説明

液体容器

【課題】容器本体内部の液体が汚染されにくい液体容器を提供する。
【解決手段】液体収容空間を形成する容器本体1と、キャップ3を嵌着可能に形成し、かつ、その内部で薬液を保持して定量ずつ滴下可能に形成した注液口部材2とを設けた液体容器であって、容器本体1の内部に液体を密封する密封部5と、密封部5を開封する開封部6とを設け、キャップ3を嵌着した状態で注液口部材2を容器本体1側に押し込んだときに、開封部6により密封部5を開封可能にし、液体が容器本体1の内部に逆流することを防止する逆止弁4を密封部5及び開封部6よりも液体収容空間側に設け、開封部6が、注液口部材2側から容器本体1側に向かって密封部5に貫入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体と注液口部材とを設けた液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器本体に収容した液体の滅菌状態を維持し、前記液体を長期保存するために、容器本体に密閉部を設けてその容器内部を外気から遮断することが提案されてきた。しかし、密閉部を設けた場合でも、前記密閉部を開封すれば、通常の容器の場合と同様に、外気が前記容器本体内部に流入したり、外気に晒された液体が前記容器本体内に逆流する。そのため、流入した外気や逆流した液体が容器本体内部の液体と混ざると、これらの気体や液体に含まれる微生物等が原因となって前記容器本体に収容された液体全部が汚染されるおそれがある。
前記容器が例えば点眼容器である場合には、点眼に際し、点眼容器の注液口は、涙や睫に触れて微生物等により汚染されることがある。そのため、涙や睫に接触した液体が、容器本体内部に逆流すると、容器本体内部に収容された液体の全てが汚染されることになり、容器本体内部の滅菌状態を維持できなくなってしまう。また、ひとたび容器内部に微生物等が流入すると、微生物等による汚染は、時間の経過とともに増大する傾向がある。
【0003】
他方、容器本体に収容する液体にあらかじめ防腐剤を添加して対処するもできるが、防腐剤が人体に及ぼす影響を鑑みれば、防腐剤は可能な限り添加しないのが望ましい。
【0004】
そこで、容器本体への逆流防止を目的とする種々の液体容器が検討されている。例えば、前記密閉部に逆止弁機能を持たせたもの(特許文献1)や、前記密閉部から前記注液口部に達した液体が容器内部に逆流するのを防止すべく逆止弁を設けたもの(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−169839号公報
【特許文献2】特開2003−26250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、前記密閉部は針孔の開閉自在な弾性体からなる逆止弁で構成されているので、前記逆止弁を開閉させるためには、前記逆止弁の前記注液口側から前記容器本体側へ移動する連通針が必要となる。すると、前記連通針は、前記逆止弁の前記注液口側に位置するときに、外気と接触する可能性がある。そして、この外気と接触した連通針が、前記逆止弁の前記注液口側から前記容器本体側へ移動することによって、前記容器本体内部が汚染されることがある。
【0007】
また、特許文献2では、一見、注液口付近で汚染された液体が逆止弁を超えて容器本体側に逆流するのを防止できるように見える。しかし、前記逆止弁は前記密封部よりも注液口側に設けられているので、密閉部を開封可能とするためには、前記密封部と前記逆止弁とが分離できるように別部材としておく必要がある。すると、開封部(特許文献2における部材10)が外気に晒されている状態で前記密封部を開封するので、前記容器本体内部が汚染される虞がある。
また、前記密封部を開封するとき、液体容器の使用者が、誤って前記密封部と前記逆止弁とを分離すれば、前記容器本体内部の液体や、容器本体の前記密封部の近傍は外気に晒されてしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、容器内部の液体が一層汚染されにくい液体容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体容器の特徴構成は、液体収容空間を形成する容器本体と、キャップを嵌着可能に形成し、かつ、その内部で薬液を保持して定量ずつ滴下可能に形成した注液口部材と、を設けた液体容器であって、前記容器本体の内部に液体を密封する密封部と、前記密封部を開封する開封部とを設け、前記キャップを嵌着した状態で前記注液口部材を前記容器本体側に押し込んだときに、前記開封部により前記密封部を開封可能にし、前記液体が前記容器本体の内部に逆流することを防止する逆止弁を前記密封部及び開封部よりも液体収容空間側に設け、前記開封部が、前記注液口部材側から前記容器本体側に向かって前記密封部に貫入する点にある。
【0010】
つまり、上記構成によると、前記開封部も前記密封部も、前記逆止弁よりも前記注液口部材に形成される注液口側に位置することになる。そのため、キャップを嵌着した状態で前記注液口部材を前記容器本体側に押し込んで、前記開封部により前記密封部を開封する際に、前記逆止弁と容器本体との間の部分を操作することなく開封作業を行える。従って、開封する過程で、前記逆止弁を介して前記容器本体内部に汚染が伝搬する虞がほとんどなくなる。
【0011】
即ち、前記液体に防腐剤等の薬剤を添加しなくても、長期に渡って無菌状態で保存することが可能となる。
【0012】
尚、上述の構成において、前記注液口部材は、前記容器本体に対して、前記開封部を前記密封部に非貫入状態に保持する第一姿勢と、前記開封部が前記密封部に貫入した状態とする第二姿勢とで姿勢変更可能に設けてあることが好ましい。
【0013】
つまり、前記開封部が前記密封部に非貫入状態のとき、前記密封部は密封状態を維持できるから、前記容器本体内部の液体は、非汚染状態に維持される。前記開封部が前記密封部に貫入状態となると、前記密封部の密封状態は解除されて、前記液体を使用可能な状態となる。この姿勢変更を前記注液口部材の前記容器本体に対する押し込みによってするから、前記密封部を外気に露出させることなく姿勢変更操作することが可能となり、前記注液口部材内の空間、密閉部近傍において、汚染が発生するおそれを少なくできる。
【0014】
本発明では、前記開封部が、前記注液口部材側から前記容器本体側に向かって前記密封部に貫入する。
【0015】
この構成によると、前記開封部を注液口部材側に設けて、前記密封部を容器本体側に設けておけば、前記注液口部材を前記容器本体に押し込むことによって、前記開封部が前記密封部から離間あるいは接した第一姿勢から、前記密封部に貫入した第二姿勢に姿勢変更される。
前記開封部が、前記密封部に貫入した後は、前記密封部の密封は解除され、前記容器本体内部の液体を、前記密封部を介して前記注液口部材に形成される注液口に向かって移動させることができる状態となる。この際、逆止弁は密封部や開封部による影響を受けないので、密封部に達した液体が前記逆止弁を介して再び前記容器本体内部に逆流することがなく、また、外気が前記容器本体内部に流入することもない。そのため、前記容器本体内部の無菌状態を維持し続けることができる。
【0016】
尚、このような構成を採用するに当たって、前記開封部と密封部とは、前記注液口部材と前記容器本体とに振り分けて設けてあっても良いし、どちらか一方にまとめて設けてあっても良い。また、前記注液口部材が開封部として機能するように構成することもできる。
【0017】
また、前記容器本体は、その内部に収容した液体量に従って、前記容器本体内容積を変化させる可撓部を有することが好ましい。
【0018】
前記逆止弁によって、前記密封部近傍に達した液体や注液口部材内部の気体が容器本体内部に逆流(流入)しないようにすると、前記容器本体内部の液体量は減少し、その結果として内圧が低下する。
当該液体量の減少量が少ないときには、容器本体内部は、若干の内圧低下となって、逆止弁の機能は良好に発揮される。しかし、当該液体量の減少量が多いときにおいて、前記容器本体の形状記憶性が高い場合には、容器本体の内圧の低下に伴って、容器本体内部に向かって液体を吸引する力が発生する。この結果、逆止弁が機能しなくなったり、前記液体を容器本体外に出すのに必要な力が増大することがある。
このような事態を排除するため、前記可撓部を設けた容器(例えば、蛇腹容器など)にすれば、前記容器本体内部の容積が前記容器本体内部の液体量の変化に応じて変形し、常に内圧を大気圧とほぼ同一に維持できる。そのため、逆止弁が適正に機能し、容器から注液することも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の液体容器の保管状態の縦断側面図
【図2】本発明の液体容器の使用開始状態の縦断側面図
【図3】本発明の参考例にかかる液体容器の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の液体容器の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1、図2に示すように、本発明の液体容器は、容器本体1に注液口部材2を螺着して構成してある。
【0022】
前記容器本体1は、主に液体を収容する液体収容空間を形成する樹脂製の胴部11と、目薬用の薬液等の液体を前記胴部11から容器本体外部に案内する筒状の中栓部12とを備える。前記胴部11と前記中栓部12とは、別部材から形成してあり、一体に結合して容器本体1とする。また、前記胴部11には、薄肉に形成してある可撓部13を設けてある。
【0023】
前記注液口部材2は、キャップ3を嵌着可能な筒状に形成してあり、一端部に注液口21を形成するとともに、他端部に前記容器本体1の中栓部12に螺着する螺着部22を形成してある。また、前記注液口部材2の内部には、液体の流量を絞る絞り部23を形成するとともに、前記注液口21は、前記絞り部23から、前記一端部にわたる注液口部材2内部で前記薬液を保持して定量ずつ滴下可能に形成してある。
【0024】
前記容器本体1の前記中栓部12には、逆止弁4を内嵌して設け、前記容器本体1の胴部11から前記注液口部材2側に流出した薬液が、前記容器本体1の内部に逆流するのを防止する。前記逆止弁4の前記注液口部材2側には、薬液を前記容器本体1の内部に密封する樹脂膜からなる密封部5を設けてある。前記樹脂膜は中央部の破断に伴い、全体に大きく破断開口するものが好ましい。
【0025】
前記注液口部材2には、開封部として機能する針部61を有する開封部材6を内装し、キャップ3を嵌着した状態で前記注液口部材2を前記中栓部12に螺入するに従って、前記開封部材6を前記密封部5に対して近接移動させ、嵌入させられるように配置固定する。
前記開封部材6は、前記注液口部材2の前記螺着部22部分に内嵌される台部62を備え、前記台部62に前記針部61を立設してある。これにより、前記開封部材6は、前記台部62を前記注液口部材2に内嵌させた状態で、前記針部61を前記注液口部材2の軸心に沿う下向き姿勢に内装保持される。
また、前記台部62には孔部が設けてあり、容器本体側から前記注液口側への液体の通過を容易に形成してある。
【0026】
前記注液口部材2は、前記キャップ3を嵌着した状態で、前記中栓部12に部分的に螺入させた状態で保管される。この状態では、前記開封部材6は、前記中栓部12内で、前記密封部5から離間あるいは接した非貫入状態の第一姿勢となっている(図1参照)。
この液体容器の使用開始時には、前記注液口部材2を、前記中栓部12に対して螺入し、前記開封部材6の針部61を、前記容器本体1側へ移動させると、前記開封部材6は、前記密封部5に貫入した第二姿勢に姿勢変更される(図2参照)。
これにより、前記容器本体1の内部の液体は、前記逆止弁4を介し、密封部5から前記注液口部材2の絞り部23を通って、前記注液口21から滴下可能に供給できる状態となる。このとき、前記絞り部23と逆止弁4との間に形成される空間Sに液体が残留するが、この液体は、前記容器本体1の側へは逆流しない。また、外気が前記容器本体1の内部に流入することもない。
また、前記容器本体1には、薄肉で形状変化容易な可撓部13を設けてあるから、前記容器本体1内部の容積が前記容器本体1内部の液体量の変化に応じて変形し、常に内圧を大気圧とほぼ同一に維持できる。そのため、前記注液口21から容器本体1の内部への空気の吸い込みも発生しない。
【0027】
〈参考例〉
上述の実施例における前記密封部5及び開封部材6は図3に示すように配置してあっても良い。
【0028】
つまり、図3においては、前記開封部材6を前記注液口部材2に内嵌するのに代えて、前記容器本体1の中栓部12に内嵌して、前記針部61が前記注液口部材2の軸心に沿った前記注液口21向きに配置してある。また、前記絞り部23を非開口状態に設けて、密封部5としてある。
【0029】
このような構成では、前記注液口部材2を前記中栓部12に部分的に螺入させた状態での保管状態では、前記開封部材6は、前記注液口部材2内で、前記密封部5から離間あるいは接した非貫入状態の第一姿勢となっている(図3(a)参照)。
この液体容器の使用開始時には、前記注液口部材2を、前記中栓部12に対して螺入し、前記密封部5を、前記容器本体1側へ移動させると、前記開封部材6の針部は、前記密封部5に貫入した第二姿勢に姿勢変更される(図3(b)参照)。
この際、前記針部61は、軸心回りで回転しながら前記密封部5に貫入するから、前記注液口部材2がある程度硬質のものであっても、容易に前記絞り部23を開口させることができる。そのため、前記キャップ3を取り除いた際に容易に外側に露出する密封部5の絞り部23形成予定部分を、開封しにくく形成しておく上で有利である。
また、このように前記密封部5に貫入した針部61が、前記絞り部23に貫入したままの状態で用いられる形態とするには、前記針部61の外面に、軸心方向に沿う溝部63を形成しておくと、液体が前記溝部63を介して前記絞り部23を通過することができるようになるので好ましい。
【0030】
〈その他の実施例〉
上述の実施例における逆止弁4としては、種々公知の逆止弁を用いることができ、前記液体が前記容器本体1の内部に逆流することを防止することができればよい。
【0031】
前記開封部材6は、針部61を備えて構成したが、このような構成に代えて、押し込み刃を設けた構成等としてあっても良い。また、その保持姿勢についても前記注液口部材2や前記中栓部12の軸心方向に沿うものの他、傾斜するものなどでも、前記注液口部材2の押し込み操作に伴い、前記密封部5を開封可能な姿勢であればよい。
【0032】
また、前記注液口部材2を押し込み開封する際には、前記螺着部22を設けて前記中栓部12に螺入するのに代え、単に圧入して押し込む形態であっても良い。
【0033】
前記液体としては目薬用の薬液の他種々液体を適用することができる。
【0034】
また、可撓部13を形成するには、容器本体1の一部を薄肉に形成するのに代えて、容器本体1の一部または全部を蛇腹状に形成して可撓に構成するなど、種々変形が可能である。
一方、容器本体1を、シリンダー・ピストン付き容器、底部に逆止弁を設けた弁付き容器等として、容器本体1内部の容積が容器本体内部の液体量の変化に応じて変形し、常に内圧を大気圧とほぼ同一に維持するように構成してもよい。
【0035】
さらに、容器本体1内部に収容される液体の雑菌による汚染を抑制するために、前記液体の付着残留する部分(例えば注液口部材2、逆止弁4、開封部材6、中栓部12等)を、抗菌樹脂から形成しておくことが好ましい。前記抗菌樹脂としては、樹脂基材に抗菌性物質を練り込んで形成されるものが一般的に用いられる。
【0036】
また、前記絞り部23と逆止弁4との間に形成される空間Sから注液口21にかけて移動する液体を、抗菌効果を有する多孔質部材に対して接触させる事により、抗菌効果を高めることもできる。前記多孔質部材としては、有機、無機フィルターのいずれも採用でき、不織布状、スポンジ(軽石)状、綿状のものが用いられ、例えば、前記注液口21に嵌着しておくことができる。
【0037】
以上により、液体容器による液体保存性を高めることができ、液体が汚染されていない、信頼性の高い状態で使用できるようになったため、液体の取扱性を高めることができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の液体容器は、例えば、主として医療用に用いられる点眼容器等に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 容器本体
2 注液口部材
3 キャップ
4 逆止弁
5 密封部
6 開封部材
13 可撓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容空間を形成する容器本体と、
キャップを嵌着可能に形成し、かつ、その内部で薬液を保持して定量ずつ滴下可能に形成した注液口部材と、を設けた液体容器であって、
前記容器本体の内部に液体を密封する密封部と、前記密封部を開封する開封部とを設け、前記キャップを嵌着した状態で前記注液口部材を前記容器本体側に押し込んだときに、前記開封部により前記密封部を開封可能にし、前記液体が前記容器本体の内部に逆流することを防止する逆止弁を前記密封部及び開封部よりも液体収容空間側に設け、
前記開封部が、前記注液口部材側から前記容器本体側に向かって前記密封部に貫入する液体容器。
【請求項2】
前記容器本体は、その内部に収容した液体量に従って、前記容器本体内容積を変化させる可撓部を有する請求項1に記載の液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−168123(P2010−168123A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108188(P2010−108188)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【分割の表示】特願2005−65478(P2005−65478)の分割
【原出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】