説明

液体漂白剤組成物

【課題】過酸化水素の保存安定性に優れ、保存後も高い漂白効果を発現する液体漂白剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)過酸化水素、(b)グリフィン法で求めたHLBが10.5〜17.5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、(c)特定の高分子化合物、及び(d)金属イオン封鎖剤を含有し、20℃におけるpHが1.5〜4である液体漂白剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体漂白剤組成物、より詳細には、衣料等の繊維製品用として好適な液体漂白剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素を主基剤とする酸素系液体漂白剤は、染料・基材損傷性が低く、また汚れに直接塗布できる等使い勝手が良いことから、近年普及している。従来からこの過酸化水素配合製品中に、洗浄力、漂白力の向上を目的に、水溶性ポリマーを配合する研究が為されているが、これら基剤は、過酸化水素と反応して過酸化水素の安定性を著しく低下させるため、上述した酸素系漂白剤に水溶性ポリマーを配合することは困難であった。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1、2において、漂白、洗浄効果に優れ、安定性に優れた漂白剤として、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、オキシアルキレン単位及び/又はポリオキシアルキレン単位とを有する水溶性ポリマーを過酸化水素および界面活性剤と組み合わせた液体漂白性組成物が開示されている。
【0004】
特許文献1、2は、特定の水溶性ポリマーを、酸素系漂白剤を含む液体組成物中に、安定に配合することが可能な技術であるとされているが、いずれも、未だその安定性は充分ではなく、また、漂白、洗浄効果も充分でないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−187695号公報
【特許文献2】特開2007−169576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
過酸化水素等の漂白基剤を配合した液体漂白剤組成物において、製品中に水溶性ポリマーを安定に配合し、漂白、洗浄効果を向上させる技術が求められている。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、過酸化水素を含有する液体漂白剤組成物であって、過酸化水素の保存安定性に優れ、保存後も高い漂白効果を発現する液体漂白剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を含有し、20℃におけるpHが1.5〜4である液体漂白剤組成物に関する。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:グリフィン法で求めたHLBが10.5〜17.5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤
(c)成分:下記一般式(1)で示される化合物又はその酸塩に由来するモノマー単位(c1)及び、下記一般式(2)で示される化合物に由来するモノマー単位(c2)を、(c1)/{(c1)+(c2)}=0.2〜1のモル比で含有する、高分子化合物。
【0009】
【化1】

【0010】
〔一般式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R3は−COOM(Mは水素原子、又はアルカリ金属原子)、又は水素原子を示す。Xは−COO−R6−、−CONR7−R8−、又は−CH2−を示す。R4はXが−CH2−の場合には一般式(3)
【0011】
【化2】

【0012】
で表される基を示し、Xがそれ以外の場合は炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。R5は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は水素原子を示す。R6、R8は、それぞれ独立に炭素数2〜3のアルキレン基、R7は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
【0013】
【化3】

【0014】
〔一般式(2)中、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yはアリール基、−O−CO−R13、−COO−R14、又は−CONR15−R16を示す。R13、R14、R16は、それぞれ独立に炭素数1〜22の炭化水素基、好ましくは直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、又は総炭素数6〜14のアリールアルキル基を示し、R15は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
(d)成分:金属イオン封鎖剤
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過酸化水素を含有する液体漂白剤組成物であって、過酸化水素の保存安定性に優れ、保存後も高い漂白効果を発現する液体漂白剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[(a)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(a)成分として過酸化水素を含有する。(a)成分の含有量は、液体漂白剤組成物中に好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは1.5〜10質量%、特に好ましくは1.8〜5質量%である。このような範囲において優れた漂白効果と良好な安定性を得ることができる。
【0017】
[(b)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(b)成分としてグリフィン法で求めたHLB(以下、特記しない限りHLBはグリフィン法によるものである)が10.5〜17.5、好ましくは11〜16、より好ましくは11.5〜14、更に好ましくは12〜12.8である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤を含有する。(b)成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、一般式(b1)で表される非イオン界面活性剤が挙げられる。
R−O[(EO)a/(PO)b]−H (b1)
〔式中、Rは、炭素数10〜18、好ましくは12〜14の、炭化水素基、好ましくはアルキル基を示す。EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基である。aはEOの平均付加モル数であり0〜40の数、bはPOの平均付加モル数であり0〜20の数を示し、a及びbの両者が0の場合を除く。好ましくは、aは2〜35、より好ましくは4〜18、更に好ましくは5〜10の数であり、好ましくは、bは0〜10、より好ましくは0〜8、特に好ましくは0〜6の数である。“/”はEO及びPOが、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
【0018】
なお、一般式(b1)においては、EOとPOとはランダム共重合体又はブロック共重合体のいずれの形態で配列されていてもよい。
【0019】
また、一般式(b1)で表される非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、並びにオキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤が挙げられ、これらは、2種両方を併用することもできる。
【0020】
(b)成分は後述する(c)成分をミセル中に効率的に取り込む性質があるため、カチオン基を有する事で過酸化水素を活性化して反応を促進させ得る(c)成分が過酸化水素と組成物中で共存するような系においても、(b)成分を配合する事で安定性を維持する事が出来る。ここで、HLBが高過ぎる場合には、(c)成分がミセル中に取り込まれにくくなり、組成物中で過酸化水素が活性化し、反応分解して安定性が低下する虞がある。一方、HLBが低過ぎる場合には、(c)成分がミセル中により取り込まれやすくなるために過酸化水素と(c)成分の安定性は向上するが、使用場面においても過酸化水素が活性化されず、漂白性能が向上しない虞のあることが懸念される。
【0021】
従って、上記HLBは、組成物中での過酸化水素と(c)成分の安定性向上と、使用場面での過酸化水素の活性化による漂白性能向上の観点から、10.5〜17.5、好ましくは11〜16、より好ましくは11.5〜14、特に好ましくは12〜12.8である。
【0022】
本発明の液体漂白剤組成物は、(c)成分の保存安定性、及び、漂白性を向上させる観点から、(b)成分を好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜25質量%、更に好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは4〜15質量%含有する。
【0023】
[(c)成分]
【0024】
本発明の(c)成分は、上記一般式(1)で示される化合物又はその酸塩に由来するモノマー単位(c1)及び、下記一般式(2)で示される化合物に由来するモノマー単位(c2)を、(c1)/{(c1)+(c2)}=0.2〜1のモル比で含有する、高分子化合物である。
【0025】
(c)成分は、モノマー単位(c1)及びモノマー単位(c2)を、(c1)/{(c1)+(c2)}=0.2〜1のモル比で含有する、高分子化合物である。かかるモル比は、漂白性能向上、過酸化水素の安定性向上の観点から、下限は0.2以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上で、また、上限は1以下、好ましくは0.95以下である。モノマー単位(c1)の由来となる、一般式(1)で表される化合物のうち、一般式(1)中のXが−COO−R6−である化合物としては、特に限定されるものでないが、例えばアクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノブチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノブチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノブチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノプロピル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノメチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノブチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノプロピル等が挙げられる。
【0026】
また、一般式(1)で表される化合物のうち、一般式(1)中のXが−CONR7−R8−である化合物としては、特に限定されるものでないが、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノメチルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノブチルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド等が挙げられる。
【0027】
また、一般式(1)中のXが−CH2−の場合、R4は前記一般式(3)で表される基である。かかる化合物としては、特に限定されるものでないが、例えばジアリルアミン等が挙げられる。
【0028】
一般式(1)で示される化合物は、酸塩を用いることができる。酸塩としては、例えば、1級、2級、3級アミンの塩酸塩、硫酸塩などの無機塩の中和塩や各種有機酸の中和塩が挙げられる。
【0029】
また、モノマー単位(c2)の由来となる、一般式(2)で表される化合物としては、特に限定されるものでないが、例えばラウリルアクリレート等のアクリル酸アルキル(炭素数1〜22)エステル、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキル(炭素数1〜22)エステル、スチレン等が挙げられる。
【0030】
(c)成分は、モノマー単位(c1)、(c2)以外のモノマー単位として、共重合可能な不飽和結合含有モノマー〔モノマー(c3)〕に由来するモノマー単位〔モノマー単位(c3)〕を本発明の効果を損なわない範囲で有しても良い。かかるモノマー(c3)としては、特に限定されるものでないが、例えば、アクリルアミド、ビニルアルコール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜22のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜100)、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレングリコールの重合度が1〜50)、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート(ブチレングリコールの重合度が1〜50)等のポリアルキレン(アルキレン基の炭素数1〜8;直鎖もしくは分岐鎖)オキシド鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;グリセリン(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル環状アミド;N−(メタ)アクロイルモルホリン;塩化ビニル;アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有するビニル化合物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニル化合物等が例示される。これらのモノマー(c3)の共重合量は、モノマー全量に対して80モル%以下、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
【0031】
また、(c)成分は、モノマー単位(c1)とモノマー単位(c2)の合計が、全モノマー単位中、20モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。また、上限は100モル%である。
【0032】
また、(c)成分の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜1,000,000、更に3,000〜500,000、更に5,000〜200,000、更に6,000〜50,000、更に7,000〜20,000が好ましい。Mwと数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、1〜40、更に1.5〜35、更に2〜10が好ましい。
【0033】
尚、本発明の(c)成分のMw、Mw/Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値を使用する。溶離液としては、水、アルコール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びこれらの溶媒を組み合わせた液の何れかを使用し、ポリエチレンオキシド又はポリスチレン換算の分子量とする。
【0034】
その際、測定対象のポリマーが、モノマー単位(c1)の割合が大きく比較的親水性であると考えられる場合は、(1%酢酸/エタノール):水=3:7(質量比)の混合溶媒で調製したLiBrの50mmol/L溶液を溶媒として、極性溶媒用GPCカラム「α−M(東ソー(株)製)」を2本直列して用い、ポリエチレングリコール換算の分子量により算出する(測定法A)。一方、後述の実施例で比較のポリマーとして用いた(c’−1)のようなモノマー単位(B)の割合が大きく、ポリマーが比較的疎水性であると考えられる場合は、ファーミンDM20(花王(株)製)の1mmol/L−CHCl3溶液にて、有機溶媒用GPCカラム「K−804(昭和電工(株)製)」を2本直列して用い、ポリスチレン換算の分子量により算出する(測定法B)。ここでは、モノマー単位(c1)の比率が60モル%以上のポリマーの場合は測定法Aを用いる一方、モノマー単位(c1)の比率が60モル%未満のポリマーの場合は測定法Bを用いることが望ましい。
【0035】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、漂白性能向上、過酸化水素安定性向上の観点から、(c)成分を好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.2〜3質量%、特に好ましくは0.4〜2質量%含有する。
【0036】
[(d)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(a)成分及び(c)成分の安定性向上の観点から、(d)成分として、金属イオン封鎖剤を含有する。組成物中の(d)成分の含有量は0.01〜5質量%、更に0.05〜1質量%が好ましい。
【0037】
(d)成分としては、ホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤が好ましい。(d)成分の具体例としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸塩、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸等の有機ホスホン酸誘導体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上配合することができる。中でも、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸等が好ましく、特にエタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
【0038】
[pH]
本発明の液体漂白剤組成物は、20℃におけるpHが1.5〜4であり、好ましくは1.5〜3.5、特に好ましくは2〜3.5である。pHを前記範囲に設定することで、(a)成分及び(c)成分の保存時の安定性を維持することができる。
【0039】
[その他の成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、漂白性能向上の観点から、(e)成分として漂白活性化剤を含有することが好ましい。(e)成分の漂白活性化剤としては、アルカノイル基の炭素数が8〜14のアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、アルカノイル基の炭素数が8〜14のアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、使用時の漂白性能と製品中での安定性を両立させる観点から、炭素数10〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、炭素数10〜12の直鎖又は分岐のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる漂白活性化剤が好ましい。(e)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、0.01〜5質量%、更に0.1〜2質量%が好ましい。
【0040】
本発明の液体漂白剤組成物は、(f)成分として陰イオン界面活性剤を含有し得る。陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキシド平均付加モル数0.5〜5)アルキル(炭素数10〜18)エーテル硫酸エステル塩、アルキル(炭素数10〜16)硫酸エステル塩、α−オレフィン(炭素数8〜18)スルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(炭素数10〜16)低級アルキル(炭素数1〜3)エステル塩が挙げられる。中でも、漂白性能向上の観点から、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0041】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、洗剤用界面活性剤市場に一般に流通しているものの中で、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜14のものであればいずれも用いることができ、例えば花王(株)製のネオペレックスF25、Shell社製のDobs102等を用いることができる。また、工業的には、洗剤用原料として広く流通しているアルキルベンゼンをクロルスルホン酸、亜硫酸ガス等の酸化剤を用いてスルホン化して得ることもできる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数10〜18、好ましくは炭素数10〜16の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールに、エチレンオキサイドを1分子当たり平均0.5〜5モル付加させ、これを例えば特開平9−137188号記載の方法を用いて硫酸化して得ることができる。アルキル硫酸エステル塩としては炭素数10〜16、好ましくは10〜14の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールをSO3又はクロルスルホン酸でスルホン化し、中和して得ることができる。α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数8〜18のα−アルケンをSO3でスルホン化し、水和/中和を経て得ることができ、炭化水素基中にヒドロキシ基が存在する化合物と不飽和結合が存在する化合物の混合物である。また、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩としてはアルキル基の炭素数は10〜16が好ましく、メチルエステル又はエチルエステルが洗浄効果の点から好ましい。これら(f)成分の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が好適であり、洗浄効果の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0042】
(f)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、0.1〜10質量%、更に0.5〜5質量%が好ましい。
【0043】
本発明の液体漂白剤組成物は、低温での増粘を防止する観点から、(g)成分として、溶剤を含有し得る。(g)成分としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチルジグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキル又はアリールエーテル類が挙げられる。これらの中でも、エタノール又はプロピレングリコールが好ましく、特にプロピレングリコールが好ましい。(g)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、0.1〜5質量%、更に0.5〜3質量%が好ましい。
【0044】
本発明の液体漂白剤組成物は、(h)成分として香料を含有することができる。(h)成分は、複数の香料成分を特定の比率で含有する香料混合物として用いることもできる。香料成分としては、「香料の化学」(赤星亮一著、日本化学会編,産業化学シリーズ,昭和58年9月16日発行)や「合成香料 化学と商品知識」(印藤 元一著、化学工業日報社、1996年3月6日発行)や「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)に記載のものを用いることができる。
【0045】
香料成分としては、炭化水素系化合物、アルコール系化合物、エーテル系化合物、アルデヒド系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、ラクトン系化合物、カルボン酸系化合物、環状ケトン系化合物、シッフ塩基化合物、シッフ塩基以外の含窒素化合物(ニトリル、アミン、オキシム、キノリンなど)、天然精油類を挙げることができる。それらの具体例としては、特開2006−161229号公報の7〜13頁(段落0030〜0044)に示される例が同様に挙げられる。
【0046】
(h)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、0.01〜2質量%、更に0.1〜1質量%が好ましい。
【0047】
その他に本発明の液体漂白剤組成物は、ラジカルトラップ剤、シリコーン類、殺菌剤、蛍光染料、酵素等の任意成分を含有し得る。本発明の液体漂白剤組成物は水を含有し、通常、組成物の残部は水である。水の含有量は、組成物中、15〜85質量%、更に20〜80質量%が好ましい。
【0048】
本発明の液体漂白剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用として好適であり、家庭での衣料等の繊維製品の漂白処理や漂白洗浄処理に好適に用いられる。
【実施例】
【0049】
表1に示す各成分を混合し、液体漂白剤組成物(本発明品1〜10及び比較品1〜9)を得た。得られた液体漂白剤組成物を用いて、その貯蔵安定性(過酸化水素安定性)、貯蔵後の液体漂白剤組成物の漂白性能を以下の方法により評価した。その結果を表1に示す。なお、以下に、(c)成分及び比較のポリマーの合成例を示す。
【0050】
(合成例1)
メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(分子量:157.21)42.37g、ラウリルメタクリレート(分子量:254.41)7.62g、エタノール180gを均一に混合し、内容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で一定時間攪拌した。そこに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65;和光純薬工業(株)製)1.41gをエタノール20.0gに溶解した溶液を添加し、60℃付近まで昇温した。60〜70℃付近で合計8時間保持することで重合・熟成した。そこにエタノール100gを加えて希釈した後、室温まで降温した。この反応溶液をイオン交換水4000g中に滴下して再沈殿精製し、沈殿物を乾燥してポリマー1を得た。ポリマー1のMwは11,000であり、Mw/Mnは3.0であった(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)。また1H−NMRにより分析したポリマー1の組成は仕込みモノマー組成どおり(DMAEMA/LMA=9/1(モル比)、{モノマー単位(c1)}/{モノマー単位(c1)+モノマー単位(c2)}=0.9(モル比))であった。なお、DMAEMAはメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、LMAはラウリルメタクリレートを示す(以下同様)。
【0051】
(合成例2)〜(合成例4)
合成例2〜合成例4では、合成例1と同様の方法で、ただし使用するモノマーを変更して、下記組成(モル比)、分子量のポリマーを得た。
・合成例2:DMAEMAのホモポリマー、Mw11,200、Mw/Mn=2.5、{モノマー単位(c1)}/{モノマー単位(c1)+モノマー単位(c2)}=1(モル比)
・合成例3:DMAEMA/LMA=7/3(モル比)のコポリマー、Mw7,800、Mw/Mn=6.5{モノマー単位(c1)}/{モノマー単位(c1)+モノマー単位(c2)}=0.7(モル比)
・合成例4:LMAのホモポリマー(比較ポリマー)、Mw85,700、Mw/Mn=4.8、{モノマー単位(c1)}/{モノマー単位(c1)+モノマー単位(c2)}=0(モル比)
【0052】
<ポリマーMw、Mnの測定>
前述の測定法AによりMw、Mnの測定を行った。ただし、(c’−1)(記号は後述する)については、前述の測定法Bを用いた。
【0053】
また、表中の各成分としては、以下のものを用いた。
<配合成分>
・a−1;過酸化水素
・b−1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数20、HLB16.5)
・b−2:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数6.5、HLB12.1)
・b−3:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数29、HLB17.5)
・b−4:ポリオキシエチレンミリスチルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数9、HLB13.0)
・b’−1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数4、HLB9.6)
・b’−2:ポリエチレングリコールモノラウレート(オキシエチレン平均付加モル数12、HLB13.7、脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤)
・b’−3:ポリオキシエチレンステアリルアミン(オキシエチレン平均付加モル数20、HLB15.4、ポリオキシエチレンアルキルアミン型非イオン界面活性剤)
・b’−4:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数40、HLB18.1)
・c−1:合成例1で得たポリマー
・c−2:合成例2で得たポリマー
・c−3:合成例3で得たポリマー
・c’−1:合成例4で得たポリマー
・c’−2:商品名TexCareSRN−100(ドイツ、Clariant GmbH社製、重量平均分子量3000)(アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、オキシアルキレン単位とを有する水溶性ポリマー)
・d−1:エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(デイクエスト2010、ソルーシア社製)
・e−1;デカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸ナトリウム
・f−1;アルキル(炭素数12)ベンゼンスルホン酸
・g−1;プロピレングリコール
【0054】
<過酸化水素の貯蔵安定性評価>
液体漂白剤組成物を100mLガラス製サンプル瓶に80g入れ、50℃で2ヶ月間貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白剤組成物中の過酸化水素の含有量をヨードメトリー法により測定し、下式により過酸化水素残存率を求めた。
過酸化水素残存率(%)=[(貯蔵後の過酸化水素含有量)/(貯蔵前の過酸化水素含有量)]×100
【0055】
<漂白性能評価>
100mLガラス製サンプル瓶に80g入れ、50℃で2ヶ月間貯蔵した液体漂白剤組成物1mLと0.0667質量%濃度の市販洗剤〔アタック(花王(株)製、ロット番号W153137〕溶液1000mLを混合した後、そこに以下の方法で調製したミートソース汚染布(4枚)を入れ、ターゴトメータを用いて20℃、80rpmで10分間漂白処理を行った。処理前後の布表面の反射率を測定し、下式により漂白率を求めた。
【0056】
漂白率(%)=[(漂白後の反射率−漂白前の反射率)/(白布の反射率−漂白前の反射率)]×100
【0057】
・ミートソース汚染布の調製
カゴメ(株)製ミートソース(完熟トマトのミートソース(2010年6月20日賞味期限、ロット番号:D8620JG)/内容量295gの缶詰)の固形分をメッシュ(目の開き;500μm)で除去した後、得られた液を煮沸するまで加熱した。この液に木綿金布#2003を浸し、50分間煮沸した。そのまま火からおろし2時間程度放置し30℃まで放置した後、布を取りだし、余分に付着している液をへらで除去し、自然乾燥させた。その後プレスし、10cm×10cmの試験布として実験に供した。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を含有し、20℃におけるpHが1.5〜4である液体漂白剤組成物。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:グリフィン法で求めたHLBが10.5〜17.5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤
(c)成分:下記一般式(1)で示される化合物又はその酸塩に由来するモノマー単位(c1)及び、下記一般式(2)で示される化合物に由来するモノマー単位(c2)を、(c1)/{(c1)+(c2)}=0.2〜1のモル比で含有する、高分子化合物。
【化1】


〔一般式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R3は−COOM(Mは水素原子、又はアルカリ金属原子)、又は水素原子を示す。Xは−COO−R6−、−CONR7−R8−、又は−CH2−を示す。R4はXが−CH2−の場合には一般式(3)
【化2】


で表される基を示し、Xがそれ以外の場合は炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。R5は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は水素原子を示す。R6、R8は、それぞれ独立に炭素数2〜3のアルキレン基、R7は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
【化3】


〔一般式(2)中、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yはアリール基、−O−CO−R13、−COO−R14、又は−CONR15−R16を示す。R13、R14、R16は、それぞれ独立に炭素数1〜22の炭化水素基、又は総炭素数6〜14のアリールアルキル基を示し、R15は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
(d)成分:金属イオン封鎖剤
【請求項2】
更に(e)成分として漂白活性化剤を含有する請求項1記載の液体漂白剤組成物。

【公開番号】特開2011−162653(P2011−162653A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26626(P2010−26626)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】