説明

液体噴射装置

【課題】フチなし記録を行う場合であっても記録媒体の姿勢を安定させることで高い記録品質を得ることができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】記録媒体Rを支持する媒体支持部材214と、媒体支持部材214に支持される記録媒体Rに液体を噴射する液体噴射ヘッドと、媒体支持部材214における記録媒体Rの支持面214a側に設けられ、記録媒体Rの縁部から外れた液体を受容する液体受容状態と記録媒体Rの裏面を支持する媒体支持状態とを切り替え可能な液体受容可能部と、を備えた液体噴射装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録媒体である記録用紙に対してインク滴を吐出する記録ヘッドと、記録用紙を支持して記録ヘッドに対する記録用紙の位置を規定するプラテンと、を備えている。このようなインクジェット記録装置においては、記録用紙に余白無く記録を行う、所謂縁無し記録を実現可能なものがある(例えば、特許文献1参照)。縁無し記録を行うための上記プラテンは、記録用紙を支えるリブ、及び縁無し記録時の打ち捨てインクを受容する、例えばインクを吸収する吸収材あるいは打ち捨てインクを流す溝を備えた構造となっている。また、記録用紙を支えるリブは、記録用紙を吸引することで用紙の姿勢を安定させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−237664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の記録装置のプラテンはインク打ち捨て溝がある部分では上記リブを設けることができず、記録用紙を安定して支持することができなかった。そのため、インク打ち捨て溝に対応する部分が記録用紙の裏面に位置すると記録用紙を支持できず、記録ヘッドから吐出されたインクによって記録用紙が膨潤してしまい、コックリングといわれる用紙の波打ちを発生させてしまう。このように膨潤した記録用紙はインクの着弾面の平面度が低下するため、記録ヘッドから吐出されるインクの着弾精度が乱れ、印刷品質が低下するといった問題があった。よって、特に複数種類の大きさの記録用紙におけるフチなし印刷に対応したプラテンでは複数個所でコックリングが生じるため、印刷ムラが顕著となるおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、フチなし記録を行う場合であっても記録媒体の姿勢を安定させることで高い記録品質を得ることができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体供給システムは、記録媒体を支持する媒体支持部材と、前記媒体支持部材に支持される前記記録媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記媒体支持部材における前記記録媒体の支持面側に設けられ、前記記録媒体の縁部から外れた前記液体を受容する液体受容状態と前記記録媒体の裏面を支持する媒体支持状態とを切り替え可能な液体受容可能部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の液体噴射装置によれば、記録媒体の縁無し記録を行う場合において、液体受容可能部が液体受容状態と媒体支持状態とを切り替えることができる。よって、液体受容可能部は記録媒体の縁部に対応する場合、縁部から外れた液体を受容することができる。また、液体受容可能部は、記録媒体の裏面に対応する場合、記録媒体を安定支持することができる。したがって、液体受容可能部はロール紙の縁部では液体を受容するとともに、記録媒体の裏面では該記録媒体を安定して支持することでコックリングの発生を抑止し、記録媒体に対する液体の着弾精度を向上させることができる。これにより、良好な印刷品質を得ることが信頼性の高いものとなる。
【0008】
また、上記液体噴射装置においては、前記媒体支持部材は前記記録媒体を吸引した状態で支持可能であり、前記液体受容可能部は前記媒体支持状態において前記記録媒体を吸引した状態で支持可能とされるのが好ましい。
この構成によれば、液体受容可能部が前記記録媒体を吸引した状態で支持できるので、記録媒体をより安定した状態で支持することができる。
【0009】
また、上記液体噴射装置においては、前記液体受容可能部は、前記媒体支持部材に回動可能に設けられる回動部を有し、前記回動部の回動動作により前記液体受容状態及び前記媒体支持状態が切り替え可能とされるのが好ましい。
この構成によれば、回動部を回動させるといった簡便な構成により、液体受容状態及び媒体支持状態を確実に切り替えることができる。
【0010】
また、上記液体噴射装置においては、前記回動部は、前記液体受容状態において前記記録媒体の縁部から外れた前記液体を受容する液体受容口と、前記媒体支持状態において前記記録媒体を支持可能な媒体支持部と、を有するのが好ましい。
この構成によれば、回動部を回動させることで液体受容口が液体を受容可能な状態と、媒体支持部が記録媒体を支持可能な状態と、を確実に切り替えることができる。
【0011】
また、上記液体噴射装置においては、前記液体受容可能部は、前記液体受容口が受容した前記液体を回収可能な液体回収部と、前記媒体支持部に設けられた吸引口を介して前記記録媒体を吸引可能な吸引装置と、を含み、前記回動部には、前記液体受容口に連通されるとともに前記液体受容状態時に前記液体受容口と前記液体回収部とを接続させる第1接続路と、前記吸引口に連通されるとともに前記媒体支持状態時に前記吸引口と前記吸引装置とを接続させる第2接続路と、が形成されるのが好ましい。
この構成によれば、回動部を回動させることで、液体受容状態時に液体受容口で受容した液体を液体回収部に排出させつつ、媒体支持状態時に吸引口を介して記録媒体を吸引した状態で支持することができる。
【0012】
また、上記液体噴射装置においては、前記媒体支持部材が前記記録媒体を吸着した状態で支持可能である場合において、前記吸引装置は、前記媒体支持部材及び前記媒体支持部上の前記記録媒体を吸引するのが好ましい。
この構成によれば、媒体支持部材及び媒体支持部上の記録媒体を吸着する手段として吸着装置を兼用することができ、装置の小型化及び低コスト化を実現できる。
【0013】
また、上記液体噴射装置においては、複数の前記液体受容可能部を備えるのが好ましい。
この構成によれば、液体受容可能部を複数備えるので、媒体支持部は複数種類の大きさの記録媒体に対する縁無し記録に対応可能なものとなる。また、複数の液体受容可能部は、記録媒体の縁部に対応するものが液体受容状態に切り替わり、それ以外のものが媒体支持状態に切り替わる。これにより、複数種類の大きさの記録媒体を安定して保持することができ、良好な印刷品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンターの構成例を示す斜視図。
【図2】プリンターの主要部の内部構成例を示す斜視図。
【図3】搬送部の詳細を示す側面図。
【図4】プラテンの構成を示す斜視図。
【図5】(a),(b)はインク受容可能部の要部構成を示す図。
【図6】第二実施形態に係るプラテンの周辺構成を示す図。
【図7】第二実施形態に係る液体受容可能部の要部断面構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る液体噴射装置の1つであるインクジェット式プリンターの構成例を示す斜視図であり、図2は、そのインクジェット式プリンターの主要部の内部構成例を示す斜視図である。図1及び図2に示すインクジェット式プリンター100(以下、プリンター100と称す)は、例えばJIS規格のA1判やJIS規格のB1判といった比較的大型のサイズの記録用紙にまで記録できる大型のプリンターであり、給紙部10、搬送部20、排紙部30、脚部40がこの順で上部から配設された構成となっている。
【0016】
すなわち、最上部に配置された給紙部10から給紙されるロール紙は、下部にて傾斜して配置された搬送部20及び排紙部30の間を斜め下方に向かって搬送されて、最下部に配置された脚部40の間に配置される図示しない排紙受けに排紙されるようになっている。搬送部20と排紙部30は本体として一体化されており、給紙部10及び脚部40とそれぞれ分離可能に構成されている。
【0017】
給紙部10は、図1に示すように、本体20、30の上部後方に突き出るように設けられている。そして、給紙部10の内部には、図2に示すように、1本のロール紙がセット可能なロール紙ホルダ11が設けられ、給紙部10の前面には、図1及び図2に示すように、跳ね上げ式の開閉可能なロール紙カバー12がロール紙ホルダ11を覆うように取り付けられている。
【0018】
ロール紙ホルダ11は、図2に示すように、ロール紙を保持するスピンドル13及び一対のフランジ状のロール紙押さえ14と、給紙部10の両側壁内面に取り付けられて、スピンドル13の着脱及び懸架が可能な一対のスピンドル受け15を備えている。そして、スピンドル13は、中央にロール紙が填め込まれてロール紙押さえ14で挟持された状態で、両端がスピンドル受け15に載置され、回転可能に軸支持されるようになっている。ロール紙カバー12は、図1及び図2に示すように、全体が回動可能に支持されており、ユーザが下部を持って持ち上げ、あるいは押し下げることにより開閉するようになっている。
【0019】
搬送部20は、図2に示すように、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)21を搭載したキャリッジ22、記録ヘッド21と記録を実行するための図示しない制御部とを電気的に接続するフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCという)23、記録ヘッド21とインクが入ったインクカートリッジ5とをつなぐインクチューブ24等を備えている。そして、搬送部20の上面及び前面には、図1及び図2に示すように、上蓋25及び前蓋26が記録ヘッド21やキャリッジ22等を覆うように取り付けられている。
【0020】
記録ヘッド21は、ブラックインクを吐出するブラックインク用記録ヘッドと、ライトイエロー、イエロー、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ等の各色のインクを吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド21は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口からロール紙に向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。
【0021】
キャリッジ22は、図2に示すように、主走査方向に設けられているレール27にコロを介して吊り下げられ、キャリッジベルト28に連結されており、図示しないキャリッジ駆動装置によってキャリッジベルト28が作動すると、キャリッジベルト28の動きに連行され、レール27に案内されて往復移動するようになっている。
【0022】
FFC23は、一端が制御部のコネクタに接続され、他端が記録ヘッド21のコネクタに接続されており、記録信号を制御部から記録ヘッド21に送るようになっている。インクチューブ24は、上記各色のインク用が配設されており、図示しないインク加圧供給手段を介して各一端が対応する各色のインクカートリッジ5につながれ、各他端が対応する各色の記録ヘッド21につながれている。そして、インクチューブ24は、インク加圧供給手段によって加圧された各色のインクをインクカートリッジ5から記録ヘッド21に送るようになっている。
【0023】
前蓋26は、図1及び図2に示すように、下部が回動可能に支持されており、ユーザが上部を持って押し下げ、あるいは押し上げることにより開閉するようになっている。ユーザは、前蓋26を開けることにより搬送部20を大きく開放することができるので、記録ヘッド21やキャリッジ22等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。ここで、更に図を参照して搬送部20の詳細を説明する。
【0024】
図3は、上記搬送部20の詳細を示す側面図である。搬送部20は、給紙部10から延びる平坦な給紙ガイド211、対向配置された接触・離間可能な紙送りローラー212a,212b及び従動ローラー213、キャリッジ22に搭載された記録ヘッド21と対向配置された平坦な本発明の特徴的な部分を含むプラテン(媒体支持部材)214及びこのプラテン214の直下の搬送下流側に配置されたペーパーガイド215、プラテン214及びペーパーガイド215上のロール紙を吸引する吸引装置50を備えている。なお、キャリッジ22には、記録完了したロール紙を切断するカッター29が取り付けられている。
【0025】
紙送りローラー212a,212bは、1本の長尺のローラーとして形成されており、記録可能な最大用紙幅より若干大きい周面部分にはセラミック粉等がコーティングされている。これにより、紙送りの際の滑りを防止することができるので、ロール紙を高精度に送り出すことができる。この紙送りローラー212a,212bは、図示していないが、両端がサイドフレームに軸受を介して軸支持されており、紙送りモータからプーリ及びベルトを介して伝達される駆動力により正逆回転駆動するようになっている。
【0026】
従動ローラー213は、複数個の短尺のローラーとして形成されており、紙送りローラー212a,212bの上方で軸方向に複数並設された従動ローラー支持部材213aに回動自在に軸支持されている。この従動ローラー213は、従動ローラー支持部材213aに取り付けられているバネ等の付勢部材213bにより紙送りローラー212a,212bに押圧されており、紙送りローラー212a,212bの正逆回転駆動に追従して正逆回転するようになっている。これにより、ロール紙を両面からしっかりと押さえ込んで送り出すことができるので、高精度な記録を行うことができる。
【0027】
ペーパーガイド215は、記録可能な最大用紙幅より若干大きい長さの矩形平板状に形成されてプラテン214の搬送下流側の直近に配設されている。ペーパーガイド215のペーパーガイド面は、プラテン面214aよりも低くなるように配置されており、このペーパーガイド面には、略中央を主走査方向に延びるカッター段差215bが形成されている。このカッター段差215bは、カッター29がロール紙を幅方向にカッティングする際にペーパーガイド215を傷付けないように、ロール紙の下面から突出したカッター29の刃先が入り込むことができる大きさに形成されている。これにより、ロール紙の記録部分と未記録部分とを確実に切り離すことができる。
【0028】
さらに、ペーパーガイド215のペーパーガイド面(ロール紙と対向する面)には、ロール紙を支持するための複数のレール状のリブ(不図示)が配設されており、各リブは、それぞれ主走査方向に所定間隔を空けて一列配設され、各リブ間のペーパーガイド面の略中央にはロール紙を吸引するための複数の吸引孔が穿設されている。
【0029】
カッター29は、刃先が下方を向くようにして、上下方向に昇降可能であって主走査方向に移動可能に配設されている。このカッター29は、例えばソレノイド等により上下方向に昇降され、キャリッジ22とともに主走査方向に移動されるようになっている。したがって、カッター29を移動させるための手段を別途設ける必要は無いので、省スペースを図ることができるとともに、コストを抑えることができる。なお、カッター29をキャリッジ22から分離して独自のベルト機構やモータ等により主走査方向に移動するように構成しても良い。
【0030】
排紙部30は、図1及び図2に示すように、ロール紙を副走査方向に搬送する経路の一部を成す排紙ガイド31と、ロール紙を副走査方向に搬送する図示しない排紙ローラを備えている。排紙ガイド31は、前面側に突き出た平坦な傾斜面として形成されており、上方から搬送されてくるロール紙を下方へスムーズに導くことができるようになっている。
【0031】
脚部40は、図1及び図2に示したように、移動用のコロ41を有する2本の支持柱42と、これらの支持柱42の間に掛け渡されている補強棒43を備えている。そして、支持柱42の上部に給紙部10及び本体20、30が載置されネジ止め固定されるようになっている。支持柱42に移動用のコロ41が配設されていることにより、重量のある給紙部10及び本体20、30を所望の位置へスムーズに移動させて設置することができるようになっている。なお、この脚部40の支持柱42の間には、排紙部30から排出されるロール紙を受ける排紙受け装置を設置することができるようになっている。
【0032】
さらに、本体20、30の前面側から見て左側には、図1及び図2に示したように、各色のインクカートリッジ5を収納保持するホルダ本体71とその前面を覆うカバー72を有するインクカートリッジホルダ70が配設されている。このインクカートリッジホルダ70は、ホルダ本体71に対しカバー72の下部が回動可能に支持されており、ユーザが上部を持って押し下げ、あるいは押し上げることにより開閉するようになっている。ホルダ本体71内に設けられている収納部は、図示左側から順にブラック、ライトイエロー、イエロー、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタの計7色のインクカートリッジ5が個々に引き出し、押し入れ可能なように仕切られている。
【0033】
また、本体20、30の前面側から見て右側上部には、図1及び図2に示すように、ユーザが記録制御等を操作するための操作パネル60が配設されている。この操作パネル60は、液晶画面と各種ボタンが配設されており、ユーザが液晶画面を見て確認しながらボタン操作できるようになっている。
【0034】
図4はプラテン214の構成を示す斜視図である。プラテン214は、図4に示すように、記録可能な最大用紙幅より若干大きい長さの矩形平板状に形成され、紙送りローラー212a,212bの搬送下流側の直近に配設されている。プラテン214のプラテン面(支持面)214aには、ロール紙Rを吸着するための複数の矩形状の吸引溝214bが主走査方向に所定間隔を空けて一列配設されている。この吸引溝214bは、平坦な底面の四方が傾斜した側壁で囲まれて形成されている。そして、各吸引溝214bの底面及び各吸引溝214bの間に設けられる仕切壁(媒体支持部)214cの頂面には、複数の貫通した吸引孔214dが穿設されており、該吸引孔214dは吸引装置50(図3参照)に接続されることでロール紙Rを吸引可能とされている。これにより、仕切壁214cはロール紙Rを吸引した状態で支持可能な構成となっている。
【0035】
上記吸引装置50は、プラテン214及びペーパーガイド215の下部に配設された圧力室50aと、圧力室50aの下部に配設された図示しないファンを備えている。圧力室50aは、上面の一部が開放された箱状に形成されており、上面の開放部にプラテン214及びペーパーガイド215が取り付けられ、底面に装着された管継手50bを介してファンが取り付けられている。
【0036】
吸引装置50のファンを回転させることにより、プラテン214に穿設されている吸引孔214d及びペーパーガイドに穿設されている不図示の吸引孔から圧力室50a内に吸気され、ファンを通って外部に排気される。したがって、プラテン214及びペーパーガイド215の上面にロール紙Rが供給されると、ロール紙Rの下面側に負圧が発生するので、ロール紙Rをプラテン214及びペーパーガイド215の上面に吸着させてロール紙Rの浮き上がりを完全に防止して紙姿勢を安定化することができる。
【0037】
本実施形態に係るプラテン214は、JIS規格による複数のサイズのロール紙Rに対して、縁無し記録を行うことが可能となっている。プラテン214のプラテン面214aにおける各サイズのロール紙Rの側縁部に対応する位置には、図4に示すように、インク受容可能部(液体受容可能部)250が設けられている。なお、図4では図示を簡略化してインク受容可能部250を1つだけ示しているが、インク受容可能部250はロール紙の紙幅方向に複数も受けられているものとする。インク受容可能部250は、ロール紙を縁無し記録する際にロール紙Rの縁から外れたインク滴を受容するとともに、ロール紙Rの裏面を吸着支持するためのものである。
【0038】
図5はインク受容可能部250の要部構成を示す図であり、図5(a)は後述するインク受容状態時のインク受容可能部250の状態を示す図であり、図5(b)は後述する支持状態時のインク受容可能部250の状態を示す図である。
【0039】
インク受容可能部250は、不図示の回転機構を介してプラテン214に回動可能に取り付けられる回転部材(回動部)251と、廃インク回収部(液体回収部)252と、吸引装置50とは別の吸引装置51と、を備えている。
【0040】
インク受容可能部250は、インク滴を受容するインク受容状態(図5(a)参照)と、ロール紙を支持する支持状態(図5(b)参照)とを切り替え可能となっている。インク受容可能部250は、不図示の回転機構を介してプラテン214に回動可能に取り付けられており、これにより上記インク受容状態と支持状態とを切り替え可能とされている。
【0041】
回転部材251は円板状の部材からなり、インク受容状態においてロール紙を縁無し記録する際にロール紙の縁から外れたインク滴を受容するインク受容口(液体受容口)254と、支持状態においてロール紙の裏面を支持する支持部255と、を有している。インク受容口254及び支持部255は、回転部材251が回転軸251aを中心に回動することでプラテン214のプラテン面214aに配置されるようになっている(図4参照)。なお、上記廃インク回収部252はインク受容状態時に使用する第1の回収部252aと、上記支持状態時に使用する第2の回収部252bと、を含んでいる。
【0042】
また、回転部材251には第1接続路256及び第2接続路257が形成されている。第1接続路256は、一端側が上記インク受容口254に連通している。第1接続路256は、上記インク受容口254がプラテン面214aに配置された時に他端側が第1の回収部252aに接続されるようになっている。第1の回収部252aは第1接続路256に対して進退可能に構成されており、回転部材251の回動動作を妨げないようになっている。
【0043】
第1接続路256は、図5(a)に示すように、一端下方に延びた後、側方に向かって折れ曲がった形状を有している。そして、第1接続路256は、インク受容口254で受容したインクを受けるインク受け面256aを有し、該インク受け面256aは第1接続路256が第1の回収部252aに接続された状態(すなわち、インク受容状態)で当該第1の回収部252aに向かって漸次下降する傾斜面を構成している。これにより、インク受け面256aに付着したインクは、インク受け面256aを伝って第1の回収部252aに流れることで良好に回収されるようになっている。
【0044】
インク受容可能部250はインク受容状態時においては、インク受容口254をプラテン面214aに配置させることで、ロール紙を縁無し記録する際にロール紙の縁から外れたインク滴をインク受容口254及び第1接続路256を介して廃インク回収部252に回収するようになっている。
【0045】
一方、図5(b)に示すように、第2接続路257は回転部材251の中央部を貫通した状態に形成されており、一端側が上記支持部255に形成された吸引孔255aに連通している。第2接続路257は、上記支持部255がプラテン面214aに配置された時に他端側が吸引装置51に接続されるようになっている。回転部材251における吸引装置51との接続面は平坦面となっており、吸引装置51と第2接続路257とが確実に接続可能となっている。
【0046】
インク受容可能部250は支持状態時においては、支持部255をプラテン面214aに配置させることで、支持部255がロール紙の裏面側を確実に支持するようになっている。さらに、上述したように、支持部255は吸引孔255aを介して吸引装置51の吸引力をロール紙の裏面側に付与するため、該ロール紙を吸引した状態で安定支持できるようになっている。
【0047】
このような構成に基づき、各インク受容可能部250は、回転部材251をプラテン241に対して回動させることでインク受容状態及び媒体支持状態を簡便且つ確実に切り替え可能となっている。
【0048】
なお、回転部材251が支持状態にあるとき、第1接続路256の他端側が第2の回収部252bに接続されるようになっている。これにより、第1接続路256(インク受け面256a)に付着していた廃インクの残りが該第1接続路256から落下した場合であっても第2の回収部252bにより確実に回収できるようになっている。
【0049】
上記吸引装置51は、回転部材251の下部に配設された圧力室51aと、圧力室51aの下部に配設された図示しないファンを備えている。圧力室51aは、上面の一部が開放された箱状に形成されており、上面の開放部に第2接続路257が接続可能とされ、底面に装着された管継手51bを介してファンが取り付けられている。
【0050】
また、吸引装置51は第2接続路257と接続された際、該第2接続路257及び吸引孔255aを介してロール紙の裏面側を吸引可能となっている。具体的に、吸引装置51はファンを回転させることで支持部255に形成された吸引孔255aから圧力室253a内に吸気され、ファンを通して外部に排気される。したがって、支持部255の上面にロール紙が供給されると、ロール紙の下面側に負圧が発生するので、ロール紙を支持部255の上面に吸着させてロール紙の浮き上がりを完全に防止して紙姿勢を安定化することができる。
【0051】
続いて、本実施形態に係るプリンター100の動作について説明する。本説明では、プリンター100の特徴的な構成であるインク受容可能部250の動作を主体に説明するものとする。
【0052】
プリンター100は、給紙部10から給紙されるロール紙に縁無し記録を行う場合、ロール紙の両側の紙端に対応する2つのインク受容可能部250をインク受容状態に切り替える。具体的に、インク受容可能部250は不図示の回転機構により回転部材251を回転させ、プラテン214のプラテン面214aにインク受容口254を配置させる。
【0053】
また、プリンター100は、ロール紙の裏面に対応する、すなわちロール紙によって覆われる領域に配置されるインク受容可能部250を支持状態に切り替える。具体的に、インク受容可能部250は不図示の回転機構により回転部材251を回転させ、プラテン214のプラテン面214aに支持部255を配置させる。
【0054】
なお、例えば縁無し記録を行うロール紙の大きさが小さい場合、ロール紙の裏面或いは紙縁に対応しない、すなわちロール紙と平面的に重ならない領域に配置されたインク受容可能部250が存在することが考えられる。この場合、本実施形態では、このようなロール紙と平面的に重ならないインク受容可能部250をインク受容可能状態に切り替えるようにしている。
【0055】
インク受容可能状態に切り替えられたインク受容可能部250では、後述のように第2接続路257が吸引装置51に接続されないため、吸引孔255aを介してプラテン面214a側を吸引することがない。よって、吸引装置51による吸引力を支持状態のインク受容可能部250に対してのみ効率的に付与することができ、ロール紙の下面側に安定した負圧を発生させることができる。
【0056】
プリンター100は、ロール紙の大きさに応じて各インク受容可能部250をインク受容状態又は支持状態のいずれかに切り替えた後、ロール紙に対する縁無し記録を開始する。このとき、プラテン面214aでは、吸引装置51のファンが回転することでロール紙の下面側に負圧を発生させて、ロール紙をプラテン214の上面に吸着させてロール紙の浮き上がりを完全に防止して紙姿勢を安定化させた状態でロール紙に対してインク滴を噴射することができる。
【0057】
また、ロール紙に対する縁無し記録が始まると、ロール紙の縁部においては記録ヘッド21のノズル開口から噴射されたインク滴の一部が縁部から外れてプラテン面214a側に噴射されるおそれがある。これに対し、ロール紙の縁部に対応するインク受容可能部250はインク受容状態に切り替えられているため、図5(a)に示したようにロール紙の縁から外れたインク滴がインク受容口及び第1接続路256のインク受け面256aを経て第1の回収部252aに良好に回収できる。よって、プラテン面214aを汚すことなく、ロール紙に対してフチ無し記録を良好に行うことができる。
【0058】
一方、支持状態に切り替えられたインク受容可能部250では、図5(b)に示したように吸引孔255aが第2接続路257を介して吸引装置51に接続された状態となっている。吸引装置51はファンを回転させることで支持部255の上面に供給されるロール紙の下面側には負圧を発生させ、ロール紙を支持部255の上面に吸着することでロール紙の浮き上がりを完全に防止して紙姿勢を安定化できる。
【0059】
以上述べたように、本実施形態によれば、ロール紙の縁無し記録を行う場合において、インク受容可能部250が液体受容状態と媒体支持状態とを切り替えることができる。よって、インク受容可能部250はロール紙の縁部に対応する場合、縁部から外れたインクをインク受容口254及び第1接続路256を介して確実に受容できる。また、インク受容可能部250はロール紙の裏面に対応する場合、支持部255に形成された吸引孔255aを介してロール紙の下面を吸引することで安定支持することができる。
【0060】
このようなインク受容可能部250が設けられたプラテン214は、大きさの異なるロール紙の縁部から外れたインクを確実に受容するとともにロール紙の裏面側を安定して支持することができる。よって、縁無し記録が可能な構成であってもロール紙にコックリングが発生することを抑止し、ロール紙に対するインクの着弾精度を向上させることができる。よって、プリンター100は良好な印刷品質を得ることができる信頼性の高いものとなる。
【0061】
(第二実施形態)
続いて、プリンターの第二実施形態に係る構成について説明する。本実施形態と第一実施形態との違いは、プラテン及び支持部上のロール紙を吸引する吸引装置を兼用する点であり、それ以外の構成については同一である。そのため、以下の説明では、上記実施形態と同じ部材又は構成については同一の符号を付し、その説明については簡略化するものとする。
【0062】
図6は本実施形態に係るプラテン214の周辺構成を示す図であり、図7はプラテン214に設けられるインク受容可能部350の要部断面構成を示す図である。図7(a)はインク受容状態時のインク受容可能部350の状態を示す図であり、図7(b)は支持状態時のインク受容可能部350の状態を示す図である。
【0063】
図6に示すように、プラテン214のプラテン面214aに穿設された吸引孔214dは、プラテン214の下部に設けられた吸引装置60に接続されている。吸引装置60は、吸引孔214dに連通される圧力室60aと、圧力室60aの下部に配設された図示しないファンを備えている。圧力室60aはプラテン面214aに穿設された吸引孔214dに連通されており、底面に装着された管継手60bを介してファンが取り付けられており、ファンを回転させて外部に排気することでロール紙の下面側に負圧を発生させるようになっている。
【0064】
図7(a),(b)に示すように、本実施形態に係るインク受容可能部350は、不図示の回転機構を介してプラテン214に回転軸351aを中心として回動可能に取り付けられる回転部材351と、廃インク回収部(液体回収部)352と、を備えている。回転部材351に第1接続路356及び第2接続路357が形成されている。
【0065】
第1接続部356は3つに分岐した分岐端を有した形状を有しており、分岐端の一つがインク受容口354に接続されている。また、上記インク受容口354がプラテン面214aに配置された時に残りの一方の分岐端356aが廃インク回収部352に接続され、上記支持部355がプラテン面214aに配置された時に残りの他方の分岐端356bが廃インク回収部352に接続されるようになっている。第1接続路356の内面は、インク受容口354で受容したインクを受けるインク受け面356cを構成している。
【0066】
第1接続部356は、支持部355がプラテン面214aに配置された時に、インク受容時に廃インク回収部352に接続されていた分岐端356aが廃インク回収部352に接続される分岐端356bの上方に位置するようになっている。そのため、分岐端356aの近傍に付着した廃インクは、第1接続部356の内面を伝って分岐端356bを介して廃インク回収部352に回収されるようになっている。なお、廃インク回収部352は、回転部材351に対して進退可能に構成されており、回転部材351における回動動作を妨げないようになっている。
【0067】
インク受容可能部350はインク受容状態時においては、インク受容口354をプラテン面214aに配置させることで、ロール紙を縁無し記録する際にロール紙の縁から外れたインク滴をインク受容口354及び第1接続路356を介して廃インク回収部352に回収するようになっている。
【0068】
一方、図7(b)に示すように、第2接続路357は回転部材251の中央部付近まで形成されており、一端側が上記支持部355に形成された吸引孔355aに連通しており、他端側が拡幅部357aに連通している。拡幅部357aは回転部材351を厚み方向に貫通した状態に形成されており、上記支持部355がプラテン面214aに配置された時にプラテン214の下面側に配置される吸引装置60の圧力室60aに連通されるようになっている。これにより、吸引装置60の吸引力が支持部355に形成された吸引孔355aを介して、該支持部355上のロール紙の裏面側に付与されるようになっている。
【0069】
インク受容可能部350は支持状態時においては、支持部355をプラテン面214aに配置させることで、支持部355がロール紙の裏面側を確実に支持するようになっている。
【0070】
また、吸引装置60は拡幅部357aを介して第2接続路357に接続された際、該第2接続路357及び吸引孔255aを介してロール紙の裏面側を吸引可能となっている。具体的に、吸引装置60はファンを回転させることで支持部355に形成された吸引孔355aから圧力室353a内に吸気され、ファンを通して外部に排気される。したがって、支持部355の上面にロール紙が供給されると、ロール紙の下面側に負圧が発生するので、ロール紙を支持部355の上面に吸着させてロール紙の浮き上がりを完全に防止して紙姿勢を安定化することができる。
【0071】
以上のように本実施形態に係る構成においても、インク受容可能部350を備えるので、縁無し記録が可能な構成であってもロール紙にコックリングが発生することを抑止し、ロール紙に対するインクの着弾精度を向上させることができる。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態ではインク受容可能部250の支持部255がロール紙の裏面側を吸引する構成について説明したが、支持部255はロール紙の裏面側を吸引せず支持だけする構成であっても構わない。この構成であっても上述のコックリングの発生を防止することができる。
【0073】
また、本発明の液体噴射装置は、インクに代えてその用途に対応する液体を液体噴射ヘッドから被噴射媒体に噴射して液体を被噴射媒体に付着させる液体噴射装置の意味として、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等を備えた装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
R…ロール紙(記録媒体)、21…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、51,60…吸引装置100…プリンター(液体噴射装置)、214…プラテン(媒体支持部材)、214a…プラテン面(支持面)、214b…仕切壁(媒体支持部)、250,350…インク受容可能部(液体受容可能部)、251…回転部材(回動部)、252…廃インク回収部(液体回収部)、254…インク受容口(液体受容口)、256,356…第1接続路、257,357…第2接続路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する媒体支持部材と、
前記媒体支持部材に支持される前記記録媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記媒体支持部材における前記記録媒体の支持面側に設けられ、前記記録媒体の縁部から外れた前記液体を受容する液体受容状態と前記記録媒体の裏面を支持する媒体支持状態とを切り替え可能な液体受容可能部と、を備える液体噴射装置。
【請求項2】
前記媒体支持部材は前記記録媒体を吸引した状態で支持可能であり、
前記液体受容可能部は前記媒体支持状態において前記記録媒体を吸引した状態で支持可能とされる請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体受容可能部は、前記媒体支持部材に回動可能に設けられる回動部を有し、
前記回動部の回動動作により前記液体受容状態及び前記媒体支持状態が切り替え可能とされる請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記回動部は、前記液体受容状態において前記記録媒体の縁部から外れた前記液体を受容する液体受容口と、前記媒体支持状態において前記記録媒体を支持可能な媒体支持部と、を有する請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記液体受容可能部は、前記液体受容口が受容した前記液体を回収可能な液体回収部と、前記媒体支持部に設けられた吸引口を介して前記記録媒体を吸引可能な吸引装置と、を含み、
前記回動部には、前記液体受容口に連通されるとともに前記液体受容状態時に前記液体受容口と前記液体回収部とを接続させる第1接続路と、前記吸引口に連通されるとともに前記媒体支持状態時に前記吸引口と前記吸引装置とを接続させる第2接続路と、が形成される請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記媒体支持部材が前記記録媒体を吸着した状態で支持可能である場合において、
前記吸引装置は、前記媒体支持部材及び前記媒体支持部上の前記記録媒体を吸引する請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
複数の前記液体受容可能部を備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166510(P2012−166510A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30959(P2011−30959)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】