説明

液体燃料供給装置

【課題】中継タンクを小さくすると共に配管を細くしても全燃焼器が最大消費量で運転した時に支障が生じない液体燃料供給装置を提供する。
【解決手段】液体燃料を貯蔵する油タンク1内の液体燃料が供給される中継タンク8に第2の中継タンク14を連通管15にて連通させ、該連通管15から複数の燃焼器17に液体燃料を供給するもので、従来の液体燃料供給装置に比べて、中継タンクの大きさや連通管の太さを約半分にしても、燃焼器への燃料供給不足が発生せず、それによりコストを下げることができると共に、施工も従来の液体燃料供給装置に比べて簡単にできるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅で灯油等の液体燃料を各戸へ供給するための液体燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の液体燃料供給装置に於いては、例えば地上や地下に油タンク101を設置し、該油タンク101の液体燃料をポンプ102でビルの屋上に設けた貯油槽103に汲み上げた後、貯油槽103から貯油供給管104を介して各階に設けた中継タンク105に送り込み、各階の中継タンク105から各階の燃焼器106に液体燃料を供給する方式の液体燃料供給装置がある。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−37457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの液体燃料供給装置は、各階のそれぞれの区画に燃焼器106として給湯機や暖房機などが設置され、それに液体燃料を供給する中継タンク105の容積や該中継タンク105から各燃焼器10までの配管107の太さは、その階の全燃焼器106が最大燃焼運転した時に消費する最大燃料消費量に対応できるものを使用するものである。
【0004】
しかし、燃焼器106として給湯機等のように瞬時の燃料消費量は大きいが連続運転されずに頻繁に断続運転を行う機器が多く設置されている場合、その階の燃料消費量が全燃焼器106が最大燃焼運転した時に消費する最大燃料消費量になることはまれにしかないのに、そのために最大燃料消費量に対応できる大きい中継タンク105や太い配管107を設置、使用するのは、費用がかかりすぎる問題があった。
【0005】
しかし、最大燃料消費量より小さい燃料消費量に対応した中継タンク105や配管107を設置、使用した場合、例えば同じ階の中継タンク105に一番近い燃焼器と一番遠い燃焼器とが同時に最大燃焼運転した時、配管107が細いと一番近い燃焼器106にはすぐに最大燃料消費量の燃料が流入するが、一番遠い燃焼器106には配管経路の配管負荷が大きいため、すぐに最大燃料消費量の燃料が流入しないという問題があった。
【0006】
又中継タンク105を大きいものを1つ配管経路の一端に設ける代わりに、小さい中継タンク105を複数並列に配管経路の一端に設け、更に細い配管107を設置した場合も、中継タンク105は配管経路の最大燃料消費量に対応できるが、配管107が細いため配管経路の配管負荷が大きく、例えば同じ階の中継タンク105に一番近い燃焼器106と一番遠い燃焼器106とが同時に最大燃焼運転した時、配管107が細いと一番近い燃焼器にはすぐに最大燃料消費量の燃料が流入するが、一番遠い燃焼器106には配管経路の配管負荷が大きいため、すぐに最大燃料消費量の燃料が流入しないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明はこの点に着目し上記課題を解決するため、請求項1では特にその構成を、液体燃料を貯蔵する油タンクと、該油タンク内の液体燃料が供給される中継タンクとを備え、該中継タンクより燃焼器に液体燃料を供給する液体燃料供給装置に於いて、前記中継タンクは連通管にて第2の中継タンクと連通していると共に、前記連通管から複数の燃焼器に液体燃料を供給するものである。
【0008】
又本発明の請求項2に係る液体燃料供給装置では、特にその構成を、請求項1に於いて、前記中継タンクと第2の中継タンクは、油タンクよりも高い位置に同じ高さで設置されていると共に、前記中継タンクと第2の中継タンクよりも高い位置に貯油槽を設け、該貯油槽には油タンク内の液体燃料を供給ポンプにて供給管を介して供給すると共に、前記中継タンクには貯油槽から貯油供給管を介して落差により供給するものである。
【0009】
又本発明の請求項3に係る液体燃料供給装置では、特にその構成を、請求項1に於いて、前記中継タンクと第2の中継タンクは、油タンクよりも高い位置に同じ高さで設置されていると共に、前記中継タンクには油タンク内の液体燃料を供給ポンプにて供給管を介して供給するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の請求項1によれば、液体燃料を貯蔵する油タンク内の液体燃料が供給される中継タンクに第2の中継タンクを連通管にて連通させ、該連通管から複数の燃焼器に液体燃料を供給するもので、それにより従来の中継タンクが1つの液体燃料供給装置に比べて、中継タンクの大きさや連通管の太さを約半分にしても、燃焼器への燃料供給不足が発生せず、それにより中継タンクの設置スペースを小さくすることができ、又中継タンクの取り付け構造も従来の中継タンクが1つの液体燃料供給装置に比べて約半分の荷重に耐えられるものでよく、又細い配管を使用することで配管自身のコストを下げることができると共に、配管の施工も従来の太い配管よりも簡単にできるものである。
【0011】
又前記構成による請求項2記載の液体燃料供給装置によれば、請求項1に於い
て、前記中継タンクと第2の中継タンクは、油タンクよりも高い位置に同じ高さで設置されていると共に、前記中継タンクと第2の中継タンクよりも高い位置に貯油槽を設け、該貯油槽には油タンク内の液体燃料を供給ポンプにて供給管を介して供給すると共に、前記中継タンクには貯油槽から貯油供給管を介して落差により供給するもので、それにより供給ポンプが故障していても、貯油槽内の液体燃料がなくなるまで中継タンクに液体燃料を供給でき、中継タンクと第2の中継タンクの油ぎれを遅くすることができるものである。
【0012】
又本発明の請求項3に記載の液体燃料供給装置によれば、請求項1に於いて、前記中継タンクと第2の中継タンクは、油タンクよりも高い位置に同じ高さで設置されていると共に、前記中継タンクには油タンク内の液体燃料を供給ポンプにて供給管を介して供給するもので、それにより貯油槽を設ける必要が無くその分コストを低く抑えることができ、又ビルのように高層建築物の場合、ある階の中継タンクに異常が発生しても、他の階の中継タンクには液体燃料を供給ポンプにて供給管を介して供給できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明に係る液体燃料供給装置を図面に示された一実施例で説明する。
図1に示すように、1は地下や地上に設置した油タンク、2はビルの屋上に設置した貯油槽、3は供給管4により油タンク1内の液体燃料をビルの屋上の貯油槽2に圧送して供給する供給ポンプ、5は前記供給管4を開閉する開閉弁、6は一端が貯油槽2の上部に設けられ、他端が油タンク1に接続された戻り管で、貯油槽2内に設けた液位検知装置7が槽内の液体燃料が所定の液位より低くなったのを検知すると、開閉弁5が開放されると共に供給ポンプ3が動作して、油タンク1から貯油槽2に液体燃料が供給され、前記液位検知装置7が槽内の液体燃料が所定の液位に達したのを検知すると、開閉弁5が閉鎖されると共に供給ポンプ3が停止されるものである。
【0014】
又貯油槽2内に設けた液位検知装置7の故障等により、貯油槽2内の液体燃料が所定の液位より高くなった時は、一端が貯油槽2の上部に設けられ、他端が油タンク1に接続された戻り管7により貯油槽2内の液体燃料を油タンク1に戻すので、貯油槽2から液体燃料があふれ出ることを防止しているものである。
【0015】
8は各階の上方に設けた第1の中継タンクで、一端が貯油槽2の底部に接続され、他端が戻り管6の油タンク1接続部分付近に接続された貯油供給管9から分岐した分岐管10により液体燃料が供給されるもので、第1の中継タンク8内に設けた液位検知手段11がタンク内の液体燃料が所定の液位より低くなったのを検知すると、まず貯油供給管9の貯油槽2底部と接続しているところに設けた貯油供給管開閉弁12が開放され、次に分岐管10に設けた分岐管開閉弁13が開放されて貯油槽2と中継タンク8との落差により貯油槽2から第1の中継タンク8に液体燃料が供給され、前記液位検知手段11がタンク内の液体燃料が所定の液位に達したのを検知すると、貯油供給管開閉弁12が閉鎖されると共に分岐管開閉弁13が閉鎖されるものである。
【0016】
14は各階の上方に設けた第2の中継タンクで、一端が第1の中継タンク8の底部に接続されており、他端が第2の中継タンク14底部に接続された連通管15を介して第1の中継タンク8から液体燃料が供給されるもので、第1の中継タンク8と同じ大きさのタンクが同じ高さに設けられ、又連通管15には各部屋の消費流量を積算する流量計16を介して各部屋の燃焼器17が接続されているものである。
【0017】
18は中継タンク用戻り管で、一端が第2の中継タンク14の底部に接続され、他端が戻り管6に接続されており、第1の中継タンク8底部と中継タンク用戻り管18とが、第1の中継タンク用戻り開閉弁19を介して接続されていると共に、一端が第1の中継タンク8の上部に設けられ、他端が中継タンク用戻り管18で第1の中継タンク用戻り開閉弁19が接続されているところより戻り管6側、つまり下流側に接続された第1の中継タンク用戻り管20が設けられている。
【0018】
21は第2の中継タンク用戻り開閉弁19で、中継タンク用戻り管18の第2の中継タンク14底部との接続部分付近に設けられ、又一端が第2の中継タンク14の上部に設けられ、他端が中継タンク用戻り管18で第2の中継タンク用戻り開閉弁21よりも戻り管6側、つまり下流側に接続された第2の中継タンク用戻り管22が設けられている。
【0019】
次にこの液体燃料供給装置の動作について説明する。
まず給湯機等の燃焼器17が運転を開始すると、連通管15から流量計16を介して燃焼器17に液体燃料が供給される。
それにより第1の中継タンク8内の液体燃料が減少してタンク内の液位が低下し、それが所定の液位より低くなったのを液位検知手段11が検知すると、貯油供給管開閉弁12が開放され、次に分岐管10に設けた分岐管開閉弁13が開放されて貯油槽2と中継タンク8との落差により貯油槽2から第1の中継タンク8に液体燃料が供給され、前記液位検知手段11がタンク内の液体燃料が所定の液位に達したのを検知すると、貯油供給管開閉弁12が閉鎖されると共に分岐管開閉弁13が閉鎖され、この動作を繰り返すものである。
【0020】
又第1の中継タンク8と第2の中継タンク14とは同じ大きさのタンクが同じ高さにもうけられ、その2つのタンクが連通管15を介して常に連通状態であるので、2つのタンク内の液位は常に同じになるように作用し、第1の中継タンク8内の液体燃料が所定の液位に達したのを液位検知手段11が検知した時は、第2の中継タンク14内の液体燃料も所定の液位に達しているものである。
【0021】
次に瞬間的に液体燃料の消費量が大幅に増大した時の動作について説明する。 今その階の全燃焼器17が停止している状態から全燃焼器17が最大燃焼量で運転を開始すると、連通管15から流量計16を介して最大消費量の液体燃料が燃焼器17に供給される。
【0022】
この時第1の中継タンク8に一番近い燃焼器17には第1の中継タンク8から連通管15を介して最大消費量の液体燃料が供給され、第2の中継タンク14に一番近い燃焼器17には第2の中継タンク14から連通管15を介して最大消費量の液体燃料が供給され、連通管15の中間付近に接続されている燃焼器17には第1の中継タンク8と第2の中継タンク14の両方から連通管15を介して最大消費量の液体燃料が供給されるものである。
【0023】
これにより従来の中継タンクが1つの液体燃料供給装置に比べて、中継タンクの大きさや連通管15の太さを約半分にしても、燃焼器17への燃料供給不足が発生せず、それにより中継タンクの設置スペースを小さくすることができ、又中継タンクの取り付け構造も従来の中継タンクが1つの液体燃料供給装置に比べて約半分の荷重に耐えられるものでよく、又細い配管を使用することで配管自身のコストを下げることができると共に、配管の施工も従来の太い配管よりも簡単にできるものである。
【0024】
このように給湯機等のような液体燃料の瞬時最大消費量が大きいが連続運転しない機器が燃焼器17として多く接続されている液体燃料供給装置では、従来では全燃焼器17が最大消費量で運転した時に支障が生じないように中継タンクの大きさや連通管15の配管の太さを決定していたが、通常時の消費量からみると過大な能力が設定されていることとなり、中継タンクや配管自体のコスト、又その施工費用等高額なものとなっていたが、中継タンクが2つになるものの全燃焼器17が最大消費量で運転した時に支障が生じないようにしつつ、中継タンクや配管自体のコストを低くでき、又施工自体も従来より簡単でそれにより施工費用等も低額にすることができるものである。
【0025】
尚、本実施例ではビルの屋上に貯油槽2を設置したがこれに限定されず、例えば図2のようにビルの屋上に貯油槽2を設置せず、地下や地上に設置した油タンク1から供給ポンプ3で直接各階の第1の中継タンク8に液体燃料を圧送して供給するものであってもよい。
【0026】
この場合、まず給湯機等の燃焼器17が運転を開始すると、連通管15から流量計16を介して燃焼器17に液体燃料が供給される。
それにより第1の中継タンク8内の液体燃料が減少してタンク内の液位が低下し、それが所定の液位より低くなったのを液位検知手段11が検知すると、分岐管開閉弁13が開放され、次に供給ポンプ3が動作して油タンク1から第1の中継タンク8に液体燃料が供給され、液位検知手段11が中継タンク8内の液体燃料が所定の液位に達したのを検知すると、供給ポンプ3が停止されると共に分岐管開閉弁13が閉鎖されるものである。
【0027】
又図2の実施例に於いても、第1の中継タンク8と第2の中継タンク14は同じ大きさのタンクで同じ高さに第1の中継タンク8と第2の中継タンク14が設けられ、その2つのタンクが連通管15を介して常に連通状態であるので、2つのタンク内の液位は常に同じになるように作用し、第1の中継タンク8内の液体燃料が所定の液位に達したのを液位検知手段11が検知した時は、第2の中継タンク14内の液体燃料も所定の液位に達しているものであり、その効果も図1の実施例と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の液体燃料供給装置をビルに設けた場合の全体図。
【図2】同その他の実施例の全体図。
【図3】同従来の液体燃料供給装置をビルに設けた場合の全体図。
【符号の説明】
【0029】
1 油タンク
8 中継タンク
14 第2の中継タンク
15 連通管
17 燃焼器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を貯蔵する油タンクと、該油タンク内の液体燃料が供給される中継タンクとを備え、該中継タンクより燃焼器に液体燃料を供給する液体燃料供給装置に於いて、前記中継タンクは連通管にて第2の中継タンクと連通していると共に、前記連通管から複数の燃焼器に液体燃料を供給することを特徴とする液体燃料供給装置。
【請求項2】
前記中継タンクと第2の中継タンクは、油タンクよりも高い位置に同じ高さで設置されていると共に、前記中継タンクと第2の中継タンクよりも高い位置に貯油槽を設け、該貯油槽には油タンク内の液体燃料を供給ポンプにて供給管を介して供給すると共に、前記中継タンクには貯油槽から貯油供給管を介して落差により供給することを特徴とする請求項1記載の液体燃料供給装置。
【請求項3】
前記中継タンクと第2の中継タンクは、油タンクよりも高い位置に同じ高さで設置されていると共に、前記中継タンクには油タンク内の液体燃料を供給ポンプにて供給管を介して供給することを特徴とする請求項1記載の液体燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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