説明

液体洗浄剤組成物の製造方法、および液体洗浄剤組成物

【課題】油共存下での使用であっても使用量を低減でき、かつ、優れた初期泡立ち性と泡量の持続性を兼ね備えた液体洗浄剤組成物の製造方法、および液体洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】式[γ=γ+(γ−γ)/{1+(t/t)}]より求められる、時間tにおける動的表面張力低下速度が、25℃での油非共存下において650mN・m-1・sec-1以上、かつ25℃での油共存下において540 mN・m-1・sec-1以上となるように、界面活性剤を配合する液体洗浄剤組成物の製造方法、および下記一般式(1)で表される陰イオン性界面活性剤と、アミンオキシド型界面活性剤と、炭素鎖長が6〜12である非イオン性界面活性剤を含み、25℃での油非共存下における動的表面張力低下速度が650mN・m-1・sec-1以上、かつ25℃での油共存下における動的表面張力低下速度が540 mN・m-1・sec-1以上である液体洗浄剤組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物の製造方法、および液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の環境や経済性に対する意識が高まる中、食器や調理器具等を洗浄する際に、使用量を減らしても優れた洗浄効果が得られる液体洗浄剤が求められている。
また、台所用の液体洗浄剤には、洗浄性に加えて泡立ち性といった基本性能が要求される。
そこで、液体洗浄剤の粘度を調整することで、スポンジ等の可撓性吸収体からの液体洗浄剤の流出を制御し、高い洗浄効果とその効果の持続性を発現できる液体洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、双性イオン高分子を泡安定剤として含有することで、高い洗浄効果と泡量の持続性を発現できる液体洗剤組成物が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、少なくとも1種以上の非イオン基または陽イオン基を含む構造の化合物と、陰イオン性界面活性剤と、非イオン性界面活性剤を配合することで、洗浄力が向上し、初期気泡度および気泡維持力を調節できる界面活性剤システムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−212600号公報
【特許文献2】特表2001−524585号公報
【特許文献3】特表2005−508400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、洗浄時の泡の有無は洗浄力を実感する重要な因子であり、初期泡立ちに優れる液体洗浄剤は洗浄力を実感しやすい。また、泡量が持続すれば、洗浄力の持続性も実感できる。
しかしながら、特許文献1に記載のような希釈粘度を調整することで泡量の持続性を向上した液体洗浄剤は、洗浄剤の流出を制御するため、洗浄初期の泡量が少なくなりやすかった。また、特許文献2に記載のような双性イオン高分子を含有することで泡安定化を向上した組成では、組成物が増粘するため水への分散性が悪くなり、洗浄初期の泡量が少なくなりやすかった。
このように希釈粘度を調整したり、双性イオン高分子を添加して泡安定化を向上させたりした洗浄剤は、泡量の持続性は若干の改善が見られるものの、油存在下で使用する場合の泡立ち性を必ずしも満足するものではなかった。特に、スポンジ中の洗浄剤濃度が薄まる洗浄過程の後半では、特に十分な泡立ち性が得られにくく、泡量が低下しやすかった。
【0006】
また、特許文献1〜3に記載のような洗浄力の高い洗浄剤は、洗浄過程において泡量が減少する、いわゆる「泡のヘタリ」を感じやすかった。特に油存在下で洗浄する際は、泡量が減少しやすかった。泡量の減少は、洗浄中に水によってスポンジ中の洗剤濃度が薄まると共に、油等の汚垢により破泡されることが原因であり、特許文献1〜3に記載のような洗浄力の強い液体洗浄剤において特に顕著に起こる傾向にある。泡量が減少すると、洗浄の途中で液体洗浄剤を継ぎ足すことになる場合が多く、液体洗浄剤の使用量が増える傾向にある。
【0007】
つまり、泡量が減少しにくく、泡のヘタリを感じにくい液体洗浄剤は、洗浄力の強い液体洗浄剤に比べて初期の泡立ちが悪く、洗浄力の実感が得られにくかった。一方、洗浄力の高い液体洗浄剤は、泡量が減少しやすく、泡のヘタリを感じやすかった。
このように、台所用の液体洗浄剤において、使用量を減らしつつ、初期泡立ち性と泡量の持続性を両立することは困難であった。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、油共存下での使用であっても使用量を低減でき、かつ、優れた初期泡立ち性と泡量の持続性を兼ね備えた液体洗浄剤組成物の製造方法、および液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体洗浄剤組成物の製造方法は、下記式(I)より求められる、時間tにおける動的表面張力低下速度が、25℃での油非共存下において650mN・m−1・sec−1以上、かつ25℃での油共存下において540mN・m−1・sec−1以上となるように、界面活性剤を配合することを特徴とする。
γ=γ+(γ−γ)/{1+(t/t} ・・・(I)
【0010】
式(I)中、tは時間であり、γは時間tにおける動的表面張力であり、γは水の表面張力であり、γは表面張力のメソ平衡値であり、tはγがγとγの中間値となるときの時間であり、xは定数である。
【0011】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、下記一般式(1)で表される陰イオン性界面活性剤(A)と、アミンオキシド型界面活性剤(B)と、炭素鎖長が6〜12である非イオン性界面活性剤(C)とを含有し、25℃での油非共存下における動的表面張力低下速度が650mN・m−1・sec−1以上であり、かつ25℃での油共存下における動的表面張力低下速度が540mN・m−1・sec−1以上であることを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
式(1)中、Rは炭素数8〜18のアルキル基であり、EOはオキシエチレン基であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミンまたはアンモニウムであり、mはEOの平均付加モル数を示し、1〜6である。
【0014】
また、前記非イオン性界面活性剤(C)は、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
式(2)中、Rは炭素数5〜11の直鎖状のアルキル基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、Xは水素またはメチル基であり、mはEOの平均付加モル数を示し、0〜5であり、nはPOの平均付加モル数を示し、0〜5であり、かつm+n=0〜10である。
【0017】
【化3】

【0018】
式(3)中、Rは炭素数6〜12の分岐鎖状のアルキル基であり、EOはオキシエチレン基であり、mはEOの平均付加モル数を示し、4〜8である。
【0019】
【化4】

【0020】
式(4)中、Rは炭素数6〜12のアルキル基であり、qはグリセリン単位の平均付加モル数を示し、1〜4である。
【0021】
【化5】

【0022】
式(5)中、Rは炭素数6〜12のアルキル基であり、Gはグルコシド残基であり、sはGの平均縮合度を示し、1〜5である。
【0023】
さらに、前記陰イオン性界面活性剤(A)とアミンオキシド型界面活性剤(B)の含有量の合計が25質量%以上であり、前記非イオン性界面活性剤(C)の含有量が3質量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の液体洗浄剤組成物の製造方法によれば、油共存下での使用であっても使用量を低減でき、かつ、優れた初期泡立ち性と泡量の持続性を兼ね備えた液体洗浄剤組成物が得られる。
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、油共存下での使用であっても使用量を低減でき、かつ、優れた初期泡立ち性と泡量の持続性を兼ね備える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の液体洗浄剤組成物の製造方法(以下、単に「製造方法」という場合がある。)は、上記式(I)より求められる、時間tにおける動的表面張力低下速度が、25℃での油非共存下において650mN・m−1・sec−1以上、かつ25℃での油共存下において540mN・m−1・sec−1以上となるように、界面活性剤を配合することを特徴とする。
なお、「動的表面張力」とは、気体と液体の界面が新たに形成されてから、表面張力が平衡に至るまで(界面が安定な状態になるまで)の表面張力のことである。
【0026】
ここで、時間tにおける動的表面張力低下速度の求め方について、具体的に説明する。
まず、最大泡圧法(J.B.M.Hudaes and H.N.Stein,J.Cоll.Int.Sci., 140,307(1990))に従い、動的表面張力計を用い、測定温度25℃で、油非共存下または油共存下における試料の経時変化に伴う動的表面張力を測定する。
ところで、液体洗浄剤を継ぎ足す時のスポンジ中の洗浄剤濃度は、概ね0.7質量%程度である。そこで、油非共存下における試料としては、液体洗浄剤組成物の濃度が0.7質量%になるように希釈した希釈液を用いる。一方、油共存下における試料としては、前記希釈液110gにオリーブオイル15gを加え、3回/秒の速度で10分間振とうし、一晩静置して自然分離する水層と油層のうち、水層を用いる。
【0027】
最大泡圧法とは、液中にキャピラリを差込み、該キャピラリの先端から気泡を発生させて液中に気液界面を形成し、気泡の半径がキャピラリの半径と等しくなるときの圧力差を測定し、その値から表面張力を求める方法である。そして、動的表面張力は、Laplace式に浮力項と静水圧項を考慮した下記式(II)から算出できる。
γ=r(P−(h+2/3r)ρg)/2 ・・・(II)
【0028】
式(II)中、γは時間tにおける動的表面張力[mN・m−1]であり、rはキャピラリの内半径[mm]であり、Pはキャピラリの一端で気泡が半球に成長した時の内圧[mPa]であり、hは容器内の液体組成物の表面からキャピラリの一端までの垂直距離[mm]であり、ρは液体の密度[g・mm−3]であり、gは重力加速度[m/s]である。
【0029】
気液界面の形成時間は、気体の流量を変化させることにより調整できる。また、界面活性剤の気液界面への吸着時間は、気液界面が形成されてから半球に成長するまでの時間を、Laplace式の関係に従い求めることができる。すなわち、気泡の内圧が最小から最大となるまでの時間を測定し、この値を吸着時間とする。
【0030】
そして、それぞれの気液界面形成時間における動的表面張力を上記式(I)にフィッティングし、動的表面張力低下速度を求める。
上記式(I)は、Rosenらの方法(Y.Hua and M.J.Rosen,J.Colloid Interface Sci.,142,652(1988)、Y.Hua and M.J.Rosen,J.Colloid Interface Sci.,139,397(1990)、Y.Hua and M.J.Rosen,J.Colloid Interface Sci.,141, 180(1991))により導き出される。
なお、上記式(I)において、「γは表面張力のメソ平衡値である」とは、30秒間の変化が1mN・m−1となったときの値のことである。また、水の表面張力は「72.0mN・m−1」とする。
【0031】
本発明において、「動的表面張力低下速度」とは、気相との動的表面張力の経時減少率(−([dγ/dt])のことであり、上記式(I)を時間(t)で1次微分することで求められる。上記式(I)の1次微分式を下記式(III)に示す。
dγ/dt=−(γ−γ){x(t/tx−1/t}/{1+(t/t ・・・(III)
【0032】
そして、時間tにおける(すなわち、t=tのときの)動的表面張力低下速度は、下記式(IV)となる。
dγ/dt=−x(γ−γ)/4t ・・・(IV)
【0033】
洗浄時において泡のヘタリを感じにくく、液体洗浄剤を継ぎ足すことなく洗浄するには、初期泡立ち性と泡量の持続性が重要である。
本発明者らは、液体洗浄剤組成物の動的表面張力低下速度と、初期泡立ち性および泡量の持続性の関係を検討した結果、初期泡立ち性は油非共存下での動的表面張力低下速度と相関があり、泡量の持続性は油共存下での動的表面張力低下速度と相関があることを見出した。
【0034】
すなわち、動的表面張力低下速度が、25℃での油非共存下において650mN・m−1・sec−1以上となるように界面活性剤を配合すれば、気泡に界面活性剤が吸着しやすくなり、十分な初期泡立ち性を満足できる液体洗浄剤組成物が得られる。25℃での油非共存下における動的表面張力低下速度は、750mN・m−1・sec−1以上が好ましい。
【0035】
動的表面張力低下速度が、25℃での油共存下において540mN・m−1・sec−1以上となるように界面活性剤を配合すれば、油存在下であっても気泡に界面活性剤が吸着しやすくなり、十分な泡量の持続性を満足できる液体洗浄剤組成物が得られる。25℃での油共存下における動的表面張力低下速度は、600mN・m−1・sec−1以上が好ましい。
【0036】
従って、本発明の製造方法によれば、油共存下での使用であっても使用量を低減でき、かつ、優れた初期泡立ち性と泡量の持続性を兼ね備える液体洗浄剤組成物が得られる。
液体洗浄剤組成物の各動的表面張力低下速度が上記範囲内となるようにするには、液体洗浄剤組成物を構成する界面活性剤の種類や配合量を組み合わせることで達成できる。具体的には、界面活性剤として上記一般式(1)で表される陰イオン性界面活性剤(A)、アミンオキシド型界面活性剤(B)、炭素数6〜12の炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤(C)を組み合わせて用いることで達成できる。
【0037】
(陰イオン性界面活性剤(A))
陰イオン性界面活性剤(A)(以下、「(A)成分」という。)は、上記一般式(1)で表される化合物である。
上記一般式(1)中、Rは炭素数8〜18のアルキル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。油汚れに対する洗浄力や保存安定性の観点から、Rとしては炭素数10〜16のアルキル基が好ましく、中でも直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
EOはオキシエチレン基である。
Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミンまたはアンモニウムである。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。Mとしては、ナトリウムが好ましい。
はEOの平均付加モル数を示し、1〜6である。mが上記範囲内であれば、洗浄力を向上できる。特に油汚れに対する洗浄力を向上させる観点から、mは1〜3が好ましい。
【0038】
(A)成分としては、例えば炭素数12〜13ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(EO平均付加モル数:2)、12〜14ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(EO平均付加モル数:2)等が挙げられる。
【0039】
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物100質量%中、3〜30質量%が好ましく5〜25質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が3質量%以上であれば、陰イオン性界面活性剤であるため、適度な泡立ちが得られ、洗浄力を実感しやすくなる。一方、(A)成分の含有量が30質量%以下であれば、液体洗浄剤組成物の高粘度化が抑制され、流動性がより良好となる。
【0040】
(アミンオキシド型界面活性剤(B))
アミンオキシド型界面活性剤(B)(以下、「(B)成分」という。)としては、例えばアルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジエチルアミンオキシド、アルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド等の半極性界面活性剤が挙げられる。中でも、下記一般式(6)で表される化合物が好適なものとして挙げられる。
ここで、「半極性界面活性剤」とは、半極性結合(無極性結合及び極性結合の中間の性質を有する結合)を有する界面活性剤のことであり、半極性界面活性剤が溶解する溶液または分散する分散系のpHにより、陽イオン性、陰イオン性、または両極性となる。
【0041】
【化6】

【0042】
式(6)中、Rは炭素数8〜18のアルキル基、または炭素数8〜18のアルケニル基である。アルキル基またはアルケニル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基またはアルケニル基の炭素数としては、8〜16が好ましく、10〜14がより好ましい。
、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。
は炭素数1〜4のアルキル基である。
Aは−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−または−O−である。
uは0または1である。
なお、式(6)中、「N→O」は、アミンオキシドの半極性結合を示す。
【0043】
(B)成分としては、具体的にドデシルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシドなどのアルキルジメチルアミンオキシド;ドデカン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドなどのアルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド等が好適なものとして挙げられる。
また、(B)成分としては、市販品を用いることができ、例えば、ライオン・アクゾ株式会社製の「アロモックスDM10D−W」、「アロモックスDMC−W」、「アロモックスDM12D−W(C)」、「アロモックスDM14D−N」等が挙げられる。
【0044】
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(B)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物100質量%中、1〜10質量%が好ましく、2〜9質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が1質量%以上であれば、(A)成分と複合体を形成し、油に対する界面張力を低下させるため、洗浄力がより向上する。一方、(B)成分の含有量が10質量%以下であれば、液体洗浄剤組成物の高粘度化が抑制され、流動性がより良好となる。
【0045】
また、(B)成分は(A)成分との含有量の合計が、液体洗浄剤組成物100質量%中、25質量%以上であることが好ましい。(A)成分と(B)成分の含有量の合計が25質量%以上であれば、適度な泡量と高い洗浄力を維持できる。なお、(A)成分と(B)成分は、含有量が多すぎると液体洗浄剤組成物が高粘度化し、流動性が低下しやすくなる。従って、(A)成分と(B)成分の含有量の合計の上限値は40質量%以下が好ましく、34質量%以下がより好ましい。
【0046】
(非イオン性界面活性剤(C))
非イオン性界面活性剤(C)(以下、「(C)成分」という。)は、炭素鎖長が6〜12である。
ここで、「炭素鎖長」とは、分子中の連続する最長の炭素鎖の長さのことであり、炭素鎖は直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。
【0047】
炭素鎖長が6以上であれば油非共存下における動的表面張力低下速度が低下するのを抑制できるので、初期泡立ち性を向上できる。一方、炭素鎖長が12以下であれば油共存下における動的表面張力低下速度が低下するのを抑制できるので、泡量の持続性を向上できる。
【0048】
(C)成分は、上記一般式(2)〜(5)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
上記一般式(2)中、Rは炭素数5〜11のアルキル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭素数が上記範囲内であれば、初期泡立ち性と泡量の持続性により優れるようになる。炭素数が短いと泡切れが悪くなる傾向にあるため、すすぎ性の観点から、Rとしては炭素数7〜11のアルキル基が好ましく、中でも直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
Xは水素またはメチル基である。
EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基である。EOとPOはランダム結合であってもブッロク結合であってもよい。
はEOの平均付加モル数を示し、0〜5であり、0〜3が好ましい。mが5以下であれば、油非共存下および油共存下における動的表面張力低下速度を、上記範囲内となるように容易に調整でき、初期泡立ち性および泡量の持続性を向上できる。
nはPOの平均付加モル数を示し、0〜5であり、0〜3が好ましい。nが5以下であれば、油非共存下および油共存下における動的表面張力低下速度を、上記範囲内となるように容易に調整でき、初期泡立ち性および泡量の持続性を向上できる。
また、m+n=0〜10であり、0〜5が好ましい。m+n=0〜10であれば、油非共存下および油共存下における動的表面張力低下速度を、上記範囲内となるように容易に調整でき、初期泡立ち性および泡量の持続性を向上できる。
【0049】
上記一般式(2)で表される化合物は、公知の方法により、例えば、固体または液体の塩基性触媒の存在下、脂肪酸エステルと、モノエタノールアミンまたはモノプロパノールアミンとを反応させた後、酸化エチレンや酸化プロピレンを付加させることで得られる。
また、上記一般式(2)で表される化合物としては、例えばヘキサン酸モノエタノールアミド、オクタン酸モノエタノールアミド、デカン酸モノエタノールアミド、ドデカン酸モノエタノールアミド、ドデカン酸モノイソプロパノールアミド、ポリオキシエチレンヘキサン酸モノエタノールアミド(EO平均付加モル数1〜5(「1〜5」とは、平均付加モル数が1、2、3、4、5のものを示す。以下同様。))、ポリオキシエチレンオクタン酸モノエタノールアミド(EO平均付加モル数1〜5)、ポリオキシエチレンデカン酸モノエタノールアミド(EO平均付加モル数1〜5)、ポリオキシエチレンドデカン酸モノエタノールアミド(EO平均付加モル数1〜5)、ポリオキシエチレンドデカン酸モノイソプロパノールアミド(EO平均付加モル数1〜5)などが挙げられる。
さらに、市販品を用いることができ、例えば、川研ファインケミカル株式会社製の「アミゼット1LE」、「アミゼット2L」、「アミゼット5L」、「アミゾールLME」等が挙げられる。
【0050】
上記一般式(3)中、Rは炭素数6〜12の分岐鎖状のアルキル基である。炭素数が上記範囲内であれば、泡量の持続性により優れるようになる。炭素数が短いと泡切れが悪くなる傾向にあるため、すすぎ性の観点から、Rとしては炭素数8〜12の分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
EOはオキシエチレン基である。
はEOの平均付加モル数を示し、4〜8であり、6〜8が好ましい。mが4〜8であれば、油非共存下および油共存下における動的表面張力低下速度を、上記範囲内となるように容易に調整でき、初期泡立ち性および泡量の持続性を向上できる。
【0051】
上記一般式(3)で表される化合物としては、例えばポリオキシエチレンモノアルキルエーテルなどが挙げられ、具体的にはポリオキシエチレンモノ(4−メチル−2−ペンチル)エーテル(EO平均付加モル数4〜8)、ポリオキシエチレンモノ(5−メチルヘキシル)エーテル(EO平均付加モル数4〜8)、ポリオキシエチレンモノ(3−メチルヘキシル)エーテル(EO平均付加モル数4〜8)、ポリオキシエチレンモノ(2−エチルヘキシル)エーテル(EO平均付加モル数4〜8)、ポリオキシエチレンモノ(1−メチルヘプチル)エーテル(EO平均付加モル数4〜8)、ポリオキシエチレンモノ(3,5,5−トリメチルヘキシル)エーテル(EO平均付加モル数4〜8)、ポリオキシエチレンモノ(2−プロピルヘプチル)エーテル(EO平均付加モル数4〜8)等が挙げられる。
また、市販品を用いることができ、例えば、日本エマルジョン株式会社製の「ニューコール1004」、「ニューコール1006」、「ニューコール1008」;BASF社製の「Lutensol XPシリーズ(XP40、XP50、XP70、XP80)」、「Lutensol ONシリーズ(ON50、ON60、ON70、ON80)」等が挙げられる。
【0052】
上記一般式(4)中、Rは炭素数6〜12のアルキル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭素数が上記範囲内であれば、泡量の持続性により優れるようになる。高いすすぎ性および水への溶解性の観点から、Rとしては炭素数8〜10のアルキル基が好ましく、中でも分岐鎖状のアルキル基が特に好ましい。
qはグリセリン単位(CHCH(OH)CHO)の平均付加モル数を示し、1〜4であり、1〜3が好ましい。qが1〜4であれば、油非共存下および油共存下における動的表面張力低下速度を、上記範囲内となるように容易に調整でき、初期泡立ち性および泡量の持続性を向上できる。
【0053】
上記一般式(4)で表される化合物としては、例えば2−エチルへキシルモノグリセリルエール、オクチルモノグリセリルエーテル、デシルモノグリセリルエーテル、ドデシルモノグリセリルエーテル、ドデシルテトラグリセリルエーテルなどが挙げられる。
【0054】
上記一般式(5)中、Rは炭素数6〜12のアルキル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭素数が上記範囲内であれば、泡量の持続性により優れるようになる。高いすすぎ性および水への溶解性の観点から、Rとしては炭素数8〜10のアルキル基が好ましく、中でも直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
Gはグルコシド残基である。
sはGの平均縮合度を示し、1〜5であり、1〜3が好ましい。sが1〜5であれば、油非共存下および油共存下における動的表面張力低下速度を、上記範囲内となるように容易に調整でき、初期泡立ち性および泡量の持続性を向上できる。
なお、本発明において「グルコシド残基」とは、アルキル基と糖がグルコシド結合して得られる化合物(アルキルグルコシド)の、グルコシド結合以外の部分のことである。
【0055】
上記一般式(5)で表される化合物としては、例えばヘキシルポリグルコシド、2−エチルヘキシルポリグルコシド、デシルポリグルコシド、ドデシルポリグルコシドなどが挙げられる。
また、市販品を用いることができ、例えば、ライオン・アクゾ株式会社製の「AG6202」、「AG6206」、花王株式会社製の「MYDOL10」、コグニスジャパン株式会社製の「PLANTACARE 1200UP」、「GLUCOPON 215CSUP」等が挙げられる。
【0056】
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物100質量%中、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。(C)成分の含有量が3質量%以上であれば、油共存下における動的表面張力低下速度が低下するのを抑制できるので、泡量の持続性を向上できる。なお、(C)成分は含有量が多すぎても配合効果が頭打ちとなる。従って、(C)成分の含有量の上限値は60質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0057】
(任意成分)
液体洗浄剤組成物を製造するにあたっては、前記(A)〜(C)成分以外に必要に応じて、(A)〜(C)成分以外のその他の界面活性剤や、その他の成分を任意成分として適宜用いてもよい。
その他の界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、(A)成分以外の陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、(C)成分以外の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0058】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
(A)成分以外の陰イオン性界面活性剤としては、例えばアルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、脂肪酸石鹸、リン酸エステル塩系界面活性剤、アシルアラニネート、アシルタウレート等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばアルキル酢酸ベタイン、アルカノールアミドプロピル酢酸ベタイン、アルキルイミダゾリン、アルキルアラニン等が挙げられる。
(C)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、例えば上記一般式(2)で表される化合物以外の脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アルカノールグルカミド;上記一般式(3)で表される化合物以外のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;上記一般式(4)で表される化合物以外のアルキルグリセリルエーテル;上記一般式(5)で表される化合物以外のアルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
その他の界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤組成物100質量%中、0.1〜20質量%が好ましい。
【0059】
その他の成分としては、例えば安息香酸塩等の芳香族カルボン酸やp−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸等に代表される芳香スルホン酸およびこれえらの塩等のハイドロトロープ剤;エタノール、種々の香料変性エタノール、イソプロパノール、ブチルカルビトール等の水溶性溶剤;グリコール酸、乳酸、りんご酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸等の多価カルボン酸や、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等のアミノカルボン酸や、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸/ポリマレイン酸の共重合体等の高分子型カルボン酸型気レート剤;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の無機ビルダー;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸等のpH調整剤;粘度調整剤;着色剤;酸化防止剤;防腐剤;殺菌剤;除菌剤;消炎剤;薬効成分;香料;天然抽出物のような通常用いられる成分が挙げられる。
【0060】
本発明の製造方法は、上記式(I)より求められる、時間tにおける動的表面張力低下速度が、25℃での油非共存下において650mN・m−1・sec−1以上、かつ25℃での油共存下において540mN・m−1・sec−1以上となるように、上述した界面活性剤を配合する。その際、各界面活性剤と必要に応じて任意成分とを、各成分の純分換算量で所望の含有量になるように、水に溶解して混合し、さらに必要に応じてpH調整剤を用いて任意のpHになるように調整するのが好ましい。具体的には、25℃でのpHが5.5〜7.5となるようにpHを調整するのが好ましい。pHが5.5以上であれば、液体洗浄剤組成物の高粘度化を抑制する傾向にある。一方、pHが7.5以下であれば、洗浄力が高くなる傾向にある。なお、液体洗浄剤組成物(25℃に調温)のpHは、pHメーター等により測定される値を示す。
【0061】
以上説明した、本発明の製造方法によれば、時間tにおける動的表面張力低下速度が、25℃での油非共存下において650mN・m−1・sec−1以上となるように、界面活性剤を配合するので、初期泡立ち性に優れ、洗浄力を実感できる液体洗浄剤組成物が得られる。
加えて、本発明の製造方法によれば、時間tにおける動的表面張力低下速度が、25℃での油共存下において540mN・m−1・sec−1以上となるように、界面活性剤を配合するので、油存在下で使用する場合であっても、泡量の持続性に優れる液体洗浄剤組成物が得られる。従って、洗浄の途中で液体洗浄剤組成物を継ぎ足さなくても十分な泡量を持続できるので、使用量を低減できる。
従って、本発明の液体洗浄剤組成物の製造方法によれば、油共存下での使用であっても使用量を低減でき、かつ、優れた初期泡立ち性と泡量の持続性を兼ね備えた液体洗浄剤組成物が得られる。
【0062】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)成分を含有することで、適度な泡立ち性が得られ、洗浄力を実感でき、(B)成分を含有することで、(A)成分との相乗効果によって洗浄力がより向上する。さらに、(C)成分を含有することで、高い洗浄力を維持しつつ、初期泡立ち性がより向上すると共に、油存在下で本発明の液体洗浄剤組成物を使用する場合であっても、泡量の持続性に優れる。従って、洗浄の途中で液体洗浄剤組成物を継ぎ足さなくても十分な泡量を持続できるので、使用量を低減できる。
加えて、25℃での油非共存下における動的表面張力低下速度が650mN・m−1・sec−1以上であり、かつ25℃での油共存下における動的表面張力低下速度が540mN・m−1・sec−1以上であるので、十分な初期泡立ち性および泡量の持続性を満足できる。
従って、本発明の液体洗浄剤組成物は、油存在下での使用であっても使用量を低減でき、かつ、優れた初期泡立ち性と泡量の持続性を兼ね備える。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
[使用原料]
(A)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・A−1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム。
なお、A−1は以下のようにして調製した。
原料アルコ−ルとして、アルコール(シェルケミカルズジャパン株式会社製の「Neodol23」、炭素数12のアルコール/炭素数13のアルコール=50質量%/50質量%の混合物、分岐率:20質量%)を用いた。
4Lのオートクレーブ中に、前記原料アルコ−ル400gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、撹拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド184gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数2の反応物(アルコールエトキシレート)を得た。また、そのエチレンオキシド付加モル数分布は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により下記測定条件で測定した結果、ナロー率で33質量%を示した。
次に、このようにして得たアルコールエトキシレート280gを、撹拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換した後、液体無水硫酸(サルファン)78gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルを得た。次いで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(A−1)を得た。
【0065】
A−1のナロー率は、以下のようにして求めた。
HPLCを用い、下記測定条件により、得られた合成品におけるエチレンオキシドの付加モル数が異なるエチレンオキシド付加体の分布を測定した。そして、A−1のナロー率(質量%)を下記数式(S)に基づいて算出した。
(HPLCによるエチレンオキシド付加体の分布の測定条件)
装置 :LC−6A(株式会社島津製作所製)。
検出器 :SPD−10A。
測定波長:220nm。
カラム :Zorbax C8 (デュポン社製)。
移動相 :アセトニトリル/水=60/40(体積比)。
流速 :1mL/分。
温度 :20℃。
【0066】
【数1】

【0067】
(B)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・B−1:ドデシルジメチルアミンオキシド(ライオン・アクゾ株式会社製、「アロモックスDM12D−W(C)」)。
【0068】
(C)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・C−1:ポリオキシエチレンオクタン酸モノエタノールアミド、上記一般式(2)において、R=ヘプチル基、X=水素、m=1、n=0。
・C−2:デカン酸モノエタノールアミド、上記一般式(2)において、R=ノニル基、X=水素、m=0、n=0。
・C−3:ポリオキシエチレンデカン酸モノエタノールアミド、上記一般式(2)において、R=ノニル基、X=水素、m=1、n=0。
・C−4:ポリオキシエチレンドデカン酸モノエタノールアミドA(川研ファインケミカル株式会社製、「アミゼット1LE」)、上記一般式(2)において、R=ウンデシル基、X=水素、m=1、n=0。
・C−5:ポリオキシエチレンドデカン酸モノエタノールアミドB(川研ファインケミカル株式会社製、「アミゼット2L」)、上記一般式(2)において、R=ウンデシル基、X=水素、m=2、n=0。
・C−6:ポリオキシエチレンドデカン酸モノエタノールアミドC(川研ファインケミカル株式会社製、「アミゼット5L」)、上記一般式(2)において、R=ウンデシル基、X=水素、m=5、n=0。
・C−7:ポリオキシエチレンドデカン酸モノプロパノールアミド、上記一般式(2)において、R=ウンデシル基、X=メチル基、m=2、n=0。
・C−8:ポリオキシエチレンモノ(2−エチルヘキシル)エーテル(日本エマルジョン株式会社製、「ニューコール1004」)、上記一般式(3)において、R=2−エチルヘキシル基、m=4。
・C−9:オキソ法により得られたC10オキソアルコールのEO付加体(BASF社製、「Lutensol ON80」)、上記一般式(3)において、R=2−メチルノニル基、m=8。
・C−10:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル、上記一般式(4)において、R=2−エチルヘキシル基、q=1。
・C−11:デシルグルコシド(コグニスジャパン株式会社製、「GLUCOPON 215CSUP」)、上記一般式(5)において、R=C8〜C10、s=1.5。
・C−12:ポリオキシエチレンヘキサン酸モノエタノールアミド、上記一般式(2)において、R=ペンチル基、X=水素、m=1、n=0。
・C−13:ヤシ油由来脂肪酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル株式会社製、「アミゾールCME」)、上記一般式(2)において、R=ココイル基、X=水素、m=0、n=0。
・C−14:ポリオキシエチレンモノ(3−メチルブチル)エーテル、上記一般式(3)において、R=3−メチルブチル基、m=3。
・C−15:ポリオキシエチレンモノ(2−プロピルヘプチル)エーテル(BASF社製、「Lutensol XP90」)、上記一般式(3)において、R=2−プロピルヘプチル基、m=9。
【0069】
なお、C−1〜C−3、C−7、C−10、C−12、C−14は以下のようにして合成した。
C−1の合成;
オクタン酸メチル(ライオン株式会社製の「パステルM−8」)158.2g(1.0moL)に、モノエタノールアミン(東京化成工業株式会社製試薬)64.1g(1.05moL)およびナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液(株式会社日本触媒製の「SM−28」)5.65g(1.0質量%対脂肪酸メチルエステル)を加え、副生するメタノールを減圧下留去しながら、反応圧力40kPa〜1.3kPa、反応温度90℃の条件で1時間、加熱攪拌し、反応圧力が1.3kPaに到達した時点で、反応温度90℃で3時間熟成し、オクタン酸モノエタノールアミドを得た。得られたオクタン酸モノエタノールアミドを1Lのオートクレーブに移し替え、エチレンオキサイドをオクタン酸モノエタノールアミドに対して1.0モル分仕込み、90℃で2時間かけて付加反応を行い、ポリオキシエチレンオクタン酸モノエタノールアミド(C−1)を合成した。
【0070】
C−2の合成;
デカン酸メチル(ライオン株式会社製「パステルM−10」)186.3g(1.0moL)に、モノエタノールアミン(東京化成工業株式会社製試薬)64.1g(1.05moL)およびナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液(株式会社日本触媒製の「SM−28」)6.7g(1.0質量%対脂肪酸メチルエステル)を加え、副生するメタノールを減圧下留去しながら、反応圧力40kPa〜1.3kPa、反応温度90℃の条件で1時間、加熱攪拌し、反応圧力が1.3kPaに到達した時点で、反応温度90℃で3時間熟成し、デカン酸モノエタノールアミド(C−2)を得た。
【0071】
C−3の合成;
デカン酸モノエタノールアミド(C−2)を1Lのオートクレーブに移し替え、エチレンオキサイドをデカン酸モノエタノールアミドに対して1.0モル分仕込み、90℃で2時間かけて付加反応を行い、ポリオキシエチレンデカン酸モノエタノールアミド(C−3)を合成した。
【0072】
C−7の合成;
ドデカン酸メチル(ライオン株式会社製「パステルM−12」)214.3g(1.0moL)に、イソプロパノールアミン(東京化成工業株式会社製試薬)79.0g(1.05moL)およびナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液(株式会社日本触媒製の「SM−28」)7.7g(1.0質量%対脂肪酸メチルエステル)を加え、副生するメタノールを減圧下留去しながら、反応圧力40kPa〜1.3kPa、反応温度90℃の条件で1時間、加熱攪拌し、反応圧力が1.3kPaに到達した時点で、反応温度90℃で3時間熟成し、ドデカン酸モノプロパノールアミドを得た。得られたドデカン酸モノプロパノールアミドを1Lのオートクレーブに移し替え、エチレンオキサイドをドデカン酸モノプロパノールアミドに対して2.0モル分仕込み、90℃で2時間かけて付加反応を行い、ポリオキシエチレンドデカン酸モノプロパノールアミド(C−7)を合成した。
【0073】
C−10の合成;
1.5Lのオートクレーブに2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製試薬)650g(3.5moL)、ラウリン酸30.1g(0.15moL)、水酸化カリウム4.97g(0.075moL)、イオン交換水500gを仕込み、160℃に加温して回転数700rpmで6.5時間攪拌したのち、加熱を停止した。放冷したのち反応液を2Lビーカーに取り出し、水酸化カリウム4.97g(0.075moL)を加えた。この反応液の溶媒を減圧下(100℃、4kPa)で留去したのち、減圧蒸留で精製して2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル(C−10)を合成した。
【0074】
C−12の合成;
ヘキサン酸メチル(東京化成工業株式会社製試薬)130.2g(1.0moL)に、モノエタノールアミン(東京化成工業株式会社製試薬)64.1g(1.05moL)およびナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液(株式会社日本触媒製の「SM−28」)4.65g(1.0質量%対脂肪酸メチルエステル)を加え、副生するメタノールを減圧下留去しながら、反応圧力40kPa〜1.3kPa、反応温度90℃の条件で1時間、加熱攪拌し、反応圧力が1.3kPaに到達した時点で、反応温度90℃で3時間熟成し、ヘキサン酸モノエタノールアミドを得た。得られたヘキサン酸モノエタノールアミドを1Lのオートクレーブに移し替え、エチレンオキサイドをヘキサン酸モノエタノールアミドに対して1.0モル分仕込み、90℃で2時間かけて付加反応を行い、ポリオキシエチレンヘキサン酸モノエタノールアミド(C−12)を合成した。
【0075】
C−14の合成;
窒素雰囲気下、ジムロートと滴下ロートとスリーワンモーターの攪拌機を取り付けた2Lの四ツ口フラスコに、トリエチレングリコール(東京化成工業株式会社製試薬)511.2g(3.4moL)、t−ブトキシカリウム(東京化成工業株式会社製試薬)105g(0.94moL)、テトラヒドロフラン200mL(東京化成工業株式会社製試薬)を仕込み、水浴でt‐ブトキシカリウムが溶解するまで攪拌を継続した。t−ブトキシカリウムが溶解したのち、60℃に加温して1−ブロモ−3−メチルブタン(東京化成工業株式会社製試薬)128.5g(0.85moL)のテトラヒドロフラン100mL溶液を室温で30分かけて滴下した。滴下終了後、60℃で4時間攪拌したのち、加熱を停止した。放冷後、水300mL、酢酸エチル800mLで抽出した。分液して有機層の溶媒を留去した。残渣を減圧蒸留で精製して、ポリオキシエチレンモノ(3−メチルブチル)エーテル(C−14)を合成した。
【0076】
任意成分として、以下に示す試薬を用いた。
・セカンダリーアルカンスルホン酸ナトリウム:クラリアント・ジャパン社製の「HOSTAPUR SAS30A」。
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸:ライオン株式会社製の「ライポンLHシリーズ」、炭素数10〜14、平均分子量322。
・エタノール:純正化学株式会社社製。
・p−トルエンスルホン酸:協和発酵ケミカル株式会社製。
・香料:特開2003−268398号公報の表7〜14に記載の香料組成物A。
【0077】
[測定・評価方法]
(油非共存下における動的表面張力低下速度の測定)
液体洗浄剤組成物の濃度が0.7質量%になるように水で希釈して希釈液を調製した。
動的表面張力計(英弘精機株式会社製、「SITA t60」)を用い、測定温度25℃で希釈液の経時変化に伴う動的表面張力を1分間測定した。
ついで、経時変化に伴う動的表面張力の測定値を上記式(I)にフィッティングし、時間(t)で1次微分し、t=tのときの値を油非共存下における動的表面張力低下速度とした。
【0078】
(油共存下における動的表面張力低下速度の測定)
液体洗浄剤組成物の濃度が0.7質量%になるように水で希釈して希釈液を調製した。該希釈液110gにオリーブオイル15gを加え、3回/秒の速度で10分間振とうし、一晩静置して水層と油層に自然分離させ、水層を採取した。
希釈液の代わりに採取した水層を用いた以外は、油非共存下における動的表面張力低下速度の測定方法と同様にして、経時変化に伴う動的表面張力を測定し、上記式(I)より油共存下における動的表面張力低下速度を求めた。
【0079】
(初期泡立ち性の評価)
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジに、水道水38gと液体洗浄剤組成物2gをそれぞれとり、数回手で揉んだときの泡立ち性について、モニター10人により下記評価基準に基づいて評価した。
◎:非常に泡立ちがよい。
○:泡立ちがよい。
△:やや泡立ちが悪い。
×:泡立ちが悪い。
【0080】
(泡量の持続性の評価)
オリーブオイル1gと水5gを乗せた皿(直径20cm)を油汚垢皿とした。
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジに、水道水38gと液体洗浄剤組成物2gをそれぞれとり、数回手で揉んだ後、油汚垢皿を25℃の水道水を用いて、通常家庭で行われる方法と同様にして洗浄した。洗浄中、泡がヘタルと感じることなく洗浄できた皿の枚数を数え、下記評価基準にて評価した。
◎:8枚以上。
○:6枚以上、8枚未満。
△:3枚以上、6枚未満。
×:3枚未満。
【0081】
[実施例1〜16、比較例1〜6]
表1〜3に示す配合組成に従って各成分と水とを混合した後、25℃でのpHが6.8となるようにpH調整剤(水酸化ナトリウム)を適量添加して、各例の液体洗浄剤組成物をそれぞれ調製した。
得られた液体洗浄剤組成物について、油非共存下および油共存下における動的表面張力低下速度をそれぞれ測定した。また、泡量の持続性を評価した。結果を表1〜3に示す。
なお、表1〜3中の配合量の単位は質量%であり、いずれの成分も純分換算量を示す。各例の液体洗浄剤組成物は、表に記載の各成分と水との合計が100質量%となるようにバランス量の水で調整した。
また、pHの測定は、液体洗浄剤組成物を25℃に調整し、ガラス電極式pHメーター(製品名:ホリバF−22、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。測定方法は、JIS K3362−1998に準拠して行った。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
表1、2から明らかなように、各実施例で得られた液体洗浄剤組成物は、初期泡立ち性および泡量の持続性が良好であり、洗浄力の持続性を実感できた。
一方、表3から明らかなように、油非共存下における動的表面張力低下速度が650mN・m−1・sec−1未満であり、かつ油共存下における動的表面張力低下速度が540mN・m−1・sec−1未満である各比較例で得られた液体洗浄剤組成物は、初期泡立ち性および泡量の持続性が各実施例に比べて著しく低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)より求められる、時間tにおける動的表面張力低下速度が、25℃での油非共存下において650mN・m−1・sec−1以上、かつ25℃での油共存下において540mN・m−1・sec−1以上となるように、界面活性剤を配合することを特徴とする液体洗浄剤組成物の製造方法。
γ=γ+(γ−γ)/{1+(t/t} ・・・(I)
[式(I)中、tは時間であり、γは時間tにおける動的表面張力であり、γは水の表面張力であり、γは表面張力のメソ平衡値であり、tはγがγとγの中間値となるときの時間であり、xは定数である。]
【請求項2】
下記一般式(1)で表される陰イオン性界面活性剤(A)と、アミンオキシド型界面活性剤(B)と、炭素鎖長が6〜12である非イオン性界面活性剤(C)とを含有し、
25℃での油非共存下における動的表面張力低下速度が650mN・m−1・sec−1以上であり、かつ25℃での油共存下における動的表面張力低下速度が540mN・m−1・sec−1以上であることを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【化1】

[式(1)中、Rは炭素数8〜18のアルキル基であり、EOはオキシエチレン基であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミンまたはアンモニウムであり、mはEOの平均付加モル数を示し、1〜6である。]
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤(C)は、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の液体洗浄剤組成物。
【化2】

[式(2)中、Rは炭素数5〜11のアルキル基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、Xは水素またはメチル基であり、mはEOの平均付加モル数を示し、0〜5であり、nはPOの平均付加モル数を示し、0〜5であり、かつm+n=0〜10である。]
【化3】

[式(3)中、Rは炭素数6〜12の分岐鎖状のアルキル基であり、EOはオキシエチレン基であり、mはEOの平均付加モル数を示し、4〜8である。]
【化4】

[式(4)中、Rは炭素数6〜12のアルキル基であり、qはグリセリン単位の平均付加モル数を示し、1〜4である。]
【化5】

[式(5)中、Rは炭素数6〜12のアルキル基であり、Gはグルコシド残基であり、sはGの平均縮合度を示し、1〜5である。]
【請求項4】
前記陰イオン性界面活性剤(A)とアミンオキシド型界面活性剤(B)の含有量の合計が25質量%以上であり、前記非イオン性界面活性剤(C)の含有量が3質量%以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−275473(P2010−275473A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130843(P2009−130843)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】