説明

液体導入方法、液体導入装置、画像形成装置

【課題】液滴吐出ヘッドにおける複数の圧力発生室及びそれぞれに通じる共通液室内の液体に混在された気泡を、効果的に除去する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド10は、液滴を吐出するための複数のノズル開口と、これら複数のノズル開口に個別に対応して設けられた複数の圧力発生室と、これら複数の圧力発生室のそれぞれに通じ、液体の導入及び貯留が可能な共通液室と、前記各圧力発生室から液滴を吐出させるべく該各圧力発生室に対応して設けられた吐出エネルギー発生体とを備える。この液滴吐出ヘッド10を傾斜させ、共通液室内の気泡をその端部に集中させ、分割吸引キャップ19Aにより気泡を吸引、除去し、液滴吐出ヘッド10を正立させ、吸引キャップ19でキャップ吸引し、残留気泡を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドへの液体導入方法、その方法を実施可能な液体導入装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク滴を吐出する複数の並列させたノズル開口に個別に対応するために、並列させて設けた複数の圧力発生室と、これら複数の圧力発生室のそれぞれに通じる共通液室と、各圧力発生室からインク滴を吐出させるために各圧力発生室に対応して設けた吐出エネルギー発生体とを備える液滴吐出ヘッドが既に知られている。
【0003】
すなわち近年、インクジェットプリンタでは、プリントの高速化を達成するために液滴吐出ヘッドのノズル数を増やす傾向にある。ラインヘッド方式の液滴吐出ヘッドは、印刷可能な最大サイズの記録用紙の用紙幅に合わせて多数のノズルを配置しているので、用紙幅方向に移動させて印刷を行うシリアルヘッド方式の液滴吐出ヘッドに比べ、ノズルの数が非常に多くなることが知られている。
【0004】
しかしながら、従来の液滴吐出ヘッドでは、複数の吐出口のうちの一つないし幾つかを部分的に弾性部材を介して吸引することから、各圧力発生室のインクに存在する気泡に対しては有効であるが、共通液室内に存在する大きな気泡は除去することが困難であり、吸引後も微細な気泡が残留してしまうという問題があった。
【0005】
また、従来のラインヘッド方式のノズルの回復方法は、複数のノズルを弾性部材を介して吸引することから、各圧力発生室のインクに存在する気泡に対しては有効であるが、やはり共通液室内に存在する大きな気泡は除去することは困難であり、吸引後の気泡残留という問題があった。
【0006】
ところで特許文献1には、液滴吐出ヘッドにおける複数の圧力発生室及びそれぞれに通じる共通液室内の液体に混在された気泡を効果的に除去する目的で、上向き姿勢の液滴吐出ヘッドのノズル面に封止部材を密接させて形成した吸引空間の圧力を共通液室の圧力よりも低くして、共通液室から吸引空間への液体の流れを形成する気泡除去工程と、吸引空間の圧力と共通液室の圧力とを等しくし封止部材をノズル面に当接させたまま、液滴吐出ヘッドを下向き姿勢へと反転する反転工程と、液滴吐出ヘッドの下向き姿勢を維持した状態で、そのノズル面から封止部材を離間する離間工程と、を有する液滴吐出ヘッドへの液体導入方法が開示されている。
【0007】
この方法では、液滴吐出ヘッドを回動させることによっては、前述した共通液室内に存在する大きな気泡を除去することは困難であるという問題は解消できておらず、また、吸引後も微細な気泡が残留してしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明においては、液滴吐出ヘッドにおける複数の圧力発生室及びそれぞれに通じる共通液室内の液体に混在された気泡を、効果的に除去することができる液滴吐出ヘッドへの液体導入方法、その方法を実行可能な液体導入装置、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法は、液滴を吐出するための複数のノズル開口と、これら複数のノズル開口に個別に対応して設けられた複数の圧力発生室と、これら複数の圧力発生室のそれぞれに通じ、液体の導入及び貯留が可能な共通液室と、前記各圧力発生室から液滴を吐出させるべく該各圧力発生室に対応して設けられた吐出エネルギー発生体とを備える、液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法であって、前記液滴吐出ヘッドを傾斜させ、前記共通液室内の気泡を該共通液室端部に集中させるヘッド傾斜工程、分割吸引キャップにより前記共通液室端部の気泡を吸引して気泡を除去する気泡除去工程、前記液滴吐出ヘッドを正立させるヘッド正立工程、前記分割吸引キャップ吸引することにより残留気泡を除去する残留気泡除去工程を前記順に実施することを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る液滴吐出ヘッドを備えている液体噴射装置は、本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法を用いて液滴吐出ヘッドに液体を導入することを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液体噴射装置と、液滴吐出ヘッドに液体を加圧して供給する加圧供給手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液滴吐出ヘッドを傾斜させることを利用し、共通液室内に存在する大きな気泡の除去と、吸引後に残留する微細な気泡の除去が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】液滴吐出による画像形成装置を示す模式的な斜視図
【図2】図1の画像形成装置の内部構成を説明するために概略的な断面図
【図3】同じく図2の矢印A1方向から見た概略的な平面図
【図4】液滴吐出ヘッドを模式的に示す分解斜視図
【図5】同平面図
【図6】図5のVI−VI線に沿って示す断面図
【図7】本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法の実施例1について説明するための概略図
【図8】図7に示した液体導入方法の実施例1の動作を示すフローチャート
【図9】実施例1の吸引キャップと分割吸引キャップの配置及びそれらと液滴吐出ヘッドの接触動作について説明する概念図
【図10】図3の一部を取り出して実施例1の分割吸引キャップの配置を追加して示した概念図
【図11】本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法の実施例2について説明するための概略図
【図12】図11に示した液体導入方法の実施例2の動作を示すフローチャート
【図13】実施例2の吸引キャップと液体吸引装置の配置及びそれらと液滴吐出ヘッドの接触動作について説明する概念図
【図14】図3の一部を取り出して実施例2の液体吸引装置の配置を追加して示した概念図
【図15】本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法の実施例3について説明するための概略図
【図16】図15に示した液体導入方法の実施例3の動作を示すフローチャート
【図17】実施例3の吸引キャップの配置及びそれらと液滴吐出ヘッドの接触動作について説明する概念図
【図18】図3の一部を取り出して実施例3の吸引キャップの配置を追加して示した概念図
【図19】本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法の実施例4について説明するための概略図
【図20】実施例4の、傾斜動作ではない予備動作工程の例を示す概略図
【図21】実施例4におけるプリンタで予備動作を行う場合の動作を示すフローチャート
【図22】本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法の実施例5について説明するための概略図
【図23】実施例5で用いる液滴吐出ヘッドの長手方向の断面図
【図24】実施例5において、分割された第1〜第3の吸引キャップへのキャリッジの接触形態について示す概念図
【図25】実施例5における、キャリッジと、ラインヘッドと、維持回復機構の配置を示す概念図
【図26】実施例5の予備動作工程について説明する概念図
【図27】実施例5の予備動作工程における加減圧動作の内容を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図に示す実施例を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明した実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、記載した実施例以外にも適宜変更され得ることは明らかである。また、記載した実施例あるいは示唆した事項の範囲内において構成要素、手段、部材の数、位置、形状等は本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等とすることができる。
【実施例】
【0015】
まず、本発明の実施対象となる画像形成装置の一例について図1から図6を参照して説明する。

液滴吐出記録装置60は、装置本体61に給紙トレイ62が装着され、かつ排紙トレイ63が着脱自在に装着されて構成されている。給紙トレイ62は、装置本体61に記録媒体としての記録紙Sを装填するものである。排紙トレイ63は、画像が形成された記録紙Sを積載するものである。
【0016】
装置本体61は、前面の一端部側(給紙トレイ62及び排紙トレイ63の側方)が前方側に突き出した箇所にカートリッジ装填部64を有する。カートリッジ装填部64の上面65は、装置本体61の上面よりも低く設定されており、操作ボタンや表示器などが設けられて操作表示部65を構成している。
【0017】
カートリッジ装填部64は、液体カートリッジ66が装填される箇所であり、装置本体61の前面側の開口から後方側に向かって挿入して装填可能とされている。カートリッジ装填部64には、その液体カートリッジ66の装填のための前面側の開口を開閉すべく前カバー(カートリッジカバー)67が設けられている。またカートリッジ装填部64は、色の異なる液体(インク)を収容した複数の液体カートリッジ66が、それぞれ装置本体61の前面側から後方側に向かって挿入して装填されるようになっている。図示の例では、液体カートリッジ66として、イエロー(Y)インクを収容した液体カートリッジ66y、マゼンタ(M)インクを収容した液体カートリッジ66m、シアン(C)インクを収容した液体カートリッジ66c、黒(K)インクを収容した液体カートリッジ66k(以下、色を区別しないときは液体カートリッジ66という。)が用いられている。
【0018】
この液滴吐出記録装置60は、各液滴吐出ヘッド10が搭載されたキャリッジ68と、それを支持する主ガイドロッド69及び従ガイドロッド70とを有する。主ガイドロッド69及び従ガイドロッド70は互いに平行に配置され、装置本体61の外形形状を形成するフレーム71のうちのメイン側板71a、71bに架け渡されている。主ガイドロッド69及び従ガイドロッド70が延びる方向に沿って摺動可能にキャリッジ68が支持されている。
【0019】
キャリッジ68は、図示は省略するが、タイミングベルトを介して受ける主走査モータからの駆動力により、主ガイドロッド69及び従ガイドロッド70上をその延びる方向(図3の矢印A2方向)に沿って移動可能とされている。この移動方向が、液滴吐出記録装置60における主走査方向となる。またキャリッジ68には、色の異なる液体(インク)を収容した複数の液滴吐出ヘッド10が、下向き姿勢となる(各ノズル開口11が後述する搬送ベルト83と対向する)ように、主走査方向に並列に搭載されている。本例では、液滴吐出ヘッド10として、イエロー(Y)の液滴を吐出するための液滴吐出ヘッド10Y、マゼンタ(M)の液滴を吐出するための液滴吐出ヘッド10M、シアン(C)の液滴を吐出するための液滴吐出ヘッド10C、ブラック(K)の液滴を吐出するための液滴吐出ヘッド10K(以下では、色を区別しないときは液滴吐出ヘッド10という。)が用いられている。
【0020】
本例では、キャリッジ68には、各液体吐出ヘッド10に個別に対応して、それらの共通液室13(図4、図5参照)に通じる4つの液体タンク72が設けられている。この各液体タンク72は、可撓性を有する供給チューブ73を介してカートリッジ装填部64に装着された対応する液体カートリッジ66に接続されており、各液体カートリッジ66から各色のインクが補充供給可能である。このインクの補充供給のために、カートリッジ装填部64には、液体カートリッジ66内の液体を送液するための送液手段である供給ポンプユニット74が設けられている。そしてこの液体吐出ヘッド10から吐出された液滴は、記録紙S上に画像として記録、形成される。画像を形成する記録紙Sは、給紙トレイ62に設けた用紙積載部の圧板76上に積載されており、この記録紙Sを給紙トレイ62から給紙するために、装置本体61は給紙部を備えている。
【0021】
給紙部は、給紙コロ(半月コロ)77と分離パッド78とを有する。給紙コロ77は、半月状とされた円柱部材であり、この給紙コロ77に対向して分離パッド78が設けられている。分離パッド78は、摩擦係数の大きな材質からなり給紙コロ77側に付勢されている。この給紙部では、給紙コロ77と分離パッド78とにより、用紙積載部76から記録紙Sを1枚ずつ分離給送することが可能とされている。この給紙部から給紙された記録紙Sを液体吐出ヘッド10の下方側に送り込むために、装置本体61には、給送部が設けられている。
【0022】
給送部は、記録紙Sを案内する案内部材79と、カウンタローラ80と、搬送ガイド部材81と、先端加圧コロ82aを有する押さえ部材82とを有し、記録紙Sを搬送手段である搬送ベルト83に給送する。搬送ベルト83は、無端状ベルトであり、搬送ローラ84とテンションローラ85との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向(図3に示す矢印A3方向))に周回可能とされている。また搬送ベルト83は、給送された記録紙Sを静電吸着して液体吐出ヘッド10の各ノズル開口11(図4及び図5参照)に対向する位置へと搬送する。
【0023】
装置本体61には、搬送ベルト83の表面を帯電させるために、帯電手段として帯電ローラ86が設けられている。帯電ローラ86は、搬送ベルト83の表面に接触するように配置され、搬送ベルト83の回動に従動して回転する。また、装置本体61には、搬送ベルト83の裏側にプラテンガイド板87が設けられている。プラテンガイド板87は、記録紙Sの平面性を保持するものである。このプラテンガイド板87は、搬送ベルト83を介在させて、各液体吐出ヘッド10による印写領域に対応するように各液体吐出ヘッド10の各ノズル開口11(図4〜図6参照)に対向する位置に設けられている。
【0024】
搬送ベルト83は、図示は省略するが、タイミングベルトを介して副走査モータからの駆動力を受けた搬送ローラ84が転駆動されることにより、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動し、循環する。
【0025】
また装置本体61には、循環方向で見て、液体吐出ヘッド10による印写領域の下流側に排紙部が設けられている。排紙部は、分離爪88、排紙ローラ89及び排紙コロ90を有する。分離爪88は、搬送ベルト83から記録紙Sを分離するものである。この排紙部により排紙された記録紙Sが積載される排紙トレイ63は、排紙ローラ89の下方に位置されている。
【0026】
さらに液滴吐出記録装置60には、装置本体61の背面側に両面ユニット91が着脱自在に装着されている。両面ユニット91は、排紙部において搬送ベルト83から分離させずに搬送ベルト83の循環により戻された記録紙Sを取り込み、当該記録紙Sを反転させて再度カウンタローラ80と搬送ベルト83との間に給紙するものである。この両面ユニット91の上面には、手差しトレイ92が設けられている。
【0027】
またさらに液滴吐出記録装置60には、図3に示すように、キャリッジ68の移動方向である主走査方向(主ガイドロッド69及び従ガイドロッド70の延在方向)で見て、中間部分が上記した液体吐出ヘッド10による印写領域とされ、その両端が非印写領域とされている。この両非印写領域では、一方に維持回復機構93が設けられ、他方に空吐出受け94が設けられている。この空吐出受け94は、記録中などに増粘した液体を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受けるものであり、液体吐出ヘッド10のノズル列方向に沿った開口部94aが設けられている。この開口部94aは、図示は略すが廃液タンクに通じる構成とされている。
【0028】
この維持回復機構93は、液滴吐出記録装置60の動作を統括的に制御する制御部の制御下で動作する。また、維持回復機構93では、液滴吐出ヘッド10のノズル面16aを払拭するためのワイパを、キャリッジ68により下向き姿勢で保持された液滴吐出ヘッド10のノズル面16aに摺動させる払拭機96が設けられている。維持回復機構93に設けられた空吐出受け部95は、払拭機96(ワイパを含む)による払拭工程により、液滴吐出ヘッド10のノズル面16aから除去されたインクを受けたり、または増粘した液体を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受けたりするものである。この維持回復機構93は、各吸引キャップ19に排出されたインク、または空吐出受け部95で受けたインクを、図示は省略するが廃液タンクに排出して収容する構成とされている。
【0029】
なお維持回復機構93は、吸引キャップ19に加え分割吸引キャップを備えるが、図3では図示を省略してある(後述する図10参照)。
【0030】
液滴吐出記録装置60では、上述した給紙部により記録紙Sが1枚ずつ給紙トレイ62から給送部へと分離給紙される。この記録紙Sは、案内部材79の案内により略鉛直上方に給紙され、搬送ベルト83とカウンタローラ80との間に挟まれて搬送され、先端を搬送ガイド部材81で案内され、先端加圧コロ82aで搬送ベルト83に押し付けられる。このとき、帯電ローラ86には、図示を略す制御部のACバイアス供給部から、プラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すような、いわゆる交番する電圧が印加され、搬送ベルト83は、交番する帯電電圧パターンに帯電、すなわち循環(周回)方向である副走査方向にプラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されている。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト83上に記録紙Sが給送されると、記録紙Sは、搬送ベルト83に吸着される。このため、記録紙Sは、上記した各部材による案内及び押し付けと帯電による吸着力とにより適切な状態で搬送ベルト83に吸着され、搬送ベルト83の循環(周回移動)により搬送ベルト83の循環方向に沿って略90°搬送方向を転換され、副走査方向に搬送されて、記録領域に送られる。
【0031】
この記録領域では、図示しない制御部が、キャリッジ68を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて各液体吐出ヘッド10を駆動させることにより、停止している記録紙Sに液滴が吐出されて1行分の画像が記録される。この後、図示を略す制御部は、記録紙Sを副走査方向に所定量搬送し、次の行の記録を行う。図示を略す制御部は、この記録動作を繰り返し行い、記録終了信号又は当該記録紙Sの後端が記録領域に到達した信号を受けると記録動作を終了して、当該記録紙Sを搬送ベルト83の循環、すなわち周回移動により排紙トレイ63に排紙する。これにより、所望の画像を、給紙された記録紙Sに記録できる。
【0032】
この液滴吐出記録装置60では、記録開始前、記録途中等に、キャリッジ68が空吐出受け94の上方または維持回復機構93の空吐出受け部95の上方へと適宜待避され、記録とは関係なく各液体吐出ヘッド10が駆動されてインクを吐出する空吐出動作が行われる。これにより、各液体吐出ヘッド10の安定した吐出性能が維持される。
【0033】
液滴吐出ヘッド10は、図4〜図6に示すように、互いに並列された2つの線に沿って点在された複数のノズル開口11から、図示を略す記録対象へ向けてインク滴を吐出するものである。この液滴吐出ヘッド10では、各ノズル開口11に対応して圧力発生室12が個別に設けられ、この圧力発生室12のそれぞれと連通する共通液室13が設けられている。複数の圧力発生室12は、基板14に形成されており、この基板14に、天板15とノズル板16とが貼り付けられて、液滴吐出ヘッド10が構成されている。2つの共通液室13は、基板14に設けられた凹所と天板15に設けられた凹所とにより形成される。ノズル板16には、複数のノズル開口11が形成されている。
【0034】
この液滴吐出ヘッド10では、各圧力発生室12に対応して吐出エネルギー発生体が設けられており、この吐出エネルギー発生体に電極を介して記録信号が印加されると、その印加信号に応じた吐出エネルギーを対応する圧力発生室12内のインクに作用させ、そこに通じるノズル開口11からインク滴として吐出させる。
【0035】
この液滴吐出ヘッド10では、インクタンク18から共通液室13へとインクIが導入される。この共通液室13に導入されたインクIは、共通液室13に一時的に保持され、そこに連通する各圧力発生室12に侵入し、それぞれに対応するノズル開口11にてメニスカスを形成する。これにより、各圧力発生室12はインクIで満たされた状態に保たれる。この各圧力発生室12のインクIが、圧電素子等の吐出エネルギー発生体(図示せず)により、インク滴としてノズル開口11から吐出される。
【0036】
共通液室13及び各圧力発生室12のインクIには、気泡が混入している場合がある。この気泡は、いまだインクIが導入されていない液滴吐出ヘッド10すなわち共通液室13及び各圧力発生室12へとインクIを導入する際、濡れ性の問題等からインクIに混入しやすい。また、気泡は、既にインクIが導入された液滴吐出ヘッド10すなわち共通液室13及び各圧力発生室12であっても、インク滴を吐出すべく動作している際等にインクIに混入してしまう。このような気泡は、インクIに比較して圧縮率が大きいことから、印写動作とって、すなわち吐出エネルギー発生体によるインク滴の吐出にとっては圧力特性上好ましくなく、適切な印写が阻害されるおそれがある。
【0037】
この気泡は、液滴吐出ヘッド10すなわち共通液室13及び各圧力発生室12のインクIから除去する。まず、液滴吐出ヘッド10に設けられた共通液室13に通じる導入口13aに、インクIの導入のためのインクタンク18を接続する。このインクタンク18は、収容するインクIの圧送が可能とされている。このインクタンク18は、気泡が混入していないインクIを圧送可能とされている。インクタンク18が共通液室13に接続された液滴吐出ヘッド10を、共通液室13及び各圧力発生室12に対してノズル開口11が鉛直方向上方に位置するように配置する(以下では、この液滴吐出ヘッド10の状態を上向き姿勢という)。この液滴吐出ヘッド10におけるノズル開口11が設けられたノズル板16により規定されるノズル面16aに、封止部材としての吸引キャップ19を気密的に当接させる。
【0038】
吸引キャップ19は、弾性部材で形成されており、図6に示すように、一端19aが大きな口径とされ、かつ他端19bが小さな口径とされ、一端19aから他端19bへ連続的に口径を減少する錐状部19cを有する漏斗状を呈している。吸引キャップ19の一端19aは、すべてのノズル開口11を口径内に位置させることが可能な大きさ寸法とされており、ノズル面16aに気密的に密着可能とされている。吸引キャップ19の他端19bは、吸引装置20に連通されている。この吸引装置20は、吸引キャップ19の他端19b側から吸引することができる。
【0039】
また吸引キャップ19は、全ノズル開口11を一端19aの開口内に位置するように、一端19aがノズル面16aに気密的に密着されると、当該ノズル面16aと協働して吸引空間21を形成する。この吸引空間21は、液滴吐出ヘッド10のすべてのノズル開口11と、吸引装置20とを連通させていることとなるとともに、液滴吐出ヘッド10が上向き姿勢の場合、すべてのノズル開口11の鉛直方向上方に位置することとなる。
【0040】
この上向き姿勢であり吸引キャップ19が密接された液滴吐出ヘッド10において、インクタンク18から共通液室13へとインクIを圧送するとともに、吸引装置20で吸引空間21を減圧する。これにより、共通液室13から、そこに連通する各圧力発生室12及び各ノズル開口11を経て、吸引空間21に至るインクIの流れが形成される。これが、気泡除去工程となる。
【0041】
この気泡除去工程では、各ノズル開口11からインクIがしみ出し、ノズル面16a上すなわち吸引空間21にインクIがたまっていく。またこの気泡除去工程は、少なくともノズル面16a上のインクIの液面が他端19bに到達する、換言すると、吸引空間21内がインクIで満たされるまで行う。この際、液滴吐出ヘッド10が上向き姿勢とされていることから、気泡に浮力が作用することにより、共通液室13のインクIに混入している気泡は各圧力発生室12の近傍に移動し、各圧力発生室12のインクIに混入している気泡は各ノズル開口11の近傍に移動している。換言すると、共通液室13及び各圧力発生室12のインクIに混入している気泡を、各圧力発生室12または各ノズル開口11の近傍に集めることができる。また、このような気泡の移動方向と、インクIに形成された流れの方向とが一致することとなる。このため、共通液室13から各圧力発生室12、各ノズル開口11及び吸引空間21を経て吸引装置20に至るインクIの流れが形成されると、共通液室13及び各圧力発生室12のインクIに混入している気泡は、そのインクIとともに効率良くかつ確実に吸引装置20へと導かれることとなる。
【0042】
なお上述の気泡除去は、液体噴射装置において充填液とインクの置換が行われる初期充填時に行うこともある。
【0043】
<実施例1>
図7は、本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法の一実施例について説明するための概略図である。なおこの図は、液滴吐出ヘッドをその長手方向から見た図である(図7以下の図においても同様に記載した図があるが、当該図ごとの説明は省略する)。
通常、共通液室内で気泡が発生した場合、上述のように吸引キャップ19での吸引のみで気泡を排出しようとするが、完全に排除してしまうことは困難である。そこで、図7(A)で示す初期状態から、図7(B)以下のヘッド傾斜工程を実施し、液滴吐出ヘッド10を傾斜させることによって気泡を共通液室13の端部に集め、その状態で分割吸引キャップ19Aを密接させ(図7(C))、気泡を除去し、液滴吐出ヘッド10の傾斜を元に戻して正立させる(図7(D))。なお、吸引キャップには、分割吸引キャップ19Aを既述の吸引キャップ19とともに用い、それにより、共通液室13端部の気泡を重点的に吸引することで共通液室13内に存在していた気泡を満遍なく除去することができるようにしている。
【0044】
なお、分割吸引キャップ19Aは液滴吐出ヘッド10の共通液室13の下流のみを吸引できる。また液滴吐出ヘッド10は、傾斜したときのみ共通液室13の気泡排出孔が分割吸引キャップ19Aに接続される。さらに、液滴吐出ヘッド10に、液体を加圧して供給する加圧供給手段を備えることも可能である。
【0045】
図8は、図7に示した液体導入方法の実施例の動作を示すフローチャートである。
まず、回動させるためにキャリッジ68を初期の位置から持ち上げる(ステップS1)。そして、共通液室13内の気泡を共通液室13の端部に集めるためにキャリッジ68を液滴吐出ヘッド10とともに傾斜させる(ステップS2)。キャリッジ68を、液滴吐出ヘッド10が分割吸引キャップ19Aに当接する位置まで移動させる(ステップS3)。そして共通液室13の端部に集められた気泡を分割吸引キャップ19Aで重点的に分割吸引を行い、気泡を除去する(ステップS4)。ついでキャリッジ68を持ち上げ(ステップS5)、通常使用する吸引キャップ19の上までキャリッジ68を平行移動させる(ステップS6)。ついでキャリッジ68を正立させ(ステップS7)、液滴吐出ヘッド10が通常の吸引キャップ19に当接する位置まで移動させる(ステップS8)。そして、分割吸引で除去しきれなかった残留気泡を除去するために、既述のような通常のキャップ吸引を行う(ステップS9)。その後にデキャップ、すなわち吸引キャップ19を液滴吐出ヘッド10の下の位置から外し(ステップS10)、払拭機96のワイパで液滴吐出ヘッド10のノズル面をワイピングする(ステップS11)。このようなステップの液体導入方法を実施することで、共通液室13内に発生した大きな気泡とその他の微細な気泡の両方を満遍なく除去することができる。
【0046】
図9は、吸引キャップ19と分割吸引キャップ19Aの配置及びそれらと液滴吐出ヘッド10の接触動作について説明する概念図である。図中のスタート〜符号S1〜S3−2は、図8のフローチャートのステップと対応している。ただしS3−1、S3−2は図8のステップ3の前半と後半を表している。
【0047】
図10は、図3の一部を取り出して分割吸引キャップ19Aの配置を追加して示した概念図である。既述のように分割吸引キャップ19Aは通常の吸引キャップと同じ維持回復機構に備えられている。
【0048】
<実施例2>
図11は、本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法の他の実施例について説明するための概略図である。
通常共通液室13内で気泡が発生した場合、既述のように、キャップ吸引のみで完全に気泡を排出してしまうことは困難であるが、実施例1で述べたように、液滴吐出ヘッド10を傾斜させることによって気泡を共通液室13端部に集め、共通液室13端部の気泡を重点的に吸引することで共通液室13内に存在していた気泡を満遍なく除去することができる。本実施例は、実施例1で用いた分割吸引キャップに代えて液体吸引装置19Bを用いている。すなわち、図11(A)で示す初期状態から、図11(B)以下のヘッド傾斜工程を実施し、液滴吐出ヘッド10を傾斜させることによって気泡を共通液室13の端部に集め、その状態で液体吸引装置19Bを密接させ(図11(C))、気泡を除去し、液滴吐出ヘッド10の傾斜を元に戻して正立させる(図11(D))。なお、共通液室13の液体吸引装置19Bを密接させる側の端部を、液滴吐出ヘッド10を傾斜させる角度に対応させて図示のように斜めの面をなすように構成しておくことが好ましい。
【0049】
図12は、図11に示した液体導入方法の実施例の動作を示すフローチャートである。
まず、回動させるためにキャリッジ68を初期の位置から持ち上げる(ステップS1)。そして、共通液室13内の気泡を共通液室13の端部に集めるためにキャリッジ68を傾斜させる(ステップS2)。キャリッジ68を、液滴吐出ヘッドが分割吸引キャップ19Aに当接する位置まで移動させる(ステップS3)。そして、液滴吐出ヘッド10を傾斜させることで共通液室13端部に集められた気泡を重点的に吸引するために液体吸引装置19Bで吸引を行い、気泡を除去し(ステップS4)、液滴吐出ヘッド10を液体吸引装置19Bから離す(ステップS5)。その後、傾斜させていたキャリッジ68を正立させ(ステップS6)、キャリッジ68を液滴吐出ヘッド10が通常のキャップに当接する位置まで移動させる(ステップS7)。そして、分割吸引で除去しきれなかった残留気泡を除去するために、既述のような通常のキャップ吸引を行う(ステップS9)。その後にデキャップ、すなわち吸引キャップ19を液滴吐出ヘッド10の下の位置から外し(ステップS10)、払拭機96のワイパで液滴吐出ヘッド10のノズル面をワイピングする(ステップS11)。このようなステップの液体導入方法を実施することで、共通液室13内に発生した大きな気泡とその他の微細な気泡の両方を満遍なく除去することができる。
【0050】
図13は、吸引キャップ19と液体吸引装置19Bの配置及びそれらと液滴吐出ヘッド10の接触動作について説明する概念図である。図中のスタート〜符号S1〜S3−2は、図12のフローチャートのステップと対応している。ただしS3−1、S3−2は図12のステップ3の前半と後半を表している。
【0051】
図14は、図3の一部を取り出して液体吸引装置19Bの配置を追加して示した概念図である。図示のように液体吸引装置19Bは吸引キャップ19の前方に配置してある。
【0052】
<実施例3>
図15は、本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法のさらに他の実施例について説明するための概略図である。
本実施例は、液滴吐出ヘッド10を傾斜させることによって気泡を共通液室13端部に集め、共通液室13内を液体を加圧供給し、吸引キャップ19と同構造で、傾斜させた吸引キャップ19Dにより気泡を吸引することで、共通液室13端部の気泡を排出し、共通液室13内に存在していた気泡を満遍なく除去することができるようにしている。
【0053】
図16は、図15に示した液体導入方法の実施例の動作を示すフローチャートである。
まず、回動させるためにキャリッジ68を初期の位置から持ち上げる(ステップS1)。そして、共通液室13内の気泡を共通液室13の端部に集めるためにキャリッジ68を液滴吐出ヘッド10とともに傾斜させる(ステップS2)。キャリッジ68を、傾斜させた吸引キャップ19Dに液滴吐出ヘッド10が当接する位置まで移動させる(ステップS3)。ついで、共通液室13端部に集められた気泡を排出するために液体の加圧供給を行い(ステップS4)、傾斜させた吸引キャップ19Dで吸引を行い、気泡を除去する(ステップS5)。ついでキャリッジ68を持ち上げ(ステップS6)、傾斜していたキャリッジ68を正立させる(ステップS7)。その後、キャリッジ68を液滴吐出ヘッド10が通常使用する吸引キャップ19に当接する位置まで平行移動させる(ステップS8)。そして、除去しきれなかった残留気泡を除去するために通常の吸引キャップ19で吸引を行う(ステップS9)。その後、デキャップし(ステップS10)、払拭機構で液滴吐出ヘッド10のノズル面をワイピングする(ステップS11)
このようなステップの液体導入方法を用いることでも共通液室13内に発生した大きな気泡とその他の微細な気泡の両方を満遍なく除去することができる。
【0054】
図17は、吸引キャップ19、19Dの配置及びそれらと液滴吐出ヘッド10の接触動作について説明する概念図である。図中のスタート〜符号S1〜S3−2は、図16のフローチャートのステップと対応している。ただしS3−1、S3−2は図8のステップ3の前半と後半を表している。
【0055】
図18は、図3の一部を取り出して吸引キャップ19、19Dの配置を追加して示した概念図である。図示のように傾斜させた吸引キャップ19Dは通常使用する吸引キャップ19と同じ維持回復機構93の中に設けてある。
【0056】
<実施例4>
図19は、本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法のさらに他の実施例について説明するための概略図である。
本実施例は、図7に示した実施例1における図7(A)の初期状態(図19(A))と、図7(B)以下のヘッド傾斜工程(図19(C)以下)との間に予備動作工程(図19(B))を設けている。予備動作工程では、共通液室13内の壁面に付着している気泡や、共通液室13内に分散している気泡を集める。
【0057】
具体的には、繰り返しキャリッジ68を傾斜動作(以下、傾動と記載することがある)させることで共通液室13内の気泡を集約させる、その後の傾斜した状態での液滴吐出ヘッド10の吸引で気泡を吸引しやすくする。
【0058】
図20は、傾斜動作ではない予備動作工程の例を示す概略図である。図示のように液滴吐出ヘッド10内を加圧と減圧を繰り返すことによっても共通液室13内の壁面についた気泡を剥離させ、一つの大きな気泡に集約させることができる。
【0059】
またキャリッジ68を繰り返し水平方向に平行移動させることによっても共通液室13内の壁面に張り付いた気泡や、共通液室内に分散した気泡を集約させることができる。
【0060】
図21は、例えばプリンタで予備動作を行う場合の動作を示すフローチャートである。
例えば使用者が三回連続ヘッドのリフレッシングを行った後(ステップS1)、さらにもう一度使用者がリフレッシングを選択した場合(ステップS2)、気泡を集約させるための上述のような予備動作のいずれかを行い(ステップS3)、その後に液滴吐出ヘッド10を傾動させ(ステップS4)、その状態でリフレッシングを行う(S5)。このように傾動させた状態でのヘッドの吸引は通常のノズル回復動作でもノズル抜けが回復できないときに行う。なお、ステップS1において三回連続ヘッドのリフレッシングを行っていないとなったときは、リフレッシングを選択し(ステップS6)、リフレッシングを行う(S5)。なお、このような傾動させた状態でのヘッドの吸引は、通常のノズル回復動作でもノズル抜けが回復できないときに行うことが好ましい。
【0061】
<実施例5>
図22は、本発明に係る液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法のさらに他の実施例について説明するための概略図である。
本実施例は、共通液室が二分されている例であり、第1〜第3の吸引キャップ19E〜19Gを使用する。まず、図22(A)で示す初期状態から、上述のような予備動作工程のいずれかを実施し(図22(B))、この予備動作工程で共通液室13内の壁面に付着している気泡や、共通液室内に分散している気泡を集めておく。ついで、ヘッド傾斜工程1(図22(C))で液滴吐出ヘッド10を傾斜させることによって共通液室13内の気泡を共通液室13の気泡トラップ(図23により後述する)に集め、第2の吸引キャップ19Fを用いて気泡を吸引し(図22(D))、その後、ヘッド傾斜工程2ではヘッド傾斜工程1と逆側に液滴吐出ヘッド10を傾け(図22(E))、気泡を気泡トラップに集め、第3の吸引キャップ19Gを用いて気泡を吸引する(図22(F))。そして最後に、ヘッド正立工程で液滴吐出ヘッド10を元の正立角度に戻し(図22(G))、その後、残留気泡除去工程で第2の吸引キャップ19Eを用いて残りの気泡を吸引する(図22(H))。
【0062】
図23は、図22の実施例で用いる液滴吐出ヘッド10の長手方向の断面図である。図示のように、共通液室13内には気泡トラップ13Aを有しており、液滴吐出ヘッド10を傾動させたときに気泡トラップ13Aに気泡を溜めることができる。また、気泡トラップ13Aの下部に個別液室13Bとノズル板16があるため、溜めた気泡を吸引キャップで吸引しやすい構造になっている。図中17は圧電素子、17aは振動板で、吐出エネルギー発生体を構成している。
【0063】
図24は、上述のように分割された第1〜第3の吸引キャップ19E〜19Gへのキャリッジ68の接触形態について示す概念図である。図24(A)から(D)は右側の第2の吸引キャップ19Fに接触する過程を示している。その後(D)から(K)で第3の吸引キャップ19Gに接触させ、吸引を行う。その後、(L)で中央にある第1の吸引キャップ19Eで吸引を行う。
【0064】
図25は、キャリッジ68及び液滴吐出ヘッド10が備えるライン状に並んだヘッド(以下、ラインヘッド10Aという。図4、図5参照)と維持回復機構93の配置を示す概念図であり、図25(A)はラインヘッド10Aと維持回復機構93を正面から見た図で、ラインヘッド10Aは回転軸10Bを有しており、この回転軸10Bを軸にラインヘッド10Aが傾動する。また、図25(B)はラインヘッド10Aを上方(図25(A)では図の上下方向での上方、図25(B)では紙面の上方)から見て示す概略図で、図25(C)は、ラインヘッド10Aと維持回復機構93の位置関係を示す図である。ラインヘッド10Aを傾動させることで第2の吸引キャップ19Fと第3の吸引キャップ19Gでヘッド吸引を行うことができる。また、図25(C)で示すように、第2の吸引キャップ19Fと第3の吸引キャップ19Gは通常使用する第1の吸引キャップ19Eと同じ維持回復機構93中に設けてある。
【0065】
図26は、本実施例の予備動作工程について説明する概念図である。図示のように、繰り返しキャリッジ68を傾動させることで共通液室13の壁面に付着している気泡を剥離させ、共通液室13内の気泡を集約させることができる。この動作を行い、その後に傾動させて気泡トラップに気泡を集めた状態でのヘッド吸引で気泡を吸引しやすくすることができる。
【0066】
図27は、予備動作工程における加減圧動作の内容を示す概略図である。図示のように、インクIを供給するためのポンプPでラインヘッド10A内に加圧と減圧を繰り返すが、繰り返すごとに圧力振動を発生させることになり、それによって共通液室13内の壁面についた気泡を剥離させ、一つの大きな気泡に集約させることができる。この動作を行うことによってこの後の傾動した状態でのヘッド吸引で気泡を吸引しやすくすることができる。
なお本実施例の動作は、図21のフローチャートで示す動作と同様あるので、図示及び説明を省略する。
【符号の説明】
【0067】
10:液滴吐出ヘッド
10A:ラインヘッド
10B:ラインヘッドの回転軸
11:ノズル開口
12:圧力発生室
13:共通液室
13A:気泡トラップ
13B:個別液室
16:ノズル板
16a:液滴吐出ヘッドのノズル面
17:圧電素子
17a:振動板
18:インクタンク
19:吸引キャップ
19A:分割吸引キャップ
19B:液体吸引装置
19D:吸引キャップ
19E〜19G:吸引キャップ
20:吸引装置
21:吸引空間
60:液滴吐出記録装置
61:液滴吐出記録装置の装置本体
62:給紙トレイ
63:排紙トレイ
64:カートリッジ装填部
65:操作表示部
66:液体カートリッジ
67:前カバー(カートリッジカバー)
68:キャリッジ
69:主ガイドロッド
70:従ガイドロッド
72:液体タンク
73:供給チューブ
74:供給ポンプユニット
83:搬送ベルト
86:帯電ローラ
91:両面ユニット
93:維持回復機構
94:空吐出受け
95:空吐出受け部
96:払拭機
I:インク
S:記録紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2009−051058号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するための複数のノズル開口と、
これら複数のノズル開口に個別に対応して設けられた複数の圧力発生室と、
これら複数の圧力発生室のそれぞれに通じ、液体の導入及び貯留が可能な共通液室と、
前記各圧力発生室から液滴を吐出させるべく該各圧力発生室に対応して設けられた吐出エネルギー発生体とを備える、
液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法であって、
前記液滴吐出ヘッドを傾斜させ、前記共通液室内の気泡を該共通液室端部に集中させるヘッド傾斜工程、
分割吸引キャップにより前記共通液室端部の気泡を吸引して気泡を除去する気泡除去工程、
前記液滴吐出ヘッドを正立させるヘッド正立工程、
前記分割吸引キャップ吸引することにより残留気泡を除去する残留気泡除去工程
を前記順に実施することを特徴とする液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法であって、
前記ヘッド傾斜工程の前に、前記共通液室内の分散した気泡を集約させる予備動作工程を実施する
ことを特徴とする液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法であって、
前記予備動作工程の後の工程が、
前記液滴吐出ヘッドを第2の吸引キャップ側に傾斜させ、前記共通液室内の気泡を該共通液室の気泡トラップに集中させる第1のヘッド傾斜工程と、
第2の吸引キャップにより気泡トラップに集めた気泡を吸引して気泡を除去する第1の気泡除去工程と、
第3の吸引キャップ側に前記液滴吐出ヘッドを傾斜させる第2のヘッド傾斜工程と、
第3の吸引キャップにより前記気泡トラップに集めた気泡を吸引して気泡を除去する第2の気泡除去工程と、
その後に、前記液滴吐出ヘッドを正立させるヘッド正立工程と、
第1の吸引キャップにより吸引することにより残留気泡を除去する残留気泡除去工程と、
からなることを特徴とする液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法において、
前記予備動作工程において繰り返し前記液滴吐出ヘッドを傾動させることを特徴とする液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法。
【請求項5】
請求項2または3に記載の液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法において、
前記予備動作工程において繰り返し前記液滴吐出ヘッドを左右に移動させることを特徴とする液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法において、
前記予備動作工程において前記液滴吐出ヘッドへの加圧と減圧により前記共通液室内に圧力振動を発生させることを特徴とする液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法において、
前記気泡除去工程において前記液滴吐出ヘッドに設けられた気泡排出孔から気泡を吸引し、あるいは、前記液滴吐出ヘッドへの液体の加圧供給により気泡を排出し、傾斜した前記吸引キャップで吸引することを特徴とする液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法。
【請求項8】
液滴吐出ヘッドを備えている液体噴射装置において、
請求項1から7のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおける液体導入方法を用いて前記液滴吐出ヘッドに液体を導入することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液体噴射装置において、
前記液滴吐出ヘッドは、前記共通液室内に前記液滴吐出ヘッドの短手方向に沿う気泡トラップを有し、
前記気泡トラップの下部に前記複数のノズル開口に対応させて個別に液室を有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の液体噴射装置と、
前記液滴吐出ヘッドに液体を加圧して供給する加圧供給手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−254549(P2012−254549A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128372(P2011−128372)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】