説明

液体噴射装置

【課題】噴射ノズルを封止している状態から液体の噴射を再開する際に、位置ずれが生じることなく、迅速に噴射を再開可能で、しかも簡素な構造の液体噴射装置を提供する。
【解決手段】噴射ヘッド32のノズル面に当接することによって噴射ノズルを封止する封止部材42を噴射ヘッドと被噴射媒体との間に設けておき、封止部材を移動させることによって、噴射ノズルが封止された状態と、噴射ノズルが被噴射媒体に向けて液体を噴射可能な状態とに切り換え可能とする。こうすれば、噴射ノズルを封止可能としながら、噴射ヘッドは元の位置(液体を噴射する時の位置)から移動させなくてもよいので、液体の噴射を再開する時の噴射ヘッドの位置ずれを回避することができるとともに、液体噴射装置の構造を簡素なものとすることができ、さらに、液体の噴射を迅速に再開させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンターでは、印刷媒体上にインクを噴射することで画像を
印刷する。インクを噴射する位置や噴射量は極めて精度良く制御することが可能であるた
め、高画質な画像を印刷することができる。また、この技術を利用して各種の機能材料を
含んだ液体を基板上に噴射することにより、電極やセンサーなどの各種機能部品を形成す
ることも提案されている。
【0003】
こうした液体噴射装置では、被噴射媒体(印刷媒体)上で噴射ヘッドを往復動(主走査
)させながら、被噴射媒体(印刷媒体)の位置を少しずつ移動(副走査)させることによ
って液体を噴射することが一般的であるが、その一方で、噴射ヘッドは移動させずに被噴
射媒体(印刷媒体)だけ少しずつ移動(副走査)させて液体を噴射する方法も提案されて
いる。尚、本明細書中では、前者の噴射方式を「シリアル噴射方式」と呼び、後者の噴射
方式を「ライン噴射方式」と呼ぶこととする。
【0004】
何れの噴射方式を採用した場合でも、液体を噴射していない間は、液体が変質しないよ
うに噴射ヘッドにキャップを押し当てることで、噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルを封
止しておく必要がある。噴射ヘッドを主走査させるシリアル噴射方式では、被噴射媒体が
搬送される領域外にキャップ部材を設けておき、噴射ヘッドをここまで移動させてキャッ
プ部材を押しつけることで噴射ノズルを封止する。一方、ライン噴射方式の液体噴射装置
では大きな噴射ヘッドが搭載されることが多いので、シリアル噴射方式と同様な方法で噴
射ノズルを封止しようとすると、大きな噴射ヘッドを移動させる必要が生じて液体噴射装
置が大きくなる。
【0005】
そこで、ライン噴射方式では、噴射ヘッドの隣にキャップ部材を設けておき、噴射ヘッ
ドの底面側(被噴射媒体の側)に形成された噴射ノズルがキャップ部材の側を向くように
、噴射ヘッドを回転させた後、キャップ部材を押しつけることによって噴射ノズルを封止
する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−6768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1の技術には次のような問題があった。先ず、噴射ノズルを
封止していた状態から液体の噴射を再開するためには、回転していた噴射ヘッドを元の位
置まで戻さなければならない。このとき、戻した位置が少しでもずれると、同じ位置に液
体を噴射することができなくなる。また、正確に元の位置まで戻さなければならないので
、噴射ヘッドを回転させるための機構が複雑となる。更に、噴射ヘッドを回転させるため
に要する時間も長くなるので、速やかに噴射を再開することが困難となる。
【0008】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、噴射ノズルを封止している状態から液体の噴射を再開する際に、位置ず
れが生じることがなく、迅速に噴射を再開可能で、しかも簡素な構造の液体噴射装置を提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体噴射装置は次の構成を
採用した。すなわち、
噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから、被噴射媒体に向かって液体を噴射する液体噴
射装置であって、
前記噴射ヘッドと前記被噴射媒体との間に設けられて、前記噴射ノズルに当接する封止
部材と、
前記封止部材を前記噴射ノズルに当接させた状態と、該封止部材を該噴射ノズルに当接
させず、該噴射ノズルが前記被噴射媒体に向けて前記液体を噴射可能な状態とに切り換え
る切換手段と
を備えることを要旨とする。
【0010】
このような本発明の液体噴射装置においては、噴射ヘッドから液体を噴射しない場合に
は、噴射ノズルに封止部材を当接させて噴射ノズルを封止することで液体の変質を防止す
る。また、噴射ヘッドから液体を噴射する場合には、封止部材を噴射ヘッドの噴射ノズル
に当接させない状態にすることにより、噴射ノズルから被噴射媒体に向けて液体を噴射可
能な状態に切り換える。
【0011】
こうすれば、噴射ノズルを封止する際に噴射ヘッドを元の位置(液体を噴射するときの
位置)から別の位置に移動させなくてもよい。従って、噴射ノズルを封止することで液体
の変質を防ぐことが可能でありながら、液体の噴射を再開する時に噴射ヘッドの位置ずれ
が生ずることを回避することができる。また、噴射ヘッドを移動させる必要がなければ、
移動させた噴射ヘッドを元の位置に正確に戻すための機構も不要となるので、液体噴射装
置の構造を簡素なものとすることが可能である。さらに、噴射ヘッドを元の位置に移動す
るための時間を要することもないので、液体の噴射を迅速に再開させることが可能である
。加えて、本発明の封止部材は噴射ノズルに当接した状態から当接しない状態に移動する
過程で、封止部材によって噴射ノズルに付着した余分の液体などを拭い取る(ワイピング
する)ことが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の液体噴射装置は、次のように構成することとしてもよい。すな
わち、封止部材の外表面の一部を円柱の周側面を構成する曲面形状に形成しておき、この
周側面を噴射ヘッドの噴射ノズルに当接させることで噴射ノズルを封止する。そして、周
側面を構成する円柱の中心軸を回転軸として周側面が噴射ノズルに当接しなくなるまで封
止部材を回転させることにより、噴射ノズルから被噴射媒体に向けて液体を噴射可能な状
態に切り換えることとしてもよい。
【0013】
このような構成によっても、噴射ヘッドを移動させることなく噴射ノズルを封止する状
態と噴射ノズルから液体を噴射可能な状態とを切り換えることができるので、噴射ヘッド
の位置ずれを防止するとともに、液体噴射装置の構造を簡素なものとすることができる。
また、封止部材を回転させることにより、噴射ノズルが封止された状態から液体を噴射可
能な状態に短時間で切り換えることができる。従って、前述したように、液体の噴射を再
開する際の噴射ヘッドの移動時間が削減されることと相まって、液体の噴射をより迅速に
再開させることが可能である。
【0014】
また、上述した本発明の液体噴射装置は、次のように構成することとしてもよい。円柱
形状の部材の周側面に貫通穴を設けて形成された封止部材の周側面を噴射ヘッドの噴射ノ
ズルに当接させることで噴射ノズルを封止する。そして、円柱形状の中心軸を回転軸とし
て貫通穴の開口部が噴射ノズルの位置に来るまで封止部材を回転させることにより、噴射
ノズルが被噴射媒体に向けて液体を噴射可能な状態に切り換えることとしてもよい。
【0015】
このような構成によっても、噴射ヘッドを移動させることなく噴射ノズルを封止するか
否かを切り換えることができるので、噴射ヘッドの位置ずれを防止するとともに、液体噴
射装置の構造を簡素なものとすることができる。また、封止部材を回転させることで上述
した切換動作を短時間で行うことができるので、液体の噴射を迅速に再開させることが可
能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ラインプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構造を示した説明図である。
【図2】ヘッドユニットを底面側から見たときの状態を示す説明図である。
【図3】本実施例の噴射ノズルの封止機構の構成を示した説明図である。
【図4】印刷を行っていないとき及び印刷中の封止機構の様子を示した説明図である。
【図5】第1変形例の噴射ノズルの封止機構の構造を示した説明図である。
【図6】第2変形例の噴射ノズルの封止機構の構造を示した説明図である。
【図7】第3変形例の噴射ノズルの封止機構の構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
B.本実施例の噴射ノズルの封止機構:
C.変形例:
C−1.第1変形例:
C−2.第2変形例:
C−3.第3変形例:
【0018】
A.装置構成 :
図1は、ラインプリンター1を例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構造を示
した説明図である。図示されているように、本実施例のラインプリンター1は、大まかに
は箱型の外形形状をしており、上面には、各種の情報を表示するモニター2や、ユーザー
が操作するための操作パネル3などが設けられている。また、ラインプリンター1の前面
には、インクカートリッジを交換するためのカートリッジ交換扉4や、印刷用紙を装填す
るための給紙扉5が設けられており、更に、向かって右側面には、印刷された印刷用紙が
排出される排紙口6が設けられている。
【0019】
ラインプリンター1の内部には、各種の機能を実行する複数のユニットあるいは部品が
搭載されている。先ず、ラインプリンター1のほぼ中央の位置には、印刷用紙にインクを
噴射するヘッドユニット30が設けられている。また、ヘッドユニット30の右下の位置
にはカートリッジホルダー60が設けられており、カートリッジホルダー60には、イン
クが充填されたインクカートリッジ62が装着される。尚、本実施例のラインプリンター
1では、黒インク(Kインク)、シアンインク(Cインク)、マゼンタインク(Mインク
)、イエローインク(Yインク)の4色のインクを印刷に使用することが可能であり、こ
のことに対応して、カートリッジホルダー60には、各色のインクが充填された4つのイ
ンクカートリッジ62が装着される。
【0020】
図1の紙面上でヘッドユニット30の左下の位置には、印刷用紙が装填される給紙カセ
ット10が設けられており、給紙カセット10の右端の上面に接する位置に、給紙ローラ
ー20が設けられている。給紙ローラー20の奥側には給紙モーター22が接続されてお
り、給紙モーター22を駆動して給紙ローラー20を回転させると、給紙カセット10か
ら印刷用紙が一枚、ヘッドユニット30に向かって搬送されるようになっている。尚、図
1には、印刷用紙の搬送経路が太い破線で示されている。
【0021】
また、本実施例のラインプリンター1には、ヘッドユニット30の底面側(印刷用紙と
面する側)と印刷用紙の搬送経路との間に封止機構40が設けられている。詳細には後述
するが、本実施例の封止機構40は、印刷を行っていない状態では、ヘッドユニット30
の底面に設けられた噴射ノズルを塞いでヘッドユニット30内のインクが変質することを
防止し、印刷中は、噴射ノズルから印刷用紙へのインクの噴射を妨げない構造となってい
る。
【0022】
次に、図1を参照しながら本実施例のラインプリンター1の印刷動作を説明する。先ず
、給紙ローラー20によって給紙カセット10から取り出された印刷用紙は、給紙ローラ
ー20とヘッドユニット30との間に設けられたガイドローラー24にガイドされながら
ヘッドユニット30の下方に搬送される。ヘッドユニット30は、印刷用紙の搬送経路上
に、印刷用紙を跨ぐような状態で設けられており、ヘッドユニット30の底面側には複数
の噴射ヘッドが設けられている(図2を参照)。ヘッドユニット30には、カートリッジ
ホルダー60に装着されたインクカートリッジ62から図示しないインク通路を介してイ
ンクが供給されており、ヘッドユニット30に設けられた複数の噴射ヘッドから印刷用紙
に向かってインクが噴射される。
【0023】
図2は、ヘッドユニット30を底面側から見たときの状態を示す説明図である。図示さ
れるように、本実施例のヘッドユニット30の底面には、細長い略矩形形状をした噴射ヘ
ッド32が計4つ、設けられており、各噴射ヘッド32は、Yインクを噴射する噴射ヘッ
ド32y、Mインクを噴射する噴射ヘッド32m、Cインクを噴射する噴射ヘッド32c
、Kインクを噴射する噴射ヘッド32kとなっている。また、噴射ヘッド32には、イン
クを噴射する複数の噴射ノズルが列状に設けられている。尚、噴射ノズルが設けられてい
る噴射ヘッド32の面を「ノズル面」と呼ぶことがあるものとする。
【0024】
このように複数の噴射ヘッド32が設けられたヘッドユニット30からインクが噴射さ
れると、図1に示した搬送経路を通過中の印刷用紙上に画像が印刷される。こうして画像
が印刷された印刷用紙は、ヘッドユニット30の下流側に設けられたガイドローラー24
にガイドされて排紙口6からラインプリンター1の外に排出される。また、前述したよう
に、本実施例のヘッドユニット30と印刷用紙の搬送経路との間には、印刷を行わないと
きに噴射ノズルを塞いでおくための封止機構40が設けられている。
【0025】
B.本実施例の噴射ノズルの封止機構 :
図3は、本実施例の噴射ノズルの封止機構40の構造を示した説明図である。前述した
ように、本実施例のヘッドユニット30には、噴射するインクの色ごとに噴射ユニット3
3が構成されており(図2を参照)、これに伴って噴射ノズルを封止する封止機構40も
噴射ユニット33ごとに設けられている(図1を参照)。これら封止機構40の構造は同
じであるから、図3では、代表して1つの封止機構40の構造を説明する。
【0026】
図3に示されるように、本実施例の噴射ノズルの封止機構40は、略円柱形状の封止部
材42と、封止部材42の両端に設けられた回転軸44などから構成されている。封止部
材42は、円柱形の金属部材の曲面形状の外表面(周側面)にゴム製のシートが貼付され
て形成されており、円柱の周側面には細長い貫通穴46が設けられている。また、回転軸
44には、図示しない駆動モーターに接続されており、駆動モーターを駆動することによ
り、封止部材42を封止部材42の中心軸に対して時計回りに回転させることが可能とな
っている。
【0027】
図4は、印刷を行っていないとき及び印刷中の封止機構40の様子を示した説明図であ
る。尚、図4には、図1に示したラインプリンター1を正面から見たときのヘッドユニッ
ト30および封止機構40の縦断面が示されている。
【0028】
図4(a)に示されるように、ラインプリンター1が印刷を行っていない場合には、封
止部材42の周側面の表層部分(ゴム製のシートが貼られた部分)が噴射ヘッド32のノ
ズル面と当接した状態となっている。この状態では、噴射ノズルが封止部材42によって
塞がれるので、噴射ノズルからインク中の水分が蒸発するなどしてヘッドユニット30内
のインクが変質することが防止される。
【0029】
また、ラインプリンター1が印刷を開始する場合には、図4(a)に示した状態から封
止部材42を時計回りに90度回転させる。こうすると、図4(b)に示されるように、
封止部材42の貫通穴46が噴射ヘッド32と対向することで、噴射ヘッド32と、印刷
用紙を背面から支持するプラテン80との間を遮るものが無くなる。従って、この状態で
プラテン80上に搬送されてきた印刷用紙に向かってインクを噴射すると、印刷用紙上に
画像が印刷される。そして印刷が終了したら、図4(b)の状態からさらに封止部材42
を時計回りに90度回転させることで、封止部材42が噴射ヘッド32のノズル面と当接
した状態(図4(a)の状態)となるので、ヘッドユニット30内のインクの変質が防止
される。
【0030】
このように本実施例の噴射ノズルの封止機構40では、封止機構40を回転させること
で、噴射ノズルを封止する状態と噴射ノズルからインクを噴射可能な状態とを切り換える
ことができる。こうすれば、例えばヘッドユニット30をキャップ部材の位置まで移動さ
せた後にキャップ部材をノズル面に押し付けて噴射ノズルを封止する場合とはことなり、
ヘッドユニット30を移動させなくてもよい。このため、ヘッドユニット30の位置ずれ
によって同じ位置にインクを噴射することができなくなる事態を回避することができる。
【0031】
また、上述したようにヘッドユニット30をキャップ部材の位置まで移動させる場合、
移動させたヘッドユニット30を正確に元の位置に戻すための複雑な機構が必要となる。
本実施例の封止機構40を採用すれば、この様に複雑な機構を設ける必要がないので、噴
射ノズルを封止可能としながらラインプリンター1の構造を簡素なものとすることが可能
である。更に、封止機構40自体は非常に単純な構造となっている(図3を参照)ので、
この様な機構を追加することによってラインプリンター1の構造が複雑となることもない

【0032】
加えて、本実施例の封止機構40では、封止部材42を回転させることで噴射ノズルを
封止する状態と噴射ノズルからインクを噴射可能な状態に切り換えているが(図4を参照
)、このような切換動作はごく短時間で完了させることができる。従って、印刷を行って
いない状態から印刷を再開する場合には、迅速に再開することが可能である。さらに加え
て、封止部材42は、部材の周側面(ゴム製のシートが張られた部分)をノズル面に当接
させたまま回転するので(図4を参照)、封止部材42の周側面によってノズル面に付着
した余分のインクなどをワイピングすることが可能である。
【0033】
C.変形例 :
前述した実施例には、いくつかの変形例が考えられる。以下では、これらの変形例につ
いて簡単に説明する。尚、以下に説明する変形例において、上述した実施例と同様の構成
部分については、実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
C−1.第1変形例 :
上述した実施例では、略円柱形の封止部材42の周側面を噴射ヘッド32のノズル面に
当接させることで噴射ノズルを塞ぐものと説明した。ここで、ノズル面と当接する封止部
材42の側面部は、次のように構成することとしてもよい。
【0035】
図5は、第1変形例の封止機構40の構造を示した説明図である。図5に図示した第1
変形例の封止機構40では、噴射ヘッド32と当接する封止部材42の側面部に溝部47
が設けられており、溝部47の開口部を閉じるように設けられたゴム製の蓋部材48と溝
部47との間にはバネ49が設けられている。このような第1変形例の封止機構40では
、蓋部材48が噴射ヘッド32のノズル面に当接することで噴射ノズルが封止される。ま
た、ノズル面に当接した蓋部材48は、バネ49のバネ力に抗して溝部47の内側に移動
するので、当接時にノズル面に加わる圧力を軽減することができる。その結果、封止部材
42によって噴射ノズルを封止可能としながら噴射ヘッド32が劣化することを抑制する
ことが可能である。
【0036】
C−2.第2変形例 :
上述した実施例および第1変形例では、噴射ノズルから印刷用紙に向かってインクを噴
射可能とするために、封止部材42の側面に細長い貫通穴46を設けておくものと説明し
た。ここで、封止部材42は、回転によって、噴射ノズルを封止する状態と噴射ノズルか
らインクを噴射可能な状態とに切り換え可能な形状であればよく、例えば封止部材42を
以下のような形状に成形することとしてもよい。
【0037】
図6は、第2変形例の封止機構40の構造を示した説明図である。図示した第2変形
例の封止機構40では、図3に示した封止機構40の封止部材42の紙面上で左側の部分
を切欠いた形状となっている。このような第2変形例の封止機構40を採用しても、前述
した封止機構40(図3を参照)と同様に、封止部材42を回転させることで、噴射ノズ
ルを封止する状態(封止部材の側面がノズル面と当接する状態)と、噴射ノズルからイン
クを噴射可能な状態(封止部材42がインクの通過経路を遮らない状態)とを切り換える
ことができる。また、図6に示した封止部材42は、円柱形の部材の一部(紙面上では封
止部材42の左半分)を切欠いて形成するので、図3に示した封止機構40の封止部材4
2のように、円柱形の部材の側面に細長い貫通穴46を形成する場合と比較して、封止部
材を容易に成形することが可能である。
【0038】
C−3.第3変形例 :
上述した実施例および変形例では、ヘッドユニット30と印刷用紙の搬送経路との間に
設けた封止部材42を回転させることにより、噴射ノズルが封止される状態と、噴射ノズ
ルからインクを噴射可能な状態とを切り換えるものと説明した。ここで、封止部材42は
、部材が回転する態様によって設ける以外にも、例えば次のような態様によってヘッドユ
ニット30と印刷用紙の搬送経路との間に設けることができる。
【0039】
図7は、第3変形例の封止機構の構造を示した説明図である。図7に示した第3変形例
の封止機構では、噴射ヘッド32とプラテン80との間に、貫通穴52を有するゴム製の
封止部材50が設けられている。この封止部材50は、ラインプリンター1が印刷を行わ
ない場合には、図7(a)に示されるように、噴射ヘッド32のノズル面と当接すること
で噴射ノズルを封止してインクの変質を防止する。また、この状態から印刷を開始する場
合には、図7(b)に示されるように、図示しない移動機構によって封止部材50を紙面
上の右方向にスライドさせることで貫通穴52を噴射ヘッド32の位置まで移動させるこ
とで、噴射ノズルからプラテン80上の印刷用紙に向かってインクを噴射可能とする。こ
のように封止部材50を設けることとしても、ヘッドユニット30は移動させることなく
、噴射ノズルを封止する状態と噴射ノズルからインクを噴射可能な状態とを切り換えるこ
とができるので、上述した実施例と同様の有利な効果を得ることが可能である。
【0040】
以上、本願発明の実施例について説明したが、本発明は上記に限られるものではなく、
その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上
述した実施例および変形例では、封止部材は円柱形の金属部材にゴム製のシートを張り付
けて形成するものと説明したが、封止部材の全体をゴムによって形成することとしてもよ
い。
【符号の説明】
【0041】
1…ラインプリンター、 30…ヘッドユニット、 32…噴射ヘッド、
40…封止機構、 42…封止部材、 44…回転軸、
46…貫通穴、 47…溝部、 48…蓋部材、 49…バネ、
50…封止部材、 52…貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから、被噴射媒体に向かって液体を噴射する液体噴
射装置であって、
前記噴射ヘッドと前記被噴射媒体との間に設けられて、前記噴射ノズルに当接する封止
部材と、
前記封止部材を前記噴射ノズルに当接させた状態と、該封止部材を該噴射ノズルに当接
させず、該噴射ノズルが前記被噴射媒体に向けて前記液体を噴射可能な状態とに切り換え
る切換手段と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記封止部材は、外表面の一部が円柱の周側面を構成する曲面形状に形成されて、該周
側面を前記噴射ノズルに当接させることによって前記噴射ノズルを封止する部材であり、
前記切換手段は、前記周側面を構成する前記円柱の中心軸を回転軸として、該周側面が
前記噴射ノズルに当接しなくなるまで前記封止部材を回転させることによって、該噴射ノ
ズルが前記被噴射媒体に向けて前記液体を噴射可能な状態に切り換える手段である液体噴
射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置であって、
前記封止部材は、前記周側面に貫通穴が設けられて、該周側面を前記噴射ノズルに当接
させることによって該噴射ノズルを封止する部材であり、
前記切換手段は、前記円柱形状の中心軸を回転軸として、前記貫通穴の開口部が前記噴
射ノズルの位置にくるまで前記封止部材を回転させることによって、該噴射ノズルが前記
被噴射媒体に向けて前記液体を噴射可能な状態に切り換える手段である液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158008(P2012−158008A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17647(P2011−17647)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】