説明

液体漏れ検出装置

【課題】イオン濃度の高い特定の液体の漏れをイオン濃度の低い液体と区別して確実にしかも素早く検出する。
【解決手段】第1の電極D1と、前記第1の電極D1と所定距離の間隙をおいて設けられる第2の電極D2と、前記第1の電極D1と前記第2の電極D2との間に電流制限抵抗器を介してステップ波形の電圧を印加する電圧印加手段である電圧発生部12と、前記第1の電極D1と前記第2の電極D2との間の電位を経時的に検出する電位検出手段である検出部13と、検出部13により検出される電位に基づき特定の液体の漏れを判定する判定手段21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン濃度の高い特定の液体の漏れをイオン濃度の低い液体と区別して検出する液体漏れ検出装置にかかり、特に医療分野において用いられるイオン濃度の高い液体、例えば、血液、生理食塩水、各種点滴薬液などの液体について、イオン濃度の低い水などと区別して漏れ検出を行うための液体漏れ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体漏れ検出装置としては、図10(a)に示すように一定の距離に二本の電極D1、D2を配置し、この電極D1、D2の間に直流電源Eにより直流電圧Vを印加し、電極D1、D2間のインピーダンスを測定するものが知られている(特許文献1参照)。上記直流電源Eによる直流電圧Vに代えて、波形電圧を与えて測定を行うものも知られている(特許文献2参照)。
【0003】
上記の装置においては、図10(b)に示すように、電極D1、D2の間に検出対象である血液Bが僅かに付着した場合のインピーダンスと、図10(c)に示すように電極D1、D2の間に非検出対象である水滴Wが多量に付着した場合のインピーダンスとが区別できない。従って、電極D1、D2の部分が結露するような環境では誤検出となることがある。
【0004】
上記に対し、図11(a)に示されるように、血液の漏れを検出する場合、血液が最もよく吸収する赤色光の光源Rと光センサSとを対向して配置し、赤色光光源Rと光センサSとの間の光路を血液漏れが予想される場所に配置した装置が知られている。上記光路に図11(b)に示されるように検出対象である血液Bが存在する場合に漏れ発生の報知を行う。この装置によれば、血液と結露した水滴とを区別することが可能である。
【0005】
上記の光センサSを用いた装置は、赤色光光源Rと光センサSとの間の光路の監視であるから監視範囲が狭いという問題がある。これを解決するため、漏れが予想される広範囲な部位から上記光路へと続く液体流路を設けることも考えられるが、液体流路を介して光路へ液体が流れるまでにタイムラグがあり、素早い検出ができない虞がある。また、漏れが少量の場合、光路まで到達しない虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−26302号公報
【特許文献2】特開平03−2652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような従来の液体漏れ検出装置が有している問題点を解決せんとしてなされたもので、その目的は、イオン濃度の高い特定の液体の漏れをイオン濃度の低い液体と区別して確実にしかも素早く検出することが可能な液体漏れ検出装置を提供することである。本発明は、上記特許文献1、2に記載された装置の改良であって、これらの装置においては、総合的なインピーダンスのみを考慮しているため、上記のような誤検出が生じたものであるが、本発明は、液体自身の抵抗(溶液抵抗)及び電極と液体との接触部分の抵抗(電荷移動抵抗)の個々のインピーダンスを個別に考慮することによって、上記目的を達成するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体漏れ検出装置は、イオン濃度の高い特定の液体の漏れをイオン濃度の低い液体と区別して検出する液体漏れ検出装置であって、第1の電極と、前記第1の電極と所定距離の間隙をおいて設けられる第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電流制限抵抗器を介してステップ波形の電圧を印加する電圧印加手段と、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位を経時的に検出する電位検出手段と、前記電位検出手段により検出される電位に基づき前記特定の液体の漏れを判定する判定手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る液体漏れ検出装置では、前記判定手段には、前記イオン濃度の低い液体が前記第1の電極及び前記第2の電極全体に亘って付着したとき、前記ステップ波形の電圧を印加した初期の際の電位が基準初期電位として予め登録されており、前記ステップ波形の電圧を印加した初期の際の前記電位検出手段で検出された初期電位が、前記予め登録されている基準初期電位よりも低いときに、前記判定手段は前記特定の液体が漏れていると判定することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る液体漏検出装置では、前記初期電位が、前記予め登録されている基準初期電位よりも高いときに、前記判定手段は、前記初期電位及び前記ステップ波形の電圧を印加して定常状態となった際の前記電位検出手段で検出された定常電位に基づいて前記特定の液体の漏れの有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体漏れ検出装置は、第1の電極と第2の電極との間にステップ波形の電圧を印加し、それに伴う両電極間の電位を経時的に検出して、この経時的な電位に基づいて特定の液体の漏れを判定するようにしたため、経時的な電位の検出によって、液体自身の抵抗(溶液抵抗)及び電極と液体との接触部分の抵抗(電荷移動抵抗)の個々のインピーダンスが検出でき、検出された個々のインピーダンスを個別に考慮して液体の種類を判別することができるため、イオン濃度の高い特定の液体の漏れをイオン濃度の低い液体と区別して確実に素早く検出することができる。
【0012】
本発明に係る液体漏れ検出装置では、初期電位が基準初期電位よりも低いときに、判定手段がイオン濃度の高い特定の液体が漏れていると判定するので、結露等による水滴等のイオン濃度の低い液体の付着とは異なる血液等のイオン濃度の高い液体の液漏れを確実に素早く検出することができる。
【0013】
本発明に係る液体漏れ検出装置では、初期電位が、予め登録されている基準初期電位よりも高いときに、判定手段が、初期電位及び定常電位に基づいて特定の液体の漏れの有無を判定するので、初期電位により液体が有する固有の抵抗(溶液抵抗)を検出し、定常電位により電荷移動抵抗を検出して、それらの抵抗の値に基づいて液体の種類を判別することができるため、特定の液体の漏れを確実に素早く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る液漏れ検出装置の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係る液漏れ検出装置の実施形態における要部の概略構成及び液体の等価回路を示す図。
【図3】本発明に係る液漏れ検出装置の実施形態によってステップ波形の電圧を印加した場合の応答電位の変化と、電圧発生部と液体を含む等価回路を示す図。
【図4】本発明に係る液漏れ検出装置の実施形態において二電極間に血液が付着した状態を示す図及びこの場合にステップ波形の電圧を印加した場合の応答電位の変化を示す図。
【図5】本発明に係る液漏れ検出装置の実施形態において二電極間に水滴が付着した状態を示す図及びこの場合にステップ波形の電圧を印加した場合の応答電位の変化を示す図。
【図6】本発明に係る液漏れ検出装置の実施形態において付着した液体が血液であるか水であるかを表す二次元マップを示す図。
【図7】本発明に係る液漏れ検出装置の実施形態を適用した血液温度制御装置の構成例を示す構成図。
【図8】図7におけるA−A断面図。
【図9】図7におけるB−B断面図。
【図10】直流印加による従来の液漏れ検出装置の構成を示す構成図。
【図11】赤色光による従来の液漏れ検出装置の構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下添付図面を参照して、本発明に係る液体漏れ検出装置を説明する。本実施の形態は、検出対象は血液で、水滴と区別して検出するものとする。本発明に係る液体漏れ検出装置は図1に示すように、液漏れセンサ部11、電圧発生部12、検出部13及び処理部14を主な構成要素としている。処理部14は、演算処理部15、表示部16及びアラーム発生部17を備えている。液漏れセンサ部11は、図2(a)に示すように、それぞれプリント基板上に印刷されたプリント配線で構成された第1の電極D1と、第1の電極D1と所定距離の間隙dをおいて設けられる第2の電極D2とを備えており、両電極D1、D2間に亘って一体的に付着する検出対象とする特定の液体F(血液)を検出するようになっている。第1の電極D1及び第2の電極D2は、血液を検出対象の液体とする場合は、一例として間隙dが1mm、電極の長さが130mm、その幅が1mmに設定することができる。
【0016】
電圧発生部12は、図3(a)に示すようなステップ波形の電圧Vinを発生して、上記第1の電極D1と第2の電極D2との間に印加する電圧印加手段を構成するものである。ここで、ステップ波形の電圧Vinは、矩形パルスを繰り返し印加するものであり、そのパルス幅は、後述する第1の電極D1と第2の電極D2との間に電圧Vinを印加してから端子Tの電位Vが一定(定常状態)となる(電気二重層容量Cwが十分に充電される)までの時間以上とし、また相隣る矩形パルス間の時間は、電気二重層容量Cwの電荷が十分に放電されて端子Tの電位Vが一定となる時間以上とする。本実施の形態においては、血液を検出対象の液体とするため、例えば、大きさが5Vでパルス幅が500msec、相隣る矩形パルス間の時間を500msec、すなわち周波数が1Hzの矩形波を発生するように電圧発生部12を設定することができる。
【0017】
また、上記定常状態となるまでの時間よりもはるかに短いパルス幅を有する、例えば、大きさが5Vで周波数が10kHzの矩形波(デューティ比50%)を発生するように設定しても良い。この場合は、端子Tで観測される電圧のAC成分の大きさ(p−p値)が溶液抵抗を、DC成分の大きさが電荷移動抵抗を反映している。
【0018】
検出部13は、上記第1の電極D1と第2の電極D2との間に生じる電位を検出する。この実施形態では、検出部13にはA/D変換器が備えられ、所定のサンプリングレートによってサンプリングした電圧値が演算処理部15へ送られる構成を採用している。
【0019】
第1の電極D1と第2の電極D2との間に、図2(a)に示されるように電解液Fが付着した場合の等価回路は、図2(b)に示されるように溶液抵抗Rlと電荷移動抵抗Rtとを直列に接続し、電荷移動抵抗Rtに電気二重層容量Cwを並列接続したものとなる。また、電圧発生部12は、図3(b)に示すように、電圧Vinの電源と電流制限抵抗器Rrとが直列接続された回路である。
【0020】
検出部13では、上記図3(b)に示される等価回路における端子Tの電位Vを検出する。このように、検出部13は、第1の電極D1と第2の電極D2との間の電位を経時的に検出する電位検出手段を構成している。演算処理部15は、検出部13から送られる電位に基づき液体漏れを判定する判定手段21を備えている。
【0021】
判定手段21は、ステップ波形の電圧を印加した初期に、検出部13によって検出される電位と、ステップ波形の電圧を印加して端子Tの電位Vが一定(定常状態)となった際に、検出部13によって検出される電位とに基づき液体漏れを判定する。
【0022】
判定手段21に関する処理をより詳細に説明する。第1の電極D1と第2の電極D2との間に、図2(a)に示されるように電解液Fが付着した場合には、図3(b)に示される等価回路における端子Tの電位Vは、図3(a)に示されるように変化する。ここで、ステップ波形の電圧Vinを印加した初期における端子Tの電位Vは、ΔV1(ΔV1=Vin×Rl/(Rr+Rl))であり、これは溶液抵抗Rlにおける電圧降下を表す。
【0023】
また、端子Tの電位Vは、図3(a)に示されるように徐々に上昇し、ステップ波形の電圧Vinを印加して定常状態となった際における端子Tの電位Vは、上記ΔV1にΔV2(ΔV2=Vin×Rt/(Rr+Rl+Rt))を加えた電位となる。ここで、電位ΔV2は電荷移動抵抗Rtにおける電圧降下を表す。ステップ波形の電圧Vinまでの差分に係る電位ΔV3は、電流制限抵抗器Rrにおける電圧降下を表し、ΔV3=Vin×Rr/(Rr+Rl+Rt)である。
【0024】
そして、第1の電極D1と第2の電極D2との間に図4(a)に示されるように少量の血液Bが付着した場合、ステップ波形の電圧Vinに対する端子Tの電位Vの経時的な変化は、図4(b)に示されるようであり、また、第1の電極D1と第2の電極D2との間に図5(a)に示されるように結露等により水滴Wが多量に付着した場合における、ステップ波形の電圧Vinに対する端子Tの電位Vの経時的な変化は、図5(b)に示されるようである。図4(b)及び図5(b)からわかるように、少量の血液と多量の水滴とが電極に付着した場合において、端子Tの電位が一定になったときの電位の差は顕著には現れていない。したがって、端子Tの電位が一定になったときの電位のみを検出して漏れを検出している従来の装置においては、少量の血液と多量の水滴とを区別して検出することは困難である。
【0025】
本実施の形態では、判定手段21には、水滴Wが第1の電極D1及び第2の電極D2全体に亘って付着したとき、ステップ波形の電圧Vinを印加した初期の際の電位が基準初期電位として予め登録されている。血液B及び水滴Wの溶液抵抗は、量が同じ場合、血液Bが水滴Wよりも小さい。また、水滴Wの溶液抵抗は、上述の、水滴Wが第1の電極D1及び第2の電極D2全体に亘って付着したときが最も小さく、この場合、水滴Wの溶液抵抗が血液Bの溶液抵抗より小さくなる場合がある。したがって、前記基準初期電位は、第1の電極D1及び第2の電極D2間に付着する水滴Wの溶液抵抗における電圧降下の最小値に相当する値に設定してある。
【0026】
血液または水滴の付着により、ステップ波形の電圧Vinを印加したときの端子Tの電位Vが、図3(a)のように変化したとする。判定手段21は、電位ΔV1を基準初期電位と比較し、電位ΔV1が基準初期電位よりも低いならば、付着した液体は血液であると判定する。電位ΔV1が基準初期電位以上であるならば、次のようにΔV2も考慮して、付着した液体が血液であるか水滴であるかを判定する。
【0027】
判定手段21にはまた、図6に示す二次元マップが登録されている。図6は、電位ΔV1とΔV2とをパラメータとして、付着した液体が血液であるか水であるかを表すマップである。このマップの作成基準は、電位ΔV1か基準初期電位よりも低い場合は付着した液体は血液であり、電位ΔV1が低く電位ΔV2が高い場合は血液であり、電位ΔV1が高く電位ΔV2が低い場合は水である。不明確な領域は、安全サイド、即ちこの場合は血液に設定されている。
【0028】
例えば、電位ΔV1と電位ΔV2とで決定されるポイントが点Aであるとすると、検出された液体は水であると判定される。これは、電位ΔV1が比較的低く(溶液抵抗が比較的小さく)、電位ΔV2も低い(電荷移動抵抗も小さい)ので、多量の水がセンサに付着していると判定される。また、電位ΔV1と電位ΔV2とで決定されるポイントが点Bであるとすると、電位ΔV1が比較的低く(溶液抵抗が比較的小さく)、電位ΔV2が高い(電荷移動抵抗が大きい)ので、検出された液体は血液であると判定される。
【0029】
本実施の形態では電位ΔV1と電位ΔV2とに基づいて血液か水かを判定したが、血液が付着した場合のステップ波形に対する端子Tの電位V(図4(b)、図5(b)等)の波形を記憶しておき、実測の波形と比較して類似度に基づき血液の付着の有無を判定するようにしてもよい。なお、検出対象の液体が異なる場合は、基準初期電位及び二次元マップを検出対象の液体に応じて設定する必要がある。
【0030】
図1に示した表示部16は、判定手段21による判定結果に基づいて演算処理部15による「血液漏れ発生」や「結露発生」などのメッセージが表示される構成である。また、アラーム発生部17は、スピーカなどから構成され、アラーム音などを発生させるものであり、判定手段21による判定結果が「血液漏れ発生」である場合に、演算処理部15はアラーム発生部17を制御してアラーム音を発生させる。
【0031】
図7には、本発明に係る液体漏れ検出装置を適用した血液温度制御装置の構成例が示されている。血液温度調整装置は、後述する冷却/加温手段51が貼着される箇所を除いて、例えば、プラスチック等の熱を伝えにくい材料により構成される筐体30内に、図8などに示される熱媒体31を封入したものである。熱媒体31としては、水や不凍液などを用いることができる。
【0032】
筐体30の一壁面には、血液を輸液する輸液回路41が挿抜可能に、横長の開口32が形成されている。図7のように立設された筐体30の底壁は銅、ステンレスなどの良熱伝導素材である金属などにより構成され、ペルチェ素子により構成される冷却/加温手段51が貼着されて取り付けられており、冷却/加温手段51によって筐体30内の熱媒体31を冷却/加温するように構成されている。
【0033】
図7についてのA−A断面図を図8に示し、B−B断面図を図9に示す。図8、図9共に輸液回路41を開口32から収納室33に挿入した収納状態を示している。開口32につながる収納室33は、良熱伝導素材である金属或いは金属合金などにより構成され、熱媒体31から水密に構成されている。
【0034】
収納室33は、筐体30の高さのほぼ中間位置に設けられ、輸液回路41の所要部分を収納可能な大きさを有している。ここで、所要部分とは、輸液回路41を構成するチューブ42が葛折りされた部分や、特開平9−602号公報に示される内部に蛇行する血液通路が形成された袋体とされた部分を指す。そして、好ましくは収納室33の全ての壁に輸液回路41が接触し、収納室33を囲繞している熱媒体31と輸液回路41内の液体の熱交換が行われるように構成されている。
【0035】
筐体30内には、熱媒体31を攪拌するための、例えばポンプにより構成される攪拌手段34が備えられている。この実施例において攪拌手段34の配置位置は、開口32が形成された壁面と対向する壁面の下端底面とされ、収納室33の上下の熱媒体31を含めて全てが良好な攪拌を受け得るように配置されている。
【0036】
輸液回路41内の液体は、図示しない輸液ポンプなどにより送り出され、図8の矢印S1、S2の方向へ流れる。冷却/加温手段51による温度調整のために、開口32付近のチューブ42には温度センサ52が設けられる。ここでは、収納室33に液体が流れ込む側のチューブ42と、収納室33から液体が流れ出す側のチューブ42に、それぞれ温度センサ52が設けられる。
【0037】
温度センサ52によって検出された信号は、制御部60に取り込まれて温度データとされる。制御部60には設定温度情報が与えられ、制御部60は、この設定温度情報と上記により得られる温度データとの差に応じた電力制御を冷却/加温手段51に対して行うことにより温度調整を行う。
【0038】
筐体30の収納室33における開口32を囲繞する部位の下部表面位置には、第1の電極D1と第2の電極D2とが互いに絶縁状態で且つ筐体30とも絶縁状態で埋設されている。筐体30の天板には、装置ケース70が図示しない断熱部材を介して配置される。
【0039】
装置ケース70内には、第1の電極D1と第2の電極D2以外の図1に示した各構成要素が備えられている。この例では、装置ケース70の表面に表示部16とアラーム発生部17が設けられている。
【0040】
装置ケース70内の図示しない電圧発生部12からはコード71を介して第1の電極D1と第2の電極D2とにステップ波形の電圧が供給される。また、第1の電極D1と第2の電極D2からは信号線72が装置ケース70内の図示しない検出部13へ延びており、検出部13は信号線72を介して電位を検出する。
【0041】
係る構成によれば、収納室33内に収納されたチューブ42等の輸液部分が損傷し血液が漏れ出すと、開口32から流れ出た血液が第1の電極D1と第2の電極D2間に付着する。装置ケース70内の液体漏れ検出装置では、電圧発生部12がステップ波形の電圧Vinを供給しており、検出部13が電位検出を行い、処理部14の演算処理部15における判定手段21が前述の通りの判定を行っている。
【0042】
従って、第1の電極D1と第2の電極D2との間に結露による水滴が付着した場合と、第1の電極D1と第2の電極D2間に血液が付着した場合とを適切に峻別して血液漏れが知らされることになる。
【0043】
以上説明した例では、漏れの検出対象を血液とし、水滴と区別して検出するようにしたが、本発明はこれに限定されず、イオン濃度の高い特定の液体の漏れをイオン濃度の低い液体と区別して検出することに適用できるものである。
【符号の説明】
【0044】
11 液漏れセンサ部 12 電圧発生部
13 検出部 14 処理部
15 演算処理部 16 表示部
17 アラーム発生部 21 判定手段
30 筐体 31 熱媒体
32 開口 33 収納室
34 攪拌手段 41 輸液回路
42 チューブ 51 加温手段
52 温度センサ 60 制御部
70 装置ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン濃度の高い特定の液体の漏れをイオン濃度の低い液体と区別して検出する液体漏れ検出装置であって、
第1の電極と、
前記第1の電極と所定距離の間隙をおいて設けられる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電流制限抵抗器を介してステップ波形の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位を経時的に検出する電位検出手段と、
前記電位検出手段により検出される電位に基づき前記特定の液体の漏れを判定する判定手段と
を具備することを特徴とする液体漏れ検出装置。
【請求項2】
前記判定手段には、前記イオン濃度の低い液体が前記第1の電極及び前記第2の電極全体に亘って付着したとき、前記ステップ波形の電圧を印加した初期の際の電位が基準初期電位として予め登録されており、前記ステップ波形の電圧を印加した初期の際の前記電位検出手段で検出された初期電位が、前記予め登録されている基準初期電位よりも低いときに、前記判定手段は前記特定の液体が漏れていると判定することを特徴とする請求項1に記載の液体漏れ検出装置。
【請求項3】
前記初期電位が、前記予め登録されている基準初期電位よりも高いときに、前記判定手段は、前記初期電位及び前記ステップ波形の電圧を印加して定常状態となった際の前記電位検出手段で検出された定常電位に基づいて前記特定の液体の漏れの有無を判定することを特徴とする請求項2に記載の液体漏れ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−75529(P2011−75529A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230469(P2009−230469)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】