説明

液体噴射装置

【課題】小型化を図ることができると共にコストを低減することができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズルを有すると共にノズルに連通する液体流路100が設けられた液体噴射ヘッド3と、該液体噴射ヘッド3の前記ノズルから吸引を行う吸引手段と、を具備し、前記液体噴射ヘッド3には、前記液体流路100の途中に内部にフィルター25を内包するフィルター室103が設けられており、該フィルター室103の前記フィルター25に相対向する壁部26及び当該フィルター室103の上流側の前記液体流路102を画成する壁部24の少なくとも一部が弾性部材22で一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例であるインクジェット式記録ヘッドでは、一般的に、インクが充填されたインクカートリッジ等の液体貯留手段からヘッド本体にインクが供給され、ヘッド本体に供給されたインクは圧電素子や発熱素子等の圧力発生手段を駆動させることによりノズルからインク滴として吐出される。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、インクカートリッジのインク内に存在する気泡、あるいはインクカートリッジを着脱する際にインク内に混入した気泡がヘッド本体に供給されてしまうと、この気泡によるドット抜け等の吐出不良が発生するという問題がある。このような問題を解決するために、インクカートリッジに挿入される、インク供給針とカートリッジとインクジェット式記録ヘッドとの間の液体流路に、インク内の気泡や異物を除去するためのフィルターを装着するようにしたものがある。
【0004】
このように液体流路の途中にフィルターを設けることにより、ヘッド本体に気泡が流れ込むのを防止することができるものの、フィルターの上流側の空間であるフィルター室に溜まった気泡を排出し難いという問題がある。
【0005】
このため、フィルター室内にフィルターに相対向してフィルターに近接・離反するように変形する弾性体で形成された壁を設けるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−296622号公報
【特許文献2】特開2010−201829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、弾性体で形成された壁部を配置するスペースが必要で、インクジェット式記録ヘッドが大型化してしまうという問題がある。
【0008】
また、弾性体で形成された壁部と他の部材とは別材料からなるため、それぞれ別部材で形成して組み立てると、コストが増大してしまうという問題がある。
【0009】
なお、このような問題はインクジェット式記録装置に限定されず、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置においても同様に存在する。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、小型化を図ることができると共にコストを低減することができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズルを有すると共にノズルに連通する液体流路が設けられた液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドの前記ノズルから吸引を行う吸引手段と、を具備し、前記液体噴射ヘッドには、前記液体流路の途中に内部にフィルターを内包するフィルター室が設けられており、該フィルター室の前記フィルターに相対向する壁部及び当該フィルター室の上流側の前記液体流路を画成する壁部の少なくとも一部が弾性部材で一体的に形成されていることを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、流路の壁部とフィルター室の壁部とを弾性部材で一体的に形成することで、別材料で形成する場合に比べて部品点数を減らして材料コスト及び組み立てコストを低減することができる。また、フィルター室の壁部を弾性部材で形成することで、吸引手段が吸引動作を行った際にフィルター室の壁部を弾性変形させて、フィルター室に溜まった気泡を壁部で押圧して強制的に排出することができる。
【0012】
ここで、前記フィルター室の上流の前記液体流路を画成する前記弾性部材で形成された壁部に対して、前記フィルター室を画成する前記弾性部材で形成された壁部の剛性が低いことが好ましい。これによれば、吸引手段が吸引動作を行った際に、液体流路の壁部が弾性変形する量を低減して、フィルター室の壁部を弾性変形させることができる。
【0013】
また、前記液体噴射ヘッドが、ベース部と、該ベース部の一方面に固定された前記弾性部材と、を具備し、前記フィルター室と当該フィルター室よりも上流側の前記液体流路が前記ベース部と前記弾性部材との境界に画成されていることが好ましい。これによれば、液体流路とフィルター室との壁部を弾性部材で容易に形成することができる。
【0014】
また、前記フィルター室を画成する前記弾性部材の壁部は、周囲よりもドーム型に膨らんで形成されていることが好ましい。これによれば、フィルター室を画成する壁部を効率よくフィルター側に弾性変形させることができると共にフィルターから離反する方向に戻り易くすることができる。
【0015】
また、前記フィルター室を画成する前記弾性部材で形成された前記壁部は、前記フィルターとは離反する方向に傾斜して設けられた周縁部と、前記フィルター側に突出して設けられた中央部とを具備することが好ましい。フィルター室を画成する壁部を効率よくフィルター側に弾性変形させることができると共にフィルターから離反する方向に戻り易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの動作を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態では、液体であるインクが貯留された液体貯留手段1からのインクは、キャリッジ2に搭載された液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド3に供給管4を介して供給される。
【0019】
このようなインクジェット式記録ヘッド3が搭載されたキャリッジ2は、装置本体7に取り付けられたキャリッジ軸2aの軸方向に移動可能に設けられている。
【0020】
そして駆動モーター8の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト8aを介してキャリッジ2に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2はキャリッジ軸2aに沿って移動される。一方、装置本体7にはキャリッジ軸2aに沿ってプラテン9が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン9に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0021】
このようなインクジェット式記録装置Iでは、キャリッジ2がキャリッジ軸2aに沿って移動されると共にインクジェット式記録ヘッド3からインク滴が吐出されて記録シートSに印刷される。
【0022】
また、インクジェット式記録装置Iには、キャリッジ2の移動方向の端部であるプラテン9の側方の非印字領域には、インクジェット式記録ヘッド3のノズルからインクを吸引して吸引動作を行う吸引手段10が設けられている。
【0023】
吸引手段10は、ゴム等で形成されたキャップ部材11の吸引口の縁部をインクジェット式記録ヘッド3のインク滴が吐出される液体噴射面に当接し、吸引ポンプ等の吸引装置12に吸引動作を行わせることで、キャップ部材11の内部を負圧として、ノズルからインクジェット式記録ヘッド3の液体流路内のインクを気泡と共に吸引して吸引動作を行う。また、キャップ部材11は、吸引動作以外のタイミング、例えば、電源遮断時、待機時、または定期的なタイミング等でノズルを覆い、ノズル近傍のインクの乾燥による増粘を防止する役割も有する。
【0024】
ここで、上述のようなインクジェット式記録装置Iに搭載されるインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図2は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの斜視図であり、図3は、インクジェット式記録ヘッドの平面図であり、図4は、図3のA−A′線断面図であり、図5は、図3のB−B′線断面図及びC−C′線断面図である。
【0025】
インクジェット式記録ヘッド3は、液体貯留手段1に供給管4を介して接続されて液体貯留手段1からのインクが供給される流路部材20と、流路部材20に固定されて流路部材20からのインクが供給されると共にインクがインク滴として吐出されるヘッド本体40と、を具備する。
【0026】
ヘッド本体40は、流路部材20に固定される面とは反対側に、液体であるインクをインク滴として吐出するノズルが開口する液体噴射面41を具備する。また、ヘッド本体40の図示しない内部にはノズルに連通すると共に流路部材20の流路に連通する液体流路と、液体流路内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段等が設けられている。かかる圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって液体流路の容積を変化させて液体流路内のインクに圧力変化を生じさてノズルからインク滴を吐出させるものや、液体流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルからインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルからインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0027】
このようなヘッド本体40にインクを供給する流路部材20は、ヘッド本体40が固定される流路部材本体21と、流路部材本体21のヘッド本体40とは反対面側に固定された弾性部材22と、を具備する。
【0028】
流路部材本体21は、弾性部材22に比べて高硬度な材料、例えば、金属や樹脂などで形成されている。本実施形態では、例えば、樹脂材料を成形することで流路部材本体21を安価に形成することができる。本実施形態では、流路部材本体21が特許請求の範囲で言うベース部に相当する。
【0029】
また、弾性部材22は、弾性変形可能な材料、例えば、ゴムやエラストマーなどからなる。ここで、弾性変形可能な材料とは、詳しくは後述するフィルター室を画成する第2壁部26がフィルター側に近接・離反するように弾性変形が可能な材料を言う。
【0030】
このような流路部材本体21と弾性部材22とで構成された流路部材20には、液体流路100が設けられている。
【0031】
液体流路100は、一端がヘッド本体40の固定された面とは反対面の弾性部材22に開口し、液体貯留手段1に接続された供給管4が接続される。また、液体流路100の他端は、ヘッド本体40側に開口し、ヘッド本体40の内部の図示しない液体流路に連通する。
【0032】
ここで、液体流路100は、供給管4が接続される接続口101と、接続口101に連通する第1流路102と、第1流路に連通するフィルター室103と、フィルター室103に連通すると共にヘッド本体40の内部の図示しない液体流路に連通する第2流路104と、を具備する。
【0033】
接続口101は、弾性部材22を厚さ方向(弾性部材22と流路部材本体21との積層方向である方向Z)に貫通して設けられており、本実施形態では、弾性部材22から流路部材本体21とは反対側から突出して設けられた円柱状の突出部23の先端に開口して設けられている。
【0034】
第1流路102とフィルター室103とは、流路部材本体21と弾性部材22との境界に設けられている。具体的には、第1流路102は、弾性部材22の流路部材本体21に固定された面側に凹形状に設けられた溝と、この溝を封止する流路部材本体21の平面(弾性部材22が固定される面)とによって画成されている。すなわち、第1流路102は、弾性部材22によってその3つの面が画成され、流路部材本体21によって1つの面が画成された断面が矩形状を有する。なお、ここで言う第1流路102の断面とは、インクの流れる方向に直交する方向の断面のことであるが、もちろん、第1流路102の形状は、矩形状の断面を有するものに限定されず、円形状、楕円形状、多角形状等の断面を有するものであってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、第1流路102の流路部材本体21によって画成された隔壁に相対向する隔壁を第1壁部24と称する。また、流路部材本体21の弾性部材22が固定された面内において、第1流路102を流れるインクの流方向(以下、単に第1の方向Xとも称する)に直交する方向(以下、単に第2の方向Yとも称する)の第1壁部24の幅を第1の幅Wと称する。すなわち、第1壁部24の第2の方向Yにおける第1の幅Wは、第1流路102の第2の方向Yにおける幅のことである。
【0036】
フィルター室103は、弾性部材22の流路部材本体21側に形成された凹部と、流路部材本体21の弾性部材22側の面とによって画成されている。このフィルター室103は、第1流路102よりも第2の方向Yにおいて幅広となるように形成されている。
【0037】
このようなフィルター室103の内部には、インク中に含まれる異物や気泡を除去するためのフィルター25が設けられている。本実施形態では、フィルター25は、流路部材本体21の第2流路104が開口する開口面、つまり、弾性部材22が固定される面に固定されている。
【0038】
なお、フィルター25としては、例えば、金属や樹脂等の繊維を細かく編むことで複数の微細孔が形成されたシート状のものや、金属や樹脂等の板状部材に複数の微細孔を貫通させたものなどを用いることができる。なお、フィルター25は、不織布等を用いてもよく、その材料は特に限定されるものではない。
【0039】
そして、フィルター室103のフィルター25に相対向する領域には、弾性部材によって画成された弾性変形可能な第2壁部26が設けられている。第2壁部26は、本実施形態では、フィルター25とは反対側に周囲(弾性部材の他の領域)よりもドーム状(半円形状)に突出して設けられている。ここで言うドーム状とは、周囲から徐々に中心に向かって突出量が増大している形状のことを言う。また、第2壁部26は、本実施形態では、フィルター25よりも若干大きな面積で、且つ相対向するフィルター25を完全に覆う位置に配置されている。
【0040】
このようなフィルター室103を画成する第2壁部26の第2の方向Yの幅、すなわち、流路部材本体21の弾性部材22が固定された面内において、第1流路102を流れるインクの流方向(第1の方向X)に直交する方向(第2の方向Y)の幅(第2の幅W)は、第1壁部24の第1の幅Wよりも幅広となるように設けられている。
【0041】
これにより、フィルター室103を画成する第2壁部26は、第1流路102を画成する第1壁部24よりも剛性が低くなっている。すなわち、本実施形態では、第1壁部24と第2壁部26とを同じ材料で同じ厚さ(方向Z)で形成するが、第1壁部24の第1の幅Wよりも第2壁部26の第2の幅Wを幅広に設けることで、第2壁部26が両側の壁によって支持される距離は、第1壁部24によって短くなるため、第2壁部26は第1壁部24に比べて剛性が低く、つまり、フィルター25側に向かって弾性変形し易くなっている。なお、ここで言う剛性とは、力に対する寸法変化(変形)しづらさの度合いのことを言い、単位変形を起こすのに必要な力(荷重/変形量)で表されるものである。特に本実施形態では、第1壁部24の略中心と第2壁部26の略中心とを比較している。本実施形態では、第2壁部26の剛性は、詳しくは後述するが、通常の印刷時などノズルからインク滴を吐出する際の圧力変動では弾性変形せずに、吸引手段10による吸引動作を行った際にフィルター25側に近接するように弾性変形する大きさである。
【0042】
第2流路104は、流路部材本体21を厚さ方向(流路部材本体21と弾性部材22との積層方向である方向Z)に貫通して設けられており、一端が流路部材本体21の弾性部材22が固定される面に開口してフィルター室103と連通し、他端が流路部材本体21の弾性部材22が固定される面とは反対面側に開口してヘッド本体40の内部の図示しない流路と連通する。
【0043】
このようなインクジェット式記録ヘッド3では、液体貯留手段1からのインクが供給管4を介して流路部材20に供給され、流路部材20の接続口101、第1流路102、フィルター室103及び第2流路104からなる液体流路100を通過して、ヘッド本体40に供給される。そして、ヘッド本体40内部の液体流路をノズルに至るまでインクで満たした後、外部からの記録信号に従い、圧力発生手段が駆動することによりノズルからインク滴が吐出される。
【0044】
また、本実施形態の流路部材20では、インクに混入した気泡は、フィルター25によってトラップされ、図6(a)に示すように、フィルター室103内に気泡200として溜まる。そして、フィルター25上にトラップされた気泡200が大きくなると、気泡200がフィルター25を覆い、フィルター25のインクを通過させる有効面積が減少して圧力損失が大きくなり、ヘッド本体40からのインク滴の吐出不良が発生してしまう。このため、フィルター室103内に溜まった気泡200は、所定のタイミングで外部に排出する必要がある。
【0045】
本実施形態では、図1に示す吸引手段10によってヘッド本体40のノズルからインクを吸引することにより、流路部材20内のフィルター室103に溜まった気泡200をインクと共にノズルから排出させる。
【0046】
このとき、吸引手段10の吸引によって第2流路104側が急激に負圧になることによって、図6(b)に示すように、フィルター室103を画成する第2壁部26は、フィルター25側に弾性変形する。
【0047】
第2壁部26は、本実施形態では、ドーム状に設けられているため、第2壁部26の中央部がフィルター25に最も近接するように弾性変形する。これにより、フィルター室103に溜まっていた気泡200は、弾性変形した第2壁部26によってフィルター25に押し付けられて、フィルター25を通過して下流である第2流路104側に排出される。
【0048】
その後は、吸引手段10によるノズルからの吸引動作を終了させることで、液体流路100内の圧力は負圧が減少、すなわち、標準大気圧に近くなり、フィルター25側に近接するように弾性変形していた第2壁部26は、通常の状態、つまり図6(a)に示すようにフィルター25から離反した状態に戻る。
【0049】
このように、フィルター室103を画成する第2壁部26をフィルター25に近接・離反可能に弾性変形可能とし、吸引手段10の吸引動作によって弾性変形させることで、フィルター室103内に溜まった気泡200を効率よく外部に排出させることができる。すなわち、吸引手段10による吸引圧力を低くしても、第2壁部26を弾性変形させることで、フィルター室103内に溜まった気泡200を排出することができるため、インクの無駄な消費を抑制することができると共に、吸引手段10の吸引装置12に比較的低い圧力で動作する安価で小型なものを用いることができる。ちなみに、弾性変形可能な第2壁部26を設けていない場合には、フィルター25上でトラップされた気泡200をフィルター25を通過させて吸引するには、吸引力を強くする必要があり、インクの無駄な消費が増大すると共に、吸引力の強い高価で大型な吸引装置12が必要になってしまう。
【0050】
また、本実施形態では、フィルター室103を画成する第2壁部26と、フィルター室103よりも上流の液体流路である第1流路102を画成する第1壁部24と、を弾性部材22によって形成し、第2壁部26を第1壁部24の剛性よりも低い剛性となるようにした。このため、第2壁部26のみを弾性部材22で形成し、その他の領域、例えば、第1壁部24等を弾性部材22とは異なる材料で形成する場合に比べて、単一の材料で組み立てすることなく形成することができるため、部品点数を減らして、材料及び組み立てに係る製造コストを低減することができると共に小型化を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1壁部24と第2壁部26とを弾性部材22で形成したが、吸引手段10による吸引動作時に、第1壁部24は流路部材本体21側に変形し難く(剛性が高く)なっている。これにより、吸引手段10の吸引動作時に吸引力の低下を抑制することができる。ちなみに、吸引手段10による吸引動作時に第1壁部24が流路部材本体21側に弾性変形してしまうと、第1流路102の流路断面が小さくなり、流路抵抗が大きくなって吸引手段10による吸引力が低下し、第2壁部26を十分に変形させることができなくなって気泡200を第2壁部26によって押圧することができなくなってしまう虞がある。
【0052】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、第2壁部26を第1壁部24よりも剛性が低くなるように、第2壁部26の第2の幅Wを第1壁部24の第1の幅Wよりも幅広にしたが、第2壁部26は、第1壁部24よりも剛性が低ければ、特にこれに限定されない。例えば、第2壁部26となる領域のみに、他の領域(第1壁部24)よりも剛性の低い材料を用いるようにしてもよい。また、第2壁部26を第1壁部24よりも厚さを薄くすることで、剛性を低くしてもよい。このような例を図7に示す。なお、図7は、本発明の他の実施形態に係る流路部材の要部断面図であり、図3のA−A′線断面図に相当するものである。
【0053】
図7(a)に示すように、第2壁部26Aは、流路部材本体21とは反対側にドーム状に突出して設けられており、全体に亘ってその厚さは第1壁部24よりも薄くなっている。これにより、第2壁部26Aは、第1壁部24よりも剛性が低くなっている。なお、図7(a)に示す例では、上述した実施形態1と同様に、第2壁部26Aの第2の幅Wは、第1壁部24の第1の幅Wよりも幅広とし、さらに第2壁部26Aの厚さを薄くすることで、実施形態1の第2壁部26に比べて、第2壁部26Aの剛性は第1壁部24よりもさらに低くすることができる。もちろん、第2壁部26Aの第2の幅Wは、第1壁部24の第1の幅Wと同じ幅としても、第2壁部26Aの厚さが薄いため、第2壁部26Aは第1壁部24よりも剛性を低くすることができる。
【0054】
また、図7(b)に示すように、第2壁部26Bは、周囲の平坦面との境界側に一部だけ厚さが薄くなった薄肉部26aを有する。このように、一部に薄肉部26aを有する第2壁部26Bとしても、第1壁部24よりも剛性を低くすることができる。なお、第2壁部26Bの第2の幅Wについては、図7(a)の場合と同じである。
【0055】
また、例えば、上述した実施形態1では、第2壁部26をドーム状に設けるようにしたが、その形状は特に限定されるものではない。ここで、第2壁部26の他の例を図8に示す。なお、図8は、本発明の他の実施形態に係る流路部材の要部断面図であり、図3のC−C′線断面図に相当するものである。
【0056】
図8に示すように、第2壁部26Cは、周縁部側、すなわち、周囲の平坦な領域側にフィルター25から離反する方向に傾斜してフィルター25とは反対側に突出して設けられた周縁部26bと、周縁部26bの中央部側に設けられてフィルター25側にドーム状に突出して設けられた中央部26cと、を具備する。
【0057】
このような第2壁部26Cでは、図8(a)に示すように、フィルター室103に気泡200が溜まった状態から、吸引手段10が吸引動作を行うことで、図8(b)に示すように、第2壁部26Cの中央部26cがフィルター25側に移動するように弾性変形する。このとき、弾性変形した第2壁部26Cは、周縁部26bによってフィルター25とは反対側に突出する方向に付勢されるため、吸引動作を終了した際に、図8(a)に示す状態にまで戻り易くなっている。すなわち、このような第2壁部26Cの形状とすることで、第2壁部26Cは、吸引動作を行うことによってフィルター25側に変形し易く、且つ吸引動作を停止することで、フィルター25とは反対側の元の状態に戻りやすくすることができる。
【0058】
なお、このような第2壁部26Cであっても、図7に示すように、一部又は全てに亘って厚さを薄くすることで、弾性変形し易くすることもできる。
【0059】
また、上述した実施形態1では、インクジェット式記録ヘッド3は、流路部材20とヘッド本体40とを具備し、流路部材20がベース部である流路部材本体21と弾性部材22とを具備するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、流路部材20を構成する流路部材本体21とヘッド本体40とが一体的に設けられていてもよい。すなわち、弾性部材22が一方面に固定されるベース部として、流路部材本体21とヘッド本体40とが一体的に設けられたものを用いてもよい。つまり、本願発明は、第1壁部24と第2壁部26、26A〜26Cとが、同じ弾性部材22で一体的に形成されていれば、その他の部材が単一の部材であっても複数の部材が積層されたものであっても特に限定されるものではない。
【0060】
また、上述した実施形態1では、弾性部材22に溝状(凹状)に第1流路102及びフィルター室103等を設けたが、特にこれに限定されず、流路部材本体21側に溝状(凹状)の第1流路102及びフィルター室103を設け、平板状の弾性部材22で流路部材本体21の溝を封止するようにしてもよい。もちろん、流路部材本体21と弾性部材22との両方に溝を設けて、両者の境界に第1流路102とフィルター室103とを設けるようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態1では、流路部材20にフィルター25のみが形成されたものを例示したが、流路部材20の内部に所定の圧力で流路を開閉する弁体を設けるようにしてもよく、また、ヒーター等の加熱手段を設けるようにしてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態1では、第2壁部26は、吸引手段10が吸引動作を行うことで、フィルター25側に弾性変形するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、第2壁部26をフィルター25側に押圧する押圧手段を設けるようにしてもよい。押圧手段としては、例えば、モーターや電磁石等によって動作するものなどが挙げられる。
【0063】
また、上述した実施形態1では、インクジェット式記録ヘッド3がキャリッジ2に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド3が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。また、液体貯留手段1をキャリッジ2に搭載して、液体貯留手段1がインクジェット式記録ヘッド3と共に主走査方向に移動するインクジェット式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0064】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 液体貯留手段、 2 キャリッジ、 3 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 吸引手段、 20 流路部材、 21 流路部材本体、 22 弾性部材、 24 第1壁部、 25 フィルター、 26 第2壁部、 40 ヘッド本体、 100 液体流路、 101 接続口、 102 第1流路、 103 フィルター室、 104 第2流路、 200 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルを有すると共にノズルに連通する液体流路が設けられた液体噴射ヘッドと、
該液体噴射ヘッドの前記ノズルから吸引を行う吸引手段と、を具備し、
前記液体噴射ヘッドには、前記液体流路の途中に内部にフィルターを内包するフィルター室が設けられており、該フィルター室の前記フィルターに相対向する壁部及び当該フィルター室の上流側の前記液体流路を画成する壁部の少なくとも一部が弾性部材で一体的に形成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記フィルター室の上流の前記液体流路を画成する前記弾性部材で形成された壁部に対して、前記フィルター室を画成する前記弾性部材で形成された壁部の剛性が低いことを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射ヘッドが、ベース部と、該ベース部の一方面に固定された前記弾性部材と、を具備し、
前記フィルター室と当該フィルター室よりも上流側の前記液体流路が前記ベース部と前記弾性部材との境界に画成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記フィルター室を画成する前記弾性部材の壁部は、周囲よりもドーム型に膨らんで形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記フィルター室を画成する前記弾性部材で形成された前記壁部は、前記フィルターとは離反する方向に傾斜して設けられた周縁部と、前記フィルター側に突出して設けられた中央部とを具備することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111882(P2013−111882A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261018(P2011−261018)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】