説明

液体検出装置、インクカートリッジおよび印刷装置

【課題】液体の残量がほぼゼロとなったことと、液体の粘度または濃度とを正確に検出することができる液体検出装置、インクカートリッジおよび印刷装置を提供すること。
【解決手段】液体が貯留される貯留部71と、排出口と、貯留部71から排出口へ液体を導く流路73とを備えた液体容器に用いられ、貯留部71内の液体の有無を検出する液体検出装置であって、中央部に凹部811が形成され、中央部が厚みすべりモードまたは厚みモードで振動する振動子として機能する薄肉部812となっており、薄肉部812の凹部811側が流路73に露出するように設けられた圧電体81と、薄肉部812を共振させる共振手段と、薄肉部812の共振周波数および/または共振時の挿入損失を検出する検出手段と、その検出結果に基づいて、液体残量がほぼゼロか否かを判別する判別手段および液体の粘度または濃度を求める液体条件取得手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体検出装置、インクカートリッジおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙などの記録媒体に印刷を行う印刷装置として、インクジェット方式を採用するプリンタが知られている。かかる方式のプリンタは、一般に、キャリッジに装填されたインクカートリッジからインクジェットヘッドにインクを供給し、インクジェットヘッドから記録媒体にインクを液滴として吐出することにより、印刷を行う。
このような印刷装置にあっては、インクカートリッジがキャリッジに対し着脱可能となっており、インクカートリッジ内のインクの残量がほぼゼロまたは所定量以下となったときに、そのインクカートリッジを新たなインクカートリッジと交換することができる。
【0003】
かかるインクカートリッジは、インクが貯留された貯留部と、この貯留部内のインクを液滴吐出ヘッドへ供給するための排出口と、貯留部と排出口とを連通させる流路とを有しており、その貯留部内のインクの残量を液体検出装置により検出するようになっている。
液体検出装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、貯留部の内壁面の一部を構成する振動板と、この振動板上に設けられた圧電体とを有するものが知られている。かかる液体検出装置にあっては、圧電体により振動板を振動させ、その共振周波数の変化に基づいて貯留部内のインク残量を検出することができる。そして、このようなインク残量の検出結果をディスプレイなどに表示することにより、インクカートリッジの交換時期等をユーザーに知らせることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1にかかる液体検出装置では、圧電体により振動板を振動させた際、その振動の漏れが生じる。このため、貯留部のインクの残量がゼロか否かを正確に検出することはできない。
また、その液体検出装置は、インクの残量を検出するものであり、インクの粘度や濃度を検出することはできない。このため、インクの粘度や濃度を検出するためには、別途、その検出装置を設置しなければならず、構造が複雑化するとともに、広い設置スペースを必要とし、装置全体が大型化してしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2001−146024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液体の残量がほぼゼロとなったことと、液体の粘度または濃度とを正確に検出することができる液体検出装置、インクカートリッジおよび印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体検出装置は、液体が貯留される貯留部と、前記貯留部から液体を排出するための排出口と、前記貯留部から前記排出口へ前記液体を導く流路とを備えた液体容器に用いられ、前記貯留部内の液体の有無を検出する液体検出装置であって、
中央部に凹部が形成され、該中央部が振動子として機能する薄肉部となっており、該薄肉部の前記凹部側が前記流路に露出するように設けられた圧電体と、
前記圧電体の薄肉部を共振させる共振手段と、
前記圧電体の薄肉部の共振周波数および/または共振時の挿入損失を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別する判別手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求める液体条件取得手段とを有し、
前記圧電体の薄肉部の振動モードは、厚みすべりモードまたは厚みモードであることを特徴とする。
【0008】
これにより、液体の残量がほぼゼロとなったことと、液体の粘度または濃度とを正確に検出することができる。
すなわち、圧電体の中央部に凹部が形成され、その中央部の薄肉部が振動子として機能するようになっているので、薄肉部からの振動の漏れは、その周囲(周辺部)の厚肉部により抑制(または防止)されるとともに、振動モードを厚みすべりモードまたは厚みモードとすることで、これらの相乗効果により、薄肉部の振動を、確実にその凹部内に閉じ込めることができ(ほぼ薄肉部のみを振動させることができ)、振動の漏れを防止することができる。これにより、圧電体の薄肉部の共振周波数や共振時の挿入損失を精度良く検出することができ、これによって、液体の残量がほぼゼロとなったことと、液体の粘度または濃度とを正確に検出することができる。
【0009】
また、液体の残量がほぼゼロになるまでは、圧電体の薄肉部には液体が接触しており、液体の残量がほぼゼロになると、薄肉部に接触している液体がその薄肉部から離間するが、圧電体は、その薄肉部の凹部側が流路に露出するように設けられているので、液体の残量がほぼゼロになると、まず、凹部内の液体の液面が下がり、薄肉部に接触している液体が、その薄肉部から確実に離間する。そして、薄肉部から液体が離間すると、圧電体の薄肉部の共振周波数や共振時の挿入損失が大幅に変化し、これにより、液体の残量がほぼゼロとなったことを、正確かつ確実に検出することができる。
【0010】
本発明の液体検出装置では、前記圧電体の薄肉部の前記凹部側が鉛直方向下側を向き、前記凹部により前記流路の一部が構成されていることが好ましい。
これにより、液体の残量がほぼゼロとなったことを、より正確かつ確実に検出することができる。
本発明の液体検出装置では、前記圧電体の薄肉部の前記凹部側が略水平方向を向き、前記凹部により前記流路の一部が構成されていることが好ましい。
これにより、流路(凹部)からの気泡の排出性を向上させることができる。
【0011】
本発明の液体検出装置では、前記流路がほぼコの字状に形成されており、その折り返し部に、前記凹部が位置していることが好ましい。
これにより、液体の残量がほぼゼロになったときに、圧電体の薄肉部の下方に液体が溜まっていて、その液体が薄肉部に接触するのを防止することができ、これによって、液体の残量がほぼゼロとなったことを、より正確かつ確実に検出することができる。また、液体が流路を円滑に流れる。
【0012】
本発明の液体検出装置では、前記共振手段は、前記圧電体の薄肉部を一部に含む発振回路を有し、該発振回路を作動させて、前記圧電体の薄肉部を共振させるよう構成されていることが好ましい。
これにより、圧電体の薄肉部を容易かつ確実に共振させることができる。
本発明の液体検出装置では、前記圧電体は、水晶で構成されていることが好ましい。
水晶は、温度依存性が小さいので、温度補正膜等を設ける必要がなく、圧電体の薄肉部の共振周波数や共振時の挿入損失を精度良く検出することができる。
また、例えば、既製品のATカット水晶振動子は、既に凹部を有しているため、これを利用することで、液体検出装置の製造を簡単化することができる。
【0013】
本発明の液体検出装置では、前記圧電体の薄肉部の前記凹部と反対側の面上に設けられ、互いに離間した入力電極および出力電極と、前記圧電体の薄肉部の前記凹部側の面上に設けられた共通電極とを有し、
前記共振手段および前記検出手段の作動により、前記入力電圧と前記共通電極との間に電圧を印加しつつ、前記出力電極と前記共通電極との間の電圧を検出し、その検出結果に基づいて前記圧電体の薄肉部の共振周波数を検出することが好ましい。
これにより、比較的簡単な構成でかつより正確に、圧電体の薄肉部の共振周波数や共振時の挿入損失を検出することができる。
【0014】
本発明の液体検出装置では、前記液体は、導電性を有していて、前記共通電極を兼ねることが好ましい。
これにより、構成をより簡単化することができる。
本発明の液体検出装置では、前記判別手段により、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別し、その結果、前記貯留部内の液体残量がゼロではないと判別された場合に、前記液体条件取得手段により、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求めるよう構成されていることが好ましい。
これにより、液体の残量がほぼゼロであるにもかかわらず、液体の粘度または濃度を求める、無駄な処理を防止することができる。
【0015】
本発明の液体検出装置では、前記判別手段は、前記検出手段による前記挿入損失の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別するよう構成されていることが好ましい。
これにより、液体の残量がほぼゼロとなったことを、より正確かつ確実に検出することができる。
【0016】
本発明の液体検出装置では、前記液体条件取得手段は、前記検出手段による前記共振周波数の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求めるよう構成されていることが好ましい。
これにより、液体の粘度または濃度を、より正確に検出することができる。
本発明の液体検出装置では、前記液体容器は、前記貯留部にインクが貯留されたインクカートリッジであることが好ましい。
これにより、インクカートリッジのインクの残量がほぼゼロとなったことと、インクの粘度または濃度とを正確に検出することができる。
【0017】
本発明のインクカートリッジは、記録媒体に印刷を行う印刷装置に装填された状態で用いられ、インクが充填されたインクカートリッジであって、
液体としてインクが貯留される貯留部と、
前記貯留部からインクを排出するための排出口と、
前記貯留部から前記排出口へ前記インクを導く流路と、
中央部に凹部が形成され、該中央部が振動子として機能する薄肉部となっており、該薄肉部の前記凹部側が前記流路に露出するように設けられた圧電体とを有し、
前記圧電体の薄肉部の振動モードは、厚みすべりモードまたは厚みモードであり、
前記印刷装置に装填された状態で、前記圧電体の薄肉部を共振させ、前記圧電体の薄肉部の共振周波数および/または共振時の挿入損失を検出し、その検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別し、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求めることが可能なように構成されていることを特徴とする。
これにより、インクカートリッジのインクの残量がほぼゼロとなったことと、インクの粘度または濃度とを正確に検出することができる。
【0018】
本発明の印刷装置では、インクが充填されたインクカートリッジが装填された状態でそのインクを用いて記録媒体に印刷を行う印刷装置であって、
本発明の液体検出装置を備え、前記液体容器は、前記貯留部にインクが貯留されたインクカートリッジであることを特徴とする。
これにより、インクカートリッジのインクの残量がほぼゼロとなったことと、インクの粘度または濃度とを正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の液体検出装置、インクカートリッジおよび印刷装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の液体検出装置を備える印刷装置の第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す印刷装置に備えられたキャリッジの斜視図、図3は、図2に示すキャリッジの側面図、図4は、図2に示すキャリッジの平面図、図5は、図1に示す印刷装置(キャリッジ)に装填されるインクカートリッジを示す斜視図、図6は、図5中のA−A線断面図、図7は、図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置のセンサおよびその周辺部を示す断面図(図6の部分拡大図)、図8は、図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置のセンサを示す平面図、図9は、図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置の主要回路部を示すブロック図である。
なお、以下の説明では、図6および図7において、上下方向を鉛直方向とする。その対応する方向は、他の図においても同様である。
【0020】
まず、印刷装置100の全体構成を簡単に説明する。
図1に示す印刷装置100は、インクジェット方式を採用するプリンタであって、インクカートリッジ(液体容器)1が装填されており、そのインクカートリッジ1からのインク(液体)を用いて、紙などの記録媒体Pに印刷を行うものである。
図1に示すように、印刷装置100は、インクカートリッジ1が着脱自在に装填されるキャリッジ(装填部)101を備え、このキャリッジ101は、ガイド軸102にその長手方向に移動自在に支持されているとともに、ベルト103を介してキャリッジモータ104から駆動力を受けるようになっている。これにより、キャリッジ101は、キャリッジモータ104の作動によりガイド軸102に沿って移動する。
【0021】
このようなキャリッジ101の下部には、インクカートリッジ1からインクの供給を受け、記録媒体Pに向けインクを液滴として吐出するインクジェットヘッド106が設けられている。
このような印刷装置100では、図示しない紙送りローラ対が記録媒体Pを搬送しながら、ガイド軸102に沿って記録媒体Pの移動方向に対し直角な方向にキャリッジ101が往復移動する。その際、図示しないホストコンピュータからの画像情報に応じて、インクジェットヘッド106から記録媒体Pにインクが液滴として吐出され、記録媒体P上に印刷が行われる。
【0022】
このような印刷装置100に備えられたキャリッジ101は、図2に示すように、上方に開口する略箱状をなし、扁平状をなす4つのインクカートリッジ1がその厚さ方向に配列された状態で装填されるようになっている。本実施形態では、4つのインクカートリッジ1は、図4にて右側から左側へ順に、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが充填されている。
【0023】
キャリッジ101の外側(図3中右側)には、溝31および32が形成されている。溝31および32は、それぞれ、4つのインクカートリッジ1の配列方向に沿って形成されている。
溝31には、前述したガイド軸102が挿通される。また、溝32には、ガイド軸102の近傍に当該ガイド軸102と平行に突出形成されたガイド部(図示せず)が挿通される。これにより、キャリッジ101をその姿勢を一定に保ったままガイド軸102に沿って移動させることができる。
【0024】
また、略箱状をなすキャリッジ101の内側には、複数のリブ33、34が突出形成されている。複数のリブ33は、扁平状をなす各インクカートリッジ1の厚さと同程度の離間距離で互いに離間している。そして、このような複数のリブ33と対をなすようにして、複数のリブ33と同様に、複数のリブ34が各インクカートリッジ1の厚さと同程度の間隔で互いに離間している。このような複数のリブ33、34同士の間に、対応するインクカートリッジ1が装填される。これにより、インクカートリッジ1の厚さ方向での移動をリブ33、34により規制し各インクカートリッジ1を位置決めすることができる。また、インクカートリッジ1をリブ33、34に沿って容易に着脱することができる。
【0025】
また、キャリッジ101の内側には、その底面から上方に向け、インクジェットヘッド106にインクを供給するための中空針36が突出している。キャリッジ101にインクカートリッジ1が装填されると、中空針36がインクカートリッジ1の排出口72と係合し、インクカートリッジ1から、中空針36、図示しない流路を介してインクジェットヘッド106にインクが供給される。
【0026】
また、キャリッジ101の内側には、インクカートリッジ1が装填されたときに、後述するインクカートリッジ1の係合片24と係合する凹部37、38が形成されている。これにより、前述したリブ33、34とともに、インクカートリッジ1をキャリッジ101に対し正規の位置に固定することができる。
さらに、キャリッジ101の内側には、下部(底部)に、後述するインクカートリッジ1のガイド部27に係合する凹部39が形成されているとともに、弾性材料で構成された係合ピン40が突出するように設けられている。これにより、インクカートリッジ1の下部をキャリッジ101に対し正規の位置により確実に位置決めすることができる。
このようなキャリッジ101の内側の下部には、後述するインクカートリッジ1の端子62と接触する端子41が設けられている。この端子41は、印刷装置100の本体に設けられている後述する主回路112や制御部105(図9参照)に電気的に接続されている。
【0027】
次に、このようなキャリッジ101に装填されるインクカートリッジ1について説明する。
図5に示すインクカートリッジ1は、カートリッジ本体2と、カートリッジ本体2に設置されたセンサ(液体検出素子)8と、センサ8に電気的に接続された回路基板(電極部)6とを有している。
【0028】
カートリッジ本体2は、その外形形状が扁平状をなし、例えば樹脂材料で構成されている。
カートリッジ本体2の外壁面(縁部25の上部)には、弾性変形可能な板状の係合片24が片持ち支持されている(図5(b)参照)。この係合片24は、その表面に第1の凸部241および2つの第2の凸部242が形成されている。
【0029】
第1の凸部241は、インクカートリッジ1がキャリッジ101(印刷装置100)に装填された状態(以下、単に「装填状態」と言う)で、前述したキャリッジ101の凹部38に係合する(図3参照)。また、各第2の凸部242は、それぞれ、装填状態で、前述したキャリッジ101の凹部37に係合する(図3参照)。このような係合により、インクカートリッジ1がキャリッジ101から不本意に離脱するのを防止することができる。
【0030】
また、カートリッジ本体2の外壁面(縁部25の下部)には、突出したガイド部27が形成されている。ガイド部27は、装填状態で、前述したキャリッジ101の凹部(ガイド溝)39に係合する(図3参照)。これにより、インクカートリッジ1の位置決めがなされる。
カートリッジ本体2の縁部25と反対側の縁部26の上部には、凹没形成された凹部28が形成されている。凹部28は、親指の平が入る程度の大きさに形成されている。
【0031】
また、カートリッジ本体2の縁部26の下部には、回路基板6が設置される基板設置部29が突出形成されている。基板設置部29は、装填状態で、その上面291が、キャリッジ101に設けられ弾性材料で構成された係合ピン40に係合する(図3参照)。このような装填状態となることにより、インクカートリッジ1がキャリッジ101から不本意に離脱するのを防止することができる。また、インクカートリッジ1のキャリッジ101に対する位置決めが確実に行われる。
【0032】
また、このカートリッジ本体2には、中空部(内腔部)が形成されており、図6に示すように、インクが貯留される貯留部71と、貯留部71からインクを排出するための排出口72と、貯留部71から排出口72へインクを導く流路73とを有している。
図6に示すように、流路73は、カートリッジ本体2の底部20の貯留部71の底面711付近に形成されている。流路73の一端側(図6中左側)は、貯留部71に連通し、他端側(図6中右側)は、後述する弁機構23を介して排出口72に連通し得るようになっている。この流路73は、底面711に沿って図6中左右方向に延在する部分を有し、その部分と貯留部71との間の部分が、底壁712を構成している。この底壁712には、流路73に露出するように、センサ8が設けられている。すなわち、センサ8は、底壁712の一部を構成している。なお、センサ8については、後に詳述する。
【0033】
カートリッジ本体2の下面21の右側には、下方に突出した凸部22が形成されている(図6参照)。この凸部22には、凹部221が形成されており、当該凹部221に(下方に向かって)排出口72が開口している。
また、インクカートリッジ1には、排出口72を開閉する弁機構23が設置されている。弁機構23は、弁体231と、インクカートリッジ1がキャリッジ101に装填されていないときに弁体231と係合してシールするシール部材233と、弁体231をシール部材233に向けて付勢するコイルバネ232とで構成されている。
【0034】
シール部材233は、リング状をなし、その内側の空間が前述した凹部221を形成している。このシール部材233は、弾性材料で構成されている。この弾性材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料を用いることができる。
【0035】
弁体231は、排出口72に接近または離間するように移動可能に設置されている。弁体231は、インクカートリッジ1が印刷装置100の本体(キャリッジ101)に装填されていない状態(非装填状態)で、コイルバネ232の付勢力により、シール部材233に密着する。これにより、排出口72からインクが不本意な部位へ流出するのを防止することができる。また、弁体231の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
装填状態では、印刷装置100のキャリッジ101から突出した中空針36がコイルバネ232の付勢力に抗して弁体231を押圧して、排出口72を開く。これにより、インクが中空針36に形成された孔361を介してインクジェットヘッド106に供給される。
【0036】
回路基板6は、前述したセンサ8に電気的に接続された複数の端子62を有している。この複数の端子62は、図5(a)に示すように、千鳥格子状に配置されている。また、各端子62は、装填状態で、前述したキャリッジ101の端子41と接触する(図3参照)。これにより、装填状態で、センサ8と主回路112とが電気的に接続され、センサ8からの信号を主回路112へ伝送したり、主回路112からの信号をセンサ8へ伝送したりすることができる。ここで、各端子62は、回路基板6の端子62とは反対側に設けられた端子集積部(図示せず)で集積され、図示しないケーブル(樹脂膜等の絶縁膜により導体を覆って絶縁したもの)等による配線を介してセンサ8に電気的に接続されている。
【0037】
次に、センサ(液体検出素子)8およびこのセンサ8を備える液体検出装置について説明する。
図7および図8に示すように、センサ8は、圧電体81を有している。圧電体81は、板状をなし、その中央部には、凹部811が形成され、その中央部が振動子として機能する薄肉部812となっている。この圧電体81は、底壁712に設けられた凹部内に設置(固定)されている。そして、圧電体81は、流路73の上側(鉛直方向上側)に位置し、その薄肉部812の凹部811側が流路73に露出している。すなわち、圧電体81の薄肉部812の凹部811側が下側(鉛直方向下側)を向き、凹部811により流路73の一部が構成されている。
【0038】
圧電体81の寸法は、特に限定されないが、例えば、図示例のように圧電体81の平面視での形状がほぼ四角形の場合、その一辺の長さは、それぞれ、例えば、1〜5mm程度、厚肉部813の厚さは、例えば、50〜150μm程度、薄肉部812の厚さは、例えば、5〜50μm程度とすることができる。また、例えば、薄肉部812の平面視での形状がほぼ円形の場合、その直径は、例えば、0.5〜2mm程度とすることができる。
【0039】
なお、凹部811は、圧電体81の完全な中央位置に位置している必要はなく、少しずれていてもよいことは、言うまでもない。また、薄肉部812の形状は、円に限定されるものではなく、例えば、楕円、四角形等の多角形等でも問題はない。
また、カートリッジ本体2の底部20における流路73を画成する内壁面の、圧電体81の凹部811の下方(鉛直方向下方)には、凸部201が形成されている(設けられている)。すなわち、流路73のうち、圧電体81の凹部811の下方に配置されている流路73は、ほぼコの字状に形成されており、その折り返し部731に、圧電体81の凹部811が位置している。
【0040】
また、圧電体81の厚肉部813と底壁712との間には、環状の封止部材51が設けられており、この封止部材51により、厚肉部813と底壁712との間が液密に封止(シール)されている。
貯留部71に貯留されているインクは、流路73内を、図7中左側から圧電体81の凹部811を経て右側に流れる。
【0041】
また、圧電体81の薄肉部812の上側(凹部811と反対側)の面上には、互いに離間した電極(第1の電極)82および電極(第2の電極)83が設けられている。本実施形態では、電極82は、入力電極(駆動用の電極)、電極83は、出力電極(検出用の電極)として、それぞれ用いられる(機能する)。
電極82には、圧電体81の図7中左側の端部まで延在する端子821が接続されている。また、電極83には、圧電体81の図7中右側の端部まで延在する端子831が接続されている。なお、本実施形態では、電極82と端子821、電極83と端子831は、それぞれ、一体的に形成されている。
【0042】
これら端子821および831は、それぞれ、図示しない配線を介して、前述した回路基板6の所定の端子62に接続されている。これにより、インクカートリッジ1がキャリッジ101に装填された状態(装填状態)で、電極82および83は、それぞれ、主回路112に電気的に接続される。
電極82および83の構成材料としては、それぞれ、電極材料であれば、種類は特に限定されるものではなく、公知の各種電極材料を用いることができる。例えば、電極82および83の構成材料としては、それぞれ、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の金属材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、通常塩化鉄、ヨウ素、強酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。さらに、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、圧電体81の薄肉部812の下側(凹部811側)の面上には、電極(第3の電極)84が設けられている。本実施形態では、電極84は、電極82および83の共通電極、すなわち、電極82および83の共通の対向電極として用いられる(機能する)。
この電極84の構成材料としては、例えば、前記電極82、83と同様のものを用いることができるが、用いるインク(液体)に対して耐食性等が低い場合等、必要に応じて、電極84の表面に、所定の保護膜を設け、その表面を保護膜で被覆するのが好ましい。例えば、電極84の構成材料として、Pt、Au、W、Mo、Ti等を用いる場合は、保護膜を設ける必要がなく、また、Al、Ta等を用いる場合は、保護膜を設けるのが好ましい。なお、Alの場合は、例えば、SiO、Al等の保護膜を設け、また、Taの場合は、例えば、Ta等の保護膜を設ける。
【0044】
また、本実施形態では、圧電体81の薄肉部812は、厚みすべりモードで振動するように構成されている(圧電体81の薄肉部812の振動モードは、厚みすべりモードである)。すなわち、圧電体81は、その板面に平行な方向に分極している。このような圧電体81では、電極82と電極84との間に電圧を印加することにより、薄肉部812の両面が互いに反対方向にずれるように変形する。すなわち、電極82と電極84との間に交流電圧やパルス電圧を印加すると、薄肉部812が厚みすべりモードで振動する。
【0045】
そして、圧電体81の薄肉部812が共振している(共振周波数で振動している)ときの電極83と電極84との間の電圧を検出し、この検出結果に基づいて、薄肉部812の共振周波数を求める(検出する)ことができる。また、前記薄肉部812が共振しているときの電極82と電極84との間に印加する電圧の値(大きさ)と、電極83と電極84との間に生じる電圧の値とに基づいて、挿入損失(共振時の挿入損失)を求める(検出する)ことができる。
【0046】
なお、圧電体81の薄肉部812の振動モードは、厚みモードでもよい。この場合、圧電体81は、その厚さ方向に分極している。
また、本実施形態では、圧電体81は、水晶で構成されている。既製品のATカット水晶振動子は既に凹部を有しているため、これを凹部811として利用することで、インクカートリッジ1(インク検出機構)の製造を簡単化することができる。また、水晶は、温度依存性が小さいので、温度補正膜等を設ける必要がなく、圧電体81の薄肉部812の共振周波数や共振時の挿入損失を精度良く検出することができる。
【0047】
なお、圧電体81は、水晶(ATカット水晶振動子)に限らず、例えば、PZT(PbZryTi1-y3)、SBT(SrBi2Ta29)、さらに、これらのものに、ニオブ、ニッケル、マグネシウム等の金属を添加したもの等の強誘電体を用いることができる。より具体的には、圧電体81の構成材料としては、例えば、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)、亜鉛ニオブ酸鉛チタン酸鉛(PZNT)、チタン酸バリウム(BaTiO)(BTO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)(LT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)(LN)、ZnO、AlN等を用いることができる。
【0048】
圧電体81として水晶以外のものを用いる場合は、例えば、温度補正膜を設けたり、また、共振周波数や共振時の挿入損失を求める際、温度補正を行うことで、精度を向上させることができる。
液体検出装置は、貯留部71内のインク(液体)の有無(残量がほぼゼロか否か)、すなわち、貯留部71内のインク終了(貯留部71内のインクが使い尽くされたこと)と、貯留部71内の粘度および濃度のうちの少なくとも一方とを検出する(求める)装置であり、前述したセンサ8を備えている。そして、液体検出装置は、そのセンサ8の薄肉部812と主回路112とで構成され、薄肉部812を共振(発振)させる共振手段である発振回路(発振器)111と、第1の計測回路(検出手段)113と、第2の計測回路(検出手段)114と、制御部(制御手段)105と、各種の情報を表示(報知)する表示手段(報知手段)である表示部107と、記憶部(記憶手段)108とを有している。前記主回路112、第1の計測回路113、第2の計測回路114、制御部105、表示部107および記憶部108は、それぞれ、印刷装置100の本体に設けられている。なお、前記制御部105、表示部107および記憶部108は、それぞれ、液体検出装置専用の手段ではなく、印刷装置100全体の手段である。
【0049】
まず、貯留部71内のインクの有無と、粘度または濃度とを検出するための原理について説明する。
センサ8の薄肉部812の共振周波数は、センサ8の薄肉部812にインク(液体)が接触しているか否かにより変化し、また、インクの粘度および濃度に応じて変化する。
また、センサ8の薄肉部812の共振時の挿入損失(損失)は、センサ8の薄肉部812にインクが接触しているか否かにより変化し、また、インクの粘度および濃度に応じてそれぞれ変化する。
【0050】
すなわち、センサ8の薄肉部812にインクが接触していない場合は、接触している場合に比べて、共振周波数は、高く、共振時の挿入損失は、小さい。
一方、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロの場合は、センサ8の薄肉部812にインクが接触しておらず、また、貯留部71内のインクの残量がゼロではない場合は、センサ8の薄肉部812にインクが接触している。
【0051】
したがって、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロの場合は、ゼロではない場合に比べて、共振周波数は、高く、共振時の挿入損失は、小さい。
また、インクの粘度が低いほど、共振周波数は、高く、共振時の挿入損失は、小さい。
また、同様に、インクの濃度が低いほど、共振周波数は、高く、共振時の挿入損失は、小さい。
【0052】
液体検出装置は、制御部105の制御により、前記の関係を利用して、貯留部71内のインクの有無と、貯留部71内のインクの粘度および濃度のうちの少なくとも一方とを検出する。
ここで、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロか否かの検出は、センサ8の薄肉部812の共振周波数に基づいて行ってもよく、また、センサ8の薄肉部812の共振時の挿入損失に基づいて行ってもよい。また、貯留部71内のインクの粘度や濃度の検出は、センサ8の薄肉部812の共振周波数に基づいて行ってもよく、また、センサ8の薄肉部812の共振時の挿入損失に基づいて行ってもよい。
【0053】
但し、センサ8の薄肉部812の共振時の挿入損失は、共振周波数に比べて、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロか否かにより大きく変化するので、共振時の挿入損失に基づいて、インクの残量がほぼゼロか否かを判別するのが好ましい。
また、センサ8の薄肉部812の共振周波数は、共振時の挿入損失に比べて、インクの粘度および濃度に応じてそれぞれ大きく変化するので、共振周波数に基づいて、インクの粘度や濃度を求めるのが好ましい。
【0054】
また、インク検出(液体検出)の際は、まず、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロか否かを判別し、その結果、インクの残量がゼロであると判別された場合は、インクの粘度や濃度を求める処理は実行せず、インクの残量がゼロではないと判別された場合にのみ、インクの粘度や濃度を求める処理を実行するように構成されているのが好ましい。これにより、無駄な処理を省略することができる。
【0055】
前記共振周波数に基づいてインクの残量がほぼゼロか否かを判別する際に用いるしきい値、共振時の挿入損失に基づいてインクの残量がほぼゼロか否かを判別する際に用いるしきい値、共振周波数からインクの粘度や濃度を求めるための演算式やテーブル等の検量線、共振時の挿入損失からインクの粘度や濃度を求めるための演算式やテーブル等の検量線等、必要な情報は、予め、実験的に求め、記憶部108に記憶しておき、制御部105が必要時に読み出して使用するようになっている。
【0056】
なお、インクの粘度の検出方法とインクの濃度の検出方法は、ほぼ同じであるので、以下の説明では、代表的に、インクの濃度を検出する場合について説明するが、本発明では、インクの粘度および濃度のうち、インクの粘度のみを検出するようになっていてもよく、また、インクの濃度のみを検出するようになっていてもよく、また、インクの粘度および濃度の双方を検出するようになっていてもよい。
【0057】
次に、貯留部71内のインクの残量がゼロの場合と、インクの濃度が低濃度の場合と、インクの濃度が高濃度の場合とのセンサ8の薄肉部812の共振周波数および共振時の挿入損失について、具体例を説明する。
図10は、図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置におけるインクの残量がゼロの場合と、インクの濃度が低濃度の場合と、インクの濃度が高濃度の場合とのセンサの薄肉部の振動の周波数と、挿入損失との関係を示すグラフである。なお、振動モードは、厚みすべりモードである。
【0058】
図10に示す具体例では、インクの残量がゼロの場合の共振周波数fは、70MHzであり、インクの濃度が低濃度の場合の共振周波数fは、fに対して−400ppm、インクの濃度が高濃度の場合の共振周波数fは、fに対して−600ppmである。このように、インクの残量がゼロの場合は、ゼロではない場合に比べて、共振周波数は、高い。また、インクの濃度が低濃度の場合の共振周波数は、インクの濃度が高濃度の場合の共振周波数よりも高い。
【0059】
また、インクの残量がゼロの場合の共振時の挿入損失は、2dBであり、インクの濃度が低濃度の場合の共振時の挿入損失は、10dB、インクの濃度が高濃度の場合の共振時の挿入損失は、10.5dBである。このように、インクの残量がゼロの場合は、ゼロではない場合に比べて、共振時の挿入損失は、小さい。また、インクの濃度が低濃度の場合の共振時の挿入損失は、インクの濃度が高濃度の場合の共振時の挿入損失よりも小さい。
【0060】
液体検出装置の発振回路111は、装填状態において、センサ8の電極82および83が、それぞれ、主回路112に電気的に接続されることで形成される。この発振回路111としては、センサ8の薄肉部812を共振させることが可能なものであれば、特に限定されず、例えば、コルピッツ型発振回路、ハートレー型発振回路、帰還発振回路等、各種のものを用いることができる。
【0061】
記憶部108は、演算式やテーブル等の検量線、各種の情報、データ、プログラム等が記憶(記録)される記憶媒体(記録媒体)を有している。この記憶媒体は、例えば、RAM(Random Access Memory:揮発性、不揮発性のいずれをも含む)、FD(Floppy Disk(「Floppy」は登録商標))、HD(Hard Disk)、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)等のような、磁気的、光学的記録媒体、もしくは半導体メモリーで構成されている。この記憶部108における書き込み(記憶)、書き換え、消去、読み出し等の制御は、制御部105によりなされる。
【0062】
制御部105は、印刷動作、例えば、インクジェットヘッド106の液滴吐出動作等を制御する機能を有している。すなわち、制御部105は、印刷装置100の各部の作動(駆動)、例えば、インクジェットヘッド106、表示部107、発振回路111(主回路112)、第1の計測回路113、第2の計測回路114等の作動をそれぞれ制御する。
また、制御部105には、前記第1の計測回路113および第2の計測回路114からの計測値、図示しない操作部(操作手段)からの信号が、それぞれ、随時入力される。
【0063】
この制御部105は、例えば、演算部やメモリー等を内蔵するマイクロコンピュータやCPU(Central Processing Unit)等で構成されている。
なお、制御部105により、貯留部71内のインクの残量(液体残量)がほぼゼロか否かを判別する判別手段と、貯留部71内のインク(液体)の粘度や濃度を求める液体条件取得手段との主機能が達成(構成)される。
【0064】
表示部107としては、例えば、液晶パネルを備えた液晶表示装置、ELパネルを備えたEL表示装置、CRT等、電子画像を表示する各種ディスプレイ等を用いることができる。
この表示部107には、インクカートリッジ1の貯留部71内のインクの有無、インクの粘度や濃度、これらに関連した情報(例えば、インクカートリッジ1の交換を要する旨)等が表示される。
なお、報知手段としては、前記表示部107に限らず、例えば、スピーカを用いて音声で報知する手段等を用いてもよい。
【0065】
次に、液体検出装置の作用(動作)について説明する。
制御部105の制御により、まず、発振回路111を作動させる。これにより、センサ8の薄肉部812が、厚みすべりモードで共振(共振周波数で振動)する。
この場合、薄肉部812からの振動の漏れは、その周囲(周辺部)の厚肉部813により抑制(または防止)されるとともに、振動モードとして厚みすべりモードを用いているので、これらの相乗効果により、薄肉部812の振動を、確実に凹部811内に閉じ込めることができ(ほぼ薄肉部812のみを振動させることができ)、振動の漏れを防止することができる。
【0066】
次いで、第2の計測回路114を作動させ、薄肉部812の共振時の挿入損失を求める処理を実行する。すなわち、センサ8の電極82と電極84との間の電圧に対応する信号(電圧)と、電極83と電極84との間の電圧に対応する信号(電圧)とは、それぞれ、第2の計測回路114に入力され、第2の計測回路114は、例えば、アンプのゲインを可変することや、A/D変換等を行って、これらの信号の電圧レベルを求め、薄肉部812の共振時の挿入損失を求め、制御部105に送出する。
【0067】
制御部105は、検出された薄肉部812の共振時の挿入損失を、しきい値と比較して、貯留部71内のインクの残量がゼロか否かを判別する。
この結果、インクの残量がゼロではない場合は、第1の計測回路113を作動させ、薄肉部812の共周波数を求める処理を実行する。すなわち、センサ8の電極83と電極84との間の電圧に対応する信号(電圧)は、第1の計測回路113に入力され、第1の計測回路113は、その信号の所定時間内の波数(パルス数)を計数し、薄肉部812の共振周波数を求め、制御部105に送出する。
制御部105は、演算式やテーブル等の検量線を用い、検出された薄肉部812の共振周波数に基づいて、貯留部71内のインクの濃度を求める。
【0068】
一方、インクの残量がゼロである場合は、前記インクの濃度を求める処理は実行しない。
そして、表示部107に、貯留部71内のインクの有無、インクの濃度等を表示する。この場合、インクの濃度を、例えば、高濃度、正常濃度(標準濃度)、低濃度等のように、段階的に表示してもよく、また、連続的に表示してもよい。
【0069】
これにより、ユーザーは、インクカートリッジ1内にインクがまだ有ること、そのインクの濃度、インクカートリッジ1内のインクがほぼ完全に無くなった(使い尽くされた)こと等を正確に知ることができる。
以上説明したように、本実施形態の液体検出装置によれば、センサ8の薄肉部812の振動を、確実に凹部811内に閉じ込めることができ(ほぼ薄肉部812のみを振動させることができ)、振動の漏れを防止することができるので、薄肉部812の共振周波数や共振時の挿入損失を精度良く検出することができ、これによって、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロとなったことと、インクの粘度や濃度とを正確に検出することができる。
【0070】
また、インクの残量がほぼゼロになるまでは、センサ8の薄肉部812にはインクが接触しており、インクの残量がほぼゼロになると、薄肉部812に接触しているインクがその薄肉部812から離間するが、センサ8(圧電体81)は、その薄肉部812の凹部811側が、下方を向き、流路73に露出するように設けられているので、インクの残量がほぼゼロになると、まず、凹部811内のインクの液面が下がり、薄肉部812に接触しているインクが、その薄肉部812から確実に離間する。そして、薄肉部812からインクが離間すると、薄肉部812の共振周波数や共振時の挿入損失が大幅に変化し、これにより、インクの残量がほぼゼロとなったことを、正確かつ確実に検出することができる。
【0071】
さらに、センサ8の凹部811の下方に配置されている流路73は、ほぼコの字状に形成されており、その折り返し部731に、圧電体81の凹部811が位置しているので、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロになったときに、薄肉部812の下方にインクが溜まっていて、そのインクが薄肉部812に接触するのを防止することができる。これによって、インクの残量がほぼゼロとなったことを、より正確かつ確実に検出することができる。また、流路73がほぼコの字状に形成されているので、インクが円滑に流れる。
【0072】
また、圧電体81には凹部811が形成されており、薄肉部812を所定の厚さにしつつ、厚肉部813により、全体の強度(剛性)を高くすることができる。
また、センサ8への配線は、圧電体81の上側の電極82および83のみになされ、下側の電極84へはなされないので、流路73内に配線を引き回す必要がなく、実装を容易に行うことができる。
【0073】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態の液体検出装置は、電極(共通電極)84が省略されており、インク(液体)が、導電性を有していて、その共通電極を兼ねることが異なっていること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0074】
本実施形態では、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロの場合は、共通電極がない場合と等価になり、発振回路111を作動させても、センサ8の薄肉部812は、振動(共振)しない。したがって、制御部105は、発振回路111を作動させた際に、センサ8の薄肉部812が振動(共振)しないこと(振動が停止したこと)を検出(検知)することで、貯留部71内のインクの残量がほぼゼロであると判別する。
この第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、第2実施形態は、後述する第3実施形態にも適用することができる。
【0075】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図11は、第3実施形態における液体検出装置およびインクカートリッジの主要部を示す断面図(図6に相当する図)である。なお、以下の説明では、図11において、上下方向を鉛直方向、左右方向を水平方向とする。
【0076】
図11に示すように、第3実施形態では、流路73は、カートリッジ本体2の底部20に、そのコの字状の部分の一部を除き、略鉛直方向に沿って形成されている。
また、センサ8の圧電体81は、流路73の側方(図11中右側)に位置し、その薄肉部812の凹部811側が流路73に露出している。すなわち、圧電体81の薄肉部812の凹部811側が略水平方向(図11中左側)を向き、凹部811により流路73の一部が構成されている。なお、流路73のコの字状の部分は、圧電体81の図11中左側に位置している。
【0077】
この第3実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
そして、第3実施形態では、流路73、特に、凹部811からの気泡の排出性を向上させることができる。
以上、本発明の液体検出装置、インクカートリッジおよび印刷装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0078】
また、前述した実施形態では、貯留部と排出口と流路とで構成されたインク供給系がインクカートリッジに1つ設けられているものについて説明したが、インク供給系がインクカートリッジに複数設けられていてもよい。例えば、インクカートリッジにマゼンタ用とシアン用とイエロー用の3つのインク供給系を設けたもの、また、インクカートリッジにマゼンタ用とシアン用とイエロー用とブラック用の4つのインク供給系を設けたものであっても本発明を適用することができるのは言うまでもない。
また、前述した実施形態では、液体として、インクを例に説明したが、本発明では、液体は、インクには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の液体検出装置を備える印刷装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す印刷装置に備えられたキャリッジの斜視図である。
【図3】図2に示すキャリッジの側面図である。
【図4】図2に示すキャリッジの平面図である。
【図5】図1に示す印刷装置(キャリッジ)に装填されるインクカートリッジを示す斜視図である。
【図6】図5中のA−A線断面図である。
【図7】図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置のセンサおよびその周辺部を示す断面図(図6の部分拡大図)である。
【図8】図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置のセンサを示す平面図である。
【図9】図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置の主要回路部を示すブロック図である。
【図10】図1に示す印刷装置に備えられた液体検出装置におけるセンサの薄肉部の振動の周波数と、挿入損失との関係を示すグラフである。
【図11】第3実施形態における液体検出装置およびインクカートリッジの主要部を示す断面図(図6に相当する図)である。
【符号の説明】
【0080】
1……インクカートリッジ 2……カートリッジ本体 20……底部 201……凸部 21……下面 22……凸部 221……凹部 23……弁機構 231……弁体 232……コイルバネ 233……シール部材 24……係合片 241……第1の凸部 242……第2の凸部 25、26……縁部 27……ガイド部 28……凹部 29……基板設置部 291……上面 31、32……溝 33、34……リブ 36……中空針 361……孔 37……第2の凹部 38……第1の凹部 39……第3の凹部(ガイド溝) 40……係合ピン 41……端子 51……封止部材 6……回路基板 62……端子 71……貯留部 711……底面 712……底壁 72……排出口 73……流路 731……折り返し部 8……センサ 81……圧電体 811……凹部 812……薄肉部 813……厚肉部 82〜84……電極 821、831……端子 100……印刷装置 101……キャリッジ 102……ガイド軸 103……ベルト 104……キャリッジモータ 105……制御部 106……インクジェットヘッド 107……表示部 108……記憶部 111……発振回路 112……主回路 113……第1の計測回路 114……第2の計測回路 P……記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留される貯留部と、前記貯留部から液体を排出するための排出口と、前記貯留部から前記排出口へ前記液体を導く流路とを備えた液体容器に用いられ、前記貯留部内の液体の有無を検出する液体検出装置であって、
中央部に凹部が形成され、該中央部が振動子として機能する薄肉部となっており、該薄肉部の前記凹部側が前記流路に露出するように設けられた圧電体と、
前記圧電体の薄肉部を共振させる共振手段と、
前記圧電体の薄肉部の共振周波数および/または共振時の挿入損失を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別する判別手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求める液体条件取得手段とを有し、
前記圧電体の薄肉部の振動モードは、厚みすべりモードまたは厚みモードであることを特徴とする液体検出装置。
【請求項2】
前記圧電体の薄肉部の前記凹部側が鉛直方向下側を向き、前記凹部により前記流路の一部が構成されている請求項1に記載の液体検出装置。
【請求項3】
前記圧電体の薄肉部の前記凹部側が略水平方向を向き、前記凹部により前記流路の一部が構成されている請求項1に記載の液体検出装置。
【請求項4】
前記流路がほぼコの字状に形成されており、その折り返し部に、前記凹部が位置している請求項1ないし3のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項5】
前記共振手段は、前記圧電体の薄肉部を一部に含む発振回路を有し、該発振回路を作動させて、前記圧電体の薄肉部を共振させるよう構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項6】
前記圧電体は、水晶で構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項7】
前記圧電体の薄肉部の前記凹部と反対側の面上に設けられ、互いに離間した入力電極および出力電極と、前記圧電体の薄肉部の前記凹部側の面上に設けられた共通電極とを有し、
前記共振手段および前記検出手段の作動により、前記入力電圧と前記共通電極との間に電圧を印加しつつ、前記出力電極と前記共通電極との間の電圧を検出し、その検出結果に基づいて前記圧電体の薄肉部の共振周波数を検出する請求項1ないし6のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項8】
前記液体は、導電性を有していて、前記共通電極を兼ねる請求項7に記載の液体検出装置。
【請求項9】
前記判別手段により、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別し、その結果、前記貯留部内の液体残量がゼロではないと判別された場合に、前記液体条件取得手段により、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求めるよう構成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項10】
前記判別手段は、前記検出手段による前記挿入損失の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別するよう構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項11】
前記液体条件取得手段は、前記検出手段による前記共振周波数の検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求めるよう構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項12】
前記液体容器は、前記貯留部にインクが貯留されたインクカートリッジである請求項1ないし11のいずれかに記載の液体検出装置。
【請求項13】
記録媒体に印刷を行う印刷装置に装填された状態で用いられ、インクが充填されたインクカートリッジであって、
液体としてインクが貯留される貯留部と、
前記貯留部からインクを排出するための排出口と、
前記貯留部から前記排出口へ前記インクを導く流路と、
中央部に凹部が形成され、該中央部が振動子として機能する薄肉部となっており、該薄肉部の前記凹部側が前記流路に露出するように設けられた圧電体とを有し、
前記圧電体の薄肉部の振動モードは、厚みすべりモードまたは厚みモードであり、
前記印刷装置に装填された状態で、前記圧電体の薄肉部を共振させ、前記圧電体の薄肉部の共振周波数および/または共振時の挿入損失を検出し、その検出結果に基づいて、前記貯留部内の液体残量がほぼゼロか否かを判別し、前記貯留部内の液体の粘度または濃度を求めることが可能なように構成されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項14】
インクが充填されたインクカートリッジが装填された状態でそのインクを用いて記録媒体に印刷を行う印刷装置であって、
請求項1ないし11のいずれかに記載の液体検出装置を備え、前記液体容器は、前記貯留部にインクが貯留されたインクカートリッジであることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−137159(P2008−137159A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322602(P2006−322602)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】