説明

液体燃料組成物

本発明は、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料と;式(III):[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq−(III)(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、rは0又は1であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−はアニオンである)を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体とを含む液体燃料組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関での使用に好適な主要部のベース燃料を含む液体燃料組成物、特に内燃機関での使用に好適な主要部のベース燃料と超分散剤とを含む液体燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0164817 A2号明細書は、有機液体中の固形分の分散液及び油/水エマルジョンを安定化させるために好適な、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端強酸基を持っているカルボン酸エステルもしくはアミドを含む界面活性剤を開示している。好ましい種類の界面活性剤は、末端ヒドロキシもしくはカルボン酸基に、直接に又は連結基を介してのどちらかで、結合した強酸基を有するポリ(ヒドロキシアルカンカルボン酸)である。燃料でのかかる界面活性剤の使用は、その明細書には開示されていない。
【0003】
欧州特許出願公開第0233684 A1号明細書は、有機液体中の固形分のための分散剤としての使用に好適である(i)少なくとも2つの脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する末端基と(ii)酸性もしくは塩基性アミノ基とを有するエステル又はポリエステルを開示している。燃料でのかかる界面活性剤の使用は、その明細書には開示されていない。
【0004】
英国特許出願公開第2197312 A号明細書は、先ずC〜Cラクトンをポリアミン、ポリオール又はアミノアルコールと反応させて中間体付加体を形成し、その後この中間体付加体が約1〜約165個の総炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビルモノカルボン酸もしくはジカルボン酸アシル化剤と反応させることによって製造されたポリ(C〜Cラクトン)付加体である、油溶性分散剤添加剤を開示している。潤滑油及び燃料でのこの分散剤添加剤の使用もまた、英国特許出願公開第2197312 A号明細書に開示されている。
【0005】
欧州特許出願公開第0802255 A2号明細書は、潤滑油及び普通は液体燃料用の低塩素含有添加剤として有用であるヒドロキシル基含有アシル化窒素化合物並びに本化合物の製造方法を開示している。
【0006】
国際公開第00/34418 A1号パンフレットは、潤滑性添加剤としての燃料組成物でのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド又はエステル誘導体の使用を開示している。その明細書に開示されているポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド又はエステル誘導体の使用はまた、入口システム清浄度(吸気弁、燃料噴射装置、気化器)、燃焼室清浄度(各場合に清浄性保持(keep clean)効果及び清浄性向上効果のどちらか又は両方)、防食性(防錆を含む)並びに弁固着の低減又は排除などの多数の効果の1つ以上の達成をもたらす可能性があることもまた国際公開第00/34418 A1号パンフレットに開示されている。
【0007】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用はまた、意外にもそれらを組み込んだ液体燃料組成物の潤滑性を改善するという観点からの利益も提供し得ることがここに見出された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
− 内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料と;
− 式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq− (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、rは0又は1であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−はアニオンである)
を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体と、
を含む、液体燃料組成物を提供する。
【0009】
本発明は更に、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を内燃機関での使用に好適なベース燃料と混ぜ合わせることを含む本発明の液体燃料組成物の調製方法を提供する。
【0010】
本発明はその上更に、本発明による液体燃料組成物をエンジンの燃焼室へ導入することを含む、内燃機関の運転方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液体燃料組成物は、内燃機関での使用に好適なベース燃料と1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体とを含む。一般的には、内燃機関での使用に好適なベース燃料は、ガソリン又はディーゼル燃料であり、それ故本発明の液体燃料組成物は一般的には、ガソリン組成物又はディーゼル燃料組成物である。
【0012】
本発明に使用されるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体はまた超分散剤と言われてもよい。
【0013】
本発明の液体燃料組成物中の1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq− (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、rは0又は1であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−はアニオンである)
を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体である。
【0014】
は第一級、第二級、第三級又は第四級アンモニウム基であってよい。Rは好ましくは第四級アンモニウム基である。
【0015】
式(III)において、Aは好ましくは、下記式(I)及び(II)について本明細書で以下に記載されるように二価の直鎖又は分岐のヒドロカルビル基である。
【0016】
即ち、式(III)において、Aは好ましくは、任意に置換された芳香族、脂肪族又は脂環式の直鎖又は分岐の二価ヒドロカルビル基である。更に好ましくは、Aは、アリーレン、アルキレン又はアルケニレン基、特に4〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは6〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは8〜24個の範囲の炭素原子、更に好ましくは10〜22個の範囲の炭素原子、最も好ましくは12〜20個の範囲の炭素原子を含有するアリーレン、アルキレン又はアルケニレン基である。
【0017】
好ましくは、式(III)の前記化合物において、カルボニル基とヒドロキシル基に由来する酸素原子との間に直接連結された少なくとも4個の炭素原子、更に好ましくは少なくとも6個の炭素原子、なお更に好ましくは8〜14個の範囲の炭素原子が存在する。
【0018】
式(III)の化合物において、基A中の随意の置換基は好ましくは、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、とりわけC1〜4アルコキシ基から選択される。
【0019】
式(III)(及び式(I))において、nは1〜100の範囲にある。好ましくは、nについての範囲の下限は1、更に好ましくは2、なお更に好ましくは3であり;好ましくはnについての範囲の上限は100、更に好ましくは60、更に好ましくは40、更に好ましくは20、なお更に好ましくは10である(即ち、nは、以下の範囲のいずれかから選択してよい:1〜100;2〜100;3〜100;1〜60;2〜60;3〜60;1〜40;2〜40;3〜40;1〜20;2〜20;3〜20;1〜10;2〜10;及び3〜10)。
【0020】
式(III)において、Yは好ましくは、式(I)について本明細書で以下に記載されるように任意に置換されたヒドロカルビル基である。
【0021】
即ち、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは好ましくは、50個以下の炭素原子、更に好ましくは7〜25個の範囲の炭素原子を含有するアリール、アルキル又はアルケニルである。例えば、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは好都合には、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ラウリル、ヘプタデシル、ヘプタデニル、ヘプタデカジエニル、ステアリル、オレイル及びリノレイルから選択してよい。
【0022】
本明細書での式(III)中の前記任意に置換されたヒドロカルビル基Yの他の例には、シクロヘキシルなどのC4〜8シクロアルキル;アビエチン酸などの天然起源の酸に由来する多環式テルペニル基などのポリシクロアルキル;フェニルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル;並びにナフチル、ビフェニル、スチベニル及びフェニルメチルフェニルなどのポリアリールが挙げられる。
【0023】
本発明では、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アミノ、好ましくは第三級アミノ(N−H結合なし)、オキシ、シアノ、スルホニル及びスルホキシルなどの1つ以上の官能基を含有してもよい。置換ヒドロカルビル基中の、水素以外の、原子の大部分は一般に炭素で、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素及び硫黄)は、存在する全非水素原子のわずかな部分、約33%以下を一般に表すにすぎない。
【0024】
置換ヒドロカルビル基Y中のヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、ニトロ及びシアノなどの官能基はヒドロカルビルの水素原子の1つと置き換わるが、置換ヒドロカルビル基中のカルボニル、カルボキシル、第三級アミノ(−N−)、オキシ、スルホニル及びスルホキシルなどの官能基はヒドロカルビルの−CH−又はCH−部分と置き換わることを当業者は十分理解するであろう。
【0025】
更に好ましくは、式(III)中のヒドロカルビル基Yは、非置換であるか又は、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、なお更に好ましくはC1〜4アルコキシから選択される基で置換されている。
【0026】
最も好ましくは、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、ステアリル基、12−ヒドロキシステアリル基、オレイル基又は12−ヒドロキシオレイル基、及びトールオイル脂肪酸などの天然起源の油に由来するものである。
【0027】
式(III)において、Zは好ましくは、式(IV)
【化1】


(式中、Rは、水素又はヒドロカルビル基であり、Bは、任意に置換されたアルキレン基である)
で表される任意に置換された二価の架橋基である。
【0028】
を表してもよいヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及びオクタデシルが挙げられる。
【0029】
Bを表してもよい任意に置換されたアルキレン基の例には、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン及びヘキサメチレンが挙げられる。
【0030】
式(III)中の好ましいZ部分の例には、−NHCHCH−、−NHCHC(CHCH−及びNH(CH−が挙げられる。
【0031】
式(III)において、rは好ましくは1である、即ち、式(III)を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、任意に置換された二価の架橋基Zを含有しなければならない。
【0032】
好ましくは、Rは、式(V)
【化2】


(式中、R、R及びRは、水素及びメチルなどのアルキル基から選択してよい)
で表してよい。
【0033】
式(III)の化合物のアニオンXq−は、決定的に重要であるわけではなく、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミドカチオンの正電荷と釣り合うために好適な任意のアニオン(又はアニオンの混合物)であることができる。
【0034】
式(III)の化合物のアニオンXq−は好都合には、スルフェート及びスルホネートアニオンから選択されるようなアニオンなどの、硫黄含有アニオンであってよい。
【0035】
しかしながら、ガソリン及びディーゼル燃料中の低硫黄含有率を維持することが望ましいため、液体ベース燃料中の硫黄の濃度及び/又は1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含有する液体燃料組成物中の硫黄の所望の濃度次第では、式(III)の化合物での硫黄を含有しないアニオンの使用が望ましい可能性がある。
【0036】
それ故、式(III)の化合物のアニオンXq−はまた、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミドカチオンの正電荷と釣り合うために好適な、硫黄を含有しない有機アニオン又は硫黄を含有しない無機アニオンなどの、硫黄を含有しない任意のアニオン(又はアニオンの混合物)であることができる。
【0037】
好適なアニオンの非限定的な例は、OH、CH、NH、HCO、HCOO、CHCOO、H、BO3−、CO2−、C、HCO2−、C2−、HC、NO、NO、N3−、NH、O2−、O2−、BeF、F、Na、[Al(HO)(OH)、SiO2−、SiF2−、HPO、P3−、PO3−、HPO2−、Cl、ClO、ClO、ClO、KO、SbOH、SnCl2−、[SnTe4−、CrO2−、Cr2−、MnO、NiCl2−、[Cu(CO(OH)4−、AsO3−、Br、BrO、IO、I、CN、OCNなどである。
【0038】
好適なアニオンにはまた、カルボン酸基を含有する化合物に由来するアニオン(例えば、カルボキシレートアニオン)、ヒドロキル基を含有する化合物に由来するアニオン(例えば、アルコキシド、フェノキシド又はエノレートアニオン)、硝酸アニオン及び亜硝酸アニオンなどの窒素ベースのアニオン、ホスフェート及びホスホネートなどのリンベースのアニオン、又はそれらの混合物が含まれてもよい。
【0039】
カルボン酸基を含有する化合物に由来する好適なアニオンの非限定的な例には、アセテート、オレエート、サリチレートアニオン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
ヒドロキシル基を含有する化合物に由来する好適なアニオンの非限定的な例には、フェノキシドアニオン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、アニオンXq−は、OH、フェノキシド基、サリチレート基、オレエート基及びアセテート基からなる群から選択される硫黄を含有しないアニオンであり;更に好ましくは、アニオンXq−はOHである。
【0042】
1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、酸又は四級化剤と一緒に、アミンと式(I)
Y−CO[O−A−CO]−OH (I)
(式中、Yは、水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100である)
のポリ(ヒドロキシカルボン酸)との反応によって得られてもよい。
【0043】
本明細書で用いるところでは、用語「ヒドロカルビル」は、炭化水素の炭素原子からの1つ以上の水素原子の除去によって形成されるラジカルを表す(より多くの水素原子が除去される場合には必ずしも同じ炭素原子ではない)。
【0044】
ヒドロカルビル基は、芳香族、脂肪族、非環式又は環式基であってよい。好ましくは、ヒドロカルビル基は、アリール、シクロアルキル、アルキル又はアルケニルであり、その場合それらは直鎖又は分岐鎖基であってよい。
【0045】
代表的なヒドロカルビル基には、フェニル、ナフチル、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、メチルペンチル、ヘキセニル、ジメチルヘキシル、オクテニル、シクロオクテニル、メチルシクロオクテニル、ジメチルシクロオクチル、エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ドデシル、ヘキサデセニル、アイコシル、ヘキサコシル、トリアコンチル及びフェニルエチルが含まれる。
【0046】
本発明では、語句「任意に置換されたヒドロカルビル」は、1つ以上の「不活性な」ヘテロ原子含有官能基を任意に含有するヒドロカルビル基を記載するために用いられる。「不活性な」とは、官能基がいかなる実質的な程度にも化合物の機能を妨げないことを意味する。
【0047】
式(I)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、本明細書では好ましくは、50個以下の炭素原子、更に好ましくは7〜25個の範囲の炭素原子を含有するアリール、アルキル又はアルケニルである。例えば、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは好都合には、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ラウリル、ヘプタデシル、ヘプタデニル、ヘプタデカジエニル、ステアリル、オレイル及びリノレイルから選択してよい。
【0048】
本明細書での式(I)中の前記任意に置換されたヒドロカルビル基Yの他の例には、シクロヘキシルなどのC4〜8シクロアルキル;アビエチン酸などの天然起源の酸に由来する多環式テルペニル基などのポリシクロアルキル;フェニルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル;並びにナフチル、ビフェニル、スチベニル及びフェニルメチルフェニルなどのポリアリールが挙げられる。
【0049】
本発明では、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、第三級アミノ(N−H結合なし)、オキシ、シアノ、スルホニル及びスルホキシルなどの1つ以上の官能基を含有してもよい。置換ヒドロカルビル基中の、水素以外の、原子の大部分は一般に炭素で、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素及び硫黄)は、存在する全非水素原子のわずかな部分、約33%以下を一般に表すにすぎない。
【0050】
置換ヒドロカルビル基Y中のヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、ニトロ及びシアノなどの官能基はヒドロカルビルの水素原子の1つと置き換わるが、置換ヒドロカルビル基中のカルボニル、カルボキシル、第三級アミノ(−N−)、オキシ、スルホニル及びスルホキシルなどの官能基はヒドロカルビルの−CH−又はCH−部分と置き換わることを当業者は十分理解するであろう。
【0051】
式(I)中のヒドロカルビル基Yは更に好ましくは、非置換であるか又は、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、なお更に好ましくはC1〜4アルコキシから選択される基で置換されている。
【0052】
最も好ましくは、式(I)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、ステアリル基、12−ヒドロキシステアリル基、オレイル基、12−ヒドロキシオレイル基又はトールオイル脂肪酸などの天然起源の油に由来する基である。
【0053】
本発明の一実施形態では、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体のうち、少なくとも1つ、又は全てが硫黄含有ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体である。
【0054】
かかる実施形態では、前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は好ましくは、前記ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の総重量を基準として、ICP−AESで測定されるように、0.1〜2.0重量%の範囲の、好都合には0.6〜1.2重量%硫黄の範囲の硫黄含有率などの、2.5重量%以下の硫黄含有率を有する。
【0055】
本発明の別の実施形態では、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、硫黄を含有しないポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体である。
【0056】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)及びそのアミド又は他の誘導体の製造は公知であり、例えば、欧州特許第0 164 817号明細書、国際公開第95/17473号パンフレット、国際公開第96/07689号パンフレット、米国特許第5,536,445号明細書、英国特許第2 001 083号明細書、英国特許第1 342 746号明細書、英国特許第1 373 660号明細書、米国特許第5 000 792号明細書及び米国特許第4 349 389号明細書に記載されている。
【0057】
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)は、周知の方法に従って任意に触媒の存在下に、式(II)
HO−A−COOH (II)
(式中、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基である)
の1つ以上のヒドロキシカルボン酸のエステル交換によって製造してよい。かかる方法は、例えば、米国特許第3,996,059号明細書、英国特許第1 373 660号明細書及び英国特許第1 342 746号明細書に記載されている。
【0058】
前記分子間エステル化における連鎖停止剤は、非ヒドロキシカルボン酸であってよい。
【0059】
ヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基及びヒドロキシカルボン酸又は非ヒドロキシカルボン酸中のカルボン酸基は、特性が第一級、第二級又は第三級であってよい。
【0060】
ヒドロキシカルボン酸及び非ヒドロキシカルボン酸連鎖停止剤の分子間エステル化は、任意にトルエン又はキシレンなどの好適な炭化水素溶媒中で、出発原料を加熱すること、及び形成された水を共沸除去することによって達成できる。反応は、−250℃以下の温度で、好都合には溶媒の還流温度で実施してよい。
【0061】
ヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基が第二級又は第三級である場合、用いられる温度は、酸分子の脱水をもたらすほどに高いものであるべきではない。
【0062】
p−トルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム又はチタン酸テトラブチルなどの、分子間エステル化用の触媒が、所与の温度で反応の速度を上げる又は所与の反応速度のために必要とされる温度を下げるのどちらかの目的で、含められてもよい。
【0063】
式(I)及び(II)の化合物において、Aは好ましくは、任意に置換された芳香族、脂肪族又は脂環式の直鎖又は分岐の二価ヒドロカルビル基である。好ましくは、Aは、アリーレン、アルキレン又はアルケニレン基、特に4〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは6〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは8〜24個の範囲の炭素原子、更に好ましくは10〜22個の範囲の炭素原子、最も好ましくは12〜20個の範囲の炭素原子を含有するアリーレン、アルキレン又はアルケニレン基である。
【0064】
好ましくは、式(I)及び(II)の前記化合物において、カルボニル基とヒドロキシル基に由来する酸素原子との間に直接連結された少なくとも4個の炭素原子、更に好ましくは少なくとも6個の炭素原子、なお更に好ましくは8〜14個の範囲の炭素原子が存在する。
【0065】
式(I)及び(II)の化合物において、基A中の随意の置換基は好ましくは、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、更に好ましくはC1〜4アルコキシ基から選択される。
【0066】
式(II)のヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基は好ましくは第二級ヒドロキシル基である。
【0067】
好適なヒドロキシカルボン酸の例は、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシ−9−オレイン酸(リシノール酸)、6−ヒドロキシカプロン酸、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。市販の12−ヒドロキシステアリン酸(水素化ヒマシ油脂肪酸)は通常、不純物として15%wt以下のステアリン酸及び他の非ヒドロキシカルボン酸を含有し、分子量約1000〜2000のポリマーを製造するためにさらなる混合剤なしに好都合には使用することができる。
【0068】
非ヒドロキシカルボン酸が反応に別々に導入される場合、所与の分子量のポリマー又はオリゴマーを製造するために必要とされる割合は、簡単な実験によって又は当業者による計算によってのどちらかで決定することができる。
【0069】
式(I)及び(II)の化合物中の基(−O−A−CO−)は好ましくは12−オキシステアリル基、12−オキシオレイル基又は6−オキシカプロイル基である。
【0070】
アミンとの反応のための式(I)の好ましいポリ(ヒドロキシカルボン酸)には、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)及びポリ(ヒドロキシオレイン酸)が含まれる。
【0071】
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と反応してポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド中間体を形成するアミンには、国際公開第97/41092号パンフレットに定義されているものが含まれてもよい。
【0072】
例えば、様々なアミン及びそれらの製法は、米国特許第3 275 554号明細書、米国特許第3 438 757号明細書、米国特許第3 454 555号明細書、米国特許第3 565 804号明細書、米国特許第3 755 433号明細書及び米国特許第3 822 209号明細書に記載されている。
【0073】
アミン反応剤は好ましくはジアミン、トリアミン又はポリアミンである。
【0074】
好ましいアミン反応剤は、エチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンから選択されるジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びトリス(2−アミノエチル)アミンから選択されるトリアミン及びポリアミンである。
【0075】
アミン反応剤と式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)との間のアミド化は、任意にトルエン又はキシレンなどの好適な炭化水素溶媒中で、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をアミン反応剤と加熱すること、及び形成された水を共沸除去することによって、当業者に公知の方法に従って実施してよい。前記反応は、p−トルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム又はチタン酸テトラブチルなどの触媒の存在下に実施してよい。
【0076】
様々な特許文書が、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド誘導体を開示している。
【0077】
例えば、英国特許第1 373 660号明細書は、有機液体中の顔料の分散液での分散剤として使用するための3−ジメチルアミノプロピルアミン及びエチレンジアミンなどのアミンとのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド誘導体を開示している。
【0078】
英国特許第2 001 083号明細書は、類似の使用のための500超の分子量(MW)を有するポリ(エチレンイミン)(PEI)とのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド誘導体を開示している。
【0079】
米国特許第5 000 792号明細書では、NH−R’−N(R’’)−R’’’−NHの式のアミンとのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド誘導体が顔料分散剤として使用について開示されている。
【0080】
国際公開第95/17473号パンフレットは、銅フタロシアニンの非水性分散液の調製方法での使用のための3−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、500超の分子量(MW)を有するポリ(エチレンイミン)(PEI)及びNH−R’−N(R’’)−R’’’−NHの式のアミンなどのアミンとのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド誘導体を開示している。
【0081】
米国特許第4 349 389号明細書は、分散可能な無機顔料組成物の調製での分散剤としての3−ジメチルアミノプロピルアミン、500超の分子量(MW)を有するポリ(エチレンイミン)(PEI)などのアミンとのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド誘導体を開示している。
【0082】
欧州特許0 164 817号明細書は、有機液体中の固形分の分散液及び油/水エマルジョンを安定化させるために好適な界面活性剤としての使用のためのポリアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなど)、アミノアルコール(ジエタノールアミンなど)とのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド誘導体並びにポリオール(グリセロールなど)とのエステル誘導体を開示している。
【0083】
しかしながら、前述の特許文書のどれも、燃料組成物での本明細書に開示されるような1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用を開示していない。
【0084】
アミンと式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)との反応から形成されたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド中間体は、周知の方法に従って、塩誘導体を形成するために酸又は四級化剤と反応させられる。
【0085】
塩誘導体を形成するために使用してよい酸は、有機又は無機酸から選択してよい。前記酸は好都合には、カルボン酸、窒素含有有機及び無機酸、硫黄含有有機又は無機酸(硫酸、メタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸などの)から選択される。
【0086】
塩誘導体を形成するために使用してよい四級化剤は、ジメチル硫酸、1〜4個の炭素原子を有する硫酸ジアルキル、塩化メチル、臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、塩化ベンジルなどのハロゲン化アリールから選択してよい。
【0087】
好ましい実施形態では、四級化剤は、硫黄含有四級化剤、特にジメチル硫酸又は1〜4個の炭素原子を有する硫酸ジアルキルである。四級化剤は好ましくはジメチル硫酸である。
【0088】
四級化は当該技術分野で周知の方法である。例えば、ジメチル硫酸を使用する四級化は、米国特許第3 996 059号明細書、米国特許第4 349 389号明細書及び英国特許第1 373 660号明細書に記載されている。
【0089】
本発明で好ましいポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、ASTM D 4739によって測定されるように、10mg.KOH/g未満のTBN(全塩基価)値をそれぞれ有するものである。更に好ましくは、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体はそれぞれ、ASTM D 4739によって測定されるように、5mg.KOH/g未満、最も好ましくは2mg.KOH/g以下のTBN値を有する。
【0090】
商業的に入手可能であるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の例には、商品名「SOLSPERSE 17000」でLubrizolから入手可能なもの(ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン及びジメチル硫酸との反応生成物)並びにShanghai Sanzheng Polymer Companyから商品名「CH−5」及び「CH−7」で入手可能なものが挙げられる。
【0091】
本発明の液体燃料組成物では、使用されるベース燃料がガソリンである場合、このガソリンは、当該技術分野で公知の、火花点火の内燃機関での使用に好適な任意のガソリン(ペトロール)型であってよい。本発明の液体燃料組成物でのベース燃料として使用されるガソリンは好都合には「ベースガソリン」と言われてもよい。
【0092】
ガソリンは一般的には、25〜230℃の範囲で沸騰する炭化水素の混合物を含み(EN−ISO 3405)、最適な範囲及び蒸留曲線は一般的には、気候及び年の季節によって変わる。ガソリン中の炭化水素は、当該技術分野で公知の任意の方法で誘導されてもよく、好都合には炭化水素は、直留ガソリン、合成的に製造された芳香族炭化水素混合物、熱もしくは接触分解炭化水素、水素化分解石油留分、接触改質炭化水素又はこれらの混合物から任意の公知の方法で誘導できる。
【0093】
ガソリンの具体的な蒸留曲線、炭化水素組成、リサーチオクタン価(RON)及びモーターオクタン価(MON)は、決定的に重要であるわけではない。
【0094】
好都合には、ガソリンのリサーチオクタン価(RON)は少なくとも80、例えば80〜110の範囲にあってもよく、好ましくはガソリンのRONは少なくとも90、例えば90〜110の範囲であるし、更に好ましくはガソリンのRONは少なくとも91、例えば91〜105の範囲であるし、なお更に好ましくはガソリンのRONは少なくとも92、例えば92〜103の範囲であるし、なお更に好ましくはガソリンのRONは少なくとも93、例えば93〜102の範囲であるし、最も好ましくはガソリンのRONは少なくとも94、例えば94〜100の範囲であるし(EN 25164);ガソリンのモーターオクタン価(MON)は好都合には少なくとも70、例えば70〜110の範囲にあってもよく、好ましくはガソリンのMONは少なくとも75、例えば75〜105の範囲であるし、更に好ましくはガソリンのMONは少なくとも80、例えば80〜100の範囲であるし、最も好ましくはガソリンのMONは少なくとも82、例えば82〜95の範囲である(EN 25163)。
【0095】
一般的には、ガソリンは、以下の群の1つ以上から選択される成分を含む:飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、及び含酸素炭化水素。好都合には、ガソリンは、飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、及び、任意に、含酸素炭化水素の混合物を含んでもよい。
【0096】
一般的には、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜40容量パーセントの範囲にあり(ASTM D1319);好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜30容量パーセントの範囲にあり、更に好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜20容量パーセントの範囲にある。
【0097】
一般的には、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜70容量パーセントの範囲にあり(ASTM D1319)、例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として10〜60容量パーセントの範囲にあり;好ましくは、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜50容量パーセントの範囲にあり、例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として10〜50容量パーセントの範囲にある。
【0098】
ガソリンのベンゼン含有率は、ガソリンを基準として10容量パーセント以下、更に好ましくは5容量パーセント以下、とりわけ1容量パーセント以下である。
【0099】
ガソリンは好ましくは、低い又は超低硫黄含有率、例えば1000ppmw(重量で百万当たりの部)以下、好ましくは500ppmw以下、更に好ましくは100以下、なお更に好ましくは50以下、最も好ましくは更に10ppmw以下を有する。
【0100】
ガソリンはまた好ましくは、0.005g/l以下などの、低い全鉛含有率を有し、最も好ましくは鉛を含まない、つまり鉛化合物をそれに全く添加されていない(即ち、無鉛である)。
【0101】
ガソリンが含酸素炭化水素を含むとき、酸素を含まない炭化水素の少なくとも一部が含酸素炭化水素と置き換えられる。ガソリンの酸素含有率は、ガソリンを基準として35重量パーセント以下であってよい(EN 1601)(例えば、エタノールそれ自体)。例えば、ガソリンの酸素含有率は25重量パーセント以下、好ましくは10重量パーセント以下であってよい。好都合には、含酸素物濃度は、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、及び1.2重量パーセントのいずれかから選択される最小濃度、及び5、4.5、4.0、3.5、3.0、及び2.7重量パーセントのいずれかから選択される最大濃度を有する。
【0102】
ガソリンへ組み込まれてもよい含酸素炭化水素の例には、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸及びそれらの誘導体、並びに酸素含有複素環化合物が挙げられる。好ましくは、ガソリンへ組み込まれてもよい含酸素炭化水素は、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、第三ブタノール及びイソ−ブタノールなどの)、エーテル(好ましくは1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエーテル、例えばメチル第三ブチルエーテル)及びエステル(好ましくは1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエステル)から選択され;特に好ましい含酸素炭化水素はエタノールである。
【0103】
含酸素炭化水素がガソリン中に存在するとき、ガソリン中の含酸素炭化水素の量は、広い範囲にわたって変わってもよい。例えば、主要割合の含酸素炭化水素、例えばエタノールそれ自体及びE85を含むガソリン、並びにマイナー割合の含酸素炭化水素、例えばE10及びE5を含むガソリンが、ブラジル国及び米国などの国で現在商業的に入手可能である。それ故、ガソリンは、100容量パーセント以下の含酸素炭化水素を含有してもよい。好ましくは、ガソリン中に存在する含酸素炭化水素の量は、以下の量の1つから選択される:ガソリンの所望の最終調合物に依存して、85容量パーセント以下;65容量パーセント以下;30容量パーセント以下;20容量パーセント以下;15容量パーセント以下;及び、10容量パーセント以下。好都合には、ガソリンは、少なくとも0.5、1.0又は2.0容量パーセントの含酸素炭化水素を含有してもよい。
【0104】
好適なガソリンの例には、0〜20容量パーセントのオレフィン系炭化水素含有率(ASTM D1319)、0〜5重量パーセントの酸素含有率(EN 1601)、0〜50容量パーセントの芳香族炭化水素含有率(ASTM D1319)及び1容量パーセント以下のベンゼン含有率を有するガソリンが挙げられる。
【0105】
本発明に決定的に重要であるわけではないが、本発明のベースガソリン又はガソリン組成物は好都合には、1つ以上の燃料添加剤を更に含んでもよい。本発明のベースガソリン又はガソリン組成物中に含まれてもよい燃料添加剤の濃度及び本質は、決定的に重要であるわけではない。本発明のベースガソリン又はガソリン組成物に含むことができる好適なタイプの燃料添加剤の非限定的な例には、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤、脱曇り剤(dehazer)、アンチノック添加剤、金属不活性化剤、弁座後退防止剤化合物、染料、摩擦改良剤、キャリア流体、希釈剤及びマーカーが挙げられる。好適なかかる添加剤の例は、米国特許第5,855,629号明細書に概して記載されている。
【0106】
好都合には、燃料添加剤は、添加剤コンセントレートを形成するために、1つ以上の希釈剤又はキャリア流体とブレンドすることができ、添加剤コンセントレートは次に、本発明のベースガソリン又はガソリン組成物と混ぜ合わせることができる。
【0107】
本発明のベースガソリン又はガソリン組成物中に存在する任意の添加剤の(活性成分)濃度は好ましくは、1重量パーセント以下、更に好ましくは5〜1000ppmwの範囲に、有利には95〜150ppmwなどの、75〜300ppmwの範囲にある。
【0108】
本発明の液体燃料組成物では、使用されるベース燃料がディーゼル燃料である場合、本発明でベース燃料として使用されるディーゼル燃料には、自動車圧縮点火エンジンでの、並びに例えば船舶、鉄道及び固定エンジンなどの他のタイプのエンジンでの使用のためのディーゼル燃料が含まれる。本発明の液体燃料組成物にベース燃料として使用されるディーゼル燃料は好都合にはまた「ディーゼルベース燃料」と言われてもよい。
【0109】
ディーゼルベース燃料はそれ自体、2つ以上の異なるディーゼル燃料成分の混合物を含んでもよいし、及び/又は下に記載されるように添加剤を加えてもよい。
【0110】
かかるディーゼル燃料は、液体炭化水素中間留出物ガスオイル、例えば石油由来ガスオイルを一般的には含んでもよい1つ以上のベース燃料を含有する。かかる燃料は一般的には、銘柄及び用途に依存して、150〜400℃の通常のディーゼル範囲内の沸点を有する。それらは一般的には、15℃で、750〜1000kg/m、好ましくは780〜860kg/mの密度(例えばASTM D4502又はIP 365)、及び35〜120、更に好ましくは40〜85のセタン価(ASTM D613)を有する。それらは一般的には、150〜230℃の範囲の初留点及び290〜400℃の範囲の最終沸点を有する。それらの40℃での動粘度(ASTM D445)は好適には1.2〜4.5mm/秒であってよい。
【0111】
石油由来ガスオイルの例は、スウェーデン国立規格EC1で定義されているように、15℃で800〜820kg/mの密度(SS−EN ISO 3675、SS−EN ISO 12185)、320℃以下のT95(SS−EN ISO 3405)及び1.4〜4.0mm/秒の40℃での動粘度(SS−EN ISO 3104)を有するSwedish Class 1ベース燃料である。
【0112】
任意に、バイオ燃料又はFischer−Tropsch由来燃料などの、非鉱物油ベース燃料がまた、ディーゼル燃料を形成しても又はディーゼル燃料中に存在してもよい。かかるFischer−Tropsch燃料は例えば、天然ガス、天然ガス液、石油又はシェール油、石油又はシェール油処理残渣、石炭又はバイオマスに由来してもよい。
【0113】
ディーゼル燃料に使用されるFischer−Tropsch由来燃料の量は、全体ディーゼル燃料の0%〜100%v、好ましくは5%〜100%v、更に好ましくは5%〜75%vであってよい。かかるディーゼル燃料が10%v以上、更に好ましくは20%v以上、なお更に好ましくは30%v以上のFischer−Tropsch由来燃料を含有することが望ましい可能性がある。かかるディーゼル燃料が30〜75%v、特に30又は70%vのFischer−Tropsch由来燃料を含有することが特に好ましい。ディーゼル燃料の残りは、1つ以上の他のディーゼル燃料成分で構成される。
【0114】
かかるFischer−Tropsch由来燃料成分は、(任意に水素化分解された)Fischer−Tropsch合成生成物から単離することができる、中間留出物燃料範囲の任意の留分である。一般的な留分は、ナフサ、灯油又はガスオイル範囲で沸騰する。好ましくは、灯油又はガスオイル範囲で沸騰するFischer−Tropsch生成物が使用される。なぜならこれらの生成物は例えば家庭環境で取り扱うのが一層容易だからである。かかる生成物は好適には、160〜400℃、好ましくは約370℃までに沸騰する90重量%超の留分を含む。Fischer−Tropsch由来灯油及びガスオイルの例は、欧州特許出願公開第A−0583836号明細書、国際公開第A−97/14768号パンフレット、国際公開第A−97/14769号パンフレット、国際公開第A−00/11116号パンフレット、国際公開第A−00/11117号パンフレット、国際公開第A−01/83406号パンフレット、国際公開第A−01/83648号パンフレット、国際公開第A−01/83647号パンフレット、国際公開第A−01/83641号パンフレット、国際公開第A−00/20535号パンフレット、国際公開第A−00/20534号パンフレット、欧州特許出願公開第A−1101813号明細書、米国特許第5766274号明細書、米国特許第5378348号明細書、米国特許第5888376号明細書及び米国特許第6204426号明細書に記載されている。
【0115】
Fischer−Tropsch生成物は、80重量%超、更に好適には95重量%超のイソ及びノルマルパラフィン並びに1重量%未満の芳香族化合物を好適には含有し、残りはナフテン系化合物である。硫黄及び窒素の含有率は非常に低く、普通はかかる化合物の検出限界未満である。こういう訳で、Fischer−Tropsch生成物を含有するディーゼル燃料組成物の硫黄含有率は、非常に低い可能性がある。
【0116】
ディーゼル燃料組成物は、好ましくは5000ppmw以下の硫黄、更に好ましくは500ppmw以下、もしくは350ppmw以下、もしくは150ppmw以下、もしくは100ppmw以下、もしくは70ppmw以下、もしくは50ppmw以下、もしくは30ppmw以下、もしくは20ppmw以下、又は最も好ましくは15ppmw以下の硫黄を含有する。
【0117】
ディーゼルベース燃料はそれ自体、添加剤を加えても(添加剤を含有しても)、添加剤を加えなくても(添加剤なしでも)よい。例えば製油所で、添加剤を加える場合、それは、帯電防止剤、パイプライン摩擦抵抗(drag)軽減剤、流動性向上剤(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー又はアクリレート/無水マレイン酸コポリマー)、潤滑添加剤、酸化防止剤及びワックス沈降防止剤から例えば選択される1つ以上の少量の添加剤を含有する。
【0118】
洗浄剤含有ディーゼル燃料添加剤が公知であり、商業的に入手可能である。かかる添加剤は、エンジン沈着物の蓄積を低減する、排除する、又は遅くすることを意図されるレベルでディーゼル燃料に添加してよい。
【0119】
現目的のためのディーゼル燃料添加剤での使用に好適な洗浄剤の例には、ポリオレフィン置換スクシンイミド又はポリアミンのスクシンイミド、例えばポリイソブチレンスクシンイミド又はポリイソブチレンアミンスクシンイミド、脂肪族アミン、Mannich塩基又はアミン及びポリオレフィン(例えばポリイソブチレン)無水マレイン酸が挙げられる。スクシンイミド分散剤添加剤は例えば、GB−A−960493、欧州特許出願公開第A−0147240号明細書、欧州特許出願公開第A−0482253号明細書、欧州特許出願公開第A−0613938号明細書、欧州特許出願公開第A−0557516号明細書及び国際公開第A−98/42808号パンフレットに記載されている。ポリイソブチレンスクシンイミドなどのポリオレフィン置換スクシンイミドが特に好ましい。
【0120】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、洗浄剤に加えて他の成分を含有してもよい。例は、潤滑性強化剤;曇り防止剤、例えばアルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー;消泡剤(例えばポリエーテル変性ポリシロキサン);点火向上剤(セタン価向上剤)(例えば2−エチルヘキシルナイトレート(EHN)、シクロヘキシルナイトレート、ジ−第三ブチルペルオキシド及び米国特許第4,208,190号明細書、2列、27行〜3列、21行に開示されているもの);防錆剤(例えばテトラプロペニルコハク酸のプロパン−1,2−ジオール半エステル、又はコハク酸誘導体の多価アルコールエステル、そのアルファ−炭素原子の少なくとも1つに20〜500個の炭素原子を含有する非置換もしくは置換脂肪族炭化水素基を有するコハク酸誘導体、例えばポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル);腐食防止剤;付香剤;摩耗防止剤;酸化防止剤(例えば2,6−ジ−第三ブチルフェノールなどのフェノール化合物、又はN,N’−ジ−第二ブチル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン);金属不活性化剤;助燃剤;静電気消散剤;低温流動性向上剤;並びにワックス沈降防止剤である。
【0121】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、とりわけディーゼル燃料組成物が低い(例えば500ppmw以下の)硫黄含有率を有するときに、潤滑性強化剤を含有してもよい。添加剤を加えられたディーゼル燃料組成物では、潤滑性強化剤は好都合には、1000ppmw未満、好ましくは50〜1000ppmw、更に好ましくは70〜1000ppmwの濃度で存在する。好適な商業的に入手可能な潤滑性強化剤には、エステル−及び酸−ベースの添加剤が含まれる。他の潤滑性強化剤は、特に低硫黄含有率ディーゼル燃料でのそれらの使用に関連して、特許文献に、例えば:
− Danping Wei及びH.A.Spikesによる論文、「The Lubricity of Diesel Feuls(ディーゼル燃料の潤滑性)」、Wear、III(1986)217−235ページ;
− 国際公開第A−95/33805号パンフレット−低硫黄燃料の潤滑性を高めるための低温流動性向上剤;
− 国際公開第A−94/17160号パンフレット−ディーゼルエンジン噴射システムでの摩耗低減のための燃料添加剤としての、カルボン酸が2〜50個の炭素原子を有し、アルコールが1個以上の炭素原子を有するカルボン酸とアルコールとのある種のエステル、特にグリセロールモノオレエート及びアジピン酸ジ−イソデシル;
− 米国特許第5,490,864号明細書−低硫黄ディーゼル燃料用の摩耗防止潤滑性添加剤としてのある種のジチオリン酸ジエステル−ジアルコール;並びに
− 国際公開第A−98/01516号パンフレット−特に低硫黄ディーゼル燃料に摩耗防止潤滑性効果を与えるための、少なくとも1個のカルボキシル基がそれらの芳香核に結合したある種のアルキル芳香族化合物
に記載されている。
【0122】
更に好ましくは防錆剤及び/又は腐食防止剤及び/又は潤滑性増強添加剤と組み合わせて、消泡剤を含有することはまた、ディーゼル燃料組成物にとって好ましい可能性がある。
【0123】
特に明記しない限り、添加剤を加えられたディーゼル燃料組成物中の各かかる添加剤成分の(活性成分)濃度は、好ましくは10000ppmw以下であり、更に好ましくは0.1〜1000ppmw、有利には0.1〜150ppmwなどの、0.1〜300ppmwの範囲にある。
【0124】
ディーゼル燃料組成物中の任意の曇り防止剤の(活性成分)濃度は、好ましくは0.1〜20ppmw、更に好ましくは1〜15ppmw、なお更に好ましくは1〜10ppmw、有利には1〜5ppmwの範囲である。存在する任意の点火向上剤の(活性成分)濃度は、好ましくは2600ppmw以下、更に好ましくは2000ppmw以下、好都合には300〜1500ppmwである。ディーゼル燃料組成物中の任意の洗浄剤の(活性成分)濃度は、好ましくは5〜1500ppmw、更に好ましくは10〜750ppmw、最も好ましくは20〜500ppmwの範囲である。
【0125】
ディーゼル燃料組成物の場合には、例えば、燃料添加剤混合物は一般的には、任意に上記の他の成分と一緒に、洗浄剤と、ディーゼル燃料相溶性希釈剤とを含有するし、これは、鉱油、商標「SHELLSOL」でShell社によって販売されるものなどの溶剤、エステルなどの極性溶剤並びに、特に、アルコール、例えばヘキサノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール及び商標「LINEVOL」、とりわけC7〜9第一級アルコールの混合物であるLINEVOL79アルコールでShell companyによって販売されるものなどのアルコール混合物、又は商業的に入手可能なC12〜14アルコール混合物であってよい。
【0126】
ディーゼル燃料組成物中の添加剤の全含有率は好適には、0〜10000ppmw、好ましくは5000ppmw未満であってよい。
【0127】
上記において、成分の量(濃度、%vol、ppmw、%wt)は、活性成分のもの、即ち揮発性溶剤/希釈剤材料を除いたものである。
【0128】
本発明の液体燃料組成物は、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を、内燃機関での使用に好適なベース燃料と混ぜ合わせることによって生成する。1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が混ぜ合わせられるベース燃料がガソリンである場合、生成される液体燃料組成物はガソリン組成物であり;同様に、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が混ぜ合わせられるベース燃料がディーゼル燃料である場合、生成される液体燃料組成物はディーゼル燃料組成物である。
【0129】
好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の量は、液体燃料組成物の総重量を基準として、少なくとも1ppmw(重量で百万当たりの部)である。更に好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の量は、下にリストされるパラメーター(i)から(xx)の1つ以上と一致する:
(i)少なくとも10ppmw
(ii)少なくとも20ppmw
(iii)少なくとも30ppmw
(iv)少なくとも40ppmw
(v)少なくとも50ppmw
(vi)少なくとも60ppmw
(vii)少なくとも70ppmw
(viii)少なくとも80ppmw
(ix)少なくとも90ppmw
(x)少なくとも100ppmw
(xi)20%wt.以下
(xii)18%wt.以下
(xiii)16%wt.以下
(xiv)14%wt.以下
(xv)12%wt.以下
(xvi)10%wt.以下
(xvii)8%wt.以下
(xviii)6%wt.以下
(xix)4%wt.以下
(xx)2%wt.以下
【0130】
好都合には、本発明の液体燃料組成物中に存在する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の量はまた、少なくとも200ppmw、少なくとも300ppmw、少なくとも400ppmw、少なくとも500ppmw、又は更に少なくとも1000ppmwであってよい。
【0131】
意外にも、液体燃料組成物での1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用は、液体ベース燃料に対して、液体燃料組成物がガソリンであるときに特に、液体燃料組成物の改善された潤滑性の観点から顕著な利益を提供できることが分かった。
【0132】
本明細書で用いられる用語「改善された/向上する潤滑性」とは、高周波往復リグ(HFRR)を使用して生成される摩耗傷跡が減少することを意味する。
【0133】
液体燃料組成物での1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用はまた、液体ベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明の液体燃料組成物を燃料供給されつつある内燃機関のエンジン清浄度の観点から、特に改善された入口弁沈着清浄性保持及び/又は噴射装置ノズル清浄性保持性能の観点から、利益を提供できることが更に分かった。
【0134】
用語「改善された/向上する入口弁沈着清浄性保持性能」とは、エンジンの入口弁上に形成された沈着物の重量が、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含有しないベース燃料と比べて減少することを意味する。
【0135】
用語「改善された/向上する噴射装置ノズル清浄性保持性能」とは、エンジンの噴射装置ノズル上に形成された沈着物の量が、エンジントルクの損失によって測定されるように減少することを意味する。
【0136】
液体燃料組成物での1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用はまた、液体ベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明の液体燃料組成物を燃料供給されつつある内燃機関の向上した燃料節約の観点から、利益を提供できることが更に分かった。
【0137】
本発明はそれ故また、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要部と混ぜ合わせることを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の潤滑性の改善方法と、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要部と混ぜ合わせることを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の入口弁沈着清浄性向上性能の改善方法と、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要部と混ぜ合わせることを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の噴射装置ノズル清浄性保持性能の改善方法と、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要部と混ぜ合わせることを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の燃料節約性能の改善方法と、を提供する。
【0138】
液体燃料組成物での1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用はまた、液体ベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明の液体燃料組成物を燃料供給されつつある内燃機関の潤滑油性能を改善するという観点から、利益を提供できることが更に分かった。
【0139】
特に、本発明による液体燃料組成物を燃料供給される内燃機関の潤滑油性能の改善は、ロッカーアームカバー、カムバッフル、タイミングチェーンカバー、オイルパン、オイルパンバッフル、及びバブルデッキ上のスラッジ、並びにピストンスカート及びカムバッフル上のワニスなどの、特定のエンジン部品上のスラッジ及びワニスのレベルの低下によって観察することができる。
【0140】
特に、ガソリン組成物での1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用は、ガソリンベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明のガソリン組成物を燃料供給されつつある内燃機関の、ASTM D 6593−07によって測定されるような、特定のスラッジ及びワニス沈着物形成を抑制するという観点から、利益を提供できることが分かった。
【0141】
それ故、本発明はまた、内燃機関の潤滑油の性能の改善方法であって、エンジン潤滑油を含有する内燃機関に本発明による液体燃料組成物を燃料供給することを含む前記方法を提供する。
【0142】
アニオンが硫黄を含有しないアニオンである1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の液体燃料組成物での使用は、アニオンが硫黄含有アニオンである1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が液体燃料組成物に使用されるときのエンジン潤滑油のリン揮発度特性と比較して本液体燃料組成物を燃料供給される内燃機関のエンジン潤滑油の改善されたリン揮発度特性という追加の利点を持ち得ることがまた観察された。
【0143】
エンジン潤滑油のリン揮発度特性は好都合には、「Selby−Noack PEI試験」としても知られる、リン排出指数(PEI)試験に従って測定することができる。この試験は、その教示が特定の参照により本明細書によって援用される、T.W.Selby,R.J.Bosch and D.C.Fee,「Continued Studies of the Causes of Engine Oil,Phosphorus Volatility−Part 2」SAE 2007−01−1073に記載されたものである。「Selby−Noack PEI試験」は、ASTM D 5800、手順Cに記載されているような「Noack手順」に似ているが、継続期間(Noack手順についての24時間の代わりに16時間)及び温度(Noack手順については250℃)の点が異なる。PEIは流体の1kgから得られるリンの量(mg)の近似値であるので、それは単位を持たない。用語「改善されたリン揮発度特性」とは、PEIがそれと比較されるPEI結果より低いことを意味する。
【0144】
それ故、本発明はまた、アニオンが硫黄含有アニオンである1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が液体燃料組成物に使用されるときのエンジン潤滑油のリン揮発度特性と比較して、本液体燃料組成物を燃料供給される内燃機関のエンジン潤滑油のリン揮発度特性を改善するために、本発明による液体燃料組成物中のアニオンが硫黄を含有しないアニオンである1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用を提供する。
【0145】
本発明は更に、本発明による液体燃料組成物をエンジンの燃焼室へ導入することを含む、内燃機関の運転方法を提供する。
【0146】
本発明の1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、また好都合には、潤滑油調合物、とりわけエンジンクランク室潤滑油調合物へ組み込まれてもよい。
【0147】
本発明は、以下の実施例から更に理解されるであろう。特に明記しない限り、実施例に開示される全ての量及び濃度は、完全に調合された燃料組成物の重量を基準としている。
【実施例】
【0148】
実施例1〜41では、2つの異なる商業的に入手可能な超分散剤を使用し、これらの超分散剤は、アニオンがメチルスルフェートアニオンである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体であり、本発明によれば商品名「CH−5」及び「CH−7」でShanghai Sanzheng Polymer Companyから商業的に入手可能な製品であった。CH−5及びCH−7の両方のある種の測定された特性を下の表1に示す。




【0149】
【表1】

【0150】
実施例1〜39及び比較例A〜D
上記のCH−5及びCH−7超分散剤を、様々な量で、下の表2及び3に記載されるガソリン、ディーゼル、GTLディーゼル及びSwedish Class Iディーゼルベース燃料から選択されるベース燃料にブレンドした。

















【0151】
【表2】

【0152】
【表3】

【0153】
上記の液体燃料組成物の潤滑性を評価するために、以下の試験手順を用いた。
【0154】
ディーゼル燃料組成物の潤滑性は、ISO 12156−1に記載される、使用されるHFRR試験を用いて測定した。
【0155】
ガソリン組成物の潤滑性は、修正HFRR試験を用いることによって測定した。修正HFRR試験は、ISO 12156−1に基づき、PCS機器ガソリン転化キット(PCS Instruments Gasoline Conversion Kit)で補充されたPCS機器HFRRを用い、及び15.0ml(±0.2ml)の流体容量、25.0℃(±1℃)の流体温度を用い、そしてここで、蒸発を最小限にするために試験サンプルを覆うPTFEカバーを使用している。
【0156】
潤滑性試験の結果を下の表4に示す。






















【0157】
【表4】



【0158】
表4の結果から理解できるように、摩耗傷跡の減少がベース燃料と比較してCH−5及びCH−7超分散剤を含有する燃料組成物(ガソリン及びディーゼル燃料組成物の両方)についてのHFRR試験において観察され、それは、ベース燃料と比較して、超分散剤を含有する燃料の潤滑性の改善を表す。
【0159】
実施例40
入口弁沈着(IVD)清浄性保持試験を、下の表5に記載されるような、ベースガソリンを400ppmw及び1000ppmwのCH−5超分散剤とブレンドすることによって調製された、2つのガソリン組成物について行った。


【0160】
【表5】

【0161】
IVD試験は、下の表6に詳述されるトルク条件に、BMEPによって修正されたCEC−F−05−A−93 M102E運転サイクルを用いて、トヨタ2.0 L 3S−FEベンチエンジンで行った。トヨタエンジンは、1つがシリンダー1及び2に燃料供給し、2つめがシリンダー3及び4に燃料供給する、2つの燃料システムを同時に運転するために改造された。エンジンはきれいな弁及び燃焼室でスタートし、試験燃料で69時間運転する。69時間の終わりにエンジンを解体し、沈着物のレベルを測定するために弁を秤量する。

【0162】
【表6】

【0163】
それぞれ400及び1000ppmwのCH−5を含有するガソリンをトヨタ3S−FE複式燃料供給エンジンで試験し、シリンダー1及び2に400ppmwのCH−5ガソリン試験ブレンド、並びにシリンダー3及び4に1000ppmwのCH−5ガソリン試験ブレンドを使用した。
【0164】
シリンダー1及び2についての入口弁沈着物の平均重量は194.6mgであり、シリンダー3及び4については130.0mgであった。69時間試験で添加剤を全く含有しないガソリンで観察された沈着物の平均レベルは、一般的には約200mgである。
【0165】
実施例41
ディーゼル燃料中のCH−5超分散剤の噴射装置ノズル清浄性保持性能は、CEC SG−F−098試験手順を用いて評価した。この試験手順に使用したディーゼル燃料は、300ppmwのCH−5超分散剤を含有した。この試験で、24時間まで動力損失は全く観察されず、32時間で3%に一致する動力損失が観察された。この時点で標準燃料についての等価動力損失は9%であった。
【0166】
硫黄を含有しないポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の製造
実施例E
商品名「CH−5」でShanghai Sanzheng Polymer Companyから商業的に入手可能な8グラムのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を140mlのジクロロメタン(DCM)に撹拌しながら溶解させた。得られた混合物を110mlのDCMで更に希釈し、250mlの1M KOH溶液を含有する分離漏斗に加えた。
【0167】
分離漏斗を振盪し、2層間できれいな分離があるまで放置した。有機最下層を集め、分離漏斗中の250mlの新鮮な1M KOHに加えた。再び、有機最下層を集め、MgSO上で乾燥させ、真空で濃縮した。アニオンXq−がOHである約6グラムのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。
【0168】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、7.4mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0169】
実施例F
「CH−5」製品(実施例Eを参照されたい)を、1:3のMeOH:CHClを溶出液として使用しながら、イオン交換カラムでサリチル酸ナトリウム(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)とイオン交換させた。
【0170】
この目的のために、カラムを、1リットルの脱イオン水で洗浄した500グラムのDowex 1×8イオン交換樹脂(200〜400メッシュ、強塩基性Cl形;CAS登録番号[69011−19−4])を使用して準備した。洗浄したDowex樹脂を次に、1リットルの1:1MeOH:脱イオン水を使用してカラムに懸濁液としてロードした。樹脂を次に4床容量の1:1メタノール/脱イオン水で洗浄し、少量のMeOH中のサリチル酸ナトリウム塩の30重量%溶液をロードした。
【0171】
樹脂のその後の極性変化を以下の順で行った:2×4床容量の1:1MeOH/脱イオン水;1×4床容量のMeOH;4床容量の3:1、次に1:1、次に1:3のMeOH:クロロホルム。
【0172】
220グラムの「CH−5」製品を最小量の溶出液(1:3MeOH:クロロホルム)に溶解させ、カラムにロードした。適切な染色技法を用いる薄層クロマトグラフィーを用いて溶出を追跡しながら、カラムを溶出した。溶出液を集め、乾固まで真空で濃縮してアニオンXq−がサリチレートである、約200グラムのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。
【0173】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、8.2mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0174】
実施例G
実施例Fと同様に、アニオンXq−がフェノキシドである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。この目的のためにナトリウムフェノキシド(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)を使用した。
【0175】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、8.5mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0176】
実施例H
実施例Fと同様に、アニオンXq−がオレエートである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。この目的のためにオレイン酸ナトリウム(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)を使用した。
【0177】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、7.9mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0178】
実施例I
実施例Fと同様に、アニオンXq−がアセテートである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。この目的のために酢酸ナトリウム(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)を使用した。
【0179】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、8.5mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0180】
エンジン潤滑油性能
本発明による液体燃料組成物を使用して燃料供給されるエンジンのクランク室潤滑油の性能を、Sequence VG試験、ASTM D 6593−07を用いて評価した。
【0181】
2つの別個のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を、Sequence VG試験を用いて評価した。両方のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体のために使用されたベース燃料は、ASTM VGベース燃料であった。
・燃料「Base」は、ASTM VGベース燃料である。
・燃料「F−A」は、「Base」+500ppmwの「CH−5」である。
・燃料「F−B」は、「Base」+200ppmwの実施例Fである。
・潤滑油「L−A」は、SFグレード潤滑油である。
・潤滑油「L−B」は、SL/CFグレード潤滑油である。
【0182】
Sequence VG試験の結果を下の表7に示す。結果で用いられる「メリット」格付けは、10が新しいときの構成部品の状態の格付けを表して、0〜10の尺度であり、「メリット」格付けの一つの数字の増加は、半分だけのスラッジ又はワニスの減少を表す。
【0183】
【表7】

【0184】
上の表7に示される結果から明らかに理解できるように、ガソリン組成物でのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用は、スラッジ及びワニス沈着物形成の抑制の観点から、潤滑油の性能に顕著な改善をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0185】
【特許文献1】欧州特許第0 164 817号
【特許文献2】欧州特許出願公開第A−0583836号
【特許文献3】欧州特許出願公開第A−1101813号
【特許文献4】欧州特許出願公開第A−0147240号
【特許文献5】欧州特許出願公開第A−0482253号
【特許文献6】欧州特許出願公開第A−0613938号
【特許文献7】欧州特許出願公開第A−0557516号
【特許文献8】欧州特許出願公開第0802255 A2号
【特許文献9】欧州特許出願公開第0233684 A1号
【特許文献10】欧州特許出願公開第0164817 A2号
【特許文献11】国際公開第95/17473号
【特許文献12】国際公開第96/07689号
【特許文献13】国際公開第A−97/14768号
【特許文献14】国際公開第A−97/14769号、
【特許文献15】国際公開第A−00/11116号
【特許文献16】国際公開第A−00/11117号
【特許文献17】国際公開第A−01/83406号
【特許文献18】国際公開第A−01/83648号
【特許文献19】国際公開第A−01/83647号
【特許文献20】国際公開第A−98/42808号
【特許文献21】国際公開第A−98/01516号
【特許文献22】米国特許第5,536,445号
【特許文献23】米国特許第5 000 792号
【特許文献24】米国特許第4 349 389号
【特許文献25】米国特許第3,996,059号
【特許文献26】米国特許第3 275 554号
【特許文献27】米国特許第3 438 757号
【特許文献28】米国特許第3 454 555号
【特許文献29】米国特許第3 565 804号
【特許文献30】米国特許第3 755 433号
【特許文献31】米国特許第3 822 209号
【特許文献32】米国特許第5766274号
【特許文献33】米国特許第5378348号
【特許文献34】米国特許第5888376号
【特許文献35】米国特許第6204426号
【特許文献36】米国特許第5,490,864号
【特許文献37】米国特許第5,855,629号
【特許文献38】米国特許第4,208,190号
【特許文献39】英国特許第2 001 083号
【特許文献40】英国特許第1 342 746号
【特許文献41】英国特許第1 373 660号
【特許文献42】英国特許出願公開第2197312 A号
【特許文献43】GB−A−960493
【非特許文献】
【0186】
【非特許文献1】Danping Wei及びH.A.Spikesによる論文、「The Lubricity of Diesel Feuls(ディーゼル燃料の潤滑性)」、Wear、III(1986)217−235ページ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 内燃機関での使用に好適なベース燃料と;
− 式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq− (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、rは0又は1であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−はアニオンである)
を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体と、
を含む、液体燃料組成物。
【請求項2】
本発明の前記液体燃料組成物中に存在する前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の量が、前記液体燃料組成物の総重量を基準として、少なくとも1ppmwである、請求項1に記載の液体燃料組成物。
【請求項3】
本発明の前記液体燃料組成物中に存在する前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の量が、前記液体燃料組成物の総重量を基準として、10ppmw〜20%wtの範囲にある、請求項2に記載の液体燃料組成物。
【請求項4】
前記アニオン、Xq−が硫黄を含有しないアニオンであり、好ましくは、前記アニオンXq−が、カルボン酸基を含有する化合物に由来するアニオン、ヒドロキシル基を含有する化合物に由来するアニオン、窒素ベースのアニオン、リンベースのアニオン、及びそれらの混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項5】
前記アニオン、Xq−が硫黄ベースのアニオンであり、好ましくは前記アニオン、Xq−が、スルフェート、スルホネート及びそれらの混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項6】
前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が、前記ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の総重量を基準として、0.1〜2.0重量%の範囲の硫黄含有率を有する、請求項5に記載の液体燃料組成物。
【請求項7】
前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が10mg.KOH/g未満のTBN(全塩基価)値を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項8】
前記ベース燃料がガソリンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項9】
前記ベース燃料がディーゼル燃料である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体燃料組成物をエンジンの燃焼室へ導入することを含む、内燃機関の運転方法。

【公表番号】特表2011−529515(P2011−529515A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520498(P2011−520498)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059784
【国際公開番号】WO2010/012756
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP