説明

液体溶媒中の検体の測定

本発明は、液体溶媒中の検体を測定する磁気制御方法及びシステムに関する。本発明の方法及びシステムは、例えば認識試剤を担持する磁性粒子など、検体が存在しかつ適切な条件下で化学反応が起きて反応信号が生成されるように機能化された磁性粒子を使用することに基づいている。反応信号は、電気信号、又は比色信号、発光、沈殿の形成でよい。本発明によると、バリア面での磁性粒子の急速な振動又は回転を発生させることによって、反応が大幅に増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析試料中の検体を検出する方法に関する。より詳細には、本発明は、液体溶媒中の検体を測定する磁気制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁界によって電極触媒(electrocatalytic)プロセス及び生体電極触媒(bioelectrocatalytic)プロセスを切り替える研究が進められている(非特許文献1,2)。電子伝達反応を磁気的に制御する適用例としては、選択的デュアルバイオセンシング(非特許文献3)、電気化学発光(stimulated electrogenerated chemiluminescence)(非特許文献4)、選択的パターニング(非特許文献5)などが提案されている。化学成分や生物成分によって機能化される磁性粒子(magnetic particle)は、化学成分や生物成分を結集或いは局在化させる「収集手段」として広範に使用されている(非特許文献6〜9)。酵素(非特許文献10)、DNA(非特許文献11)、細胞(非特許文献12)の移動及び結集など、磁気的に閉じ込められた(magnetically-confined)化学成分の様々な適用例が報告されている。
【0003】
以下の参照文献は、本発明の背景を理解するうえで関連性があると考えられる。以下の説明においも、下記の文献は下記のリストにおける番号によって参照されている。
【非特許文献1】Hirsch, R.; Katz, E.; Willner, I.; J. Am. Chem. Soc. 2000, 122,12053-12054
【非特許文献2】Katz, E.; Sheeney‐Haj-Ichia,L.; Willner, I.; Chem. Eur. J. 2002, 8, 4138-4148
【非特許文献3】Katz, E.; Sheeney‐Haj-Ichia,L.; Buckmann, A. F.; Willner, I.; Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 1343-1346
【非特許文献4】Sheeney‐Haj-Ichia,L.; Katz, E.; Wasserman, J.; Willner, I.; Chem. Commun. 2002, 158-159
【非特許文献5】Katz, E.; Willner, I.; Electrochem. Commun. 2002, 4, 201-204
【非特許文献6】Dickson, D. P. E.; Walton, S. A.; Mann, S.; Wong, K.; NanoStruct. Mater. 1997, 9, 595-598
【非特許文献7】De Cuyper, M.; Joniau, M.; Biotechnol. Appl. Biochem. 1992, 16, 201-210
【非特許文献8】Carpenter, E. E.; J. Magnetism Magnetic Mater. 2001, 225, 17-20
【非特許文献9】Matsunaga, T.; Takeyama, H.; Supramolec. Sci. 1998, 5, 391-394
【非特許文献10】Liao, M. -H.; Chen, D. -H.; Biotechnol. Lett. 2001, 23, 1723-1727
【非特許文献11】Mornet, S.; Vekris, A.; Bonnet, J.; Duguet, E.; Grasset, F.; Choy, J. -H.; Portier, J.; Mater. Lett. 2000, 42, 183-188
【非特許文献12】Sonti, S. V.; Bose, A.; J. Colloid Interface Sci. 1995, 170, 575-585
【非特許文献13】Shen, L.; Laibinis, P. E.; Hatton, T. A.; Langmuir 1999, 15, 447-453
【非特許文献14】Katz, E.; Lotzbeyer, T.; Schlereth, D. D.; Schuhmann, W.; Schmidt, H. -L.; J. Electroanal. Chem. 1994, 373, 189-200
【非特許文献15】Bard, A. J.; Faulkner, L. R.; Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications, Wiley, New York, 1980
【非特許文献16】Moiroux, J.; Elving, P. J.; J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 6533-6538
【非特許文献17】Gorton, L.; J. Chem. Soc., Faraday Trans. 1, 1986, 82, 1245-1258.
【発明の開示】
【0004】
本発明は、分析対象の液体試料中の検体を測定する方法及びシステムを提供する。本発明の方法及びシステムは、検体が存在しかつ適切な分析条件下で反応が起こって反応信号が生成されるような、機能化された磁性粒子、例えば、認識試剤を担持する磁性粒子、を使用することに基づいている。
【0005】
用語「反応」は、反応信号を生成する目的で一度又は連続して行われる一つ以上の反応又は相互作用を意味するものとする。「反応信号」は、反応によって生じる何らかの検出可能なパラメータである。従って、「分析条件」は、該当する反応が起こるために必要又は有用な条件、物質、作用のすべてを包含し、連続的に変化する条件又は作用もこれに含まれる。
【0006】
粒子は、反応セル内のバリア面の近傍に配置されている磁石によって、このバリア面に引き寄せられる。反応は、検出部材によって検出され、検出部材は、バリア面を形成しているか、バリア面の一部であるか、又は、バリア面の近傍又はそれ以外の場所に配置される。
【0007】
検出部材は、電気化学セルの電極でよく、このような例における反応信号は、分析試料中に検体が存在している結果として起こる反応によって生じる電気応答である。用語「電気応答」は、記録される電気パラメータ、又は電極の電気特性の測定可能な変化を意味する。電気応答は、電極の表面で起こる反応の結果としての電流の発生、電荷又は電位の変化、或いは、例えばサイクリックボルタモグラムによって測定できる、電極のアンペロメトリック応答(amperometric response)の変化、その他でよい。明らかに理解される点として、本発明は、電気応答を測定する方法によって制限されることはなく、従って、本発明の方法及びシステムにおける電気応答の測定には、任意の測定方式を適用することができる。
【0008】
反応信号の例として、電気応答以外には、発光、比色反応、検出部材上の沈殿の形成が挙げられる。このような応答は、適切な光学検出手段によって測定することができる。検出部材上の沈殿の形成は、検出部材(この場合には電極)の電気応答の変化を、例えばファラデーインピーダンス分光法(Faradaic impedance spectroscopy)を使用して測定することによって求めることもできる。
【0009】
本発明によると、バリア面での磁性粒子の急速な動き、すなわち急速な振動又は回転を発生させることによって、反応を大幅に増強することができる。このことは、例えば、磁石に関連付けられており、かつ磁石を回転させることによって磁性粒子の回転を発生させる回転モータによって達成することができる。
【0010】
粒子の界面(interface)において電極触媒及び生体電極触媒の作用下で起こる変換は、検体、又は分析に関与する他の物質が反応場所まで移動する速度によって、特に制御される。理論を持ち出すまでもなく、磁性粒子が回転又は振動することによって、検体若しくは分析物質、又はこの両方が反応場所の方に流体力学的に大量に移動し、検体若しくは分析物質、又はこの両方と、機能化された磁性粒子又はこれらの粒子に付加された部分(moiety)との間の反応が促進されるものと考えられる。回転又は振動する磁界によって磁性粒子を回転又は振動させることは、本発明の好ましい実施形態である。
【0011】
本発明では、反応信号の発生を監視することによって、分析試料中の検体の存在を定性的に検出することができる。信号の大きさを測定することによって、分析試料中の検体の濃度を定量的に求めることもできる。以下の説明では、用語「測定」、「求める」、「検出」は、分析試料中の検体の定性的分析と定量的分析の両方を一括して指すものとする。
【0012】
用語「磁石」は、磁化した合金から成る磁石と電磁石の両方を意味するものとする。
【0013】
本発明の一つの側面によると、分析試料中の検体を測定する方法であって、
(i)前記検体と結合又は反応する認識試剤を担持する磁性粒子を提供するステップと、分析条件下で前記結合又は反応は反応信号をもたらす反応を生じさせる、
(ii)前記磁性粒子を前記分析試料に接触させ、前記磁性粒子をバリア面近傍の磁石によって前記バリア面に引き寄せ、前記分析条件を与えると共に前記磁性粒子を急速に回転又は振動させて、反応信号を発生させるステップと、
(iii)前記反応信号を読み取るステップと、
を有する方法が提供される。
【0014】
本発明の方法において使用される磁性粒子は、代表的には、Fe、又はFe、Co、Ni、又はこれらの合金、又はその他の強磁性体材料から作製される。
【0015】
別の側面によると、本発明は、 分析試料中の検体を測定するシステムであって、
(a)バリア面を有するセルと、
(b)磁性粒子を回転又は振動させるサブシステムと、
(c)前記検体の存在下で反応が起きて反応信号をもたらすように認識試剤が固定された磁性粒子と、前記信号は前記磁石の回転又は振動の間増大する、
(d)前記反応信号を検出する検出部材と、
(e)前記反応信号を読み取る読み取り器と、
を有するシステムを提供する。
【0016】
本発明の一つの実施形態によると、サブシステムは、磁石を急速に回転又は振動させる磁石を伴うモータを備えている。
【0017】
本発明のシステムにおいて使用される磁性粒子は、代表的には、Fe、又はFe、Co、Ni、又はこれらの合金、又はその他の強磁性体材料から作製される。
【0018】
本発明の一つの実施形態によると、システムは電気化学システムであり、かつ、反応信号を生成する反応は酸化還元反応である。
【0019】
本発明は、認識試剤と検体の性質、又は、反応信号を生成する反応の性質、分析条件、反応信号、によって制限されることはない。固定された認識試剤によって媒体中の検体を検出することを可能にする反応には、例えば国際公開第97/45720号パンフレットと国際公開第00/32813号パンフレットに開示されている反応など多数の種類があり、これらの文書の内容は本文書に参考とすることにより組み込まれている。
【0020】
本発明の一つの実施形態によると、分析試料は、最初に、検体(試料中に存在している場合)と認識試剤との結合が引き起こされるように反応させる。認識試剤は、蛍光マーカ又は別の比色分析マーカ、又は、ラジオ標識(radio label)、検出可能な反応の触媒として作用することができる酵素、酸化還元反応を起こすことができる試薬でよい。
【0021】
従って、認識試剤と検体は互いに反応して、反応生成物を生成することができる。この反応は、一般には酸化還元反応であるが、これに限定されない。分析条件は、この実施形態によると、反応が起こることができる温度条件と試薬とを含む。認識試剤と検体との間の反応を可能にする試薬は、一般には触媒を含み、例えば、その反応の触媒として作用することができる酵素を含む。この実施形態によって検出することができる検体の具体的な例としては、砂糖分子(ブドウ糖、果糖、マンノースなど)、ヒドロキシ化合物又はカルボキシ化合物(ラクタート、エタノール、メタノール、蟻酸など)、アミノ酸が挙げられる。このような場合における認識試剤はキノンであり、例えばナフトキノン、ピロロキノリンキノン(pyrroloquinoline quinone)(PQQ)などである。反応(この場合には酸化還元反応)を起こすことができる酵素としては、グルコースオキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、コリンオキシダーゼなどが挙げられる。
【0022】
別の実施形態によると、認識試剤は、検体が生成物に変換される反応を引き起こすことができる触媒を含む。この特定の実施形態によると、反応は酸化還元反応でよく、反応は、電極の電気応答を測定することによって監視することができる。触媒が酵素である場合、酵素の種類によって反応の特異性が決まる。
【0023】
これに代えて、検体は、認識試剤が生成物に変換される反応を引き起こすことができる触媒でよい。この場合、反応信号は、認識試剤が触媒によって変換され場合にのみ存在する。
【0024】
本発明の更に別の実施形態によると、検体と認識試剤は、認識対を形成する。認識対の例としては、抗原と抗体、リガンドと受容体、オリゴヌクレオチドと相補的配列のオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドと結合蛋白質、砂糖とレクチンを挙げることができる。この場合、検体が対の一方であり、検出部分が対の他方である。検出は、形成される対に結合する試薬、例えば二本鎖オリゴヌクレオチド(double-stranded oligonucleotides)に特異的に結合して一本鎖オリゴヌクレオチドには結合しない試剤や、基質として二本鎖オリゴヌクレオチドのみを使用し一本鎖オリゴヌクレオチドは使用しない酵素、の使用に基づいて行うことができる。
【0025】
代替方法においては、検出は、検体に特異的に結合する試薬に基づいて行うことができる。この場合には、最初に検体と試薬の間の結合を起こし、その後、余分な試薬を除去し、反応を進行させる。試薬は、認識試剤を導入する前、又は導入する間、又は導入した後に、検体に接触させることができる。このような試薬の例は、検体が認識試剤に結合しているときに、その検体に特異的に結合することができる抗体やヌクレオチド鎖である。試薬は、検出可能な標識を担持することができ、この標識は、蛍光標識、又は比色分析標識、酸化還元標識でよい。或いは、試薬は、自身が反応を起こすか又は反応の触媒として作用できる試剤(酵素など)、又は酸化還元反応を起こすことができる試剤などでよい。
【0026】
本発明の方法においては、分析の間、化学系の成分、例えば検体、認識部分、触媒、のうちの少なくとも一成分は分析液体溶媒に溶解している必要があり、これに対し、残りの成分は磁性粒子に結合している必要がある。
【0027】
本発明の更に別の実施形態によると、分析は、検体又は検体を含む合成物を改質することができる第1の試薬であって、反応の生成物が第2又はそれ以上の試薬によって検出可能であり、試料中の検体の存在又は濃度に依存する反応信号が最終的に生成されるような、第1の試薬、を含む。このような分析の一つの例は、ビオチンを含む部分を認識試剤に結合することによって、検体の存在下で認識試剤を改質する酵素を使用することである。この場合、認識試剤に結合するビオチン部分は、例えば生体触媒標識として作用するアビジン−ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(avidin-horseradish peroxidase)(HRP)を含む第2の試薬に特異的に結合する部分としての役割を果たす。理解される点として、例えば、DNA検体の存在下で一本鎖DNAである認識試剤をポリメラーゼ連鎖反応を使用して標識化するなど、認識部分の複数の分子を繰り返し標識化することによって、この分析方法によって信号を増幅することもできる。
【0028】
本発明の別の実施形態によると、癌細胞を検出する方法であって、
(i)テロメラーゼのプライマとして働くDNA認識試剤を担持する磁性粒子を提供するステップと、分析条件下でテロメラーゼ反応は反応信号をもたらす反応を可能にする、
(ii)癌の疑いがある一つ以上の細胞からの細胞抽出物を有する分析試料を提供するステップと、
(iii)前記磁性粒子を前記分析試料に接触させ、前記磁性粒子をバリア面近傍の磁石によって前記バリア面に引き寄せ、前記分析条件を与えると共に前記磁性粒子を急速に回転又は振動させて、反応信号を発生させるステップと、
(iv)前記反応信号を読み取るステップと、
(v)前記読み取り値を、癌細胞を含んでいない対照分析試料から得られた読み取り値と比較するステップと、前記分析試料における読み取り値が前記対照分析試料における読み取り値よりも高いことは、前記疑わしい細胞が癌性であることを示す、
を有する方法が提供される。
【0029】
本発明のこの実施形態によると、患者の健康状態を診断する目的で、患者から採取された組織中の癌を検出できることが理解されるであろう。これに代えて、治療の成否や進行を評価する目的で、そのような組織試料を既知の癌患者の治療時に採取することができる。
【0030】
用語「癌」又は「癌性」は、人又はそれ以外の細胞又は患者のあらゆる癌性若しくは悪性状態を表すものとする。
【0031】
本発明の方法においては、媒体内に検体が存在していると、その結果として、信号(例:電気信号、色信号)が生成される、又は光が発せられる、又は沈殿が形成され、これによって、検体の存在が示される。検出部材は、反応信号を検出できるものである。信号が発光であるときには、検出器は光検出器である。
【0032】
信号が電気信号であるときには、その信号は、電極と電子伝達鎖との間で電子が移動する結果であり、この場合に検体は電子伝達鎖の一要素である。
【0033】
本発明の方法において使用するのに適する電極は、例えば、金、白金、パラジウム、銀、カーボン、胴、ITO(インジウムスズ酸化物)など、導体材料又は半導体材料から作製されているか、或いはこれらの材料によって被覆されている。
【0034】
本発明の方法及びシステムは、複数の検体の同時又は連続的な検出にも適用できることが理解されるであろう。このような場合、磁性粒子は、(同じ磁性粒子上又は異なる磁性粒子上のいずれかに)複数の認識試剤を担持する。同時検出を行うためには、分析条件は、各検体ごとに区別できる反応信号を同時に形成することができる条件である必要がある。従って、一つの検体の存在が一つのタイプの反応信号(例:発光)につながり、その一方で、別の検体の存在が別のタイプの反応信号(例:検出部材上の沈殿の形成、又は異なるスペクトルでの発光)につながる。これに代えて、複数の検体の検出を連続的に達成することができ、すなわち、一つの分析が実行された後、磁性粒子を集めて洗浄し、別の分析条件を与えて別の検体を検出する。このような場合、各分析においてただ一つの検体の存在に対応して反応信号が得られるならば、反応信号は同じでよい。
【0035】
本発明を理解し、本発明を実際に実施する方法を示す目的で、以下に、いくつかの好ましい実施形態について、例(本発明はこれに制限されない)を用いて添付の図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
留意すべき点として、本発明の方法によって行われる分析の間、化学系の成分、例えば検体、認識部分、触媒、又は触媒の作用に必要な成分(例:基質)、のうち少なくとも一成分は、分析対象の液体媒体に溶解している必要があり、それ以外の成分は磁性粒子に結合している必要がある。後から示す例においては、次の成分はそれぞれの溶液中にあった。
【0037】
(a)NADH分析の場合:NADHは溶液に溶かし、PQQは磁性粒子に固定した。
【0038】
(b)グルコースの分析の場合:グルコースは、生体触媒として機能するグルコースオキシダーゼと一緒に溶液に溶かした。その一方で、電極と酵素との間の電気的な伝達を行う電子伝達体であるフェロセンは、磁性粒子に固定した。
【0039】
(c)図4A、図4B、図5によるDNA分析の場合:相補DNA(検体)は、電極触媒(electrocatalyst)として機能するドキソルビシン(doxorubicin)と一緒に、DNAによって機能化された磁性粒子に固定した。その一方で、電極触媒の作用下で過酸化水素に変換される基質である酸素は、分析媒体に可溶である。
【0040】
(d)抗体分析:DNP抗体が検体であり、電極触媒として作用するナフトキノンと一緒に粒子表面に固定した。酸素は、電極触媒の作用下で過酸化水素に変換される可溶化された物質である。
【0041】
(e)図8A、図8B、図9によるDNA分析の場合:相補DNA(検体)は、DNAによって機能化された磁性粒子に固定した。この検体に相補な追加のDNA試薬をこの合成物に固定し、酵素であるホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)をビオチン−アビジン相互作用を介してこの合成物に固定した。ナフトキノンも磁性粒子に固定した。電極に電位を印加すると、ナフトキノンがヒドロキノンに還元され、電極触媒の作用下で酸素が過酸化水素に還元される。電解的に生成された過酸化水素によってルミノールがHRP触媒の作用下で酸化されると、その結果として化学発光が起きて光が発せられる。ルミノールと過酸化水素は、分析媒体に可溶である。
【0042】
(f)図10〜図13によるDNA分析の場合:相補DNA(M13φDNA、検体)を、DNAによって機能化された磁性粒子に固定し、この合成物をタック・ポリメラーゼ(Taq-Polymerase)用の基質として使用した。ヌクレオチド(dATP、dCTP、dTTP、dGTP、ビオチン−dUTP)は、分析媒体に可溶であった。ポリメラーゼ反応が終了した後、DNAが結合している磁性粒子にビオチン−アビジン相互作用を介してHRPを固定した。電極触媒として作用するナフトキノンも、磁性粒子に固定した。電極触媒の作用下で過酸化水素に変換される基質である酸素と、過酸化水素と共にHRPの基質であるルミノールも、分析媒体に可溶である。
【0043】
(g)図14〜図16によるDNA分析の場合:相補DNA(変異検体でありワイルドタイプDNA)を、DNAが結合している磁性粒子に固定し、この合成物をタック・ポリメラーゼ用の基質として使用した。ヌクレオチド(ビオチン−dCTP)は、分析媒体に可溶であった。ポリメラーゼ反応が終了した後、DNAによって機能化された磁性粒子にビオチン−アビジン相互作用を介してHRPを固定した。電極触媒として作用するナフトキノンも、磁性粒子に固定した。電極触媒の作用下で過酸化水素に変換される基質である酸素と、過酸化水素と共にHRP用の基質であるルミノールも、分析媒体に可溶である。
【0044】
(h)テロメラーゼ分析の場合:酵素検体を、磁性粒子に結合しているDNAプライマにテロメア反復を付加するための触媒として作用させた。ヌクレオチド(dATP、dCTP、dTTP、dGTP、ビオチン−dUTP)は、分析媒体に可溶であった。テロメラーゼ反応が終了した後、DNAが結合している磁性粒子にビオチン−アビジン相互作用を介してHRPを固定した。電極触媒として作用するナフトキノンも、個別の磁性粒子に固定した。基質である酸素が、電極触媒の作用下で過酸化水素に変換され、過酸化水素と共にHRP用の基質であるルミノールも、分析媒体に可溶である。
【0045】
磁性粒子(Fe、平均直径約1μm、飽和磁化約65emu・g−1)は、公開されている手順(非特許文献13)に従って、反応媒体に界面活性剤を含めずに作成した。図1は、磁性粒子の機能化を示している。磁性粒子を、[3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリメトキシシラン([3-(2-aminoethyl)aminopropyl]trimethoxysilane)によってシラン化した後、結合試薬として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)を使用して、ピロロキノリンキノン(PQQ)(1)、又はN−(フェロセニルメチル)アミノヘキサン酸(N-(ferrocenylmethyl)aminohexanoicacid)(2)、によって機能化した。PQQによって機能化された磁性粒子は、底部のAu電極(0.24cm)に外部磁石(NdFeB/Zn被覆磁石、直径18mm、電極面において0.2kOe)によって引き寄せられ、E=−0.13V(対SCE)、pH=7.0において可逆的なサイクリックボルタモグラムを示し、平均表面被覆率(surface coverage)は粒子あたりPQQ7500ユニットであった。磁性粒子に関連付けられるPQQユニットのサイクリックボルタモグラムは、外部磁石の回転速度とは無関係であり、このことは、酸化還元ユニットが(支持部材としての)電極に局限されていることを示す。PQQによって機能化された磁性粒子は、1,4−ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(1,4-dihydronicotineamide adenine dinucleotide)(NADH)の酸化の電極触媒として作用し、特にCa2+イオンの存在下において効果的である(非特許文献14)。
【0046】
図2Aは、外部磁石の様々な回転速度において、PQQ磁性粒子の介在による電極触媒の作用下で50mMのNADHを酸化したときに観察された、サイクリックボルタモグラムを示している。図2Bは、外部磁石の様々な回転速度において、様々な濃度のNADHの存在下で発生した陽極電流に対応する較正曲線を示している。図2Aと図2Bから、電極触媒の作用下で発生する電流は、外部磁石の回転速度が高まるにつれて増すことが明らかである(低い回転速度では理論上の関係Icat∝ω1/2が観察された)。
【0047】
対照実験においては、PQQによって機能化されたシリカ粒子を重量分析的にAu電極上に付着させ、NADHの存在下において外部磁石を様々な速度で回転させた。電極触媒の作用下で発生する電流に対して、回転する外部磁石の影響は観察されなかった。このことは、(支持部材としての)電極上の磁性粒子を回転させると、電極への基質の移動が流体力学的に制御されることに起因して、電極触媒の作用下の陽極電流が外部磁石の回転時に増すことを意味する。
【0048】
酸化還元機能を与えられた磁性粒子を回転させることにより、電極触媒の作用下で発生する電流が磁界の刺激により増大することは、生体電極触媒の作用下での変換の場合にも実証された。フェロセン誘導体(2)によって機能化された磁性粒子をAu電極に引き寄せ、回転する外部の磁石によって(支持部材としての)導体上で回転させた。フェロセンユニットの準可逆的なレドックス波(redox-wave)(E°=0.32V)は、外部の磁石の回転とは無関係である。図3Aは、1×10−5Mのグルコースオキシダーゼ(GOx)と50mMのグルコースの存在下での、外部磁石の様々な回転速度における、フェロセンによって機能化された磁性粒子のサイクリックボルタモグラムを示している。図3Bは、外部磁石の様々な回転速度における、グルコースの様々な濃度におけるシステムのアンペロメトリック応答に対応する較正曲線を示している。電極触媒の作用下での陽極電流は、外部磁石の回転速度が大きいほど増大する。対照実験から明らかにされた点として、電極触媒の作用下での陽極電流はグルコースオキシダーゼとグルコースが存在するときにのみ観察され、フェロセンによって機能化されたSiO粒子によって電極触媒の作用下で生成される陽極電流に対しては、外部磁石の回転速度の影響が観察されない。
【0049】
図4Aと図4Bに示した別の実験は、生体電極触媒の作用下での発光を使用してのDNA分析を示している。Feの磁性粒子をシラン化し、DNAプライマ(3)をシラン薄膜に共有結合させた。この、DNAによって機能化された磁性粒子をDNA検体(4)と反応させ、その結果として二本鎖(ds)DNAらせんが生じた。ds−DNAによって機能化された磁性粒子を、特異的にds−DNAに結合するインターカレータ(intercalator)であるドキソルビシン(doxorubicin)(5)と反応させた。このインターカレータは、電気化学的に還元することができる電気化学的に活性なキノンであり、更にOを還元して結果的に過酸化水素Hを生成することができる。電極触媒の作用下で生成されるHは、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)とルミノールの存在下で光を発生させる。発せられる光は分析信号であり、インターカレータの存在、従って検体DNA(4)の存在を報告する。発光の強度は、電極触媒の作用下でのOの還元速度に依存する。この速度は、改質された磁性粒子が回転すると高まり、結果として発光が増幅される。
【0050】
別の実験では、不溶性の物質が生体電極触媒の作用下で沈殿することを使用してDNA分析を実行した。図5に示した系は、上述した系と似ているが、HRPと4−クロロナフトール(4-chloronaphthol)(6)の存在下において電極触媒の作用下でHが生成される結果として、不溶性生成物(7)が沈殿する。この不溶性生成物により、電極面が絶縁される。この効果は、ファラデーインピーダンス又はクロノポテンシオメトリーによって測定することができる。電極の絶縁の程度は、Hの生成速度に依存する。この速度は、改質された磁性粒子が回転すると高まり、結果として信号が増幅される。
【0051】
新しい免疫センサーを図6A〜図6Cに示す。磁性粒子は、上述したようにアミノシランによってシラン化した。ジニトロフェニル(dinitrophenyl)のカルボン酸誘導体である抗原(8)を、磁性粒子の表面におけるシロキサン層のアミノ基に共有結合させた。シラン化した磁性粒子10mgと(8)とのこの結合反応は、0.1MのHEPES緩衝液(pH7.2)中で、5mMのEDCの存在下で濃度1mMにおいて2時間にわたり進行させた。次に、未結合の抗原分子すべてを取り除くため、(8)から誘導された磁性粒子を水で洗浄した。抗原によって改質された磁性粒子を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)中で様々な濃度(2ng/mL〜50ng/mL)のDNP抗体(9)(DNPはジニトロフェノールの略語)と30分間にわたり反応させる。次に、抗体/抗原によって機能化された磁性粒子を、酵素であるホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしている抗DNP抗体(anti-DNP-antibody)(10)(100ng/mL)と30分間にわたり反応させる。この二次的な抗DNP抗体(10)は、一次DNP抗体に結合することができるが、DNP抗原(8)には結合しない。従って、磁性粒子に結合しているHRP複合体抗DNP抗体(10)の量は、DNP抗体の存在に依存し、DNP抗体の濃度に比例する。抗原(8)、DNP抗体(9)、及びHRP複合体抗DNP抗体(HRP-conjugate-anti-DNP-antibody)(10)とによって磁性粒子を機能化する上述した手順は、図6Aに示してある。酵素HRPは、過酸化水素(H)とルミノールを使用して光を生成する。従って、Hを分析溶液の一部として試料に組み入れることができる。しかしながら、この例においては、図6Bに示すように、別の種類の機能化された磁性粒子を使用してHを生成し、これによって系を電気化学的に活性化する。シラン化した磁性粒子を、10mgの磁性粒子と100mgのキノン(11)とを含むエタノール懸濁液(5mL)中で、このエタノール懸濁液を煮沸して2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン(2,3-dichloro-1,4-naphthoquinone)(11)と3分間にわたり反応させる。次に、キノンから誘導された磁性粒子をエタノールで三回洗浄し、水で一回洗浄する。図6Aと図6Bの両方に示した機能化された粒子を組み入れた系を、図6Cに示す。この系は、図6Bに従って生成される、キノン(11)によって機能化された磁性粒子10mgと、図6Aに従って作成される磁性粒子10mgとから成る。この系にも、Au板電極と、電極の下の回転する磁石とが含まれている。また、溶液は、空気で飽和している0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)中に1×10−5Mのルミノールを含んでいる。光検出器は、溶液の上方に固定されている。−0.6Vの電位(対SCE)を電極に印加することにより、溶液に溶けている酸素が電気化学的に還元される。この還元は、キノン(11)が触媒として作用し、結果的に過酸化水素(H)が生じる。過酸化水素は酵素HRPの存在下でルミノールと反応し、この結果としての発光を光検出器によって検出する。
【0052】
図7Aと図7Bは、図6Cに示した免疫検出システムの結果を示している。図7Aは、磁性粒子を回転させない場合(曲線a)と、100rpm(回転/分)の場合(曲線b)の発光の強度を示している。回転時には系内での移動(キノンへの酸素の移動、キノンからHRPへの過酸化水素の移動、HRPへのルミノールの移動)が改善されるため、信号は増幅されている。発光は、結合している酵素HRPの量に依存するが、HRPの濃度はDNP抗体(9)(検体)の濃度に依存する。図7Bは、回転なしの場合(a)と100rpmの場合(b)の二つの較正プロット(calibration plot)(DNP抗体濃度に対する光信号の強度)を示している。曲線(b)と曲線(a)上の対応する測定値の比は、磁性粒子の回転時に達成された増幅率を示す。留意すべき点として、増幅率は、回転速度に依存する(ただしこの依存関係は線形ではない。前の例を参照)。
【0053】
図8Aは、DNAによって機能化された磁性粒子と、ビオチンによって標識化されたDNAと、アビジン−HRPとを使用することによってDNA検体を検出する、本発明の実施形態を示している。アミンによって機能化されたホウ珪酸塩ベースの磁性粒子(5μm、CPG社の長鎖アルキルアミンMPG(登録商標))を、ヘテロ二官能性の架橋剤(heterobifunctional cross-linker)である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(3-maleimidopropionic acid N-hydroxysuccinimide ester)を使用して、DNAプライマ(12)によって改質した。粒子の被覆率は、試薬オリグリーン(Oligreen:登録商標)試薬(モルキュラー・プローブス(Molecular Probes)社のssDNA定量分析キット)を使用して、粒子あたり約52,000個のオリゴヌクレオチド分子であると推定した。プライマ(12)は、標的配列(13)の一部の相補である。(12)によって機能化された磁性粒子を、(様々な濃度の)標的(13)と、ビオチンによって標識化された核酸(自由断片(free segment)の相補である)(14)とが含まれる混合物を用いて、単一ステップでハイブリッド化する。次に、三成分の二本鎖DNA構造(12)/(13)/(14)を、生体触媒標識(biocatalyticlabel)として作用するアビジン−ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)と相互作用させる。
【0054】
次に、図8Bに示した一つの実施形態に従って、DNAとアビジン−HRPとによって機能化された図8Aの磁性粒子を、ナフトキノンユニット(15)によって改質された磁性粒子と混合する。次に、磁性粒子のこの混合物を、外部磁石によって(支持部材としての)電極に引き寄せる。ナフトキノンが電気化学的にヒドロキノンに還元される結果として、Oが触媒作用によりHに還元される。このように電解によりHが生成される結果として、ルミノール(16)とHRP酵素標識の存在下で、化学発光信号が生成される。
【0055】
不特定な吸着が起こらないならば、アビジン−HRPは、標的DNAが磁性粒子とハイブリッド化されている場合にのみ電極に近づく。従って、化学発光は、標的DNA(13)が分析試料中に存在している場合にのみ発生する。更に、光の強度は、電極に対応する(12)と(13)の認識対の数に直接関連し、従って、試料中の(13)の濃度の定量的な測度となる。
【0056】
回転する外部磁石によってバリア面上の粒子が回転する結果として、電気化学発光が増大する。なぜなら、磁性粒子は回転する微小電極として振る舞い、O及びルミノールと電極上の触媒との相互作用が拡散ではなく対流によって制御されるためである。従って、磁性粒子が回転することによって、DNAの増幅検出が得られるものと予測される。
【0057】
理解すべき点として、Hを電解により生成することは本発明の必須部分ではなく、別の実施形態によると、Hを分析試料に直接導入することができる。そのような場合、電極も必要ない。しかしながら、そのような代替実施形態においては、Hが電極付近に局在化されないため、反応条件を与える前に余分なアビジン−HRPを分析試料から取り除く必要がある。
【0058】
基本的に図8Aと図8Bに従って行われる実験においては、(12)によって機能化された磁性粒子の試料を、2×10−7Mのビオチン化された核酸(14)の存在下で、1.4×10−8Mの(13)と相互作用させた。その結果の二本鎖(12)/(13)/(14)の三成分系を外部磁石によって集め、0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した後、アビジン−HRP複合体と反応させ、再び外部磁石によって集めた。その結果の粒子を、ナフトキノン(15)によって改質された2mg・ml−1の磁性粒子と共に電気化学セル内に懸濁させた。図9Aにおいて、曲線(a)は、外部磁石によって電極上に磁性粒子を集め、電極に0V〜−0.5V〜0Vの電位ステップを印加したときの発光の強度を示している。図9Aの曲線(b)〜(d)は、様々な回転速度を用いて外部磁石によって粒子を回転させたときの発光の強度を示している。回転速度が高くなると発光強度が増し、結果の光の強度はω1/2(ω=回転速度)に対して線形的な関係となり、これは、回転する微小電極が電極触媒として作用するものと考えたときに予測されるものである。ハイブリッド化するステップにおいて(13)が存在しない対照実験においては、発光は検出されず、このことは、(14)又はアビジン−HRP複合体が不特定には吸着しないことを示す。系から発せられる光の強度は、アビジン−HRP複合体の表面被覆率に関連し、被覆率は、粒子に関連付けられる(13)/(14)の量によって制御され、従って(13)の濃度によって決まる。図9Bは、様々な回転速度において様々な濃度の(13)を分析して記録したときの発光強度に対応する較正曲線を示している。図9Aの曲線(e)は、(13)に対する7塩基変異配列を含む1×10−7Mの変異体(13a)を、図8Aと図8Bの実施形態に従って回転速度2000rpmにおいて分析したときに観察された光の強度を示している。表面上のアビジン−HRP複合体が不特定に吸着することに起因する発光は観察されなかった。この光の強度は、背景信号としてみなされ、従って、この例においては、(13)は、ω=2000rpmにおいて1×10−14Mの検出限界で検出することができる(S/N>3)。
【0059】
以下に説明する例は、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して反応信号を増幅する、本発明によるDNA検体の検出方法の使用について示している。これらの例においては、次の実験条件と材料を使用した。
【0060】
・アミンによって機能化されたホウ珪酸塩ベースの磁性粒子(5μm、CPG社の長鎖アルキルアミンMPG(登録商標))と、ビオチン−21−dUTP(クロンテック(Clontech)社)。ヘテロ二官能性の架橋剤である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、オリゴヌクレオチド(17)、(18)、(19)、(20)、アビジン−HRP−複合体、dNTP、ビオチン−11−dCTP、タック・ポリメラーゼ、10×PCR緩衝液、及びその他のすべての化合物はシグマ(Sigma)社から購入し、購入した状態で使用した。
【0061】
・DNAによって機能化された磁性粒子の作成:アミンによって機能化された磁性粒子(CPG社の長鎖アルキルアミンMPG(登録商標))30mgを、1mlのDMSO中でヘテロ二官能性の架橋剤である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(10mg、シグマ社)との反応によって活性化した。室温で4時間インキュベーションした後、外部磁石によって粒子を集め、DMSOと水とで完全に洗浄した。次に、マレイミドによって活性化した粒子を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)中でチオレートオリゴヌクレオチド(thiolatedoligonucleotide)の20〜30O.Dと8時間にわたり反応させた(チオレートヌクレオチドは、機能化された粒子との反応前にDTTによって新たに還元し、セファデックス(Sephadex)G−25カラムに分離した。最後に、磁性粒子を水と0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)によって洗浄した。DNAによって改質された粒子を一週間以上の期間にわたり保持するため、1%(w/v)のアジ化ナトリウムを加え、粒子を4℃に維持した。酵素DNアーゼ処理(10ユニットのDNアーゼ、37℃で30分)の前後に、磁性粒子上のオリゴヌクレオチド含有量を、オリグリーン(登録商標)試薬(モルキュラー・プローブス社のssDNA定量分析キット)を使用することによって測定した。
【0062】
・φ:(a)点変異(single-point-mutation)検出の場合:変性は94℃で30秒、アニーリングは55℃で30秒、重合は72℃で5秒、(b)ウイルス検出の場合:変性は94℃で30秒、アニーリングは55℃で30秒、重合は72℃で15秒。
【0063】
・金で被覆した(金の層は50nm)ガラス板(ドイツのアナリティカル−μシステム(Analytical-μSystem)社)を作用電極として使用した(溶液との接触面積は0.3cm)。直径0.5mmのワイヤから補助のPt電極と擬似基準Ag電極とを作製し、セルに加えた。擬似基準電極は、飽和カロメル電極に対して較正し、電位はSCEに対するものである。水平位置にAu電極を含むオープン型の(open)電気化学セル(230μL)と、光ファイバに結合されている光検出器とにより、改良した作用電極に適切な電位を印加したときの発光を容易に測定することができた。この電気化学測定は、コンピュータ(EG&G社のソフトウェア270/250)に接続されたポテンシオスタット(モデル283、EG&G社)を使用して実行した。すべての測定は、0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)中で室温にて実行した。電気化学的に発生する化学発光を、オシロスコープ(テクトロニクス(Tektronix)社のTDS220)に接続された光検出器(オフィル(Ophir)社のレーザシュタット(Laserstat))によって測定した。光検出器は、光ファイバによって電気化学セルに接続した。バックグラウンド電解質は空気と平衡状態にあり、1×10−6Mのルミノールを含んでいた。
【0064】
図10は、機能化された磁性粒子を使用してウイルスMP13φDNAを増幅検出する方法を示している。図11に概略を示すように、磁性粒子(CPG社の長鎖アルキルアミンMPG(登録商標)、直径5μm、)を、ヘテロ二官能性の架橋剤である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを使用して、チオレートプライマ(thiolated primer)(17)によって改質する。磁性粒子の平均被覆率は、オリグリーン(登録商標)試薬(モルキュラー・プローブス社)を使用することによって求め、粒子あたりオリゴヌクレオチド約50,000ユニットに相当した。粒子に関連付けられている核酸のうち外部酵素に接触可能な核酸の数は、(17)によって機能化された磁性粒子をDNアーゼに接触させた後、分解したDNAの含有量を求めることによって推定した。粒子あたりオリゴ約20,000ユニットが分解したことが判明し、このことは、粒子に結合している核酸のうち酵素に接触可能なのはわずか約40%であることを意味する。図10に示すように、(17)によって改質された磁性粒子を、MP13φDNA(7229塩基)によってハイブリッド化し、dGTP、dATP、dCTP、ビオチン化dUTP(b−dUTP)の混合物の存在下で重合させる。この重合により、多数のビオチン標識が複製に組み込まれる。複製の後の熱サイクルの結果、分析対象のMP13φDNAが解離し、磁性粒子に関連付けられている他のオリゴヌクレオチドプライマとの再ハイブリッド化する。その後、重合が起こり、多数のビオチン標識ユニットを含んだ新しい複製が形成される。熱サイクルの回数を制御することにより、粒子の表面上の複製化によって、ビオチン標識化された核酸が非常に高密度に磁性粒子上に形成される。熱サイクルはそれぞれ30秒間実施し、複製の効率はサイクルあたり約500塩基である。この比較的低い複製効率は、磁性粒子上に核酸が立体的に密集すること(これによってビオチン標識による粒子の周期的な標識化が乱れることがある)を排除する目的で故意に設計した。次に、この結果として生じた、ビオチン標識化された磁性粒子を外部磁石によって分離し、アビジン−ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)と反応させ、再び外部磁石によって分離し、リン酸緩衝溶液によって洗浄した。アビジンによって機能化された磁性粒子1mgと、ナフトキノンによって改質された磁性粒子(15)(図示していない)との混合物を電気化学セルに入れた。次に、磁性粒子を外部磁石によって電極に引き寄せた。ナフトキノンがそれぞれのヒドロキノンに還元される電位を電極に印加すると、電極触媒の作用下でOからHへの還元が起こる。電解的に生成された過酸化水素によって、HRP触媒の作用下でルミノールが酸化される結果として、化学発光が生じて光が発せられる。
【0065】
図12の曲線(a)は、8.3×10−9MのMP13φDNAを、上記に従い、電極に0V〜−0.5V〜0Vの電位ステップを印加することによって(ナフトキノンによって改質された粒子の場合のEはpH=7において0.4V)分析したときの発光強度を示す。M13φDNAが存在しない試料にすべての分析手順を適用した対照実験(曲線(e))では、発光が観察されず、アビジン−HRP複合体が電極又は磁性粒子に不特定に吸着しないことを示す(図12)。
【0066】
図12の曲線(b)〜(d)は、回転する外部磁石による磁性粒子の回転の効果を示している。磁性粒子の回転速度が高まるほど発光強度が増し、発光強度とω1/2(ω=回転速度)との間には線形関係が観察される(図12の挿入図)。
【0067】
粒子の一定の回転速度においては、発光強度は、磁性粒子に関連付けられる標識化された核酸の表面被覆率によって制御され、この被覆率は、複製サイクル時の分析試料中のMP13φDNAの濃度に関連する。図13は、回転速度ω=2000rpmにおいて様々な濃度のM13φDNAを分析したときの発光強度を示している。
【0068】
本発明の更なる例では、DNA中の一塩基不適正(mismatch)を増幅検出する目的で機能磁性粒子を利用する。これは、図14に示すように、正常な配列の遺伝子(19)の中のA塩基がG塩基に置き換わっている変異配列(18)の分析によって実証されている。磁性粒子は、変異配列の相補である核酸(20)によってと、(18)によってと、変異部位の一塩基手前までの遺伝子配列(19)とによって機能化される。(20)によって改質された磁性粒子と、(18)又は(19)のいずれかが含まれている試料との相互作用の結果、粒子とのハイブリッド化が起きた。磁性粒子に関連付けられるハイブリッド化された集合体をポリメラーゼとビオチン化dCTPとによって処理した後、熱解離/アニーリング/標識化のサイクルを適用した結果、(18)の分析時には、磁性粒子がビオチンユニットによる多重標識化(multi-labeling)が起きたのに対し、(19)の分析時にはビオチン標識は組み込まれない。次に、この粒子をアビジン−HRP複合体と相互作用させた後、外部磁石によって粒子を分離すると、生体触媒の作用下で標識化された粒子が得られた。この結果の粒子を、ナフトキノンによって改質された粒子(15)(図示していない)と電気化学セル内で混合した後、外部磁石によって電極に引き寄せると、電極触媒の作用下でOからHへの還元が起き、ルミノールの存在下において、(18)の分析時には発光が生じたが、(19)の分析時には光は検出されない。この後、外部磁石によって磁性粒子を回転させれば、発光が増幅されることが予測され、なぜなら、電気化学発光は、粒子へのそれぞれの基質の対流によって制御されるためである。
【0069】
図15は、1×10−9Mの(18)(曲線(a))と1.4×10−6Mの(19)(曲線(d))を、いずれも図14に従って回転速度2000rpmにおいて分析したときの発光強度を示している。電極触媒の作用下でのOの還元を活性化し、二次的な化学発光工程を起こす目的で、0Vから−0.5V、再び0Vに戻す電位ステップを電極に印加した。(19)の分析時には発光は観察されず、核酸によって改質された磁性粒子にビオチン標識が組み込まれなかったことを示す。明らかに、発光は変異配列の分析時のみに観察されている。図15の曲線(a)〜(c)は、磁性粒子を様々な回転数で回転させたときにシステムから発せられる光を示している。図16は、様々な濃度の(18)を様々な回転数において分析したときに発せられる光を示している。発光強度は、粒子の回転速度が高まるほど増し(P∝ω1/2)、これは、電極支持体(electrode support)におけるプロセスが対流によって制御されることを意味している。変異配列(18)の分析時の検出限界は1×10−17Mである。分析試料中の(19)の濃度は、(18)の濃度よりも10倍高いが、(19)の分析時に発光は観察されない。このことは、磁性粒子へのHRP複合体の不特定の吸着が起こらないことを意味している。
【0070】
結論として、この例は、磁性を利用することによりDNA分析プロセスが増幅されることを示している。プロセス内のいくつかの連続するステップにより、全体的な増幅が得られる。(i)熱サイクルにより磁性粒子上の検体が複製されることにより、粒子に結合されている核酸に多数の標識ユニットが組み込まれる。(ii)電極において電極触媒の作用下でOが生成されることと、それに対応して生体触媒の作用下で発光することにより、一回の認識処理の結果として膨大な生成物分子又は光子が生成される。(iii)磁性粒子の回転により、発光が増幅され、なぜなら、電極触媒及び生体電極触媒の作用下での粒子におけるプロセスでは、基質の移動が対流によって制御されるためである。これらの方法を使用して、非常に高い感度が達成された。
【0071】
本発明の更に別の例は、与えられた試料内の酵素の検出である。図17Aと図17Bは、酵素検体であるテロメラーゼの検出を概略的に示している。検体であるテロメラーゼは、染色体DNAの3´−端部にテロメア反復を付加することによって新しいテロメアを合成することができるリボ核蛋白質合成物である。従って、この例における認識試剤は、6個のT塩基のリンカーユニットの後に、テロメラーゼによって認識される特徴的配列が続く核酸配列(21)である。アミンによって機能化された磁性粒子(直径5μm)を、二官能性の試薬である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを使用して活性化し、これは、図11にほぼ概略を示したとおりである(今回は配列(17)ではなく配列(21)を用いた)。メルカプトヘキシル(mercaptohexyl)によって改質された核酸(21)を、磁性粒子に共有結合させた。具体的には、アミノによって機能化された磁性粒子(CPG社の長鎖アルキルアミンMPG(登録商標))30mgを、1mLのDMSO中でヘテロ二官能性の架橋剤である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(10mg、シグマ社)との反応によって活性化した。室温で4時間インキュベーションした後、粒子を外部磁石によって集め、DMSOと水で完全に洗浄した。次に、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)中で、マレイミドによって活性化した粒子をチオレートオリゴヌクレオチドの20〜30O.Dと8時間反応させた(チオレートヌクレオチドは、機能化された粒子との反応前にDTTによって新たに還元し、セファデックスG−25カラムに分離した)。最後に、磁性粒子を水と0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)によって洗浄した。DNAによって改質された粒子を一週間以上の期間にわたり保持するため、1%(w/v)のアジ化ナトリウムを加え、粒子を4℃に維持した。酵素DNアーゼ処理(10ユニットのDNアーゼ、37℃で30分)の前後に、磁性粒子上のオリゴヌクレオチド含有量を、オリグリーン(登録商標)試薬(モルキュラー・プローブス社のssDNA定量分析キット)を使用することによって測定した。
【0072】
図17Aに概略的に示すように、認識試剤(21)を含む機能磁性粒子を、ビオチン標識化されたdUTPを含むヌクレオチドdNTPの混合物の存在下で、(検体の存在についての分析対象である)細胞抽出によって処理する。認識試剤にテロメラーゼを関連付けた後にテロメル化が行われ、このとき、テロメア反復にビオチンが組み込まれた新たに合成された鎖が標識化される。次に、アビジン−ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)の結合により、テロマー鎖に生体触媒標識が組み込まれる。外部磁石によって分析フラスコの底部に引き寄せることによって磁性粒子を集め、残留細胞抽出又は不特定に吸着したHRP複合体を取り除くために洗浄する。
【0073】
次に、図17Bに概略的に示すように、3,4−ジクロロナフトキノン(3,4-dichloronaphthoquinone)と、アミノエチルアミンによって改質された磁性粒子との反応によって生成された、ナフトキノンによって機能化された磁性粒子(15)と、図17Aの結果の粒子とを混合する。粒子の混合物を、ルミノール(16)を含む電気化学セルに入れる。キノンがヒドロキノンに還元される電位ステップを印加すると、電極触媒の作用下でOからHへの還元が進行する。その結果のHによって、触媒としてのHRPの作用下でルミノールが酸化され、それに付随して発光が生じる。
【0074】
電気化学発光は、HRP標識がテロメラーゼユニットと結合する場合にのみ観察され、これは、テロメラーゼ(検体)が分析対象の細胞抽出の中に存在する場合にのみ起こる。また、電気化学発光の強度は、粒子に関連付けられる標識/アビジン−HRP複合体の含有量によって制御され、この含有量は、試料中のテロメラーゼ酵素の量によって決まる。更に、外部の回転する磁石によって磁性粒子が回転することにより、発光強度が更に増幅される。粒子が回転するとき、電極触媒の作用下でのOの還元と、Hとルミノールの相互作用は、拡散ではなく対流によって制御され、発光が強化(増幅)される。
【0075】
図18Aは、図17Aと図17Bによる293−腎臓癌細胞(293-kidney cancer cell)の抽出の分析を示している。この図は、粒子を様々な速度で回転させ、0Vから−0.5Vの電位ステップを印加して100,000個の細胞抽出の希釈溶液を分析したときに、系から発せられる光を示す。系から発せられる光の強度は、回転速度が高まるほど増す。分析する系の中で機能磁性粒子が回転する微小電極として振る舞い、電極触媒の作用下で発生する光が回転電極への基質の対流によって制御されるとすれば、発せられる光とω1/2(ω=回転速度)との間には線形の依存関係が存在するはずである。図18Bは、電解的に生成される光とω1/2との間に確かに線形関係が存在することを示している。ナフトキノンによって機能化された磁性粒子又はアビジン−HRP複合体が系から除外されている対照実験では、粒子のいかなる回転速度においても系からの発光は検出されない。これらの実験により、電気化学発光は、最初の、電極触媒の作用下でのOからHへの還元と、その後の、HRPの介在によるHによるルミノールの酸化とに起因して生じることが確認される。
【0076】
一定の回転速度における電気化学発光は、抽出の中の癌細胞の数によって制御される。図19は、図17Aと図17Bとに示した検出方法に従って、(i)0rpm、(ii)60rpm、(iii)2000rpmに相当一定の回転速度おいて様々な濃度の293−腎臓癌細胞を分析したときに、電気化学セルから発せられる光を示している。これらのシステムにおいて、0.0Vから−0.5Vの電位ステップを機能粒子に印加する。図19の挿入図は、それぞれ、100個と10個の293−腎臓癌細胞を含む抽出から発せられた光を示している。比較として、細胞が存在しない場合と、テロメラーゼ活性を不活性化する目的で分析プロセス前に90℃に加熱した293−腎臓癌細胞の抽出が存在する場合では、分析手順全体を適用したときに光の発生は観察されていない。このことは、アビジン−HRP複合体が磁性粒子又は電極に不特定には結合しないことを意味している。
【0077】
類似する結果は、培養されたヒーラ細胞(HeLa cell)中のテロメラーゼを分析したときに観察される。図20Aは、図17に従って、様々な回転速度の磁性粒子を使用して様々なヒーラ細胞抽出を分析したときの電気化学発光を示している。図20Aの挿入図に示すように、発光強度は粒子の回転速度を高くしたときに増し、生成された光の強度とω1/2(rad・s−1)の間には線形関係が観察された。図20Bは、様々な濃度のヒーラ細胞抽出を分析したときの電気化学発光の強度を示している。この実験では、磁性粒子は、(i)0rpm、(ii)60rpm、(iii)2000rpmの一定の回転速度で回転させた。図から明らかに、10個のヒーラ細胞を分析したときに発せられる光を容易に検出することができる。
【0078】
図21は、テロメラーゼ活性のヒーラ細胞の抽出(曲線(a))、293−腎臓癌細胞の抽出(曲線(b))、NHF細胞(正常ヒト線維芽細胞:Normal Human fibroblast)の抽出(曲線(c))を分析したときの電気化学発光を示している。明らかに、濃度が100倍高い正常細胞を分析したときに観察される電気化学発光は、1000個の293−腎臓癌細胞から発せられる光よりも約200倍低い。正常なNHF細胞を含む系から発せられる微細な光は、アビジン−HRP複合体の残留量が磁性粒子に不特定に吸着することに帰すことができる。NHF細胞を含む系において生成される光は、この分析方式の背景光レベルとみなすことができる。
【0079】
更に、図22は、疑わしい組織中の癌を診断する能力を例証している。肺癌患者からの様々な組織を分析した。図22は、健康な細胞と、腺癌の細胞と、扁平上皮癌の細胞を分析したときに得られる電気化学発光の強度を示しており、健康な組織又は正常な細胞の抽出を分析したときに得られる光信号と比較している。癌組織から得られる化学発光信号(テロメラーゼ活性)は、健康な組織細胞の抽出から得られる微細な化学発光信号よりも大幅に高かった。
【0080】
この例は、癌細胞を識別するためと抗癌治療処置をモニターするための迅速な方法として、テロメラーゼを検出する目的に本発明が有用であることを明らかに示している。
【0081】
上記のすべてのテロメラーゼ分析においては、金で被覆した(金の層は50nm)ガラス板(ドイツのアナリティカル−μシステム社)を作用電極として使用した(溶液との接触面積は0.3cm)。直径0.5mmのワイヤから補助のPt電極と擬似基準Ag電極とを作製し、セルに加えた。擬似基準電極は、飽和カロメル電極に対して較正し、電位はSCEに対するものである。水平位置にAu電極を含むオープン型の電気化学セル(230μL)と、光ファイバに結合されている光検出器とにより、改良した作用電極に適切な電位を印加したときの発光を容易に測定することができた。この電気化学測定は、コンピュータ(EG&G社のソフトウェア270/250)に接続されたポテンシオスタット(EG&G社のモデル283)を使用して実行した。すべての測定は、0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)中で室温にて実行した。電気化学的に発生する化学発光を、オシロスコープ(テクトロニクス社のTDS220)に接続された光検出器(オフィル社のレーザシュタット)によって測定した。光検出器は、光ファイバによって電気化学セルに接続した。バックグラウンド電解質は空気と平衡状態にあり、1×10−6Mのルミノールを含んでいた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ピロロキノリンキノン(PQQ)(1)又はN−(フェロセニルメチル)アミノヘキサン酸(2)による、磁性粒子の機能化を示す図
【図2】図2Aは、50mMのNADHの存在下で、磁石を(a)0rpm、(b)10rpm、(c)100rpm、(d)1000rpmで回転させたときに、PQQによって機能化された磁性粒子(10mg)を磁力によって引き寄せたときのAu電極のサイクリックボルタモグラムを示す図。電位走査速度は5mVs−1である。図2Bは、磁石を(a)0rpm、(b)100rpm、(c)1000rpmで回転させたときの、NADHのアンペロメトリック検出(E=0.1V)に対する較正プロットを示す図。データは20mMのCaClを含む0.1Mのトリス緩衝液(pH7.0)中で記録した。
【図3】図3Aは、1×10−5Mのグルコースオキシダーゼと50mMのグルコースの存在下で、磁石を(a)0rpm、(b)10rpm、(c)100rpm、(d)400rpmで回転させて、(2)によって機能化された磁性粒子(6mg)を磁力によって引き寄せたときのAu電極のサイクリックボルタモグラムを示す図。電位の走査速度は5mVs−1である。図3Bは、磁石を(a)0rpm、(b)100rpm、(c)400rpmで回転させたときの、グルコースのアンペロメトリック検出(E=0.5V)に対する較正プロットを示す図。データは0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)において記録した。
【図4A】DNAプライマによって磁性粒子の機能化が行われる実施形態を示す図
【図4B】図4Aに示した実施形態を実施しているシステムであって反応信号が発光によって読み取られるシステムを示す図
【図5】磁性粒子の機能化が図4Aに示したものと類似しているが、反応信号がファラデーインピーダンスによって読み取られる実施形態を実施しているシステムを示す図
【図6】図6Aは、抗原による磁性粒子の機能化を示す図。図6Bは、ナフトキノン(4)による磁性粒子の機能化を示す図
【図6C】図6Aと図6Bに示した実施形態の両方を実施している免疫検出システムを示す図
【図7】図7Aは、図6Cに示したシステムにおいて得られた、磁性粒子を回転させない場合(曲線a)と回転させた場合(100rpm、曲線b)の時間に対する発光強度のプロットを示す図。図7Bは、図6Cに示したシステムにおける、(a)回転させない場合と(b)回転させた場合(100rpm)のDNP抗体濃度に対する光信号強度の二つの較正プロットを示す図
【図8】図8Aは、DNAによって機能化された磁性粒子と、ビオチン標識化DNAと、アビジン−HRP複合体とを使用することによる、DNA検体の結合を概略的に示す図。図8Bは、図8Aに示した、DNAによって機能化された磁性粒子と、キノンによって改質された磁性粒子とを実施している、DNA検体の検出システムを示す図。
【図9】図9Aは、図8Aと図8Bとに従って、1.4×10−8MのDNA検体(13)を様々な回転速度(a)0rpm、(b)60rpm、(c)400rpm、(d)2000rpmにおいて分析したときの化学発光の強度のグラフを示す図。(e)は、1×10−7Mの変異体(13a)の2000rpmにおける分析である。挿入図は、光の強度とω1/2(ω=回転速度)との間の関係を示すグラフである。化学発光信号は、0V〜−0.5V〜0V(対SCE)の電位ステップを電極に印加することによって生成される。図9Bは、様々な回転速度(a)0rpm、(b)60rpm、(c)2000rpmにおける、図8Aと図8Bとに従ってのDNA検体(13)の濃度の関数としての光の強度のグラフを示す図。挿入図は、低い濃度範囲における結果の拡大である。化学発光信号は、0V〜−0.5V〜0V(対SCE)の電位ステップを電極に印加することによって生成されている。
【図10A】粒子上の核酸の複製を、熱サイクルを使用してビオチンユニットによって標識化する場合における、多重標識化された回転する磁性粒子によるウイルスDNAの増幅検出を示す図
【図10B】機能化された磁性粒子を電極面上で回転させて、増幅された化学発光を生成する場合における、多重標識化された回転する磁性粒子によるウイルスDNAの増幅検出を示す図
【図11】ヘテロ二官能性の架橋剤である3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを使用して、認識試剤としてのDNAプライマを磁性粒子に結合させる様子を概略的に示す図
【図12】異なる回転速度(a)0rpm、(b)60rpm、(c)400rpm、(d)2000rpmにおいて、8×10−9のM13φDNAを分析したときの化学発光の強度と、(e)M13φDNAが存在しない状態で2000rpmにおいて分析手順を適用したときの化学発光信号のグラフを示す図。挿入図は、ω1/2(ω=回転速度)の関数としての化学発光の強度を示す。化学発光は、E=0.0V〜E=−0.5V〜E=0.0V(対SCE)の電位ステップを印加することによって生成された。図中の矢印は、それぞれ、電位を−0.5Vと0.0Vに切り替えるタイミングを示す。データは、1×10−6Mのルミノールを含む0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.4)において空気中で記録した。
【図13】(a)2000rpm、(b)400rpm、(c)60rpm、(d)20rpm、(e)0rpmにおいて、様々な濃度のM13φDNAを分析したときの化学発光の強度に対応する較正曲線を示す図
【図14】磁性粒子を使用しての、DNAにおける一塩基不適正の増幅検出を示す図
【図15】(a)2000rpm、(b)400rpm、(c)60rpmにおいて1×10−9MのDNA変異体(18)を分析したときの化学発光の強度のグラフを示す図。(d)は、2000rpmにおいて1.4×10−6Mの正常配列(19)を分析したときの化学発光の強度のグラフを示している。化学発光の記録の条件は、図12に詳述してある。
【図16】異なる回転速度(a)2000rpm、(b)400rpm、(c)60rpm、(d)0rpmにおける様々な濃度の変異体(18)の分析に対応する較正曲線を示す図。挿入図は、較正曲線の拡大であり、(18)の低濃度における化学発光の強度を示している。
【図17A】テロメラーゼ酵素活性の結果としてビオチンユニットによって磁性粒子を多重標識化する場合における、多重標識化された回転する磁性粒子によるテロメラーゼ活性の迅速な増幅検出を概略的に示す図
【図17B】ビオチンによって多機能化された磁性粒子を電極面上で回転させて、増幅された化学発光を生成する場合における、多重標識化された回転する磁性粒子によるテロメラーゼ活性の迅速な増幅検出を概略的に示す図
【図18】図18Aは、異なる回転速度0rpm、20rpm、60rpm、400rpm、2000rpmにおいて、100,000個の細胞を含む293−腎臓癌細胞の抽出を分析したときの化学発光の強度を示す図。矢印は、それぞれ、電位を−0.5Vと0.0Vに切り替えるタイミングを示す。図18Bは、ω1/2(ω=回転速度)の関数としての化学発光の強度を示す図。すべての実験において、化学発光は、E1=0.0V〜E2=−0.5V〜0V(対SCE)の電位ステップを印加することによって生成された。データは、1×10−6Mのルミノールを含む0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.4)において空気中で記録した。
【図19】一定の回転速度(i)0rpm、(ii)60rpm、(iii)2000rpmにおいて、細胞数の異なる293−腎臓癌細胞の抽出を分析したときの化学発光の強度に対応する較正曲線を示す図。挿入図は、較正曲線の拡大であり、0〜100個の細胞を含む抽出から得られた化学発光信号の強度を示している。化学発光の記録の条件は、図18に詳述してある。
【図20A】0rpm、20rpm、60rpm、400rpm、2000rpmにおいて、100,000個の細胞を含むヒーラ細胞の抽出を分析したときの化学発光の強度を示す図。挿入図は、ω1/2(ω=回転速度)の関数としての化学発光の強度を示す。化学発光の記録の条件は、図18Aと図18Bに詳述してある。
【図20B】一定の回転速度0rpm、60rpm、2000rpmにおいて、異なる数のヒーラ細胞を含む抽出を分析したときの化学発光の強度に対応する較正曲線を示す図。挿入図は、較正曲線の拡大であり、0〜100個の細胞を含む抽出から得られた化学発光信号の強度を示している。
【図21】(a)1000個のヒーラ細胞、(b)1000個の293腎臓癌細胞、(c)100,000個のNHF細胞を含む抽出から得られた電気化学発光の強度を示す図
【図22】(a)肺腺癌、(b)肺扁平上皮癌、(c)健康な組織、(d)正常細胞からの抽出を分析したときに得られた電気化学発光の強度を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析試料中の検体を測定する方法であって、
(i)前記検体と結合又は反応する認識試剤を担持する磁性粒子を提供するステップと、分析条件下で前記結合又は反応は反応信号をもたらす反応を生じさせる、
(ii)前記磁性粒子を前記分析試料に接触させ、前記磁性粒子をバリア面近傍の磁石によって前記バリア面に引き寄せ、前記分析条件を与えると共に前記磁性粒子を急速に回転又は振動させて、反応信号を発生させるステップと、
(iii)前記反応信号を読み取るステップと、
を有する。
【請求項2】
前記磁性粒子に、時間に関して周期的に変化する外部磁界に応答して回転又は振動を生じさせる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記磁界は、回転磁界である、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記回転磁界は、回転磁石によって引き起こされる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記磁界は、振動磁界である、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記反応は、酸化還元反応である、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記磁性粒子は、支持体に閉じ込められている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記認識試剤及び前記検体は、互いに反応して反応生成物をもたらす、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記認識試剤は、前記検体を生成物に変える反応を誘起可能な触媒である、請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記形成された対と結合する試薬の使用に基づく、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記検体は、蛋白質検体であり、前記試薬は、前記検体と結合可能な抗体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記検体は、DNA検体である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記分析条件は、DNAポリメラーゼ及びヌクレオチド塩基を有し、前記ヌクレオチド塩基の少なくとも一つは、検出可能部分と結合する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記検出可能部分は、ビオチンであり、前記分析条件は、アビジン結合酵素を更に有する、請求項12又は請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記酵素は、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼであり、前記反応信号は、発光である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記DNAポリメラーゼは、タック・ポリメラーゼ(Taq Polymerase)であり、前記反応条件は、ポリメラーゼ連鎖反応が生起可能な条件である、請求項13から請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つの塩基不適正を検出可能な、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記検体は、前記認識試剤を生成物に変える反応を誘起可能な触媒である、請求項8記載の方法。
【請求項19】
前記認識試剤は、前記検体を生成物に変える反応を誘起可能な触媒を有する、請求項8記載の方法。
【請求項20】
前記触媒は、酵素である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記酵素は、テロメラーゼである、請求項18から請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記分析試料は、細胞の抽出物を有する、請求項18から請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記検体と特異的に結合する試薬の使用に基づき、前記検体は、最初に前記認識試剤と結合する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記検体は、抗体検体である、請求項11記載の方法。
【請求項25】
化学系の成分の少なくとも一つは、分析の間、前記分析試料の媒体に溶解したままである、請求項1から請求項24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記反応信号は、電気信号、発光信号、比色信号及び沈殿の形成から選択される、請求項1から請求項25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
分析試料中の検体を測定するシステムであって、
(a)バリア面を有するセルと、
(b)磁性粒子を回転又は振動させるサブシステムと、
(c)前記検体の存在下で反応が起きて反応信号をもたらすように認識試剤が固定された磁性粒子と、前記信号は前記磁石の回転又は振動の間増大する、
(d)前記反応信号を検出する検出部材と、
(e)前記反応信号を読み取る読み取り器と、
を有する。
【請求項28】
前記反応は、酸化還元反応であり、前記検出部材は、電極である、請求項27記載のシステム。
【請求項29】
前記認識試剤は、前記電極と前記検体の間で電子を移動させることができる少なくとも一つの分子を有する、請求項27及び請求項28のいずれかに記載のシステム。
【請求項30】
前記認識試剤及び前記検体は、互いに反応して反応生成物をもたらす、請求項27記載のシステム。
【請求項31】
前記検体は、前記認識試剤を生成物に変える反応を誘起可能な触媒である、請求項27記載のシステム。
【請求項32】
前記認識試剤は、前記検体を生成物に変える反応を誘起可能な触媒を有する、請求項27記載のシステム。
【請求項33】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記形成された対と結合する試薬の使用に基づく、請求項27から請求項29のいずれかに記載のシステム。
【請求項34】
前記検体は、DNA検体である、請求項27から請求項33のいずれかに記載のシステム。
【請求項35】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記検体と特異的に結合する試薬の使用に基づき、前記検体は、最初に前記認識試剤と結合する、請求項27及び請求項28のいずれかに記載のシステム。
【請求項36】
前記検体は、抗体検体である、請求項35記載のシステム。
【請求項37】
前記反応信号は、電気信号、発光信号、比色信号及び沈殿の形成から選択される、請求項27から請求項36のいずれかに記載のシステム。
【請求項38】
前記サブシステムは、前記磁石を急速に回転又は振動させる前記磁石を伴うモータを有する、請求項27から請求項37のいずれかに記載のシステム。
【請求項39】
癌細胞を検出する、請求項20から請求項22のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
癌細胞を検出する請求項39記載の方法であって、
(i)テロメラーゼのプライマとして働くDNA認識試剤を担持する磁性粒子を提供するステップと、分析条件下でテロメラーゼ反応は反応信号をもたらす反応を可能にする、
(ii)癌の疑いがある一つ以上の細胞からの細胞抽出物を有する分析試料を提供するステップと、
(iii)前記磁性粒子を前記分析試料に接触させ、前記磁性粒子をバリア面近傍の磁石によって前記バリア面に引き寄せ、前記分析条件を与えると共に前記磁性粒子を急速に回転又は振動させて、反応信号を発生させるステップと、
(iv)前記反応信号を読み取るステップと、
(v)前記読み取り値を、癌細胞を含んでいない対照分析試料から得られた読み取り値と比較するステップと、前記分析試料における読み取り値が前記対照分析試料における読み取り値よりも高いことは、前記疑わしい細胞が癌性であることを示す、
を有する。
【請求項41】
前記反応信号は、発光である、請求項40記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析試料中の検体を測定する方法であって、
(i)前記検体と結合又は反応する認識試剤を担持する磁性粒子を提供するステップと、分析条件下で前記結合又は反応は反応信号をもたらす反応を生じさせる、
(ii)前記磁性粒子を前記分析試料に接触させ、前記磁性粒子をバリア面近傍の磁石によって前記バリア面に引き寄せ、前記分析条件を与えると共に前記磁性粒子を時間に関して周期的に変化する外部磁界に応答して回転又は振動させて、前記回転又は振動の間増大する反応信号を発生させるステップと、
(iii)前記反応信号を読み取るステップと、
を有する。
【請求項2】
前記磁界は、回転磁界である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記回転磁界は、回転磁石によって引き起こされる、請求項1から請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記磁界は、振動磁界である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記反応は、酸化還元反応である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記磁性粒子は、支持体に閉じ込められている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記認識試剤及び前記検体は、互いに反応して反応生成物をもたらす、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記認識試剤は、前記検体を生成物に変える反応を誘起可能な触媒である、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記形成された対と結合する試薬の使用に基づく、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記検体は、蛋白質検体であり、前記試薬は、前記検体と結合可能な抗体である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記検体は、DNA検体である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記分析条件は、DNAポリメラーゼ及びヌクレオチド塩基を有し、前記ヌクレオチド塩基の少なくとも一つは、検出可能部分と結合する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記検出可能部分は、ビオチンであり、前記分析条件は、アビジン結合酵素を更に有する、請求項11又は請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記酵素は、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼであり、前記反応信号は、発光である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記DNAポリメラーゼは、タック・ポリメラーゼ(Taq Polymerase)であり、前記反応条件は、ポリメラーゼ連鎖反応が生起可能な条件である、請求項12から請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一つの塩基不適正を検出可能な、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記検体は、前記認識試剤を生成物に変える反応を誘起可能な触媒である、請求項7記載の方法。
【請求項18】
前記認識試剤は、前記検体を生成物に変える反応を誘起可能な触媒を有する、請求項7記載の方法。
【請求項19】
前記触媒は、酵素である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記酵素は、テロメラーゼである、請求項17又は請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記分析試料は、細胞の抽出物を有する、請求項17から請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記検体と特異的に結合する試薬の使用に基づき、前記検体は、最初に前記認識試剤と結合する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記検体は、抗体検体である、請求項10記載の方法。
【請求項24】
化学系の成分の少なくとも一つは、分析の間、前記分析試料の媒体に溶解したままである、請求項1から請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記反応信号は、電気信号、発光信号、比色信号及び沈殿の形成から選択される、請求項1から請求項24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
分析試料中の検体を測定するシステムであって、
(i)バリア面を有するセルと、
(ii)磁性粒子を回転又は振動させるサブシステムと、前記サブシステムは、前記磁性粒子を回転又は振動させる磁石を伴うモータを有する、
(iii)前記検体の存在下で反応が起きて反応信号をもたらすように認識試剤が固定された磁性粒子と、前記信号は前記磁石の回転又は振動の間増大する、
(iv)前記反応信号を検出する検出部材と、
(v)前記反応信号を読み取る読み取り器と、
を有する。
【請求項27】
前記反応は、酸化還元反応であり、前記検出部材は、電極である、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記認識試剤は、前記電極と前記検体の間で電子を移動させることができる少なくとも一つの分子を有する、請求項26及び請求項27のいずれかに記載のシステム。
【請求項29】
前記認識試剤及び前記検体は、互いに反応して反応生成物をもたらす、請求項26記載のシステム。
【請求項30】
前記検体は、前記認識試剤を生成物に変える反応を誘起可能な触媒である、請求項26記載のシステム。
【請求項31】
前記認識試剤は、前記検体を生成物に変える反応を誘起可能な触媒を有する、請求項26記載のシステム。
【請求項32】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記形成された対と結合する試薬の使用に基づく、請求項26から請求項28のいずれかに記載のシステム。
【請求項33】
前記検体は、DNA検体である、請求項26から請求項32のいずれかに記載のシステム。
【請求項34】
前記検体及び前記認識試剤は、認識対を形成し、前記検体の検出は、前記検体と特異的に結合する試薬の使用に基づき、前記検体は、最初に前記認識試剤と結合する、請求項26及び請求項27のいずれかに記載のシステム。
【請求項35】
前記検体は、抗体検体である、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
前記反応信号は、電気信号、発光信号、比色信号及び沈殿の形成から選択される、請求項26から請求項35のいずれかに記載のシステム。
【請求項37】
癌細胞を検出する、請求項19から請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
癌細胞を検出する請求項37記載の方法であって、
(i)テロメラーゼのプライマとして働くDNA認識試剤を担持する磁性粒子を提供するステップと、分析条件下でテロメラーゼ反応は反応信号をもたらす反応を可能にする、
(ii)癌の疑いがある一つ以上の細胞からの細胞抽出物を有する分析試料を提供するステップと、
(iii)前記磁性粒子を前記分析試料に接触させ、前記磁性粒子をバリア面近傍の磁石によって前記バリア面に引き寄せ、前記分析条件を与えると共に前記磁性粒子を回転又は振動させて、前記回転又は振動の間増大する反応信号を発生させるステップと、
(iv)前記反応信号を読み取るステップと、
(v)前記読み取り値を、癌細胞を含んでいない対照分析試料から得られた読み取り値と比較するステップと、前記分析試料における読み取り値が前記対照分析試料における読み取り値よりも高いことは、前記疑わしい細胞が癌性であることを示す、
を有する。
【請求項39】
前記反応信号は、発光である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
複数の検体を検出する請求項1記載の方法であって、
(i)それぞれが前記検体の少なくとも一つと結合又は反応する複数の認識試剤を担持する磁性粒子を提供するステップと、分析条件下で各結合又は反応は区別可能な反応信号をもたらす反応を生じさせ、前記複数の検体の存在下で複数の区別可能な反応信号をもたらす、
(ii)前記磁性粒子を前記分析試料に接触させ、前記磁性粒子をバリア面近傍の磁石によって前記バリア面に引き寄せ、前記分析条件を与えると共に前記磁性粒子を時間に関して周期的に変化する外部磁界に応答して回転又は振動させて、前記区別可能な反応信号を発生させるステップと、
(iii)前記区別可能な反応信号を読み取るステップと、
を有する。
【請求項41】
ステップ(ii)は、異なる読み取り手段を用いて前記区別可能な反応信号を読み取る、請求項40記載の方法。
【請求項42】
ステップ(ii)及びステップ(iii)は、異なる分析条件を用いて複数回繰り返される、請求項40記載の方法。
【請求項43】
分析試料中の複数の検体を測定するシステムであって、
(i)バリア面を有するセルと、
(ii)磁性粒子を回転又は振動させるサブシステムと、
(iii)前記検体の存在下で反応が起きて区別可能な反応信号をもたらすように複数の認識試剤が固定された磁性粒子と、前記信号は前記磁石の回転又は振動の間増大する、
(iv)前記区別可能な反応信号のそれぞれを検出する複数の検出部材と、
(v)前記反応信号を読み取る複数の読み取り器と、
を有する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2006−514264(P2006−514264A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−503955(P2004−503955)
【出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000369
【国際公開番号】WO2003/096014
【国際公開日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(504322105)イサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブルー ユニバーシティ オブ エルサレム (2)
【Fターム(参考)】