液体検知装置
【課題】構成が簡単であり、容器内の液存在状態を、容器外部からより短時間で作業性良く判別できる液体検知装置を提供する。
【解決手段】液体検知装置1は、液体Lを収容した容器190を被測定系として、該容器190の側壁部200外面に定められた測定実施位置に取り付けて使用され、容器190の側壁面を介して測定用超音波ビームを入力する超音波トランスジューサ2を有する。超音波トランスジューサ2は、被測定系への測定用超音波ビームの入力を遮断したときの、該被測定系からの残響情報を検出する残響検出手段としても機能する。そして、減衰残響振動波形を包絡線検波することで、その振幅の減衰挙動をより簡単かつ正確に把握でき、液体の有無判定をより正確に行なうことができる。
【解決手段】液体検知装置1は、液体Lを収容した容器190を被測定系として、該容器190の側壁部200外面に定められた測定実施位置に取り付けて使用され、容器190の側壁面を介して測定用超音波ビームを入力する超音波トランスジューサ2を有する。超音波トランスジューサ2は、被測定系への測定用超音波ビームの入力を遮断したときの、該被測定系からの残響情報を検出する残響検出手段としても機能する。そして、減衰残響振動波形を包絡線検波することで、その振幅の減衰挙動をより簡単かつ正確に把握でき、液体の有無判定をより正確に行なうことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−53504号公報
【特許文献2】特開2002−90210号公報
【特許文献3】特開平7−181072号公報
【0003】
従来、タンク内面に超音波の送信面ないし受信面を露出させる形で超音波送信部及び受信部を配置し、超音波ビームが液面位置で反射して戻ってくるまでの時間を計測することにより液面高さを知ることができるようにした液面計が知られている(特許文献1,2)。しかし、この方式の液面計は容器内部に超音波送信部及び受信部を露出配置しなければならず、構造が複雑化する上、液面計を有さない容器へは適用できない難点がある。一方、対象となる容器の外側から非接触で液面を検知する方式として、容器壁を透過させる形で送信された超音波を反対側の壁(正反対側の鋼板材の壁で媒質との境界)で反射させ、再び容器壁を透過してトランスジューサまで戻ってくる反射波を検出し、液の有無を判断する方式が知られている(例えば特許文献3)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記透過型の液面検出方式には、超音波を送信後、反射波が戻ってくるまでの伝播遅延時間があり、反射経路に沿った超音波パルスの伝播距離が長く信号のロスが大きい欠点がある。信号のロスが大きいということは、結局のところ、駆動直後に容器に伝播する機械的振動ノイズや残響ノイズ、温度・経時変化によるトランスジューサの特性劣化(特に、ダンパー特性の劣化)、トランスジューサと容器との機械的な結合状態などの影響を受けやすいことを意味し、感度低下を招きやすいことは必至である。特に、容器壁部を透過する音波の信号レベル低下や、取り付け状態によるノイズの影響をとりわけ受けやすく、液の有無を判定する受信信号を検出する際のS/Nが悪化する問題がある。
【0005】
結局、上記透過型方式では、S/N比の低下を防止するために、フィルタリングなどの複雑な信号処理や制御が必要となり、回路やソフトウェアの複雑化ひいては高コスト化が避け難い。また、検出周波数の決定や、回路ゲインあるいはコンパレータレベル等の設定・調整にも長時間を要し、液面判定の迅速性も損なわれやすくなる。
【0006】
本発明の課題は、構成が簡単であり、容器内の液存在状態を、容器外部からより短時間で作業性良く判別できる液体検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の液体検知装置は、
液体を収容した容器を被測定系として、該容器の壁部外面に定められた測定実施位置に取り付けて使用され、被測定系に測定用超音波ビームを予め定められた時間励振入力した後、当該測定用超音波ビームの入力を遮断する超音波出力部と、
測定実施位置に取り付けて使用され、測定用超音波ビームの入力遮断後の減衰残響振動波形を検出する残響検出手段と、
減衰残響振動波形を包絡線検波する包絡線検波手段と、
該包絡線検波波形に反映される減衰残響振動の減衰特性の差異に基づいて容器内の測定実施位置における液体の有無を判定する液体有無判定手段と、
該判定結果を出力する液体有無判定結果出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記本発明の液体検知装置によると、液体を収容した容器を被測定系として、容器の壁部外側に取り付けた超音波出力部からの測定用超音波ビームにより音響励振し、測定用超音波ビームの入力遮断後の被測定系からの減衰残響振動波形に基づいて容器内の測定実施位置における液体の存在状態を検出する。すなわち、従来のごとく液体中へ伝播する励振音波の反射情報を検出するのではなく、駆動直後の被測定系からの残響情報を自由振動波形の形で検出するので、音波が媒質中を伝播する遅延時間が発生せず検出時間が早い。また、従来の透過型検出方式では、検知情報となる反射波に対し駆動直後の残響がノイズとして作用し、特に容器の寸法が小さい場合や、音速が大きい液体の場合、残響ノイズによるS/N比低下が避け難かった。しかし、この発明では、その残響情報がノイズではなく信号(シグナル)として逆に利用されるのであり、しかも、残響情報が検出される際には音響励振のための入力波は遮断された後なので、これがノイズ要因となることは原理的にありえない。従って、極めて安定で高感度な液体検出が可能となり、信頼性が大きく向上する。また、超音波ビームは指向性が高く、波形拡散によるロスも小さいので、より高感度な液体検出が可能である。
【0009】
具体的には、液体の非存在部では容器壁部の内側が空隙となり、壁部内面を境とした音響インピーダンス差が非常に大きくなる。その結果、容器壁部を外から音響励振した場合、容器壁部は、壁部内に反射して戻る音波が主体的となるため内側の空間からは音響的に分離され、固体で構成された壁部の固有振動に支配された形で振動継続するため振動の減衰が生じにくい。この傾向は、容器側が内部摩擦の小さい金属にて構成されている場合に特に著しい。しかし、液体の存在部では、容器壁部の内側に液体が存在するため、上記の音響インピーダンス差は縮小し、壁部内面を経て内部摩擦の大きい液体内に漏れこむ音波比率が増加して振動減衰は著しくなる。従って、検出される減衰残響振動の減衰特性の差異に基づいて容器内の測定実施位置における液体の有無を容易に判定することができるのである。そして、減衰残響振動波形を包絡線検波することで、その振幅の減衰挙動をより簡単かつ正確に把握でき、液体の有無判定をより正確に行なうことができる。
【0010】
測定適用対象となる容器が金属タンク(特に鋼鉄製など、内部音響損失の比較的小さい材料で構成されたもの)である場合は、空の状態で残響が減衰し難く、液体を収容した状態との残響特性にも大きな差を生じ易いので、液体検出の精度が高い利点がある。この場合、超音波出力部は該金属タンクの金属壁部に取り付けられ、当該金属壁部の厚さ方向に測定用超音波ビームを出力するように構成しておくとよい。
【0011】
液の存在部と液の非存在部との間で、減衰残響振動の減衰特性に波形の上で顕著な差が存在すれば、その差を数値化することにより液体の有無に係る判定を容易に実行することが可能となる。振動波形の減衰挙動を数値化する手法は種々存在し、そのいずれを用いてもよい。
【0012】
例えば、液体有無判定手段は、測定用超音波ビームの入力を遮断後に予め定められ時間を経過したときの、包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを取得し、当該減衰レベルが予め定められた閾値未満の場合に液体有り、同じく閾値を超える場合に液体無しと判定するものとして構成できる。この方式によると、励振を遮断した後の経過時間を固定化して、包絡線検波波形のレベルを一律に測定することで、少ない液の存在の有無に係る判定を容易に行なうことができる。
【0013】
他方、液体有無判定手段は、包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを監視するとともに、測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間を計測する減衰時間計測手段を有し、当該減衰時間が予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく閾値未満となる場合に液体有りと判定するものとして構成してもよい。この方式では、包絡線検波波形の時間変化を監視する必要が有り、そのサンプリング回数は増大するが、ノイズ等による突発的なパラメータ値の変化を誤差として容易に識別できるので、判定精度を高めることができる利点がある。
【0014】
包絡線検波手段は、残響検出手段からの減衰残響振動波形を増幅する波形増幅部と、増幅された減衰残響振動波形を半波整流する半波整流部と、該半波整流された減衰残響振動波形を包絡線検波部とを有する検波回路にて構成することができる。波形増幅出力を半波整流することで、本来の減衰振動波形の片側のピーク点を選択的に抽出することができ、これを包絡線検波することで、減衰判定の容易な単調減少型(極性反転すれば単調増加型)の波形減衰曲線を得ることができる。
【0015】
また、検波回路は、波形増幅部からの増幅出力波形からバイアス直流成分を除去するバイアス直流成分除去部を有するものとして構成でき、半波整流部は、該バイアス直流成分を除去後の増幅入力波形を半波整流するものとして構成できる。バイアス直流成分は、増幅特性を改善するために波形増幅部側で意図的に付加されるものと、定常ノイズやドリフトの影響により不可避的に重畳されるものとの双方を概念として含む。いずれにしても、バイアス直流成分を除去することで、増幅出力波形の振幅中心を確定することができ、半波整流時における切り出し振幅の誤差を低減することができる。
【0016】
また、波形増幅部の増幅出力を測定用超音波ビームの励振周波数に同調させる波形同調部を組み込むこともできる。これにより、測定用超音波ビームの励振周波数に対応した必要な残響波形を抽出することができ、ノイズ振動や高調波による誤差の影響を低減することができる。
【0017】
また、波形増幅部から分岐入力される増幅出力を積分演算する積分部と、該積分出力と検波回路からの包絡線検波出力との比較に基づいて、分岐減衰残響振動の減衰特性を反映した減衰反映信号を出力する積分比較演算部とを設けることができる。液体有無判定手段は該減衰反映信号に基づいて液体の有無を判定するものとする。このように構成すると、増幅出力に温特や定常ノイズ等に由来した波形ドリフトが生じている場合、その積分演算波形との比較演算(差分を概念として含む)を行なうことでドリフト成分をキャンセルでき、その影響を簡単に低減できる。積分比較演算部は、減衰反映信号として積分出力と包絡線検波出力との二値比較結果を出力するものとして構成すれば、液体の有無を判定する演算をより簡便に行なうことができる。
【0018】
本発明においては、前述の金属タンクが液体として液化ガス(液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)などの燃料用液化ガス、液化炭酸ガス、液化アンモニアガス、液体窒素などのボンベ、タンク、コンテナなどが主な用途である)を収容するものである場合、超音波を励振用測定プローブとして採用することの波及効果が高い。すなわち、液化ガスの場合密度が低く、タンク壁部とタンク内部との音響インピーダンス差が液有り状態と液無し状態とでそれほど大きくない。この場合、可聴帯音源を励振用測定プローブとして用いると残響挙動にも差を生じにくく、液体存在状態に係る正確な知見が得にくくなる。しかし、超音波ビームを用いれば液体存在状態に応じて残響挙動に大きな差を生じ、正確な液体検出が可能となる。
【0019】
本発明においては、超音波ビームによる励振を遮断した後の残響を検出するので、励振期間と残響検出期間とが時系列的に順次行なわれる形になる。従って、超音波出力部は、被測定系への測定用超音波ビームの出力が可能とされるとともに、被測定系からの残響超音波の受信も可能な超音波トランスジューサとして、残響検出手段に兼用されるものとして構成することができる。このようにすると、1個の超音波トランスジューサにより超音波送信部と残響検出部とを兼用でき、装置のコンパクト化及び低コスト化に寄与する。
【0020】
本発明の液体検出装置の原理においては、容器壁部に対する音響励振の周波数が容器壁部の固有振動数(倍音振動を含む)から大きく隔たっていると、液の非存在部であっても残響振動の減衰が著しくなるので、液存在部との間で減衰特性に差異を生じにくくなり、液体の有無の判定精度が低下することにつながる。従って、測定用超音波ビームの周波数については上記固有振動数に対応した値(例えば、固有振動数を中心とする±10%以内の所定幅に属する近傍値:望ましくは一致した値)に設定されていることが望ましい。該固有振動数は、容器壁部の材質や厚みにより異なる値を示すので、測定用超音波ビームの周波数も該材質や厚みに応じて最適の値に設定することが望ましいといえる。
【0021】
いずれにせよ、測定用超音波ビームの周波数を最適化するには、容器上にて液体無しとなることが予め知れている測定実施位置を選択して種々の周波数にて減衰残響振動の計測を行ない、測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間(残響時間)が最大化されるように周波数を選択するとよい。例えば、容器側壁部の上部や、確実に液が存在しない容器最上面部(天面部)に測定実施位置を定めることで、液無し状態で残響時間が最大となる条件を容易に決定でき、液の有無をより確実に判定できるようになる。
【0022】
測定対象となる容器が常に同じであれば、上記周波数は、一度最適値に設定してしまえば超音波トランスジューサの経時劣化等に伴う微調整を除けば、以降は同じ周波数での測定を継続すればよい。しかし、1つの検出装置で、容器壁部の材質や厚みの異なる任意の容器での測定に対応できるようにするためには、測定用超音波ビームの周波数を可変に構成し、測定対象容器が変更されるたびに、個々の容器に最適に周波数に調整しつつ用いることが必要である。すなわち、測定用超音波ビームの周波数は、測定対象となる容器に応じて可変設定可能としておくことが望ましい。
【0023】
本発明の液体検知装置により、該容器内の液体深さ方向において互いに異なる測定実施位置にて残響情報を検出すれば、個々の測定実施位置における残響情報の検出結果に基づいて、容器内の液面位置を反映した液面位置反映情報を出力することができる。この場合、容器壁部に対する音響励振手段及び残響検出手段の取り付け位置を容器深さ方向に順次変えながら測定を行ない、その検出状態が液有り状態(ないし液無し状態)から液無し状態(ないし液有り状態)に変化する位置を読み取ることで、液面位置を知ることができる。例えば、容器側壁部に対し複数の音響励振手段及び残響検出手段を容器深さ方向に所定の間隔で複数組取り付け、どの位置の残響検出手段までが液有り状態となっているかに応じて液面位置を知ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る液体検知装置の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、測定対象となる容器の一例を示すものであり、LPG又はLNGの金属タンク190として構成されている。金属タンク190は鋼鉄製であり、円筒状の側壁部200の上下に、底面部202及び天面部203をそれぞれ溶接部201により接合した構造を有する。側壁部200の壁厚はほぼ一様であるが、溶接部201の位置では溶接ビードの形成により局所的に厚みが増した形となっている。底面部202及び天面部203は、側壁部200と同一材質及び厚みの鋼板をカップ状にプレス成形したものであり、いずれも外周縁部が側壁部200との溶接部201に向けて滑らかにつながる湾曲面形態とされている。また、天面部203の上部中央には圧力制御弁が組み込まれたガス取出部203Vが形成されている。該金属タンク190に上記LPGないしLNGからなる液体Lが収容され、被測定系を構成する。
【0025】
そして、液体検知装置1は、上記の金属タンク190内の液体Lの存在状態、具体的には液面LVの位置を、タンク外から測定できるように構成されている。液体検知装置1は、具体的には、該容器190の側壁部200の外面に対し、液深さ方向の任意位置に押し当て可能な(つまり、ユーザーの欲する任意の測定実施位置に取り付け可能な)超音波トランスジューサ2を有している。該超音波トランスジューサ2は、容器190の側壁面200を介して被測定系(液体Lを収容した金属タンク190)を音響励振する音響励振手段と、該音響励振手段による被測定系への音響励振入力を遮断したときの、該被測定系からの残響情報を検出する残響検出手段とを兼ねる。具体的には、超音波トランスジューサ2は、被測定系を励振する励振用測定プローブとして所定の周波数の測定用超音波ビームSWを金属側壁部200の厚さ方向に出力する超音波出力部の機能と、その測定用超音波ビームSWの出力を遮断したときの被測定系からの残響超音波を受信する残響超音波受信部の機能とを合わせ有するものである。
【0026】
図2は、液体検知装置1の構成例を、その電気的構成とともに示す概念図である。該液体検知装置1は、ユーザーが手で保持可能な樹脂等で構成された筐体3を有し、その先端面に超音波トランスジューサ2がはめ込まれている。超音波放出面となる超音波トランスジューサ2の前端面は、筐体3の前端に形成された開口内に位置し、その表面に密着する形で音響インピーダンス整合層2Pが取り付けられている。音響インピーダンス整合層2Pは、超音波トランスジューサ2(圧電セラミック)と容器側壁部200(鋼鉄)との中間(望ましくは両者の幾何学平均値)の音響インピーダンスを有するとともに、容器側壁部200に押し付けられたときに追従変形してその外面に密着できる柔軟弾性材料(例えば、シリコーン樹脂)にて構成されている。
【0027】
超音波トランスジューサ2は、駆動回路101からの駆動電圧の印加により超音波ビームを送出する超音波送出機能と、残響超音波の受信により電気信号(受信信号)を信号処理回路103に出力する超音波受信機能とを複合して備える。具体的には、板厚方向に分極処理された圧電セラミック振動板21と、該圧電セラミック振動板21の各主表面を覆う形で該圧電セラミック振動板21を挟んで対向形成された電極対1e,1eとを備える。この電極対1e,1eは、超音波ビームの送信駆動時には該圧電セラミック振動板21を超音波振動させるための駆動電圧が印加される駆動電極となり、残響超音波の受信時には圧電セラミック振動板21の振動に伴う電気信号を出力する出力電極となる。これら電極対1e,1eと、駆動回路101及び信号処理回路103との接続切替は切替スイッチ101sにより行なわれる。
【0028】
駆動回路101は、出力周波数が可変に構成された発振回路(ここでは、VCO(Voltage Controlled Oscillator)101bと、その発振回路101bの出力を増幅して圧電セラミック振動板21へ駆動信号として出力する主回路(アンプ)101aとを有する。発振回路101bの出力周波数は、周波数設定部102から入力される周波数指示電圧に応じて変更される。
【0029】
図18は、駆動回路101の構成例を示すものであり、マイコン100によってデジタル情報として与えられる周波数指示電圧値がD/A出力ポートからアナログ指示電圧としてVCO10bの指示電圧入力端子SCKに入力される。VCO10bは出力端子OUから、当該指示電圧に一義的に対応した周波数の方形波パルス信号からなる基本信号(A)を出力する。一方、マイコン100からは、バースト波の駆動持続時間を規定する駆動時間パルス信号(B)が出力され、上記基本信号(A)とともに主回路101aに入力される。主回路101aでは、上記2つの出力(A,B)が変調制御用ゲートIC51に入力され、駆動時間パルス信号を上記基本信号で変調したバースト駆動信号が生成される。バースト駆動信号は、バッファ回路(シンク電流確保のため、並列接続された複数のバッファIC(ここでは、論理積ゲートで代用している)で構成している:出力側にはプルダウン抵抗R51が挿入されている)IC52,IC53を介して、信号Cとして駆動トランジスタTr51の制御端子(ここでは、パワーMOSFETのゲート端子)に入力される。
【0030】
次に、主回路101aは、一端が駆動電源(VB)に接続さるとともに、他端がプルダウン抵抗R52を介して接地された駆動コイルL51を有する。そして、それら駆動コイルL51とプルダウン抵抗R52との接続点からは、超音波トランスジューサ2の駆動ラインが分岐しており、該ライン上には調整抵抗R53と、並列の双方向ダイオード対D51,D52からなるインピーダンス変換用のブートストラップ回路51が設けられている。そして、上記接続点から別に分岐する駆動制御ライン上に上記の駆動トランジスタTr51が設けられている。バースト駆動信号(C)がLレベルのとき、駆動トランジスタTr51は遮断状態となり、駆動コイルL51には電磁エネルギーが蓄積される。そして、バースト駆動信号(C)がHレベルに変化すると駆動トランジスタTr51は導通状態となり、駆動コイルL51に蓄積された電磁エネルギーが誘導電流となって放出され、駆動ラインを介して超音波トランスジューサ2に供給される。
【0031】
図3は信号処理回路103の構成例を示すもので、圧電セラミック振動板21からの減衰振動波形を増幅するアンプ103a、増幅された減衰振動波形を包絡線検波する検波回路103b、その検波出力を積分する積分回路103c、該積分回路からの出力を閾値Vthと比較して液有無に関する判定信号を出力する判定回路103dとを有する。検波回路103bは種々の構成が可能であるが、本実施形態では、入力側にて不要なバイアス直流成分(例えば、アンプ103を単極性増幅とする場合に、アンプ入力信号に作為的に重畳される増幅用バイアス電流である)を除去するバイアスカットコンデンサC1と、そのバイアスカット後の交流入力波形を半波整流する整流用ダイオードD1と、半波整流後の波形をリップル除去して包絡線検波波形とするリップル除去部とを有している。リップル除去部は、抵抗R1とコンデンサC2とで構成された簡易ローパスフィルタ回路であり、リップルを十分除去しつつも半波整流波形のピーク点を包絡線結合した減衰波形は損なわれないように時定数が設定される。
【0032】
また、積分回路103cは、抵抗R2とコンデンサC3とで構成されているが、コンデンサC3の容量は、規定のタイミングtmまでの減衰波形入力に伴い、判定に支障のない程度まで出力電圧が上昇する程度に上記のリップル除去部よりも大きく設定されている。判定回路は、この積分出力電圧を、閾電圧Vth(抵抗ハーフブリッジ(R3,R4)による電源電圧Vccの抵抗分圧電圧として与えられている)と比較して、その比較結果を二値出力するコンパレータIC1にて構成されている。そして、図4に示すように、コンパレータIC1の出力レベルにより液有りと液無しとが判別可能となる。この実施形態では、積分出力電圧が閾電圧Vthよりも大きい場合にはコンパレータIC1の出力が液無しを示すHレベルとなり、逆の場合に液有りを示すLレベルとなる。
【0033】
図2に戻り、上記の駆動回路101、切替スイッチ101s、周波数設定部102、信号処理回路103は、これらの動作シーケンス制御を司るマイコン100に接続されている。また、該マイコン100には入力部105と表示部104も接続されている。入力部105は押しボタンスイッチやキーボードなどで構成され、液体検知の開始トリガー操作や、周波数設定処理に使用される。また、表示部104は液体有無の検出判定結果を出力するものであり、例えばLED点灯部として構成されている。図1に示すごとく、本実施形態では、液無しの場合に点灯する第一LED104a(例えば、赤色)と、液有りの場合に点灯する第二LED104b(例えば、緑色)とで構成されているが、これを1つのLEDの点灯状態で識別させることも可能である(例えば、液有り=連続点灯、液無し=点滅点灯)。また、測定モード表示(例えは、液検出モードと周波数設定処理モード)や操作誘導情報の出力等も可能とするために、表示部104を液晶ディスプレイ等の表示パネルにて構成することも可能である。
【0034】
以下、液体検知装置1の動作について説明する。図1に示すように、まず、超音波トランスジューサ2上の音響インピーダンス整合層2Pの表面(以下、検知面という)を、容器190上にて液体無しとなることが予め知れている測定実施位置PR(ここでは容器頂面部203の上面に設定されている)に押し付けて周波数設定を行なう。この設定時の動作の詳細は液体有無検知処理と関連が深いので後述する。
【0035】
周波数設定が完了すれば、容器190の側壁部200の外面に対し、所望の測定実施位置に検知面を押し当て、図2の入力部105から測定開始入力を行なう(例えば、入力部105に含まれる「測定」ボタンを押すなど)。すると、マイコン100は測定駆動プログラムを起動し、測定処理を開始する。図5は、その処理の流れを示すフローチャートである。まず、S1にて、超音波トランスジューサ2を駆動回路104に接続する駆動接続状態に切替スイッチ101Sが切り替わり、駆動回路104は設定された周波数にて駆動交流電圧を超音波トランスジューサ2に印加する。これにより、超音波トランスジューサ2から測定用超音波ビームSWが上記の測定実施位置にて側壁部200に向け出力され、これを音響励振する。
【0036】
図7Aに示すように、この駆動交流電圧の印加はパルス状のバースト駆動入力波形にて行なわれ、例えば10〜50μs程度に定められた印加パルス期間tnが完了すれば強制的に遮断される。そして、その遮断とともに切替スイッチ101Sは、超音波トランスジューサ2を信号処理回路103に接続する信号検出接続状態に切り替わり、励振遮断後の容器190からの残響振動を超音波トランスジューサ2により検出する。実際には、切替スイッチ101Sの切替動作に要する期間等を勘案し、励振遮断後一定の遅延時間Δt経過してから残響振動の検出が開始される。
【0037】
図6は、その残響振動の検出波形の一例を示すもので、液体Lの非存在部(液無し部)では容器190側壁部200の内側が空隙となり、壁部内面を境とした音響インピーダンス差が非常に大きくなる。側壁部200に入力された測定用超音波ビームは、壁部内面にてほぼ全反射して金属製の側壁部200内に戻り、側壁部200の材質及び厚さにて決まる固有振動に支配された形で振動継続するため振動の減衰が生じにくい。その結果、図6の上に示すように、残響の尾引きが非常に長くなる。しかし、液体Lの存在部(液有り部)では、側壁部200の内側に液体Lが存在するため、上記の音響インピーダンス差は縮小し、側壁部200を透過して内部摩擦の大きい液体L内に漏れこむ音波比率が増加するので振動減衰は著しくなる。
【0038】
そこで、液有り部と液無し部との間で、図6のごとく生ずる波形の差を識別するのに好都合な数値パラメータを上記減衰残響振動波形から抽出し、パラメータ値を閾値と比較することで、液体Lの有無に係る判定を容易に実行できる。例えば、図7A及び図7Bに示すように、測定用超音波ビームSWの入力を遮断後に予め定められ時間tsを経過したときの、該減衰残響振動の減衰レベルを反映したパラメータを減衰レベル情報として取得し、図7Aのごとく当該パラメータに反映された減衰レベルが予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく図7Bに示すように閾値未満の場合に液体有り、と判定することができる。
【0039】
図2の信号処理回路では、図8に示すごとく、減衰振動波形をアンプ103aにて増幅し(ステップ1)、検波回路103bにより半波整流し(ステップ2)、さらにその半波整流波形を包絡線検波し(ステップ3)、その包絡線検波波形を積分回路103cにより、図7A及び図7Bの期間tsに渡って積分演算する(ステップ4)。そして、図9に示すように、その期間tsが終了するタイミング(遮断後Δtを経過したタイミングを時間起点としてtsだけ計測するようにしてもよいし、バースト駆動開始時のタイミングを時間起点として、図7Aのtn+Δt+tsに相当するtmだけ時間計測するようにしてもよい)にて、その積分出力電圧を閾電圧Vthと比較するコンパレータIC1の出力(液面判定信号)を読み取る(図5:S3)。液有り部では波形減衰が速いので積分出力の増加が鈍くなり、逆に液無し部では波形減衰が遅いので積分出力は素早く増加する。従って、上記時刻での積分出力をサンプリングしたとき、図4に示すように、該液面判定信号がHレベルであれば液無し出力となり(図5:S4→S5)、Lレベルであれば液有り出力となる(図5:S4→S6)。
【0040】
表示部104は、液面判定信号を受けて対応する表示状態となる。例えば、図1に示すように、Hレベルであれば液無しを示す第一LED104a(例えば、赤色)が点灯し、Lレベルであれば液有りを示す第二LED104b(例えば、緑色)が点灯する。これにより、装置1の検知面を押し当てた位置、すなわち測定実施位置に液体が存在しているか否かがわかる。そこで、側壁部200上にて測定実施位置を上側から下方向に変えながら上記測定を順次行なったとき、表示部104が液無しを示す表示状態から液有りを示す表示状態に変化したときの位置を液面位置として特定することができる。また、逆に、測定実施位置を下側から上方向に変えながら上記測定を順次行なったとき、表示部104が液有りを示す表示状態から液無しを示す表示状態に変化したときの位置を液面位置として特定することができる。
【0041】
なお、図9に示すように、上記積分出力(減衰残響振動の減衰レベル)が予め定められた参照レベルVRに到達するまでの減衰時間tdをマイコン100にて計測し、当該減衰時間tdが予め定められた閾値を超える場合に液体有り、同じく閾値未満となる場合に液体無しと判定するように処理を行なうこともできる。
【0042】
前述の周波数設定処理については、図1のように、容器頂面部203など、液体無しとなることが予め知れている測定実施位置PRに検知面を押し当て、周波数設定処理モードにて液体検知装置1を動作させる。図3において液体検知装置1は、低周波数側もしくは高周波数側から周波数を段階的にスイープしながら駆動交流電圧をバースト出力し、その遮断後にて時間tsだけ経過したときの前述の積分出力値を、A/D変換器IC2を介して直接モニタリングする。そして、その積分出力値が最大となる周波数(つまり、図7Aに示すように、減衰の尾引きが最も大きくなる周波数)を読み取って、測定用周波数として設定する。
【0043】
なお、包絡線検波波形の積分値を用いることで、突発的なノイズ等により波形が乱れた場合でも判定誤差を低く留めることが可能である。しかし、ノイズの影響がそれほど大きくない場合には、積分値を用いず、図10に示すごとく、規定の判定タイミング(tmないしts)での包絡線検波波形のレベルを直接サンプリングして、そのレベルを閾値Vthと比較してもよい(この場合、図3において積分回路103cは省略され、検波回路103bの出力が判定回路103dに直接入力される)。また、包絡線検波波形のレベルが基準値VRに到達するまでの時間(tdないしtd’)をマイコン100にて計測し、当該時間が予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく閾値未満となる場合に液体有りと判定するように処理を行なうこともできる。
【0044】
次に、図11は、図3をさらに発展させた信号処理回路103の例を示すものである。波形増幅部を構成するアンプ103aは、超音波トランスジューサ2からの減衰振動波形がベース入力される増幅用トランジスタTr101を有する。そのコレクタ及びエミッタにはゲイン決定用抵抗R101,R103が挿入されている。また、エミッタ側には、コレクタ側の増幅出力を測定用超音波ビームの励振周波数に同調させる波形同調部が組み込まれている。波形同調部は、この実施形態では、励振周波数近傍で低インピーダンス化するRC直列回路(コンデンサC101と抵抗R102)をエミッタと並列に挿入する形で設けている。
【0045】
次に、検波回路103eは次のように構成されている。まず、アンプ103aからの増幅出力は、半波整流部を兼ねた検波用トランジスタTr202のベースに入力される。検波出力は検波用トランジスタTr202のエミッタ側にて取り出され、その出力系路上には、波形増幅部からの増幅出力波形からバイアス直流成分を除去する直流カットコンデンサ(バイアス直流成分除去部)C202が挿入されている。そして、そのエミッタ接地経路上には、波形をリップル除去して包絡線検波波形とするリップル除去部が、互いに並列接続された抵抗R206とコンデンサC203とからなるRCローパスフィルタの形で挿入されている。
【0046】
また、アンプ103aからの増幅出力は、半波整流部を兼ねた積分用トランジスタTr201のベースに分岐入力される。該積分用トランジスタTr201はプルダウン抵抗R203,R204によりエミッタフォロワ回路を構成し、積分時定数を決定するための抵抗R201及びコンデンサC201とともに積分部を構成するとともに、その積分演算出力がエミッタ側から取り出される。
【0047】
上記の包絡線検波波形出力と、増幅出力の積分演算出力とは積分比較演算部をなすコンパレータIC201に入力される。該コンパレータIC201は、積分出力と包絡線検波出力との比較結果を二値出力する。なお、減衰残響振動波形は直流カットコンデンサC202により接地レベルを基準として振幅中心電圧が定められるが、これをもとに形成される包絡線検波出力電圧に対しR203,R204の分圧比で定まる積分演算出力の分圧電圧を、調整用抵抗R206を介してバイアス電圧として重畳させることにより、上記包絡線検波出力を任意のベース電圧レベルにシフトさせることができるようになっている(この実施形態では、抵抗R204がベース電圧レベル設定用の可変抵抗とされている)。つまり、包絡線検波出力に対する上記積分出力の相対的な切り出し閾値を可変に設定することができる。
【0048】
コンパレータIC201の二値出力は下段の積分回路103fに出力されるが、コンパレータIC201の出力側には、信号電源ラインVccとの間に挿入されたプルアップ抵抗R209と、出力制御用コンパレータIC202が接続されている。出力制御用コンパレータIC202は、マスク信号発生回路103gからのマスク信号を基準電圧(信号電源Vccを抵抗ハーフブリッジR207,R208により分圧することにより作られる)と比較するものである。そして、マスク信号電圧レベルと基準電圧との大小関係が出力マスク側に有効化される条件を充足すると、出力制御用コンパレータIC202の出力はL(接地)レベルとなり、検波回路103eのコンパレータIC201の出力が出力制御用コンパレータIC202側に引き込む形で接地側にバイパスされる。これにより、コンパレータIC201の積分回路103f側への出力は遮断される。他方、マスク信号電圧レベルと基準電圧との大小関係が出力許容側に有効化される条件を充足すると、出力制御用コンパレータIC202の出力はH(接地)レベルとなる。これにより、検波回路103eのコンパレータIC201の出力がプルアップされ、その二値出力(減衰反映信号)が積分回路103f側へ出力される。
【0049】
マスク信号は、超音波トランスジューサ2の駆動遮断後における前述の一定期間tsだけ検波回路103eの出力を取り出し、他の期間の信号を液有無判定に考慮されないようにマスクするためのものである。この実施形態では、このマスク信号は、コンパレータIC202に二値のレベル信号として入力することができ、この場合は、例えば図2のマイコン100のポートから出力するように構成すればよい。しかし、本実施形態では、マスク信号発生回路103gは、マイコン100のポートを節約するために、マイコン100に対する外付け回路にてマスク信号発生回路103gを構成している。
【0050】
具体的には、該マスク信号発生回路103gは、超音波トランスジューサ2の駆動/遮断を指令する駆動/遮断指令信号を流用してマスク信号を発生するように構成されている。すなわち、規定する駆動/遮断信号にて超音波トランスジューサ2の駆動遮断タイミングを規定するレベルエッジを図示しない単安定回路(図示せず)に入力し、その単安定回路からのパルスを抵抗ハーフブリッジR401,R402を介してコレクタフォロワ回路をなすマスク信号発生トランジスタTr401のベースに入力する(ここでは、遮断後直ちにパルスを発生させるようにしているが、前述の遅延時間Δtだけ遅延させてパルスを発生させるように構成することもできる)。
【0051】
マスク信号発生トランジスタTr401のコレクタ側は信号電源Vccにプルアップ抵抗403を介して接続され、接地されるエミッタとの間に信号レベル保持用のコンデンサC401が挿入されている。マスク信号発生トランジスタTr401は単安定回路からのパルス入力期間だけ導通するが、マスク信号となるそのコレクタ出力は、コンデンサC401の放電時定数で定まる上記パルス長よりも長い所定期間(前述の時間tsとなるように調整される)だけ、マスク信号レベルを閾値未満、すなわち、非マスクとなる条件を充足するように保持される。
【0052】
積分回路103fは、次のように構成されている。検波回路103eのコンパレータIC201の出力は、エミッタフォロワ回路を構成する積分制御トランジスタTr301のベースに入力される。積分制御トランジスタTr301のエミッタには、コンデンサC301と抵抗R302からなる積分部が接続される。なお、コンデンサC301と並列接続されるR302は、積分出力遮断時にコンデンサC301を所定の時定数で放電させる放電用抵抗である。積分制御トランジスタTr301はコンパレータIC201の出力がHレベルのとき導通し、同じくLレベルのとき遮断される。その結果、上記の積分部は、コンパレータIC201の出力がHレベルの期間のみ積分制御トランジスタTr301のエミッタ側出力電圧を積分する形となる。この積分出力が、判定回路をなす液有無判定用コンパレータIC301に入力され、閾電圧(抵抗ハーフブリッジ(R303,R304)による電源電圧Vccの抵抗分圧電圧として与えられている)と比較され、その比較結果が液有無判定信号としてコンパレータIC301から二値出力される。
【0053】
図12及び図13を用いて、図11の信号処理回路103の動作を説明する。図12に示すように、マイコン100からの駆動/遮断指令信号により、超音波トランスジューサは一定期間強制的にバースト駆動され、その後、その駆動が遮断される。そして、その遮断後、一定期間tsだけ、前述のマスク信号発生回路103gからのマスク信号(図11:C)の出力がLレベル、すなわち、非マスク状態となる。
【0054】
図11にAにて示す包絡線検波出力は、Bに示す積分演算出力とコンパレータIC201にて比較される。図13の上に示すように、液なし状態では包絡線検波出力Aはゆっくりとしか減衰せず、液あり状態では逆に速やかに減衰する。他方、前述の積分部の積分時定数は、積分演算出力Bの液なし状態と液あり状態との間での電圧の時間増加率の差が包絡線検波出力Aの減衰率の差よりも十分小さくなるように設定されている。その結果、図13の中段に示すように、コンパレータIC201に入力される包絡線検波出力と積分演算出力との大小関係が反転するまでの時間(つまり、コンパレータIC201が出力反転するまでの時間)には、液なし状態と液あり状態とで大きな差を生ずる。
【0055】
上記の時間を直接計測することにより、液の有り無しを判定することももちろん可能であるが、上記図11の回路では、図13の下段に示すように、コンパレータIC201の二値出力(減衰反映信号)を上記期間tsだけ積分した値(図11E)を液有無判定に用いる。すなわち、積分回路103fにおいて、該積分値EはコンパレータIC301にて閾値Vthと比較される。このコンパレータIC301の出力は、図3の回路と全く同様にして液有無判定出力として使用される。
【0056】
なお、図3及び図11の各回路にて使用される包絡線検波回路、半波整流回路あるいは積分回路は、上記開示されたものに限定されない。図14及び図15は、検波トランスTF501を用いた包絡線検波回路の例を示すものであり、コンデンサC501にて直流カットされた減衰振動波形信号は検波トランスTF501を介して、トランジスタTr501(図14)ないしダイオードD501(図15)にて半波整流され、その下段に挿入された並列RC部(R501,C502)にて包絡線検波される。検波トランスTF501は、入力信号に対するインピーダンス変換部を形成するとともに、二次側コイルがコンデンサC502と結合して同調部を形成する。また、図16に示す回路では、減衰振動波形信号がインピーダンス変換用のオペアンプIC601に入力され、その出力と負期間経路との間に挿入されたダイオードD601が半波整流部を形成する。また、積分回路は、図17に示すように、オペアンプIC701の負帰還部にコンデンサC701及び積分時定数決定用の抵抗R701を組み合わせたアクティブ型積分回路として構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の液体検知装置の使用例を示す模式図。
【図2】図1の液体検知装置の第一例を、その電気的構成とともに示す模式図。
【図3】図2の信号処理回路の一例を示す回路図。
【図4】図3のコンパレータの出力と、液有り/液無しの判定結果との関係を示すタイミングチャート。
【図5】図3の構成におけるマイコンの制御流れを示すフローチャート。
【図6】減衰残響振動の波形測定例を示す図。
【図7A】液無し部での残響振動の減衰挙動を示す図。
【図7B】同じく液有り部での残響振動の減衰挙動を示す図。
【図8】図3の回路の動作を各部の模式的波形にて示す説明図。
【図9】図3の積分回路の出力と、液有り/液無しの判定閾値との関係を示す模式図。
【図10】図3にて積分回路を省略した場合の、検波出力と液有り/液無しの判定閾値との関係を示す模式図。
【図11】図2の信号処理回路の発展例を示す回路図。
【図12】図11の回路の動作説明図。
【図13】図12に続く説明図。
【図14】検波回路の第一変形例を示す回路図。
【図15】検波回路の第二変形例を示す回路図。
【図16】半波整流回路の変形例を示す回路図。
【図17】積分回路の変形例を示す回路図。
【図18】駆動回路の一例を示す回路図。
【符号の説明】
【0058】
1 液体検知装置
2 超音波トランスジューサ(音響励振手段、残響検出手段)
SW 測定用超音波ビーム
L 液体
100 マイコン(液体有無判定手段)
103 信号処理回路(液体有無判定手段)
103e 検波回路
104 表示部(液体存在状態情報出力手段)
190 容器
200 金属側壁部
【技術分野】
【0001】
本発明は液体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−53504号公報
【特許文献2】特開2002−90210号公報
【特許文献3】特開平7−181072号公報
【0003】
従来、タンク内面に超音波の送信面ないし受信面を露出させる形で超音波送信部及び受信部を配置し、超音波ビームが液面位置で反射して戻ってくるまでの時間を計測することにより液面高さを知ることができるようにした液面計が知られている(特許文献1,2)。しかし、この方式の液面計は容器内部に超音波送信部及び受信部を露出配置しなければならず、構造が複雑化する上、液面計を有さない容器へは適用できない難点がある。一方、対象となる容器の外側から非接触で液面を検知する方式として、容器壁を透過させる形で送信された超音波を反対側の壁(正反対側の鋼板材の壁で媒質との境界)で反射させ、再び容器壁を透過してトランスジューサまで戻ってくる反射波を検出し、液の有無を判断する方式が知られている(例えば特許文献3)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記透過型の液面検出方式には、超音波を送信後、反射波が戻ってくるまでの伝播遅延時間があり、反射経路に沿った超音波パルスの伝播距離が長く信号のロスが大きい欠点がある。信号のロスが大きいということは、結局のところ、駆動直後に容器に伝播する機械的振動ノイズや残響ノイズ、温度・経時変化によるトランスジューサの特性劣化(特に、ダンパー特性の劣化)、トランスジューサと容器との機械的な結合状態などの影響を受けやすいことを意味し、感度低下を招きやすいことは必至である。特に、容器壁部を透過する音波の信号レベル低下や、取り付け状態によるノイズの影響をとりわけ受けやすく、液の有無を判定する受信信号を検出する際のS/Nが悪化する問題がある。
【0005】
結局、上記透過型方式では、S/N比の低下を防止するために、フィルタリングなどの複雑な信号処理や制御が必要となり、回路やソフトウェアの複雑化ひいては高コスト化が避け難い。また、検出周波数の決定や、回路ゲインあるいはコンパレータレベル等の設定・調整にも長時間を要し、液面判定の迅速性も損なわれやすくなる。
【0006】
本発明の課題は、構成が簡単であり、容器内の液存在状態を、容器外部からより短時間で作業性良く判別できる液体検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の液体検知装置は、
液体を収容した容器を被測定系として、該容器の壁部外面に定められた測定実施位置に取り付けて使用され、被測定系に測定用超音波ビームを予め定められた時間励振入力した後、当該測定用超音波ビームの入力を遮断する超音波出力部と、
測定実施位置に取り付けて使用され、測定用超音波ビームの入力遮断後の減衰残響振動波形を検出する残響検出手段と、
減衰残響振動波形を包絡線検波する包絡線検波手段と、
該包絡線検波波形に反映される減衰残響振動の減衰特性の差異に基づいて容器内の測定実施位置における液体の有無を判定する液体有無判定手段と、
該判定結果を出力する液体有無判定結果出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記本発明の液体検知装置によると、液体を収容した容器を被測定系として、容器の壁部外側に取り付けた超音波出力部からの測定用超音波ビームにより音響励振し、測定用超音波ビームの入力遮断後の被測定系からの減衰残響振動波形に基づいて容器内の測定実施位置における液体の存在状態を検出する。すなわち、従来のごとく液体中へ伝播する励振音波の反射情報を検出するのではなく、駆動直後の被測定系からの残響情報を自由振動波形の形で検出するので、音波が媒質中を伝播する遅延時間が発生せず検出時間が早い。また、従来の透過型検出方式では、検知情報となる反射波に対し駆動直後の残響がノイズとして作用し、特に容器の寸法が小さい場合や、音速が大きい液体の場合、残響ノイズによるS/N比低下が避け難かった。しかし、この発明では、その残響情報がノイズではなく信号(シグナル)として逆に利用されるのであり、しかも、残響情報が検出される際には音響励振のための入力波は遮断された後なので、これがノイズ要因となることは原理的にありえない。従って、極めて安定で高感度な液体検出が可能となり、信頼性が大きく向上する。また、超音波ビームは指向性が高く、波形拡散によるロスも小さいので、より高感度な液体検出が可能である。
【0009】
具体的には、液体の非存在部では容器壁部の内側が空隙となり、壁部内面を境とした音響インピーダンス差が非常に大きくなる。その結果、容器壁部を外から音響励振した場合、容器壁部は、壁部内に反射して戻る音波が主体的となるため内側の空間からは音響的に分離され、固体で構成された壁部の固有振動に支配された形で振動継続するため振動の減衰が生じにくい。この傾向は、容器側が内部摩擦の小さい金属にて構成されている場合に特に著しい。しかし、液体の存在部では、容器壁部の内側に液体が存在するため、上記の音響インピーダンス差は縮小し、壁部内面を経て内部摩擦の大きい液体内に漏れこむ音波比率が増加して振動減衰は著しくなる。従って、検出される減衰残響振動の減衰特性の差異に基づいて容器内の測定実施位置における液体の有無を容易に判定することができるのである。そして、減衰残響振動波形を包絡線検波することで、その振幅の減衰挙動をより簡単かつ正確に把握でき、液体の有無判定をより正確に行なうことができる。
【0010】
測定適用対象となる容器が金属タンク(特に鋼鉄製など、内部音響損失の比較的小さい材料で構成されたもの)である場合は、空の状態で残響が減衰し難く、液体を収容した状態との残響特性にも大きな差を生じ易いので、液体検出の精度が高い利点がある。この場合、超音波出力部は該金属タンクの金属壁部に取り付けられ、当該金属壁部の厚さ方向に測定用超音波ビームを出力するように構成しておくとよい。
【0011】
液の存在部と液の非存在部との間で、減衰残響振動の減衰特性に波形の上で顕著な差が存在すれば、その差を数値化することにより液体の有無に係る判定を容易に実行することが可能となる。振動波形の減衰挙動を数値化する手法は種々存在し、そのいずれを用いてもよい。
【0012】
例えば、液体有無判定手段は、測定用超音波ビームの入力を遮断後に予め定められ時間を経過したときの、包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを取得し、当該減衰レベルが予め定められた閾値未満の場合に液体有り、同じく閾値を超える場合に液体無しと判定するものとして構成できる。この方式によると、励振を遮断した後の経過時間を固定化して、包絡線検波波形のレベルを一律に測定することで、少ない液の存在の有無に係る判定を容易に行なうことができる。
【0013】
他方、液体有無判定手段は、包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを監視するとともに、測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間を計測する減衰時間計測手段を有し、当該減衰時間が予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく閾値未満となる場合に液体有りと判定するものとして構成してもよい。この方式では、包絡線検波波形の時間変化を監視する必要が有り、そのサンプリング回数は増大するが、ノイズ等による突発的なパラメータ値の変化を誤差として容易に識別できるので、判定精度を高めることができる利点がある。
【0014】
包絡線検波手段は、残響検出手段からの減衰残響振動波形を増幅する波形増幅部と、増幅された減衰残響振動波形を半波整流する半波整流部と、該半波整流された減衰残響振動波形を包絡線検波部とを有する検波回路にて構成することができる。波形増幅出力を半波整流することで、本来の減衰振動波形の片側のピーク点を選択的に抽出することができ、これを包絡線検波することで、減衰判定の容易な単調減少型(極性反転すれば単調増加型)の波形減衰曲線を得ることができる。
【0015】
また、検波回路は、波形増幅部からの増幅出力波形からバイアス直流成分を除去するバイアス直流成分除去部を有するものとして構成でき、半波整流部は、該バイアス直流成分を除去後の増幅入力波形を半波整流するものとして構成できる。バイアス直流成分は、増幅特性を改善するために波形増幅部側で意図的に付加されるものと、定常ノイズやドリフトの影響により不可避的に重畳されるものとの双方を概念として含む。いずれにしても、バイアス直流成分を除去することで、増幅出力波形の振幅中心を確定することができ、半波整流時における切り出し振幅の誤差を低減することができる。
【0016】
また、波形増幅部の増幅出力を測定用超音波ビームの励振周波数に同調させる波形同調部を組み込むこともできる。これにより、測定用超音波ビームの励振周波数に対応した必要な残響波形を抽出することができ、ノイズ振動や高調波による誤差の影響を低減することができる。
【0017】
また、波形増幅部から分岐入力される増幅出力を積分演算する積分部と、該積分出力と検波回路からの包絡線検波出力との比較に基づいて、分岐減衰残響振動の減衰特性を反映した減衰反映信号を出力する積分比較演算部とを設けることができる。液体有無判定手段は該減衰反映信号に基づいて液体の有無を判定するものとする。このように構成すると、増幅出力に温特や定常ノイズ等に由来した波形ドリフトが生じている場合、その積分演算波形との比較演算(差分を概念として含む)を行なうことでドリフト成分をキャンセルでき、その影響を簡単に低減できる。積分比較演算部は、減衰反映信号として積分出力と包絡線検波出力との二値比較結果を出力するものとして構成すれば、液体の有無を判定する演算をより簡便に行なうことができる。
【0018】
本発明においては、前述の金属タンクが液体として液化ガス(液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)などの燃料用液化ガス、液化炭酸ガス、液化アンモニアガス、液体窒素などのボンベ、タンク、コンテナなどが主な用途である)を収容するものである場合、超音波を励振用測定プローブとして採用することの波及効果が高い。すなわち、液化ガスの場合密度が低く、タンク壁部とタンク内部との音響インピーダンス差が液有り状態と液無し状態とでそれほど大きくない。この場合、可聴帯音源を励振用測定プローブとして用いると残響挙動にも差を生じにくく、液体存在状態に係る正確な知見が得にくくなる。しかし、超音波ビームを用いれば液体存在状態に応じて残響挙動に大きな差を生じ、正確な液体検出が可能となる。
【0019】
本発明においては、超音波ビームによる励振を遮断した後の残響を検出するので、励振期間と残響検出期間とが時系列的に順次行なわれる形になる。従って、超音波出力部は、被測定系への測定用超音波ビームの出力が可能とされるとともに、被測定系からの残響超音波の受信も可能な超音波トランスジューサとして、残響検出手段に兼用されるものとして構成することができる。このようにすると、1個の超音波トランスジューサにより超音波送信部と残響検出部とを兼用でき、装置のコンパクト化及び低コスト化に寄与する。
【0020】
本発明の液体検出装置の原理においては、容器壁部に対する音響励振の周波数が容器壁部の固有振動数(倍音振動を含む)から大きく隔たっていると、液の非存在部であっても残響振動の減衰が著しくなるので、液存在部との間で減衰特性に差異を生じにくくなり、液体の有無の判定精度が低下することにつながる。従って、測定用超音波ビームの周波数については上記固有振動数に対応した値(例えば、固有振動数を中心とする±10%以内の所定幅に属する近傍値:望ましくは一致した値)に設定されていることが望ましい。該固有振動数は、容器壁部の材質や厚みにより異なる値を示すので、測定用超音波ビームの周波数も該材質や厚みに応じて最適の値に設定することが望ましいといえる。
【0021】
いずれにせよ、測定用超音波ビームの周波数を最適化するには、容器上にて液体無しとなることが予め知れている測定実施位置を選択して種々の周波数にて減衰残響振動の計測を行ない、測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間(残響時間)が最大化されるように周波数を選択するとよい。例えば、容器側壁部の上部や、確実に液が存在しない容器最上面部(天面部)に測定実施位置を定めることで、液無し状態で残響時間が最大となる条件を容易に決定でき、液の有無をより確実に判定できるようになる。
【0022】
測定対象となる容器が常に同じであれば、上記周波数は、一度最適値に設定してしまえば超音波トランスジューサの経時劣化等に伴う微調整を除けば、以降は同じ周波数での測定を継続すればよい。しかし、1つの検出装置で、容器壁部の材質や厚みの異なる任意の容器での測定に対応できるようにするためには、測定用超音波ビームの周波数を可変に構成し、測定対象容器が変更されるたびに、個々の容器に最適に周波数に調整しつつ用いることが必要である。すなわち、測定用超音波ビームの周波数は、測定対象となる容器に応じて可変設定可能としておくことが望ましい。
【0023】
本発明の液体検知装置により、該容器内の液体深さ方向において互いに異なる測定実施位置にて残響情報を検出すれば、個々の測定実施位置における残響情報の検出結果に基づいて、容器内の液面位置を反映した液面位置反映情報を出力することができる。この場合、容器壁部に対する音響励振手段及び残響検出手段の取り付け位置を容器深さ方向に順次変えながら測定を行ない、その検出状態が液有り状態(ないし液無し状態)から液無し状態(ないし液有り状態)に変化する位置を読み取ることで、液面位置を知ることができる。例えば、容器側壁部に対し複数の音響励振手段及び残響検出手段を容器深さ方向に所定の間隔で複数組取り付け、どの位置の残響検出手段までが液有り状態となっているかに応じて液面位置を知ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る液体検知装置の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、測定対象となる容器の一例を示すものであり、LPG又はLNGの金属タンク190として構成されている。金属タンク190は鋼鉄製であり、円筒状の側壁部200の上下に、底面部202及び天面部203をそれぞれ溶接部201により接合した構造を有する。側壁部200の壁厚はほぼ一様であるが、溶接部201の位置では溶接ビードの形成により局所的に厚みが増した形となっている。底面部202及び天面部203は、側壁部200と同一材質及び厚みの鋼板をカップ状にプレス成形したものであり、いずれも外周縁部が側壁部200との溶接部201に向けて滑らかにつながる湾曲面形態とされている。また、天面部203の上部中央には圧力制御弁が組み込まれたガス取出部203Vが形成されている。該金属タンク190に上記LPGないしLNGからなる液体Lが収容され、被測定系を構成する。
【0025】
そして、液体検知装置1は、上記の金属タンク190内の液体Lの存在状態、具体的には液面LVの位置を、タンク外から測定できるように構成されている。液体検知装置1は、具体的には、該容器190の側壁部200の外面に対し、液深さ方向の任意位置に押し当て可能な(つまり、ユーザーの欲する任意の測定実施位置に取り付け可能な)超音波トランスジューサ2を有している。該超音波トランスジューサ2は、容器190の側壁面200を介して被測定系(液体Lを収容した金属タンク190)を音響励振する音響励振手段と、該音響励振手段による被測定系への音響励振入力を遮断したときの、該被測定系からの残響情報を検出する残響検出手段とを兼ねる。具体的には、超音波トランスジューサ2は、被測定系を励振する励振用測定プローブとして所定の周波数の測定用超音波ビームSWを金属側壁部200の厚さ方向に出力する超音波出力部の機能と、その測定用超音波ビームSWの出力を遮断したときの被測定系からの残響超音波を受信する残響超音波受信部の機能とを合わせ有するものである。
【0026】
図2は、液体検知装置1の構成例を、その電気的構成とともに示す概念図である。該液体検知装置1は、ユーザーが手で保持可能な樹脂等で構成された筐体3を有し、その先端面に超音波トランスジューサ2がはめ込まれている。超音波放出面となる超音波トランスジューサ2の前端面は、筐体3の前端に形成された開口内に位置し、その表面に密着する形で音響インピーダンス整合層2Pが取り付けられている。音響インピーダンス整合層2Pは、超音波トランスジューサ2(圧電セラミック)と容器側壁部200(鋼鉄)との中間(望ましくは両者の幾何学平均値)の音響インピーダンスを有するとともに、容器側壁部200に押し付けられたときに追従変形してその外面に密着できる柔軟弾性材料(例えば、シリコーン樹脂)にて構成されている。
【0027】
超音波トランスジューサ2は、駆動回路101からの駆動電圧の印加により超音波ビームを送出する超音波送出機能と、残響超音波の受信により電気信号(受信信号)を信号処理回路103に出力する超音波受信機能とを複合して備える。具体的には、板厚方向に分極処理された圧電セラミック振動板21と、該圧電セラミック振動板21の各主表面を覆う形で該圧電セラミック振動板21を挟んで対向形成された電極対1e,1eとを備える。この電極対1e,1eは、超音波ビームの送信駆動時には該圧電セラミック振動板21を超音波振動させるための駆動電圧が印加される駆動電極となり、残響超音波の受信時には圧電セラミック振動板21の振動に伴う電気信号を出力する出力電極となる。これら電極対1e,1eと、駆動回路101及び信号処理回路103との接続切替は切替スイッチ101sにより行なわれる。
【0028】
駆動回路101は、出力周波数が可変に構成された発振回路(ここでは、VCO(Voltage Controlled Oscillator)101bと、その発振回路101bの出力を増幅して圧電セラミック振動板21へ駆動信号として出力する主回路(アンプ)101aとを有する。発振回路101bの出力周波数は、周波数設定部102から入力される周波数指示電圧に応じて変更される。
【0029】
図18は、駆動回路101の構成例を示すものであり、マイコン100によってデジタル情報として与えられる周波数指示電圧値がD/A出力ポートからアナログ指示電圧としてVCO10bの指示電圧入力端子SCKに入力される。VCO10bは出力端子OUから、当該指示電圧に一義的に対応した周波数の方形波パルス信号からなる基本信号(A)を出力する。一方、マイコン100からは、バースト波の駆動持続時間を規定する駆動時間パルス信号(B)が出力され、上記基本信号(A)とともに主回路101aに入力される。主回路101aでは、上記2つの出力(A,B)が変調制御用ゲートIC51に入力され、駆動時間パルス信号を上記基本信号で変調したバースト駆動信号が生成される。バースト駆動信号は、バッファ回路(シンク電流確保のため、並列接続された複数のバッファIC(ここでは、論理積ゲートで代用している)で構成している:出力側にはプルダウン抵抗R51が挿入されている)IC52,IC53を介して、信号Cとして駆動トランジスタTr51の制御端子(ここでは、パワーMOSFETのゲート端子)に入力される。
【0030】
次に、主回路101aは、一端が駆動電源(VB)に接続さるとともに、他端がプルダウン抵抗R52を介して接地された駆動コイルL51を有する。そして、それら駆動コイルL51とプルダウン抵抗R52との接続点からは、超音波トランスジューサ2の駆動ラインが分岐しており、該ライン上には調整抵抗R53と、並列の双方向ダイオード対D51,D52からなるインピーダンス変換用のブートストラップ回路51が設けられている。そして、上記接続点から別に分岐する駆動制御ライン上に上記の駆動トランジスタTr51が設けられている。バースト駆動信号(C)がLレベルのとき、駆動トランジスタTr51は遮断状態となり、駆動コイルL51には電磁エネルギーが蓄積される。そして、バースト駆動信号(C)がHレベルに変化すると駆動トランジスタTr51は導通状態となり、駆動コイルL51に蓄積された電磁エネルギーが誘導電流となって放出され、駆動ラインを介して超音波トランスジューサ2に供給される。
【0031】
図3は信号処理回路103の構成例を示すもので、圧電セラミック振動板21からの減衰振動波形を増幅するアンプ103a、増幅された減衰振動波形を包絡線検波する検波回路103b、その検波出力を積分する積分回路103c、該積分回路からの出力を閾値Vthと比較して液有無に関する判定信号を出力する判定回路103dとを有する。検波回路103bは種々の構成が可能であるが、本実施形態では、入力側にて不要なバイアス直流成分(例えば、アンプ103を単極性増幅とする場合に、アンプ入力信号に作為的に重畳される増幅用バイアス電流である)を除去するバイアスカットコンデンサC1と、そのバイアスカット後の交流入力波形を半波整流する整流用ダイオードD1と、半波整流後の波形をリップル除去して包絡線検波波形とするリップル除去部とを有している。リップル除去部は、抵抗R1とコンデンサC2とで構成された簡易ローパスフィルタ回路であり、リップルを十分除去しつつも半波整流波形のピーク点を包絡線結合した減衰波形は損なわれないように時定数が設定される。
【0032】
また、積分回路103cは、抵抗R2とコンデンサC3とで構成されているが、コンデンサC3の容量は、規定のタイミングtmまでの減衰波形入力に伴い、判定に支障のない程度まで出力電圧が上昇する程度に上記のリップル除去部よりも大きく設定されている。判定回路は、この積分出力電圧を、閾電圧Vth(抵抗ハーフブリッジ(R3,R4)による電源電圧Vccの抵抗分圧電圧として与えられている)と比較して、その比較結果を二値出力するコンパレータIC1にて構成されている。そして、図4に示すように、コンパレータIC1の出力レベルにより液有りと液無しとが判別可能となる。この実施形態では、積分出力電圧が閾電圧Vthよりも大きい場合にはコンパレータIC1の出力が液無しを示すHレベルとなり、逆の場合に液有りを示すLレベルとなる。
【0033】
図2に戻り、上記の駆動回路101、切替スイッチ101s、周波数設定部102、信号処理回路103は、これらの動作シーケンス制御を司るマイコン100に接続されている。また、該マイコン100には入力部105と表示部104も接続されている。入力部105は押しボタンスイッチやキーボードなどで構成され、液体検知の開始トリガー操作や、周波数設定処理に使用される。また、表示部104は液体有無の検出判定結果を出力するものであり、例えばLED点灯部として構成されている。図1に示すごとく、本実施形態では、液無しの場合に点灯する第一LED104a(例えば、赤色)と、液有りの場合に点灯する第二LED104b(例えば、緑色)とで構成されているが、これを1つのLEDの点灯状態で識別させることも可能である(例えば、液有り=連続点灯、液無し=点滅点灯)。また、測定モード表示(例えは、液検出モードと周波数設定処理モード)や操作誘導情報の出力等も可能とするために、表示部104を液晶ディスプレイ等の表示パネルにて構成することも可能である。
【0034】
以下、液体検知装置1の動作について説明する。図1に示すように、まず、超音波トランスジューサ2上の音響インピーダンス整合層2Pの表面(以下、検知面という)を、容器190上にて液体無しとなることが予め知れている測定実施位置PR(ここでは容器頂面部203の上面に設定されている)に押し付けて周波数設定を行なう。この設定時の動作の詳細は液体有無検知処理と関連が深いので後述する。
【0035】
周波数設定が完了すれば、容器190の側壁部200の外面に対し、所望の測定実施位置に検知面を押し当て、図2の入力部105から測定開始入力を行なう(例えば、入力部105に含まれる「測定」ボタンを押すなど)。すると、マイコン100は測定駆動プログラムを起動し、測定処理を開始する。図5は、その処理の流れを示すフローチャートである。まず、S1にて、超音波トランスジューサ2を駆動回路104に接続する駆動接続状態に切替スイッチ101Sが切り替わり、駆動回路104は設定された周波数にて駆動交流電圧を超音波トランスジューサ2に印加する。これにより、超音波トランスジューサ2から測定用超音波ビームSWが上記の測定実施位置にて側壁部200に向け出力され、これを音響励振する。
【0036】
図7Aに示すように、この駆動交流電圧の印加はパルス状のバースト駆動入力波形にて行なわれ、例えば10〜50μs程度に定められた印加パルス期間tnが完了すれば強制的に遮断される。そして、その遮断とともに切替スイッチ101Sは、超音波トランスジューサ2を信号処理回路103に接続する信号検出接続状態に切り替わり、励振遮断後の容器190からの残響振動を超音波トランスジューサ2により検出する。実際には、切替スイッチ101Sの切替動作に要する期間等を勘案し、励振遮断後一定の遅延時間Δt経過してから残響振動の検出が開始される。
【0037】
図6は、その残響振動の検出波形の一例を示すもので、液体Lの非存在部(液無し部)では容器190側壁部200の内側が空隙となり、壁部内面を境とした音響インピーダンス差が非常に大きくなる。側壁部200に入力された測定用超音波ビームは、壁部内面にてほぼ全反射して金属製の側壁部200内に戻り、側壁部200の材質及び厚さにて決まる固有振動に支配された形で振動継続するため振動の減衰が生じにくい。その結果、図6の上に示すように、残響の尾引きが非常に長くなる。しかし、液体Lの存在部(液有り部)では、側壁部200の内側に液体Lが存在するため、上記の音響インピーダンス差は縮小し、側壁部200を透過して内部摩擦の大きい液体L内に漏れこむ音波比率が増加するので振動減衰は著しくなる。
【0038】
そこで、液有り部と液無し部との間で、図6のごとく生ずる波形の差を識別するのに好都合な数値パラメータを上記減衰残響振動波形から抽出し、パラメータ値を閾値と比較することで、液体Lの有無に係る判定を容易に実行できる。例えば、図7A及び図7Bに示すように、測定用超音波ビームSWの入力を遮断後に予め定められ時間tsを経過したときの、該減衰残響振動の減衰レベルを反映したパラメータを減衰レベル情報として取得し、図7Aのごとく当該パラメータに反映された減衰レベルが予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく図7Bに示すように閾値未満の場合に液体有り、と判定することができる。
【0039】
図2の信号処理回路では、図8に示すごとく、減衰振動波形をアンプ103aにて増幅し(ステップ1)、検波回路103bにより半波整流し(ステップ2)、さらにその半波整流波形を包絡線検波し(ステップ3)、その包絡線検波波形を積分回路103cにより、図7A及び図7Bの期間tsに渡って積分演算する(ステップ4)。そして、図9に示すように、その期間tsが終了するタイミング(遮断後Δtを経過したタイミングを時間起点としてtsだけ計測するようにしてもよいし、バースト駆動開始時のタイミングを時間起点として、図7Aのtn+Δt+tsに相当するtmだけ時間計測するようにしてもよい)にて、その積分出力電圧を閾電圧Vthと比較するコンパレータIC1の出力(液面判定信号)を読み取る(図5:S3)。液有り部では波形減衰が速いので積分出力の増加が鈍くなり、逆に液無し部では波形減衰が遅いので積分出力は素早く増加する。従って、上記時刻での積分出力をサンプリングしたとき、図4に示すように、該液面判定信号がHレベルであれば液無し出力となり(図5:S4→S5)、Lレベルであれば液有り出力となる(図5:S4→S6)。
【0040】
表示部104は、液面判定信号を受けて対応する表示状態となる。例えば、図1に示すように、Hレベルであれば液無しを示す第一LED104a(例えば、赤色)が点灯し、Lレベルであれば液有りを示す第二LED104b(例えば、緑色)が点灯する。これにより、装置1の検知面を押し当てた位置、すなわち測定実施位置に液体が存在しているか否かがわかる。そこで、側壁部200上にて測定実施位置を上側から下方向に変えながら上記測定を順次行なったとき、表示部104が液無しを示す表示状態から液有りを示す表示状態に変化したときの位置を液面位置として特定することができる。また、逆に、測定実施位置を下側から上方向に変えながら上記測定を順次行なったとき、表示部104が液有りを示す表示状態から液無しを示す表示状態に変化したときの位置を液面位置として特定することができる。
【0041】
なお、図9に示すように、上記積分出力(減衰残響振動の減衰レベル)が予め定められた参照レベルVRに到達するまでの減衰時間tdをマイコン100にて計測し、当該減衰時間tdが予め定められた閾値を超える場合に液体有り、同じく閾値未満となる場合に液体無しと判定するように処理を行なうこともできる。
【0042】
前述の周波数設定処理については、図1のように、容器頂面部203など、液体無しとなることが予め知れている測定実施位置PRに検知面を押し当て、周波数設定処理モードにて液体検知装置1を動作させる。図3において液体検知装置1は、低周波数側もしくは高周波数側から周波数を段階的にスイープしながら駆動交流電圧をバースト出力し、その遮断後にて時間tsだけ経過したときの前述の積分出力値を、A/D変換器IC2を介して直接モニタリングする。そして、その積分出力値が最大となる周波数(つまり、図7Aに示すように、減衰の尾引きが最も大きくなる周波数)を読み取って、測定用周波数として設定する。
【0043】
なお、包絡線検波波形の積分値を用いることで、突発的なノイズ等により波形が乱れた場合でも判定誤差を低く留めることが可能である。しかし、ノイズの影響がそれほど大きくない場合には、積分値を用いず、図10に示すごとく、規定の判定タイミング(tmないしts)での包絡線検波波形のレベルを直接サンプリングして、そのレベルを閾値Vthと比較してもよい(この場合、図3において積分回路103cは省略され、検波回路103bの出力が判定回路103dに直接入力される)。また、包絡線検波波形のレベルが基準値VRに到達するまでの時間(tdないしtd’)をマイコン100にて計測し、当該時間が予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく閾値未満となる場合に液体有りと判定するように処理を行なうこともできる。
【0044】
次に、図11は、図3をさらに発展させた信号処理回路103の例を示すものである。波形増幅部を構成するアンプ103aは、超音波トランスジューサ2からの減衰振動波形がベース入力される増幅用トランジスタTr101を有する。そのコレクタ及びエミッタにはゲイン決定用抵抗R101,R103が挿入されている。また、エミッタ側には、コレクタ側の増幅出力を測定用超音波ビームの励振周波数に同調させる波形同調部が組み込まれている。波形同調部は、この実施形態では、励振周波数近傍で低インピーダンス化するRC直列回路(コンデンサC101と抵抗R102)をエミッタと並列に挿入する形で設けている。
【0045】
次に、検波回路103eは次のように構成されている。まず、アンプ103aからの増幅出力は、半波整流部を兼ねた検波用トランジスタTr202のベースに入力される。検波出力は検波用トランジスタTr202のエミッタ側にて取り出され、その出力系路上には、波形増幅部からの増幅出力波形からバイアス直流成分を除去する直流カットコンデンサ(バイアス直流成分除去部)C202が挿入されている。そして、そのエミッタ接地経路上には、波形をリップル除去して包絡線検波波形とするリップル除去部が、互いに並列接続された抵抗R206とコンデンサC203とからなるRCローパスフィルタの形で挿入されている。
【0046】
また、アンプ103aからの増幅出力は、半波整流部を兼ねた積分用トランジスタTr201のベースに分岐入力される。該積分用トランジスタTr201はプルダウン抵抗R203,R204によりエミッタフォロワ回路を構成し、積分時定数を決定するための抵抗R201及びコンデンサC201とともに積分部を構成するとともに、その積分演算出力がエミッタ側から取り出される。
【0047】
上記の包絡線検波波形出力と、増幅出力の積分演算出力とは積分比較演算部をなすコンパレータIC201に入力される。該コンパレータIC201は、積分出力と包絡線検波出力との比較結果を二値出力する。なお、減衰残響振動波形は直流カットコンデンサC202により接地レベルを基準として振幅中心電圧が定められるが、これをもとに形成される包絡線検波出力電圧に対しR203,R204の分圧比で定まる積分演算出力の分圧電圧を、調整用抵抗R206を介してバイアス電圧として重畳させることにより、上記包絡線検波出力を任意のベース電圧レベルにシフトさせることができるようになっている(この実施形態では、抵抗R204がベース電圧レベル設定用の可変抵抗とされている)。つまり、包絡線検波出力に対する上記積分出力の相対的な切り出し閾値を可変に設定することができる。
【0048】
コンパレータIC201の二値出力は下段の積分回路103fに出力されるが、コンパレータIC201の出力側には、信号電源ラインVccとの間に挿入されたプルアップ抵抗R209と、出力制御用コンパレータIC202が接続されている。出力制御用コンパレータIC202は、マスク信号発生回路103gからのマスク信号を基準電圧(信号電源Vccを抵抗ハーフブリッジR207,R208により分圧することにより作られる)と比較するものである。そして、マスク信号電圧レベルと基準電圧との大小関係が出力マスク側に有効化される条件を充足すると、出力制御用コンパレータIC202の出力はL(接地)レベルとなり、検波回路103eのコンパレータIC201の出力が出力制御用コンパレータIC202側に引き込む形で接地側にバイパスされる。これにより、コンパレータIC201の積分回路103f側への出力は遮断される。他方、マスク信号電圧レベルと基準電圧との大小関係が出力許容側に有効化される条件を充足すると、出力制御用コンパレータIC202の出力はH(接地)レベルとなる。これにより、検波回路103eのコンパレータIC201の出力がプルアップされ、その二値出力(減衰反映信号)が積分回路103f側へ出力される。
【0049】
マスク信号は、超音波トランスジューサ2の駆動遮断後における前述の一定期間tsだけ検波回路103eの出力を取り出し、他の期間の信号を液有無判定に考慮されないようにマスクするためのものである。この実施形態では、このマスク信号は、コンパレータIC202に二値のレベル信号として入力することができ、この場合は、例えば図2のマイコン100のポートから出力するように構成すればよい。しかし、本実施形態では、マスク信号発生回路103gは、マイコン100のポートを節約するために、マイコン100に対する外付け回路にてマスク信号発生回路103gを構成している。
【0050】
具体的には、該マスク信号発生回路103gは、超音波トランスジューサ2の駆動/遮断を指令する駆動/遮断指令信号を流用してマスク信号を発生するように構成されている。すなわち、規定する駆動/遮断信号にて超音波トランスジューサ2の駆動遮断タイミングを規定するレベルエッジを図示しない単安定回路(図示せず)に入力し、その単安定回路からのパルスを抵抗ハーフブリッジR401,R402を介してコレクタフォロワ回路をなすマスク信号発生トランジスタTr401のベースに入力する(ここでは、遮断後直ちにパルスを発生させるようにしているが、前述の遅延時間Δtだけ遅延させてパルスを発生させるように構成することもできる)。
【0051】
マスク信号発生トランジスタTr401のコレクタ側は信号電源Vccにプルアップ抵抗403を介して接続され、接地されるエミッタとの間に信号レベル保持用のコンデンサC401が挿入されている。マスク信号発生トランジスタTr401は単安定回路からのパルス入力期間だけ導通するが、マスク信号となるそのコレクタ出力は、コンデンサC401の放電時定数で定まる上記パルス長よりも長い所定期間(前述の時間tsとなるように調整される)だけ、マスク信号レベルを閾値未満、すなわち、非マスクとなる条件を充足するように保持される。
【0052】
積分回路103fは、次のように構成されている。検波回路103eのコンパレータIC201の出力は、エミッタフォロワ回路を構成する積分制御トランジスタTr301のベースに入力される。積分制御トランジスタTr301のエミッタには、コンデンサC301と抵抗R302からなる積分部が接続される。なお、コンデンサC301と並列接続されるR302は、積分出力遮断時にコンデンサC301を所定の時定数で放電させる放電用抵抗である。積分制御トランジスタTr301はコンパレータIC201の出力がHレベルのとき導通し、同じくLレベルのとき遮断される。その結果、上記の積分部は、コンパレータIC201の出力がHレベルの期間のみ積分制御トランジスタTr301のエミッタ側出力電圧を積分する形となる。この積分出力が、判定回路をなす液有無判定用コンパレータIC301に入力され、閾電圧(抵抗ハーフブリッジ(R303,R304)による電源電圧Vccの抵抗分圧電圧として与えられている)と比較され、その比較結果が液有無判定信号としてコンパレータIC301から二値出力される。
【0053】
図12及び図13を用いて、図11の信号処理回路103の動作を説明する。図12に示すように、マイコン100からの駆動/遮断指令信号により、超音波トランスジューサは一定期間強制的にバースト駆動され、その後、その駆動が遮断される。そして、その遮断後、一定期間tsだけ、前述のマスク信号発生回路103gからのマスク信号(図11:C)の出力がLレベル、すなわち、非マスク状態となる。
【0054】
図11にAにて示す包絡線検波出力は、Bに示す積分演算出力とコンパレータIC201にて比較される。図13の上に示すように、液なし状態では包絡線検波出力Aはゆっくりとしか減衰せず、液あり状態では逆に速やかに減衰する。他方、前述の積分部の積分時定数は、積分演算出力Bの液なし状態と液あり状態との間での電圧の時間増加率の差が包絡線検波出力Aの減衰率の差よりも十分小さくなるように設定されている。その結果、図13の中段に示すように、コンパレータIC201に入力される包絡線検波出力と積分演算出力との大小関係が反転するまでの時間(つまり、コンパレータIC201が出力反転するまでの時間)には、液なし状態と液あり状態とで大きな差を生ずる。
【0055】
上記の時間を直接計測することにより、液の有り無しを判定することももちろん可能であるが、上記図11の回路では、図13の下段に示すように、コンパレータIC201の二値出力(減衰反映信号)を上記期間tsだけ積分した値(図11E)を液有無判定に用いる。すなわち、積分回路103fにおいて、該積分値EはコンパレータIC301にて閾値Vthと比較される。このコンパレータIC301の出力は、図3の回路と全く同様にして液有無判定出力として使用される。
【0056】
なお、図3及び図11の各回路にて使用される包絡線検波回路、半波整流回路あるいは積分回路は、上記開示されたものに限定されない。図14及び図15は、検波トランスTF501を用いた包絡線検波回路の例を示すものであり、コンデンサC501にて直流カットされた減衰振動波形信号は検波トランスTF501を介して、トランジスタTr501(図14)ないしダイオードD501(図15)にて半波整流され、その下段に挿入された並列RC部(R501,C502)にて包絡線検波される。検波トランスTF501は、入力信号に対するインピーダンス変換部を形成するとともに、二次側コイルがコンデンサC502と結合して同調部を形成する。また、図16に示す回路では、減衰振動波形信号がインピーダンス変換用のオペアンプIC601に入力され、その出力と負期間経路との間に挿入されたダイオードD601が半波整流部を形成する。また、積分回路は、図17に示すように、オペアンプIC701の負帰還部にコンデンサC701及び積分時定数決定用の抵抗R701を組み合わせたアクティブ型積分回路として構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の液体検知装置の使用例を示す模式図。
【図2】図1の液体検知装置の第一例を、その電気的構成とともに示す模式図。
【図3】図2の信号処理回路の一例を示す回路図。
【図4】図3のコンパレータの出力と、液有り/液無しの判定結果との関係を示すタイミングチャート。
【図5】図3の構成におけるマイコンの制御流れを示すフローチャート。
【図6】減衰残響振動の波形測定例を示す図。
【図7A】液無し部での残響振動の減衰挙動を示す図。
【図7B】同じく液有り部での残響振動の減衰挙動を示す図。
【図8】図3の回路の動作を各部の模式的波形にて示す説明図。
【図9】図3の積分回路の出力と、液有り/液無しの判定閾値との関係を示す模式図。
【図10】図3にて積分回路を省略した場合の、検波出力と液有り/液無しの判定閾値との関係を示す模式図。
【図11】図2の信号処理回路の発展例を示す回路図。
【図12】図11の回路の動作説明図。
【図13】図12に続く説明図。
【図14】検波回路の第一変形例を示す回路図。
【図15】検波回路の第二変形例を示す回路図。
【図16】半波整流回路の変形例を示す回路図。
【図17】積分回路の変形例を示す回路図。
【図18】駆動回路の一例を示す回路図。
【符号の説明】
【0058】
1 液体検知装置
2 超音波トランスジューサ(音響励振手段、残響検出手段)
SW 測定用超音波ビーム
L 液体
100 マイコン(液体有無判定手段)
103 信号処理回路(液体有無判定手段)
103e 検波回路
104 表示部(液体存在状態情報出力手段)
190 容器
200 金属側壁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容した容器を被測定系として、該容器の壁部外面に定められた測定実施位置に取り付けて使用され、前記被測定系に前記測定用超音波ビームを予め定められた時間励振入力した後、当該測定用超音波ビームの入力を遮断する超音波出力部と、
前記測定実施位置に取り付けて使用され、前記測定用超音波ビームの入力遮断後の減衰残響振動波形を検出する残響検出手段と、
前記減衰残響振動波形を包絡線検波する包絡線検波手段と、
該包絡線検波波形に反映される前記減衰残響振動の減衰特性の差異に基づいて前記容器内の前記測定実施位置における前記液体の有無を判定する液体有無判定手段と、
該判定結果を出力する液体有無判定結果出力手段と、
を備えたことを特徴とする液体検知装置。
【請求項2】
前記液体有無判定手段は、前記測定用超音波ビームの入力を遮断後に予め定められ時間を経過したときの、前記包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを取得し、当該減衰レベルが予め定められた閾値未満の場合に液体有り、同じく閾値を超える場合に液体無しと判定するものである請求項1記載の液体検知装置。
【請求項3】
前記液体有無判定手段は、前記包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを監視するとともに、前記測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間を計測する減衰時間計測手段を有し、当該減衰時間が予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく閾値未満となる場合に液体有りと判定するものである請求項1記載の液体検知装置。
【請求項4】
前記包絡線検波手段は、前記残響検出手段からの前記減衰残響振動波形を増幅する波形増幅部と、増幅された減衰残響振動波形を半波整流する半波整流部と、該半波整流された減衰残響振動波形を包絡線検波部とを有する検波回路にて構成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項5】
前記検波回路は、前記波形増幅部からの増幅出力波形からバイアス直流成分を除去するバイアス直流成分除去部を有し、前記半波整流部は、該バイアス直流成分を除去後の増幅入力波形を半波整流するものである請求項4記載の液体検知装置。
【請求項6】
前記波形増幅部の増幅出力を前記測定用超音波ビームの励振周波数に同調させる波形同調部が組み込まれてなる請求項5記載の液体検知装置。
【請求項7】
前記波形増幅部から分岐入力される増幅出力を積分演算する積分部と、該積分出力と前記検波回路からの包絡線検波出力との比較に基づいて、前記分岐減衰残響振動の減衰特性を反映した減衰反映信号を出力する積分比較演算部とを有し、前記液体有無判定手段は該減衰反映信号に基づいて前記液体の有無を判定するものである請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項8】
前記積分比較演算部は、前記減衰反映信号として前記積分出力と前記包絡線検波出力との二値比較結果を出力するものである請求項7記載の液体検知装置。
【請求項9】
前記容器が金属タンクであり、前記超音波出力部は該金属タンクの金属壁部に取り付けられ、当該金属壁部の厚さ方向に前記測定用超音波ビームを出力するものである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項10】
前記金属タンクは前記液体として液化ガスを収容するものである請求項9記載の液体検知装置。
【請求項11】
前記超音波出力部は、前記被測定系への測定用超音波ビームの出力が可能とされるとともに、前記前記被測定系からの残響超音波の受信も可能な超音波トランスジューサとして、前記残響検出手段に兼用されるものである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項12】
前記容器上にて液体無しとなることが予め知れている測定実施位置を選択して前記減衰残響振動の計測を行なったとき、前記測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間が最大化されるように、前記測定用超音波ビームの周波数が設定される請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項13】
前記測定用超音波ビームの周波数が、測定対象となる容器に応じて可変設定可能とされてなる請求項12記載の液体検知装置。
【請求項14】
該容器内の液体深さ方向において互いに異なる測定実施位置にて前記残響情報を検出し、個々の測定実施位置における前記残響情報の検出結果に基づいて、前記容器内の液面位置を反映した液面位置反映情報が出力可能とされてなる請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項1】
液体を収容した容器を被測定系として、該容器の壁部外面に定められた測定実施位置に取り付けて使用され、前記被測定系に前記測定用超音波ビームを予め定められた時間励振入力した後、当該測定用超音波ビームの入力を遮断する超音波出力部と、
前記測定実施位置に取り付けて使用され、前記測定用超音波ビームの入力遮断後の減衰残響振動波形を検出する残響検出手段と、
前記減衰残響振動波形を包絡線検波する包絡線検波手段と、
該包絡線検波波形に反映される前記減衰残響振動の減衰特性の差異に基づいて前記容器内の前記測定実施位置における前記液体の有無を判定する液体有無判定手段と、
該判定結果を出力する液体有無判定結果出力手段と、
を備えたことを特徴とする液体検知装置。
【請求項2】
前記液体有無判定手段は、前記測定用超音波ビームの入力を遮断後に予め定められ時間を経過したときの、前記包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを取得し、当該減衰レベルが予め定められた閾値未満の場合に液体有り、同じく閾値を超える場合に液体無しと判定するものである請求項1記載の液体検知装置。
【請求項3】
前記液体有無判定手段は、前記包絡線検波波形に反映される該減衰残響振動の減衰レベルを監視するとともに、前記測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間を計測する減衰時間計測手段を有し、当該減衰時間が予め定められた閾値を超える場合に液体無し、同じく閾値未満となる場合に液体有りと判定するものである請求項1記載の液体検知装置。
【請求項4】
前記包絡線検波手段は、前記残響検出手段からの前記減衰残響振動波形を増幅する波形増幅部と、増幅された減衰残響振動波形を半波整流する半波整流部と、該半波整流された減衰残響振動波形を包絡線検波部とを有する検波回路にて構成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項5】
前記検波回路は、前記波形増幅部からの増幅出力波形からバイアス直流成分を除去するバイアス直流成分除去部を有し、前記半波整流部は、該バイアス直流成分を除去後の増幅入力波形を半波整流するものである請求項4記載の液体検知装置。
【請求項6】
前記波形増幅部の増幅出力を前記測定用超音波ビームの励振周波数に同調させる波形同調部が組み込まれてなる請求項5記載の液体検知装置。
【請求項7】
前記波形増幅部から分岐入力される増幅出力を積分演算する積分部と、該積分出力と前記検波回路からの包絡線検波出力との比較に基づいて、前記分岐減衰残響振動の減衰特性を反映した減衰反映信号を出力する積分比較演算部とを有し、前記液体有無判定手段は該減衰反映信号に基づいて前記液体の有無を判定するものである請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項8】
前記積分比較演算部は、前記減衰反映信号として前記積分出力と前記包絡線検波出力との二値比較結果を出力するものである請求項7記載の液体検知装置。
【請求項9】
前記容器が金属タンクであり、前記超音波出力部は該金属タンクの金属壁部に取り付けられ、当該金属壁部の厚さ方向に前記測定用超音波ビームを出力するものである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項10】
前記金属タンクは前記液体として液化ガスを収容するものである請求項9記載の液体検知装置。
【請求項11】
前記超音波出力部は、前記被測定系への測定用超音波ビームの出力が可能とされるとともに、前記前記被測定系からの残響超音波の受信も可能な超音波トランスジューサとして、前記残響検出手段に兼用されるものである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項12】
前記容器上にて液体無しとなることが予め知れている測定実施位置を選択して前記減衰残響振動の計測を行なったとき、前記測定用超音波ビームの入力を遮断後に当該減衰レベルが予め定められた参照レベルに到達するまでの減衰時間が最大化されるように、前記測定用超音波ビームの周波数が設定される請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【請求項13】
前記測定用超音波ビームの周波数が、測定対象となる容器に応じて可変設定可能とされてなる請求項12記載の液体検知装置。
【請求項14】
該容器内の液体深さ方向において互いに異なる測定実施位置にて前記残響情報を検出し、個々の測定実施位置における前記残響情報の検出結果に基づいて、前記容器内の液面位置を反映した液面位置反映情報が出力可能とされてなる請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の液体検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−203205(P2008−203205A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42553(P2007−42553)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
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