説明

液体塗布装置

【課題】 強い力を加えることなく、手作業により、シート状の被塗布物に液体塗布を行うことが可能な液体塗布装置を提供する。
【解決手段】 塗布液を収容する容器20と、容器20に回転可能に取り付けられ、容器20に収容された塗布液を吸収し、被塗布物に塗布する着けローラ11と、着けローラ11の一部を出すための貫通孔6を備え、容器20の上面を覆う蓋体5と、貫通孔6から突出した着けローラ11の上方において、その表面が着けローラ11の表面と接近もしくは接するように設けられ、上下方向に移動可能に設置された押さえローラ1を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や糊等の塗布液を封筒等の被塗布物に塗布するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物等の封入物を自動的に封筒内に封入し、封緘する装置が用いられている(特許文献1参照)。このような封入封緘装置をもちいることにより大量の封筒に対して迅速に封入封緘を行うことができる。一方、少数の封筒に対して手作業で封入を行いたいという要望もある。特に、糊付封筒、切手等を貼付する際に、必要な水付け作業を行うための水つけ具も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3519432号公報
【特許文献2】実開平7−795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の装置では、スポンジに対して上から封筒等を載せるため、封筒の糊付け箇所に十分に水を付けるには、力を入れて押さえつけなければならないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、強い力を加えることなく、手作業により、シート状の被塗布物に液体塗布を行うことが可能な液体塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の液体塗布装置は、塗布液を収容する容器と、前記容器に回転可能に取り付けられ、前記容器に収容された塗布液を吸収し、被塗布物に塗布する着けローラと、前記着けローラの一部を出すための貫通孔を備え、前記容器の上面を覆う蓋体と、前記貫通孔から突出した前記着けローラの上方において、その表面が前記着けローラの表面と接近もしくは接するように設けられ、上下方向に移動可能に設置された押さえローラを有することを特徴とする。
【0007】
請求項1の液体塗布装置によれば、塗布液を収容する容器に、塗布液を吸収し、被塗布物に塗布する着けローラを備え、着けローラを突出させるための貫通孔を備えた蓋体に押さえローラを設けた構成としたので、蓋体を容器に被せることにより一体型の構成となり、強い力を加えることなく、手作業によりシート状の被塗布物に液体塗布を行うことが可能となる。
【0008】
また、請求項2の液体塗布装置は、請求項1の液体塗布装置において、前記着けローラの表面はスポンジであることを特徴とする。請求項2の液体塗布装置によれば、着けローラの表面をスポンジとしたので、被塗布物に塗布するための液体を容易に吸収し、塗布位置まで上げることが可能となる。
【0009】
また、請求項3の液体塗布装置は、請求項1または請求項2の液体塗布装置において、前記押さえローラの表面はテフロン(登録商標)樹脂であることを特徴とする。請求項3の液体塗布装置によれば、押さえローラの表面をテフロン樹脂としたので、液体が付着するのを最小限にすることが可能となる。
【0010】
また、請求項4の液体塗布装置は、請求項1から請求項3のいずれかの液体塗布装置において、前記容器の内側面には、前記容器の上端から所定の深さまで前記着けローラの軸よりやや広い幅の溝が2箇所に形成されており、前記着けローラの軸は、その両端をそれぞれ前記各溝の下端部に載せられることにより、前記容器に回転可能に取り付けられるものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4の液体塗布装置によれば、容器の内側面には、上端から所定の深さまでの2箇所の溝を設け、着けローラの軸の両端を各溝の下端部に載せるように構成したので、着けローラが、常時容器に収容された液体に浸ることとなり、回転時にすぐに液体を塗布位置まで上げることができるとともに、簡易に着けローラを回転可能に取り付けることが可能となる。
【0012】
また、請求項5の液体塗布装置は、請求項4の液体塗布装置において、前記蓋体の下面には、前記容器に形成された2つの溝に嵌合する2つの突起が設けられていることを特徴とする。請求項5の液体塗布装置によれば、蓋体の下面に2つの突起を設け、容器に形成された2つの溝に嵌合するようにしたので、蓋体と容器を簡易に一体化し、持ち運びが容易となるとともに、着けローラの軸受けのための溝を、蓋体を固定するためにも用いているため、簡易な構造で液体塗布装置を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強い力を加えることなく、手作業により、シート状の被塗布物に液体塗布を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体塗布装置の外観斜視図である。
【図2】蓋体を外した状態の、液体塗布装置の斜視図である。
【図3】蓋体の上面図および下面図である。
【図4】蓋体の側面図である。
【図5】容器の上面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液体塗布装置の外観斜視図である。図1において、1は押さえローラ、2は押さえローラ軸、3は軸固定部材、4は押さえローラ軸保持部、5は蓋体、6は貫通孔、7はガイド部材、11は着けローラ、15は把手、20は容器である。
【0016】
図1に示した液体塗布装置では、蓋体5に設けられた貫通孔から突出した着けローラ6と、押さえローラ軸保持部4により保持された押さえローラ1の間にシート状の被塗布物を通すことにより、着けローラ6に接する被塗布物の下側の部分に液体が塗布されるようになっている。
【0017】
図1に示した液体塗布装置は、蓋部10と容器20が分離可能な構成となっている。図1の状態から、蓋部10を外した状態の液体塗布装置の斜視図を図2に示す。図2において、11は着けローラ、11aは着けローラ内周部、11bは着けローラ外周部、12は着けローラ軸、13は容器外縁部、14a、14bはガイド溝、15は把手、20は容器である。図2には示していないが、使用時には、容器20内部に塗布する液体を入れて、着けローラ11のある程度の範囲が液体に浸る状態となるように調整する。
【0018】
図3(a)は蓋部10の上面図であり、図3(b)は蓋部10の下面図である。また、図4(a)は、図3(a)におけるA方向からの蓋部10の側面図であり、図4(b)は、図3(a)におけるB方向からの蓋部10の側面図である。押さえローラ1は、押さえローラ軸2を軸として回転可能なローラであり、ローラ軸2は、押さえローラ1の円心部に設けられた孔を貫通している。ローラ軸2の一方の端は、押さえローラ軸保持部4の内部で上下移動可能に保持されており、他方の端は、ローラ軸2に設けられた円周状の溝に、内径がローラ軸2の軸径より小さく、外径が押さえローラ1の円心部の孔より大きい環状の軸固定部材3を嵌め合わせることにより、押さえローラ1がローラ軸2から外れないようにしている。また、ローラ軸2の長さ、軸固定部材3を嵌め合わせる位置を特定することにより、押さえローラ1が蓋体5に形成された貫通孔6の上方に位置するように調整している。
【0019】
ガイド部材7は、蓋体5と一体で成型されており、蓋部10を容器20に嵌めたり、容器20から外したりする際の把手としての機能を有している。また、ガイド部材7は、被塗布物の端を押さえ、押さえローラ1と着けローラ11の間の塗布位置に被塗布物を導くガイドとしての機能を有する。図3(a)に示すように、ガイド部材7のローラ側の面は、押さえローラ軸保持部4のローラ側の面と揃えられており、被塗布物をローラ側へ導入し易くなっている。
【0020】
図3(b)、図4(a)(b)に示すように、蓋体5は、直径の大きい蓋体上層部5aと、直径の小さい蓋体下層部5bを有している。蓋体上層部5aと、蓋体下層部5bは同心となるように形成されている。蓋体上層部5aと、蓋体下層部5bは、1つの素材で成る蓋体5に段差を設けて形成したものであっても良いし、別体の蓋体上層部5aと、蓋体下層部5bを同心にして接合したものであっても良い。そして、図3(b)、図4(b)に示すように、蓋体上層部5aの所定の位置に、突起部8a、8bが設けられている。
【0021】
図5(a)は、容器20の上面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるC方向からの容器20の側面図である。図2、図5(a)に示したガイド溝14a、14bは、容器外縁部13の内側面に上端から所定の深さまで形成されている。ガイド溝14a、14bは、着けローラ軸12の両端を支持するためのものであるため、図5(a)に示すように、その幅は、着けローラ軸12の直径より大きくなるように形成されている。また、ガイド溝14a、14bは、溝の奥側(容器の外周側)同士の距離が、着けローラ軸12の長さよりも長く、溝の手前側(容器の内周側)同士の距離が、着けローラ軸12の長さよりも短くなる位置に形成される。また、設置された状態で、着けローラ軸12が水平になるように、ガイド溝14aと14bは、容器20の上端からの深さが互いに等しくなるように形成されている。また、ガイド溝14aと14bの上端からの深さは、着けローラ11との関係を考慮しながら、設置された状態で、着けローラ11の上端側が容器20の上端より突出し(図5(b)参照)、着けローラ11の下端側が、容器20の内側に収容された液体の上面より下に位置するように形成する。
【0022】
着けローラ11は、着けローラ軸12に固定され、着けローラ内周部11aと、着けローラ外周部11bを有する構成となっている。着けローラ外周部11bは、塗布対象の液体を吸収する素材および構造で形成されている。着けローラ外周部11bの素材および構造は、塗布対象の液体により最適なものを採用することができるが、構造としてはスポンジ状であることが望ましい。素材としては、採用した構造に適した公知のものを採用することができる。また、着けローラ内周部11aと着けローラ外周部11bの接続についても採用した素材・構造に基づいて、公知の手法を採用することができるが、本実施形態では、粘着剤を有するスポンジテープの粘着面側を着けローラ内周部11aの外周に巻き付けて接着することにより形成している。着けローラ内周部11aの素材については、特に限定はなく、着けローラ外周部11bを取り付けることができれば、公知の様々なものを採用することが可能である。また、容器20には把手15が設けられ、蓋部10を外した状態および装着した状態において、容器20の持ち運びを容易にしている。
【0023】
上述の押さえローラ1は、着けローラ11が被塗布物に液体を塗布する際に押さえるためのものであるため、押さえローラ1の下端部の表面と、着けローラ11の上端部の表面の距離が被塗布物の厚みと一致するように設置されることが理想的である。しかし、厚みの異なる多様な被塗布物に対応可能とするため、本実施形態では、押さえローラ1を上下方向に移動可能に設置している。押さえローラ1を上下方向に移動可能に設置する手法としては、公知の種々のものを採用することができるが、本実施形態では、着けローラ11と同様の手法を採用している。すなわち、押さえローラ軸保持部4の内部において、上下方向にガイド溝14aまたは14bと同様のガイド溝を形成する。ガイド溝は、その下端の高さが、押さえローラ軸2の一端をガイド溝の下端に載せたときに、押さえローラ1の下端が着けローラ11の上端と所定の距離を保つような位置になるように形成する。この際の所定の距離としては、“0”すなわち押さえローラ1の下端と着けローラ11の上端が接するようにしても良いし、想定される被塗布物の厚み分としても良い。本実施形態では、押さえローラ1の下端と着けローラ11の上端が接するような位置に設定している。これは、被塗布物が、封筒のフラップ部分であることが多く、ほとんど厚みがないためである。なお、押さえローラ1を上下に移動可能とするのは、厚みのある被塗布物に対して塗布を行う際に、押さえローラ1を上方に上げて、塗布可能とするためである。
【0024】
本実施形態では、押さえローラ1の下端と着けローラ11の上端が接するような位置に設定してあるため、押さえローラ軸保持部4内では、押さえローラ軸2の一端をガイド溝の下端に載せるだけでも、押さえローラ軸2が押さえローラ軸保持部4から外れることがない。押さえローラ軸2をより安定させるためには、押さえローラ軸保持部4内において、ナットを用いて適宜公知の手法により押さえローラ軸2を押さえローラ軸保持部4に固定するようにしても良い。ナット等を用いて固定しない場合は、ローラ軸保持部4の軸方向(図3(a)における上下方向)の幅を大きめにとることが望ましい。
【0025】
押さえローラ1に、液体が付着してそのまま残ると、被塗布物に塗布する際に、塗布しようとする箇所と反対側の箇所に液体が塗布されてしまう不具合が生じる。そのため、押さえローラ1の表面の素材としては、水をはじく性質をもつ素材を用いることが望ましい。水をはじく性質をもつ素材であれば、公知のものを採用できるが、本実施形態では、テフロン樹脂を採用している。
【0026】
本実施形態の液体塗布装置の使用について説明する。使用時には、塗布する液体(塗布液)を容器20内の所定の高さまで注入する。塗布液は、着けローラ外周部11bに浸み込むのに必要な量を注入する。着けローラ軸12が全て沈む位置まで塗布液を注入するのが望ましい。液体を注入したら、突起部8a、8bを、ガイド溝14a、14bに嵌合することにより、蓋部10を容器20に装着する。この結果、図1に示したように、液体塗布装置が一体化する。この状態で、把手15を持ち、所望の場所へ液体塗布装置を持ち運ぶことができる。
【0027】
塗布液を塗布する際には、被塗布物の被塗布箇所が、押さえローラ1と着けローラ11の間を通るように、手作業で被塗布物を移動させる(図1における左から右への方向)。この際、ガイド部材7の存在により、被塗布物が奥側へ飛び出さずに、ローラ側に導かれる。封筒のフラップ部分に糊や水を付ける場合、フラップ側を奥にすると、フラップ部分がガイド部材7に押さえられる。そして、被塗布物と押さえローラ1、着けローラ11との摩擦により押さえローラ1と着けローラ11を回転させる。この際、被塗布箇所が着けローラ11に接するように、被塗布箇所を下側に向ける。これにより、被塗布箇所に液体が塗布される。例えば、塗布箇所が封筒のフラップ部分である場合、既に糊が付いている場合には、塗布液として水を用い、フラップ部分を接着可能な状態とする。また、封筒のフラップ部分に糊が付いていない場合には、塗布液として糊を用い、フラップ部分を接着可能な状態とする。
【符号の説明】
【0028】
1・・・押さえローラ
2・・・押さえローラ軸
3・・・軸固定部材
4・・・押さえローラ軸保持部
5・・・蓋体
5a・・・蓋体上層部
5b・・・蓋体下層部
6・・・貫通孔
7・・・ガイド部材
8a、8b・・・突起部
10・・・蓋部
11・・・着けローラ
11a・・・着けローラ内周部
11b・・・着けローラ外周部
12・・・着けローラ軸
13・・・容器外縁部
14a、14b・・・ガイド溝
15・・・把手
20・・・容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を収容する容器と、
前記容器に回転可能に取り付けられ、前記容器に収容された塗布液を吸収し、被塗布物に塗布する着けローラと、
前記着けローラの一部を出すための貫通孔を備え、前記容器の上面を覆う蓋体と、
前記貫通孔から突出した前記着けローラの上方において、その表面が前記着けローラの表面と接近もしくは接するように設けられ、上下方向に移動可能に設置された押さえローラと、
を有することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
前記着けローラの表面はスポンジであることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記押さえローラの表面はテフロン樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記容器の内側面には、前記容器の上端から所定の深さまで前記着けローラの軸よりやや広い幅の溝が2箇所に形成されており、
前記着けローラの軸は、その両端をそれぞれ前記各溝の下端部に載せられることにより、前記容器に回転可能に取り付けられるものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記蓋体の下面には、前記容器に形成された2つの溝に嵌合する2つの突起が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101824(P2012−101824A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252238(P2010−252238)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】