説明

液体状態検知センサ

【課題】 分解能の低いAD変換器を用いながらも、液体の状態を検知するのに用いるデジタル値を良好な精度で取得できる液体状態検知センサを提供する。
【解決手段】 液体状態検知センサ100は、素子151、本通電を行う本通電手段CC1、本通電によりデジタル素子電圧値Vd1b,Vd1cを取得するデジタル値取得手段190,CC2,CC3,CC4と、液体濃度NCを検知する手段S16と、を備え、定倍素子電圧Va1bを、基礎電圧部分Va4aと検知電圧部分Va6bとからなるとしたとき、デジタル値取得手段は、基礎電圧部分設定手段CC3で、基礎電圧部分を設定して、検知電圧部分を検知電圧AD変換手段190でAD変換可能な大きさとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の状態(温度および液体中に含まれる特定成分の濃度)を検知する液体状態検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばディーゼル自動車から排出される窒素酸化物を無害なガスに還元する手段として、排ガス浄化装置にNOx選択還元(SCR)触媒を用いるものが提案されており、その還元剤として尿素水溶液が利用されている。この還元反応を効率よく行うためには、尿素水溶液の尿素濃度を32.5wt%付近の値とするのが好ましい。しかし、自動車に搭載される尿素水タンクに収容される尿素水溶液は、経時変化などにより尿素濃度が変化する場合がある。また、尿素水タンクに、誤って異種水溶液や水を混入してしまう虞がある。こうした事情から、尿素水溶液の尿素濃度を検知可能な液体状態検知センサが用いることが提案されている。
【0003】
この尿素濃度を検知する原理としては以下が知られている。即ち、尿素水溶液は、その尿素濃度に応じて熱伝導率が変化する。そこで、特許文献1に開示された液体状態検知センサでは、発熱体(発熱抵抗体)とこれに付随する感温体(温度検知体)とを有するセンサ素子を用い、発熱抵抗体に所定時間の通電を行う。そして、その通電の前後に温度検知体で尿素水溶液の温度測定を行って温度変化を求め、尿素濃度と温度変化との相対関係から熱伝導率を、さらには尿素濃度を測定している。より具体的には、発熱抵抗体への通電の前後に、温度検知体に通電を行って、その抵抗に応じて温度検知体に生じる電圧をそれぞれ取得し、これらの電圧の差分を求めて、尿素濃度とこの電圧の差分との相関関係から尿素濃度を算出している。
【0004】
なお、尿素濃度と通電による温度変化との相関関係は、尿素水溶液の温度にも依存する。そこで、特許文献1の液体状態検知センサでは、他の感温体(温度検知体)を用いて尿素水溶液の温度を測定し、この温度毎に、尿素濃度と温度変化との相関関係に基づいて、尿素濃度を検知している。より具体的には、尿素水溶液の温度は、他の温度検知体に通電を行って、これに発生する電圧と温度との相関関係から求めている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−84026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に記載の液体状態検知センサでは、尿素濃度および尿素水溶液の温度は、温度検知体に発生する電圧からそれぞれ算出する。また、これらを算出するにあたり、温度検知体に発生する電圧を、所定の分解能(例えば12bit)を有するAD変換器を用いて、アナログ電圧信号をデジタル信号化する。
しかしながら、この特許文献1に記載の液体状態検知センサでは、温度検知体で発生する電圧を1つのAD変換器でデジタル値に変換しているので、この尿素濃度および尿素水溶液の温度を精度良く検知するには、より高い分解能のAD変換器を用いる必要がある。しかるに、bit数の多い高分解能のAD変換器は、相対的に低い分解能のものよりも価格が高く、液体状態検知センサの高コスト化を招来する。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、分解能の低いAD変換器を用いながらも、液体の状態を検知するのに用いるデジタル値を良好な精度で取得できる液体状態検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、その解決手段は、液体の状態に応じて特性が変化する素子と、上記素子に本通電を行う本通電手段と、上記本通電により上記素子に生じる素子電圧に基づいて、これに対応するデジタル素子電圧値を取得するデジタル値取得手段と、上記デジタル素子電圧値を用いて、上記液体の状態を検知する状態検知手段と、を備える液体状態検知センサであって、上記素子電圧の定数倍の大きさの定倍素子電圧を、基礎電圧部分と上記定倍素子電圧より大きさの小さい検知電圧部分とからなるとしたとき、上記デジタル値取得手段は、上記基礎電圧部分を設定する基礎電圧部分設定手段、上記定倍素子電圧と上記基礎電圧部分とに基づいて、上記検知電圧部分の定数倍の検知電圧を生成する検知電圧生成手段、および、上記検知電圧をAD変換してデジタル検知電圧値を生成する検知電圧AD変換手段、を含み、上記検知電圧AD変換手段は、AD変換可能な変換可能電圧範囲を有し、上記基礎電圧部分設定手段は、上記検知電圧が上記変換可能電圧範囲に収まる大きさとなるように、上記基礎電圧部分の大きさを設定する液体状態検知センサである。
【0009】
本発明の液体状態検知センサでは、デジタル値取得手段において、素子電圧あるいは定倍素子電圧そのものをAD変換してデジタル値を得るのではなく、この定倍素子電圧を、基礎電圧部分と、この定倍素子電圧よりも小さい検知電圧部分とからなると考え、このうちの検知電圧部分を定数倍してなる検知電圧をAD変換してデジタル検知電圧値を得る。
なお、定倍素子電圧全体に対応するデジタル値は、設定した基礎電圧部分に相当するデジタル値と、デジタル検知電圧値とから構成されることになる。
このように相対的に小さい検知電圧部分(検知電圧)をAD変換することで、同じビット数のAD変換器を用いたとしても、定倍素子電圧全体をAD変換する場合よりも、精度の良いデジタル検知電圧、ひいては、デジタル素子電圧値を得ることができる。あるいは、ビット数の少ない安価なAD変換器を用いて、同程度の精度を得ることができる。
【0010】
なお、液体の状態に応じて特性が変化する素子としては、例えば、温度によって抵抗値が変化する特性を有する抵抗体で構成され、抵抗値から液温を検知し、あるいは、自身又は別途用意したヒータ素子を発熱させ、その前後での抵抗値の変化から、液体中の特性成分の濃度や液体の種別等を検知するものが挙げられる。
また、素子電圧の定数倍の大きさの定倍素子電圧としては、1倍(素子電圧そのもの)を含む、素子電圧の定数倍(例えば、素子電圧の1倍、2倍、1/2倍、等)の大きさの電圧が挙げられる。また、検知電圧としては、1倍(検知電圧部分そのもの)を含む、検知電圧部分の定数倍(例えば、検知電圧部分の1倍、2倍、1/2倍、等)の大きさの電圧が挙げられる。
また、基礎電圧部分としては、定倍素子電圧よりも小さくても大きくても良い。なお、基礎電圧部分が定倍素子電圧よりも大きい場合には、検知電圧部分を負として認識すれば良い。
また、基礎電圧部分設定手段で設定する基礎電圧部分は、固定であっても適宜のタイミングで変更しても良い。変更する場合、そのタイミングとしては、本通電手段による本通電およびデジタル素子電圧を取得するのに先立って、何らかの情報を基に、素子電圧の大きさを予測するなどして、基礎電圧部分の設定を行うと良い。例えば、本通電の直前に素子に先行通電を行い、素子に生じた先行素子電圧に基づいて、基礎電圧部分の設定を行う手法が挙げられる。また、繰り返しデジタル素子電圧値を取得する場合には、前回取得したデジタル素子電圧値を用いて、あるいはこれと前回用いた基礎電圧部分の値を用いて、新たな基礎電圧部分の設定を行う手法も挙げられる。
さらに、デジタル素子電圧値全体を得るには、デジタル検知電圧値のほかに、基礎電圧部分に相当するデジタル値(確認用デジタル基礎電圧値)を得ておく必要がある。具体的には、基礎電圧部分を設定するときに用いるデジタル値を用いる手法が挙げられる。また、別途、設定された基礎電圧部分をAD変換して確認用デジタル基礎電圧値を得る手法が挙げられる。
【0011】
さらに、上述の液体状態検知センサであって、前記本通電手段による前記素子への前記本通電によって前記デジタル素子電圧値を取得するに先立ち、上記素子に先行通電する先行通電手段を備え、前記基礎電圧部分設定手段は、上記先行通電手段による上記先行通電により上記素子に生じる先行素子電圧に基づいて、前記基礎電圧部分の大きさを設定する液体状態検知センサとすると良い。
【0012】
本発明では、先行通電手段により先行通電し、素子に生じる先行素子電圧に基づいて基礎電圧部分の大きさを設定するので、適切な値を基礎電圧部分に設定することができる。従って、液体の液温や濃度が変化しても、予め検知電圧部分(検知電圧)の大きさを適切に設定することができ、精度の良いデジタル検知電圧値、ひいてはデジタル素子電圧値を適切に得ることができる。
【0013】
なお、先行通電手段は、本通電手段と共通に用いても良いし、異なる回路等により実現しても良い。先行通電の後に液体の状態が変化することにより、結果として不適切な基礎電圧部分の設定となることを抑制するため、素子への先行通電は、本通電手段による本通電の直前に行うのが好ましく、先行通電手段による先行通電に引き続いて、本通電を行っても良い。
【0014】
さらに、上述の液体状態検知センサであって、前記先行通電手段は、前記素子への先行通電時に、前記本通電手段による本通電時に流す電流よりも小さい電流を上記素子に流す液体状態検知センサとすると良い。
【0015】
本発明の液体状態検知センサでは、先行通電手段により素子に流す電流を、本通電手段で流す電流より小さくしている。このため、先行通電によって素子に生じる発熱を、本通電時より小さくすることができる。従って、本通電では、先の先行通電で生じた素子の発熱による影響を抑制して、液体の濃度などの状態を適切に反映した、素子電圧をさらにはデジタル素子電圧値を得ることができる。
【0016】
さらに、上述の液体状態検知センサであって、この液体状態検知センサは、繰り返し前記液体の前記状態を検知するものであり、前記先行通電手段は、前記本通電を行う毎に、これに先立って、前記素子に先行通電し、前記基礎電圧部分設定手段は、上記先行通電手段による先行通電毎に、上記素子に生じる前記先行素子電圧に基づいて、前記基礎電圧部分の大きさを設定する液体状態検知センサとすると良い。
【0017】
本発明の液体状態検知センサでは、本通電を行う毎に、これに先立ち先行通電手段によって素子を先行通電する。そして、先行通電で生じる先行素子電圧に基づいて、基礎電圧部分の大きさを設定する。こうすることにより、各本通電前に、液体状態の変化に応じ、適切な大きさの基礎電圧部分を設定できるので、適切な大きさの検知電圧を得ることができ、この検知電圧から精度の良いデジタル検知電圧値を、さらには精度の良いデジタル素子電圧値を確実に得ることができる。
【0018】
あるいは、前述の液体状態検知センサであって、この液体状態検知センサは、繰り返し前記液体の前記状態を検知するものであり、前記基礎電圧部分設定手段は、前回の検知で得た前記デジタル素子電圧値に基づいて、前記基礎電圧部分の大きさを設定する液体状態検知センサとすると良い。
【0019】
本発明の液体状態検知センサでは、前回の状態検知の際に得たデジタル素子電圧値を基に、基礎電圧部分の大きさを設定する。従って、検知に先立って、先行通電を行う必要がなく、先行通電に伴う影響を生じることがない。その一方で、液体の状態変化に応じて、毎回基礎電圧部分の大きさを適切に設定できるので、精度の良いデジタル素子電圧値を確実に得ることができる。
【0020】
さらに、上述の液体状態検知センサであって、前記素子は、温度によって抵抗値が変化する特性を有する抵抗体からなり、自身またはヒータ素子への通電により発生する熱によって、自身の抵抗値に変化を生じる抵抗素子である液体状態検知センサとすると良い。
【0021】
本発明の液体状態検知センサでは、温度によって抵抗値が変化する特性を有する抵抗体からなる抵抗素子を用いて、自身の抵抗値を検知する。従って、このセンサによれば、液温のほか、自身あるいはヒータ素子の発熱を利用して、液体中の特定成分の濃度や液体の種別等を検知することができるから、これらの検知を、精度良くあるいは安価に行うこともできる。
なお、抵抗素子としては、別途に有するヒータ素子への通電によってこれを発熱させ、液体を通じて伝わる熱による抵抗値の変化を用いる、いわゆる傍熱型の素子が挙げられる。また、自身に通電して発生させた熱を周囲の液体に伝えて液体中の特定成分の濃度等の違いによる素子の抵抗値の違い等を用いる、いわゆる自己発熱型の素子も挙げられる。
【0022】
さらに、上述の液体状態検知センサであって、前記検知電圧生成手段は、前記定倍素子電圧と前記基礎電圧部分との差分に対応する差分電圧を得る差動増幅器を含む液体状態検知センサとすると良い。
【0023】
本発明の液体状態検知センサでは、検知電圧生成手段に差動増幅器を含むので、定倍素子電圧と基礎電圧部分との差分、つまり検知電圧部分に相当する差分電圧を、またこれに基づいて、検知電圧を、容易に得ることができる。
【0024】
なお、差動増幅器としては、定倍素子電圧と基礎電圧部分との差分そのものを差分電圧として出力する場合(増幅率が1倍)のほか、差分の1倍以外の定数倍を差分電圧として出力する場合も含む。また、この差分電圧をそのまま検知電圧としても良いし、これを定数倍して検知電圧としても良い。
【0025】
さらに、上述の液体状態検知センサであって、前記デジタル値取得手段は、前記基礎電圧部分設定手段で設定された前記基礎電圧部分を定数倍した基礎電圧を、AD変換して確認用デジタル基礎電圧値を生成する基礎電圧AD変換手段を含む液体状態検知センサとすると良い。
【0026】
本発明の液体状態検知センサでは、基礎電圧をAD変換して確認用デジタル基礎電圧値を生成するので、基礎電圧設定手段で設定した基礎電圧部分(基礎電圧)が、設定の通り正しい値となっているかどうかを、確認用デジタル基礎電圧値で確認することができる。
なお、これで得た確認用デジタル基礎電圧値とデジタル検知電圧値を併せたものを、デジタル素子電圧値とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態1にかかる液体状態検知センサ100を示す。また、図2に液体状態検知センサ100に用いる液体状態センサ素子151を示す。さらに、図3には液体状態検知センサ100の電気的な構成を示す。なお、液体状態検知センサ100において(図1参照)、軸線AXに沿う方向(レベル検知部110の長手方向)を軸線AX方向とし、そのうち、液体状態検知部150が設けられた側(図1中、下側)を先端側、取付部120が設けられた側(図1中、上側)を基端側とする。
【0028】
この液体状態検知センサ100は、ディーゼル自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水溶液NSの状態、具体的には、液温NT、尿素濃度NCのほか、尿素水溶液NSの液面レベルNLを検知するセンサである。そして、円筒状の外筒電極111およびこの内側に配置された円筒状の内筒電極113を有するレベル検知部110と、内筒電極113の先端側に設けられた液体状態検知部150と、液体状態検知センサ100を尿素水タンクT(図3参照)に取り付けるための取付部120とを備える。
【0029】
液体状態検知センサ100の取付部120は、尿素水タンクTに液体状態検知センサ100を固定するための台座として機能する鍔部122を有する。この鍔部122の基端側(図1中、上方)には収容部123が設けられている。この収容部123には、尿素水溶液NSの液温NT、尿素濃度NC、液面レベルNLを検知するための回路や、外部にある図示しないエンジン制御装置(以下、ECUとも言う)との電気信号の入出力を行うための入出力回路等を有する回路基板130等を収容している。
【0030】
また、回路基板130および収容部123は、カバー125により覆われ保護されている。このカバー125は、鍔部122に固定されている。また、カバー125の側面には、コネクタ132が配設されており、コネクタ132と回路基板130とは、カバー125を貫通する配線ケーブル131によって電気的に接続されている。このコネクタ132を介して、回路基板130と外部のECU(図示しない)とが接続されている。その一方、回路基板130は、2本のリード線157,157を内包するケーブル158を介して、液体状態センサ素子151と電気的に接続している。
【0031】
また、レベル検知部110を構成する外筒電極111は、金属材料からなり、軸線AX方向に伸びる細長い円筒状をなす。そして、外筒電極111の先端部111sは、液体状態検知部150を包囲しつつ先端側(図1中、下方)に向けて延設され、その先端は開口している。一方、外筒電極111の基端部111kは、金属製の取付部120のうち、鍔部122から先端側に突出する電極支持部121の外周に係合した状態で溶接されている。また、レベル検知部110を構成する内筒電極113は、金属部材からなると共に、外周面が絶縁膜115にて覆われており、外筒電極111と同軸状に伸びる細長い円筒状をなしている。
【0032】
液体状態検知部150は、尿素水溶液NSの液温NTと尿素濃度NCの検知を行う液体状態センサ素子151と、この液体状態センサ素子151を支持すると共に、内筒電極113の先端部113sに装着される絶縁性のある樹脂製のホルダ161と、このホルダ161から先端側に突出する液体状態センサ素子151を覆って、これを保護するプロテクタ163とを有する。
【0033】
このうち、液体状態センサ素子151は、図2に示すように、絶縁性セラミックからなる板状のセラミック基体152に、Ptを主体とするヒータ配線156を形成し、これをもう1枚のセラミック基体153で挟んだ形態となっている。ヒータ配線156は、ジグザグ状のパターンをなし、自己の温度により抵抗値が変化する自己発熱型の温度検知部155と、これに接続する一対のリード部154とから構成されている。リード部154の基端近傍(図2中、上方)には、図示しないスルーホール導体が設けられ、リード線157にそれぞれ中継端子159を介して電気的に接続している(図1参照)。中継端子159は、絶縁性のある保護部材167により覆われて保護されている。
また、ホルダ161は、外形が概略二段円筒状をなし、小径となる先端側から、液体状態センサ素子151を突出させた状態に挿通し、接着剤165で、これを保持している(図1参照)。さらに、プロテクタ163は、金属製で有底円筒状をなし、ホルダ161の先端側の外周に嵌合されており、穿設されている図示しない流通孔により、プロテクタ163の内外で尿素水溶液NSの交換が行えるようにされている。
【0034】
次に、図3を参照して、液体状態検知センサ100の電気的な構成について説明する。
液体状態検知センサ100は、温度検知部155を含む液体状態センサ素子151を備えた液体状態検知部150を、尿素水溶液NS中に浸漬して使用する。液体状態検知センサ100の回路基板130には、マイクロコンピュータ180(以下、マイコン180とも言う)を搭載している。また回路基板130には、液体状態検知部150における液体状態センサ素子151(温度検知部155)に通電する通電回路部CC1、この液体状態センサ素子151(温度検知部155)に生じるセンサ電圧Vtを取得するセンサ電圧取得回路部CC2、基礎電圧部分設定回路部CC3、検知電圧生成回路部CC4、外部のECUとの通信を行う入出力回路部CC6、第1A/Dコンバータ190、および第2A/Dコンバータ200が搭載されている。
【0035】
このうち、マイコン180は、CPU181、ROM182、EEP−ROM183、およびRAM184から構成され、第1出力ポートP1、第2出力ポートP2、A/D入力ポートP3、第1D/A出力ポートP4、第1入力ポートP5、および、第2入力ポートP6を有する。そして、出力ポートP1,P2は通電回路部CC1と、A/D入力ポートP3はセンサ電圧取得回路部CC2と、第1D/A出力ポートP4は基礎電圧部分設定回路部CC3と、第1入力ポートP5は第1A/Dコンバータ190と、第2入力ポートP6は第2A/Dコンバータ200とそれぞれ接続している。
【0036】
これらのうちまず、通電回路部CC1について、図4を参照して説明する。この通電回路部CC1は、抵抗体R1〜R11,R31〜R34、コンデンサC1〜C3、トランジスタQ1〜Q3、電界効果トランジスタQ4、および、オペアンプIC1で構成されている。この通電回路部CC1は、第1出力ポートP1および第2出力ポートP2を通じて受けたマイコン180の指示信号によって、液体状態センサ素子151(温度検知部155)に定電流を通電する。
具体的には、マイコン180の第1出力ポートP1からの指示信号をハイレベルとすることで、トランジスタQ1およびトランジスタQ2をオンする。
一方、オペアンプIC1、トランジスタQ3、電界効果トランジスタQ4、抵抗体R5〜R11,R31〜R34、コンデンサC1〜C3は、マイコン180の第2出力ポートP2からの指示により、電界効果トランジスタQ4を通じて、定電流(300mA)を流す定電流回路を構成している。具体的には、抵抗体R9a,R9bによる抵抗分割で生じるノードN3の電圧と、電界効果トランジスタQ4を通じて流れる電流I(I1,I2)によって、抵抗体R31〜R34の合成抵抗に生じる電圧とが等しくなるように、電界効果トランジスタQ4を流れる電流Iの大きさが制御される。なお、この液体状態センサ素子151(温度検知部155)への通電を停止するには、マイコン180の第1出力ポートP1および第2出力ポートP2の少なくともいずれかの指示信号をローレベルとすればよい。
【0037】
一方、センサ電圧取得回路部CC2は、抵抗体R15〜R18を含む差動アンプIC2、抵抗体19a,19b、コンデンサC4,C5、およびダイオードD1で構成されている。
このうち、抵抗体R19a,R19b、コンデンサC5、ダイオードD1は、後述するアナログセンサ電圧Va1を、抵抗分割により適度な大きさの調整アナログセンサ電圧Va2に調整して、マイコン180のA/D入力ポートP3に入力する第1電圧調整回路部VC1を構成している。なお、コンデンサC5は電圧の高周波ノイズの吸収、ダイオードD1は過電圧に対するマイコン180(A/D入力ポートP3)の保護を行う。
【0038】
このセンサ電圧取得回路部CC2のうち差動アンプIC2では、通電によって液体状態センサ素子151の温度検知部155に生じたセンサ電圧Vtを差動入力し、これを定数倍したアナログセンサ電圧Va1を出力する。このアナログセンサ電圧Va1は、ノードN1を通じて検知電圧生成回路部CC4に出力される。そのほか、このアナログセンサ電圧Va1は、ノードN1を通じて第1電圧調整回路部VC1に供給され、所定(5V以下)の電圧範囲に収まるようにその大きさを調整される。具体的には、抵抗体R19a,R19bの抵抗値を、それぞれ4:1とし、抵抗体R19bを接地することで、アナログセンサ電圧Va1を1/5倍に抵抗分割する。そして、5V以下の調整アナログ電圧Va2を、マイコン180のA/D入力ポートP3に向けて出力する。
【0039】
なお、マイコン180では、A/D入力ポートP3に入力された調整アナログ電圧Va2をAD変換(10bit)して、センサ電圧Vtの概略の値であり、後述するデジタルセンサ電圧値Vd1より精度の低い、低精度デジタルセンサ電圧値Vd2を取得する。さらにマイコン180は、この低精度デジタルセンサ電圧値Vd2から、液体状態検知センサ100のセンサ電圧Vtを基礎電圧部分と検知電圧部分とに分けたときに、この基礎電圧部分に相当するデジタル電圧値であるデジタル基礎電圧値Vd3を設定する。このデジタル基礎電圧値Vd3を、マイコン180内でDA変換して、第1D/A出力ポートP4から基礎生成用電圧Va3として、後述する基礎電圧部分設定回路部CC3に向けて出力する。なお、デジタル基礎電圧値Vd3としては、例えば、次述するアナログ基礎電圧Va4が、アナログセンサ電圧Va1よりも所定値(例えば0.1V)だけ小さくなる値に設定する。
【0040】
次に基礎電圧部分設定回路部CC3について説明する。この基礎電圧部分設定回路部CC3は、抵抗体R20〜R22、コンデンサC6〜C8、および、オペアンブIC3で構成された増幅回路である。この基礎電圧部分設定回路部CC3には、マイコン180から、第1D/A出力ポートP4を通じて基礎生成用電圧Va3が入力される。この基礎生成用電圧Va3は、基礎電圧部分設定回路部CC3で増幅されて、アナログ基礎電圧Va4とされ、ノードN2を通して検知電圧生成回路部CC4に入力される。
【0041】
この検知電圧生成回路部CC4は、複数の抵抗体R24〜R29を含む差動アンプIC4、抵抗体R30a,R30b、コンデンサC10,C11、および、ダイオードD3で構成されている。なおこのうち、抵抗体R30a,R30b、コンデンサC11、ダイオードD3は、後述するアナログ検知電圧Va6を、抵抗分割により適度の大きさの調整アナログ検知電圧Va7に調整して、第1A/Dコンバータ190に入力する、第3電圧調整回路部VC3を構成している。
【0042】
この検知電圧生成回路部CC4のうち、差動アンプIC4には、上述したアナログセンサ電圧Va1と、アナログ基礎電圧Va4が差動入力されている。具体的には、抵抗体R24,R25の抵抗値を50kΩ、抵抗体R26〜R29の抵抗値を450kΩとして、抵抗体R25を経由してアナログセンサ電圧Va1を、差動アンプIC4の非反転入力端子に、また、抵抗体R24を経由してアナログ基礎電圧Va4を反転入力端子にそれぞれ入力する。これにより、差動アンプIC4は、アナログセンサ電圧Va1とアナログ基礎電圧Va4との差を4.5倍に定数倍した、アナログ検知電圧Va6を出力する。さらに、このアナログ検知電圧Va6は、第3電圧調整回路部VC3により、第1A/Dコンバータ190でAD変換可能な0〜5Vの電圧範囲に収まるようにその大きさが調整される。具体的には、抵抗体R30a,R30bの抵抗値を、それぞれ1:4とし、抵抗体R30bを接地することで、抵抗分割によりアナログ検知電圧Va6を4/5倍に定数倍する。この定数倍された調整アナログ検知電圧Va7を、第1A/Dコンバータ190に出力する。
【0043】
この第1A/Dコンバータ190では、入力された調整アナログ検知電圧Va7を、デジタル検知電圧値Vd7にAD変換し、第1入力ポートP5を通じて、マイコン180に入力する。この第1A/Dコンバータ190の分解能は12bitである。
【0044】
次いで、第2電圧調整回路部VC2について説明する。この第2電圧調整回路部VC2は、抵抗体R23a,R23b、コンデンサC9、ダイオードD2で構成されている。この第2電圧調整回路部VC2は、ノードN2を通じて入力され、基礎電圧部分設定回路部CC3から出力されたアナログ基礎電圧Va4について、第2A/Dコンバータ200でAD変換可能な0〜5Vの電圧範囲に収まるように、その大きさを調整する。具体的には、抵抗体R23a,R23bの抵抗値の比を、それぞれ3:2とし、抵抗体R23bを接地することで、アナログ基礎電圧Va4を2/5倍に小さく調整して調整基礎電圧Va5を生成し、第2A/Dコンバータ200に向けて出力する。
【0045】
第2A/Dコンバータ200(12bit)では、この調整基礎電圧Va5をAD変換して、確認用デジタル基礎電圧値Vd5を得、これを第2入力ポートP6を通じてマイコン180に出力する。これにより、マイコン180は、上述の基礎電圧設定回路部CC3を用いて設定したアナログ基礎電圧Va4が、設定の通り正しい値となっているかどうかを、マイコン180自身が持つデジタル基礎電圧値Vd3と調整基礎電圧Va5とを照らし合わせて、確認することができる。
【0046】
このマイコン180に入力されたデジタル検知電圧値Vd7と、マイコン180内で設定したデジタル基礎電圧値Vd3とで、デジタルセンサ電圧値Vd1が構成されると考えることができ、これが温度検知部155のセンサ電圧Vtのデジタル値に対応する。
さらに、マイコン180と接続している入出力回路部CC6(図3参照)は、液体状態検知センサ100と外部のECUとの間で信号の入出力を行う。
【0047】
次いで、本実施形態1の液体状態検知センサ100を用いた、尿素水溶液NSの液温NTおよび尿素濃度NCの測定手順について、図5のフローチャート、および図6の通電電流および電圧の経時変化を示す説明図を参照しつつ説明する。
【0048】
まず、ステップS1で、液体状態検知センサ100における液体状態センサ素子151の温度検知部155に先行通電を開始する。具体的には、マイコン180からの信号により通電回路部CC1を通じて先行通電を開始し、この温度検知部155に300mAの定電流I1を流す。
ステップS2では、先行通電を開始してから10ms経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち通電開始から10ms経過していない場合、ステップS2を繰り返し、通電開始から10ms経過するのを待つ。一方、YES、即ち通電開始から10ms経過した場合には、ステップS3に進む。
ステップS3において、マイコン180は、先行通電中の温度検知部155のセンサ電圧Vtaおよびセンサ電圧取得回路部CC2で定数倍したアナログセンサ電圧Va1aを基に、低精度デジタルセンサ電圧値Vd2aを取得する。そして、ステップS4で先行通電を停止する。
なお、この低精度デジタルセンサ電圧値Vd2aを用いて、液体状態センサ素子151(温度検知部155)の抵抗値から、尿素水溶液NSの液温NTの概略値を得ても良い。短時間(10ms)だけ先行通電した状態での温度検知部155の温度は、尿素水溶液NSの液温NTとほぼ同じと考えられるからである。
【0049】
その後、ステップS5として、マイコン180内で、取得した低精度デジタルセンサ電圧値Vd2aから、デジタル基礎電圧値Vd3aを設定する。このデジタル基礎電圧値Vd3aは、後述するデジタルセンサ電圧値Vd1b,Vd1cの基礎電圧部分としてマイコン180内に記憶され更新まで維持される。
次いでマイコン180では、設定したデジタル基礎電圧値Vd3aをDA変換し、第1D/A出力ポートP4を通じて、基礎生成用電圧Va3aを基礎電圧部分設定回路部CC3に出力する。この基礎生成用電圧Va3aは、定数倍に基礎電圧部分設定回路部CC3で増幅され、アナログ基礎電圧Va4aとされる。かくして、基礎電圧部分設定回路部CC3から、このアナログ基礎電圧Va4aが、ノードN2を経由して検知電圧生成回路部CC4および第2電圧調整回路部VC2に出力される(ステップS6)。アナログ基礎電圧Va4aは、アナログ信号の基礎電圧部分として、検知電圧生成回路部CC4内の差動アンプIC4のうち、反転入力端子に入力される。なお、図6に示すように、このアナログ基礎電圧Va4aは、デジタル基礎電圧値Vd3aが更新されるまで、同じ大きさに維持される。
【0050】
第2電圧調整回路部VC2に入力されたアナログ基礎電圧Va4aは、そこで調整基礎電圧Va5に調整され、第2A/Dコンバータ200に入力される。この調整基礎電圧Va5は、第2A/Dコンバータ200(12bit)でDA変換されて、確認用デジタル基礎電圧値Vd5とされ、第2入力ポートP6を通じてマイコン180に入力される(ステップS7)。
【0051】
次いで、ステップS8では、先行通電の通電開始から1s経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち先行通電の通電開始から1s経過していない場合、ステップS8を繰り返し、先行通電の通電開始から1s経過するまで待つ。先行通電による温度検知部155の昇温の影響を避けるため、先行通電と時間をあけて温度検知部155を本来の温度に戻してから、本通電を行うためである。
【0052】
一方、ステップS8でYES、即ち先行通電の通電開始から1s経過したら、通電回路部CC1を通じて、温度検知部155に300mAの電流I1を流して、本通電を開始する(ステップS9)。
本通電を開始すると、各時点での温度検知部155のセンサ電圧Vtに基づき、アナログセンサ電圧Va1が生成される。さらに、このアナログセンサ電圧Va1とアナログ基礎電圧Va4(Va4a)とから、差動アンプIC4によりアナログ検知電圧Va6が生成される。さらに、第3電圧調整回路部VC3により調整アナログ検知電圧Va7が、また、第1A/Dコンバータ190によりデジタル検知電圧値Vd7が、生成される。但し、図6(b)に示すように、本通電の開始直後は、センサ電圧Vtの大きさが安定しない。
【0053】
そこでステップS10では、本通電の通電開始から10ms経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち本通電の通電開始から10ms経過していない場合、ステップS9を繰り返し、通電開始から10ms経過するまで待つ。一方、YES、即ち通電開始から10ms経過したら、ステップS11に進む。
【0054】
このステップS11では、本通電中の温度検知部155のセンサ電圧Vtb(これを定数倍したアナログセンサ電圧Va1b)、および、上述のアナログ基礎電圧Va4aに基づき、検知電圧生成回路部CC4における差動アンプIC4により、アナログ検知電圧Va6bを得る。さらに、このアナログ検知電圧Va6bに基づき、第3電圧調整回路部VC3および第1A/Dコンバータ190を通じて、高精度のデジタル検知電圧値Vd7bを得て、これをマイコン180で取得する。かくしてマイコン180は、このデジタル検知電圧値Vd7bと、記憶していたデジタル基礎電圧値Vd3aあるいは確認用デジタル基礎電圧値Vd5とを併せて、高精度のデジタルセンサ電圧値Vd1bを取得する。
【0055】
さらに、マイコン180では、このデジタルセンサ電圧値Vd1bおよび電流I1から温度検知部155の抵抗値Rtを求め、さらに、温度検知部155の抵抗温度係数(抵抗値Rtと温度の関係)から、尿素水溶液NSの液温NTを算出する(ステップS12)。本通電の開始から短時間(10ms)が経過しただけの状態での温度検知部155の温度は、尿素水溶液NSの液温NTとほぼ同じと考えられるからである。
【0056】
次いでステップS13では、本通電の開始から700ms経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち通電開始から700ms経過していない場合、ステップS12を繰り返して、通電開始から700ms経過するのを待つ。一方、YES、即ち通電開始から700ms経過した場合には、ステップS14に進む。
【0057】
ステップS14において、マイコン180は、ステップS11と同様にして、本通電中の温度検知部155のセンサ電圧Vtc(これを定数倍したアナログセンサ電圧Va1c)およびアナログ基礎電圧Va4aに基づき、デジタルセンサ電圧値Vd1cを取得する。その後、本通電を停止する(ステップS15)。マイコン180では、ステップS16において、このデジタルセンサ電圧値Vd1cを基に、尿素水溶液NSの濃度NCを算出する。具体的には、マイコン180で、このデジタルセンサ電圧値Vd1cを用いて、本通電開始から700ms後の時点での温度検知部155の温度を算出する。これと、ステップS12で算出した尿素水溶液NSの液温NTとを用いて、尿素水溶液NSの濃度NCを算出する。尿素水溶液NSは、濃度NCに応じて比熱が変化するので、本通電により温度検知部155で発熱させた場合、尿素水溶液NSの濃度NCの違いにより、発熱後の温度検知部155の温度が異なるものとなることを利用する。
【0058】
さらに、ステップS17では、デジタルセンサ電圧値Vd1bから、デジタル基礎電圧値Vd3cを設定し直し、更新する。これに伴いアナログ基礎電圧Va4も更新され、アナログ基礎電圧Va4aとされる(図6(b)参照)。このデジタル基礎電圧値Vd3cの大きさとしては、基礎電圧部分設定回路部CC3により得られるアナログ基礎電圧Va4cが、アナログセンサ電圧Va1bよりも0.2V小さくなる値に、つまり、差動アンプIC4に入力されるアナログセンサ電圧Va1とアナログ基礎電圧Va4との差が0.2V付近の値になるような値とする。なお、デジタルセンサ電圧値Vd1bに代えて、デジタルセンサ電圧値Vd1cを用いて、デジタル基礎電圧値Vd3cを設定しても良い。
【0059】
これにより、マイコン180は、設定したデジタル基礎電圧値Vd3cをDA変換して、第1D/A出力ポートP4を通じて、基礎生成用電圧Va3aを基礎電圧部分設定回路部CC3に向けて出力する。この基礎生成用電圧Va3cを、基礎電圧部分設定回路部CC3内で増幅して、アナログ基礎電圧Va4cを生成する。このアナログ基礎電圧Va4cは、アナログ信号の基礎電圧部分として、ノードN2を経由して、検知電圧生成回路部CC4内の差動アンプIC4に入力される(ステップS18)。
その後、ステップS19では、本通電の開始から60s経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち本通電開始から60s経過していない場合、ステップS19を繰り返して、通電開始から60s経過するのを待つ。一方、YES、即ち開始から60s経過している場合には、ステップS9に戻り、再度、温度検知部155に本通電を行い、上述したステップS9〜S19を繰り返す。
【0060】
このようにして、本実施形態1にかかる液体状態検知センサ100では、センサ電圧Vtを定数倍したアナログセンサ電圧Va1(Va1b,Va1c)を、アナログ基礎電圧Va4(Va4a)と、アナログセンサ電圧Va1(Va1b,Va1c)よりも小さいアナログ検知電圧Va6(Va6b,Va6c)とからなると考え、このうちのアナログ検知電圧Va6(Va6b,Va6c)を定数倍した調整アナログ検知電圧Va7(Va7b,Va7c)をAD変換してデジタル検知電圧値Vd7(Vd7b,Vd7c)を得る。
【0061】
なお、センサ電圧Vtおよびアナログセンサ電圧Va1(Va1b,Va1c)全体に対応するデジタル値は、設定したアナログ基礎電圧Va4に相当するデジタル値(デジタル基礎電圧値Vd3(Vd3a)あるいは確認用デジタル基礎電圧値Vd5)と、デジタル検知電圧値Vd7(Vd7b,Vd7c)とを合わせた、デジタルセンサ電圧値Vd1(Vd1b,Vd1c)である。
このように相対的に小さいアナログ検知電圧Va6(Va6b,Va6c)(調整アナログ検知電圧Va7b,Va7c)をAD変換することで、同じビット数のAD変換器を用いたとしても、アナログセンサ電圧Va1(Va1b,Va1c)全体をAD変換する場合よりも、精度の高いデジタル検知電圧値Vd7(Vd7b,Vd7c)を、ひいては、高精度のデジタルセンサ電圧値Vd1(Vd1b,Vd1c)を得ることができる。あるいは、ビット数の少ない安価なAD変換器を用いて、同程度の精度のデジタルセンサ電圧値Vd1(Vd1b,Vd1c)を得ることができる。
【0062】
また、本実施形態1では、ステップS1〜S6において先行通電し、液体状態センサ素子151(温度検知部155)に生じるセンサ電圧Vtaに基づいて適当なデジタル基礎電圧値Vd3aを設定できるので、適切な大きさのアナログ基礎電圧Va4aを得ることができる。従って、測定スタート直後の第1回目の本通電から、適当な大きさのアナログ検知電圧Va6(調整アナログ検知電圧Va7)を得ることができ、高精度のデジタル検知電圧値Vd7、ひいては高精度なデジタルセンサ電圧値Vd1を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態1にかかる液体状態検知センサ100では、2回目の本通電以降は、前回の検知で得たセンサ電圧値Vtを基に、アナログ基礎電圧Va4の大きさを設定する。従って、検知に先立って、ステップS1〜S4における先行通電を行う必要がなく、先行通電に伴う影響を生じることがない。その一方で、尿素水溶液NSの状態変化に応じて、本通電に先立って毎回デジタル基礎電圧値Vd3の値、従ってアナログ基礎電圧Va4の大きさを適切に設定できるので、精度の良いデジタルセンサ電圧値Vd1を確実に得ることができる。
また、この液体状態検知センサ100では、温度によって自身の抵抗値が変化する特性を有する温度検知部155を用いて尿素水溶液NSの熱伝導性を検知する。従って、この液体状態検知センサ100によれば、精度良く、あるいは安価に尿素水溶液NSの熱伝導性を検知することができる。本実施形態1では検知した尿素水溶液NSの熱伝導性に基づいて、尿素水溶液NSの濃度NCを検知している。従って、この尿素水溶液NSの濃度NTの検知を、精度良くあるいは安価に行うこともできる。
【0064】
また、本実施形態1にかかる液体状態検知センサ100では、検知電圧生成回路部CC4に差動アンプIC4を含むので、アナログセンサ電圧Va1と基礎電圧部分アナログ基礎電圧Va4との差分、つまりアナログ検知電圧Va6に相当する差分電圧を、またこれに基づいて、調整アナログ検知電圧Va7を容易に得ることができる。
【0065】
なお、調整基礎電圧Va5をAD変換して確認用デジタル基礎電圧値Vd5を生成するので、基礎電圧設定回路部CC3で設定したアナログ基礎電圧Va4(調整基礎電圧Va5)が、設定の通り正しい値となっているかどうかを、予め設定した確認用デジタル基礎電圧値と比較して確認することができる。この結果、アナログ基礎電圧Va4が正しい値であると確認できた場合には、これを引き続き用いて検知を行う。
また、これで得た確認用デジタル基礎電圧値Vd5とデジタル検知電圧値Vd7を併せて、デジタルセンサ電圧値Vd1を得ることもできる。
【0066】
なお、本実施形態1において、マイコン180および通電回路部CC1は本通電手段,先行通電手段に、マイコン180および基礎電圧部分設定回路部CC3は基礎電圧部分設定手段に、マイコン180および検知電圧生成回路部CC4は検知電圧生成手段に、第1A/Dコンバータ190は検知電圧AD変換手段に、第2A/Dコンバータ200は基礎電圧AD変換手段にそれぞれ対応する。また、マイコン180,センサ電圧取得回路部CC2,基礎電圧部分設定回路部CC3,検知電圧生成回路部CC4,第1A/Dコンバータ190はデジタル値取得手段に、差動アンプIC4は差動増幅器にそれぞれ対応する。
さらに、アナログセンサ電圧Va1は定倍素子電圧に、アナログ基礎電圧Va4は基礎電圧部分に、調整基礎電圧Va5は基礎電圧に、アナログ検知電圧Va6は検知電圧部分に、調整アナログ検知電圧Va7は検知電圧に、デジタルセンサ電圧値Vd1はデジタル素子電圧値に、それぞれ対応する。
【0067】
(変形形態1)
次に、本発明の変形形態1について、図5,7を参照しつつ説明する。
本変形形態1の液体状態検知センサ100Aは実施形態1の液体状態検知センサ100とは、その制御手順が、本通電を行う毎に、先行通電を行う点でのみ異なり、それ以外は同様である。
そこで、異なる点を中心として説明すると共に、同様の部分の説明は省略または簡略化するが、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同じ内容のものには同番号を付して説明する。
【0068】
本変形形態1の液体状態検知センサ100Aは、尿素水溶液NSの液温NTおよび尿素濃度NCの測定を行う。以下に、このときの液体状態検知センサ100Aの制御について、図5のフローチャート、および図7の通電電流および電圧の経時変化を示す説明図を参照しつつ説明する。
【0069】
ステップS1〜S15までは、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
本変形形態1の液体状態検知センサ100Aは、上述のように、本通電を行う毎に先行通電を行う。即ち、この液体状態検知センサ100Aは、ステップS15における本通電停止の後、破線で示すように、直接ステップS19へ進む。ステップS19では、実施形態1と同様、本通電の開始から60s経過したか否かを判定し、YES、即ち本通電の通電開始から60s経過している場合には、実施形態1と異なり、図5において破線で示すように、ステップS1に戻る。従って再度、温度検知部155に先行通電を行ってから本通電を行い、これ(ステップS1〜S15およびステップS19)を繰り返す。
【0070】
本変形形態の液体状態検知センサ100Aでは、実施形態1における作用効果に加えて、ステップS9〜S15の本通電を行う毎に、これに先立ちステップS1〜S4による先行通電を行う(図7参照)。そして、この先行通電で生じるセンサ電圧Vta(これを定数倍したアナログセンサ電圧Va1a)に基づいて、デジタル基礎電圧値Vd3aを設定し、これに対応する大きさのアナログ基礎電圧Va4aを生成する。こうすることにより、各本通電前には、尿素水溶液NSの状態変化に応じ、毎回、適切な大きさのアナログ基礎電圧Va4aを用いて、適切な大きさのアナログ検知電圧Va6b,Va6c(調整アナログ検知電圧Va7b,Va7c)を得ることができるので、このアナログ検知電圧Va6b,Va6cから、高精度のデジタル検知電圧値Vd7b,Vd7cを、さらにはデジタルセンサ電圧値Vd1b,Vd1cを確実に得ることができる。
【0071】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図8,9を参照しつつ説明する。
本実施形態2の液体状態検知センサ100Bは、実施形態1の液体状態検知センサ100とは、その制御手順が、先行通電の後に、時間を空けずに引き続き本通電を行う点で異なり、それ以外は同様である。
そこで、異なる点を中心として説明すると共に、同様の部分の説明は省略または簡略化するが、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同じ内容のものには同番号を付して説明する。
【0072】
本実施形態2の液体状態検知センサ100Bは、尿素水溶液NSの液温NTおよび尿素濃度NCの測定を行う。以下に、このときの液体状態検知センサ100Bの制御について、図8のフローチャート、および図9の通電電流および電圧の経時変化を示す説明図を参照しつつ説明する。
【0073】
まず、ステップS21で、温度検知部155の通電(先行通電)を開始する。具体的には、マイコン180の指示により通電回路部CC1を通じて、この温度検知部155に300mAの電流I1を流す。
ところで、この通電が、液体状態検知センサ100Bの駆動開始から、初回の通電である場合、アナログセンサ電圧Va1のうち、基礎電圧部分となるアナログ基礎電圧Va4を設定する必要がある。そこで、ステップS22では、この通電が初回通電であるか否かを判定する。ここで、NO、即ち初回通電でない場合、後述するようにしてアナログ基礎電圧Va4は既に設定されているので、ステップS28に進む。一方、YES、即ち初回通電である場合には、ステップS23に進み、アナログ基礎電圧Va4を設定する。
【0074】
ステップS23で、通電開始から10ms経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち通電開始から10ms経過していない場合、ステップS23を繰り返して、通電開始から10ms経過するのを待つ。一方、YES、即ち開始から10ms経過した場合には、ステップS24に進む。
ステップS24において、マイコン180は、通電中の温度検知部155のセンサ電圧Vta(アナログセンサ電圧Va1a)を基に、第1電圧調整回路部VC1を介して、センサ電圧取得回路部CC2により、低精度デジタルセンサ電圧値Vd2aを取得する。その後、ステップS25では、取得した低精度デジタルセンサ電圧値Vd2aから、デジタル基礎電圧値Vd3aを設定する。このデジタル基礎電圧値Vd3aは、デジタルセンサ電圧Vd1のうち、基礎電圧部分としてマイコン180内に記憶される。
【0075】
マイコン180は、設定したデジタル基礎電圧値Vd3aをAD変換し、第1D/A出力ポートP4を通じて基礎電圧部分設定回路部CC3に基礎生成用電圧Va3aを出力する。この基礎生成用電圧Va3aは、定数倍に基礎電圧部分設定回路部CC3で増幅され、アナログ基礎電圧Va4aとされ、ノードN2を経由して、検知電圧生成回路部CC4および第2電圧調整回路部VC2に向けて出力される(ステップS26)。
【0076】
出力されたアナログ基礎電圧Va4aは、アナログ信号の基礎電圧部分として、検知電圧生成回路部CC4内の差動アンプIC4に入力される。
また、アナログ基礎電圧Va4aは、第2電圧調整回路部VC2で調整基礎電圧Va5とされ、第2A/Dコンバータ200でDA変換されて、確認用デジタル基礎電圧値Vd5とされて、マイコン180に入力される(ステップS27)。
【0077】
次に、ステップS28では、通電開始から20ms経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち通電開始から20ms経過していない場合、ステップS28を繰り返して、通電開始から20ms経過するのを待つ。一方、YES、即ち開始から20ms経過した場合には、ステップS11に進む。
以降は、実施形態1のステップS11〜S19で示す本通電(図5参照)と同様に通電(本通電)を行う。つまり、本実施形態2におけるステップS21〜S28の後、時間を空けずに通電(本通電)を行う(図9参照)。なお、ステップS11〜S19については実施形態1と同様であるので、説明を省略する。但し、ステップS19でYESの場合、ステップS21に戻る。
【0078】
本実施形態2にかかる液体状態検知センサ100Bでは、実施形態1における作用効果に加え、先行通電を本通電の直前に、しかも連続して行うので、先行通電の後、本通電までに起きる尿素水溶液NTの状態変化による影響を排除して、デジタル基礎電圧値Vd3aを設定する。このため、これに対応する大きさのアナログ基礎電圧Va4aを適切に生成することができる。従って、このアナログ基礎電圧Va4aに基づき、高精度のデジタル検知電圧値Vd7およびデジタルセンサ電圧値Vd1を確実に得ることができる。
【0079】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について、図4,図10,図11を参照しつつ説明する。
本実施形態3の液体状態検知センサ100Cは、実施形態1における先行通電および本通電とも大きさが一定(300mA)の電流I1を流したのに対し、初回通電時にのみ、小さな電流I2(50mA)を流す点、および、この先行通電の後、時間を空けず、相対的に大きな電流I1(300mA)を流す本通電を行う点で異なり、それ以外は同様である。
そこで、異なる点を中心として説明すると共に、同様の部分の説明は省略または簡略化するが、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同じ内容のものには同番号を付して説明する。
【0080】
本実施形態3の液体状態検知センサ100Cは、実施形態1等で用いたのとほぼ同様の回路構成の通電回路部CC1’,マイコン180を有する。但し、図4において一点鎖線で示すように、通電回路部CC1における抵抗体R9a,R9bに代えて、マイコン180の第2D/A出力ポートP7とノードN3とが直接接続している。このため、第2D/A出力ポートP7の電圧によって、電界効果トランジスタQ4を通じて、温度検知部155に流す電流の大きさを変化させることができる。以下に、このときの液体状態検知センサ100Cの制御について、図10のフローチャート、および図11の通電電流および電圧の経時変化を示す説明図を参照しつつ説明する。
【0081】
ステップS41で、温度検知部155の通電(先行通電)を開始する。ただしこのとき、この温度検知部155には、相対的に小さな電流I2(50mA)を流す。
次いでステップS42では、この通電が初回通電であるか否かを判定する。ここで、NO、即ち初回通電でない場合、ステップS43に進む。一方、YES、即ち初回通電である場合には、ステップS2に進む。
ステップS2,S3,S5〜S7は、実施形態1におけるステップS2,S3,S5〜S7と同様であるので説明を省略する(図5参照)。
【0082】
一方ステップS43では、直ちに温度検知部155に流す電流Iの大きさを変更する。具体的には、温度検知部155に流す電流の大きさを電流I2(50mA)から、実施形態1と同じ電流I1(300mA)に変更し、本実施形態3における本通電を行う(図11(a)参照)。
ステップS44では、電流I1に通電電流を変更してから10ms経過したか否かを判定する。ここで、NO、即ち通電電流を変更してから10ms経過していない場合、ステップS44を繰り返す。一方、YES、即ち変更から10ms経過している場合には、ステップS11に進む。
なお、本実施形態3のステップS11〜S46は、初回通電の場合には上述の先行通電(ステップS2,S3,S5〜S7)に引き続いて行われる本通電である。この本通電については、ステップS45,S46においてステップS43の通電電流の変更から700msおよび60sを起算する点が異なるのみで、その他は実施形態1のステップS11〜S19で示す本通電と同様であるので(図5参照)、説明を省略する。
【0083】
本実施形態3にかかる液体状態検知センサ100Cでは、実施形態1と同様の作用効果が得られるのに加えて、先行通電(ステップS41〜S7)において温度検知部155に流す電流I2を、本通電で流す電流I1より小さくしている。このため、先行通電時に温度検知部155で生じる発熱を、本通電時より小さくすることができる。これにより、先行通電時における、温度検知部155の発熱によって生じる影響を抑制して、尿素水溶液NSの濃度NCなどの状態を適切に反映した、センサ電圧Vta,Vtb,Vtc、さらには、デジタルセンサ電圧値Vd1b,Vd1cを得ることができる。なお、ステップS46でYESの場合、ステップS2に戻るが、ステップS46の処理を一度経れば、ステップS2では、初回通電でないと判断されることになる。
【0084】
以上において、本発明を実施形態1〜3および変形形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、上述の実施形態等では、尿素水溶液において、液体状態検知センサを用いてその状態の検知を行ったが、尿素水溶液に限らず、他の液体あるいは水溶液に用いても良い。また、検知電圧AD変換手段として第1A/Dコンバータ190に12bitのものを用いたが、これよりも分解能の良いA/Dコンバータを用いるのは言うまでもなく、デジタル電圧信号に変換するアナログ電圧信号の範囲に応じて、適宜分解能を選択しても良い。さらに、実施形態2,3では、先行通電を初回通電時にのみ行ったが、変形形態で示したのと同様、各本通電の直前に先行通電を行っても良い。また、実施形態等では、先行通電手段と本通電手段とを同じ通電回路部CC1,CC1’としたものを示したが、本通電手段とは別の先行通電手段を用いて、先行通電を行っても良い。また、上述の実施形態等では、いわゆる自己発熱型の温度検知部155を有する液体状態センサ素子151を用いた例を示したが、いわゆる傍熱型の検知素子における抵抗値等の変化から、同様にして特性の変化を検知しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施形態1〜3および変形形態にかかる液体状態検知センサの部分破断縦断面図である。
【図2】実施形態1〜3および変形形態にかかる液体状態検知センサの液体状態センサ素子を示す説明図である。
【図3】実施形態1〜3および変形形態にかかる液体状態検知センサの電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態1〜3および変形形態にかかる液体状態検知センサのうち、各回路部の構成を示す回路図である。
【図5】実施形態1および変形形態にかかる液体状態検知センサの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】実施形態1にかかる液体状態検知センサの、(a)通電電流および(b)電圧の経時変化を示す、説明図である。
【図7】変形形態にかかる液体状態検知センサの、(a)通電電流および(b)電圧の経時変化を示す、説明図である。
【図8】実施形態2にかかる液体状態検知センサにおけるフローチャートである。
【図9】変形形態2にかかる液体状態検知センサの、(a)通電電流および(b)電圧の経時変化を示す、説明図である。
【図10】実施形態3にかかる液体状態検知センサにおけるフローチャートである。
【図11】実施形態3にかかる液体状態検知センサの、(a)通電電流および(b)電圧の経時変化を示す、説明図である。
【符号の説明】
【0086】
100,100A,100B,100C 液体状態検知センサ
151 液体状態センサ素子(素子,ヒータ素子,熱伝導性検知素子)
180 マイコン(本通電手段,先行通電手段,デジタル値取得手段,状態検知手段,基礎電圧部分設定手段,検知電圧生成手段,熱伝導性検知手段)
190 第1A/Dコンバータ(デジタル値取得手段,検知電圧AD変換手段)
200 第2A/Dコンバータ(基礎電圧AD変換手段)
CC1,CC1’ 通電回路部(本通電手段,先行通電手段)
CC2 センサ電圧取得回路部(デジタル値取得手段)
CC3 基礎電圧部分設定回路部(デジタル値取得手段,基礎電圧部分設定手段)
CC4 検知電圧生成回路部(デジタル値取得手段,検知電圧生成手段)
I,I1,I2 電流
IC4 差動アンプ(差動増幅器)
NC 尿素濃度(状態)
NS 尿素水溶液(液体)
NT 液温(状態)
Rt (温度検知部の)抵抗値
Va1,Va1a,Va1b,Va1c アナログセンサ電圧(定倍素子電圧)
Va4,Va4a,Va4c アナログ基礎電圧(基礎電圧部分)
Va5 調整基礎電圧(基礎電圧)
Va6,Va6b,Va6c アナログ検知電圧(検知電圧部分,差分電圧)
Va7,Va7b,Va7c 調整アナログ検知電圧(検知電圧)
Vd1,Vd1b,Vd1c デジタルセンサ電圧値(デジタル素子電圧値)
Vd5 確認用デジタル基礎電圧値
Vd7,Vd7b,Vd7c デジタル検知電圧値
Vta 第1センサ電圧(先行素子電圧)
Vtb 第2センサ電圧(素子電圧)
Vtc 第3センサ電圧(素子電圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の状態に応じて特性が変化する素子と、
上記素子に本通電を行う本通電手段と、
上記本通電により上記素子に生じる素子電圧に基づいて、これに対応するデジタル素子電圧値を取得するデジタル値取得手段と、
上記デジタル素子電圧値を用いて、上記液体の状態を検知する状態検知手段と、を備える
液体状態検知センサであって、
上記素子電圧の定数倍の大きさの定倍素子電圧を、基礎電圧部分と上記定倍素子電圧より大きさの小さい検知電圧部分とからなるとしたとき、
上記デジタル値取得手段は、
上記基礎電圧部分を設定する基礎電圧部分設定手段、
上記定倍素子電圧と上記基礎電圧部分とに基づいて、上記検知電圧部分の定数倍の検知電圧を生成する検知電圧生成手段、および、
上記検知電圧をAD変換してデジタル検知電圧値を生成する検知電圧AD変換手段、を含み、
上記検知電圧AD変換手段は、AD変換可能な変換可能電圧範囲を有し、
上記基礎電圧部分設定手段は、上記検知電圧が上記変換可能電圧範囲に収まる大きさとなるように、上記基礎電圧部分の大きさを設定する
液体状態検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の液体状態検知センサであって、
前記本通電手段による前記素子への前記本通電によって前記デジタル素子電圧値を取得するに先立ち、上記素子に先行通電を行う先行通電手段を備え、
前記基礎電圧部分設定手段は、
上記先行通電手段による上記先行通電により上記素子に生じる先行素子電圧に基づいて、前記基礎電圧部分の大きさを設定する
液体状態検知センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の液体状態検知センサであって、
前記先行通電手段は、前記素子への先行通電時に、前記本通電手段による本通電時に流す電流よりも小さい電流を上記素子に流す
液体状態検知センサ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の液体状態検知センサであって、
この液体状態検知センサは、繰り返し前記液体の前記状態を検知するものであり、
前記先行通電手段は、前記本通電を行う毎に、これに先立って、前記素子に先行通電し、
前記基礎電圧部分設定手段は、
上記先行通電手段による先行通電毎に、上記素子に生じる前記先行素子電圧に基づいて、前記基礎電圧部分の大きさを設定する
液体状態検知センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の液体状態検知センサであって、
この液体状態検知センサは、繰り返し前記液体の前記状態を検知するものであり、
前記基礎電圧部分設定手段は、
前回の検知で得た前記デジタル素子電圧値に基づいて、前記基礎電圧部分の大きさを設定する
液体状態検知センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記素子は、温度によって抵抗値が変化する特性を有する抵抗体からなり、自身またはヒータ素子への通電により発生する熱によって、自身の抵抗値に変化を生じる抵抗素子である
液体状態検知センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記検知電圧生成手段は、
前記定倍素子電圧と前記基礎電圧部分との差分に対応する差分電圧を得る差動増幅器を含む
液体状態検知センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記デジタル値取得手段は、
前記基礎電圧部分設定手段で設定された前記基礎電圧部分を定数倍した基礎電圧を、AD変換して確認用デジタル基礎電圧値を生成する基礎電圧AD変換手段を含む
液体状態検知センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−103490(P2009−103490A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273611(P2007−273611)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】