説明

液体殺菌方法及び液体殺菌装置

【課題】紫外線透過率が悪い液体であっても充分に紫外線殺菌することができるようにする。
【解決手段】紫外線を照射する紫外線照射器11を備え、当該紫外線を液体に照射して殺菌する液体殺菌装置3において、前記紫外線が照射される箇所での液体の厚みを所定の厚みに制限する厚み制限部としてのスリットノズル13を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を紫外線で殺菌する技術に係り、特に、飲料水の殺菌に用いて好適な紫外線殺菌技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料水の殺菌方法として、紫外線透過材で構成した流路管に飲料水を流し、当該流路管に外部から紫外線を照射して殺菌する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−262837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紫外線の吸光度が高く紫外線透過率が悪い飲料水の場合、流路管の深部まで紫外線が到達せず殺菌処理が不充分となる。このため、紫外線透過率が悪い飲料物水の殺菌には紫外線殺菌技術を用いることができず、製造工程中での加熱殺菌が一般に用いられている。しかしながら、加熱殺菌では、飲料水に変色や変質が生じ、また飲料水の風味が損なわれる、という問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、吸光度が高い液体であっても充分に紫外線殺菌することができる液体殺菌方法及び液体殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、紫外線を液体に照射して殺菌する液体殺菌方法において、前記紫外線が照射される箇所での液体の厚みを所定の厚みに制限したことを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記液体殺菌方法において、所望の殺菌能力を得るために必要な紫外線照射量を、前記液体の吸光度の差異に起因する不活化速度定数及び反応速度定数の差に基づいて補正し、補正した紫外線照射量の紫外線を照射して前記液体を殺菌することを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記液体殺菌方法において、前記厚みを制限した箇所の厚みを、殺菌する微生物の生残率の低下が紫外線照射量及び紫外線照射時間の増加に対して飽和しない範囲の厚みに制限したことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、紫外線を照射する紫外線照射器を備え、当該紫外線を液体に照射して殺菌する液体殺菌装置において、前記紫外線が照射される箇所での液体の厚みを所定の厚みに制限する厚み制限部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体の厚みを所定の厚みに制限した箇所に紫外線を照射して殺菌するため、液体の深部で高い紫外線照度を達成し液表面のみならず深部も充分に紫外線殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液体殺菌システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】紫外線照射装置の上面図である。
【図3】厚み1cmの液体試料に紫外線を照射したときの減衰の様子を紫外線の吸光度が異なる4種の液体試料について調べた結果を示す図である。
【図4】大腸菌ファージMS2が混入した液体試料に紫外線を照射した後の大腸菌ファージMS2の生残率Sと紫外線照射量Hとの関係を、照度比IEを変えて実験した結果を示す図であり、(A)〜(C)は、それぞれ液体試料の吸光度Aが、1.0cm-1、2.0cm-1、3.0cm-1の場合を示している。
【図5】大腸菌ファージMS2の生残率Sと紫外線照射時間t(sec:秒)との関係を、照度比IEを変えて実験した結果を示す図であり、(A)〜(C)は、それぞれ液体試料の吸光度Aが、1.0cm-1、2.0cm-1、3.0cm-1の場合を示している。
【図6】照度比IEごとに紫外線照射量H(mJ/cm2)と生残率Sの関係を示す図である。
【図7】図4〜図6の実験結果から求められる反応速度定数Dtと吸光度Aの関係を示す図である。
【図8】反応速度定数Dt/不活化速度定数Diと、照度比IEとの関係を吸光度Aごとに示す図である。
【図9】傾き係数Zと吸光度Aの関係を示す図である。
【図10】スリットノズルにより膜状にした飲料水の厚みを模式的に示す図である。
【図11】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る液体殺菌システム1の構成を模式的に示すブロック図である。
液体殺菌システム1は、紫外線吸光度が高い飲料水を充分に紫外線殺菌するシステムであり、図1に示すように、液体殺菌装置3、導入ポンプ5及び排出ポンプ7を備えている。導入ポンプ5は、タンク9に貯留した殺菌処理対象の飲料水を液体殺菌装置3に導入するポンプであり、排出ポンプ7は、紫外線殺菌後の飲料水を液体殺菌装置3から排出するポンプである。
【0012】
液体殺菌装置3は、導入ポンプ5により導入された飲料水の流路Rを挟んで対向配置された一対の紫外線照射器11と、この流路R内に設けられ飲料水を一対の紫外線照射器11の間に噴射するスリットノズル13と、紫外線照射器11の間を通って紫外線殺菌された飲料水を受ける受けタンク15とを備えている。この受けタンク15に貯留した飲料水が上記排出ポンプ7により液体殺菌装置3から外部に導出される。
【0013】
紫外線照射器11は、紫外線ランプ17及び反射板19を備えて構成されている。紫外線ランプ17は、波長254nmの光を照射する直管型ランプであり、図2に示すように、紫外線照射器11の奥行方向に延びる姿勢で水平に設けられている。
スリットノズル13は、飲料水を膜状にして噴射することで、紫外線が照射される箇所の厚みを制限する厚み制限部として機能するものである。スリットノズル13は、液体殺菌装置3の奥行方向に所定のスリット長に亘って延在し、飲料水の導入口たる複数のインレット21が上面に一定ピッチで設けられ、これらインレット21に上記導入ポンプ5が接続されている。スリットノズル13の下端部には、所定スリット幅のスリット23(図1参照)がノズル部として設けられており、上記インレット21から導入された飲料水がスリット23のスリット幅に応じた膜厚で、スリット長に相当する長さの液膜として噴射する。
【0014】
このように、飲料水を膜状にして紫外線照射器11の間を通すため、そのままでは単位時間当たりに紫外線殺菌する処理量が減るものの、所定のスリット長に亘る液膜を生成し、当該液膜に沿って紫外線ランプ17を延在させているため、これにより処理量の減少が補われ生産性を阻害することがない。
【0015】
次いで、紫外線照射による液体殺菌について説明する。
紫外線照射による液体殺菌においては、非常に小さな微生物を対象とするため、液体が吸収しなかった光、すなわち液体を透過した光が微生物に照射された光と仮定できる。一般的に、牛乳、果汁などの不透明液や、酒などのように液体が紫外線を吸収するような飲料水は、紫外線を透過しないため紫外線照射による殺菌、消毒は非常に効率が悪い。
【0016】
詳述すると、紫外線処理対応である飲料水の吸光度をA(cm-1)としたとき、入射時の紫外線照度である入射光照度I0(mW/cm2)は、距離d(cm)の地点では紫外線照度Id(mW/cm2)まで減衰する。この減衰量は、Lambert Beer則に従い次の式(1)で表せる。
d=I0×10-Ad (1)
【0017】
図3は、厚み1cmの液体試料に紫外線を照射したときの減衰の様子を紫外線の吸光度Aが異なる4種の液体試料について調べた結果を示す図である。
この図には、紫外線照射面である液表面からの距離dが長くなるに従って紫外線が減衰する現象が示されている。特に、吸光度AがA=0.01cm-1のように小さい場合には、液体試料の最遠点(距離d=1cm)においても紫外線照度は大きく、入射時の照度とほとんど変わらない。反対に吸光度AがA=1cm-1のように大きい場合、紫外線照射面から距離d=0.3cmにおいて紫外線照度は入射光の半分程度まで減衰する。このことからも、吸光度Aが大きい液体には紫外線照射による殺菌、消毒は不向きであることが分る。
これに対して、本実施形態では、上述のように、スリットノズル13により飲料水を膜状にして噴射して紫外線が照射される箇所の厚みを制限することで、吸光度Aが高い飲料水の場合でも最遠点で高い紫外線照度を達成し、紫外線殺菌、消毒を行うことを可能としている。
【0018】
図4は、大腸菌ファージMS2が混入した液体試料に紫外線を照射したときの大腸菌ファージMS2の生残率Sと紫外線照射量H(mJ/cm2)との関係を、液体試料の液表面から最遠点までの距離d(すなわち、厚み)を異ならせて実験した結果を示す図であり、図4(A)〜図4(C)は、それぞれ液体試料の吸光度Aが、1.0cm-1、2.0cm-1、3.0cm-1の場合を示している。
また図5は、大腸菌ファージMS2の生残率Sと紫外線照射時間t(sec:秒)との関係を、液体試料の液表面から最遠点までの距離dを異ならせて実験した結果を示す図であり、図5(A)〜図5(C)は、それぞれ液体試料の吸光度Aが、1.0cm-1、2.0cm-1、3.0cm-1の場合を示している。
【0019】
なお、以下の説明では、液体試料の液表面での紫外線照度である入射光照度I0(mW/cm2)と、液体試料表面から水深(距離)dの測定点での紫外線照度である出射光照度Id(mW/cm2)の比を照度比IEと言うことにする。この入射光照度I0は、化学線量計(ヨウ化カリウム溶液)によって試料表面の紫外線強度を測定したものである。この入射光照度I0を吸光度A及び距離dにて補正した試料内の平均紫外線強度と、紫外線照射時間tとの積により上記紫外線照射量Hが求められる。
【0020】
照度比IEは、入射光照度I0が一定である場合、厚みが増加して距離dが大きくなるほど液体試料に吸収される紫外線量が増加し出射光照度Idが減少することから、厚みの増加に応じて小さくなる。換言すれば、照度比IEが小さくなると、出射光照度Idが減ることから、この箇所での殺菌能力が低下する。このため、図4及び図5に示すように、吸光度Aが異なる液体試料の全てに共通して、照度比IEが低下するほど、生残率Sが高くなる。
【0021】
また、照度比IEが一定である場合には、出射光照度Idは入射光照度I0に応じて大きくなるため、入射光照度I0の紫外線照射量Hが大きいほど殺菌能力が高められる。また、紫外線照射量Hが一定であれば、紫外線照射時間tが長くなるほど殺菌能力が高められる。したがって、図4及び図5に示すように、吸光度Aが異なる液体試料の全てに共通して、紫外線照射量Hが大きいほど、或いは紫外線照射時間tが長くなるほど生残率Sが低下する。
しかしながら、図4及び図5に示すように、照度比IEが20%以下の場合には、上記の傾向とは異なり、紫外線照射量Hを大きくし、或いは紫外線照射時間tを長くしても、全ての吸光度Aにおいて、生残率Sがばらつき、また、比較的高いオーダー(大凡10-2)で飽和する傾向が見られる。
【0022】
すなわち、液体殺菌装置3においては、照度比IEが20%以下となると、紫外線照射器11の紫外線照射量Hや紫外線照射時間tの制御では、十分な殺菌能力が得られない。
そこで本実施形態では、液体試料の厚み(距離d)を照度比IEが20%以上となる厚みに制限し、これにより、紫外線照射量H及び紫外線照射時間tに応じて微生物の生残率Sを減少させ、効率の良い殺菌を実現している。
【0023】
図6は、照度比IEごとに紫外線照射量H(mJ/cm2)と生残率Sの関係を示す図である。なお、同図のデータは、水深(距離d)を小さくしつつ、吸光度Aを1〜3cm-1と高くした実験条件で測定したものである。
同図のグラフにおいて、紫外線照射量Hと生残率Sとの関係を直線近似し、その傾きから、紫外線照射量Hに対する反応速度定数Dt(mJ/cm2)を求めた。この反応速度定数Dtは、図6の実験条件において大腸菌ファージMS2を90%不活化するのに要した紫外線照射量Hを示すものであり、図6において、「反応速度定数Dt=ln(10)/傾き」として求められる。なお、図6の直線近似においてはテーリングに相当するデータを除いている。
【0024】
水深(距離d)方向に対する光の減衰を考慮して試料内の平均紫外線強度で生残率Sを表することができる。その理由は、Id=I0×10-Adにおいて、水深(距離d)と吸光度Aが十分に小さい場合、つまり吸光度A=10-3(cm-1)程度と十分に小さい場合は、吸光度Aによる影響が無視できると考えられるためである。
水深(距離d)が小さく、なおかつ吸光度Aが例えば吸光度A=10-3(cm-1)と小さい試料を基準試料として用いた実験における大腸菌ファージMS2の90%不活化に要した紫外線照射量Hである不活化速度定数Diを事前に求めておき、この不活化速度定数Diを用いて生残率Sから再度、平均紫外線量を算出した。このようにして算出した平均紫外線量を換算等価紫外線量RED(mJ/cm2)と定義する。この換算等価紫外線量REDは、微生物が吸収した紫外線照射量Hである。
すると、図4〜図6において、
生残率S=exp(−平均紫外線量/反応速度定数Dt) (2)
ln(生残率S)=−(平均紫外線量/反応速度定数Dt) (3)
−ln(生残率S)×不活化速度定数Di
=換算等価紫外線量RED
=反応速度定数Dt×−ln(生残率S) (4)
が得られる。
【0025】
図7は、図4〜図6の実験結果から求められる反応速度定数Dtと吸光度Aの関係を示す図である。
本来、Lambert Beer則に従って水深方向へ光が減衰するため、照度比IEが同じであれば理論上(計算上)は同じ換算等価紫外線量REDとなる。したがって、上記(4)式の関係にも示されるように、基準試料の不活化速度定数Diと、吸光度Aが比較的大きい試料に対する反応速度定数Dtとは理論上同じとなる。
しかしながら、実際には、図7に示すように、吸光度Aが大きくなるに従って反応速度定数Dtが小さくなる傾向が見られ、不活化速度定数Diとの間に差が生じる、との知見を発明者等は得た。
【0026】
図8は、反応速度定数Dt/不活化速度定数Di(以下、「紫外線照射量比」と言う)と、照度比IEとの関係を吸光度Aごとに示す図である。なお、基準試料の不活化速度定数Diの実験値として21.4(mJ/cm2)を用いている。
この図8によれば、近似により、
紫外線照射量比=反応速度定数Dt/不活化速度定数Di
=Z×IE+1(但し、Zは吸光度Aを変数とした関数) (5)
と表せるため,吸光度Aがゼロに近づけば、すなわち、試料の透過率が非常に高ければ、紫外線照射量Hの比は1に漸近する。
【0027】
このZ(傾き係数)について、吸光度Aを変数とした近似式を求めると、図9に示すように、二次方程式で近似される。(ただ切片はゼロとしている。)
Z=1.39×10-1×A2+2.26×10-1×A (6)
【0028】
以上のことから、必要とされる(照射したい)紫外線照射量HをB(mJ/cm2)とすると、少なくとも今回の実験条件である吸光度A≦3cm-1の場合には、実際に照射される紫外線照射量Hは、必要とされる紫外線照射量Bに対して減衰率Kで減衰する。
実際に照射される紫外線照射量H=B×K (7)
なお、減衰率Kは上記紫外線照射量比と同じであり吸光度Aの関数によって表され、
減衰率K=Z×IE+1 (8)
Z=1.39×10-1×A2+2.26×10-1×A (9)
である。
【0029】
したがって、吸光度AがA=2.5cm-1の飲料水を、照度比IE=Id/I0=0.4(=40%)で殺菌する場合には、水深(距離d)は、式(1)にしたがいd=0.159cmに制限される。式(9)にしたがってZ=1.43、式(8)にしたがって減衰率K=1.57が求められ、対象に照射したい紫外線照射量Bを40mJ/cm2とすると、実際に照射しなければならい紫外線照射量Hの補正値は、式(7)にしたがって、62.9mJ/cm2と求められる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、紫外線が照射される箇所での飲料水の厚み(距離d)を所定の厚みに制限する厚み制限部としてのスリットノズル13を備えるため、飲料水の深部で高い紫外線照度を達成し液表面のみならず深部も充分に紫外線殺菌することができる。これにより、飲料水を熱処理で殺菌せずに済むため、殺菌により風味が損なわれることがなく、また殺菌による変質を抑制することができる。
【0031】
また本実施形態によれば、所望の殺菌能力を得るために必要な紫外線照射量Bを、殺菌対象の飲料水の吸光度Aに起因する、不活化速度定数Di及び反応速度定数Dtの差に基づいて(すなわち、上記式(7)の減衰率Kに基づいて)、所望の殺菌能力を得るために必要な紫外線照射量Bを補正し、補正した紫外線照射量Hの紫外線を飲料水の厚みを制限した箇所に照射して殺菌を行う構成とした。
これにより、吸光度Aが異なる飲料水のそれぞれに、所望の殺菌能力を得るために必要な紫外線照射量Bを適切に照射して、十分な殺菌を行うことができる。
【0032】
さらに本実施形態によれば、照度比IEが20%以上となるように、紫外線照射箇所の厚みを制限したため、紫外線照射量Hの増加に対して殺菌能力が飽和することなく、効率の良い殺菌が実現できる。
また、紫外線照射量Hの増加に対して殺菌能力が飽和しないように厚みを規定した後に、上記減衰率Kに基づいて、所望の殺菌能力を得るために必要な紫外線照射量Bを補正して照射することで、殺菌能力に飽和を生じることなく補正後の紫外線照射量Hで確実に所望の殺菌能力を得ることができる。
【0033】
本実施形態の液体殺菌装置3では、前掲図1に示すように、膜状にした飲料水の両側から紫外線を照射して殺菌するため、上記照度比IEを決定する際の出射光照度Idの値には、液表面から最遠点ではなく、図10の模式図に示すように、厚み方向の中心点Cでの値が用いられる。そして、上記のようにして求めた紫外線照射量Hの紫外線を、膜状にした飲料水の両側から照射することで、この飲料水を十分に殺菌することができる。
また本実施形態によれば、飲料水の両側から紫外線を照射するため、殺菌のムラを確実に抑制することができる。
【0034】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、スリットノズル13により紫外線を照射する箇所での飲料水の厚みを制限した。しかしながら、厚みを制限する手段として、照度比IEが20%以上となる厚みを実現できる手段であれば、スリットノズル13に限らず任意の手段を用いることができ、例えば、多数の細い管体を並列に並べ、各管体に飲料水を通しつつ紫外線を照射しても良い。
また例えば、図11に示すように、直管型の紫外線ランプ117を納めた紫外線透過材で形成された筒状のランプスリーブ130を、飲料水が流れる流通管132の中に同軸に納め、ランプスリーブ130と流通管132との間の隙間に飲料水を流通させることで、紫外線ランプ117で照射される箇所の飲料水の厚みを制限する構成としても良い。かかる構成によれば、ランプスリーブ130を納めた流通管132を直列に複数接続することで、飲料水への紫外線照射時間tを延ばすことができ、殺菌能力を簡単に高めることができる。
【0036】
また例えば、上述した実施形態では、飲料水の両側から紫外線を照射して殺菌する場合を例示したが、これに限らず、飲料水の片側から紫外線を照射する構成としても良い。
また、上述した実施形態では、吸光度Aが大きな飲料水を紫外線殺菌する場合を例示したが、飲料水に限らず、任意の液体の紫外線殺菌に本発明を用いることができることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 液体殺菌システム
3 液体殺菌装置
11 紫外線照射器
13 スリットノズル(厚み制限部)
17、117 紫外線ランプ
19 反射板
d 距離(厚み)
A 吸光度
S 生残率
i 不活化速度定数
t 反応速度定数
H 紫外線照射量
K 減衰率(=Dt/Di)
E 照度比
d 出射光照度
0 入射光照度
d 距離
t 紫外線照射時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を液体に照射して殺菌する液体殺菌方法において、
前記紫外線が照射される箇所での液体の厚みを所定の厚みに制限したことを特徴とする液体殺菌方法。
【請求項2】
所望の殺菌能力を得るために必要な紫外線照射量を、前記液体の吸光度の差異に起因する不活化速度定数及び反応速度定数の差に基づいて補正し、補正した紫外線照射量の紫外線を照射して前記液体を殺菌することを特徴とする請求項1に記載の液体殺菌方法。
【請求項3】
前記厚みを制限した箇所の厚みを、殺菌する微生物の生残率の低下が紫外線照射量の増加に対して飽和しない範囲の厚みに制限したことを特徴とする請求項2に記載の液体殺菌方法。
【請求項4】
紫外線を照射する紫外線照射器を備え、当該紫外線を液体に照射して殺菌する液体殺菌装置において、
前記紫外線が照射される箇所での液体の厚みを所定の厚みに制限する厚み制限部を備えることを特徴とする液体殺菌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−212573(P2011−212573A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82575(P2010−82575)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】