説明

液体現像剤および画像形成装置

【課題】保存性、長期安定性、および低温定着性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、主として樹脂材料で構成されたトナー粒子と、不揮発性の絶縁性液体とを有し、樹脂材料は、エチレン系共重合体を含むものであり、絶縁性液体は、脂肪酸トリグリセリドを含むものであることを特徴とする。また、このようなトナー粒子は、その内部に脂肪酸トリグリセリドを含んでいるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーと、特許文献1に示すようなトナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤(液体トナー)とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
しかしながら、従来の液体現像剤では、乾式トナーに比べ、トナー粒子の分散性が向上するものの、絶縁性液体とトナー粒子との親和性が低く、長期にわたって良好な分散状態を維持するのが困難であった。その結果、液体現像剤の保存性、長期安定性を十分に確保するのが困難であった。また、近年の省エネルギー化に伴う、低温での定着では、オフセット等が頻発する問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−251253公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、保存性、長期安定性に優れるとともに、低温定着性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、主として樹脂材料で構成されたトナー粒子と、不揮発性の絶縁性液体とを有し、
前記樹脂材料は、エチレン系共重合体を含むものであり、
前記絶縁性液体は、脂肪酸トリグリセリドを含むものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記トナー粒子は、その内部に脂肪酸トリグリセリドを含むものであることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記エチレン系共重合体の融点をTm(℃)、ビカット軟化点をTv(℃)としたとき、Tm−Tv≦35(℃)の関係を満足することが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記エチレン系共重合体は、25℃におけるJIS K7106に準拠して測定される曲げ剛性率が、50〜140MPaであることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記エチレン系共重合体は、構成モノマー成分として、アクリル酸もしくはメタクリル酸を含むものであることが好ましい。
【0009】
本発明の画像形成装置は、色の異なる複数の液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部とを有し、
前記液体現像剤が、主として樹脂材料で構成されたトナー粒子と、不揮発性の絶縁性液体とを有し、前記樹脂材料は、エチレン系共重合体を含むものであり、前記絶縁性液体は、脂肪酸トリグリセリドを含むものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置では、複数の前記現像部は、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記現像ローラ上の前記液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体とを有し、
前記感光体は、少なくとも該感光体表面がアモルファスシリコンで構成されたものであることが好ましい。
以上の構成を満足することにより、保存性、長期安定性に優れるとともに、低温定着性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
《液体現像剤》
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中に主として樹脂材料で構成されたトナー粒子が分散したものである。
<絶縁性液体>
まず、絶縁性液体について説明する。
本発明において、絶縁性液体は、不揮発性の液体で構成されたものである。このように、絶縁性液体が不揮発性の液体であるため、定着時において絶縁性液体が揮発することを確実に防ぐことができ、揮発性有機化合物(VOC)の発生を確実に防止することができる。その結果、液体現像剤は、人体、生物に害の特に少ないものとなる。また、環境に優しい液体現像剤とすることができる。なお、本明細書において、不揮発性の液体とは、具体的には、JIS K2254に準拠して測定される初留点が、105℃以上の液体を指し、好ましくは、140℃以上の液体である。
【0012】
また、本発明において絶縁性液体は、脂肪酸トリグリセリドを含むものである。なお、脂肪酸トリグリセリドとは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル(トリグリセリド)である。
脂肪酸トリグリセリドは、後述するようなトナー粒子が有する樹脂材料との親和性が高い液体である。したがって、絶縁性液体が脂肪酸トリグリセリドを含むことにより、液体現像剤中のトナー粒子の分散性は優れたものとなり、液体現像剤の保存性、長期安定性を優れたものとすることができる。また、脂肪酸トリグリセリドは、トナー粒子を構成する樹脂材料の分子鎖間に浸入する性質を有するものである。このような脂肪酸トリグリセリドは、トナー粒子を構成する樹脂材料を可塑化する可塑効果を有するものである。そのため、脂肪酸トリグリセリドが浸透したトナー粒子は、比較的低温であっても、容易に溶融して記録媒体に定着させることができる。また、このように可塑化されたトナー粒子は、記録媒体に、より密着して定着させることができ、得られるトナー画像の定着強度は特に優れたものとなる。例えば、記録媒体として、紙を用いた場合には、トナー粒子が紙繊維の隙間に入り込み易くなる。そして、定着時の熱で溶融したトナー粒子(トナー粒子を構成する樹脂材料)の一部が記録媒体の内部に浸透し、この状態でトナー粒子が放冷されて硬化することにより、アンカー効果が働き、トナー粒子を紙に強固に定着させることができる。したがって、このようなトナー粒子を含む液体現像剤は、低温定着性が向上するとともに、トナー粒子の記録媒体への定着強度は優れたものとなる。さらに、脂肪酸トリグリセリドは、環境に優しい成分であるため、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減させることができ、その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0013】
このような脂肪酸トリグリセリドは、脂肪酸トリグリセリド中に含まれる脂肪酸成分としては、特に限定されず、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の多価不飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸やこれらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
この中でも、脂肪酸トリグリセリドが飽和脂肪酸成分を含む場合、液体現像剤の化学的安定性や絶縁性液体の電気絶縁性をさらに高く保つことが可能になる。これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性はさらに優れたものとなる。また、上記のような飽和脂肪酸の中でも、飽和脂肪酸成分の分子内の炭素数が、6〜22のものであるのが好ましく、8〜20のものであるのがより好ましく、10〜18のものであるのがさらに好ましい。このような飽和脂肪酸成分を含むことにより、上述したような効果はさらに顕著なものとして発揮される。
【0015】
また、脂肪酸トリグリセリドに不飽和脂肪酸成分が含まれる場合、脂肪酸トリグリセリドは、画像形成後に得られるトナー画像の長期保存性の向上に寄与することができる。これは、以下のように考えられる。不飽和脂肪酸成分は、酸化されることによりそれ自体が硬化することのできる成分である。このため、不飽和脂肪酸が含まれた脂肪酸トリグリセリドを含む液体現像剤を用いて、記録媒体上にトナー画像を形成、定着した場合、トナー画像にトナー粒子とともに残存した脂肪酸トリグリセリドは、空気中の酸素等によって酸化重合することができ、トナー粒子同士またはトナー粒子と記録媒体とを強固に接着させることができる。また、脂肪酸トリグリセリドの不飽和脂肪酸成分は、トナー粒子の表面を覆いながら酸化重合することができるため、トナー粒子表面に硬化した脂肪酸トリグリセリドの保護膜を形成することができる。したがって、トナー画像は、長期にわたって、摩擦等の物理的な外力や空気、光等による劣化を少ないものとすることができ、長期保存性が優れたものとなる。
【0016】
上述したような脂肪酸トリグリセリドは、例えば、ひまわり油、紅花油、米油、米ぬか油、菜種油、オリーブ油、ゴマ油、カノーラ油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等の植物由来の油脂、牛油等の各種動物由来の油脂等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。
また、絶縁性液体中の脂肪酸トリグリセリドの含有量は、20〜90wt%であることが好ましく、30〜90wt%であることがより好ましく、40〜90wt%であることがさらに好ましい。これにより、液体現像剤中のトナー粒子の分散性を特に優れたものとすることができると共に、液体現像剤の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。
【0017】
また、絶縁性液体は、上述したような脂肪酸トリグリセリドに加え、絶縁性液体として公知の液体を含むものであってもよい。具体的には、KF96、KF4701、KF965、KS602A、KS603、KS604、KF41、KF54、FA630(信越シリコーン社製)、TSF410、TSF433、TSF434、TSF451、TSF437、(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、SH200(東レ社製)等のシリコーンオイル、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(エクソン化学社製)、コスモホワイトP−60、コスモホワイトP−70、コスモホワイトP−120(コスモ石油ルブリカンツ社製)、ダイナフレシアW−8、ダフニーオイルCP、ダフニーオイルKP、トランスフォーマオイルH、トランスフォーマオイルG、トランスフォーマオイルA、トランスフォーマオイルB、トランスフォーマオイルS(出光興産社製)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルオイル社製)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(スピリッツ社製)、低粘度・高粘度流動パラフィン(和光純薬工業製)、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン等の脂肪族炭化水素、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、グリセリン、脂肪酸等の脂肪酸トリグリセリドの分解物、Prifer6813(UNIQUEMA社製)等の合成エステル系液体、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、脂肪酸モノエステル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
この中でも、絶縁性液体が、脂肪酸モノエステルを含むものである場合には以下のような効果を得ることができる。なお、脂肪酸モノエステルは、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルである。すなわち、脂肪酸モノエステルは、トナー粒子中に含まれる樹脂材料を可塑化させる可塑効果を顕著に発揮するものである。このような脂肪酸モノエステルは、比較的分子量が小さく、また、前述したトナー粒子を構成する樹脂材料との親和性が高い成分である。したがって、絶縁性液体として脂肪酸モノエステルを含む液体現像剤では、トナー粒子内部に脂肪酸モノエステルが浸透し、トナー粒子をより好適に可塑化することができる。これにより、トナー粒子を記録媒体に低温で、より強固に定着させることができ、液体現像剤の低温定着性はより優れたものとなる。また、脂肪酸モノエステルは、環境に優しい成分である。したがって画像形成装置外への液体現像剤の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄などによる環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0019】
このような脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸成分としては、特に限定されないが、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等に代表される不飽和脂肪酸、酪酸、ラウリン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等に代表される飽和脂肪酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、絶縁性液体が、合成エステル系液体を含むものである場合には、以下のような効果を得ることができる。すなわち、このような合成エステル系液体も、脂肪酸モノエステルと同様に、トナー粒子を構成する樹脂材料を効果的に可塑化する成分である。絶縁性液体として、このような合成エステル系液体を含む液体現像剤では、トナー粒子内部に合成エステル系液体が浸透し、トナー粒子を好適に可塑化することができる。これにより、トナー粒子を記録媒体に低温で、より強固に定着させることができ、液体現像剤の低温定着性はより優れたものとなる。また、このような合成エステル系液体は、化学的に安定な成分である。したがって、絶縁性液体としてこのような合成エステル系液体を含む液体現像剤では、液体現像剤の特性が長期間にわたって安定したものとなり、長期安定性に特に優れた液体現像剤となる。
【0021】
また、このような合成エステル系液体のアニリン点は、30℃以下であるのが好ましく、15℃以下であるのがより好ましく、10℃以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述した合成エステル系液体の樹脂材料を可塑化する効果はより顕著なものとなり、液体現像剤の低温定着性は特に優れたものとなる。
また、絶縁性液体が、上述したような脂肪族炭化水素を含む場合、以下のような効果を得ることができる。脂肪族炭化水素は、一般に、高い電気抵抗を有し、化学的に安定である。このため、脂肪族炭化水素を用いた液体現像剤は、特に優れた現像性、転写性を有し、得られるトナー画像は、欠点等の特に少ない、鮮明なものとなる。また、脂肪族炭化水素は、吸湿の少ない液体である。このため、脂肪族炭化水素を絶縁性液体に含む場合、保存時において絶縁性液体が吸湿することを好適に防止でき、絶縁性液体が変性(劣化)することを好適に防止することができる。
【0022】
また、絶縁性液体が、シリコーンオイルを含む場合、以下のような効果が得られる。シリコーンオイルは、シロキサン結合を骨格とした有機化合物である。シリコーンオイルは、一般に、高い電気抵抗を有する。このため、シリコーンオイルを絶縁性液体として用いた場合、液体現像剤は、特に電気抵抗が高いものとなり、トナー画像の転写性、現像性が優れたものとなる。また、シリコーンオイルは、種類によって多様な粘度を有することから、シリコーンオイルを選択することにより、液体現像剤の粘度を特に好適なものとすることができる。また、シリコーンオイルは、一般に、化学的に安定であり、人体への影響が少ない物質である。このため、液体現像剤は、保存時における絶縁性液体の劣化を好適に防止でき、環境安定性が優れたものとなる。また、画像形成装置外へ絶縁性液体が漏出した場合においても、安全な液体現像剤とすることができる。
【0023】
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、トナー粒子の分散性を向上させる分散剤が含まれていてもよい。
このような分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アジスパーPB821(味の素社の商品名)ソルスパース(日本ルーブリゾール社の商品名)、ポリカルボン酸およびその塩、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリアミン脂肪酸縮重合体等の高分子分散剤、粘度鉱物、シリカ、燐酸三カルシウム、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)等が挙げられる。
【0024】
上述した分散剤の中でも、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いた場合、トナー粒子の表面にポリアミン脂肪酸縮重合体を好適に付着させることができ、これにより、トナー粒子同士の不本意な凝集をより防止することができる。また、トナー粒子の帯電特性をより高いものとすることができる。
ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いた場合、液体現像剤中におけるポリアミン脂肪酸縮重合体の含有量は、トナー粒子100重量部に対して、0.5〜7.0重量部であるのが好ましく、1.0〜5.0重量部であるのがより好ましい。これにより、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いることによる効果をより顕著なものとすることができる。
【0025】
また、絶縁性液体は、酸化防止剤を含むものであってもよい。
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、帯電制御剤が含まれていてもよい。
帯電制御剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
室温(20℃)における、絶縁性液体の電気抵抗は、1.0×1011Ωcm以上であるのが好ましく、1.0×1012Ωcm以上であるのがより好ましく、2.0×1012Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0026】
<トナー粒子>
次に、トナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料(トナー材料)]
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、樹脂材料としてエチレン系共重合体を含むものである。
【0027】
このようなエチレン系共重合体を含むトナー粒子と、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体とを有する液体現像剤では以下のような効果を得ることができる。すなわち、エチレン系共重合体は、脂肪酸トリグリセリドとの親和性が特に高い樹脂材料である。したがって、このような構成を有する液体現像剤では、保存時において、絶縁性液体中にトナー粒子が均一に分散し、トナー粒子同士の不本意な凝集が起こるのを確実に防止することができる。また、上述したように、絶縁性液体中に含まれる脂肪酸トリグリセリドは、トナー粒子を構成するエチレン系共重合体の分子鎖間に浸入し、トナー粒子を可塑化させる可塑効果を有する成分である。定着時においては、トナー粒子に熱が加わることにより、トナー粒子を構成するエチレン系共重合体の分子鎖間の距離が広がり、脂肪酸トリグリセリドが分子鎖間に浸入し易くなる結果、上述したような可塑効果が顕著に発現する。結果として、液体現像剤は保存性、長期安定性、および低温定着性のいずれもが特に優れたものとなる。さらに、このようなエチレン系共重合体は、結晶構造を有するものである。そのため、トナー粒子が脂肪酸トリグリセリドを含み、可塑化されても、後述するようなトナー粒子成分(着色剤など)が、トナー粒子から絶縁性液体中に溶け出すのを確実に防止することができる。これにより、形成されるトナー画像は、階調再現性、カラー再現性に特に優れたものとなる。
【0028】
このように、本発明の液体現像剤は、トナー粒子がエチレン系共重合体を含むとともに、絶縁性液体が脂肪酸トリグリセリドを含むことによって上述したような優れた効果を有するものである。これに対して、液体現像剤が上記の構成を有するものでない場合には、上記のような優れた効果を得ることができない。すなわち、トナー粒子がエチレン系共重合体を含まない場合には、絶縁性液体中に含まれる脂肪酸トリグリセリドがトナー粒子内部に浸透しても、トナー粒子が十分に可塑化されず、トナー粒子を十分に低温で記録媒体に定着させることが困難となる。さらに、絶縁性液体が上述したような脂肪酸トリグリセリドを含まない場合には、保存時において、トナー粒子を絶縁性液体中に好適に分散させることが困難となり、トナー粒子の保存性、長期安定性を十分なものとすることが困難となる。なお、このようなトナー粒子が有する樹脂材料を可塑化させる絶縁性液体としては、前述したような脂肪酸モノエステルや、合成エステル系液体なども挙げられるが、これらの液体のみで構成された絶縁性液体は、保存時においても上述したような可塑効果が顕著に発現してしまい、トナー粒子の不本意な凝集を引き起こしてしまう。
【0029】
以下、トナー粒子を構成する各成分について詳細に説明する。
1.樹脂材料
上述したように、液体現像剤を構成するトナーは、少なくとも、エチレン系共重合体を含むものである。なお、エチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレンとは異なるモノマーとの共重合体のことをいう。
【0030】
このようなエチレン系共重合体は、主鎖に不飽和結合を持たないものであり、光や熱などにより変性し難い樹脂材料である。したがって、このようなエチレン系共重合体を含むトナー粒子は、比較的高温の環境下で液体現像剤を保存した場合であっても、変形、トナー粒子同士の凝集がより確実に抑えられる。このため、このようなトナー粒子を有する液体現像剤を画像形成装置内で保存する際に、稼動状態で熱を持った装置内部においてトナー粒子同士がお互いに融着し、凝集するのが確実に防止され、液体現像剤の保存性、長期安定性は優れたものとなる。
このようなエチレン系共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレンビニルアセテート、エチレンビニルアセテートの部分ケン化物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0031】
また、このようなエチレン系共重合体を構成するモノマー成分としては、エチレンに加え、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられるが、この中でもアクリル酸もしくはメタクリル酸を含むものであるのが好ましい。エチレン系共重合体を構成するモノマー成分として、エチレンに加え、このようなモノマーを含むエチレン系共重合体は、化学構造の類似性により、脂肪酸トリグリセリドとの親和性が特に優れたものとなる。これにより、保存時においては、絶縁性液体中でのトナー粒子の分散性はさらに優れたものとなるとともに、定着時においては、トナー粒子内部に脂肪酸トリグリセリドがより好適に浸透し、可塑化効果がより確実に発現される。したがって、液体現像剤の保存性、長期安定性、および低温定着性はより優れたものとなる。
【0032】
また、このようなエチレン系共重合体が、構成モノマー成分として、エチレンに加え、アクリル酸および/またはメタクリル酸を含むものである場合は、エチレン系共重合体中に含まれるアクリル酸および/またはメタクリル酸の含有量は、3〜15wt%であるのが好ましく、5〜10wt%であるのがより好ましい。上記条件を満足するエチレン系共重合体を構成成分とするトナー粒子は、保存時においては、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体がその内部へと浸透するのがより確実に防止される。したがって、保存時において、不本意にトナー粒子が可塑化し、トナー粒子同士が融着、凝集するのがより確実に防止される。一方、定着時においては、トナー粒子内部に脂肪酸トリグリセリドが好適に浸透し、可塑効果がより効果的に発揮される。このような効果は、以下のような理由により得られるものと考えられる。すなわち、保存時においては、このようなエチレン系共重合体を含むトナー粒子は、エチレン系共重合体が確実に結晶構造を有するものとなるため、トナー粒子内部に脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体が浸透するのがより確実に防止される。一方、定着時においては、トナー粒子の構成成分であるエチレン系共重合体の結晶が融解するが、その際、絶縁性液体中の脂肪酸トリグリセリドが、アクリル酸および/またはメタクリル酸が有するカルボン酸に引き寄せられ、エチレン系共重合体の分子鎖間に好適に浸入する。保存時、定着時において、このような現象が起こることにより、上述したような効果を得られると考えられる。
【0033】
また、このようなエチレン系共重合体の融点Tm(℃)は、特に限定されないが、80〜140℃であるのが好ましく、85〜120℃であるのがより好ましく、85〜115℃であるのがさらに好ましい。これにより、定着時において、確実にトナー粒子を記録媒体に定着することができる。また、定着時における定着温度が比較的低い場合であっても、好適にトナー粒子を記録媒体に定着できる。また、保存時において、トナー粒子の不本意な変形、凝集の発生をより確実に防止することができる。なお、本明細書では、融点は、例えば、JIS K 7121:1987に準拠して測定されるものを用いることができる。
【0034】
また、このようなエチレン系共重合体のビカット軟化点Tv(℃)は、特に限定されないが、40〜100℃であるのが好ましく、45〜95℃であるのがより好ましく、50〜90℃であるのがさらに好ましい。これにより、保存時におけるトナー粒子同士の凝集や、トナー粒子の変形をより確実に防止することができる。なお、本明細書では、ビカット軟化点は、例えば、JIS K 7206:1999に準拠して測定されるものを用いることができる。
【0035】
また、このようなエチレン系共重合体の融点をTm(℃)、ビカット軟化点をTv(℃)としたとき、Tm−Tv≦35(℃)であるのが好ましく、Tm−Tv≦30(℃)であるのがより好ましい。上記条件を満足するエチレン系共重合体を有するトナー粒子を含む液体現像剤では、比較的高温で液体現像剤を保存した際にも、トナー粒子同士が凝集するのが確実に防止されるとともに、定着時には、記録媒体に低温で定着させることができる。また、本発明の液体現像剤は、絶縁性液体として脂肪酸トリグリセリドを含むものである。したがって、定着時においては、トナー粒子内部に脂肪酸トリグリセリドがより好適に浸透し、顕著に可塑化効果を発揮するため、液体現像剤の低温定着性をさらに高いものとすることができる。
【0036】
また、このようなエチレン系共重合体は、25℃におけるJIS K7106に準拠して測定される曲げ剛性率が、50〜140MPaであるのが好ましい。これにより、保存時において、トナー粒子が変形したり、トナー粒子同士が凝集したりするのがより確実に防止される。また、このようなトナー粒子は、より強固に記録媒体に定着するものとなるとともに、外部環境の影響(衝撃、光、湿度など)により、記録媒体から剥離されるのがより抑制されたものとなる。これにより、得られるトナー画像は、長期間にわたって、欠損のない鮮明なものとなる。また、液体現像剤の製造方法として後述するように、上記条件を満足するエチレン系共重合体を構成成分として含むトナー材料を、混練粉砕してトナー粒子を得る場合には、均一な粒径を有するトナー粒子をより安定して製造することができる。また、効率良くトナー材料を混練粉砕することができるため、最終的に得られる液体現像剤の製造時間を短縮することができる。
なお、トナー粒子を構成する樹脂材料は、エチレン系共重合体を含むものであればよく、その他の樹脂材料を含むものであってもよい。このような樹脂材料としては、例えば、公知の樹脂を用いることができる。
【0037】
2.着色剤
また、トナー粒子は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、特に限定されず、例えば、公知の顔料、染料等を使用することができる。
3.その他の成分
また、トナー粒子の構成材料(成分)として、絶縁性液体として前述した液体を含んでいてもよい。前述した液体の中でも、トナー粒子は、その内部に脂肪酸トリグリセリドを含むものであるのが好ましい。
【0038】
トナー粒子は、構成材料として、脂肪酸トリグリセリドを含むことによって以下のような効果を得ることができる。すなわち、上述したように、脂肪酸トリグリセリドは、絶縁性液体中に含まれることによって、トナー粒子内部に浸透し、トナー粒子を可塑化する効果を発現する成分であるが、トナー粒子中に含ませることにより、この可塑効果がより顕著に発現される。これにより、トナー粒子を比較的低温で記録媒体に定着させることがより容易になるとともに、トナー粒子の記録媒体への定着強度はより優れたものとなる。また、トナー粒子および絶縁性液体が、それぞれの構成成分として脂肪酸トリグリセリドを含むため、トナー粒子と絶縁性液体との親和性がさらに向上し、液体現像剤中のトナー粒子の分散性は特に優れたものとなる。また、比較的高温で液体現像剤を長期間保存した場合においても、トナー粒子同士が融着し、凝集するのをより確実に防止することができる。したがって、トナー粒子中に脂肪酸トリグリセリドを含むことにより、液体現像剤は、保存性、長期安定性、および低温定着性のいずれもが特に優れたものとなる。
また、トナー粒子の構成材料としては、上記のような材料のほかに、例えば、公知のワックス、公知の磁性粉末、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0039】
[トナー粒子の形状等]
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.7〜3μmであるのが好ましく、0.8〜2.5μmであるのがより好ましく、0.8〜2μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での特性のばらつきを小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を高いものとしつつ、液体現像剤により形成されるトナー画像の解像度を十分に高いものとすることができる。また、トナー粒子の絶縁性液体への分散を良好にし、液体現像剤の保存性を高いものとすることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0040】
液体現像剤中におけるトナー粒子の含有率は、10〜60wt%であるのが好ましく、20〜50wt%であるのがより好ましい。
なお、上述したような各成分で構成された液体現像剤の粘度(25℃において、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される粘度)は、1000mPa・s以下であるのが好ましい。これにより、記録媒体中への液体現像剤の浸透はより好適なものとなるため、記録媒体へのトナー粒子の定着特性はより優れたものとなる。また、記録媒体に得られる画像が、ムラのない鮮明なものとなり、かつ、高速での画像形成に適応した液体現像剤として、特に適したものとなる。
また、上述したような各成分で構成された液体現像剤の室温(20℃)での電気抵抗は、1.0×1011Ωcm以上であるのが好ましく、1.0×1012Ωcm以上であるのがより好ましい。
【0041】
《液体現像剤の製造方法》
次に上述したような液体現像剤の製造方法の好適な実施形態について説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の液体現像剤の製造方法の第1実施形態について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法は、エチレン系共重合体を含む樹脂材料、着色剤、および脂肪酸トリグリセリドを含むトナー材料を得るトナー材料調製工程と、調整されたトナー材料を絶縁性液体中で粉砕し、粉砕物分散液を得る粉砕工程とを有する。
【0042】
[トナー材料調製工程]
まず、主としてエチレン系共重合体で構成された粉末(トナー材料)の調製方法の一例について説明する。
このようなトナー材料は、いかなる方法で調製されるものであってもよいが、本実施形態では、前述したようなエチレン系共重合体を含む樹脂材料、着色剤、および脂肪酸トリグリセリド等のトナー材料を混練し、トナー材料で構成された混練物を得た後、混練物を粗粉砕することにより、トナー材料で構成された粗粉砕物を得る。
【0043】
このように、樹脂材料、着色剤等のトナー用材料を混練することにより、後述する粉砕工程において、トナー粒子を構成する材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。その結果、各トナー粒子間での特性のばらつきを十分に小さいものとすることができる。また、後述する粉砕工程前に、トナー材料で構成された混練物を祖粉砕することにより、粉砕工程において、より効果的にトナー粒子の粒径を小さくすることができる。また、本工程において、エチレン系共重合体を含む樹脂材料、着色剤に加え、脂肪酸トリグリセリドを加えることにより、最終的に得られるトナー粒子は、その内部に脂肪酸トリグリセリドが均一に分散したものとなる。その結果、液体現像剤の保存性、長期安定性、および低温定着性はいずれも特に優れたものとなる。また、このように、トナー材料として脂肪酸トリグリセリドを加えることにより、後述する粉砕工程において、トナー材料を粉砕する効率が向上し、製造時間を短縮することができるとともに、所望の粒径のトナー粒子を確実に得ることができる。また、脂肪酸トリグリセリドによりエチレン系共重合体の剛性が緩和されることにより、トナー材料を粉砕する際に、所望の粒径のトナー粒子に比べ、極端に微小な粒子が形成されるのを確実に防止することができる。
【0044】
なお、このようなトナー材料の混練には、例えば、連続式の2軸混練押出機、ニーダーやバッチ式の三軸ロール、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。この中でも、混練機として、2軸混練押出機を用いることが好ましい。これにより、効率よく原料を混練できるとともに、原料中に含まれる空気を取り除くことができる。
また、このような混練物を粉砕する方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
【0045】
[粉砕工程]
本工程では、調製されたトナー粒子の構成材料(トナー材料)を絶縁性液体中で湿式粉砕することにより、粉砕物分散液を得る。
このような絶縁性液体としては、前述したような絶縁性液体を用いることができる。
また、トナー材料を粉砕する方法は、特に限定されず、例えば、トナー材料調製工程で用いた各種粉砕、解砕装置を用いて、好適にトナー材料を湿式粉砕することができる。
【0046】
なお、上述したトナー材料調整工程において、トナー材料の構成成分として含まれる脂肪酸トリグリセリドは、本工程においてトナー材料を湿式粉砕した際に、粗粉砕物より一部が抜け出し、最終的な絶縁性液体の構成成分となる。
以上のようにして、エチレン系共重合体を含むトナー粒子が、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体中に分散した本発明の液体現像剤を得る。
【0047】
なお、本実施形態では、粉砕工程においてトナー材料を湿式粉砕する絶縁性液体は、脂肪酸トリグリセリドを含むものであってもよいし、含まないものであってもよい。また、粉砕工程において、脂肪酸トリグリセリドを含まない絶縁性液体中でトナー材料を粉砕し、得られた粉砕物分散液に、さらに脂肪酸トリグリセリドを加えたものを液体現像剤として用いてもよい。
また、本実施形態では、トナー材料調整工程において、トナー材料として、脂肪酸トリグリセリドを含むものとして説明したが、トナー材料として脂肪酸トリグリセリドを含ませなくてもよい。
【0048】
<第2実施形態>
次に、本発明の液体現像剤の製造方法の第2実施形態について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法は、エチレン系共重合体を含む樹脂材料が、脂肪酸トリグリセリドを含む第1の液体中に溶解した樹脂溶液を調製する樹脂溶液調製工程と、調製された樹脂溶液に、第1の液体よりもエチレン系共重合体を含む樹脂材料の溶解性が低い第2の液体を添加し、樹脂溶液中で、樹脂材料を析出させて樹脂微粒子(トナー粒子)を形成する樹脂析出工程とを有する。また、本実施形態の液体現像剤の製造方法では、樹脂溶液調製工程の前に、エチレン系共重合体を含む樹脂材料と、着色剤とを混練して混練物を得る混練工程と、混練物を粉砕し、粉砕物を得る粉砕工程とを有する。これにより、エチレン系共重合体を含むトナー粒子が、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体中に分散した本発明の液体現像剤を容易かつ確実に得ることができる。さらに、このような製造方法を用いることにより、トナー粒子は、その内部に、脂肪酸トリグリセリドを確実に含むものとなり、最終的に得られる液体現像剤の保存性、長期安定性、および低温定着性は特に優れたものとなる。また、このように絶縁性液体を用いて樹脂材料を析出させ、トナー粒子を形成することにより、トナー粒子の構成材料等を微粉砕する必要がなく、省エネルギーな液体現像剤の製造方法となる。また、樹脂材料の析出に用いる第1の液体と第2の液体とは、本実施形態において、不揮発性の液体である。このため、第1の液体と第2の液体とを液体現像剤の構成成分として用いることができ、留去等の不要な液体の除去を行う必要がない。このため、生産性に優れ、資源を有効に利用した液体現像剤の製造方法となる。
【0049】
[混練工程]
まず、エチレン系共重合体を含む樹脂材料と着色剤とを混練し、混練物を得る。
混練に供される原料は、前述したようなエチレン系共重合体、着色剤を含むものである。特に、原料が着色剤を含むことにより、本工程で原料中に含まれる空気(特に着色剤が抱き込んだ空気)を効率よく除去することができ、トナー粒子の内部に気泡が混入(残存)するのを効果的に防止することができる。また、このように、樹脂材料と着色剤を均一に混練することにより、後述する樹脂溶液中における着色剤の分散性、溶解性を特に優れたものとすることができるため、得られるトナー粒子は、着色剤が特に均一に分布したものとなる。混練に供される原料は、これらの各成分が予め混合されたものであるのが好ましい。
【0050】
原料の混練には、例えば、連続式の2軸混練押出機、ニーダーやバッチ式の三軸ロール、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。この中でも、混練機として、2軸混練押出機を用いることが好ましい。これにより、効率よく原料を混練できるとともに、原料中に含まれる空気を取り除くことができる。
また、混練に供する原料は、前述したような分散剤を含むものであってもよい。これにより、後述する樹脂溶液中における着色剤の分散性、溶解性を特に優れたものとすることができるため、得られるトナー粒子は、着色剤が特に均一に分布したものとなる。
【0051】
[粉砕工程]
次に、上述したような混練物を粉砕し、粉砕物を得る。このように、混練物を粉砕することにより、後述する樹脂溶液を、比較的容易に、より均一なものとして得ることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、トナー粒子の大きさをより小さなものとすることができ、高解像度の画像形成に好適に用いることができる。
【0052】
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
粉砕の工程は、複数回(例えば、粗粉砕工程と微粉砕工程との2段階)に分けて行ってもよい。また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0053】
[樹脂溶液調製工程]
次に、エチレン系共重合体を含む樹脂材料が、脂肪酸トリグリセリドを含む第1の液体中に溶解した樹脂溶液を調製する。このように、樹脂材料を脂肪酸トリグリセリドを含む第1の液体中に溶解させることにより、トナー粒子は、脂肪酸トリグリセリドを確実に含むものとなる。
【0054】
樹脂溶液は、いかなる方法で調整してもよいが、例えば、上述したような粉砕物と、脂肪酸トリグリセリドを含む第1の液体とを、高速攪拌機等の攪拌機により混合することにより得ることができる。これにより、粉砕物に含まれる樹脂材料を確実に第1の液体に溶解することができ、また、着色剤を確実に第1の液体中に分散、溶解させることができる。
【0055】
樹脂溶液の調製に用いることのできる攪拌機としては、いかなるものであってもよいが、例えば、アトライター、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、サンドミル、高速ミキサー、ホモジナイザー等が挙げられる。
また、本工程では、上述した粉砕物に加え、樹脂材料を追加して混合するものであってもよい。これにより、得られる液体現像剤において、容易にトナー粒子の着色剤の濃度を調整することができる。
【0056】
また、本工程では、粉砕物と第1の液体とを混合する際に、これらの材料を加熱しても良い。これにより、第1の液体に樹脂材料を確実に溶解することができる。また、このような場合、樹脂溶液を構成する材料の材料温度は、80〜160℃であるのが好ましく、90〜140℃であるのがより好ましい。これにより、容易かつ確実に、第1の液体中に樹脂材料を溶解させることができる。また、上述したような材料温度であれば、樹脂溶液中に含まれる成分の変質、揮発等を確実に防止することができる。
【0057】
また、第1の液体としては、上述したような脂肪酸トリグリセリドを含み、樹脂材料を溶解させることができるものであればよく、他の成分が含まれていてもよい。例えば、上述したような液体現像剤を構成する絶縁性液体の一部が含まれていても良い。また、例えば、分散剤等が含まれていても良い。
樹脂溶液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、20〜60wt%であるのが好ましく、30〜50wt%であるのがより好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、樹脂材料を確実に第1の液体中に溶解させつつ、樹脂溶液の粘度特性を特に好適なものとすることができる。また、得られる液体現像剤のトナー粒子の濃度を十分に高いものとすることができる。
【0058】
[樹脂析出工程]
次に、第1の液体よりもエチレン系共重合体を含む樹脂材料の溶解性が低い第2の液体を添加し、樹脂溶液中で樹脂材料を析出させて樹脂微粒子(トナー粒子)を形成する。これにより、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体中にエチレン系共重合体を含むトナー粒子が分散した液体現像剤が得られる。このような第2の液体は、通常、液体現像剤の絶縁性液体を主として構成するものとなる。また、このようにして得られる樹脂微粒子は、脂肪酸トリグリセリドを含むものである。詳しく説明すると、第2の液体を添加して樹脂材料が樹脂微粒子として析出する際に、樹脂材料は、より親和性(溶解性)の高い第1の液体の一部(脂肪酸トリグリセリド)を取り込んで、析出する。また、上述したように、脂肪酸トリグリセリド中に樹脂材料を一度溶解させた後に樹脂微粒子を析出させるため、樹脂微粒子は、第1の液体に含まれる脂肪酸トリグリセリドを含むものとなる。また、脂肪酸トリグリセリドは、樹脂微粒子中に均一に含まれるものとなる。また、このように樹脂微粒子を析出させることにより、所望の粒径で粒度分布が狭い樹脂微粒子(トナー粒子)を得ることができる。
【0059】
第2の液体は、第1の液体よりも樹脂材料の溶解性が低いものであればよく、例えば、上述した液体現像剤の絶縁性液体の構成成分を用いることができるが、前述したような脂肪族炭化水素、および/またはシリコーンオイルを含むことが好ましい。これにより、容易かつ確実に、所望の粒径で均一の大きさの樹脂微粒子(トナー粒子)を得ることができる。これは、以下のように考えられる。脂肪族炭化水素およびシリコーンオイルは、それぞれ、樹脂材料の溶解性が低いものであり、かつ脂肪酸トリグリセリドとの親和性に優れるものである。このため、脂肪族炭化水素、および/またはシリコーンオイルを樹脂溶液に添加した際に、これらの液体成分は、素早く樹脂溶液中に拡散し、樹脂溶液中における脂肪族炭化水素、および/またはシリコーンオイルの濃度むらが発生することを確実に防止することができる。このため、樹脂溶液中において、均一の大きさの樹脂微粒子が析出、成長しやすくなると考えられる。
【0060】
また、樹脂溶液に対する第2の液体の添加は、いかなる方法で行ってもよいが、樹脂溶液に対して撹拌を加えつつ、第2の液体を滴下する方法が好ましい。これにより、樹脂溶液中における第2の液体の濃度むらの発生を確実に防止することができ、特に均一な大きさの樹脂微粒子が得られる。
樹脂溶液の撹拌には、いかなる装置を用いてもよいが、高速でせん断力を加えることのできる装置が好ましく、例えば、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、ホモミキサー等を用いることができる。これにより、添加した第2の液体をすばやく均一に分散、溶解させて、第2の液体の濃度むらが発生することを確実に防止することができる。また、樹脂微粒子を効率良く析出させつつ、一旦形成された樹脂微粒子が崩壊するのをより確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきの小さい樹脂微粒子を効率良く得ることができる。
【0061】
また、本工程における材料温度は、5〜160℃であることが好ましく、10〜150℃であることが好ましい。これにより、材料の変質、分解等を防止しつつ、容易かつ確実に液体現像剤を得ることができる。
また、本工程において、樹脂溶液の温度は、一定でなくてもよい。例えば、樹脂溶液は、徐々に温度を下げるものであってもよい。これにより、樹脂溶液の樹脂材料の溶解性を低くすることができ、樹脂微粒子が析出しやすいものとなる。このため、液体現像剤の製造方法は、生産性に特に優れたものとなる。この場合、第2の液体を添加する際に樹脂溶液の温度を下げるものであってもよいし、第2の液体を添加した後に樹脂溶液の温度を下げてもよい。
【0062】
また、本工程において、帯電制御剤、分散剤等を添加しても良い。これらの添加は、第2の液体を添加した後であっても良いし、添加する前あってもよい。また、第2の液体と同時に添加するものであっても良い。
また、第2の液体を添加した後に、さらに液体を加えるものであってもよい。これにより、液体現像剤中における、絶縁性液体およびトナー粒子の濃度の調製を容易に行うことができる。この場合、加える液体は、第1の液体および第2の液体と同じ組成であってもよいし、異なる組成であっても良い。
また、第2の液体を添加し樹脂微粒子を添加した後に、樹脂微粒子を分散させる液体を他の液体と置換して、液体現像剤を調製するものであってもよい。また、この場合、分散させる液体の一部を置換するものであってもよいし、液体の全てを置換するものであってもよい。
【0063】
<第3実施形態>
次に本発明の液体現像剤の製造方法の第3実施形態について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法は、エチレン系共重合体を含む樹脂材料と脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体とを含む組成物(樹脂分散液)を加熱することにより、樹脂材料が絶縁性液体を含み膨潤した樹脂膨潤液を調製する樹脂膨潤液調製工程と、樹脂膨潤液を冷却することにより、樹脂膨潤液中に、樹脂材料を析出させて、主として樹脂材料で構成され、かつ、内部に絶縁性液体を含む樹脂微粒子(トナー粒子)を形成する樹脂析出工程とを有する。また、本実施形態の液体現像剤の製造方法では、前述した液体現像剤の製造方法の第2実施形態と同様に、樹脂膨潤液調製工程の前に、エチレン系共重合体を含む樹脂材料と、着色剤とを混練して混練物を得る混練工程と、混練物を粉砕し、粉砕物を得る粉砕工程とを有する。これにより、上述したような液体現像剤を容易かつ確実に得ることができ、液体現像剤を構成するトナー粒子に、容易かつ確実に絶縁性液体を含ませることができる。さらに、このような製造方法を用いることにより、トナー粒子は、その内部に、脂肪酸トリグリセリドを確実に含むものとなり、最終的に得られる液体現像剤の保存性、長期安定性、および低温定着性は特に優れたものとなる。また、本実施形態においても、液体現像剤の製造方法の第2実施形態と同様に、トナー粒子の構成材料等を微粉砕する必要がなく、省エネルギーな液体現像剤の製造方法となる。
【0064】
[混練工程]
まず、エチレン系共重合体を含む樹脂材料と着色剤とを混練し、混練物を得る。
混練に供される原料は、前述したようなエチレン系共重合体、着色剤を含むものである。特に、原料が着色剤を含むことにより、本工程で原料中に含まれる空気(特に着色剤が抱き込んだ空気)を効率よく除去することができ、トナー粒子の内部に気泡が混入(残存)するのを効果的に防止することができる。また、このように、樹脂材料と着色剤を均一に混練することにより、後述する樹脂溶液中において分散した粉砕物は、着色剤が均一に分散したものとなり、その結果、得られるトナー粒子は、着色剤が特に均一に分布したものとなる。混練に供される原料は、これらの各成分が予め混合されたものであるのが好ましい。
【0065】
原料の混練には、例えば、連続式の2軸混練押出機、ニーダーやバッチ式の三軸ロール、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。この中でも、混練機として、2軸混練押出機を用いることが好ましい。これにより、効率よく原料を混練できるとともに、原料中に含まれる空気を取り除くことができる。
また、混練に供する原料は、前述したような分散剤を含むものであってもよい。これにより、後述する樹脂膨潤液中における着色剤の分散性、溶解性を特に優れたものとすることができるため、得られるトナー粒子は、着色剤が特に均一に分布したものとなる。
【0066】
[粉砕工程]
次に、上述したような混練物を粉砕し、微小な粒子状の粉砕物を得る。このように、混練物を粉砕することにより、後述する樹脂膨潤液を、比較的容易に、より均一なものとして得ることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、トナー粒子の大きさをより小さなものとすることができ、高解像度の画像形成に好適に用いることができる。
【0067】
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
粉砕の工程は、複数回(例えば、粗粉砕工程と微粉砕工程との2段階)に分けて行ってもよい。また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0068】
[樹脂膨潤液調製工程]
次に、エチレン系共重合体を含む樹脂材料と着色剤とを含む粉砕物に、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体を加えた組成物(樹脂分散液)を準備し、この樹脂分散液を加熱することにより、樹脂材料(粉砕物)が絶縁性液体を含み膨潤した樹脂膨潤液を調製する。このように、エチレン系共重合体を含む樹脂材料と脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体とを有する樹脂分散液を加熱することにより、樹脂分散液中において、樹脂材料は絶縁性液体中に含まれる脂肪酸トリグリセリドを含み膨潤する。これにより、後述する樹脂析出工程において得られる樹脂微粒子は、その内部に脂肪酸トリグリセリドを含むものとすることができ、その結果、最終的な液体現像剤を構成するトナー粒子はその内部に脂肪酸トリグリセリドを含むものとなる。
【0069】
樹脂分散液を構成する絶縁性液体としては、脂肪酸トリグリセリドに加え、前述したような絶縁性液体を用いることができる。
樹脂分散液は、いかなる方法で調製してもよいが、たとえば、上述したような粉砕物と、絶縁性液体とを、高速攪拌機等の攪拌機により混合することにより得ることができる。これにより、粉砕物を絶縁性液体中に均一に分散させることができる。また、着色剤を確実に絶縁性液体中に分散させることができる。
【0070】
樹脂分散液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、アトライター、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、サンドミル、高速ミキサー、ホモジナイザー等が挙げられ、これらの中でも、特に高速ミキサーが好ましい。また、このような高速ミキサーの撹拌翼は、1つでも複数でも良く、特に複数の撹拌翼それぞれが自転しながら、公転する方式の撹拌機では、樹脂分散液に好適に剪断力をかけることができる。このような高速ミキサーとしては、具体的には、DESPA(浅田鉄工社製)、プラネタリ−ミキサー、T.K.ハイビスミックス2P−03型翼、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)等を用いることができる。
【0071】
次に、このようにして得られた樹脂分散液を加熱する。これにより、粉砕物中の樹脂材料の分子間に脂肪酸トリグリセリドが浸入し、粉砕物中の樹脂材料が脂肪酸トリグリセリドを含み膨潤した樹脂膨潤液を調製する。
このように絶縁性液体を含み膨潤した樹脂材料(粉砕物)は、柔軟性を有するものとなり、その形状は不安定となる。このような粉砕物は、その形状が変化し易いものとなり、後述する樹脂析出工程において、樹脂膨潤液を冷却する速度を変化させることにより、所望の形状、粒径を有するトナー粒子を調製することができる。
【0072】
また、樹脂分散液を加熱する際に、樹脂分散液を撹拌機等を用いて撹拌しながら行ってもよい。これにより、樹脂膨潤液中で膨潤した粉砕物の粒径を調製することができ、後述する樹脂析出工程において、所望の形状、粒径を有する樹脂微粒子をより容易に調製することができる。このような撹拌機としては、例えば、上述したような樹脂分散液の調製に用いた撹拌機を用いることができる。
【0073】
また、樹脂分散液を加熱する温度は、樹脂分散液中に含まれる樹脂材料の融点よりも高い温度であるのが好ましい。これにより、粉砕物中の樹脂材料は、その分子間に絶縁性液体をより確実に含み、樹脂膨潤液中の粉砕物はより好適に膨潤するものとなる。これにより、後述する樹脂析出工程において得られる樹脂微粒子の形状をより容易に調製することができる。
【0074】
また、本発明の液体現像剤は、絶縁性液体として脂肪酸トリグリセリドを含むものである。これにより、以下のような効果を得ることができる。すなわち、樹脂分散液に熱を加えた際に、脂肪酸トリグリセリドは、樹脂材料を膨潤させる性質を有するものであるが、樹脂材料を溶解させる程の溶解力を有さないものである。したがって、樹脂膨潤液中に、粉砕物を構成する樹脂材料が、樹脂膨潤液中に溶け出すのが好適に抑制される。これにより、後述する樹脂析出工程において、析出する樹脂微粒子(トナー粒子)の粒度分布をより狭いものとすることができ、トナー粒子間で帯電特性等の特性にばらつきが生じるのをより確実に防止することができる。
また、このような絶縁性液体は、上述したような分散剤が含まれたものであってもよい。これにより、樹脂膨潤液中の膨潤した粉砕物の分散性が向上し、樹脂膨潤液中で粉砕物同士が凝集するのをより確実に防止することができ、トナー粒子の粒径、形状を容易に調製することができる。
【0075】
樹脂膨潤液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、20〜60wt%であるのが好ましく、30〜50wt%であるのがより好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、粉砕物は絶縁性液体を好適に含み、より確実に膨潤したものとなる。また、樹脂膨潤液の粘度が好適なものとなり、樹脂膨潤液中において、膨潤した粉砕物同士が凝集するのをより確実に防止することができる。また、得られる液体現像剤のトナー粒子の濃度を十分に高いものとすることができる。
【0076】
また、本工程において、絶縁性液体を、樹脂膨潤液を調製した後に、さらに加えてもよい。これにより樹脂膨潤液中の膨潤した粉砕物をより均一に分散させることができるとともに、樹脂膨潤液中の固形分の濃度を容易に調製することができる。これにより、後述する樹脂析出工程において、樹脂膨潤液体現像剤中に、より均一な粒径を有する樹脂微粒子を析出させることができる。
【0077】
[樹脂析出工程]
次に、加熱状態の樹脂膨潤液を冷却し、樹脂膨潤液中に、エチレン系共重合体を含む樹脂材料を析出させて、内部に脂肪酸トリグリセリドを含む樹脂微粒子(トナー粒子)を形成する。このように、熱が加えられ、脂肪酸トリグリセリドを含み膨潤した粉砕物(樹脂材料)を冷却することにより、粉砕物が有する樹脂材料の分子間から脂肪酸トリグリセリドの一部が抜け出し、最終的な液体現像剤を構成する絶縁性液体となる。また、樹脂材料の分子間から抜け出さなかった脂肪酸トリグリセリドは、そのまま樹脂材料中に残存し、樹脂微粒子(トナー粒子)を構成する成分となる。このような樹脂微粒子(トナー粒子)は、その内部に、絶縁性液体(脂肪酸トリグリセリド)を含むものとなるため、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体への分散性は優れたものとなり、結果として、液体現像剤の保存性、長期安定性は優れたものとなる。
【0078】
また、このようにして析出される樹脂微粒子(トナー粒子)は、表面に複数の突起物を有するような非球形状の形状を有するものとなる。このような形状を有するトナー粒子は、記録媒体に定着する際に、トナー粒子表面の突起物が記録媒体の表面の凹凸と噛み合った状態で、溶融して定着される。特に、記録媒体として紙を用いた場合には、トナー粒子表面の突起物が紙繊維の隙間に入り込んで溶融されるため、アンカー効果が働き、トナー粒子を紙に強固に定着させることができる。また、このようなトナー粒子が定着し形成されるトナー画像は、記録媒体(例えば、紙など)の表面の凹凸を表現したものとなり、立体感に優れた画像表示が可能となる。
【0079】
このような樹脂膨潤液の冷却速度は、使用する樹脂材料と絶縁性液体との組み合わせにより異なるが、加熱状態の樹脂膨潤液を冷却し、樹脂膨潤液中に、樹脂材料が析出し始める温度(析出開始温度)をTi(℃)としたとき、Ti(℃)まで冷却する速度は特に限定されないが、Ti(℃)(もしくは、Ti(℃)よりも高く、かつ5℃以内の温度)から樹脂膨潤液を冷却する速度は、遅くするのが好ましい。具体的には、−1〜−5℃/時で冷却するのが好ましい。これにより、Ti(℃)よりも低い温度になった時点で、樹脂膨潤液中に樹脂材料が析出し始めるとともに、析出した樹脂材料を核として、その樹脂材料の表面に、さらに樹脂材料を析出させ、突起状に成長した非球形状の樹脂微粒子(トナー粒子)を製造することができる。また、このようにTi(℃)から樹脂膨潤液を冷却する速度を遅くすることにより、樹脂膨潤液中に析出される樹脂微粒子の粒径は均一化され、最終的に得られる液体現像剤中に、粗大粒子や極端に微細な粒子が含まれるのをより確実に防止することができる。
【0080】
また、樹脂膨潤液を冷却する際に、樹脂膨潤液を上述したような撹拌機を用いて撹拌するのが好ましい。これにより、形成される樹脂微粒子(トナー粒子)の形状、粒径を均一なものとすることができるとともに、樹脂微粒子として粗大粒子が生成するのをより確実に防止することができ、得られる液体現像剤の特性は、より安定したものとなる。
このようにして樹脂膨潤液中に樹脂材料を析出させ、室温(20℃)まで冷却することにより、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体中に、内部に脂肪酸トリグリセリドを含む樹脂微粒子(トナー粒子)が分散した液体現像剤を得ることができる。
【0081】
また、本工程において、帯電制御剤、分散剤等を添加しても良い。これらの添加は、樹脂膨潤液を冷却する前であってもよいし、樹脂材料の析出が完全に終了してからであってもよい。また、樹脂膨潤液の冷却中に添加してもよい。
また、本工程において、絶縁性液体をさらに加えてもよい。このような絶縁性液体は、樹脂材料の析出途中で加えてもよいし、樹脂材料の析出が終了してから加えてもよい。
【0082】
≪画像形成装置≫
次に、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について説明する。本発明の画像形成装置は、上述したような本発明の液体現像剤を用いて記録媒体上にカラー画像を形成するものである。
図1は、本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図、図2は、図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図、図3は、現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図、図4は、図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【0083】
画像形成装置1000は、図1、図2に示すように、4つの現像部30Y、30M、30C、30Kと、中間転写部40と、2次転写ユニット(2次転写部)60と、定着部(定着装置)F40と、4つの液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kとを有している。
現像部30Y、30M、30Cは、それぞれ、イエロー系液体現像剤(Y)、マゼンダ系液体現像剤(M)、シアン系の液体現像剤(C)で、潜像を現像し、各色に対応したカラーの単色像を形成する機能を有している。また、現像部30Kは、ブラック系液体現像剤(K)で、潜像を現像し、ブラック(黒)の単色像を形成する機能を有している。
【0084】
現像部30Y、30M、30C、30Kの構成は同様であるので、以下、現像部30Yについて説明する。
現像部30Yは、図2に示すように、像担持体の一例としての感光体10Yと、感光体10Yの回転方向に沿って、帯電ローラ11Yと、露光ユニット12Yと、現像ユニット100Yと、感光体スクイーズ装置101Yと、1次転写バックアップローラ51Yと、除電ユニット16Yと、感光体クリーニングブレード17Yと、現像剤回収部18Yとを有している。
【0085】
感光体10Yは、円筒状の基材とその外周面に形成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図1中の矢印で示すように時計回りに回転する。
感光体10Yは、後述する現像ユニット100Yにより液体現像剤が供給され、表面に液体現像剤の層が形成されるものである。
【0086】
帯電ローラ11Yは、感光体10Yを帯電するための装置であり、露光ユニット12Yは、レーザを照射することによって帯電された感光体10Y上に潜像を形成する装置である。この露光ユニット12Yは、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピュータから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体10Y上に照射する。
【0087】
現像ユニット100Yは、感光体10Y上に形成された潜像を、本発明の液体現像剤を用いて現像するための装置である。なお、現像ユニット100Yの詳細については後述する。
感光体スクイーズ装置101Yは、現像ユニット100Yより回転方向下流側に、感光体10Yに対向して配置されており、感光体スクイーズローラ13Yと、該感光体スクイーズローラ13Yに押圧摺接して表面に付着した液体現像剤を除去するクリーニングブレード14Yと、除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部15Yとで構成される。この感光体スクイーズ装置101Yは、感光体10Yに現像された現像剤から余剰なキャリア(絶縁性液体)および本来不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。
【0088】
1次転写バックアップローラ51Yは、感光体10Yに形成された単色像を、後述する中間転写部40に転写するための装置である。
除電ユニット16Yは、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に中間転写像が転写された後に、感光体10Y上の残留電荷を除去する装置である。
感光体クリーニングブレード17Yは、感光体10Yの表面に当接されたゴム製の部材で、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に像が転写された後に、感光体10Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部18Yは、感光体クリーニングブレード17Yにより除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0089】
中間転写部40は、エンドレスの弾性ベルト部材であり、ベルト駆動ローラ41とテンションローラ42との間に巻き掛けて張架され、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながら駆動ローラ41により回転駆動される。
この中間転写部40に、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kにより、現像部30Y、30M、30C、30Kで形成された各色に対応した単色像が順次転写され、各色に対応した単色像が重ね合わされる。これにより、中間転写部40にフルカラー現像剤像(中間転写像)が形成される。
【0090】
中間転写部40には、このように複数の感光体10Y、10M、10C、10Kに形成した単色像を順次2次転写して重ね合わせて担持し、一括して紙、フィルム、布等の記録媒体F5に2次転写する。そのため、2次転写行程において記録媒体F5にトナー像を転写するに当たって、記録媒体F5表面が繊維質などによって平滑でないシート材であっても、この非平滑なシート材表面に倣って2次転写特性を向上させる手段として、弾性ベルト部材を採用している。
【0091】
ベルト駆動ローラ41と共に中間転写部40を張架するテンションローラ42側には、中間転写部クリーニングブレード46、現像剤回収部47からなるクリーニング装置が配置されている。
中間転写部クリーニングブレード46は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、中間転写部40上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
【0092】
現像剤回収部47は、中間転写部クリーニングブレード46により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
また、1次転写バックアップローラ51Yより中間転写部40の移動方向下流側に、中間転写部スクイーズ装置52Yが配されている。
この中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40上に転写された液体現像剤が望ましい分散状態に至っていない場合に、転写された液体現像剤から余剰の絶縁性液体を除去する手段として設けられている。
【0093】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部スクイーズローラ53Yと、中間転写部40を挟んで中間転写部スクイーズローラ53Yと対向配置される中間転写部スクイーズバックアップローラ54Yと、中間転写部スクイーズローラ53Yに押圧摺接して表面をクリーニングする中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yおよび現像剤回収部15Mから構成される。
【0094】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40に1次転写された現像剤から余剰なキャリアを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げると共に、本来不要なカブリトナーを回収する機能を有する。現像剤回収部15Mは、中間転写部40の移動方向下流側に配置されたマゼンタの感光体スクイーズローラのクリーニングブレード14Mで回収されるキャリアの回収機構を中間転写部スクイーズローラ53Yの中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yにも兼用するものである。このように2色目以降の像担持体スクイーズ装置の現像剤回収部15M、15C、15K(現像剤回収部15C、15Kについては図示せず)において、その前の色の1次転写バックアップローラ51(Y、M、C)より中間転写部40の移動方向下流側に配置された中間転写部スクイーズ装置52(Y、M、C)の現像剤回収部として兼用することにより、それらの間隔を一定に規制することができ、構造を簡潔にして小型化を図ることができる。
【0095】
2次転写ユニット60は、2次転写ローラ61が中間転写部40を挟んでベルト駆動ローラ41と対向配置され、さらに2次転写ローラ61のクリーニングブレード62、現像剤回収部63からなるクリーニング装置が配置される。
2次転写ユニット60では、中間転写部40上に色重ねして形成された中間転写像が2次転写ユニット60の転写位置に到達するタイミングに合せて、記録媒体F5を搬送、供給し、その記録媒体F5に中間転写像が2次転写される。
【0096】
2次転写ユニット60により記録媒体F5上に転写されたトナー像(転写像)F5aは、後述する定着部F40に送られ、定着が行われる。
クリーニングブレード62は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、2次転写ローラ61上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部63は、クリーニングブレード62により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0097】
次に、現像ユニット100Y、100M、100C、100Kについて、詳細に説明する。なお、以下の説明では、代表的に、現像ユニット100Yについて説明する。
現像ユニット100Yは、図2に示すように、液体現像剤貯留部31Yと、塗布ローラ32Yと、規制ブレード33Yと、現像剤攪拌ローラ34Yと、現像ローラ20Yと、現像ローラクリーニングブレード21Yと、現像剤圧縮ローラ(圧縮手段)22Yとを有し
ている。
【0098】
液体現像剤貯留部31Yは、感光体10Yに形成された潜像を現像するための液体現像剤を貯留する機能を備えたものである。
塗布ローラ32Yは、液体現像剤を現像ローラ20Yへ供給する機能を備えたものである。
この塗布ローラ32Yは、鉄等金属性のローラの表面に溝が均一かつ螺旋状に形成されニッケルメッキが施された、いわゆるアニロクスローラを呼称されるものであり、その直径は約25mmである。本実施形態では、塗布ローラ32Yの回転方向に対して斜めに複数の溝が、いわゆる切削加工や転造加工等によって形成されている。この塗布ローラ32Yは、時計回りに回転しながら液体現像剤に接触することによって、溝に、液体現像剤貯留部31Y内の液体現像剤を担持して、該担持した液体現像剤を現像ローラ20Yへ搬送する。
【0099】
規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yの表面に当接して、塗布ローラ32Y上の液体現像剤の量を規制する。すなわち、当該規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Y上の余剰液体現像剤を掻き取って、現像ローラ20Yに供給する塗布ローラ32Y上の液体現像剤を計量する役割を果たす。この規制ブレード33Yは、弾性体としてのウレタンゴムからなり、鉄等金属製の規制ブレード支持部材より支持されている。また、規制ブレード33Yは、前述した鉛直面Aから見て、塗布ローラ32Yが回転して液体現像剤から進出する側(すなわち、鉛直面Aから見て図2中左側)に設けられている。なお、規制ブレード33Yのゴム硬度は、JIS−Aで約77度であり、規制ブレード33Yの、塗布ローラ32Y表面への当接部の硬度(約77度)は、後述する現像ローラ20Yの弾性体の層の塗布ローラ32Y表面への圧接部の硬度(約85度)よりも低くなっている。また、掻き取られた余剰の液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Yに回収され、再利用される。
【0100】
現像剤攪拌ローラ34Yは、液体現像剤を一様分散状態に攪拌する機能を備えたものである。これにより、複数個のトナー粒子1が凝集した場合であっても、トナー粒子1同士を好適に分散させることができる。特に、一旦利用した液体現像剤を再利用する場合でも、好適にトナー粒子1を分散させることができる。
液体現像剤貯留部31Y内において、液体現像剤の中のトナー粒子1はプラスの電荷を有し、液体現像剤は、現像剤撹拌ローラ34Yにより撹拌されて一様分散状態になり、塗布ローラ32Yが回転することによって、液体現像剤貯留部31Yから汲み上げられ、規制ブレード33Yによって液体現像剤量が規制されて現像ローラ20Yに供給される。
【0101】
現像ローラ20Yは、感光体10Yに担持された潜像を液体現像剤により現像するために、液体現像剤を担持して感光体10Yと対向する現像位置に搬送する。
現像ローラ20Yは、その表面に、前述した塗布ローラ32Yから液体現像剤を供給することにより、液体現像剤層201Yを形成するものである。
この現像ローラ20Yは、鉄等金属製の内芯の外周部に、導電性を有する弾性体の層を備えたものであり、その直径は約20mmである。また、弾性体の層は、二層構造になっており、その内層として、ゴム硬q度がJIS−A約30度で、厚み約5mmのウレタンゴムが、その表層(外層)として、ゴム硬度がJIS−A約85度で、厚み約30μmのウレタンゴムが備えられている。そして、現像ローラ20Yは、前記表層が圧接部となって、弾性変形された状態で塗布ローラ32Yおよび感光体10Yのそれぞれに圧接している。
【0102】
また、現像ローラ20Yは、その中心軸を中心として回転可能であり、当該中心軸は、感光体10Yの回転中心軸よりも下方にある。また、現像ローラ20Yは、感光体10Yの回転方向(図2において時計方向)と逆の方向(図2において反時計方向)に回転する。なお、感光体10Y上に形成された潜像を現像する際には、現像ローラ20Yと感光体10Yとの間に電界が形成される。
【0103】
現像剤圧縮ローラ22Yは、現像ローラ20Yに担持された液体現像剤のトナーを圧縮状態にする機能を備えた装置である。言い換えると、現像剤圧縮ローラ22Yは、前述した液体現像剤層201Yに対してトナー粒子1と同極性の電界を印加することにより、図3に示すように、液体現像剤層201Y中において、現像ローラ20Yの表面近傍にトナー粒子1を偏在させる機能を備えた装置である。このようにトナー粒子を偏在させることにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。
この現像剤圧縮ローラ22Yには、クリーニングブレード23Yが設けられている。
このクリーニングブレード23Yは、現像剤圧縮ローラ22Yに付着した液体現像剤を除去する機能を有している。クリーニングブレード23Yにより除去された液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Y内に回収され、再利用される。
【0104】
また、現像ユニット100Yは、現像ローラ20Yの表面に当接されたゴム製の現像ローラクリーニングブレード21Yを有している。この現像ローラクリーニングブレード21Yは、前記現像位置で現像が行われた後に、現像ローラ20Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去するための装置である。現像ローラクリーニングブレード21Yにより除去された液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Y内に回収され、再利用される。
【0105】
また、図1、図2に示すように、画像形成装置1000は、液体現像剤を現像部30Yに補給する液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kを有する。液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kの構成は同様であるので、以下、液体現像剤補給部80Yについて説明する。
液体現像剤補給部80Yは、回収液体現像剤貯留部81Yと、補給液体現像剤貯留部82Yと、搬送手段83Y、84Yと、ポンプ85Yと、フィルタ86Yとを有している。
【0106】
回収液体現像剤貯留部81Yは、主として現像剤回収部18Yで回収された回収液体現像剤を貯留し、搬送手段83Yによって、現像部30Yの液体現像剤貯留部31Yに回収液体現像剤を補給する。また、補給液体現像剤貯留部82Yには、液体現像剤が貯留されており、搬送手段84Yによって液体現像剤貯留部31Yに液体現像剤を補給する。補給液体現像剤貯留部82Yに貯留された液体現像剤および回収液体現像剤貯留部81Yに貯留された回収液体現像剤の組成は、液体現像剤貯留部31Yに貯留された液体現像剤と同様であっても良いし、異なるものであっても良い。
【0107】
また、現像剤回収部18Yに回収された液体現像剤は、搬送路70Yによって、液体現像剤補給部80Yに供給される。
また、搬送路70Yには、ポンプ85Yが設けられており、このポンプ85Yにより、各現像剤回収部に回収された液体現像剤を回収液体現像剤貯留部81Yに搬送する。
また、搬送路70Yには、フィルタ86Yが設けられており、粗大粒子、異物等を回収された液体現像剤から取り除くことができる。フィルタ86Yに除去された粗大粒子、異物等の固形分は、図示せぬフィルタ状態の検知手段により検知される。そして、その検知結果に基づいてフィルタ86Yを交換する。これにより、フィルタ86Yのフィルタリング機能を安定して維持することができる。
【0108】
次に、定着部について説明する。
定着部F40は、前述した現像部、転写部等において形成された未定着のトナー画像F5aを、記録媒体F5上に定着させるものである。
定着部F40は、図4に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、スプリングF9とを有している。
【0109】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
熱定着ローラF1の内部には、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントは、それぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0110】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0111】
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0112】
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0113】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0114】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
【0115】
定着部F40において、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0116】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
【0117】
また、定着部F40は、記録媒体F5にトナー画像F5aを定着させた後に、熱定着ローラF1の表面に付着(残存)した絶縁性液体を除去する除去ブレード(除去手段)F12を有している。なお、この酸化重合促進剤除去ブレードF12は、絶縁性液体を除去するとともに、定着の際に熱定着ローラF1上に移行したトナー等も同時に除去することができる。
【0118】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0119】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
【0120】
熱定着ローラF1により加える熱(定着温度)は、具体的には、80〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。本発明の液体現像剤は、低温での定着性に優れるため、定着温度がこのような比較的低い温度であっても、トナー画像が記録媒体に強固に定着することができる。
【0121】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような製造方法により製造されたものに限定されない。例えば、上述した実施形態では、樹脂分散液は、着色剤と樹脂材料とを混練、粉砕した粉砕物を用いて調製を行ったが、このような粉砕物を用いずに調製するものであってもよく、例えば、絶縁性液体と着色剤と樹脂材料とを直接混合して樹脂分散液を得るものであってもよい。また、着色剤と樹脂材料とを混練する際に、絶縁性液体を構成する液体も混ぜて混練したものを粗粉砕し、その後、このようにして得られた粉砕物を絶縁性液体中に粉砕、分散させたものを液体現像剤としてもよい。このような方法を用いても、トナー粒子内部に確実に絶縁性液体を構成する液体を含ませることができる。
【実施例】
【0122】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
<着色剤マスターの調製(混練工程、粉砕工程)>
まず、樹脂材料としてのエチレン−メタクリル酸共重合体(融点Tm:98℃、ビカット軟化点Tv:78℃、曲げ剛性率:110MPa、三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN410):40重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):50重量部と、分散剤(味の素(株)製、商品名:アジスパーPB821):10重量部との混合物を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、着色剤マスター用の原料を得た。
【0123】
次に、この原料を、120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、混練物を得た。次に、2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した(混練工程)。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:2.0mm以下の粉末とし、着色剤マスター(粉砕物)を得た。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた(粉砕工程)。
【0124】
<樹脂膨潤液調製工程>
次に、得られた着色剤マスター(粉砕物):50重量部と、追加樹脂材料としてのエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN410):50重量部と、大豆油((株)J−オイルミルズ製 大豆白絞油):100重量部とを2枚の回転翼を備えた高速撹拌機(プライミクス社製 T.K.ハイビスミックス2P−03型)に投入した。なお、本実施例で用いる高速撹拌機は、2枚の回転翼が公転運動と自転運動とを同時に行う遊星運動を行うものである。次に、上記の高速撹拌機を起動し、公転回転数:90rpm、自転回転数:220rpmの条件で撹拌しながら、室温(20℃)から120℃まで1.5時間かけて昇温したところ、撹拌機の内容物は、樹脂が膨潤、軟化し、粘性のある液体となった。その後、120℃において、同様の撹拌条件で0.5時間撹拌した後、120℃に加熱した大豆油((株)J−オイルミルズ製 大豆白絞油):300重量部を撹拌機に追加投入し、さらに同じ撹拌条件で0.5時間撹拌を継続し、樹脂膨潤液を得た。
【0125】
<樹脂析出工程>
次に、得られた樹脂膨潤液が仕込まれた上記の高速撹拌機の回転数を、公転回転数:50rpm、自転回転数:100rpmに調整し、120℃から80℃まで、冷却速度:−25℃/時の条件で冷却した後、80℃から55℃まで、冷却速度:−5℃/時の条件で冷却した。なお、樹脂膨潤液の冷却中、75〜60℃において、樹脂材料が析出しているのを確認した。その後、55℃から室温(20℃)まで、冷却速度:−25℃/時の条件で冷却し、絶縁性液体(大豆油)中に、樹脂微粒子(トナー粒子)が分散した樹脂微粒子分散液を得た。
【0126】
次に、高速撹拌機中に仕込まれた樹脂微粒子分散液に、帯電制御剤としてのジルコニウムオクテート(ホープ製薬社製、オクトープZr):5重量部、分散剤としてのポリアミン脂肪族重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名:ソルスパース11200):2重量部を投入し、公転回転数:50rpm、自転回転数:100rpmの条件で撹拌し、シアンの液体現像剤を得た。また、樹脂微粒子の体積基準の平均粒径をMastersizer2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定したところ、平均粒径は1.9μmであり、5μm以上の粗大粒子は、1vol%未満であった。また、得られた液体現像剤をろ過し、トナー粒子の融点を測定したところ、使用した樹脂材料(エチレン−メタクリル酸共重合体)の融点(98℃)よりも低い90℃であった。これは、大豆油が、トナー粒子を構成する樹脂材料(エチレン−メタクリル酸共重合体)の分子鎖中に残存し、樹脂が可塑化されたためと考えられる。なお、融点の測定は、JIS K 7121:1987に準拠して測定した。
【0127】
(実施例2)
<着色剤マスターの調製(混練工程、粉砕工程)>
まず、樹脂材料としてのエチレン−メタクリル酸共重合体(融点Tm:93℃、ビカット軟化点Tv:63℃、曲げ剛性率:83MPa、三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN1525):40重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):50重量部と、分散剤(味の素(株)製、商品名:アジスパーPB821):10重量部との混合物を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、着色剤マスター用の原料を得た。
【0128】
次に、この原料を、120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、混練物を得た。次に、2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した(混練工程)。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:2.0mm以下の粉末とし、着色剤マスター(粉砕物)を得た。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた(粉砕工程)。
【0129】
<樹脂溶液調製工程>
次に、得られた着色剤マスター(粉砕物):50重量部と、追加樹脂材料としてのエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN1525):50重量部と、第1の液体としてのハイオレイック(HO)菜種油(日清オイリオグループ社製、商品名:キャノーラ油):100重量部とをステンレス製の容器中で、材料温度が120℃となるまで加熱しながら、ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン社製)で8000rpmの回転数で攪拌、混合を行った。
材料温度が120℃に達したら、温度を一定に保ちながら、混合物をホモジナイザーで8000rpmの回転数で引き続き30分間攪拌を行い、樹脂溶液を得た。なお、この樹脂溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0130】
<樹脂析出工程>
次に、得られた樹脂溶液について、加温をやめ、同条件で攪拌を行いながら、樹脂微粒子(トナー粒子)の析出を行ない、着色した樹脂微粒子(トナー粒子)が分散した樹脂微粒子分散液を得た。第2の液体としては、脂肪族炭化水素(コスモ石油ルブリカンツ製、商品名:コスモSP−10):300重量部を用いた。樹脂微粒子の析出は、常温の脂肪族炭化水素を滴下しながら攪拌を行い、樹脂溶液が常温となるまで徐々に冷却することにより行った。
【0131】
次に、得られた樹脂微粒子分散液に、帯電制御剤としてのジルコニウムオクテート(ホープ製薬社製、オクトープZr):5重量部、分散剤としてのポリアミン脂肪族重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名:ソルスパース11200):2重量部を攪拌しながら添加し、シアンの液体現像剤を得た。また、樹脂微粒子の体積基準の平均粒径をMastersizer2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定したところ、平均粒径は2.5μmであり、5μm以上の粗大粒子は、1vol%未満であった。また、得られた液体現像剤をろ過し、トナー粒子の融点を測定したところ、使用した樹脂材料(エチレン−メタクリル酸共重合体)の融点(93℃)よりも低い84℃であった。これは、HO菜種油が、トナー粒子を構成する樹脂材料(エチレン−メタクリル酸共重合体)の分子鎖中に残存し、樹脂が可塑化されたためと考えられる。なお、融点の測定は、JIS K 7121:1987に準拠して測定した。
【0132】
(実施例3)
まず、樹脂材料としてのエチレン−メタクリル酸共重合体(融点Tm:95℃、ビカット軟化点Tv:67℃、曲げ剛性率:65MPa、三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルAN42115C):40重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):50重量部と、大豆油((株)J−オイルミルズ製 大豆白絞油):10重量部と、分散剤(味の素(株)製、商品名:アジスパーPB821):10重量部とを用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、着色剤マスター用の原料を得た。
【0133】
次に、この原料を、120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、混練物を得た。次に、2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:2.0mm以下の粉末とし、着色剤マスター(粉砕物)を得た。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、このようにして得られた粉砕物:50重量部と、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルAN42115C):50重量部とを120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、冷却後に粗粉砕して平均粒径:1.0mm以下の粉末状の着色原料を得た。
【0134】
次に、着色原料:20重量部、絶縁性液体としての脂肪族炭化水素(コスモ石油ルブリカンツ製、コスモSP−10):80重量部、帯電制御剤としてのジルコニウムオクテート(ホープ製薬社製、オクトープZr):1重量部、分散剤としてのポリアミン脂肪族重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名:ソルスパース11200):1重量部を遊星ボールミル(Gokin Planetaring社製、Planet H)のポットに入れ、さらに直径:1mmのジルコニアボールを加えて、24時間、着色原料の粉砕、分散を行った。これにより、液体現像剤を得た。また、樹脂微粒子の体積基準の平均粒径をMastersizer2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定したところ、平均粒径は2.8μmであり、5μm以上の粗大粒子を10vol%含むものであった。また、得られた液体現像剤をろ過し、トナー粒子の融点を測定したところ、使用した樹脂材料(エチレン−メタクリル酸共重合体)の融点(95℃)よりも低い90℃であった。これは、大豆油が、トナー粒子を構成する樹脂材料(エチレン−メタクリル酸共重合体)の分子鎖中に残存し、樹脂が可塑化されたためと考えられる。なお、融点の測定は、JIS K 7121:1987に準拠して測定される融点の値を用いた。
【0135】
(実施例4)
使用する樹脂材料、絶縁性液体の種類を表1に示すように変更した以外は、前記実施例3と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例5)
使用する樹脂材料を表1に示すような物性のものに変更した以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。
(実施例6)
使用する樹脂材料を表1に示すような物性のものに変更した以外は、前記実施例2と同様に液体現像剤を製造した。
【0136】
(実施例7)
まず、樹脂材料としてのエチレン−メタクリル酸共重合体(融点Tm:95℃、ビカット軟化点Tv:67℃、曲げ剛性率:65MPa、三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルAN42115C):40重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):50重量部と、分散剤(味の素(株)製、商品名:アジスパーPB821):10重量部とを用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、着色剤マスター用の原料を得た。
【0137】
次に、この原料を、120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、混練物を得た。次に、2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:2.0mm以下の粉末とし、着色剤マスター(粉砕物)を得た。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、このようにして得られた粉砕物:50重量部と、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルAN42115C):50重量部とを120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、冷却後に粗粉砕して平均粒径:1.0mm以下の粉末状の着色原料を得た。
【0138】
次に、着色原料:20重量部、絶縁性液体としての、大豆油((株)J−オイルミルズ製 大豆白絞油):50重量部、ミリスチン酸メチル(ライオン(株)製 パステルM−14):30重量部、帯電制御剤としてのジルコニウムオクテート(ホープ製薬社製、オクトープZr):1重量部、分散剤としてのポリアミン脂肪族重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名:ソルスパース11200):1重量部を遊星ボールミル(Gokin Planetaring社製、Planet H)のポットに入れ、さらに直径:1mmのジルコニアボールを加えて、24時間、着色原料の粉砕、分散を行った。これにより、液体現像剤を得た。また、樹脂微粒子の体積基準の平均粒径をMastersizer2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定したところ、平均粒径は2.8μmであり、5μm以上の粗大粒子を15vol%含むものであった。また、得られた液体現像剤をろ過し、トナー粒子の融点を測定したところ、使用した樹脂材料(エチレン−メタクリル酸共重合体)の融点(95℃)よりも低い92℃であった。なお、融点の測定は、JIS K 7121:1987に準拠して測定される融点の値を用いた。
【0139】
(実施例8)
ミリスチン酸メチルの代わりに、不揮発性石油系エステル(アニリン点:−10℃、uniqema社製 Prifer6813)を用いた以外は前記実施例7と同様に液性媒体を製造した。
(実施例9)
使用する樹脂材料、絶縁性液体の種類を表1に示すように変更した以外は、前記実施例8と同様にして液体現像剤を製造した。
【0140】
(比較例1)
使用する樹脂材料を、エチレン−メタクリル酸共重合体からポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg:47℃、融点Tm:94℃)に変更した以外は前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。このようにして得られた液体現像剤中のトナー粒子の粒径は、樹脂膨潤液調製工程前の粉砕物の粒径とほぼ等しく、粉砕が進んでいなかった。
【0141】
(比較例2)
まず、樹脂材料としてのポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg:47℃、融点Tm:94℃):40重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):50重量部と、分散剤(味の素(株)製、商品名:アジスパーPB821):10重量部との混合物を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、着色剤マスター用の原料を得た。
【0142】
次に、この原料を、120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、混練物を得た。次に、2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とし、着色剤マスター(粉砕物)を得た。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、このようにして得られた粉砕物:50重量部と、ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg:47℃、融点Tm:90℃):50重量部とを120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、冷却後に粗粉砕して平均粒径:1.0mm以下の粉末状の着色原料を得た。
【0143】
次に、着色原料:20重量部、絶縁性液体としての脂肪族炭化水素(コスモ石油ルブリカンツ製、コスモSP−10):80重量部、帯電制御剤としてのジルコニウムオクテート(ホープ製薬社製、オクトープZr):1重量部、分散剤としてのポリアミン脂肪族重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名:ソルスパース11200):2重量部を遊星ボールミル(Gokin Planetaring社製、Planet H)のポットに入れ、さらに直径:1mmのジルコニアボールを加えて、24時間、着色原料の粉砕、分散を行った。これにより、液体現像剤を得た。また、樹脂微粒子の体積基準の平均粒径をMastersizer2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定したところ、平均粒径は3.8μmであり、5μm以上の粗大粒子を10vol%含むものであった。また、得られた液体現像剤をろ過し、トナー粒子の融点を測定したところ、94℃であり、使用した樹脂材料(ポリエステル樹脂)の融点と同じであった。なお、融点の測定は、JIS K 7121:1987に準拠して測定される融点の値を用いた。
【0144】
(比較例3)
絶縁性液体として、脂肪族炭化水素の代わりに、ハイオレイック(HO)菜種油(日清オイリオグループ社製、商品名:キャノーラ油)を用いた以外は、前記比較例2と同様に液体現像剤を製造した。このようにして得られた液体現像剤中のトナー粒子の粒径は、遊星ボールミルで粉砕する前の着色原料の粒径とほぼ等しく、粉砕が進んでいなかった。
【0145】
(比較例4)
ポリエステル樹脂の代わりに、エチレン−メタクリル酸共重合体(融点Tm:95℃、ビカット軟化点Tv:67℃、曲げ剛性率:65MPa、三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルAN42115C)を用いた以外は、前記比較例2と同様に液体現像剤を製造した。
【0146】
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造に用いた樹脂材料、絶縁性液体、および、後述するガスクロマトグラフィー法によりトナー粒子中に含まれる液体成分として確認された液体、トナー粒子の融点を表1に示した。なお、表1中における樹脂材料の酸含有量とは、FT−IR法を用いて測定される樹脂材料中に含まれるカルボン酸の含有量から算出した、樹脂材料中に含まれるカルボン酸を官能基として有するモノマー成分の重量分率である。
【0147】
また、表1中、樹脂材料としてのエチレン−メタクリル酸共重合体をEMAA、エチレン酢酸ビニル共重合体(融点Tm:89℃、ビカット軟化点Tv:62℃、曲げ剛性率:51MPa、三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:エバフレックス EV550)をEVA、ポリエステル樹脂をPEsとして示した。また、絶縁性液体としての不揮発性石油系エステル(アニリン点:−15℃、インビスタ ジャパン社製 DBE)をDBEとして示した。また、表中、HO菜種油とは、ハイオレイック菜種油(日清オイリオグループ(株)製 キャノーラ油)のことを指し、HLサフラワー油とはハイリノールサフラワー油(サミット(株)製)のことを指す。また、液体現像剤の各構成材料の含有量の欄には、液体現像剤中における含有量を示した。なお、各実施例、各比較例で使用した液体(絶縁性液体)は、全て、JIS K2254に準拠して測定される初留点が、140℃以上の液体であった。
【0148】
また、表1中、各樹脂材料のJIS K7121:1987に準拠して測定される融点をTm[℃]で示した。また、表中、ビカット軟化温度の欄には、ポリエステル樹脂以外の樹脂材料については、JIS K7026:1999に準拠して測定されるビカット軟化点をTv[℃]で示し、また、ポリエステル樹脂については、JIS K7121に準拠して測定されるガラス転移温度をTg[℃]で示した。
また、各実施例、各比較例の液体現像剤の一部を採取し、遠心分離によって、ケーキ(トナー粒子)を分離し、固形分中に含まれる液体成分を抽出後、ガスクロマトグラフィー法により定量、分析した。この結果、実施例1〜9では、トナー粒子中に各実施例の液体現像剤を構成する絶縁性液体が含まれていることを確認した。
【0149】
【表1】

【0150】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、以下の評価を行った。
[2.1]保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:15〜25℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0151】
A :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
B :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
C :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められるが、液体現像剤として
問題の無い範囲である。
D :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がはっきりと認められる。
E :トナー粒子の浮遊および凝集沈降が顕著に認められる。
【0152】
[2.2]液体現像剤の環境安定性(長期安定性)
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、35℃、相対湿度65%の環境下に、6ヶ月間放置した。その後、液体現像剤の様子を観察し、放置前後の粘度、色、酸価、および電気抵抗値の変化を以下の5段階の基準に従い評価した。なお、酸価の測定は、JIS K2501に準拠して行った。また、液体現像剤の色の変化は、目視により評価した。また、粘度は、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。また、電気抵抗値は、ユニバーサルエレクトロメーター MMAII−17B、液体用電極LP−05、シールドボックスP−618(川口電機製作所製)を用いて測定した。
【0153】
A :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がまったく認められない。
B :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がほとんど認められない。
C :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がわずかに認められるが、液 体現像剤として問題の無い範囲である。
D :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化がはっきりと認められる。
E :液体現像剤の粘度/色/酸価/電気抵抗値の変化が顕著に認められる。
【0154】
[2.3]定着強度
図1〜図4に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの単色の画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着ローラの設定温度を110℃として、毎分50枚の定着速度で熱定着を行った。
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0155】
非常に良い(A) :画像濃度残存率が95%以上。
良い(B) :画像濃度残存率が90%以上95%未満。
許容範囲(C) :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
やや悪い(D) :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
悪い(E) :画像濃度残存率が70%未満。
また、各実施例の液体現像剤を用いて、定着を行った際に、絶縁性液体が揮発する様子(臭気、蒸気の発生)は、ほとんど確認できなかった。
【0156】
[2.4]低温定着性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーについて、以下のようにして定着良好域、低温定着性の評価を行った。
まず、定着装置を有さない以外は、図1〜図3に示すような構成を有する画像形成装置を用意した。この画像形成装置を用いて、記録媒体(セイコーエプソン社製、上質普通紙 LPCPPA4)上に単色のトナー像が転写された未定着の画像サンプルを採取した。なお、採取するサンプルのベタは付着量を0.5mg/cmに調整した。
【0157】
次に、画像形成装置を構成する定着装置の定着ローラの表面温度を所定温度に設定した状態で、上記の未定着のトナー像が転写された記録媒体を、図4に示すような定着装置の内部に導入することにより、トナー像を記録媒体に定着させ、定着後におけるオフセットの発生の有無を目視で確認した。この定着装置では、定着は、毎分50枚(A4用紙のニップ部の通過枚数)に設定した。定着ローラの表面の設定温度を60〜160℃の範囲で順次変更していき、各温度でのオフセットの発生の有無を確認し、低温オフセットが発生した最高温度を低温オフセット発生温度とし、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0158】
A :低温オフセット発生温度が、95℃未満。
B :低温オフセット発生温度が、95℃以上、110℃未満。
C :低温オフセット発生温度が、110℃以上、120℃未満。
D :低温オフセット発生温度が、120℃以上。
これらの結果を表2に示す。また、表中、低温定着性の評価の欄には、括弧内に具体的な、低温オフセット発生温度[℃]をそれぞれ示した。
【0159】
【表2】

【0160】
表2から明らかなように、各実施例の液体現像剤は、保存性、長期安定性、および低温での定着性に優れたものであった。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。また、各実施例の液体現像剤を60℃の温度下で、12時間静置したところ、いずれの液体現像剤においてもトナー粒子の凝集は見られなかった。すなわち、各実施例の液体現像剤は、高温での保存性にも優れていた。
また、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【図3】現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図4】図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0162】
1…トナー粒子 1000…画像形成装置 10Y、10M、10C、10K…感光体 11Y…帯電ローラ 12Y…露光ユニット 13M、13Y…感光体スクイーズローラ 14M、14Y…クリーニングブレード 15M、15Y…現像剤回収部 16Y…除電ユニット 17Y…感光体クリーニングブレード 18Y…現像剤回収部 20Y、20M、20C、20K…現像ローラ 201Y…液体現像剤層 21Y…現像ローラクリーニングブレード 22Y…現像剤圧縮ローラ 23Y…現像剤圧縮ローラクリーニングブレード 30Y、30M、30C、30K…現像部 31Y…液体現像剤貯留部 32Y…塗布ローラ 33Y…規制ブレード 34Y…撹拌ローラ 40…中間転写部 41…ベルト駆動ローラ 42…テンションローラ 46…中間転写部クリーニングブレード 47…現像剤回収部 51Y、51M、51C、51K…1次転写バックアップローラ 52Y、52M、52C、52K…中間転写部スクイーズ装置 53Y…中間転写部スクイーズローラ 54Y…中間転写部スクイーズバックアップローラ 55Y…中間転写部スクイーズクリーニングブレード 60…2次転写ユニット 61…2次転写ローラ 62…2次転写ローラクリーニングブレード 63…現像剤回収部 70Y…搬送路 80Y、80M、80C、80K…液体現像剤補給部 81Y…回収液体現像剤貯留部 82Y…補給液体現像剤貯留部 83Y、84Y…搬送手段 85Y…ポンプ 86Y…フィルタ 100Y…現像ユニット 101Y…感光体スクイーズ装置 F40…定着部(定着装置) F1…熱定着ローラ(加熱ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F12…除去ブレード F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として樹脂材料で構成されたトナー粒子と、不揮発性の絶縁性液体とを有し、
前記樹脂材料は、エチレン系共重合体を含むものであり、
前記絶縁性液体は、脂肪酸トリグリセリドを含むものであることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記トナー粒子は、その内部に脂肪酸トリグリセリドを含むものである請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記エチレン系共重合体の融点をTm(℃)、ビカット軟化点をTv(℃)としたとき、Tm−Tv≦35(℃)の関係を満足する請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記エチレン系共重合体は、25℃におけるJIS K7106に準拠して測定される曲げ剛性率が、50〜140MPaである請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記エチレン系共重合体は、構成モノマー成分として、アクリル酸もしくはメタクリル酸を含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
色の異なる複数の液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部とを有し、
前記液体現像剤が、主として樹脂材料で構成されたトナー粒子と、不揮発性の絶縁性液体とを有し、前記樹脂材料は、エチレン系共重合体を含むものであり、前記絶縁性液体は、脂肪酸トリグリセリドを含むものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
複数の前記現像部は、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記現像ローラ上の前記液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体とを有し、
前記感光体は、少なくとも該感光体表面がアモルファスシリコンで構成されたものである請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−310052(P2008−310052A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157969(P2007−157969)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】