説明

液体噴射装置

【課題】ノズル開口の開口部における液体の吐出径を長期に亘り実効的に所定の吐出口径に維持することができ、しかも開口部におけるメニスカス部分で増粘される液体の粘度を低下させ、吐出特性を長期に亘り良好に維持することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体が充填される圧力発生室と、駆動信号の供給により変形し弾性膜を介して液体に圧力変化を生じさせる圧電素子と、圧力変化に伴い圧力発生室の液体を吐出させるノズル開口21とを備えた液体噴射ヘッドと、駆動信号を供給する制御手段とを備えた液体噴射装置であって、ノズル開口は、圧力発生室側からノズル開口の開口部21Aに向けて吐出口径が漸増するテーパー状に形成されるとともに、制御手段は、圧力発生手段の変形により圧力発生室の容積を増大させた後、変形の方向と逆方向に圧力発生手段を変形させることによりノズル開口を介して液体を吐出させるように圧電素子を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体噴射装置に関し、特に液体のメニスカスを一旦圧力発生室内に引き込んで
、圧力発生室内の容積を拡大し、かかる状態から前記液体に逆方向の圧力を作用させてノ
ズル開口から液滴を吐出する、いわゆる引き打ちを行う液体噴射ヘッドを搭載する液体噴
射装置に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置としては、例えば圧電素子からなる圧力発生手段によりインク滴吐出のた
めの圧力を発生させる複数の圧力発生室と、共通のリザーバーから各圧力発生室に個別に
インクを供給するインク供給路と、各圧力発生室に形成されてインク滴を吐出するノズル
開口とを備えたインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドともいう)を具備するイ
ンクジェット式記録装置(以下、記録装置ともいう)がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
かかる記録装置では、印字信号に対応するノズルと連通した圧力発生室内のインクに吐
出エネルギーを付与してインク滴をノズル開口から外部に吐出させ、紙等のメディアの所
定位置に着弾させている。したがって、この種の記録装置では、ノズル開口が大気に臨む
こととなる。このため、ノズル開口を介した蒸発によりインクが増粘する。この結果、増
粘したインクに起因してインク滴の吐出特性に悪影響を及ぼす場合が発生する。すなわち
、増粘したインクがノズル開口の開口部の周辺部に固化した状態で付着してノズル開口の
実効的な吐出口径を狭める結果となり、着弾のばらつきを生起するという不都合が発生す
る。この場合、吐出性能を決定するノズル開口の吐出口径は、その基端部の吐出口径に依
存しているため、上述の如きインクの増粘現象によりノズル開口の実効的な吐出口径が狭
められた場合、インク滴の吐出量および吐出速度が変化するからである。
【0004】
このため、従来技術に係る汎用的な記録装置では、例えばインクが増粘される前に、記
録ヘッドをメディア以外の部分に移動させて適宜インクを吐き捨てることによりノズル開
口近傍のインクを常に新鮮な状態に維持する等の工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−355961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の如く、インクを吐き捨てる場合には、インクを無駄に廃棄することに
なるという問題が残存していた。
【0007】
なお、このような問題はインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、
インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、液体を廃棄することなく、ノズル開口の開口
部における液体の吐出径を長期に亘り実効的に所定の吐出口径に維持することができ、し
かも前記開口部におけるメニスカス部分で増粘される液体の粘度を低下させ、吐出特性を
長期に亘り良好に維持することが可能な液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、一方の面が振動部で画成されて液体が充填される
圧力発生室と、駆動信号の供給により変形し前記振動部を介して前記液体に圧力変化を生
じさせる圧力発生手段と、前記圧力変化に伴い前記前記圧力発生室の液体を吐出させるノ
ズル開口とを備えた液体噴射ヘッドと、前記駆動信号を供給する制御手段とを備えた液体
噴射装置であって、前記ノズル開口は、前記圧力発生室側から前記ノズル開口の開口部に
向けて吐出口径が漸増するテーパー状に形成されるとともに、前記制御手段は、前記圧力
発生手段の変形に伴う前記振動部の変形により前記圧力発生室の容積を増大させた後、前
記変形の方向と逆方向に前記圧力発生手段を変形させることにより前記ノズル開口を介し
て前記液体を吐出させるように前記圧力発生手段を制御することを特徴とする液体噴射装
置にある。
本態様によれば、ノズル開口の開口部における周辺部にインクの粘度上昇に起因してイ
ンクが固化した増粘部が形成されてもノズル開口の開口部に向けて形成されたテーパー形
状により前記開口部に向けて吐出口径が漸増しているので、固化した増粘部による開口部
における吐出口径の縮小の影響を除去して増粘部による液滴の吐出特性に対する影響を可
及的に低減することができる。すなわち、ノズル開口を介して吐出される液滴の吐出特性
を規定するノズル開口の基端部の吐出口径以上に前記開口部の吐出口径を維持することが
容易であるため、前記基端部の吐出口径で規定される吐出特性を長期に亘り安定的に維持
させることが可能になる。
【0010】
また、本態様では、開口部において空気に触れることにより増粘されたメニスカス部分
の液体を上流側に引き込んで増粘されていない新鮮な液体と混合させているので、増粘さ
れたメニスカス部分の液体の粘度を低減させることができる。このように新鮮な液体と混
合された後、ノズル開口を介して液体を吐出させているので、良好な吐出特性を維持した
状態で所定のメディアに液滴を着弾させることができる。
【0011】
さらに、本態様では、新鮮な液体との混合によりメニスカス部分の液体の粘度が低下さ
せられるので、その分増粘部の固化も抑制することができ、この点でも吐出特性の安定化
に寄与させることができる。
この結果、液体の吐出特性の向上により印刷物等の品質向上を可能とする液体噴射装置
を実現できる。
【0012】
ここで、前記圧力発生手段は、圧電素子で形成するのが好適である。この場合、液体を
一旦ノズル開口の開口部から圧力発生室側に引き込み、その後反対方向に圧力を発生させ
てノズル開口から液滴を吐出させる、いわゆる引き打ちを容易に実現することができるか
らである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2のA−A′線断面図である。
【図4】記録ヘッドのノズル開口部分を拡大して示す模式図である。
【図5】駆動信号を示す波形図である。
【図6】実施の形態に係る記録装置の一例を示す概略図である。
【図7】実施の形態に係る制御系を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置(以下、記
録装置ともいう)に搭載するインクジェット式記録ヘッドユニット(以下、ヘッドユニッ
トともいう)を構成するインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドともいう)の概
略構成を示す分解斜視図である。また、図2は、図1の平面図であり、図3は図2のA−
A′線断面図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、記録ヘッドIの流路形成基板10は、シリコン単結晶基板か
らなり、その一方の面には二酸化シリコンからなり、本形態における振動部となる弾性膜
50が形成されている。流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並
設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通
部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられ
たインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保
護基板30のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマ
ニホールド100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅
で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に
保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14
を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流
路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。かく
して本形態では、流路形成基板10に、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14
及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになり、圧力発生室12にインク
が充填される。
【0016】
また、流路形成基板10の一方の面である開口面側には、各圧力発生室12のインク供
給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート2
0が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。ここで、ノズルプレート20
は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等で好適に構成す
ることができる。
【0017】
流路形成基板10の反対側の開口面には、上述したように弾性膜50が形成され、この
弾性膜50上には、例えば厚さ30〜50nm程度の酸化チタン等からなり弾性膜50等
の第1電極60の下地との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。なお
、弾性膜50上に、必要に応じて酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜が設けられていて
もよい。
【0018】
さらに、この密着層56上には、第1電極60と、厚さが2μm以下、好ましくは0.
3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電
素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、本形態における圧力発生手段で
あり、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧
電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力
発生室12毎にパターニングして構成する。本形態では、第1電極60を圧電素子300
の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配
線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素
子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。
なお、上述した例では、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び必要に応じて設ける
絶縁体膜が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性
膜50や密着層56を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を
兼ねるようにしてもよい。
【0019】
かかる圧電素子300の個別電極である第2電極80には、インク供給路14側の端部
近傍から引き出され、弾性膜50上や必要に応じて設ける絶縁体膜上にまで延設される、
例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
【0020】
圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、弾性膜5
0や必要に応じて設ける絶縁体膜及びリード電極90上には、マニホールド100の少な
くとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接
合されている。このマニホールド部31は、本形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通
して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の
連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を
構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割し
て、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基
板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する
部材(例えば、弾性膜50、必要に応じて設ける絶縁体膜等)にマニホールド100と各
圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
【0021】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻
害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32
は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封
されていても、密封されていなくてもよい。
【0022】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例え
ば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本形態では、流路形成基板10
と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成してある。
【0023】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられて
おり、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍が、貫通孔33内に
露出するように構成してある。
【0024】
一方、保護基板30上には、後に詳述する制御部(図1〜図3には図示せず)で制御さ
れて圧電素子300を駆動する駆動回路120が固定されている。この駆動回路120と
しては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、
駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからな
る接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0025】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプラ
イアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する
材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。
また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホール
ド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、
マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0026】
かかる記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口か
らインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部にインクを
充填する。その後、駆動回路120からの駆動信号にしたがい、圧力発生室12に対応す
るそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、密着層5
6、第1電極60及び圧電体層70を撓み変形させる。このことにより、振動部として機
能する弾性膜50を介して各圧力発生室12内のインクに前記変形に伴う振動を伝達させ
る。この結果、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出さ
れる。かかるインクの吐出駆動動作に関しては後に詳述する。
【0027】
図4は記録ヘッドのノズル開口部分を拡大して示す図で、(a)は本形態のノズル開口
を示す模式図、(b)は従来のノズル開口を示す模式図である。同図(a)に示すように
、ノズル開口21は、圧力発生室12(図1〜図3参照)側からノズル開口21の開口部
21Aに向けて吐出口径が漸増するテーパー状に形成されている。すなわち、(開口部2
1Aの吐出口径Φ1)>(基端部21Bの吐出口径Φ2)となっている。したがって、開
口部21Aにおける周辺部にインクの粘度上昇に起因して経時的にインクが固化して増粘
部22が形成される場合がある。
【0028】
しかしながら、本形態においては、増粘部22により開口部21Aの周辺部をインク滴
の吐出路として機能させることができない状態になっても、(増粘部22を除く中央部の
吐出口径Φ3)≧(基端部21Bの吐出口径Φ2)とすることは容易にできる。ノズル開
口21が開口部21Aに向かって吐出口径が漸増するテーパー形状に形成されているから
である。この結果、増粘部22によるインク滴の吐出特性に対する影響を可及的に低減す
ることができる。すなわち、ノズル開口21を介して吐出されるインク滴の吐出特性は吐
出口径Φ2に基づき一意に決定されるため、(吐出口径Φ3)≧(吐出口径Φ2)の関係
が維持されていれば、増粘部22の存在により開口部21Aを介するインク滴の吐出が阻
害されることはない。これに対し、図4(b)に示す、従来のノズル開口021では増粘
部022が形成された場合、その分実質的な吐出口径Φ4が小さくなる。すなわち、イン
ク滴の吐出特性を考慮して決定した吐出口径Φ2に対し、(吐出口径Φ2)>(吐出口径
Φ4)となるので、その分吐出特性が悪化する。
【0029】
さらに、本形態では、図5に示す波形の駆動信号SDで圧電素子300を駆動させてい
るので、開口部21Aにおいて空気に触れることにより増粘されたメニスカス部分のイン
クを上流側(圧力発生室12側)に引き込んで増粘されていない新鮮なインクと混合させ
た後、ノズル開口21を介して外部に吐出させることができる。さらに詳言すると、まず
接地電位となっている第1電極60と第2電極80との間に負電圧を印加する(図5中の
A部分)。この結果、圧電素子300は、図3において、上方に凸となるように変形する
ので、圧力発生室12の容積が増大し、開口部21Aに形成されたメニスカス部分のイン
クが圧力発生室12側に引き込まれる。空気に臨むメニスカス部分で増粘が進行しつつあ
ったインクが圧力発生室12に引き込まれて圧力発生室12内の新鮮なインクと混合され
る。このことにより増粘が進行していたインクの粘度を低下させることができる。
【0030】
かかる状態から、接地電位となっている第1電極60と第2電極80との間に正電圧を
印加する(図5中のB部分)。この結果、圧電素子300は、図3において、今度は逆に
下方に凸となるように変形するので、かかる変形で弾性膜50が変形され、圧力発生室1
2内のインクに圧力変動を生起させる。この結果、圧力発生室12内のインクが下方に押
され、ノズル開口21を介して吐出される。かくして、開口部21Aにおけるメニスカス
部分の増粘したインクを圧力発生室12内の新鮮なインクと混合することにより粘度を低
下させた後、インクの所定の吐出を行わせることができる。この結果、インクの増粘によ
る影響を除去して良好な吐出特性を維持することができる。
【0031】
さらに、本形態では、圧力発生室12内の新鮮なインクとの混合によりメニスカス部分
のインクの粘度も低下させられるので、その分増粘部22の固化も抑制することができる

【0032】
図6は本形態に係る液体噴射装置である記録装置を示す概略図である。同図に示すよう
に、本形態に係る記録装置IIは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する
記録ヘッドIが記録ヘッドユニット1A,1Bを構成して搭載されている。ここで、記録
ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが
着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3が、
装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記
録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーイ
ンク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複
数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッ
ドユニット1A,1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一
方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない供
給ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き
掛けられて搬送されるようになっている。
【0033】
図7は本形態に係るインクジェット式記録装置の制御系を示すブロック線図である。同
図に示すように、記録装置II内には、その制御を行う制御部110が設けられている。制
御部110は、CPU111と、装置制御部112と、容量性負荷のヘッド制御部である
駆動回路120とを備えている。
【0034】
さらに詳言すると、CPU111からキャリッジ3(図6参照)の移動を示す信号が装
置制御部112に入力されると、装置制御部112は、駆動モーター6を駆動させてキャ
リッジ3をキャリッジ軸5に沿って移動させるとともに、CPU111からの記録シート
S(図6参照)の搬送を示す信号が装置制御部112に入力され、装置制御部112が、
供給ローラー23を駆動して記録シートSを搬送させる。
【0035】
一方、駆動回路120には、CPU111からヘッドの駆動信号SDを生成するための
アナログ信号SA及び当該駆動回路120のスイッチング制御を行うスイッチング信号S
Sが入力される。駆動回路120はアナログ信号SA及びスイッチング信号SSに基づき
駆動信号SDを生成し、この駆動信号SDを記録ヘッドIの各圧電素子300を選択的に
駆動してインクを吐出させる。駆動信号SDは図5に示す波形の信号である。さらに詳言
すると、駆動回路120ではCPU111から供給されるアナログ信号SAとスイッチン
グ信号SSに基づき図5に示す波形の駆動信号SDを形成し、この駆動信号SDを圧電素
子300に選択的に印加する。この結果、記録ヘッドIでは、図5に基づき説明した前述
の如き引き打ちが実行され、ノズル開口21でメニスカスを形成していたインクを圧力発
生室12側に引き込み、新鮮なインクと混合させることにより粘度を低下させた後、印刷
対象である紙等のメディアに向けて吐出される。
【0036】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定さ
れるものではない。例えば、上記実施の形態における記録装置IIは、圧力発生室12に圧
力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電素子300を用いた記録ヘッドI
で説明したが、特にこれに限定する必要はない。ノズル開口に形成されるインクのメニス
カスを圧力発生室12側に一旦引き込んで、その後インク滴としてノズル開口から吐出さ
せることができるものであれば構わない。例えば、グリーンシートを貼付する等の方法に
より形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積
層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができ
る。また、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形さ
せてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターであっても原理的
には適用できる。
【0037】
なお、図6に示す実施の形態は、記録シートSの搬送方向と交差する方向(主走査方向
)に移動するキャリッジ3に記録ヘッドユニット1A,1Bを搭載し、記録ヘッドユニッ
ト1A,1Bを主走査方向に移動させながら印刷を行う、いわゆるシリアル型のインクジ
ェット式記録装置であるがこれに限るものではない。記録ヘッドが固定されて記録シート
Sを搬送するだけで印刷を行う、いわゆるライン式のインクジェット記録装置であっても
、勿論構わない。
【0038】
さらに上記実施の形態では、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙
げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象とした
ものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置にも勿
論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画
像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製
造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ
)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体
有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0039】
I インクジェット式記録ヘッド(記録ヘッド)、 II インクジェット式記録装置
(記録装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、
21 ノズル開口、 21A 開口部、 21B 基端部、 22 増粘部、50 弾
性膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、
100 マニホールド、 110 制御部、 120 駆動回路、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が振動部で画成されて液体が充填される圧力発生室と、駆動信号の供給により
変形し前記振動部を介して前記液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、前記圧力変
化に伴い前記前記圧力発生室の液体を吐出させるノズル開口とを備えた液体噴射ヘッドと

前記駆動信号を供給する制御手段とを備えた液体噴射装置であって、
前記ノズル開口は、前記圧力発生室側から前記ノズル開口の開口部に向けて吐出口径が
漸増するテーパー状に形成されるとともに、
前記制御手段は、前記圧力発生手段の変形に伴う前記振動部の変形により前記圧力発生
室の容積を増大させた後、前記変形の方向と逆方向に前記圧力発生手段を変形させること
により前記ノズル開口を介して前記液体を吐出させるように前記圧力発生手段を制御する
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射装置において、
前記圧力発生手段は、圧電素子で形成したことを特徴とする液体噴射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179821(P2012−179821A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44788(P2011−44788)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】