾曲レー
ルを有し、当該湾曲レールは前記液体噴射ヘッドのノズル面と平行して延長する直線部分
と水平方向に延長する直線部分とを有する構成とした。
本構成によれば、前記構成から生じる効果に加え、液体受容手段が湾曲レールに搭載さ
れることから、簡易な構造で、かつ、液体受容手段の傾斜角度を安定して変位させること
ができる。
また、湾曲レールがノズル面と平行して延長する直線部分を有していることから、液体
受容手段が当該部分に位置するときには、液体受容手段の傾斜が記録ヘッドのノズル面の
傾斜と平行となるため、記録ヘッド側から噴射されるインクを確実に受容することが可能
となる。
さらに、湾曲レールがする水平方向に延長する直線部分を有していることから、液体受
容手段が当該部分に位置するときには、内部に供給された洗浄液に漏れを生じさせずに保
持することが可能となる。
【0011】
本発明に係る第6の構成として、前記傾動手段は前記液体受容手段を搭載する湾曲レー
ルを有し、当該湾曲レールは前記液体受容手段が傾斜状態にあるときに、前記液体受容手
段における下方に位置するキャリッジの走査方向と平行な回転軸を回転中心として前記液
体受容手段を傾動させる円弧部分を有する構成とした。
本構成によれば、前記構成から生じる効果に加え、湾曲レールは液体受容手段が傾斜状
態にあるときに、液体受容手段における下方に位置するキャリッジの走査方向と平行な回
転軸を回転中心として液体受容手段を傾動させることから、極めて簡易な構成で液体受容
手段の傾斜角度を変位させることができる。
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではなく、これ
らの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。また、以下、発明の実施形態
を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するも
のではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に
必須であるとは限らず、選択的に採用される構成又は工程をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の斜視図。
【図2】本発明の実施形態1に係るクリーニングユニットの斜視図。
【図3】本発明の実施形態1に係るクリーニングユニットをフラッシングボックス側から見た側面図及びフラッシングボックスの駆動機構を示す図。
【図4】本発明の実施形態1に係るキャップの昇降機構の動作図。
【図5】本発明の実施形態1に係るフラッシング動作のフローチャート。
【図6】本発明の実施形態2に係るフラッシングボックスの側面図。
【図7】本発明の実施形態3に係るフラッシングボックスの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態1
以下、本発明の実施形態について説明する。 図1は液体噴射装置の一例としてのプリ
ンター1の外観斜視図である。
図1に示すように、プリンター1は、ハウジング1Aの長手方向に延長して架設される
ガイド軸2,2と、ガイド軸2,2に沿ってハウジング1Aの長手方向(主走査方向)に
移動可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3に搭載される記録ヘッド4と、ハウジング
1Aの両端に設けられたプーリーに掛け渡され、キャリッジ3と接続されるタイミングベ
ルト7と、プーリーを回転させてタイミングベルト7を駆動する図外のキャリッジモータ
ーと、記録ヘッド3のメンテナンスを行うクリーニングユニット5と、操作パネル6及び
図外の制御装置とを備える。
【0014】
記録ヘッド4における破線で示す被記録媒体と対向する面には、ブラックインク用吐出
口及びカラーインク用吐出口が配列されたノズル面4aが形成される(図2参照)。
キャリッジ3の側方には、例えばブラック,シアン,マゼンダ,イエロー等の各色を貯
留する図外のインクタンクに接続されたインクチューブ8がジョイントを介して接続され
る。
【0015】
以上の構成からなるプリンター1により、破線で示す紙等の被記録媒体に印刷記録を行
う場合には、記録ヘッド4のノズル面4aからインクを吐出させながら図外のキャリッジ
モーター駆動することによりキャリッジ3を記録領域P1内で往復移動させ、図外の紙送
り機構により被記録媒体をキャリッジ3の往復方向(主走査方向)と直交する方向に搬送
することにより行われる。
また、印刷記録を行わない場合には、キャリッジ3が記録領域P1から非記録領域P2
のホームポジションHPへ移動する。非記録領域P2にはクリーニングユニット5が配置
される。クリーニングユニット5の操作パネル6側にはキャッピング装置10が配置され
、記録領域P1側には後述の傾動手段20に搭載されたフラッシングボックス21が配置
される。
ホームポジションHPは、非記録領域P2におけるキャッピング装置10と対応する領
域であって、休止状態、又は電源が切断された状態等、印刷動作を行わないときにはキャ
リッジ3がキャッピング装置10上に停止する。
【0016】
以下、クリーニングユニット5について説明する。図2はクリーニングユニット5の斜
視図である。同図においてクリーニングユニット5は、互いに並列して配置されたキャッ
ピング装置10と、上方から吐出されるインクを受容するフラッシングボックス21とを
備える。キャッピング装置10は、図外の昇降機構により記録ヘッド4との対面方向に上
昇し、記録ヘッド4のノズル面4aに密着するキャッピング本体11と、キャッピング本
体11がノズル面4aに密着したときにキャッピング本体11とノズル面4aとにより形
成される空間に負圧を印加する図外の吸引ポンプとを備え、キャッピング本体11がノズ
ル面4aに密着して封止することによりインクの乾燥を防止するとともに、ノズル面4a
を封止した状態で吸引ポンプからの負圧を印加してノズル面4aからインクを強制的に吸
引,排出してノズルの目詰まりを解消することができる。なお、電源が切断された状態で
はキャッピング本体11がノズル面4aに密着して封止した状態に維持される。
【0017】
図3(a),(b)は、図2のクリーニングユニット5をフラッシングボックス21側
から見た側面図である。
クリーニングユニット5には、記録ヘッド4から吐出されるインクを受容するフラッシ
ングボックス21と、フラッシングボックス21を傾斜状態Gから水平状態Hに傾動させ
ながら移動させる一対の湾曲レール22からなる傾動手段20と、フラッシングボックス
21内に供給される洗浄液を貯留する洗浄液タンク24と、フラッシングボックス21が
水平状態にあるときにフラッシングボックス21の開口部21bを封止する封止手段とし
てのキャップ37及びキャップ37を開口部に対して密着,離間させる昇降機構40が配
置される。
【0018】
フラッシングボックス21は、上方開口、かつ、矩形状の箱体であって、箱体の底板の
上表面が上方から吐出されるインクの受け面21aとして機能する。なお、フラッシング
ボックス21内に吸湿性を有する吸湿シートを配置して、上方から吐出されるインクを吸
湿シートにより吸収保持する構成としてもよい。
図3(a)に示すようにフラッシングボックス21の底部には、一対の車軸保持部27
が前後方向に隔てて形成される。車軸保持部27は、主走査方向に延長する車軸29を軸
支するものであって、車軸29の両端部に車輪28が固定される。車輪28の外周面は、
後述のベルトラック23のラックピッチと一致するように矩形の歯形に形成される。また
、フラッシングボックス21の底部には、車軸29の一部に固着された歯車29aと噛み
合う歯車30aを有する駆動モーター30が固定され、当該駆動モーター30が駆動する
ことにより車輪28が回転可能である。さらに、フラッシングボックス21の底部には、
供給された洗浄液を排出する排出口が形成され、当該排出口と接続される排水管25が下
方に延長する。排水管25は排出バルブ26を備え、制御部100の信号に基づいて開閉
することにより、フラッシングボックス21内の洗浄液を排水可能である。
【0019】
湾曲レール22は、湾曲レール22内部の下面側に固着され、矩形の歯形を有するベル
トラック23を有し、プリンター1の前方から後方に向かって傾斜して立ち上がる直線部
分L1と、プリンター1の前後方向に水平に延長する直線部分L2と、直線部分L1及び
直線部分L2を結ぶように延長する曲線部分R1を有する。一対の湾曲レール22は、断
面がコの字状に形成される長尺体であって、コの字状の開放側が互いに対向するように平
行して敷設される。
【0020】
湾曲レール22の直線部分L1は、傾斜する記録ヘッド4のノズル面4aと平行に傾斜
する区間であって、フラッシングボックス21が当該区間に位置する場合には、フラッシ
ングボックス21の受け面21aがノズル面4aと平行して対向する。
湾曲レール22の直線部分L2は、上方に位置するキャップ37のシール部材38と平
行、即ち、水平に延長する区間であって、フラッシングボックス21が当該区間に位置す
る場合には、フラッシングボックス21の開口部21bがシール部材38と平行して対向
する。
湾曲レール22の曲線部分R1は、フラッシングボックス21を傾斜した状態から水平
状態へと、又は水平状態から傾斜した状態へと徐々に傾動させる区間であって、フラッシ
ングボックス21が当該区間を通過することによりその傾きが徐々に変位する。
つまり、湾曲レール22に搭載されたフラッシングボックス21は駆動モーター30の
駆動により、湾曲レール22に設けられたベルトラック23と噛み合う車輪28が回転す
ることにより、湾曲レール22に沿って移動可能であって、フラッシングボックス21が
傾斜した状態となるフラッシング位置FL1、フラッシングボックス21が水平状態とな
る洗浄位置FL2及び待機位置FL3の3つの位置に移動可能である。さらに、フラッシ
ングボックス21は湾曲レール22により、フラッシング位置FL1においてノズル面4
aの傾きと対応するように傾斜し、洗浄位置FL2及び待機位置FL3において水平とな
るように、その傾きを変位することが可能である。
換言すれば、フラッシングボックス21は、曲線部分R1を一部に有する円の中心をキ
ャリッジの走査方向と平行に貫く回転軸を回転中心として傾動し、その傾斜角度を変位す
る。
【0021】
洗浄液タンク24は、クリーニングユニット5のケース部分を内外に貫通する注入口2
4aを上部面に備え、タンク下部の後方に排出口24bを備える。注入口24aは、外部
から洗浄液タンク24内に洗浄液を供給するための孔である。
排出口24bは、電磁バルブ33を備え、電磁バルブ33は制御装置100が出力する
信号に基づいて開閉し、フラッシングボックス21に対する洗浄液の供給量が制御される
。洗浄液タンク24は、フラッシングボックス21が洗浄位置FL2に位置するときに当
該フラッシングボックス21よりも上方に位置するように取り付けられ、フラッシングボ
ックス21が洗浄位置FL2に位置したときに、フラッシングボックス21内に洗浄液を
供給することでフラッシングボックス21内のインクを洗浄する。
【0022】
封止手段を構成するキャップ37及び昇降機構40は、洗浄液タンク24よりも後方に
位置する。
キャップ37は、フラッシングボックス21の開口部21bを形成する縁部21cと密
着するシール部材38と、キャップ37内外に貫通する微細な空気孔とを有する。
そして、フラッシングボックス21が待機位置FL3の位置に位置するときにキャップ
37が昇降機構40の動作により下降することによりフラッシングボックス21の開口部
21bは密封状態に封止され、フラッシングボックス21内に満たされた洗浄液を蒸発さ
せることなく、フラッシングボックス21内を漬け置き洗浄することが可能となる。
【0023】
図4は、昇降機構40の動作図である。
図4に示すように、キャップ37を昇降させる昇降機構40は、湾曲レール22の直線
部分L2に対して垂直に延長する支持ステー41と、L字状のキャップ保持ステー42と
、スライドステー43と押圧板44とにより構成される。支持ステー41は、上下方向に
延長する長孔41aと、前後方向に延長する長孔41bとを有する。
キャップ保持ステー42は、一方の片の先端が半円形に形成され、支持ステー41の長
孔41aに嵌合する2つの凸部42aが支持ステー41の長孔41aが延長する方向に沿
って形成される。また、他方の片には、キャップ37を固定するネジなどの固定具が貫通
する円孔42bが形成される。また、スライドステー43は、一側面にスライドステー4
3の後方に向かうに従って幅広となる傾斜面を備え、かつ、幅方向中央に支持ステー41
の長孔41bと嵌合する複数の凸部43aが形成される。また、スライドステー43は、
前方の先端部から立ち上がる押圧板44を有し、当該押圧板44には、フラッシングボッ
クス21の後側壁が当接する。
支持ステー41とスライドステー43には、凸部47と凸部48が形成され、凸部47
;48間にスプリング49の両端がそれぞれ掛け渡される。以下、昇降機構40による昇
降動作について説明する。
【0024】
まず、図4(a)に示すように、押圧板44に力が作用していないとき、即ち、フラッ
シングボックス21の後側壁が押圧板44に当接していないときには、スライドステー4
3はスプリング49の張力により前方側に移動し、押圧板44は前方に突出した状態に維
持される。
そして、このときキャップ37を保持する保持ステー42の半円形の先端部は、スライ
ドステー43の傾斜面と接触することにより上方に持ち上げられ、キャップ37は下方に
位置するフラッシングボックス21から離れる方向に上昇する。
一方、図4(b)に示すように、押圧板44に力が作用しているとき、即ち、フラッシ
ングボックス21の後側壁が押圧板44に当接しているときには、スライドステー43は
スプリング49の張力に抗して後方側に移動し、押圧板44が後方に退避した状態に維持
される。
そして、このときキャップ37を保持する保持ステー42の半円形の先端部は、スライ
ドステー43の傾斜面に沿って下方に移動し、キャップ37は下方に位置するフラッシン
グボックス21に近づく方向に下降し、キャップ37に設けられたシール部材38がフラ
ッシングボックス21の縁部21cと密着し、フラッシングボックス21の開口部21b
が封止される。
【0025】
図2及び図3に示すように、クリーニングユニット5の下方には、廃液タンク50が設
けられる。廃液タンク50とフラッシングボックス21とは、フラッシングボックス21
の動作に追従可能なシリコンチューブ51により接続され、シリコンチューブ51の一端
が廃液タンク50の受容口に接続され、他端がフラッシングボックス21の排水管25に
接続されることにより、フラッシングボックス21内を洗浄した廃液が廃液タンク50に
回収される。なお、廃液タンク50と排水管25との間に負圧ポンプを設け、フラッシン
グボックス21内から廃液を強制的に排出する構成としてもよい。
【0026】
図5は、制御装置100により出力される制御信号に基づくフラッシングボックス21
の動作を示すフローチャートである。以下、プリンター1に電源を投入した場合の初期動
作を例としてフラッシングボックス21の動作について説明する。なお、フラッシングボ
ックス21は電源投入前に待機位置FL3に位置しているものとする。
まず、制御装置100は、電源投入がなされたことに基づいて、フラッシングボックス
21の下側に設けられた排出バルブ26を開放し、前回の使用により供給された洗浄液を
廃液タンク50内に排出する(S101)。
次に、駆動モーター30を駆動することによりフラッシングボックス21を待機位置F
L3からフラッシング位置FL1へと移動させる(S102)。
フラッシングボックス21がフラッシング位置FL1に移動した後には、記録領域P1
内におけるキャリッジ3の往復動作による印刷動作が開始され、往復動作における適宜の
タイミングにより非記録領域P2内におけるフラッシング動作が実行される。フラッシン
グ動作が実行される度に記録ヘッド4のノズルから吐出されるインクは、フラッシングボ
ックス21の受け面21aに堆積し、一部のインクがフラッシングボックス21の排水管
25から排出バルブ26を介して廃液タンク50内に排出される(S103)。
次に、印刷動作が完了し、プリンター1の電源がOFF動作されると、制御装置100
は電源がOFF動作されたことに基づいて、駆動モーター30を駆動し、フラッシングボ
ックス21をフラッシング位置FL1から洗浄位置FL2へと移動させる(S104)。
次に、洗浄位置FL2にフラッシングボックス21が移動すると、洗浄液タンク24の
電磁バルブ33が開放され、フラッシングボックス内の流し洗浄が行われる(S105)
。なお、このときフラッシングボックス21の排出バルブ26は開放状態に維持され、洗
浄液は廃液タンク50内に排出される。
次に、一定時間の流し洗浄が終了した後、排出バルブ26を閉じることにより、所定量
の洗浄液がフラッシングボックス21内に供給されるまで洗浄液を供給し、フラッシング
ボックス21内を洗浄液により満たした状態に維持する(S106)。
次に、駆動モーター30を駆動することにより、フラッシングボックス21内を洗浄位
置FL2から待機位置FL3に移動させる(S107)。
フラッシングボックス21が待機位置FL3に近づいて、押圧板44がフラッシングボ
ックス21の後端面と当接し、所定の待機位置FL3まで押圧板44が押圧されると、キ
ャップ保持ステー42とスライドステー43とによるカム機構により、キャップ37が下
降してフラッシングボックス21の開口部21bを封止して、一連の動作が終了する。
【0027】
以上、S101乃至S107から明らかなとおり、本発明の主要部たるフラッシングボ
ックス21は、水平状態である洗浄位置FL2において洗浄液の供給,排出が実行され、
フラッシング位置FL1に移動する前に常に洗浄液の排出が実行されることから、傾斜状
態となったフラッシングボックス21から洗浄液が漏れ出すことを確実に防止することが
できる。
さらに、洗浄位置FL2から待機位置FL3に移動する前には洗浄液が供給されること
から、流し洗浄によって流し切れなかった高粘度のインクを待機位置FL3において漬け
置き洗浄することができるので、残存するインクを確実に洗浄,排出することが可能とな
る。
【0028】
以上説明したように、本実施形態におけるプリンター1によれば、ノズル面4aが傾斜
して配置される記録ヘッド4に対応してフラッシングボックス21の受け面21aが、フ
ラッシング動作を行うフラッシング位置FL1において、ノズル面4aに平行して対向す
るように位置し、記録ヘッド4によるフラッシング動作が行われていない場合には水平状
態、即ち、フラッシングボックス21の洗浄位置FL2又は待機位置FL3に位置し、洗
浄位置FL2において洗浄液が供給された後に待機位置FL3に移動することから、フラ
ッシングボックス21内に供給される洗浄液は、常にフラッシングボックス21が水平状
態にある場合に供給され、フラッシング位置FL1に移動する前に排出されることとなり
、フラッシングボックス21から洗浄液が漏れ出すことがない。
また、フラッシング動作の待機位置FL3が水平状態のため、フラッシングボックス2
1に洗浄液を保持したまま、次のフラッシング動作まで待機できるので、受け面21aの
漬け置き洗浄を行うことができる。
また、フラッシングボックス21が記録ヘッド4を搭載するキャリッジ3の主走査方向
と平行な回転軸を中心にして傾動すること、即ち、フラッシングボックス21が湾曲レー
ル22に沿って移動することにより、受け面21aの角度を傾斜状態から水平状態に容易
に変位させることができる。
【0029】
実施形態2
以下、本発明に係る第2の実施形態について説明する。なお、実施形態2において実施
形態1と同一構成については説明を省略し、実施形態1と同一の符号を用いて説明する。
実施形態1では、レール22の湾曲部分R1を通過させることによりフラッシングボッ
クス21を傾動させる構成としたが、実施形態2においては湾曲部分R1に相当する部分
を省略した点で実施形態1と異なる。
図6に示すように、フラッシングボックス21を傾動させるレール61からなる傾動手
段20は、直線部分L4と、直線部分L4の上端部から下方に湾曲して延長する湾曲部分
R2により構成され、レール61には、実施形態1と同様に全長に亘ってベルトラック2
3が固着される。また、駆動モーター30は、フラッシングボックス21が傾斜状態にあ
るときに上側となる車輪28を保持する車軸29近傍に取り付けられる。
そして、フラッシングボックス21がフラッシング位置FL1に位置する状態において
、駆動モーター30が駆動されると、フラッシングボックス21は、傾斜する記録ヘッド
4のノズル面4aと平行な直線部分L4の上方に移動し、上側の車輪28が直線部分L4
の上端部に達すると、上側の車輪28が下側の車輪28を保持する車軸29を回転中心と
して湾曲部分R2に沿って徐々に下降し、下降に伴ってフラッシングボックス21の傾斜
角度が傾斜状態から水平状態へと変化し、フラッシング位置FL1から待機及び洗浄位置
FL4への移動が完了する。
即ち、フラッシングボックス21は、フラッシングボックス21が傾斜状態にあるとき
に、下方に位置するキャリッジの走査方向と平行な車軸29を回転中心として傾動し、そ
の傾斜角度を変位する。
【0030】
待機及び洗浄位置FL4に移動したフラッシングボックス21内には上方に位置する洗
浄液タンク24から洗浄液が供給され、フラッシングボックス21内が洗浄される。そし
て、実施形態1と同様に排出バルブ26が閉じられ、洗浄液が所定時間供給された後にフ
ラッシングボックス21が所定量の洗浄液によって満たされると、洗浄液タンク24の電
磁バルブ33が閉じられる。
【0031】
本例におけるキャップ37を開閉する昇降機構40は、水平状態となったフラッシング
ボックス21に対して平行に配置されるレール62上に搭載される。昇降機構40は、レ
ール62の延長方向に沿って固着された図外のベルトラック23に噛み合うモーター63
を備え、モーター63が駆動することにより昇降機構40がフラッシングボックス21に
対して近接し、昇降機構40の押圧板44がフラッシングボックス21の後壁面に押圧さ
れることで、フラッシングボックス21の開口部21bを封止する。洗浄動作が完了した
フラッシングボックス21は、キャップ37で開口部21bが封止され、前記実施形態1
と同様に漬け置き洗浄が行われる。
【0032】
以上説明したように、実施形態2では、フラッシングボックス21を傾斜状態から水平
状態にした後に、その位置において洗浄と待機を行うようにしたものであり、実施形態1
における傾動手段たる湾曲レール22と比較してレールの延長距離を短くできるのでクリ
ーニングユニット5自体をコンパクトにすることができる。
【0033】
実施形態3
以下、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
実施形態2では、フラッシングボックス21をレール61の直線部分L4の上端部まで
移動させた後にフラッシングボックス21を傾動させる構成としたが、実施形態3におい
ては直線部分L4に相当する部分を省略した点で実施形態2と異なる。
図7に示すように、本実施形態における傾動手段20は、孤上に湾曲する一対の湾曲レ
ール64からなり、湾曲レール64には前記実施形態1及び実施形態2と同様にベルトラ
ック23が固着される。フラッシングボックス21は、フラッシングボックス21が傾斜
したときに上側となる車輪28を保持する車軸29近傍に取り付けられた駆動モーター3
0を備え、当該モーターが駆動することにより、フラッシングボックス21は、上側の車
輪28が下側の車輪28を保持する車軸29を回転中心として湾曲レール64に沿って徐
々に下降し、下降に伴ってフラッシングボックス21の傾斜角度が傾斜状態から水平状態
へと変位し、記録ヘッド4によるフラッシング動作が可能な傾斜状態から、洗浄液タンク
24による洗浄液の供給及び昇降機構40の駆動による封止動作が可能な状態へと傾動す
る。即ち、フラッシングボックス21は、前記実施形態2と同様にフラッシングボックス
21が傾斜状態にあるときに、下方に位置するキャリッジ3の走査方向と平行な車軸29
を回転中心として傾動し、その傾斜角度を変位する。
【0034】
以上説明したように、実施形態3では、フラッシングボックス21を移動させることな
く傾斜状態から水平状態に傾動させることができるので、部品点数を限りなく抑えること
が可能となり、クリーニングユニット5自体を一層コンパクトにすることができる。
【0035】
以上、実施形態1乃至実施形態3を通じて本発明に係る液体噴射装置を説明したが、本
発明の技術的範囲は上記実施形態に何ら限定されることはなく、多様な変更、改良を行い
得ることが当業者において明らかである。また、そのような多様な変更、改良を加えた形
態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0036】
1 プリンター、2 ガイド軸、3 キャリッジ、4 記録ヘッド、4a ノズル面、
5 クリーニングユニット、6 操作パネル、7 タイミングベルト、
8 インクチューブ、10 キャッピング装置、11 キャッピング本体、
20 傾動手段、21 フラッシングボックス、21a 受け面、21b 開口部、
22 湾曲レール、23 ベルトラック、24 洗浄液タンク、24b 排出口、
25 排水管、26 排出バルブ、27 車軸保持部、28 車輪、29 車軸、
29a 歯車、30 駆動モーター、33 電磁バルブ、37 キャップ、
40 昇降機構、50 廃液タンク、51 シリコンチューブ、61 レール、
100 制御装置、P1 記録領域、P2 非記録領域、
FL1 フラッシング位置、FL2 洗浄位置、FL3 待機位置、R2 湾曲部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜したノズル面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから噴射される液体を前記ノズル面と対向する状態で受容する液体受
容手段とを備える液体噴射装置であって、
液体噴射装置が前記液体受容手段をノズル面と対向する状態から水平状態へと傾動させる
傾動手段と、
前記液体受容手段に対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備え、
前記洗浄液供給手段は前記液体受容手段が水平状態のときに洗浄液を供給することを特徴
とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体噴射装置は、前記液体受容手段の開口部を封止する封止手段を備え、
前記封止手段は前記洗浄液が供給された後の前記液体受容手段の開口部を水平状態で封止
することを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体受容手段は前記洗浄液を外部に排出する排出口を備え、
前記排出口からの前記洗浄液の排出は前記液体受容手段が水平状態から傾斜状態となる前
に行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記傾動手段は前記液体噴射ヘッドを搭載するキャリッジの走査方向と平行な回転軸に
より前記液体受容手段の傾斜角度を変位させることを特徴とする請求項1乃至請求項3い
ずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記傾動手段は前記液体受容手段を搭載する湾曲レールを有し、
当該湾曲レールは前記液体噴射ヘッドのノズル面と平行して延長する直線部分と水平方向
に延長する直線部分とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の
液体噴射装置。
【請求項6】
前記傾動手段は前記液体受容手段を搭載する湾曲レールを有し、
当該湾曲レールは前記液体受容手段が傾斜状態にあるときに、前記液体受容手段における
下方に位置するキャリッジの走査方向と平行な回転軸を回転中心として前記液体受容手段
を傾動させる円弧部分を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の
液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−88307(P2011−88307A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242161(P2009−242161)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】