説明

液体排出用ポンプ

【課題】容器内で発生した気泡がハウジング内に進入することのない液体排出用ポンプを提供する。
【課題の解決手段】液体排出用ポンプ1は、容器101の開口部に装着したキャップ基体2に沿って上下動する排出ノズル11を設けた押し下げヘッド10と、上端部において排出ノズル11と連通し、この連通状態を通断制御する弁体31を有し、上下動可能で上方に弾発付勢された管体27,28と、この管体27,28と連通するとともに、連通孔37で容器101内と連通するハウジング5と、連通孔37を開閉制御する閉塞方向にコイルスプリング38で弾発付勢された開閉弁39を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液体を適量排出するポンプに関し、特に、いわゆるバックサクションタイプのポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のポンプは、化粧品やシャンプーの容器に使用されており、容器の上端に装着されるキャップ基体に、液体排出路を開閉する弁体を有するピストンロッド及び開閉弁を備えたシリンダを固定し、前記ピストンロッドの上端にノズル付きの押し下げヘッドを設け、容器内の液体を、開閉弁を開いて吸引口からシリンダ内に吸引する一方、開閉弁を閉じた状態で弁体を開き、シリンダ内に吸引した液体をピストンロッドの液体排出路を介してノズルから排出するのが一般的である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−137329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した開閉弁はシリンダ内と容器内の圧力差によって開閉されるのであるが、吸引口の閉塞は必ずしも十分ではなく、ごく僅かな隙間が存在するものである。このため、保管環境によっては容器内の下部で気泡が発生する場合があるが、この気泡が吸引口からシリンダ内に進入し、さらにノズルにまで達することもある。このような事態が生じると、容器やシリンダが透明の場合には気泡が視認されて見栄えが悪く、また、気泡によってポンプ動作に支障をきたす虞がある。本発明は、このような不都合を解消した液体排出用ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため本発明の請求項1に係る液体排出用ポンプは、上下動可能な押し下げヘッドと、この押し下げヘッドに設けた排出ノズルと、上端部において前記排出ノズルと連通するとともに、この連通状態を通断制御する弁体を有し、上下動可能で上昇方向に弾発付勢された管体と、この管体と管体下端部において連通するとともに、前記容器内と連通する連通孔を有するハウジングと、このハウジングの連通孔を開閉制御するとともに前記連通孔を閉塞する方向に弾発付勢された開閉弁を備えてなるものである。
【0006】
また、同じく上記目的を達成するために、本発明の請求項2に係る液体排出用ポンプは、上記請求項1の構成において、開閉弁は、ハウジング内に配置された容量制御棒の下端に上下動可能に支持される一方、前記容量制御棒は、その上部において管体に上下動可能に支持されてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る液体排出用ポンプによれば、ハウジングの連通孔は弾発付勢された開閉弁によって確実に閉塞されるので、容器内で気泡が発生した場合でも、気泡がハウジング内に進入する虞がなく、容器やハウジングが透明でも見栄えを損なわず、また、ポンプ動作に支障をきたすことがないという効果を奏する。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る液体排出用ポンプによれば、開閉弁による連通孔の閉塞がより確実になされるので、上記効果は一層向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好適な一実施形態の液体充満時における待機状態を示す縦断面図。
【図2】同じく閉塞体の支持構造を示す拡大横断面図。
【図3】同じく弁機構を示す拡大縦断面図。
【図4】同じく液体少量時における排出状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明すると、図1及び図4に示すように、液体排出用ポンプ1は、円筒状の容器101に充填された液体を適量ずつ、容器101外に排出するもので、容器101の小径化された開口上端部に取り付けられている。容器101の開口底面は、底蓋102によって閉塞され、底蓋102には連通孔103,103を設けている。
【0011】
キャップ基体2は、その下部内周には雌ねじ3を設け、容器101の上端小径部の外周に設けた雄ねじ104に、前記雌ねじ3を螺合することによって、前記容器101に固定している。前記キャップ基体2内を上下に仕切る仕切り板4と容器101上端の間には、ハウジング5のつば部6を、パッキン7を介して液密に支持している。また、前記仕切り板4の中央には透孔8を形成し、この透孔8の周縁から環状のガイド壁9を垂下している。
【0012】
図1及び図2に示すように、キャップ基体2の上部内周面に沿って上下動可能に配置した押し下げヘッド10には、排出ノズル11を設けている。この排出ノズル11と対向するよう支持筒12を設け、支持筒12に閉塞体13をその後部においてスライド可能に支持している。この閉塞体13は、その前部が前記排出ノズル11内に位置し、支持筒12内に配設したコイルスプリング14によって、前記排出ノズル11の排出口15を閉塞する方向に弾発付勢され、待機時には前記排出口15を閉塞している。
【0013】
押し下げヘッド10の環状下壁16の内周面に、駆動体17の環状上壁18の外周面を摺動可能に嵌合している。また、図2に示すように、前記押し下げヘッド10の内周面に縦方向に延びる2対のリブ42,42,43,43を突設し、各一対のリブ42,42及び43,43には、それぞれ前記駆動体17の縦方向に延びるガイドリブ44,45が係合している。前記駆動体17の周縁に位置してカム板19を立設し、このカム板19の上端には駆動斜面20を形成している。そして、前記駆動斜面20に閉塞体13の後端部に設けた従動部21の内壁面が係合している。
【0014】
したがって、押し下げヘッド10が下降すると、閉塞体13も駆動体17に対して下降し、コイルスプリング14の弾発力に抗して前記排出ノズル13の排出口15を開放する方向にスライドする。また、前記押し下げヘッド10の隔壁22と前記駆動体17の隔壁23には、それぞれ連通孔24,25を設けている。
【0015】
駆動体17のガイド筒26の内周面には、第1管状ステム27の上部外周面が嵌合し、第1管状ステム27の下部はガイド壁9内に摺動可能に位置して肉厚の下端縁部が仕切板4の内周突縁下面に係合し、前記第1管状ステム27の上昇方向への移動を規制している。前記第1管状ステム27の内周面には第2管状ステム28の上部外周面が嵌合し、この第2管状ステム28は、ハウジング5内に配置されたコイルスプリング29によって、上昇方向に弾発付勢されている。前記第1管状ステム27と前記第2管状ステム28によって、上下動可能で上昇方向に弾発付勢された管体を構成する。前記第1管状ステム27の上部には弁座30が設けられ、この弁座30には弁体たるボール弁31が配置されている。
【0016】
図3で理解できるように、第2管状ステム28の下部には、一対の透孔32,32が対向するように形成され、下端部側面にも透孔40が透設されている。そして、これらの透孔32,32を間隙を有して覆うように、バケット34が設けられている。前記第2管状ステム28内には容量制御棒33の上部が相対的に摺動可能に位置し、この容量制御棒33の下部はハウジング5内に突出するとともに、底面及び側周面の一部が開口した連通室35とその下面から放射状に下方に延設した3つの下端脚部36を有し、これら下端脚部36の下端はリング板46に固定されている。前記容量制御棒33は、リング板46においてコイルスプリング29によってハウジング5下面に押しつけられている。
【0017】
ハウジング5下面に設けられた連通孔37は、コイルスプリング38によって閉塞方向に弾発付勢され、上端が連通室35内に突出したロッド弁39によって常時は閉塞状態にある。前記コイルスプリング38の弾発付勢力は、コイルスプリング29の弾発力よりも弱いものである。また、ハウジング5には縮径段部41が形成されて、下端部は小径化されている。
【0018】
容器101内の底部にはピストン51を上下動動可能に配置している。このピストン51は、容器101内に収容した液体が漏れるのを阻止する一方、容器101内の圧力と外気圧の大小関係に応じて容器101内を上下動動する。なお、図1及び図3中、106は連通孔107を設けた底カバー、108は上部カバーである。
【0019】
続いて、上述した実施例の動作を説明する。容器101内に液体(図示せず)が充満している使用初期の待機状態において(図1参照)、押し下げヘッド10を押し下げると、閉塞体13も下降し、従動部21が駆動斜面20に沿って下降するように変位して、前記閉塞体13はコイルスプリング14の弾発付勢力に抗して後退し、排出ノズル11の排出口15が開口する。この排出口15からボール弁30に至る空間(以下、便宜上第1空間という。)の圧力は、前記押し下げヘッド10が下降するにしたがって大きくなり、その環状下壁16が駆動体17の隔壁23に当接した状態で最高となるもので、前記圧力によって前記第1空間内の液体は排出口15から排出され始める。
【0020】
さらに、押し下げヘッド10を押し下げると、駆動体17も連動して下降することにより、第1管状ステム27と第2管状ステム28はコイルスプリング29の弾発付勢力に抗して下降する。これによって、前記第1管状ステム27の弁座30から前記第2管状ステム28下端に至るとともに、バケット34で囲まれた空間(以下、便宜上第2空間という。)の圧力は、第2空間内に占める容量制御棒33の体積が増大することによって高まり、ボール弁31が弁座30から離反する。
【0021】
一方、第1管状ステム27の下端がバケット34の上端に当接する位置まで下降すると、このバケット34と前記第2管状ステム28の間に間隙が生じる。そして、前記第2管状ステム28の下降で前記第2管状ステム28から下のハウジング5内の空間(以下、便宜上第3空間という。)の圧力が高まるとともに、第1〜第3空間が各連通孔40,32,25,24を介して互いに連通する。これによって、上述の第1空間内の液体の排出口15からの排出に続いて、第2,第3空間内の液体も順次排出口15方向に流出する。
【0022】
なおも押し下げヘッド10を押し下げると、図4に示すように、第2管状ステム28の下端がハウジング5の縮径段部41に当接して、押し下げは停止する。一方、第1〜第3空間内の液体は、これら空間内の圧力と排出口15を介した外気圧とが等しくなるまで、前記排出口15から排出され続ける。
【0023】
排出口15からの液体の排出が停止した後、押し下げヘッド10に対する押し下げ力を解除すると、コイルスプリング29の弾発力によって、各管状ステム27,28、駆動体17及び押し下げヘッド10が上昇する。そして、コイルスプリング14の弾発力により、閉塞体13の従動部21が駆動斜面20に沿って上昇するように変位して閉塞体13が前進を始める一方、容量制御棒33が第2空間から下方に引き抜かれる状態となって第2空間内の圧力が下がる。この第2空間内の圧力の低下によって、第1空間内の液体が前記第2空間内に流入し、次いでボール弁31が弁座30に密接して、前記第2空間と前記第1空間の連通状態を遮断する。
【0024】
さらに、コイルスプリング29の弾発力によって、各管状ステム27,28、駆動体17及び押し下げヘッド10が上昇すると、第2管状ステム28とバケット34との間に生じていた間隙も解消され、第2空間と第3空間の連通状態を遮断する。この状態でさらに、各管状ステム27,28及び駆動体17が上昇すると、第3空間内の圧力が負圧状態となって低下し、ロッド弁39に上昇方向の力が作用し始める。
【0025】
第1管状ステム27の下端縁部がガイド壁9の上端突縁に係合して、各管状ステム27,28及び駆動体17の上昇が規制されると、コイルスプリング14の弾発力により、閉塞体13の従動部21が駆動斜面20に沿ってさらに上昇するように変位して、押し下げヘッド10が待機状態位置まで上昇する一方、閉塞体13はさらに前進して排出口15を閉塞する。
【0026】
第3空間内の負圧状態がさらに進んで、ロッド弁39に作用している上昇方向の力がコイルスプリング38の弾発付勢力を上回ると、ロッド弁39が上昇して連通孔37が開放され、容器101内の液体が前記連通孔37から第3空間内に流入する。この時、前記第3空間と第2空間は遮断状態にあり、また、前記第2空間と第1空間も遮断状態にあって、さらに、排出口15は閉塞体13によって閉塞された状態にあるので、前記排出口15から液だれがおきる虞はない。
【0027】
容器101内の液体が第3空間内に流入することにより、容器101内の圧力が下がるので、底蓋102及び底カバー106の各連通孔103,103,107を通してかかる外気圧によって、ピストン51は上昇する。この第3空間内への液体の流入は、コイルスプリング38の弾発付勢力と、容器101内圧力と、外気圧とが均衡するまでなされ、これが均衡するとロッド弁39によって連通孔37を閉塞し、第3空間は容器101内と遮断状態となる。そして、容器101内の液体の第3空間内への流入量に応じて、ピストン51は上昇するもので、図4図示位置は容器101内の液体をほぼ排出した状態でのピストン51の最上昇位置を示している。
【0028】
上述のように、待機状態時には、コイルスプリング38の弾発付勢力によって、ロッド弁39は連通孔37を強制的に閉塞しているので、容器101下部で気泡が発生した場合であっても、気泡がハウジング5内に進入する虞はない。したがって、気泡による悪影響が発生せず、円滑、確実なポンプ動作を保証することができ、また、見栄えもよい。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、ボール弁31やロッド弁39に換えて他の構成の弁体を用いてもよい。また、閉塞体13を排出口に対して進退させる構成は、斜面を利用するものに限らない。
【符号の説明】
【0030】
1 液体排出用ポンプ
2 キャップ基体
5 ハウジング
7 パッキン
9 ガイド壁
10 押し下げヘッド
11 排出ノズル
13 閉塞体
14 コイルスプリング
15 排出口
20 駆動斜面
21 従動部
24 連通孔
27 第1管状ステム
28 第2管状ステム
29 コイルスプリング
30 弁座
31 ボール弁
32 連通孔
33 容量制御棒
34 バケット
37 連通孔
38 コイルスプリング
39 ロッド弁
40 連通孔
51 ピストン
101 容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能な押し下げヘッドと、この押し下げヘッドに設けた排出ノズルと、上端部において前記排出ノズルと連通するとともに、この連通状態を通断制御する弁体を有し、上下動可能で上昇方向に弾発付勢された管体と、この管体と管体下端部において連通するとともに、前記容器内と連通する連通孔を有するハウジングと、このハウジングの連通孔を開閉制御するとともに前記連通孔を閉塞する方向に弾発付勢された開閉弁を備えてなることを特徴とする液体排出用ポンプ。
【請求項2】
前記開閉弁は、前記ハウジング内に配置された前記容量制御棒の下端に上下動可能に支持される一方、前記容量制御棒は、その上部において前記管体に上下動可能に支持されてなることを特徴とする請求項1に記載の液体排出用ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−130847(P2012−130847A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284097(P2010−284097)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(392020428)株式会社矢板製作所 (9)
【Fターム(参考)】