説明

液体洗剤組成物

【課題】貯蔵時の液体洗剤組成物中のプロテアーゼ活性が十分抑制でき、保存前と長期間保存後とを比較して、洗浄性の低下が少ない液体洗剤組成物を提供すること。
【解決手段】プロテアーゼ(A)、下記プロテアーゼ活性阻害剤(B)、界面活性剤(C)及び溶剤(D)を含有する液体洗剤組成物。
プロテアーゼ活性阻害剤(B):配列番号1〜11のいずれか1つのアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列であるプロテアーゼ活性阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼは、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素群の総称で、微生物、動物及び植物中に広く存在が知られている。その応用分野としては、衣料用洗浄剤、自動食器洗浄機用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、浴用剤、角質除去用化粧料、食品の改質剤(製パン、肉の軟化、水産加工等)、ビールの清澄剤、皮革なめし剤、写真フィルムのゼラチン除去剤、消化助剤及び消炎剤等があり、多くの分野で盛んに利用されている。
周知の通り、プロテアーゼ等の酵素は、分解力の高さから今や洗剤に欠かすことのできないものとなっている。一方、洗剤は使い勝手の点で従来の固形洗剤から液体洗剤へ形態が変わりつつある。しかしながら、プロテアーゼは、液体洗剤中でプロテアーゼ自身や他の酵素を加水分解してしまう。このため、プロテアーゼ自身や他の酵素の活性が経時的に著しく低下し、液体洗剤の洗浄性が著しく低下するという問題が発生している。
そこで、プロテアーゼや他の酵素の加水分解を抑えるために、プロテアーゼ活性を阻害するプロテアーゼ活性阻害剤の研究が行われている。例えば、ボロニックアシッドがセリンプロテアーゼやズブチリシンの活性を阻害することが知られている(非特許文献1)。また、4−置換フェニルボロン酸がプロテアーゼの活性を阻害することが知られている(特許文献1)。
しかしながら、これらのプロテアーゼ活性阻害剤を含む液体洗剤では、一定の効果はあるものの、貯蔵時のプロテアーゼ活性を十分阻害できるとは言えず、洗浄性の低下が抑制できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−507680号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Molecular & Cellular Biochemistry,51,1983,p5−p32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、貯蔵時の液体洗剤組成物中のプロテアーゼ活性が十分抑制でき、保存前と長期間保存後とを比較して、洗浄性の低下が少ない液体洗剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の液体洗剤組成物は、プロテアーゼ(A)、下記プロテアーゼ活性阻害剤(B)、界面活性剤(C)及び溶剤(D)を含有する液体洗剤組成物である。
プロテアーゼ活性阻害剤(B):配列番号1〜11のいずれか1つのアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列であるプロテアーゼ活性阻害剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体洗剤組成物は、長期的に洗浄性を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明においてプロテアーゼ(A)とは、ペプチド又はタンパク質を基質として加水分解を触媒する酵素である。(A)としては、セリンプロテアーゼ(A−1)、アスパラギン酸プロテアーゼ(A−2)、システインプロテアーゼ(A−3)及び金属プロテアーゼ(A−4)が含まれる。
【0009】
セリンプロテアーゼ(A−1)は、触媒残基としてセリン残基をもつプロテアーゼであり、キモトリプシン、トリプシン、トロンビン、プラスミン、エラスターゼ、スブチリシン及びケキシン等が含まれる。具体的には、ブタすい臓由来トリプシン、バシラス菌(Bacillus)由来のサブチリシン Novo、サブチリシン Carlsberg、サブチリシン 309、サブチリシン 147及びサブチリシン 168が挙げられる。
市販のセリンプロテアーゼ(A−1)としては、ノボザイムス社製のアルカラーゼ、サビナーゼ、エバラーゼ、PTN及びジェネンコア社のピュラフェクト、ピュラフェクト OXP等が挙げられる。
【0010】
アスパラギン酸プロテアーゼ(A−2)は、活性中心にアスパラギン酸の存在するプロテアーゼであり、ペプシン、カテプシンD、レニン及びキモシン等が含まれる。具体的には、ヒト胃由来のペプシン等が挙げられる。
【0011】
システインプロテアーゼ(A−3)は、チオール基が活性中心に存在するプロテアーゼであり、パパイン、ブロメライン、フィシン、アクチニジン、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL及びショウガプロテアーゼ等が含まれる。
【0012】
金属プロテアーゼ(A−4)は、活性中心に金属イオンを含むプロテアーゼであり、例えば、サーモライシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB及びコラゲナーゼ等が挙げられる。
【0013】
上記プロテアーゼ(A)のうち、洗浄性の観点から、セリンプロテアーゼ(A−1)が好ましく、さらに好ましくはスブチリシンである。
【0014】
本発明において、液体洗剤組成物中のプロテアーゼ(A)の含有量は、洗浄性の観点から、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量を基準として、0.00000001〜0.1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.0000004〜0.01重量%、次にさらに好ましくは0.00001〜0.01重量%、特に好ましくは0.0004〜0.01重量%である。
プロテアーゼ(A)の濃度が0.00000001重量%以上であることで、洗浄性が良好となる。また、0.1重量%以下であることで、添加量に見合った洗浄性を得られる。
【0015】
本発明においてプロテアーゼ活性阻害剤(B)は、配列番号1〜11のいずれか1つのアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも選ばれる1種により変質したアミノ酸配列であるプロテアーゼ活性阻害剤である。
本発明において、(B)はプロテアーゼ活性阻害の機能を保持するものであり、配列番号1〜11のいずれか1つのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列であるプロテアーゼ活性阻害剤とは、プロテアーゼ活性の点において配列番号1〜11のアミノ酸配列と等価であるアミノ酸配列を意味する。
欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質されたアミノ酸の個数は、プロテアーゼ活性阻害剤の機能を保持する観点から、1〜10個が好ましく、さらに好ましくは1〜5個である。
プロテアーゼ活性阻害剤(B)の機能とは、プロテアーゼ(A)と可逆的に結合し、プロテアーゼ(A)の活性を阻害することである。
【0016】
本発明において、付加には、アミノ酸配列の両末端への1又は数個のアミノ酸の付加が含まれ、例えば、酵素精製のためのタグ配列を付加することが含まれる。
【0017】
上記プロテアーゼ活性阻害剤(B)は、配列番号1〜11のいずれか1つのアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列と等価のアミノ酸配列であるプロテアーゼ活性阻害剤をコードする遺伝子を微生物等の宿主に導入し、宿主を培養液中で培養し、培養液中からプロテアーゼを採取及び精製することによって生産することができる。
【0018】
なお、この等価のアミノ酸配列からなるプロテアーゼ活性阻害剤(B)をコードする遺伝子は、自然界等から得ることも可能であるが、さらに部位特異的突然変異誘発法等の公知の手法を利用して調製することもできる。
【0019】
(B)を生産する際の宿主としては、動物細胞、微生物及び植物細胞等が挙げられる。
動物細胞としては、特に限定されないが、昆虫細胞、サル細胞COS−7、Vero、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞及びCHO細胞等が挙げられる。
昆虫細胞としては、特に限定されないが、具体的には、Sf9細胞及びSf21細胞等が挙げられる。
微生物としては、特に限定されないが、細菌及び酵母等が挙げられる。
細菌としては、真正細菌及び古細菌が含まれる。
真正細菌には、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が含まれる。グラム陰性細菌としては、エシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)等が挙げられる。グラム陽性菌としては、バチルス属(Bacillus属)、ストレプトマイセス属(Streptmyces属)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium属)、ブレビバチルス属(Brevibacillus属)、ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium属)、ラクトコッカス属 (Lactococcus属)、エンテロコッカス属 (Enterococcus属)、ペディオコッカス属(Pediococcus属)、リューコノストック属 (Leuconostoc属)、ストレプトマイセス属(Streptomyces属)等が挙げられる。
植物細胞としては、特に限定されないが、BY−2細胞等が挙げられる。
【0020】
(B)を生産する際の宿主としては、クローニングの容易さの観点から、微生物が好ましく、さらに好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)及びシネコシスティス属(Synechocystis属)であり、特に好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、シュワネラ属菌(Shewanella)、バチルス属(Bacillus属)及びブレビバチルス属(Brevibacillus属)である。
【0021】
培養は微生物の資化可能な炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従って行えばよい。
【0022】
培養液からプロテアーゼ活性阻害剤(B)を精製及び採取する方法としては、常法に従って行うことができる。例えば、培養物から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段により目的酵素を濃縮することができる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
【0023】
本発明において、液体洗剤組成物中のプロテアーゼ活性阻害剤(B)の含有量は、洗浄性を長期間保つ観点から、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量を基準として、0.0000000001〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.000001〜2重量%、次にさらに好ましくは0.0001〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1.5重量%である。
【0024】
本発明において、液体洗剤組成物中のプロテアーゼ(A)及びプロテアーゼ活性阻害剤(B)の含有量は、SDS−PAGEにおいて目的のバンドの濃さを定量することによって測定することができ、具体的には、同一のゲルにおいて電気泳動を行ったBSA(ウシ血清アルブミン)との比較を行うことによって測定される。
【0025】
本発明において、液体洗剤組成物中のプロテアーゼ活性阻害剤(B)とプロテアーゼ(A)の重量比((B)の重量/(A)の重量)は、0.01〜500が好ましく、さらに好ましくは0.1〜500、次にさらに好ましくは0.5〜500、特に好ましくは1〜500、最も好ましくは1〜120である。
(B)と(A)との含有量の比が0.01以上であることで、プロテアーゼ活性を十分抑制でき、長期間保存後も洗浄性を保つことができる。また、500以下であることで、洗浄時にプロテアーゼ活性が効率よくもどり、洗浄性が良好である。
【0026】
液体洗剤組成物中のプロテアーゼ活性阻害剤(B)とプロテアーゼ(A)とのモル比{(B)のモル数/(A)のモル数}は、0.01〜200が好ましく、さらに好ましくは0.5〜150であり、次にさらに好ましくは0.5〜100であり、特に好ましくは0.5〜20であり、最も好ましくは1〜20である。
プロテアーゼ(A)とプロテアーゼ活性阻害剤(B)のモル比が0.01以上であることで、プロテアーゼ活性を十分抑制でき、長期間保存後も洗浄性を保つことができる。200以下であることで、洗浄時にプロテアーゼ活性が効率よくもどり、洗浄性が良好である。
【0027】
本発明において、界面活性剤(C)は、ノニオン性界面活性剤(C−1)、アニオン性界面活性剤(C−2)、カチオン性界面活性剤(C−3)及び両性界面活性剤(C−4)が挙げられる。
【0028】
ノニオン性界面活性剤(C−1)としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)[具体的には、オレイルアルコールエチレンオキサイド11モル付加物等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)グリコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[具体的には、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)及びジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[具体的には、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール及びモノラウリン酸ソルビタン等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(ポリ)アルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜8,重合度=1〜100)[具体的には、ソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド(重合度=10)付加物及びメチルグルコースジオレエートエチレンオキサイド(重合度=50)付加物等]、脂肪酸N−ヒドロキシアルキルアミド[具体的には、1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及び1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、アルキル(炭素数1〜22)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)フェニルエーテル、アルキル(炭素数8〜24)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)−アミノアルキル(炭素数8〜24)−エーテル及びアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0029】
アニオン性界面活性剤(C−2)としては、炭素数8〜24のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンエーテルカルボン酸又はその塩[具体的には、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩[具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸ナトリウム及びラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸−トリエタノールアミン塩等]、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸スルホン酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩[具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩等]、炭素数8〜24のアルキルリン酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル塩[具体的には、ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[具体的には、ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[具体的には、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
【0030】
カチオン性界面活性剤(C−3)としては、第4級アンモニウム塩型[具体的には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]及びアミン塩型[具体的には、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0031】
両性界面活性剤(C−4)としては、ベタイン型両性界面活性剤[具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[具体的には、β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0032】
界面活性剤(C)としては、1種又は2種以上を使用することができる。2種以上の界面活性剤を使用する場合、その組み合わせとしては、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0033】
界面活性剤(C)として、洗浄性の観点から、ノニオン性界面活性剤単独での使用、及びノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との組み合わせでの使用が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、洗浄性の観点から、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)エチレンオキサイド付加物(重合度=1〜100)が好ましく、さらに好ましくは脂肪族アルコール(炭素数12〜18)エチレンオキサイド付加物(重合度4〜20)、次にさらに好ましくは脂肪族アルコール(炭素数12〜15)エチレンオキサイド付加物(重合度=8〜12)、特に好ましくはオレイルアルコールエチレンオキサイド11モル付加物である。
アニオン性界面活性剤としては、洗浄性の観点から、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩、脂肪酸塩、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩が好ましく、さらに好ましくは、炭素数12〜16のアルキルフェニルスルホン酸塩及び炭素数8〜16の脂肪酸塩、次にさらに好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩及びラウリン酸ナトリウムであり、特に好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩である。
【0034】
本発明の液体洗剤組成物に含まれる界面活性剤(C)の含有量は、洗浄性の観点から(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量を基準として、1〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。
【0035】
本発明において、溶剤(D)としては、水、有機溶剤及びこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
水としては、特に限定されるものではなく、水道水、イオン交換水、蒸留水及び逆浸透水等が挙げられる。また、水中に、後述するpH調整剤(L)を含むバッファー水溶液等が挙げられる。
【0037】
有機溶剤としては、アルコール(炭素数1〜18のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)、エーテル(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル及び環状エーテル等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、脂肪族又は脂環式炭化水素(n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等)及びふっ素含有化合物(テトラフルオロエチレン等)等が挙げられる。これらの有機溶剤のうち、プロテアーゼ(A)及びプロテアーゼ活性阻害剤(B)の安定性の観点からスルホキシドが好ましい。
【0038】
溶剤(D)としては、プロテアーゼ(A)及びプロテアーゼ活性阻害剤(B)の溶解性の観点から、スルホキシド及び水が好ましく、さらに好ましくは水であり、特に好ましくはpH調整剤(L)を含むバッファー水溶液である。
【0039】
本発明の液体洗剤組成物に含まれる溶剤(D)の含有量は、洗浄性の観点から、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量を基準として、4.9〜98.9999999899重量%が好ましく、さらに好ましくは47.99〜89.9999986重量%、次にさらに好ましくは57.99〜79.99989重量%、特に好ましくは58.49〜79.9896重量%である。
【0040】
本発明における液体洗剤組成物には、上記のプロテアーゼ(A)、プロテアーゼ活性阻害剤(B)、界面活性剤(C)及び溶剤(D)以外に、無機塩(E)、糖(F)、アミノ酸(G)、低分子有機化合物(H)、脂肪酸(I)、油脂(J)、プロテアーゼ以外の酵素(K)、pH調整剤(L)、ビルダー(M)、アルカリ剤(N)及びキレート剤(O)を含有することができる。
【0041】
無機塩(E)として、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0042】
糖(F)として、トレハロース、スクロース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸等が挙げられる。
【0043】
アミノ酸(G)として、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ロイシン、リシン、ヒスチジン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、イソロイシン、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニン、アルギニン、バリン及びそれらの塩等が挙げられる。
【0044】
脂肪酸(I)として、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0045】
油脂(J)としては、上記脂肪酸(I)のモノ、ジ、トリグリセリドが挙げられる。
【0046】
その他の低分子有機化合物(H)としては、酢酸ベンジル、メチルサリチル酸、ベンジルサリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、けい皮酸、カフェ酸、カテキン類、アスコルビン酸及びカロテノイド等が挙げられる。
【0047】
プロテアーゼ以外の酵素(K)としては、セルラーゼ(K−1)、アミラーゼ(K−2)、リパーゼ(K−3)及びオキシドレダクターゼ(K−4)が挙げられる。
【0048】
セルラーゼ(K−1)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。セルラーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。セルラーゼとしては、バチラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のセルラーゼやフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)から生産されるセルラーゼとして米国特許第4,435,307号明細書に開示されているもの等が含まれる。また、特に適当なセルラーゼは色彩保護(color care)に役立つセルラーゼであり、欧州特許出願第0 495 257号明細書に記載されたセルラーゼが含まれる。
市販のセルラーゼとしては、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)の株により生産されたノボザイムス社のCelluzymeTM、ノボザイムス社製EndolaseTM、CarezymeTM及び花王社のKAC−500(B)TM等が挙げられる。
【0049】
アミラーゼ(K−2)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。アミラーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。アミラーゼとしては、英国特許第1,296,839号明細書に詳細に記載されているB.リヘニフォルミス(B. licheniformis)の特殊株から得られるα−アミラーゼ等が挙げられる。
市販のアミラーゼとしては、ノボザイムス社の DuramylTM、TermamylTM、FungamylTM及びBANTM並びにGist−Brocades社のRapidaseTM及びMaxamyl PTM等が挙げられる。
【0050】
リパーゼ(K−3)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。リパーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。リパーゼの例としては、フミコーラ・ランギノーザ(Humicola lanuginosa)リパーゼ(欧州特許第258 068号明細書及び欧州特許第305 216号明細書)、リゾムーコル・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ及びカンジダ(Candida)リパーゼ(欧州特許第238 023号明細書)、C.アンタークティカ(C.ntarctica)リパーゼA及びB、シュードモナス(Pseudomonas )リパーゼ(欧州特許第214 761号明細書)、P.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)、P.アルカリゲネス(P.alcaligenes)リパーゼ(欧州特許第218 272号明細書)、P.セパシア(P.cepacia)リパーゼ(欧州特許第331 376号明細書)、P.スタッツェリ(P.stutzeri)リパーゼ、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)リパーゼ、バシラス(Bacillus)リパーゼ(英国特許第1,372,034号明細書)、B.サチリス(B.subtilis)リパーゼ(Dartois 他, (1993), Biochemica et Biophysica Acta 1131,253−260)、B.ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)リパーゼ(特公昭64−744992号公報)及びB.ピュミルス(B.pumilus)リパーゼ(国際公開第91/16422号)等が挙げられる。
【0051】
市販のリパーゼとしては、ジェネンコア社の M1 LipaseTM、Luma fastTM及びLipomaxTM、ノボザイムス社のLipolaseTM及びLipolase UltraTM並びに天野エンザイム社のLipase P“Amano”TM等が挙げられる。
【0052】
オキシドレダクターゼ(K−4)としては、ペルオキシダーゼ及びオキシダーゼ(例えばラッカーゼ)が含まれる。
ペルオキシダーゼとしては、植物、細菌又は真菌起源のものが含まれる。ペルオキシダーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。ペルオキシダーゼとしては、洗浄性の観点から、コプリナス(Coprinus)(例えばC.シネレウス(Coprinus cinereus)又はC.マクロリザス(C.macrorhizus)の菌株由来のもの)、バシラス(Bacillus)(B.ピュミラス(B.pumilus)の菌株由来のもの)及び国際公開第91/05858号に記載されたペルオキシダーゼが好ましく、特に好ましくは国際公開第91/05858号に記載されたペルオキシダーゼである。
ラッカーゼとしては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。ラッカーゼとしては、トラメテス(Trametes)(例えばT.ビロサ(T.villosa)又はT.ベルシコロール(T.versicolor)の菌株由来のもの]、コプリナス(Coprinus)[例えばC.シネレウス(C.cinereus)の菌株由来のもの]及びミセリオフトラ(Myceliophthora)[例えばM.サーモフィラ(M.thermophlla)の菌株由来のもの]等が挙げられる。
【0053】
本発明の液体洗剤組成物は、洗浄性の観点から、プロテアーゼ以外の酵素(K)を2種以上を含んでもいい。2種以上を含む場合、セルラーゼとリパーゼとの組み合わせ及びセルラーゼとアミラーゼとの組み合わせ等が挙げられる。
【0054】
pH調整剤(L)としては、従来のpH調整剤が使用でき、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、Trisバッファー、HEPESバッファー、硫酸、塩酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、蟻酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等が挙げられる。
【0055】
ビルダー(M)としては、液体洗剤に用いられる公知のものを用いることができ、具体的には、CMC等の再汚染防止剤等が挙げられる。
【0056】
アルカリ剤(N)として、苛性ソーダ、ソーダ灰、アンモニア、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン及びトリポリリン酸ソーダ等が挙げられる。
【0057】
キレート剤(O)としては、液体洗剤に用いられる公知のものを用いることができる。具体的には、アミノポリ酢酸(ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸及びジエンコル酸等)、有機酸(ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸及びカルボキシメチル酒石酸等)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属若しくは低級アミン塩等が挙げられる。
【0058】
本発明の液体洗剤組成物に含まれる無機塩(E)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜10%が好ましく、さらに好ましくは0〜5%、特に好ましくは0〜3%である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれる糖(F)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜50%が好ましく、さらに好ましくは0〜30%、特に好ましくは0〜20%である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれるアミノ酸(G)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜50%が好ましく、さらに好ましくは0〜30%、特に好ましくは0〜20%である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれる低分子有機化合物(H)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜50%が好ましく、さらに好ましくは0〜30%、特に好ましくは0〜20%である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれる脂肪酸(I)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜50%が好ましく、さらに好ましくは0〜30%、特に好ましくは0〜20%である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれる油脂(J)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜50%が好ましく、さらに好ましくは0〜30%、特に好ましくは0〜20%である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれるプロテアーゼ以外の酵素(K)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜50%が好ましく、さらに好ましくは0〜30%、特に好ましくは0〜20%である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれるpH調整剤(L)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し1〜25%が好ましく、さらに好ましくは1〜15%、特に好ましくは1〜10%である。
本発明の液体洗剤組成物中に含まれるビルダー(M)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜3、次にさらに好ましくは0〜1である。
本発明の液体洗剤組成物に含まれるアルカリ剤(N)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0.1〜4、次にさらに好ましくは0.5〜3である。
本発明の液体洗剤組成物中に含まれるキレート剤(O)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から液体洗剤組成物の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜3、次にさらに好ましくは0〜2である。
【0059】
本発明における液体洗剤組成物のpHは、洗浄性の観点から、1%(w/w)水溶液で7〜11が好ましく、さらに好ましくは7〜10である。
液体洗剤組成物中のpHは、pH調整剤(L)によって適宜調整できる。
【0060】
本発明の液体洗剤組成物は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)溶剤(D)に界面活性剤(C)を加え、25℃で均一になるまで撹拌する。
(2)プロテアーゼ(A)、プロテアーゼ活性阻害剤(B)及びプロテアーゼ以外の酵素(K)以外の成分を所定量添加し均一に溶解させる。
(3)プロテアーゼ活性阻害剤(B)を加え、25℃で均一になるまで攪拌する。
(4)最後にプロテアーゼ(A)及び必要によりプロテアーゼ以外の酵素(K)を添加し溶解させ、液体洗剤組成物を製造する。
【0061】
本発明の液体洗剤組成物の使用方法は、従来の液体洗剤組成物の使用方法と同じでよく、特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)洗濯物が入った洗濯機に水道水を張り、液体洗剤組成物を25℃で添加し、軽く撹拌して溶解させる。
(2)洗濯機で洗濯物を洗浄する。
(3)洗濯機から液を抜き、水道水で1〜2回すすぐ。
(4)適宜脱水をかける。
【実施例】
【0062】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
<製造例1>
配列番号1〜11のアミノ酸配列をコードする遺伝子(配列番号12〜22)(北海道システム・サイエンス社に人工合成を依頼したもの)をそれぞれ制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。そのBL21(DE3)大腸菌株にこのプラスミドを形質転換してプロテアーゼ阻害剤遺伝子発現株を11種類作成した。
【0064】
11種類のプロテアーゼ阻害剤遺伝子発現株をそれぞれLB培養液(アンピシリン 100mg/L含有)1mLに植菌して30℃で12時間培養を行い、終夜培養液を作成し、0.5mlをLB培養液(アンピシリン 100mg/L含有)5mlに植菌して30℃3時間振とう培養を行い4種類の前培養液を作成した。4種類の前培養液をそれぞれ50mLの培養液(水50mL中のそれぞれの成分の含有量は、酵母エキス(日本製薬社製)1.2g、ポリペプトン(日本製薬社製)0.6g、リン酸2カリウム0.47g、リン酸1カリウム0.11g、硫酸アンモニウム0.35g、リン酸2ナトリウム12水和物0.66g、クエン酸ナトリウム2水和物0.02g、グリセロール0.2g、ラクトアルブミン水解物1.5g、消泡剤(信越シリコーン製、「KM−70」)0.3g、1mM硫酸マグネシウム、微量金属溶液(塩化カルシウム18.9μg、塩化鉄(III)500μg、硫酸亜鉛7水和物9.0μg、硫酸銅5.1μg、塩化マンガン4水和物6.7μg、塩化コバルト4.9μg、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム200μg)、100mg/Lアンピシリン)に植菌し微生物培養装置(エイブル社製、製品名「BioJr.8」)を用いてpH6.8、30℃を維持したまま培養を行った。培養開始後1M IPTG溶液を0.15mLを加えた。培養開始14時間後から、グリセリン/タンパク質溶液(50% グリセリン、50g/L ラクトアルブミン水解物、33g/L 消泡剤(信越シリコーン製、「KM−70」)、100mg/L アンピシリン)の滴下を開始した。培養開始後、48時間目に培養液(R−1)〜(R−11)を回収した。
【0065】
得られた培養液(R−1)〜(R−11)から遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて菌体を分離し上清のみを回収した。その後、上清25mlに1M CaCl2水溶液を25μlとイソプロパノール6.25ml加えて、遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて沈殿除去を行った後、限外ろ過膜(Millipore社製「アミコンウルトラ−15」分画分子量10000)を用いて、1ml程度になるまで上清の濃縮を行い、配列番号1〜11のプロテアーゼ阻害剤(B−1)〜(B−11)を得た。
【0066】
(B−1)〜(B−11)を1μLと、クマシーブリリアントブルーとSDSを含むSDS−PAGEサンプル処理液1μL(アトー社製「イージーステイン・アクア」を混合し、ポリアクリルアミドゲル(アトー社製、e・パジェル 5〜20%)を用いて20mAで60分間電気泳動した。同様に処理した1μg、3μgおよび5μLのウシ血清アルブミン(和光純薬工業社製)とのバンドの濃さの比較から、(B−1)〜(B−11)中のプロテアーゼ阻害剤の濃度を決定しところ、全て1μg/μLであった。したがって、(B−1)〜(B−11)中のそれぞれのプロテアーゼ阻害剤のモル濃度は、(B−1)が32μM、(B−2)が88μM、(B−3)が139μM、(B−4)が179μM、(B−5)が132μM、(B−6)が119μM、(B−7)が47μM、(B−8)が92μM、(B−9)が90μM、(B−10)が65μM、(B−11)が159μMである。
【0067】
<実施例1〜80>
表1〜4の割合で25℃で配合し、本発明の液体洗剤組成物を得た。
<比較例1〜9>
表5の割合で25℃で配合し、比較用の液体洗剤組成物を得た。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
なお、表1〜5中、各成分の割合は、重量部で示した。また、表1〜5中のプロテアーゼ(A)及びその他の酵素(K)としては下記のものを使用した。
・プロテアーゼ(A)
アルカラーゼ水溶液(SDS−PAGEよりアルカラーゼ含量は1g/Lと推定、37μM):ノボザイムス社製、商品名「アルカラーゼ2.5L」
・界面活性剤(C)
オレイルアルコールエチレンオキサイド(表中、EOと記載)11モル付加物:三洋化成工業(株)製
ドデシルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩:三洋化成工業(株)製
・その他の酵素(K)
エンドラーゼ水溶液(SDS−PAGEよりセルラーゼ含量は1g/Lと推定):ノボザイムス社製、商品名「エンドラーゼ」
【0074】
実施例及び比較例で作製した液体洗剤組成物を用いて下記の洗浄性試験をおこなった。
【0075】
<洗浄性試験>
<配合直後の洗浄除去率>
実施例及び比較例で得た液体洗剤組成物それぞれについて、液体洗剤組成物の作成後直ちに液体洗剤組成物0.8gを水999.2gに溶解させ溶液を得た。この溶液に、湿式人工汚染布(4cm×4cm)5枚を投入し、ターゴトメーター(大栄化学製)を用いて以下の条件にて洗浄及びすすぎをした後、布を取り出し、ギヤーオーブン(TABAI製、GPS−222)を用いて70℃で60分間乾燥し、試験布を得た。ついで、多光源分光測色計(スガ試験機製)を使用して、この試験布の540nmの反射率を、試験布1枚ごとに表裏2個所ずつ計4個所(試験布5枚で合計20個所)測定し、この平均値を求め、以下の式にて洗浄除去率(%)を算出した。
(洗浄条件)
時間:10分、温度:25℃、回転速度:120rpm
(すすぎ条件)
時間:1分、温度:25℃、回転速度:120rpm
(洗浄除去率)
洗浄除去率(%)={(RW−RS)/(RI−RS)}×100
なお、RIは清浄布の反射率、RWは洗浄布の反射率、RSは汚染布の反射率を示す。
また、使用した湿式人工汚染布は、表2の汚垢組成を有する財団法人洗濯科学協会製の湿式人工汚染布(540nmにおける反射率が40±5%)である。
【0076】
【表6】

【0077】
<25℃3ヶ月保管後の洗浄除去率>
実施例及び比較例で得た液体洗剤組成物それぞれについて、上記<配合直後の洗浄除去率>において、作成直後の液体洗剤組成物の代わりに、液体洗剤組成物の作成後25℃で3ヶ月保管した後の液体洗剤組成物を用いる以外は同様に洗浄性試験をおこない、洗浄除去率を算出した。
【0078】
<洗浄性の持続性>
配合直後の洗浄除去率と25℃で3ヶ月保管後の洗浄除去率との比を洗浄性の性として、以下の式にて算出した。
洗浄性の持続性(%)=(25℃で3ヶ月保管後の洗浄除去率)/(調製直後の洗浄除去率)×100
【0079】
表1〜5の評価結果から、本発明の液体洗剤組成物は、洗浄性の持続性が高く、長期的に洗浄性を保つことができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の液体洗剤組成物は、プロテアーゼ活性が十分抑制されているので、長期間洗浄性を持続でき、衣料用洗浄剤、自動食器洗浄機用洗浄剤及びコンタクトレンズ用洗浄剤として使用でき、特に衣料用液体洗剤に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ(A)、下記プロテアーゼ活性阻害剤(B)、界面活性剤(C)及び溶剤(D)を含有する液体洗剤組成物。
プロテアーゼ活性阻害剤(B):配列番号1〜11のいずれか1つのアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列であるプロテアーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
プロテアーゼ(A)、プロテアーゼ活性阻害剤(B)、界面活性剤(C)及び溶剤(D)の含有量が、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量を基準として、(A)が0.00000001〜0.1重量%、(B)が0.0000000001〜5重量%、(C)が1〜90重量%及び(D)が4.9〜98.9999999899重量%である請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項3】
プロテアーゼ活性阻害剤(B)とプロテアーゼ(A)とのモル比{(B)のモル数/(A)のモル数}が0.01〜200である請求項1又は2に記載の液体洗剤組成物。
【請求項4】
さらにプロテアーゼ以外の酵素(K)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の液体洗剤組成物。

【公開番号】特開2012−180514(P2012−180514A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27018(P2012−27018)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】