説明

液体圧送装置

【課題】 排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに、液体を液体流入口から密閉容器内に素早く流入させて密閉容器内の復水の再蒸発を防止できる液体圧送装置を提供する。
【解決手段】 作動蒸気導入口11に給気弁53が設けられ、作動蒸気排出口13に排気弁47が設けられ、液体排出口17に圧送側逆止弁59が設けられる。密閉容器2内に配置されたフロート3の昇降に応じてスナップ機構5を動作させ動力伝達軸46をスナップ移動させて給気弁20と排気弁21の開閉を切り換える。液体流入口16を前記排気弁47で開閉し、排気弁47を開いて作動蒸気排出口13を開口し給気弁53を閉じて作動蒸気導入口11を閉口したときに液体流入口16を開口し、排気弁47を閉じて作動蒸気排出口13を閉口し給気弁53を開いて作動蒸気導入口11を開口したときに液体流入口16を閉口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水や燃料等の液体を圧送する液体圧送装置に関するものである。本発明の液体圧送装置は、各種蒸気使用装置で発生した復水をボイラーや廃熱利用箇所に送る装置として特に適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体圧送装置は、密閉容器に作動蒸気導入口と作動蒸気排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、作動蒸気導入口に給気弁が設けられ、作動蒸気排出口に排気弁が設けられ、液体流入口に密閉容器への液体の流れだけを許容する流入側逆止弁が設けられ、液体排出口に液体圧送先への液体の流れだけを許容する圧送側逆止弁が設けられ、密閉容器内に配置されたフロートの昇降に応じてスナップ機構を動作させて動力伝達軸をスナップ移動させることにより、動力伝達軸に連結された給気弁と排気弁の開閉を切り換えて、初めに排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口することにより液体を液体流入口から密閉容器内に流入させ、次いで排気弁を閉じて作動蒸気排出口を閉口し給気弁を開いて作動蒸気導入口を開口することにより密閉容器内に溜った液体を液体排出口から液体圧送先へ圧送するものである。
【0003】
上記従来の液体圧送装置は、排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに、密閉容器内の復水が再蒸発するために密閉容器内の蒸気の排気に時間が掛かり、流入側逆止弁の開弁が遅れて密閉容器内への液体の流入が遅い問題点があった。密閉容器内への液体の流入が遅いと、単位時間当たりの液体圧送能力が小さくなる。
【特許文献1】特開平8−145290
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに、液体を液体流入口から密閉容器内に素早く流入させて密閉容器内の復水の再蒸発を防止できる液体圧送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、密閉容器に作動蒸気導入口と作動蒸気排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、作動蒸気導入口に給気弁が設けられ、作動蒸気排出口に排気弁が設けられ、液体排出口に液体圧送先への液体の流れだけを許容する圧送側逆止弁が設けられ、密閉容器内に配置されたフロートの昇降に応じてスナップ機構を動作させて動力伝達軸をスナップ移動させることにより、動力伝達軸に連結された給気弁と排気弁の開閉を切り換えて、初めに排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口することにより液体を液体流入口から密閉容器内に流入させ、次いで排気弁を閉じて作動蒸気排出口を閉口し給気弁を開いて作動蒸気導入口を開口することにより密閉容器内に溜った液体を液体排出口から液体圧送先へ圧送する液体圧送装置において、液体流入口を前記排気弁で開閉し、排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに液体流入口を開口し、排気弁を閉じて作動蒸気排出口を閉口し給気弁を開いて作動蒸気導入口を開口したときに液体流入口を閉口することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに、排気弁で液体流入口を素早く開口して密閉容器内の蒸気を短時間に排気することにより、密閉容器内へ液体を素早く流入させることができ、単位時間当たりの液体圧送能力を大きくできるという優れた効果を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の液体圧送装置は、液体流入口を前記排気弁で開閉し、排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに液体流入口を開口し、排気弁を閉じて作動蒸気排出口を閉口し給気弁を開いて作動蒸気導入口を開口したときに液体流入口を閉口ものである。そのため、排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに、排気弁で液体流入口を素早く開口することができ、密閉容器内の蒸気と液体流入口の液体とを置換させて密閉容器内の復水の再蒸発を防止することができる。そのため、密閉容器内の蒸気を短時間に排気して密閉容器内へ液体を素早く流入させることができる。
【実施例1】
【0008】
上記の技術的手段の具体例を示す実施例を説明する。図1は本発明の実施例の液体圧送装置の断面図、図2はA−A線を加入した図1のスナップ機構部分の拡大断面図、図3は図2のA−A線断面図である。本実施例の液体圧送装置1は密閉容器2内にフロート3と切替え弁4とスナップ機構5及び排液弁6が配されたものである。密閉容器2は本体部7と蓋部8が図示しないネジによって結合され、内部に液体溜空間10が形成されたものである。蓋部8には作動蒸気導入口11,作動蒸気排出口13,液体流入口16,液体排出口17が設けられている。
【0009】
スナップ機構5は、密閉容器2内に支持された揺動軸21と、揺動軸21の周りに回転するフロートアーム22及び副アーム23と、フロートアーム22に支持された第1の軸24と、副アーム23に支持された第2の軸25と、第1及び第2の軸24,25の間に取り付けられた圧縮状態のコイルバネ26とから構成される。揺動軸21はブラケット27によって密閉容器2内に支持されている。ブラケット27は2枚の板よりなり、夫々の板が図示しないネジによって密閉容器2の蓋部8に一体的に取り付けられている。
【0010】
フロートアーム22は平行に対向した2枚の板よりなり、2枚の板の左端部に揺動軸21と平行な第1の軸24が掛け渡され、第1の軸24にフロート3に固着された取付部30が連結されている。また第1の軸24に第1バネ受け28が回転可能に支持されている。フロートアーム22はほぼ中央部が揺動軸21によって回転可能に支持されている。そのためフロートアーム22はフロート3の浮沈に追従して揺動軸21を中心として上下に揺動する。
【0011】
副アーム23はほぼ中央部が揺動軸21に回転可能に支持されている。副アーム23は平行に対向した2枚の板よりなり、2枚の板の左端部に揺動軸21と平行な第2の軸25が掛け渡されている。第2の軸25に第2バネ受け29が回転可能に支持されている。第1及び第2バネ受け28,29の間に圧縮状態のコイルバネ26が配置されている。
【0012】
排液弁6は、フロートアーム22に支持された第3の軸31と、第3の軸31に取り付けられた排液弁アーム32と、排液弁アーム32に取り付けられ密閉容器2内と液体排出口17の間を連通遮断する排液弁体33とから構成される。第3の軸31は揺動軸21と平行にフロートアーム22に掛け渡され、揺動軸21と第2の軸25の間に位置している。第3の軸31に排液弁アーム32の上端が回転可能に取り付けられている。第3の軸31の動きを妨げないように副アーム23に窓34が開けられている。排液弁アーム32は2枚の板よりなり、下端に揺動軸21と平行な弁体取付軸35が掛け渡され、弁体取付軸35に排液弁口36を開閉する排液弁体33の球心が回転可能に支持されている。排液弁口36は液体排出口17の密閉容器2内側端に取り付けられた排液弁座37に形成されている。
【0013】
排液弁アーム32に左方に突出する当接部38が設けられ、当接部38にボルト状の調節部材39がネジ結合により取り付けられている。フロートアーム22は排液弁体33が排液弁口36を閉じるときに、調節部材39を介して排液弁アーム32の当接部38に当接し、調節部材39と排液弁アーム32を介して排液弁体33を排液弁口36に押し付けることができる。調節部材39の当接部38へのねじ込み量を調節することにより、排液弁体33が排液弁口36を閉じるときに、フロートアーム22が調節部材39と排液弁アーム32を介して確実に排液弁体33を排液弁口36に押し付けることができる。フロートアーム22が調節部材39に当接することにより、フロートアーム22の反時計回り方向への回転が規制されるので、調節部材39がフロートアーム22の下限ストッパとなる。
【0014】
ブラケット27には揺動軸21の右下方にストッパ軸40が掛け渡され、ストッパ軸40がブラケット27によって密閉容器2内に支持されている。フロートアーム22にはストッパ軸40が貫通する窓41が開けられ、窓41の右端部がストッパ軸40に当接することにより、フロート3の浮上に伴うフロートアーム22の時計回り方向への回転範囲が規制されるので、ストッパ軸40がフロートアーム22の上限ストッパとなる。副アーム23にはストッパ軸40が貫通する窓42が開けられ、窓42の右端部がストッパ軸40に当接することにより、フロート3の降下による副アーム23の時計回り方向への回転範囲が規制されるので、ストッパ軸40が副アーム23の下限ストッパとなる。フロートアーム22の右端にはフロートアーム22の2枚の板を連結する連結軸43が掛け渡されている。
【0015】
副アーム23にはストッパ軸40の右上方に伝達軸取付軸45が掛け渡され、伝達軸取付軸45に動力伝達軸46の下端が回転可能に連結されている。動力伝達軸46の上端は切替え弁4に連結されている。切替え弁4は、下端が動力伝達軸46に連結された排気弁47と、排気弁47の下部を除いて排気弁47を内部に収容した給排気ケース48と、給気弁53とから構成される。排気弁47の上端に小径の操作棒49が一体に形成されている。密閉容器2の蓋部8に図示しないネジにより取り付けられた給排気ケース48には作動蒸気導入口11の給気弁口50が形成され、給気弁口50の下方の右側方に作動蒸気排出口13の排気弁口51が形成され、給気弁口50の下方の左側方に液体流入口16の流入弁口19が形成されている。排気弁口51は排気弁47の肩部52で開閉され、流入弁口19は排気弁47の肩部20で開閉される。給気弁口50の作動蒸気導入口11側に給気弁口50を開閉する球状の給気弁53が配置され、給気弁53は排気弁47の操作棒49で開弁操作される。排気弁47の肩部52が排気弁口51を閉じ肩部20が流入弁口19を閉じることにより、副アーム23の反時計回り方向への回転が規制されるので、排気弁47の肩部52と肩部20が副アーム23の上限ストッパとなる。ネジ54によって密閉容器2の蓋部8に一体的に取り付けられている偏向板55により排気弁47が回り止めされている。給気弁53と排気弁47で切替え弁4が構成され、給気弁53が開いて作動蒸気導入口11が開口されると排気弁47が閉じて作動蒸気排出口13と液体流入口16が閉口され、給気弁53が閉じて作動蒸気導入口11が閉口されると排気弁47が開いて作動蒸気排出口13と液体流入口16が開口される。
【0016】
排液弁座37の液体排出口17側端に圧送側逆止弁口58が形成され、圧送側逆止弁口58を液体圧送先側へ向かって開く圧送側逆止弁59が排液弁座37に取り付けられている。
【0017】
次に本実施例の液体圧送装置1の作用について、一連の動作手順を追うことによって説明する。液体圧送装置1の外部配管は、作動蒸気導入口11が高圧の蒸気源に接続され、作動蒸気排出口13が液体発生源側に接続され、液体流入口16が液体発生源に接続され、液体排出口17が液体圧送先に接続される。
【0018】
密閉容器2内の液位が低い状態において、フロート3は底部に位置し、第3の軸31と伝達軸取付軸45は夫々下方に変位している。そのため、排液弁アーム32と動力伝達軸46は夫々下方に変位している。このとき、排液弁体33は排液弁口36を閉じて液体排出口17を閉口し、給気弁53は給気弁口50を閉じて作動蒸気導入口11を閉口し、排気弁体47は排気弁口51と流入弁口19を開いて作動蒸気排出口13と液体流入口16を開口している。また、圧送側逆止弁59は圧送側逆止弁口58を閉じている。液体発生源側の液体が液体流入口16から密閉容器2内に流下して溜り、密閉容器2内の液位上昇によりフロート3が浮上すると、フロートアーム22が揺動軸21を中心に時計回り方向に回転し、第3の軸31が上動して排液弁アーム32が上動する。この排液弁アーム32の上動により排液弁体33が回転しながら上動して排液弁口36を開く。
【0019】
一方スナップ機構5側では、フロートアーム22が揺動軸21を中心に時計回り方向に回転すると、コイルバネ26との連結部である第1の軸24が上動して揺動軸21と第2の軸25を結ぶ線の延長線に近付き、コイルバネ26は圧縮変形する。そしてフロート3が更に浮上して第1の軸24が揺動軸21と第2の軸25を結ぶ線の延長線よりも上方に移動すると、コイルバネ26は急激に変形を回復し、副アーム23が反時計回り方向に回転して伝達軸取付軸45が上方にスナップ移動する。その結果、伝達軸取付軸45に連結された動力伝達軸46を介して排気弁体47が上動し、排気弁口51と流入弁口19を閉じて作動蒸気排出口13と液体流入口16を閉口すると共に、排気弁体47の上動過程で給気弁体53を上動させて給気弁口50を開いて作動蒸気導入口11を開口する。
【0020】
排気弁口51と流入弁口19が閉じられ、給気弁口50が開かれると、作動蒸気導入口11から密閉容器2内に高圧蒸気が導入され、密閉容器2内の圧力が上昇する。これにより、圧送側逆止弁59が圧送側逆止弁口58を開き、密閉容器2内に溜った液体を液体排出口17から液体圧送先に圧送する。
【0021】
液体を圧送した結果、密閉容器2内の液位が低下してフロート3が降下すると、フロートアーム22が揺動軸21を中心に反時計回り方向に回転し、第3の軸31が下動して排液弁アーム32が下動する。この排液弁アーム32の下動により排液弁体33が回転しながら下動して排液弁口36を閉じて液体排出口17を閉口する。
【0022】
一方スナップ機構5側では、フロートアーム22が揺動軸21を中心に反時計回り方向に回転すると、コイルバネ26との連結部である第1の軸24が下動して揺動軸21と第2の軸25を結ぶ線の延長線に近付き、コイルバネ26は圧縮変形する。そしてフロート3が更に降下して第1の軸24が揺動軸21と第2の軸25を結ぶ線の延長線よりも下方に移動すると、コイルバネ26は急激に変形を回復し、副アーム23が時計回り方向に回転して伝達軸取付軸45が下方にスナップ移動する。その結果、伝達軸取付軸45に連結された動力伝達軸46を介して排気弁体47が下動し、排気弁口51と流入弁口19を開いて作動蒸気排出口13と液体流入口16を開口すると共に、排気弁体47の下動過程で給気弁体53が下動して給気弁口50を閉じて作動蒸気導入口11を閉口する。
【0023】
排気弁口51と流入弁口19が開かれ、給気弁口50が閉じられると、密閉容器2内の蒸気と液体流入口16側の復水との置換により密閉容器2内の復水の再蒸発が防止される。これにより、密閉容器2内の蒸気を短時間に排気して密閉容器2内へ液体を素早く流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例の液体圧送装置の断面図。
【図2】A−A線を加入した図1のスナップ機構部分の拡大断面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【符号の説明】
【0025】
1 液体圧送装置
2 密閉容器
3 フロート
4 切替え弁
5 スナップ機構
7 本体部
8 蓋部
10 液体溜空間
11 作動蒸気導入口
13 作動蒸気排出口
16 液体流入口
17 液体排出口
19 流入弁口
46 動力伝達軸
47 排気弁
53 給気弁
59 圧送側逆止弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器に作動蒸気導入口と作動蒸気排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、作動蒸気導入口に給気弁が設けられ、作動蒸気排出口に排気弁が設けられ、液体排出口に液体圧送先への液体の流れだけを許容する圧送側逆止弁が設けられ、密閉容器内に配置されたフロートの昇降に応じてスナップ機構を動作させて動力伝達軸をスナップ移動させることにより、動力伝達軸に連結された給気弁と排気弁の開閉を切り換えて、初めに排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口することにより液体を液体流入口から密閉容器内に流入させ、次いで排気弁を閉じて作動蒸気排出口を閉口し給気弁を開いて作動蒸気導入口を開口することにより密閉容器内に溜った液体を液体排出口から液体圧送先へ圧送する液体圧送装置において、液体流入口を前記排気弁で開閉し、排気弁を開いて作動蒸気排出口を開口し給気弁を閉じて作動蒸気導入口を閉口したときに液体流入口を開口し、排気弁を閉じて作動蒸気排出口を閉口し給気弁を開いて作動蒸気導入口を開口したときに液体流入口を閉口することを特徴とする液体圧送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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