説明

液体現像剤、液体現像剤の製造方法および画像形成装置

【課題】記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、帯電特性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率良く製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供すること、定着強度に優れたトナー画像を形成でき、低温、高速定着に適した画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、前記トナー粒子の表面付近には、脂肪酸モノエステルが偏在していることを特徴とする。脂肪酸モノエステルの粘度は、10mPa・s以下であるのが好ましい。脂肪酸モノエステルは、炭素数が8〜18の飽和脂肪酸のエステルであるのが好ましい。トナー粒子を構成する樹脂材料は、ポリエステル樹脂であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、液体現像剤の製造方法および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーによる方法と、トナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤を用いる方法とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
しかしながら、従来の液体現像剤で用いられてきた絶縁性液体は、石油系の炭化水素を主とするものであるため、例えば、画像形成装置等の外に出た場合に、環境に悪影響を及ぼすことが懸念されていた。
【0004】
また、通常、液体現像剤では、定着の際にトナー粒子の表面に絶縁性液体が付着している。従来の液体現像剤では、このトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体が定着強度を低下させるという問題もあった。また、トナーの定着強度を向上させるために、比較的高い温度で、長時間加熱してトナー粒子を定着させることも考えられるが、近年の画像形成のさらなる高速化、省エネルギー化という要望を満足させるのが困難であった。
このような問題を解決するために、絶縁性液体として植物油等の天然由来の油脂を用い、定着時において油脂の酸化重合反応により定着強度を向上させる試みが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、上記のような油脂を用いた液体現像剤では、定着強度は向上するが、トナー粒子を十分に帯電させるのが困難であるため、十分な帯電特性を得るのが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−251252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、帯電特性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率良く製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供すること、定着強度に優れたトナー画像を形成でき、低温、高速定着に適した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む絶縁性液体と、
前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、
前記トナー粒子の表面付近には、脂肪酸モノエステルが偏在していることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記脂肪酸モノエステルの粘度は、10mPa・s以下であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記脂肪酸モノエステルは、炭素数が8〜18の飽和脂肪酸のエステルを含むことが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記トナー粒子を構成する樹脂材料は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0009】
本発明の液体現像剤の製造方法は、脂肪酸モノエステル中で、主として樹脂材料で構成されたトナー材料を粉砕し、粉砕物分散液を得る粉砕工程と、
前記粉砕物分散液と、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体とを混合する混合工程とを有し、
得られる液体現像剤が、前記脂肪族炭化水素および/または前記シリコーンオイルを含む絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散した前記トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子の表面付近には、前記脂肪酸モノエステルが偏在したものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の液体現像剤の製造方法は、主として樹脂材料で構成された微粒子を会合させ、会合粒子を得る工程と、
脂肪酸モノエステル中において、前記会合粒子を解砕し、トナー粒子を得る工程と、
得られた前記トナー粒子を、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体中に分散する分散工程とを有し、
得られる液体現像剤が、前記脂肪族炭化水素および/または前記シリコーンオイルを含む絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散した前記トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子の表面付近には、前記脂肪酸モノエステルが偏在したものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の画像形成装置は、色の異なる複数の液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部とを有し、
前記液体現像剤が、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む絶縁性液体と、絶縁性液体中に分散した前記トナー粒子とを含み、前記トナー粒子の表面付近には、脂肪酸モノエステルが偏在したものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成装置では、複数の前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させる圧縮手段と、前記現像ローラ上の前記液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体とを有することが好ましい。
本発明の画像形成装置では、前記圧縮手段は、前記層に対して、前記トナー粒子と同極性の電界を印加することにより、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させることが好ましい。
【0013】
本発明の画像形成装置では、前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記現像ローラ上の液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体と、前記現像ローラに液体現像剤を供給する塗布ローラとを有し、
前記塗布ローラは、その表面に溝が形成されたアニロクスローラであり、前記溝に前記液体現像剤を担持することによって前記現像ローラに前記液体現像剤を供給することが好ましい。
本発明の画像形成装置では、前記塗布ローラに形成された前記溝は、前記塗布ローラの回転方向に対して斜めに設けられたものであることが好ましい。
【0014】
以上の構成により、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、帯電特性に優れた液体現像剤を提供することができる。また、このような液体現像剤を効率良く製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することができる。また、定着強度に優れたトナー画像を形成でき、低温、高速定着に適した画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の液体現像剤、液体現像剤の製造方法および画像形成装置の好適な実施形態について、詳細に説明する。
《液体現像剤》
まず、本発明の液体現像剤について説明する。
本発明の液体現像剤は、脂肪酸モノエステルが表面付近に偏在したトナー粒子が、絶縁性液体に分散したものである。
【0016】
<絶縁性液体>
まず、絶縁性液体について説明する。
本発明で用いる絶縁性液体は、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含んでいる。
脂肪族炭化水素、シリコーンオイルは、一般に、高い電気抵抗を有し、化学的に安定な液体である。このため、脂肪族炭化水素、シリコーンオイルを用いた液体現像剤は、優れた帯電特性、転写性を有し、得られるトナー画像は、欠点等の少ない、鮮明なものとなる。しかしながら、これら成分を絶縁性液体として用いた場合、定着の際にトナー粒子の表面に付着して、定着強度を低下させてしまうといった問題がある。これに対して、本発明のように、トナー粒子として、その表面付近に後述するような脂肪酸モノエステルを偏在させたものを用いることにより、帯電特性に優れるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れた液体現像剤とすることができる。
【0017】
脂肪族炭化水素としては、特に限定されず、例えば、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(エクソン化学社)、コスモホワイトP−60、コスモホワイトP−70、コスモホワイトP−120(コスモ石油ルブリカンツ社)、ダイナフレシアW−8、ダフニーオイルCP、ダフニーオイルKP、トランスフォーマオイルH、トランスフォーマオイルG、トランスフォーマオイルA、トランスフォーマオイルB、トランスフォーマオイルS(出光興産社)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルオイル社)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(スピリッツ社)、低粘度・高粘度流動パラフィン(和光純薬工業)、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン等が挙げられ、これらのうち、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
また、脂肪族炭化水素は、分子内に炭化水素基の分岐鎖を有することが好ましい。これにより、脂肪族炭化水素は、化学的により安定なものとなり、このような脂肪族炭化水素を用いた液体現像剤の保存性が特に優れたものとなる。これは、脂肪族炭化水素の構造が、嵩高になることによって、化学反応を起こしにくい構造となるためであることが考えられる。
また、脂肪族炭化水素は、飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。これにより、液体現像剤の電気抵抗度を特に高いものとすることができ、また、液体現像剤の保存性を特に優れたものとすることができる。
【0019】
シリコーンオイルとしては、特に限定されず、例えば、KF96、KF‐4701、KF‐965、KS‐602A、KS‐603、KS‐604、KF‐41に、KF‐54、FA‐630(信越シリコーン社製)、TSF410、TFS433、TFS434、TFS451、TSF437、(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、SH200(東レ社製)等が挙げられ、これらのうち、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
また、絶縁性液体の比誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0020】
<脂肪酸モノエステル>
次に、脂肪酸モノエステルについて説明する。
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子の表面付近には、脂肪酸モノエステルが偏在している。
脂肪酸モノエステルは、記録媒体に浸透しやすい成分である。このため、トナー粒子の表面付近に偏在した脂肪酸モノエステルは、定着時にトナー粒子と記録媒体とが接触した際に、記録媒体に速やかに浸透する。そして、この脂肪酸モノエステルの浸透と共に、定着時の熱で溶融したトナー粒子(トナー粒子を構成する樹脂材料)の一部が記録媒体の内部に浸透し、定着強度が向上する。
【0021】
また、定着過程において熱や圧力をかけられた場合、トナー粒子の表面付近に偏在した脂肪酸モノエステルが、トナー粒子(樹脂材料)内部に浸透し、トナー粒子を可塑化させる効果(可塑剤効果)を発現する。この可塑剤効果により、例えば、記録媒体として紙を用いた場合には、トナー粒子が紙繊維の隙間に入り込み易くなり、アンカー効果が有効に発現し、紙とトナー粒子との定着特性が向上する。また、可塑剤効果により、比較的低温でもトナー粒子が溶融し、記録媒体への定着が可能になるため、低温、高速での画像形成にも好適に適用することができる。
【0022】
トナー粒子の表面に偏在させる脂肪酸モノエステルとしては、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等に代表される不飽和脂肪酸のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)モノエステル、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等に代表される飽和脂肪酸のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)モノエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
上述した中でも、炭素数が8〜18の飽和脂肪酸のエステルを脂肪酸モノエステルとし含む場合、トナー粒子表面により確実に脂肪酸モノエステルを偏在させることができる。また、炭素数が8〜18の飽和脂肪酸のエステルは、トナー粒子内部に浸透しやすいため、上述したような可塑剤効果がより顕著に発揮する。
また、上述した中でも不飽和脂肪酸のアルキルモノエステルを脂肪酸モノエステルとして含む場合、定着時において、熱等によって硬化し、トナー画像の記録媒体への定着強度を特に優れたものとすることができる。
また、脂肪酸モノエステルとして、炭素数が8〜18の飽和脂肪酸のエステルと、不飽和脂肪酸のアルキルモノエステルとを併用した場合、上述したこれらの脂肪酸モノエステルの効果を同時に得ることができる。
【0024】
上記のような脂肪酸モノエステルの粘度は、10mPa・s以下であるのが好ましく、5mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、記録媒体により好適に浸透するとともに、定着時の熱で溶融したトナー粒子の記録媒体への浸透をより確実に促すことができる。また、例えば、後述するような方法で液体現像剤を製造する際に、粒径の揃ったトナー粒子を好適に得ることができる。また、本明細書では、特に断りのない限り、粘度は、25℃において、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809(校正液)に準拠して測定されるものである。
【0025】
なお、上記のような脂肪酸モノエステルは、トナー粒子の表面に偏在しているだけでなく、トナー粒子の内部に含まれていてもよいし、絶縁性液体中に含まれていてもよい。脂肪酸モノエステルがトナー粒子の内部に含まれている場合、定着の際にトナー粒子が潰れると同時に、外部に染み出すことができ、溶融したトナー粒子の記録媒体への浸透をより効果的に促進することができる。また、脂肪酸モノエステルが絶縁性液体中に含まれている場合、絶縁性液体の粘度を適度なものとすることができる。
脂肪酸モノエステルが絶縁性液体中に含まれている場合、絶縁性液体中における脂肪酸モノエステル含有量は、1.0〜50wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましく、20〜50wt%であるのがさらに好ましい。
【0026】
<トナー粒子>
次に、トナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料]
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、樹脂材料を含むものである。
【0027】
1.樹脂材料
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、公知の樹脂を用いることができるが、ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。ポリエステル樹脂は、前述した脂肪酸モノエステルと同じく、エステル成分を分子構造内に有していることから、脂肪酸モノエステルをトナー粒子の表面付近により確実に偏在させることができる。また、定着時には、脂肪酸モノエステルが浸透し易く、上述したような可塑剤効果を確実に発現させることができ、定着特性をさらに優れたものとすることができる。さらに、ポリエステル樹脂は、透明性が高く、結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性を高いものとすることができる。
【0028】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、特に限定されず、例えば、公知の顔料、染料等を使用することができる。
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、公知のワックス、磁性粉末等が挙げられる。
また、トナーの構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0029】
[トナー粒子の形状等]
本発明の液体現像剤に適用されるトナー粒子としては、その表面に微小の凹凸を有するものを用いるのが好ましい。このように微小の凹凸を有することにより、前述した脂肪酸モノエステルをトナー粒子の表面付近により効果的に偏在(吸着)させることができる。
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜4μmであるのがより好ましく、0.5〜3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
【0030】
液体現像剤中におけるトナー粒子の含有率は、10〜60wt%であるのが好ましく、20〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、保存時において、トナー粒子同士が接触して脂肪酸モノエステルおよび分散剤が遊離することを確実に防止することができ、液体現像剤の定着特性および帯電特性を特に優れたものにすることができる。また、液体現像剤の粘度を適切なものにできるとともに、定着時における加熱等の条件を特に穏やかにすることができる。
【0031】
また、液体現像剤の粘度は、20〜300mPa・sであるのが好ましく、30〜250mPa・sであるのがより好ましい。液体現像剤の粘度がこのような範囲のものであると、トナー粒子の分散性をより高いものとすることができるとともに、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができ、また、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等をより効果的に防止することができる。
【0032】
《液体現像剤の製造方法》
次に、本発明の液体現像剤の製造方法の好適な実施形態について説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の液体現像剤の製造方法の第1実施形態について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法では、脂肪酸モノエステル中において、主として樹脂材料で構成されたトナー材料を粉砕し、粉砕物分散液を得る粉砕工程と、粉砕物分散液と、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体とを混合する混合工程とを有する。
【0033】
[粉砕工程]
本工程では、前述したようなトナー粒子の構成材料(トナー材料)を、脂肪酸モノエステル中で湿式粉砕することにより、粉砕物分散液を得る。
本実施形態では、このように、脂肪酸モノエステル中でトナー材料を粉砕することにより、最終的に得られる液体現像剤中において、トナー粒子は、その表面付近に脂肪酸モノエステルを偏在(吸着)させたものとなる。これに対して、ただ単に、トナー粒子を脂肪酸モノエステル中に分散しただけでは、トナー粒子の表面付近に脂肪酸モノエステルを偏在させることはできない。すなわち、粉砕という大きな剪断力をかけることによって、初めて、トナー粒子の表面に脂肪酸モノエステルを偏在させることができる。
【0034】
また、脂肪酸モノエステルは、比較的粘度が低く、脂肪酸モノエステル中におけるトナー材料の動きの自由度が高いとともに、脂肪酸モノエステルの抵抗も小さいため、効率良く粗粉砕物を粉砕することができる。また、脂肪酸モノエステルは、前述した樹脂材料との親和性が高く、また、粘度が比較的低いため、粉砕等によって生じるトナー材料の微小の亀裂等に入り込むことができる。その結果、効率良く粉砕することができ、小さい粒径のトナー粒子を効率良く形成することができる。また、粉砕速度を向上させることができる。また、比較的粘度の低い脂肪酸モノエステル中で粉砕することにより、粉砕するために加えたエネルギーをトナー材料の粉砕に効率良く使うことができるため、脂肪酸モノエステルの温度が上昇するのを防止することができる。その結果、トナー材料を構成する樹脂材料が低融点のものであっても、効率良く粉砕することができる。
【0035】
また、本工程に供されるトナー材料としては、前述したようなトナーを構成する材料を混練して得られた混練物を粗粉砕した粗粉砕物を用いるのが好ましい。このように、混練物を粗粉砕した粗粉砕物を用いることにより、本工程において、より効果的にトナー粒子の粒径を小さくすることができる。
湿式粉砕の方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
【0036】
湿式粉砕の工程は、複数回に分けて行ってもよい。
なお、脂肪酸モノエステルとトナー材料とを混合する前に、脂肪酸モノエステル中に分散剤(界面活性剤)を添加してもよい。これにより、分散剤が粉砕助剤として働き、より効率良くトナー材料を粉砕することができるとともに、得られるトナー粒子の分散性をより高いものとすることができる。
【0037】
また、脂肪酸モノエステルに分散剤が含まれている状態で、トナー材料を粉砕することにより、トナー粒子の表面に分散剤が付着しやすくなり、最終的に得られる液体現像剤の帯電特性をより高いものとすることができる。詳しく説明すると、粉砕時において、脂肪酸モノエステルがトナー粒子表面を可塑化させることにより、分散剤がトナー粒子表面に付着しやすくなる。このため、絶縁性液体に溶解、分散した分散剤を少なくすることができ、得られる液体現像剤の電気抵抗をより高いものとすることが出来る。また、分散剤および脂肪酸モノエステルがトナー粒子の表面付近に偏在することにより、トナー粒子の分散性は特に優れたものとなり、液体現像剤の定着特性および保存性は特に優れたものとなる。
【0038】
分散剤としては、具体的には、ポリアミン脂肪酸縮重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸およびその塩、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等の高分子分散剤、粘度鉱物、シリカ、燐酸三カルシウム、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)等が挙げられる。
【0039】
上述した分散剤の中でも、高分子分散剤を用いた場合、粉砕効率を効果的に高めることができる。また、脂肪酸モノエステルで粉砕する際に、高分子分散剤が存在すると、高分子分散剤をトナー粒子の表面に好適に(絡みつくように)存在させることができるため、後述する混合工程において、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体と混合した際に、トナー粒子の表面付近に脂肪酸モノエステルをより効果的に保持することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中におけるトナー粒子の分散性をさらに向上させることができるとともに、定着特性をより高いものとすることができる。特に、高分子分散剤の中でも、ポリアミン脂肪族重合体(例えば、ソルスパース)を用いた場合、上述した効果がより顕著なものとなる。
【0040】
[混合工程]
次に、得られた粉砕物分散液と、前述したような脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体とを混合する(混合工程)。
以上のようにして、表面付近に脂肪酸モノエステルが偏在したトナー粒子が、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む絶縁性液体に分散した、本発明の液体現像剤が得られる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、本発明の液体現像剤の製造方法の第2実施形態について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法は、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子を会合させ、会合粒子を得る会合粒子形成工程と、脂肪酸モノエステル中において会合粒子を解砕し、トナー粒子を得る工程と、得られたトナー粒子を、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体中に分散する分散工程とを有する。
【0042】
[会合粒子の調製]
まず、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子が会合した会合粒子の調製方法の一例について説明する。
会合粒子の調製は、いかなる方法を用いるものであってもよいが、本実施形態では、水系液体で構成された水系分散媒中に、主として樹脂材料(トナー構成材料)で構成された分散質(微粒子)が分散した水系乳化液を得、当該水系乳化液中の分散質を会合させることにより、会合粒子を得る。
【0043】
(水系乳化液)
まず、本実施形態で用いる水系乳化液について説明する。
後述する水系乳化液調製工程で得られる水系乳化液は、水系液体で構成された水系分散媒中に、分散質(微粒子)が微分散した構成となっている。
【0044】
−水系分散媒(水系液体)−
水系分散媒は、水系液体で構成されている。
本発明において、「水系液体」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系液体は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。このようなものを用いることにより、例えば、水系分散媒中における分散質の分散性を高めることができ、水系乳化液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0045】
また、水系分散媒(水系液体)は、後述する高絶縁性液体との相溶性が低いもの(例えば、25℃における高絶縁性液体100gに対する溶解度が0.01g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、後述する混合液調製工程で得られる混合液中において、分散質の形状を好適に保持することができ、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子の形状をより均一なものとすることができる。
【0046】
水系液体の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
【0047】
−分散質(微粒子)−
分散質は、前述したようなトナー粒子を構成する成分を含むものである。
また、分散質中には、その成分の少なくとも一部を溶解する溶媒が含まれていてもよい。これにより、例えば、水系乳化液中における分散質の流動性を高めることができ、水系乳化液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0048】
溶媒としては、分散質を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、前述した水系液体よりも沸点が低いものを用いるのが好ましい。これにより、溶媒を容易に除去することができる。
また、溶媒は、前述した水系分散媒(水系液体)との相溶性が低いもの(例えば、25℃における水系分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、水系乳化液中において、分散質を安定した状態で微分散させることができる。
【0049】
また、溶媒の組成は、例えば、前述したような公知の樹脂、着色剤の組成や、水系分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
このような溶媒としては、特に限定されず、例えば、MEK等のケトン系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等の公知の有機溶媒を用いることができる。
また、水系乳化液中には、乳化分散剤が含まれていてもよい。
【0050】
乳化分散剤を用いた場合、分散質の分散性が向上するとともに、比較的容易に、水系乳化液中での分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとし、また、分散質の形状を略球形状とすることができる。その結果、最終的な液体現像剤を、略球形状で、均一な形状、大きさの揃ったトナー粒子で構成されたものとして得ることができる。ここで、乳化分散剤としては、例えば、公知の乳化剤、分散剤等が挙げられる。
水系乳化液中における乳化剤、分散剤の含有量は、特に限定されないが、3.0wt%以下であるのが好ましく、0.01〜1.0wt%であるのがより好ましい。
【0051】
また、水系乳化液には、分散助剤が含まれていてもよい。
分散助剤としては、例えば、アニオン、カチオン、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
分散助剤は、分散剤と併用するものであるのが好ましい。水系乳化液が分散剤を含むものである場合、水系乳化液中における分散助剤の含有量は、特に限定されないが、2.0wt%以下であるのが好ましく、0.005〜0.5wt%であるのがより好ましい。
【0052】
また、水系乳化液中には、分散質以外の成分が、不溶分として分散していてもよい。例えば、水系乳化液中には、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等が分散していてもよい。
以上説明したような本実施形態に用いる水系乳化液においては、分散質が液状であるため、分散質はその表面張力により、円形度(真球度)の大きい形状になる傾向を示す。したがって、最終的に得られる液体現像中のトナー粒子は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のばらつきが特に小さいものとなる。
【0053】
水系乳化液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
水系乳化液中の分散質(液状の分散質)の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜3μmであるのが好ましく、0.1〜2μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0054】
(水系乳化液調製工程)
上述したような水系乳化液は、例えば、以下のようにして調製することができる(水系乳化液調製工程)。
まず、前述した水系液体に、必要に応じて分散剤を添加した水性溶液を用意する。
一方、前述したようなトナーの主成分となる樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む樹脂液を調製する。樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料に加えて前述した溶媒を用いてもよい。また、樹脂液は、樹脂材料を加熱することにより得られる溶融した液体であってもよい。また、樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料、着色剤等のトナー用材料を混練して得られた混練物を用いてもよい。このような混練物を用いることにより、トナーの構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、前述したような溶媒に対する分散性が比較的低い顔料(着色剤)を用いた場合、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、前述した水系乳化液の水系分散媒に対する分散性に劣る成分や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分が含まれる場合であっても、水系乳化液における分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。
【0055】
次に、上記樹脂液を、撹拌した状態の水性溶液中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水系分散媒中に、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液が得られる。このような方法で、水系乳化液を調製することにより、水系乳化液中における分散質の円形度をさらに高めることができる。その結果、最終的に得られる液体現像中のトナー粒子は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のばらつきが特に小さいものとなる。なお、樹脂液の滴下を行う際、水性溶液および/または樹脂液を加熱しておいてもよい。また、樹脂液の調製に溶媒を用いた場合、例えば、上記のような滴下を行った後に、得られた水系乳化液を加熱したり、減圧雰囲気下に置くことにより、分散質中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
また、樹脂液と水系液体との混合は、攪拌機等により樹脂液に剪断を加えつつ、着色樹脂液中に水系液体を徐々に添加(滴下)することにより転相乳化を行い、最終的に、水系液体中に、樹脂液由来の分散質が分散した分散液を得てもよい。これにより、例えば、分散質が均一かつ微細に分散した水系乳化液を、容易かつ確実に得ることができる。
【0056】
(会合粒子形成工程)
次に、上記のようにして得られた水系乳化液に、電解質を添加し、分散質を会合させ、会合粒子を形成する(会合粒子形成工程)。
添加する電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウム等の1価のカチオンの硫酸塩は、均一な会合を進める上で好適に用いることができる。
【0057】
なお、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤や、イオン性、非イオン性界面活性剤を分散安定剤として添加してもよい。分散安定剤(乳化剤)の存在下で電解質を添加することにより、不均一な会合を防止することができる。
このような分散安定剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、各種プルロニック系等の非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。中でも、アニオン性、非イオン性の界面活性剤は、少量の添加量であっても分散安定性に効果があり、好適に用いることができる。非イオン性界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。
【0058】
添加する電解質の量は、水系乳化液中の固形分100重量部に対し、0.5〜15重量部であることが好ましく、1〜12重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることがさらに好ましい。電解質の添加量が前記下限値未満であると、分散質の会合が十分に進行しない場合がある。また、電解質の添加量が前記上限値を超えると、分散質の会合が不均一となり、粗大粒子が発生する可能性があり、最終的に得られるトナー粒子の大きさにばらつきが生じる可能性がある。
【0059】
また、水系乳化液の調製直後に本工程を行ってもよいし、水系乳化液の調整後、水系乳化液を保存し、その後、本工程を行ってもよい。後者の場合、保存する期間は、特に限定されないが、10日以内であると、得られる会合粒子の粒度分布を特に狭いものとすることができる。
そして、会合させた後、濾過・洗浄・乾燥等を行うことにより、会合粒子を得る。
得られる会合粒子の平均粒径は、0.1〜7μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。
【0060】
[解砕工程]
次に、上記のようにして得られた会合粒子を、脂肪酸モノエステル中で解砕する(解砕工程)。これにより、脂肪酸モノエステル中にトナー粒子が分散したトナー粒子分散液が得られる。
また、このように、脂肪酸モノエステル中で会合粒子を解砕することにより、最終的に得られる液体現像剤中において、トナー粒子は、その表面付近に脂肪酸モノエステルを偏在(吸着)させたものとなる。すなわち、解砕という大きな剪断力をかけることによって、トナー粒子の表面に脂肪酸モノエステルを偏在させることができる。
また、脂肪酸モノエステルという液体中で解砕しているので、凝集等によって粗大化したトナー粒子が発生するのを防止することができる。
また、得られるトナー粒子は、その表面に、微粒子(分散質)に由来する凹凸を有するものとなるので、脂肪酸モノエステルをこの凹凸に確実に保持することができる。
【0061】
また、本実施形態では、会合粒子を解砕することによりトナー粒子を得るので、従来の粉砕法や湿式粉砕法と比較して、微粉(目的の大きさの粒子よりも極端に小さい粒子)の発生を効果的に防止することができる。その結果、微粉による液体現像剤の帯電特性の低下を効果的に防止することができる。
また、脂肪酸モノエステルは、比較的粘度が低いため、会合粒子を構成する微粒子(分散質)の間に侵入しやすく、好適に会合粒子を解砕することができる。
【0062】
また、脂肪酸モノエステルは、解砕時において、会合粒子の表面に付着、浸透し、上述したような可塑剤効果を発現させ、会合粒子の表面部分を可塑化させる。このため、会合粒子は解砕時に表面が可塑化されることにより、会合粒子の表面にあるカルボキシル基等の親水性でイオン化が可能な官能基を、会合粒子の最表面から、疎水性である絶縁性液体の接しない会合粒子内部に包み込むことができる。このため、トナー粒子は、絶縁性液体への分散性が優れたものとなり、さらに液体現像剤の電気抵抗は高いものとなる。
【0063】
また、解砕時において、脂肪酸モノエステルに分散剤を添加して、会合粒子の解砕を行うのが好ましい。このように、解砕時に分散剤を添加することで、トナー粒子の表面付近に分散剤を好適に偏在させることができる。また、トナー粒子表面に付着した脂肪酸モノエステルは、トナー粒子表面を可塑化させるため、分散剤が特に好適にトナー粒子に付着しやすくなり、付着した分散剤は、解砕後においても強固にトナー粒子表面に保持される。その結果、解砕後に、他の絶縁性液体を含む液体と混合した際においても、トナー粒子の表面付近に分散剤をより確実に保持することができる。また、保存時においても、トナー粒子の表面付近にある分散剤は、トナー粒子の表面付近に確実に保持される。結果として、液体現像剤の保存性、帯電特性、定着特性は優れたものとなる。
【0064】
また、解砕時において、分散剤が会合粒子表面に付着し、会合粒子の分散性が高まって、会合粒子と絶縁性液体との混合物の粘度が低くなる。このため、より効率良く会合粒子を解砕することができる。また、分散剤を加えて解砕を行うことにより、解砕によって会合粒子の表面積が大きくなった場合においても、液体現像剤の粘度を適切な範囲に保つことができる。
【0065】
解砕に用いることのできる分散剤は、特に限定されず、前述した第1実施形態で説明した分散剤と同様のものを用いることができる。
これらの分散剤の中でも、高分子分散剤を用いることが好ましく、ポリアミン脂肪族縮重合体を用いることがより好ましい。高分子分散剤を用いた場合、高分子分散剤をトナー粒子の表面に好適に(絡みつくように)存在させることができる。このため、高分子分散剤は、トナー粒子の表面付近に確実に偏在することができ、上述の効果をより確実に得ることが出来る。
【0066】
また、解砕に用いることのできる装置は、特に限定されず、例えば、振動型ボールミル、回転型ボールミル、遊星型ボールミル等のボールミル、ユニバーサルカッティングミル、ロータースピードミル等のカッティングミル、縦型ビーズミル、横型ビーズミル、アトライタ、SCミル、MSCミル、ファインミル等のビーズミル、ジェットミル、クラシファイヤーミル、ディスクミル、衝撃式微粉砕機、自動乳鉢等を用いることができる。この中でも、ビーズミルあるいはボールミルを用いることが好ましい。これにより、適度な剪断力で会合粒子を解砕でき、粒度分布が狭く、十分に小さな大きさのトナー粒子を効率よく得ることができる。また、脂肪酸モノエステルおよび分散剤を好適にトナー粒子表面に付着させ、偏在させることができる。このため、得られる液体現像剤は、粒度分布が狭く、小粒径のトナー粒子が特に安定して分散し、定着特性および帯電特性が特に優れたものとなる。
【0067】
[分散工程]
次に、上記のようにして得られたトナー粒子分散液と、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体とを混合し、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させる(分散工程)。
以上のようにして、表面付近に脂肪酸モノエステルが偏在したトナー粒子が、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む絶縁性液体に分散した、本発明の液体現像剤が得られる。
【0068】
《画像形成装置》
次に、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
本発明の画像形成装置は、上述したような本発明の液体現像剤を用いて記録媒体上にカラー画像を形成するものである。
図1は、本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図、図2は、図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図、図3は、図1に示す画像形成装置が備える塗布ローラを示す斜視概念図、図4は、図3に示す塗布ローラの拡大模式図、図5は、現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図、図6は、図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【0069】
画像形成装置1000は、図1に示すように、4つの現像部30Y、30M、30C、30Kと、中間転写部40と、2次転写ユニット(2次転写部)60と、定着部(定着装置)F40とを有している。
現像部30Y、30M、30Cは、それぞれ、イエロー系液体現像剤(Y)、マゼンダ系液体現像剤(M)、シアン系の液体現像剤(C)で、潜像を現像し、各色に対応したカラーの単色像を形成する機能を有している。また、現像部30Kは、ブラック系液体現像剤(K)で、潜像を現像し、ブラック(黒)の単色像を形成する機能を有している。
【0070】
現像部30Y、30M、30C、30Kの構成は同様であるので、以下、現像部30Yについて説明する。
現像部30Yは、図2に示すように、像担持体の一例としての感光体10Yと、感光体10Yの回転方向に沿って、帯電ローラ11Yと、露光ユニット12Yと、現像ユニット100Yと、感光体スクイーズ装置101Yと、1次転写バックアップローラ51Yと、除電ユニット16Yと、感光体クリーニングブレード17Yと、現像剤回収部18Yとを有している。
【0071】
感光体10Yは、円筒状の基材とその外周面に形成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図1中の矢印で示すように時計回りに回転する。
感光体10Yは、後述する現像ユニット100Yにより液体現像剤が供給され、表面に液体現像剤の層が形成されるものである。
【0072】
帯電ローラ11Yは、感光体10Yを帯電するための装置であり、露光ユニット12Yは、レーザを照射することによって帯電された感光体10Y上に潜像を形成する装置である。この露光ユニット12Yは、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピュータから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体10Y上に照射する。
【0073】
現像ユニット100Yは、感光体10Y上に形成された潜像を、本発明の液体現像剤を用いて現像するための装置である。なお、現像ユニット100Yの詳細については後に詳述する。
感光体スクイーズ装置101Yは、現像ユニット100Yより回転方向下流側に、感光体10Yに対向して配置されており、感光体スクイーズローラ13Yと、該感光体スクイーズローラ13Yに押圧摺接して表面に付着した液体現像剤を除去するクリーニングブレード14Yと、除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部15Yとで構成される。この感光体スクイーズ装置101Yは、感光体10Yに現像された現像剤から余剰なキャリア(絶縁性液体)および本来不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。
【0074】
1次転写バックアップローラ51Yは、感光体10Yに形成された単色像を、後述する中間転写部40に転写するための装置である。
除電ユニット16Yは、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に中間転写像が転写された後に、感光体10Y上の残留電荷を除去する装置である。
感光体クリーニングブレード17Yは、感光体10Yの表面に当接されたゴム製の部材で、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に像が転写された後に、感光体10Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部18Yは、感光体クリーニングブレード17Yにより除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0075】
中間転写部40は、エンドレスの弾性ベルト部材であり、ベルト駆動ローラ41とテンションローラ42との間に巻き掛けて張架され、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながら駆動ローラ41により回転駆動される。
この中間転写部40に、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kにより、現像部30Y、30M、30C、30Kで形成された各色に対応した単色像が順次転写され、各色に対応した単色像が重ね合わされる。これにより、中間転写部40にフルカラー現像剤像(中間転写像)が形成される。
【0076】
中間転写部40には、このように複数の感光体10Y、10M、10C、10Kに形成した単色像を順次2次転写して重ね合わせて担持し、一括して紙、フィルム、布等の記録媒体F5に2次転写する。そのため、2次転写行程において記録媒体F5にトナー画像を転写するに当たって、記録媒体F5表面が繊維質などによって平滑でないシート材であっても、この非平滑なシート材表面に倣って2次転写特性を向上させる手段として、弾性ベルト部材を採用している。
【0077】
ベルト駆動ローラ41と共に中間転写部40を張架するテンションローラ42側には、クリーニングブレード46、現像剤回収部47からなるクリーニング装置が配置されている。
クリーニングブレード46は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、中間転写部40上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
【0078】
現像剤回収部47は、クリーニングブレード46により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
また、1次転写バックアップローラ51Yより中間転写部40の移動方向下流側に、中間転写部スクイーズ装置52Yが配されている。
この中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40上に転写された液体現像剤が望ましい分散状態に至っていない場合に、転写された液体現像剤から余剰の絶縁性液体を除去する手段として設けられている。
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部スクイーズローラ53Yと、中間転写部40を挟んで中間転写部スクイーズローラ53Yと対向配置されるバックアップローラ54Yと、中間転写部スクイーズローラ53Yに押圧摺接して表面をクリーニングする中間転写部スクイーズローラクリーニングブレード55Yおよび現像剤回収部15Mから構成される。
【0079】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40に1次転写された現像剤から余剰なキャリアを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げると共に、本来不要なカブリトナーを回収する機能を有する。現像剤回収部15Mは、中間転写部40の移動方向下流側に配置されたマゼンタの感光体スクイーズローラのクリーニングブレード14Mで回収されるキャリアの回収機構を中間転写部スクイーズローラ53Yの中間転写部スクイーズローラクリーニングブレード55Yにも兼用するものである。このように2色目以降の像担持体スクイーズ装置の現像剤回収部15(M、C、K)において、その前の色の1次転写バックアップローラ51(Y、M、C)より中間転写部40の移動方向下流側に配置された中間転写部スクイーズ装置52(Y、M、C)の現像剤回収部として兼用することにより、それらの間隔を一定に規制することができ、構造を簡潔にして小型化を図ることができる。
【0080】
2次転写ユニット60は、2次転写ローラ61が中間転写部40を挟んでベルト駆動ローラ41と対向配置され、さらに2次転写ローラ61のクリーニングブレード62、現像剤回収部63からなるクリーニング装置が配置される。
2次転写ユニット60では、中間転写部40上に色重ねして形成された中間転写像が2次転写ユニット60の転写位置に到達するタイミングに合せて、記録媒体F5を搬送、供給し、その記録媒体F5に中間転写像が2次転写される。
2次転写ユニット60により記録媒体F5上に転写されたトナー像(転写像)F5aは、後述する定着部F40に送られ、定着が行われる。
【0081】
2次転写ローラクリーニングブレード62は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、2次転写ローラ61上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部63は、2次転写ローラクリーニングブレード62により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0082】
次に、現像ユニット100Y、100M、100C、100Kについて、詳細に説明する。なお、以下の説明では、代表的に、現像ユニット100Yについて説明する。
現像ユニット100Yは、図2に示すように、液体現像剤貯留部31Yと、塗布ローラ32Yと、規制ブレード33Yと、現像剤攪拌ローラ34Yと、現像ローラ20Yと、現像ローラクリーニングブレード21Yと、現像剤圧縮ローラ(圧縮手段)22Yとを有している。
液体現像剤貯留部31Yは、感光体10Yに形成された潜像を現像するための液体現像剤を貯留する機能を備えたものである。
【0083】
塗布ローラ32Yは、液体現像剤を現像ローラ20Yへ供給する機能を備えたものである。
この塗布ローラ32Yは、図3に示すように、鉄等金属性のローラの表面に溝32Yaが均一かつ螺旋状に形成されニッケルメッキが施された、いわゆるアニロクスローラを呼称されるものであり、その直径は約25mmである。本実施形態では、図3に示すように、塗布ローラ32Yの回転方向D2に対して斜めに複数の溝32Yaが、いわゆる切削加工や転造加工等によって形成されている。
この塗布ローラ32Yは、時計回りに回転しながら液体現像剤に接触することによって、溝32Yaに、液体現像剤貯留部31Y内の液体現像剤を担持して、該担持した液体現像剤を現像ローラ20Yへ搬送する。したがって、塗布ローラ32Yは溝32Yaが形成されているX方向の幅で現像ローラ20Yに液体現像剤を塗布することができる。
【0084】
なお、溝ピッチ(図4中のX方向において、溝32Yaを形成する山と山の周期)は、必要な液体現像剤の膜厚に応じておよそ55〜250μmとするのが好ましい。本実施形態では、溝ピッチPが約80μm、山の幅が約40μm、溝32Yaの上部の幅PI1が約50μm、底面部の幅PI2が約30μm、溝32Yaの深さHeが約20μm、山32Ybの高さHcが約30μmとなるように構成され、山32Ybの中央部から溝32Yaの底部へと単調に向う傾斜部SLが形成されている。また、本実施形態では、山32Yb部の表面粗さRzをR1a≒1.0μm、溝32Ya部の表面粗さRzをR2a≒1.0μmとなるように構成している。
【0085】
規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yの表面に当接して、塗布ローラ32Y上の液体現像剤の量を規制する。すなわち、当該規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Y上の余剰液体現像剤を掻き取って、現像ローラ20Yに供給する塗布ローラ32Y上の液体現像剤を計量する役割を果たす。この規制ブレード33Yは、弾性体としてのウレタンゴムからなり、鉄等金属製の規制ブレード支持部材より支持されている。なお、規制ブレード33Yのゴム硬度は、JIS−Aで約77度であり、規制ブレード33Yの、塗布ローラ32Y表面への当接部の硬度(約77度)は、後述する現像ローラ20Yの弾性体の層の塗布ローラ32Y表面への圧接部の硬度(約85度)よりも低くなっている。
【0086】
現像剤攪拌ローラ34Yは、液体現像剤を一様分散状態に攪拌する機能を備えたものである。
液体現像剤貯留部31Y内において、液体現像剤の中のトナー粒子はプラスの電荷を有し、液体現像剤は、現像剤撹拌ローラ34Yにより撹拌されて一様分散状態になり、塗布ローラ32Yが回転することによって、液体現像剤貯留部31Yから汲み上げられ、規制ブレード33Yによって液体現像剤量が規制されて現像ローラ20Yに供給される。
【0087】
現像ローラ20Yは、感光体10Yに担持された潜像を液体現像剤により現像するために、液体現像剤を担持して感光体10Yと対向する現像位置に搬送する。
現像ローラ20Yは、その表面に、前述した塗布ローラ32Yから液体現像剤を供給することにより、液体現像剤層201Yを形成するものである。
この現像ローラ20Yは、鉄等金属製の内芯の外周部に、導電性を有する弾性体の層を備えたものであり、その直径は約20mmである。また、弾性体の層は、二層構造になっており、その内層として、ゴム硬度がJIS−A約30度で、厚み約5mmのウレタンゴムが、その表層(外層)として、ゴム硬度がJIS−A約85度で、厚み約30μmのウレタンゴムが備えられている。そして、現像ローラ20Yは、前記表層が圧接部となって、弾性変形された状態で塗布ローラ32Yおよび感光体10Yのそれぞれに圧接している。
【0088】
また、現像ローラ20Yは、その中心軸を中心として回転可能であり、当該中心軸は、感光体10Yの回転中心軸よりも下方にある。また、現像ローラ20Yは、感光体10Yの回転方向(図2において時計方向)と逆の方向(図2において反時計方向)に回転する。なお、感光体10Y上に形成された潜像を現像する際には、現像ローラ20Yと感光体10Yとの間に電界が形成される。
【0089】
現像剤圧縮ローラ22Yは、現像ローラ20Yに担持された液体現像剤のトナーを圧縮状態にする機能を備えた装置である。言い換えると、現像剤圧縮ローラ22Yは、前述した液体現像剤層201Yに対してトナー粒子1と同極性の電界を印加することにより、図5に示すように、液体現像剤層201Y中において、現像ローラ20Yの表面近傍にトナー粒子1を偏在させる機能を備えた装置である。このようにトナー粒子を偏在させることにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。
【0090】
また、現像剤圧縮ローラ22Yによってトナー粒子を偏在させる場合、トナー粒子が現像ローラ20Y側に移動するにつれて、液体現像剤層201Yの表面近傍における含窒素型PAG誘導体の濃度が高くなる。このように液体現像剤層201Yの表面近傍における含窒素型PAG誘導体の濃度が高くなることにより、液体現像剤層201Yの表面における界面張力をより効果的に低下させることができ、最終的に得られる画像にムラが生じるのをより効果的に防止または抑制することができる。
この現像剤圧縮ローラ22Yには、クリーニングブレード23Yが設けられている。
このクリーニングブレード23Yは、現像剤圧縮ローラ22Yに付着した液体現像剤を除去する機能を有している。
【0091】
また、現像ユニット100Yは、現像ローラ20Yの表面に当接されたゴム製の現像ローラクリーニングブレード21Yを有している。この現像ローラクリーニングブレード21Yは、前記現像位置で現像が行われた後に、現像ローラ20Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去するための装置である。現像ローラクリーニングブレード21Yにより除去された液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Y内に回収され、再利用される。
【0092】
また、画像形成装置1000は、各現像剤回収部(15、18、47、63)に回収された液体現像剤中の絶縁性液体を再利用する再利用装置を有している。
この再利用装置は、各現像剤回収部から、回収された液体現像剤を搬送する搬送路70と、搬送された液体現像剤の固形分(トナー粒子等)を除去するフィルタ手段77と、当該フィルタ手段77により固形分が除去された絶縁性液体を貯留する絶縁性液体貯留部74とを備えている。
搬送路70には、ポンプ76が設けられており、このポンプ76により、各現像剤回収部に回収された液体現像剤を絶縁性液体貯留部74に搬送する。
絶縁性液体貯留部74に貯留された絶縁性液体は、図示せぬ搬送手段により、各現像部に適宜搬送され、再利用される。
【0093】
また、フィルタ手段77に除去された固形分は、図示せぬフィルタ状態の検知手段により検知される。そして、その検知結果に基づいてフィルタ手段77を交換する。これにより、フィルタ手段77のフィルタリング機能を安定して維持することができる。
このような再利用装置により回収された絶縁性液体は、必要に応じて、図示せぬ搬送手段により各液体現像剤貯留部に供給され、再利用される。
【0094】
次に、定着部について説明する。
定着部F40は、前述した現像部、転写部等において形成された未定着のトナー画像F5aを、記録媒体F5上に定着させるものである。
定着部F40は、図6に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、スプリングF9とを有している。
【0095】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0096】
熱定着ローラF1の内部には、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントは、それぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0097】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0098】
前述した熱定着ローラF1の弾性体F1cと加圧ローラF2の弾性体F2cとは、略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップを形成する。また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
【0099】
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0100】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0101】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
【0102】
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
ニップ終了位置における記録媒体F5に対する線圧、すなわち、記録媒体F5に対して加圧ローラF2の線圧は、500g/cm以下であるのが好ましく、300g/cm以下であるのがより好ましい。このような比較的低い線圧であっても、本発明の液体現像剤を適用することにより、記録媒体F5に対してトナー粒子を強固に定着させることができる。また、線圧を比較的低いことにより、加圧ローラF2や熱定着ローラF1の駆動電力を小さいものとすることができ、省エネルギー化も図ることができる。
【0103】
定着部F40において、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0104】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
【0105】
また、定着部F40は、記録媒体F5にトナー画像F5aを定着させた後に、熱定着ローラF1の表面に付着(残存)した絶縁性液体を除去する除去ブレード(除去手段)F12を有している。なお、この除去ブレードF12は、絶縁性液体を除去するとともに、定着の際に熱定着ローラF1上に移行したトナー等も同時に除去することができる。
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0106】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
熱定着ローラF1により加える熱(定着温度)は、具体的には、80〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましい。
【0107】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような製造方法により製造されたものに限定されない。
【0108】
また、前述した実施形態では、水系乳化液を得、該水系乳化液に電解質を添加することにより会合粒子を得るものとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、会合粒子は、水系液体に、着色剤とモノマーと界面活性剤と重合開始剤とを分散させ、乳化重合により、水系乳化液を調製し、該水系乳化液に電解質を添加して会合させる乳化重合会合法を用いて調製されたものであってもよいし、得られた水系乳化液を噴霧乾燥することにより会合粒子を得るものであってもよい。
【実施例】
【0109】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
<着色剤マスター溶液の調製>
まず、ポリエステル樹脂(軟化温度:99℃)と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0110】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物の粉末に固形分含有量が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。
【0111】
<樹脂液の調製>
上記着色剤マスター溶液:133重量部にメチルエチルケトン:140重量部および前記ポリエステル樹脂:60重量部を加えて、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で混合し、樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0112】
<水系乳化液の調製(水系乳化液調製工程)>
マックスブレンド攪拌翼を有する円筒型の2Lセパラブルフラスコに上述の樹脂液を500重量部、メチルエチルケトンを45.5重量部入れ、樹脂液の固形分含有量を55%とした。
次いでフラスコ内の樹脂液に1規定アンモニア水:41.7重量部(前記ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の総量に対するモル当量比は1.1)を加えて、スリーワンモーター(新東科学社製)により、攪拌羽の回転数を210rpm(攪拌翼の周速:0.71m/s)として十分に攪拌し、その後攪拌を維持しながら、脱イオン水:133重量部を加えた。フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して133重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こし、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液を得た。
【0113】
<会合による会合粒子の製造(会合粒子形成工程)>
次に、フラスコ内の攪拌を継続しつつ、水系乳化液に1規定アンモニア水と水との総量が593重量部となるように脱イオン水:285重量部を加えた。次いで、水系乳化液に対して、アニオン型乳化剤であるエマールO(花王社製):2.6重量部を脱イオン水:30重量部に希釈して添加した。
【0114】
その後、水系乳化液の温度を25℃に保ちつつ、攪拌の回転数を150rpm(攪拌翼の周速:0.54m/s)として、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液:300重量部を滴下し、分散質の会合体の粒径を3.5μmとした。滴下後、分散質の会合体の粒径が5.2μmに成長するまで攪拌を続け会合操作を終了した。
得られた会合体分散液に対して、減圧下で有機溶剤を留去し、洗浄、脱水を繰り返した後に、乾燥し、会合粒子を得た。なお、各実施例、比較例でのそれぞれの粒子の平均粒径は体積基準平均粒径であり、これらの粒子の平均粒径および粒度分布はMastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。
【0115】
<会合粒子の解砕(解砕工程)>
上記の方法で得られた会合粒子:50重量部、脂肪酸モノエステルとしてのカプリル酸メチル(日本油脂社製):80重量部と、分散剤としてのポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース13940」):1重量部とをジルコニア製ポット(内容積500ml)に入れ、さらにスチールビーズ(ビーズ直径:1mm)を体積充填率30%になるようにジルコニア製ポットに入れた。回転式ボールミル(ANZ51S アズワン社製)にて回転速度:210rpmで48時間解砕を行った。なお、25℃において振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定されるカプリル酸メチルの粘度は、3mPa・sであった。
【0116】
<液体現像剤の製造(分散工程)>
解砕終了後、脂肪族炭化水素としての流動パラフィンA(コスモ石油社製、商品名「コスモホワイトP−60」):120重量部を投入し、混合した。混合は、解砕に用いたものと同様のボールミルと、スチールビーズ(ビーズ直径:1mm)を用いて、体積充填率30%、回転速度:210rpmで24時間撹拌することによって行った。これにより、シアン系液体現像剤が得られた。なお、25℃において振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される流動パラフィンAの粘度は、15mPa・sであった。
【0117】
得られた液体現像剤中における、トナー粒子の平均粒径は1.3μmであった。また、25℃において振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される液体現像剤の粘度は、180mPa・sであった。
また、シアン系顔料の代わりに、マゼンダ系顔料:ピグメントレッド122、イエロー系顔料:ピグメントイエロー180、ブラック系顔料:カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)に、それぞれ変更した以外は、上記と同様にして、マゼンダ系液体現像剤、イエロー系液体現像剤、ブラック系液体現像剤を製造した。
【0118】
(実施例2〜4)
樹脂材料、解砕に使用する液体、解砕後に添加する液体として、表1に示すようなものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、各色に対応する液体現像剤を製造した。なお、表中、シリコーンオイルは、信越化学工業社製の商品名「KF96」を示す。
【0119】
(実施例5)
ポリエステル樹脂(軟化温度:99℃):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを二本ロールで樹脂の軟化点を超える135℃で混練し、1〜10mm角に粗粉砕し、着色チップを得た。
次に、液体窒素にて冷却しながらピンミルで粉砕し、150μmの目開きのメッシュで分級すると、平均粒径42μmの粉砕物が得られた。
さらに、衝突式粉砕機で粉砕を行い、平均粒径5μmの乾式粉体を得た。
【0120】
上記の方法で得られた乾式粉体:50重量部、脂肪酸モノエステルとしてのカプリル酸メチル(日本油脂社製):80重量部と、分散剤としてのポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース13940」):1重量部とをジルコニア製ポット(内容積500ml)に入れ、さらにスチールビーズ(ビーズ直径:1mm)を体積充填率30%になるようにジルコニア製ポットに入れた。回転式ボールミル(ANZ51S アズワン社製にて公転速度:210rpmで240時間粉砕を行った。
【0121】
粉砕終了後、流動パラフィンA(コスモ石油社製、商品名「コスモホワイトP−60」):120重量部を投入し、混合した。混合は、粉砕に用いたものと同様のボールミルと、スチールビーズ(ビーズ直径1mm)を用いて、体積充填率30%、回転速度:210rpmで24時間撹拌することによって行った。これにより、シアン系液体現像剤が得られた。なお、25℃において振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される流動パラフィンAの粘度は、15mPa・sであった。
【0122】
得られた液体現像剤中における、トナー粒子の平均粒径は1.2μmであった。また、25℃において振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される液体現像剤の粘度は、185mPa・sであった。
また、シアン系顔料の代わりに、マゼンダ系顔料:ピグメントレッド122、イエロー系顔料:ピグメントイエロー180、ブラック系顔料:カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)に、それぞれ変更した以外は、上記と同様にして、マゼンダ系液体現像剤、イエロー系液体現像剤、ブラック系液体現像剤を製造した。
【0123】
(実施例6〜8)
樹脂材料、粉砕に使用する液体、粉砕後に添加する液体として、表1に示すようなものを用いた以外は、前記実施例5と同様にして、各色に対応する液体現像剤を製造した。なお、表中、流動パラフィンBは、出光石油社製の商品名「ダイアナフレシアW−8」を示す。
【0124】
(比較例1〜3)
樹脂材料、解砕に使用する液体、解砕後に添加する液体として、表1に示すようなものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、各色に対応する液体現像剤を製造した。
(比較例4〜6)
樹脂材料、粉砕に使用する液体、粉砕後に添加する液体として、表1に示すようなものを用いた以外は、前記実施例5と同様にして、各色に対応する液体現像剤を製造した。
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造条件を表1に示した。
【0125】
【表1】

【0126】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、以下の評価を行った。
[2.1]定着強度
各実施例および各比較例で製造した各色に対応した液体現像剤について、図1〜図6に示す画像形成装置を用いて、定着装置の定着温度を180℃、記録媒体の搬送速度を30枚/分、加圧ローラによる線圧を480g/cmとして、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)に所定パターンのカラー画像を形成した
その後、非オフセット領域を確認した後、記録媒体上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0127】
A :画像濃度残存率が95%以上(非常に良い)。
B :画像濃度残存率が90%以上95%未満(良い)。
C :画像濃度残存率が80%以上90%未満(普通)。
D :画像濃度残存率が70%以上80%未満(やや悪い)。
E :画像濃度残存率が70%未満(非常に悪い)。
【0128】
[2.2]帯電特性
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤について、マイクロチック・ニチオン社製の「顕微鏡式レーザーゼータ電位計」ZC−2000を用いて電位差を測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
測定は、液体現像剤を希釈溶媒で希釈して、□10mmの透明セルに入れ、電極間9mmで300Vの電圧をかけると同時に顕微鏡でセル内の粒子の移動速度を観察することで、移動速度を算出して、その値からゼータ電位を求めることにより行った。
【0129】
A :電位差が+100mV以上(非常に良い)。
B :電位差が+85mV以上、+100mV未満(良い)。
C :電位差が+70mV以上、+85mV未満(普通)。
D :電位差が+50mV以上、+70mV未満(やや悪い)。
E :電位差が+50mV未満(非常に悪い)。
【0130】
[2.3]分散安定性試験
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤10mLを遠沈管に入れ、1200G、10分間の条件で遠心分離機にかけた後、上澄みの200μLを分集し、各実施例および各比較例で用いた絶縁性液体で100倍に希釈し、サンプルとした。
各サンプルを紫外可視分光光度計(日本分光社製、V−570)を用いて吸収波長を測定した。
【0131】
シアン系顔料の吸収域(685nm)の吸光度の値より、以下の4段階の基準に従って評価した。
A :吸光度が1.50以上(沈降が全く見られない)。
B :吸光度が1.00以上1.50未満(沈降がほとんど見られない)。
C :吸光度が0.50以上1.00未満(沈降が確認される)。
D :吸光度が0.50未満(沈降が顕著で自然放置でも沈降が始まる)。
【0132】
[2.4]脂肪酸モノエステルの偏在評価
各実施例および比較例3、比較例6について、ボールミル解砕(実施例5〜8および比較例6にあっては、粉砕)1時間後の液体と、最終的に得られた液体現像剤を、各々遠心分離を行い、上澄みを除去して固形分を取り出した。
固形分に熱50℃をかけて、精密天秤により、重量変化を測定して、以下の基準に従い、トナー粒子表面の脂肪酸モノエステルの存在の有無を評価した。
【0133】
A:0.005g以上重量が重くなっており、トナー粒子の表面付近に脂肪酸モノエステルが偏在している。
B:重量変化が0.005gよりも小さく、トナー粒子の表面付近に脂肪酸モノエステルが偏在していない。
これらの結果を、液体現像剤の性状とともに表2に示す。
【0134】
【表2】

【0135】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤は、定着強度、帯電特性ともに優れていた。また、分散安定性にも優れていた。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。また、各実施例で得られた液体現像剤中のトナー粒子表面には、脂肪酸モノエステルが偏在しているのが確認された。これに対して、比較例3および6では、脂肪酸モノエステルの偏在が確認できなかった。
【0136】
また、各実施例で製造した液体現像剤について、図1〜図6に示す画像形成装置を用いて、定着装置の定着温度を180℃、記録媒体の搬送速度を30枚/分、加圧ローラによる線圧を480g/cmとして記録媒体(富士ゼロックスオフィスサプライ製、J紙)に画像形成を行ったところ、かすれ、むら等がなく鮮明であり、また、解像度が1200dpiである高細度のトナー画像が得られた。
【0137】
また、定着装置の定着温度を、160℃、140℃、120℃、100℃に変更し、上記と同様にして定着強度を評価したところ、同様の結果が得られた。このことから、本発明の液体現像剤は、低温定着に適したものであることがわかる。
また、定着装置の記録媒体の搬送速度を、30枚/分から、40枚/分、50枚/分、60枚/分と速くし、上記と同様にして定着強度を評価したところ、同様の結果が得られた。このことから、本発明の液体現像剤は、高速印刷に適したものであることがわかる。
【0138】
また、定着装置の加圧ローラによる線圧を、480g/cmから、240g/cmに変更し、上記と同様にして定着強度を評価したところ、同様の結果が得られた。このことから、高い線圧をかけなくとも、十分な定着強度を得ることができることがわかる。また、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に好適に適用することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【図3】図1に示す画像形成装置が備える塗布ローラを示す斜視概念図である。
【図4】図3に示す塗布ローラの拡大模式図である。
【図5】現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図6】図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0140】
1…トナー粒子 1000…画像形成装置 10Y、10M、10C、10K…感光体 11Y…帯電ローラ 12Y…露光ユニット 13Y、13M…感光体スクイーズローラ 14Y、14M…クリーニングブレード 15Y、15M…現像剤回収部 16Y…除電ユニット 17Y…感光体クリーニングブレード 18Y…現像剤回収部 20Y、20M、20C、20K…現像ローラ 201Y…液体現像剤層 21Y…現像ローラクリーニングブレード 22Y…現像剤圧縮ローラ 23Y…現像剤圧縮ローラクリーニングブレード 30Y、30M、30C、30K…現像部 31Y…液体現像剤貯留部 32Y…塗布ローラ 32Ya…溝 32Yb…山 33Y…規制ブレード 34Y…撹拌ローラ 40…中間転写部 41…ベルト駆動ローラ 42…テンションローラ 46…中間転写部クリーニングブレード 47…現像剤回収部 51Y、51M、51C、51K…1次転写バックアップローラ 52Y、52M、52C、52K…中間転写部スクイーズ装置 53Y…中間転写部スクイーズローラ 54Y…中間転写部スクイーズバックアップローラ 55Y…中間転写部スクイーズローラクリーニングブレード 60…2次転写ユニット 61…2次転写ローラ 62…2次転写ローラクリーニングブレード 63…現像剤回収部 70…搬送路 74…絶縁性液体貯留部 76…ポンプ 77…フィルタ手段 100Y…現像ユニット 101Y…感光体スクイーズ装置 F40…定着装置 F1…熱定着ローラ(加熱ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F11c…離型層 F12…除去ブレード F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む絶縁性液体と、
前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、
前記トナー粒子の表面付近には、脂肪酸モノエステルが偏在していることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記脂肪酸モノエステルの粘度は、10mPa・s以下である請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記脂肪酸モノエステルは、炭素数が8〜18の飽和脂肪酸のエステルを含む請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記トナー粒子を構成する樹脂材料は、ポリエステル樹脂である請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
脂肪酸モノエステル中で、主として樹脂材料で構成されたトナー材料を粉砕し、粉砕物分散液を得る粉砕工程と、
前記粉砕物分散液と、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体とを混合する混合工程とを有し、
得られる液体現像剤が、前記脂肪族炭化水素および/または前記シリコーンオイルを含む絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散した前記トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子の表面付近には、前記脂肪酸モノエステルが偏在したものであることを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項6】
主として樹脂材料で構成された微粒子を会合させ、会合粒子を得る工程と、
脂肪酸モノエステル中において、前記会合粒子を解砕し、トナー粒子を得る工程と、
得られた前記トナー粒子を、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む液体中に分散する分散工程とを有し、
得られる液体現像剤が、前記脂肪族炭化水素および/または前記シリコーンオイルを含む絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散した前記トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子の表面付近には、前記脂肪酸モノエステルが偏在したものであることを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項7】
色の異なる複数の液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部とを有し、
前記液体現像剤が、脂肪族炭化水素および/またはシリコーンオイルを含む絶縁性液体と、絶縁性液体中に分散した前記トナー粒子とを含み、前記トナー粒子の表面付近には、脂肪酸モノエステルが偏在したものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
複数の前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させる圧縮手段と、前記現像ローラ上の前記液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体とを有する請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記圧縮手段は、前記層に対して、前記トナー粒子と同極性の電界を印加することにより、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させる請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記現像ローラ上の液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体と、前記現像ローラに液体現像剤を供給する塗布ローラとを有し、
前記塗布ローラは、その表面に溝が形成されたアニロクスローラであり、前記溝に前記液体現像剤を担持することによって前記現像ローラに前記液体現像剤を供給する請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記塗布ローラに形成された前記溝は、前記塗布ローラの回転方向に対して斜めに設けられたものである請求項10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−203353(P2008−203353A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36970(P2007−36970)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】