説明

液体用マーカーとしてのアントラキノン誘導体

一般式(I)の化合物を液体用マーカーとして用いる使用、液体中のマーカーの検出方法、液体の同定方法並びに一般式(I)の選択された化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【化1】

[式中、記号は、それぞれ以下の通り定義される:
X、Yは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、O、NR4、複素環であり、
A、Bは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、O、NR5であり、
Mは、アルカリ金属であり、
1、R2は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
3は、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルキルカルボニル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルケニルカルボニル、C2〜C20−アルキニル、C2〜C20−アルキニルカルボニル、C3〜C15−シクロアルキル、C3〜C15−シクロアルキルカルボニル、アリール、アリールカルボニル、複素環であり、
4は、H、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
5は、H、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
6、R7、R8、R9は、互いに無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルキルカルボニル、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルコキシカルボニル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルケニルカルボニル、C2〜C20−アルキニル、C2〜C20−アルキニルカルボニル、C3〜C15−シクロアルキル、C3〜C15−シクロアルキルカルボニル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、複素環、NR12、ハロゲン、CN、NO2であり、
その際、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8もしくはR9は、それぞれ任意の位置で1つ以上のヘテロ原子によって中断されていてよく、これらのヘテロ原子の数は、10個以下、有利には8個以下、より有利には5個以下、特に3個以下であり、かつ/又は前記置換基は、それぞれの場合に、NR12、CONR12、COOM、COOR1、SO3M、SO31、CN、NO2、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、アリール、アリールオキシ、複素環、ヘテロ原子もしくはハロゲンによって、任意の位置であるが、5箇所以下で、有利には4箇所以下で、より有利には3箇所以下で置換されていてよく、その際、後者の置換基は、同様に、それらの基によって、2箇所以下で、有利には1箇所以下で置換されていてよい]で示される化合物を、液体用マーカーとして用いる使用に関する。
【0002】
本発明は、更に、一般式(I)で示される化合物をマーカーとして含む液体に関する。本発明は、更に、液体中のマーカーを検出するための方法、及び一般式(I)で示される少なくとも1つの化合物を含む液体を同定するための方法に関する。本発明は、更に、一般式(I)で示される種々の新規化合物に関する。
【0003】
本発明の更なる実施態様は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び実施例から解釈することができる。本発明の発明主題の前記の特徴と、以下に更に述べられるべき特徴は、それぞれの場合に特記される組み合わせにおけるだけでなく、他の組み合わせにおいても、発明の主旨から逸脱することなく利用できることは自明のことである。また、本発明の好ましい実施態様と、非常に好ましい実施態様は、特に、本発明の発明主題の全ての特徴が好ましい意味と、非常に好ましい意味を有する実施態様である。
【0004】
特定のアントラキノン誘導体と、該アントラキノン誘導体を鉱油製品用のマーカーとして用いる使用は、公知である。
【0005】
US3,164,449号は、アントラキノン誘導体と、該アントラキノン誘導体を鉱油用のマーカーとして用いる使用を記載している。前記文献に記載されるアントラキノン誘導体は、一般式(I)で示される化合物を含まない。
【0006】
EP1001003号A1は、鉱油製品を色素を用いて不可視マーキングするための方法を記載している。これらの色素は、とりわけ、特定の1,4−置換されたアントラキノン誘導体であるが、一般式(I)で示される化合物を含まないものである。
【0007】
文献EP1323811号A2、EP1422284号A2、EP1426434号A2、EP1479749号A1及びEP1486554号A1は、鉱油を種々のアントラキノン誘導体の添加によりマーキングするための方法を開示している。これらのアントラキノン誘導体は、例えば1,4,5,8−四置換されたアントラキノンもしくはアントラキノン二量体であって吸収極大を710〜850nmの範囲に有するものか、又は四置換ないし八置換されたアントラキノンであって吸収極大を690〜1000nmの範囲に有するものである。種々のアントラキノン誘導体の混合物も同様に記載されている。これらの文献に記載されるアントラキノン誘導体は、一般式(I)で示される化合物を含まない。
【0008】
WO2005/063942号A1は、少なくとも1つのアントラキノン誘導体をマーカーとして含む燃料及び潤滑剤濃縮物を開示している。一般式(I)で示される化合物は、マーカーとして記載されていない。
【0009】
一般式(I)で示される特定の化合物、特に特定のアントラキノンジカルボン酸イミド(アントラキノンジカルボキシイミド)と、それらの製造方法は、公知である。
【0010】
DE939044号及びDE945112号は、イミド窒素原子上で置換された1,4−ジアミノ−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドと、該化合物をポリエチレンテレフタレート繊維の染色で用いる使用を記載している。これらの化合物を液体用マーカーとして用いる使用は、開示されていない。
【0011】
DE1176777号は、1−アミノ−4−ニトロアントラキノン−2−カルボン酸から出発する特定のアントラキノンジカルボキシイミドの製造を記載している。これらの化合物を液体用マーカーとして用いる使用は、開示されていない。
【0012】
特に、公知のマーカーの多くは、特に鉱油中で、そこに典型的に存在する添加剤と一緒に、又は添加剤濃縮物中で、所望の長期安定性をしばしば有さないことが判明している。前記の添加剤の作用は、例えばマーカーのスペクトル特性(例えば吸光度)を変更する。しばしば、マーカーの厳密な検出と、特に低いマーカー濃度の液体の確実な同定は、従って、延長された期間の後には、限られた程度まで可能であるにすぎない。
【0013】
従って、本発明の課題は、マーキングされるべき液体中で、特に鉱油もしくは添加剤濃縮物中で、良好な溶解性だけでなく、良好な長期安定性と貯蔵安定性とを特徴とする更なるアントラキノン誘導体と、関連化合物を提供することであった。
【0014】
しばしば、マーカーの検出は、分光測定法を用いて、吸収もしくは蛍光の検出によって行われる。マーカーの蛍光量子収量が高くなると、検出自体が低濃度のマーカーでより高感度に行うことができる。従って、本発明の更なる課題は、公知のマーカーと比較して、特に鉱油のマーキングのために使用されるアントラキノンと比較して高められた量子収量を有するマーカーを見出すことであった。
【0015】
該マーカーは、種々の温度で検出することができる。従って、できる限り温度に無関係に又は再現的な公知の温度依存性をもって検出できるマーカーを見出す必要がある。
【0016】
一般式(I)で示される前記化合物、例えばアントラキノンジカルボキシイミドと、関連化合物は、特に、慣用の燃料添加剤と比較して、良好な溶解性と、非常に良好な長期安定性の両方を有することが見出された。更に、殊に、一般式(I)で示される前記化合物に含まれるアントラキノンジカルボキシイミドは、先行技術において鉱油マーカーとして使用されるアントラキノン誘導体と比較して、高められた蛍光量子収量が特徴的である。蛍光について見られる温度依存性は、しばしば、一般式(I)で示される化合物については非常に低い。
【0017】
本発明の内容において、Ca〜Cbという形の表現は、特定の数の炭素原子を有する化学的化合物もしくは置換基を示す。その炭素原子数は、aとbを含むaからbの全範囲から選択することができる;aは、少なくとも1であり、かつbは、常にaよりも大きい。それらの化学的化合物もしくは置換基の更なる特定は、Ca〜Cb−Vの表現で行われる。この場合に、Vは、化学的化合物の種類もしくは置換基の種類、例えばアルキル化合物もしくはアルキル置換基を表す。
【0018】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、有利にはフッ素、塩素もしくは臭素、より有利にはフッ素もしくは塩素を表す。
【0019】
アルカリ金属は、Li、NaもしくはKである。特に、化学基−SO3Mもしくは−COOM中のアルカリ金属(M)は、一価の正電荷を有するイオンとして存在してよい。
【0020】
特に、種々の置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、X、Y、A及びBについて特定される集合名は、それぞれ以下のとおり定義される:
1〜C20−アルキルは、20個までの炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基、例えばC1〜C10−アルキルもしくはC11−C20−アルキル、有利にはC1〜C10−アルキル、例えばC1〜C3−アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はC4〜C6−アルキル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、又はC7〜C10−アルキル、例えばヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニルもしくはデシル、並びにそれらの異性体である。
【0021】
1〜C20−アルキルカルボニルは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基(前記の基)であってカルボニル基(−CO−)を介して結合された基、有利には、C1〜C10−アルキルカルボニル、例えばホルミル、アセチル、n−もしくはイソ−プロピオニル、n−、イソ−、s−もしくはt−ブタノイル、n−、イソ−、s−もしくはt−ペンタノイル、n−もしくはイソ−ノナノイル、n−ドデカノイルである。
【0022】
1〜C20−アルコキシは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基(前記の基)であって酸素原子(−O−)を介して結合された基、例えばC1〜C10−アルコキシもしくはC11−C20−アルコキシ、有利にはC1〜C10−アルキルオキシ、殊に有利にはC1〜C3−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシを意味する。
【0023】
1〜C20−アルコキシカルボニルは、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基(前記の基)であってカルボニル基(−CO−)を介して結合された基、有利にはC1〜C10−アルキルオキシカルボニルである。
【0024】
2〜C20−アルケニルは、2〜20個の炭素原子と、任意の位置に二重結合を有する不飽和の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基、例えばC2〜C10−アルケニルもしくはC11−C20−アルケニル、有利にはC2〜C10−アルケニル、例えばC2〜C4−アルケニル、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、又はC5〜C6−アルケニル、例えば1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−1−ブテニル、2−メチル−1−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、1−エチル−1−プロペニル、1−エチル−2−プロペニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−メチル−1−ペンテニル、2−メチル−1−ペンテニル、3−メチル−1−ペンテニル、4−メチル−1−ペンテニル、1−メチル−2−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−2−ペンテニル、4−メチル−2−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、2−メチル−3−ペンテニル、3−メチル−3−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、2−メチル−4−ペンテニル、3−メチル−4−ペンテニル、4−メチル−4−ペンテニル、1,1−ジメチル−2−ブテニル、1,1−ジメチル−3−ブテニル、1,2−ジメチル−1−ブテニル、1,2−ジメチル−2−ブテニル、1,2−ジメチル−3−ブテニル、1,3−ジメチル−1−ブテニル、1,3−ジメチル−2−ブテニル、1,3−ジメチル−3−ブテニル、2,2−ジメチル−3−ブテニル、2,3−ジメチル−1−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−3−ブテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、3,3−ジメチル−2−ブテニル、1−エチル−1−ブテニル、1−エチル−2−ブテニル、1−エチル−3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、2−エチル−2−ブテニル、2−エチル−3−ブテニル、1,1,2−トリメチル−2−プロペニル、1−エチル−1−メチル−2−プロペニル、1−エチル−2−メチル−1−プロペニル又は1−エチル−2−メチル−2−プロペニル並びにまたC7〜C10−アルケニル、例えばヘプテニル、オクテニル、ノネニルもしくはデセニルの異性体である。
【0025】
2〜C20−アルケニルカルボニルは、2〜20個の炭素原子と、任意の位置に二重結合を有する不飽和の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基(前記の基)であってカルボニル基(−CO−)を介して結合された基、有利にはC2〜C10−アルキルカルボニル、例えばエテノイル、プロペノイル、ブテノイル、ペンテノイル、ノネノイル及びそれらの異性体である。
【0026】
2〜C20−アルキニルは、2〜20個の炭素原子と、任意の位置に三重結合を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基、例えばC2〜C10−アルキニルもしくはC11−C20−アルキニル、有利にはC2〜C10−アルキニル、例えばC2〜C4−アルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、又はC5〜C7−アルキニル、例えば1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−メチル−2−ブチニル、1−メチル−3−ブチニル、2−メチル−3−ブチニル、3−メチル−1−ブチニル、1,1−ジメチル−2−プロピニル、1−エチル−2−プロピニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−メチル−2−ペンチニル、1−メチル−3−ペンチニル、1−メチル−4−ペンチニル、2−メチル−3−ペンチニル、2−メチル−4−ペンチニル、3−メチル−1−ペンチニル、3−メチル−4−ペンチニル、4−メチル−1−ペンチニル、4−メチル−2−ペンチニル、1,1−ジメチル−2−ブチニル、1,1−ジメチル−3−ブチニル、1,2−ジメチル−3−ブチニル、2,2−ジメチル−3−ブチニル、3,3−ジメチル−1−ブチニル、1−エチル−2−ブチニル、1−エチル−3−ブチニル、2−エチル−3−ブチニル又は1−エチル−1−メチル−2−プロピニル並びにC7〜C10−アルキニル、例えばヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルの異性体である。
【0027】
2〜C20−アルキニルカルボニルは、2〜20個の炭素原子と、任意の位置に三重結合を有する不飽和の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基(前記の基)であってカルボニル基(−CO−)を介して結合された基、有利にはC2〜C10−アルキニルカルボニル、例えばプロピノイル、ブチノイル、ペンチノイル、ノニノイル、デシノイル及びそれらの異性体である。
【0028】
3〜C15−シクロアルキルは、3〜15までの炭素環員を有する単環式の飽和の炭化水素基、有利にはC3〜C8−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル及び飽和もしくは不飽和の環系、例えばノルボルニルもしくはノルベニルである。
【0029】
3〜C15−シクロアルキルカルボニルは、3〜15個の炭素環員を有する単環式の飽和の炭化水素基(前記の基)であってカルボニル基(−CO−)を介して結合された基、有利にはC3〜C8−シクロアルキルカルボニルである。
【0030】
アリールは、6〜14個の炭素環員を含む単環式ないし三環式の芳香族環系、例えばフェニル、ナフチルもしくはアントラセニル、有利には単環式ないし二環式の、より有利には単環式の芳香族環系である。
【0031】
アリールカルボニルは、有利には単環式ないし三環式の芳香族環系(前記の環系)であってカルボニル基(−CO−)を介して結合された環系、例えばベンゾイル、有利には単環式ないし二環式の、より有利には単環式の芳香族環系である。
【0032】
アリールオキシは、単環式ないし三環式の芳香族環系(前記の環系)であって酸素原子(−O−)を介して結合された環系、有利には単環式ないし二環式の、より有利には単環式の芳香族環系である。
【0033】
アリールオキシカルボニルは、単環式ないし三環式のアリールオキシ基(前記の基)であってカルボニル基(−CO−)を介して結合された基、有利には単環式ないし二環式の、より有利には単環式のアリールオキシカルボニルである。
【0034】
複素環は、5員ないし12員の、有利には5員ないし9員の、より有利には5員ないし6員の環系であって、酸素、窒素及び/又は硫黄の原子と、場合により複数の環を有する環系、例えばフリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリニル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニル又はt−ブチルチオフェニルである。前記複素環は、一般式(I)で示される化合物に任意の様式で化学結合されていてよく、例えば複素環の炭素原子への結合を介して又はヘテロ原子の1つへの結合を介して化学結合されていてよい。更に、特に、5員もしくは6員の飽和の窒素含有の環系は、環窒素原子を介して結合され、また1もしくは2個の更なる窒素原子もしくは更なる酸素原子もしくは硫黄原子を含んでもよい。
【0035】
COOR1は、カルボン酸(R1=H)又はカルボン酸エステル(その際、例えばR1=C1〜C20−アルキルもしくはアリール)を表す。
【0036】
COOMは、カルボン酸の塩(例えば一価のアルカリ金属塩)を表す。
【0037】
SO31は、スルホン酸(R1=H)又はスルホン酸エステル(その際、例えばR1=C1〜C20−アルキルもしくはアリール)を表す。
【0038】
SO3Mは、スルホン酸の塩(例えば一価のアルカリ金属塩)を表す。
【0039】
CONR12は、置換されていてよいカルボキサミドを表す。例えば、この場合に、R1及びR2は、同一もしくは異なって、C1〜C20−アルキルもしくはアリールである。
【0040】
ヘテロ原子は、リン、酸素、窒素もしくは硫黄、有利には酸素、窒素もしくは硫黄である。
【0041】
式(I)中の記号は、有利にはそれぞれ以下の通り定義される:
X、Yは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、O、NR4であり、
A、Bは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、NH、Oであり、
1、R2は、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、アリールであり、
3は、C1〜C20−アルキル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
4は、H、C1〜C20−アルキル、アリール、複素環であり、
6、R7、R8、R9は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、NR12、ハロゲン、CN、NO2である。
【0042】
非常に好ましくは、式(I)中の記号は、それぞれ以下の通り定義される:
X、Yは、両者とも同一でNR4であり、
A、Bは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、NH、Oであり、
1、R2は、それぞれHであり、
3は、C1〜C20−アルキル、C3〜C15−シクロアルキル、アリールであり、
4は、Hであり、
6、R7、R8、R9は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、アリール、アリールオキシ、NR12、F、Cl、Br、CN、NO2である。
【0043】
同様に好ましくは、式(I)中の記号は、それぞれ以下の通り定義される:
X、Yは、両者とも同一でNR4であり、
A、Bは、それぞれOであり、
1、R2は、それぞれHであり、
3は、C1〜C20−アルキル、C3〜C15−シクロアルキル、アリールであり、
4は、Hであり、
6、R7、R8、R9は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、アリール、アリールオキシ、NR12、F、Cl、Br、CN、NO2である。
【0044】
好ましくは、そして非常に好ましくは、一般式(I)で示され、全ての記号が、それぞれ好ましい、及び非常に好ましい定義を有する化合物の使用である。
【0045】
本発明による方法で使用されるマーカーは、一般式(I)の個々の化合物であってよく、又は一般式(I)の化合物の混合物であってよい。
【0046】
一般式(I)の化合物は、当業者によく知られた方法によって、例えばM.C.Marschalk,Bull.Soc.Chim.1937,184−194、DE1769470号、DE1176777号、DE939044号及びDE945112号に記載されるように製造することができる。
【0047】
一般式(I)の化合物の幾つかは、公知であり、その幾つかは新規である。
【0048】
従って、とりわけ、一般式(I)で示され、式(I)中の記号がそれぞれ以下の通り定義される:
X、Yは、それぞれNHであり、
A、Bは、それぞれOであり、
1、R2は、それぞれHであり、
3は、C13〜C20−アルキルであり、
6、R7、R8、R9は、それぞれHである
化合物を提供する。
【0049】
本発明は、特に好ましくは、式中、R3が、C13−アルキルである化合物:1,4−ジアミノ−N−トリデシル−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドを提供する。前記化合物中のトリデシル置換基は、もちろん、種々のトリデシルの異性体混合物であってもよい。
【0050】
本発明は、更に好ましくは、1,4−ジアミノ−N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−アントラキノンジカルボキシイミド又は1,4−ジアミノ−N−(4−ドデシルフェニル)−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドの化合物並びにこれらの化合物の混合物をも提供する。1,4−ジアミノ−N−(4−ドデシルフェニル)−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドの化合物中のドデシル置換基は、もちろん、種々のドデシルの異性体混合物であってもよい。
【0051】
一般式(I)で示される化合物によって本発明による方法に従って標識することができる好適な液体は、特に水又は有機液体、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノールもしくはヘキサノール、グリコール、例えば1,2−エチレングリコール、1,2−もしくは1,3−プロピレングリコール、1,2−、2,3−もしくは1,4−ブチレングリコール、ジ−もしくはトリ−エチレングリコールもしくはジ−もしくはトリ−プロピレングリコール、エーテル、例えばメチル t−ブチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノメチルもしくは−ジメチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノエチルもしくはジエチルエーテル、3−メトキシプロパノール、3−イソプロポキシプロパノール、テトラヒドロフランもしくはジオキサン、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンもしくはジアセトンアルコール、エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルもしくは酢酸ブチル、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、石油エーテル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、デカリン、ジメチルナフタレン、石油スピリット、ブレーキ液もしくはオイル、例えば鉱油、本発明によればガソリン、ケロシン、ディーゼル油及び加熱油、天然油、例えばオリーブ油、大豆油もしくはヒマワリ油、又は天然もしくは合成のエンジンオイル、圧媒油もしくはトランスミッションオイル、例えば車両エンジンオイルもしくはミシン油である。
【0052】
特に有利には、一般式(I)の化合物は、本発明による方法に従って、オイル、特に鉱油のマーキングのために使用される。
【0053】
本発明は、更に、一般式(I)で示される少なくとも1つの化合物をマーカーとして含む液体、有利にはオイル、特に鉱油を提供する。
【0054】
マーカーとして使用されるべき一般式(I)で示される化合物は、確実な検出が保証される量で液体に添加される。典型的には、マーキングされた液体中のマーカーの全含有率(質量に対する)は、約0.1〜5000ppb、有利には1〜2000ppb、より有利には1〜1000ppbである。
【0055】
液体をマーキングするために、化合物は、一般に、溶液(原液)の形で添加される。特に、鉱油の場合には、これらの原液を製造するのに適した溶剤は、有利には、芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、又は比較的高沸点の芳香族混合物である。
【0056】
係る本発明による原液の極めて高い粘度(従って、計量と取り扱いが困難)を避けるために、原液の全質量に対して、0.5〜50質量%、有利には0.5〜40質量%、より有利には0.5〜30質量%のマーカーの全濃度が、一般に選択される。
【0057】
一般式(I)の化合物は、適宜、他のマーカー/色素との混合物において使用することもできる。この場合に、液体中の該マーカーの全量は、一般に、前記の範囲内である。
【0058】
本発明は、また、液体、有利にはオイル、特に鉱油のマーキングのための方法において、一般式(I)の化合物を該液体に添加する方法を提供する。
【0059】
本発明は、また、一般式(I)の少なくとも1つの化合物を含む液体中のマーカーを検出するための方法を提供する。
【0060】
液体中の一般式(I)の化合物は、当業者に公知の通常の方法によって検出される。一般式(I)の化合物は一般に高い吸収能を有し、かつ/又は高い蛍光量子収量を示すので、所定の場合における可能な一例は、分光測定的な検出である。この関連において、文献WO94/02570号(第14頁第10行〜46行及び図1)、WO99/55805号(第22頁第7行〜第34頁第46行)及びWO99/56125号(第22頁第22行〜第46頁第15行)の開示に明示的に記載がなされる。
【0061】
一般式(I)の化合物は、一般に、その吸収極大を、500〜900nmの範囲で有し、かつ/又は蛍光を、500〜1000nmの範囲で有し、従って好適な機器を用いて容易に検出することができる。
【0062】
検出は、自体公知のようにして、例えば分析されるべき液体の吸収スペクトルを測定することによって実施することができる。
【0063】
しかしながら、好ましくは、液体中に存在する一般式(I)の化合物の蛍光を、有利には半導体レーザもしくは半導体ダイオードを用いて励起させることも可能である。スペクトル範囲λmax−100nm〜λmax+20nmにおける波長を有する半導体レーザもしくは半導体ダイオードを使用することが特に好ましい。λmaxは、マーカーの最長波長吸収極大の波長を意味する。最大発光の波長は、一般に500〜900nmの範囲にある。
【0064】
こうして生ずる蛍光は、有利には、半導体検出器で、特にシリコンホトダイオードもしくはゲルマニウムホトダイオードで検出される。
【0065】
その検出は、インターフェースフィルタ及び/又はエッジフィルタ(λmaxからλmax+80までの範囲の短波長伝送エッジを有する)及び/又は偏光子が、検出器の上流に配置されている場合に特に好ましい結果をもたらす。
【0066】
前記化合物によって、非常に簡単に、一般式(I)の化合物が、わずか約1ppm(吸収による検出)又はわずか約100ppb(蛍光による検出)の濃度でのみ存在する場合でさえも、マーキングされた液体を検出することができる。
【0067】
一般式(I)の少なくとも1つの化合物を、好適な波長の放射線での照射で検出可能な蛍光を励起させるのに十分な量で含む液体中のマーカーの検出のための好ましい方法は、
a)波長500〜900nmの電磁放射線で液体を照射することと、
b)500〜1000nmの範囲の放射線を検出するための装置で励起された蛍光放射線を検出すること
によって実施される。
【0068】
一般式(I)の少なくとも1つの化合物を、好適な波長の放射線での照射で検出可能な吸収を示すのに十分な量で含む液体中のマーカーの検出のための好ましい方法は、
a)波長500〜900nmの電磁放射線で液体を照射することと、
b)500〜900nmの範囲の放射線を検出するための装置で放射線a)の吸収を検出すること
によって実施される。
【0069】
本発明は、また、一般式(I)の化合物を好適な波長での照射で検出可能な蛍光を励起させるのに十分な量で含む液体、有利にはオイル、特に鉱油を同定するための方法において、
a)液体を、波長500〜900nmの電磁放射線で照射することと、
b)電磁放射線a)の吸収を、放射線検出用の装置で検出することと、
c)励起された蛍光放射線を、500〜900nmの範囲の放射線を検出するための装置で検出することと、
d)液体を、吸収b)及び/又は蛍光c)によって同定することと、
e)一般式(I)の化合物の液体中での濃度を、蛍光放射線c)によって決定すること
を含む方法を提供する。
【0070】
本発明による同定のための方法の好ましい一実施態様においては、該方法の工程b)及びe)からの測定データを組み合わせて同定を行う。前記同定は、更なる工程として、公知の分光測定データとの比較を含んでよい。例えば、公知の分光測定データは、例えばデータベース中に蓄積されてよい電子記憶されたスペクトルである。
【0071】
一般式(I)の化合物の混合物をマーカーとして使用する場合に、吸収極大λmaxの波長位置は、有利には、分光測定的に測定可能な程度だけ異なる。吸収極大の位置は、有利には、それぞれの場合に、少なくとも40nmの程度だけ異なる。λmaxは、マーカーの最長波長吸収極大の波長を意味する。
【0072】
一般に、一般式(I)の化合物の吸収帯は、互いに重複しても、又は互いに別々に存在してもよい。例えば吸収もしくは蛍光における、複数の分光測定的特性の狙い通りの検出と組み合わせた検出は、一般式(I)の化合物の混合物を用いる本発明による使用の場合に構築されるべき、いわゆる"フィンガープリントシステム"を可能にする。
【0073】
好ましくは、また、一般式(I)の化合物の混合物中の種々の定量比を、種々のマーカーを得るために用いることも可能である。好ましくは、一般式(I)で示され、n個の異なる定量比で存在する2つの化合物V1及びV2を用いて、本発明による使用のためのn個のマーカーを得ることが可能である(nは、1より大きい整数である)。例えば、nが2である場合に、V1:V2=1:2及びV1:V2=2:1の定量比を用いて、2つのマーカーを得ることが可能である。特定の定量比は、当業者によって、特定の使用のための簡単な通常の実験によって測定することができる。
【0074】
本発明による方法並びに一般式(I)の化合物の好ましい一実施態様においては、一般式(I)の化合物以外の更なる(少なくとも1つの)マーカー物質(MA)がマーカーとして使用される。係る混合物においては、該混合物中に存在する一般式(I)の化合物の吸収極大の位置とは少なくとも40nmだけ異なる波長に吸収極大λmaxがあるマーカー(MA)を使用することが好ましい。係る混合物においては、一般式(I)の化合物のそれより大きい(波長が長い)波長にλmaxがあるマーカー(MA)を使用することが好ましい。しかしながら、また、係る混合物においては、一般式(I)の化合物のそれより小さい(波長が短い)波長にλmaxがあるマーカー(MA)を使用することも好ましい。
【0075】
一般に、マーカー(MA)の吸収帯と一般式(I)の化合物の吸収帯は、互いに重複しても、又は互いに別々に存在してもよい。例えば吸収もしくは蛍光における、複数の分光測定的特性の狙い通りの検出と組み合わせた検出は、マーカー(MA)と一般式(I)の化合物の混合物を用いる本発明による使用の場合に構築されるべき、いわゆる"フィンガープリントシステム"を可能にする。
【0076】
好ましくは、また、マーカー(MA)と一般式(I)の化合物の混合物中の種々の定量比を、種々のマーカーを得るために用いることも可能である。好ましくは、2つの化合物で、n個の異なる定量比で存在する、マーカー(MA)のMA1と、一般式(I)のV2を用いて、本発明による使用のためのn個のマーカーを得ることが可能である(nは、1より大きい整数である)。例えば、nが2である場合に、MA1:V2=1:2及びMA1:V2=2:1の定量比を用いて、2つのマーカーを得ることが可能である。
【0077】
マーカー(MA)と一般式(I)の化合物との定量比は、一般に、マーカー(MA)の特定の使用と、検出感度とに依存する。特定の定量比は、その特定の使用のために、当業者によって、簡単な通常の実験を参照して測定することができる。
【0078】
可能なマーカー(MA)は、一般式(I)の化合物以外のアントラキノン、フタロシアニン(金属不含及び金属含有)もしくはナフタロシアニンを含む。一般式(I)の化合物以外のアントラキノンもしくはフタロシアニン、より好ましくはフタロシアニンを使用することが好ましい。
【0079】
一般式(I)の化合物は、また、添加剤濃縮物(これは、以下に、関連の専門用語に従って、"パッケージ"とも呼称する)であってキャリヤオイル及び種々の燃料添加剤と同様に、一般に色素と、不可視の収入印紙用マーキングもしくは製造元に特有のマーキングのためには、付加的にマーカーをも含むものにおける一成分として使用することもできる。これらのパッケージは、様々な鉱油配給元が、未添加の鉱油の"プール"から供給されることを可能にし、その個別のパッケージを用いてのみ、例えば好適な輸送容器中に充填する間に、会社特有の添加、色及びマーキングが鉱油に付与される。
【0080】
係る本発明によるパッケージ中に存在する成分は、その際、特に
a)一般式(I)の少なくとも1つの化合物と、
b)少なくとも1つのキャリヤオイルと、
c)以下のi〜iiiからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤と、
i. 清浄剤、
ii. 分散剤、及び
iii. バルブシート減摩添加剤
d)また、適宜、更なる添加剤及び助剤
である。
【0081】
使用されるキャリヤオイルは、一般に、粘性の、高沸点の、特に熱安定性の液体である。前記液体は、高温の金属表面を、例えば吸気弁を、薄い液膜で覆うので、金属表面上の分解生成物の形成と堆積を防ぎ又は遅延させる。
【0082】
燃料及び潤滑剤添加用濃縮物の成分b)として有用なキャリヤオイルは、例えば鉱物性キャリヤオイル(ベースオイル)、特にSolvent Natural(SN)500〜2000の粘度クラスのもの、MN=400〜1800を有するオレフィンポリマーを基礎とする合成キャリヤオイル、特にポリブテンもしくはポリイソブテン(水素化もしくは非水素化)を基礎とする合成キャリヤオイル、ポリ−α−オレフィンもしくはポリ(内部オレフィン)を基礎とする合成キャリヤオイル及びまたアルコキシ化された長鎖アルコールもしくはフェノールを基礎とする合成キャリヤオイルである。キャリヤオイルとして使用されるべき、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドの、ポリブチルアルコールもしくはポリイソブテンアルコールへの付加物は、例えばEP277345号A1に記載されている;使用されるべき更なるポリアルケンアルコールポリアルコキシレートは、WO00/50543号A1に記載されている。使用されるべき更なるキャリヤオイルは、また、WO00/61708号に詳説されるポリアルケンアルコールポリエーテルアミンを含む。
【0083】
もちろん、また、種々のキャリヤオイルの混合物も、それらが互いにかつパッケージの残りの成分と相溶性である限りは、使用が可能である。
【0084】
内燃機関のキャブレター及び吸気システム、また燃料計量用の噴射システムも、次第に、不純物によって汚染される。その不純物は、空気からの煤塵粒子と燃焼室からの未燃焼の炭化水素によって生ずる。
【0085】
これらの汚染を低減もしくは抑制するために、添加剤("清浄剤")が燃料に添加され、そうしてバルブ及びキャブレター又は噴射システムが清浄に保たれる。係る清浄剤は、一般に、1つ以上のキャリヤオイルと組み合わせて使用される。キャリヤオイルは、付加的な"洗浄作用"を実行し、清浄剤をその清浄作用の点で支持し、しばしば促進し、清浄に保ち、こうして必要な清浄剤の量の低下に貢献しうる。
【0086】
また、ここでは、キャリヤオイルとして一般に使用される多くの物質が清浄剤及び/又は分散剤としての付加的な作用を示すことが挙げられるべきであり、それが、係る場合に前記の剤の割合を低減できる理由である。清浄剤/分散剤の作用を有する係るキャリヤオイルは、例えば最後に述べた国際公開文献に詳説されている。
【0087】
また、しばしば、清浄剤、分散剤及びバルブシート減摩添加剤の作用様式の範囲を明らかに定めることは不可能である。それが、これらの化合物がまとめて成分c)として列記されることの所以である。パッケージにおいて使用される慣用の清浄剤は、例えばWO00/50543号A1とWO00/61708号A1に列記されており、該清浄剤は、
EP−A244616号に従って、高反応性ポリイソブテンをヒドロホルミル化し、引き続きアンモニア、モノアミンもしくはポリアミン、例えばジメチレンアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンもしくはテトラエチレンペンタミンにより還元的アミノ化をすることによって得られるポリイソブテンアミン、
主にβ位とγ位に二重結合を有するポリブテンもしくはポリイソブテンを塩素化し、引き続きアンモニア、モノアミンもしくは前記のポリアミンでアミノ化することによって得られるポリ(イソ)ブテンアミン、
ポリ(イソ)ブテン中の二重結合を空気もしくはオゾンで酸化させてカルボニルもしくはカルボキシル化合物を得て、引き続き還元的(水素化)条件下でアミノ化することによって得られるポリ(イソ)ブテンアミン、
DE−A19620262号に従って、ポリイソブテンエポキシドから、アミンと反応させ、引き続き脱水し、アミノアルコールを還元させることによって得られるポリイソブテンアミン、
WO−A97/03946号に従って、平均重合度P5〜100を有するポリイソブテンと窒素酸化物もしくは窒素酸化物と酸素との混合物とを反応させ、引き続きこれらの反応生成物を水素化させることによって得られる、場合によりヒドロキシル基を含むポリイソブテンアミン、
EP−A476485号に従って、ポリイソブテンエポキシドとアンモニア、モノアミンもしくは前記のポリアミンとを反応させることによって得られる、ヒドロキシル基を含むポリイソブテンアミン、
2〜C30−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−もしくはジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノールもしくはC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基もしくはアミノ基あたりに1〜30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとを反応させ、引き続きアンモニア、モノアミンもしくは前記のポリアミンで還元的アミノ化をすることによって得られるポリエーテルアミン、また
EP−A831141号に従って、ポリイソブテン置換されたフェノールとアルデヒド及びモノアミンもしくは前記のポリアミンとを反応させることによって得られる"ポリイソブテンマンニッヒ塩基"
を含む。
【0088】
使用されるべき更なる清浄剤及び/又はバルブシート減摩添加剤は、例えばWO00/47698号A1に列記されており、前記剤は、85〜20000の数平均分子量(MN)を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素基と、以下の(i)〜(ix)から選択される少なくとも1つの極性部を有する化合物を含む:
(i)6個以下の窒素原子を有し、そのうちの少なくとも1個の窒素原子が塩基性特性を有するモノ−もしくはポリアミノ基;
(ii)場合によりヒドロキシル基と組み合わせての、ニトロ基;
(iii)少なくとも1個の窒素原子が塩基性特性を有するモノ−もしくはポリアミノ基と組み合わせての、ヒドロキシル基;
(iv)カルボキシル基又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(v)スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(vi)ヒドロキシル基、少なくとも1個の窒素原子が塩基性特性を有するモノ−もしくはポリアミノ基、又はカルバメート基を末端とするポリオキシ−C2〜C4−アルキレン部;
(vii)カルボン酸エステル基;
(viii)無水コハク酸から誘導され、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基および/またはアミド基及び/又はイミド基を有する部;及び
(ix)フェノール性ヒドロキシル基とアルデヒド及びモノ−もしくはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られる部。
【0089】
モノ−もしくはポリアミノ基(i)を含む添加剤は、有利には、MN=300〜5000を有するポリプロペン又は高反応性の(すなわち、通常は、β位及びγ位に主に末端二重結合を有する)もしくは慣用の(すなわち、主に内部二重結合を有する)ポリブテンもしくはポリイソブテンを基礎とするポリアルケンモノ−もしくはポリアルケンポリアミンである。ポリイソブテン(20質量%までのn−ブテン単位を有してよい)からヒドロホルミル化とアンモニア、モノアミンもしくはポリアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンもしくはテトラエチレンペンタミンでの還元的アミノ化によって製造できる、高反応性ポリイソブテンを基礎とする係る添加剤は、特にEP244616号A2に開示されている。主に内部二重結合を有する(通常は、β位及びγ位)ポリブテン又はポリイソブテンを添加剤の製造における出発材料として使用する場合に、可能な製造経路は、塩素化に引き続くアミノ化、又は二重結合を空気もしくはオゾンで酸化してカルボニルもしくはカルボキシル化合物を得て、引き続き還元的(水素化)条件下でアミノ化することによるものである。ここでアミノ化のために使用されるアミンは、ヒドロホルミル化された高反応性ポリイソブテンの還元的アミノ化について前記で使用されるのと同じものであってよい。ポリプロペンを基礎とする相応の添加剤は、特に、WO94/24231号A1に記載されている。
【0090】
モノアミノ基(i)を含む更に好ましい添加剤は、平均重合度P5〜100を有するポリイソブテンと窒素酸化物もしくは窒素酸化物と酸素との混合物との反応生成物の水素化生成物であり、例えばそれは、特にWO97/03946号A1に記載されている。
【0091】
モノアミノ基(i)を含む更に好ましい添加剤は、ポリイソブテンエポキシドから、アミンと反応させ、引き続き脱水させ、アミノアルコールを還元することによって得られる化合物であり、例えばそれは、特にDE19620262号A1に記載されている。
【0092】
ニトロ基(ii)を、場合によりヒドロキシル基と組み合わせて含む添加剤は、有利には、平均重合度P5〜100又は10〜100を有するポリイソブテンと窒素酸化物もしくは窒素酸化物と酸素との混合物との反応生成物であり、例えばそれは、特にWO96/03367号A1及びWO96/03479号A1に記載されている。これらの反応生成物は、一般に、純粋なニトロポリイソブタン(例えばα,β−ジニトロポリイソブタン)及び混合型のヒドロキシニトロポリイソブタン(例えばα−ニトロ−β−ヒドロキシポリイソブタン)の混合物である。
【0093】
ヒドロキシル基を、モノ−もしくはポリアミノ基(iii)と組み合わせて含む添加剤は、特に、有利には主に末端二重結合を有し、かつMN=300〜5000を有するポリイソブテンから得られるポリイソブテンエポキシドとアンモニア又はモノ−もしくはポリアミンとの反応生成物であり、例えばそれは、特にEP476485号A1に記載されている。
【0094】
カルボキシル基又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩(iv)を含む添加剤は、有利には、C2〜C40−オレフィンと無水マレイン酸とのコポリマーであって全モル質量が500〜20000であり、そのうちカルボキシル基の幾らか又は全てがアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩に変換されており、カルボキシル基の残りがアルコールもしくはアミンと反応されているコポリマーである。係る添加剤は、特に、EP307815号A1によって開示されている。係る添加剤は、主に、バルブシート摩耗を抑え、そしてWO87/01126号A1に記載されているように、好ましくは、慣用の清浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミンもしくはポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。
【0095】
スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩(v)を含む添加剤は、有利には、スルホコハク酸アルキルのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であり、例えばそれは、特にEP639632号A1に記載されている。係る添加剤は、主に、バルブシート摩耗を抑え、そして、好ましくは、慣用の清浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミンもしくはポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。
【0096】
ポリオキシ−C2〜C4−アルキレン部(vi)を含む添加剤は、有利には、C2〜C60−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−もしくはジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノール又はC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基もしくはアミノ基あたり1〜30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドと反応させ、ポリエーテルアミンの場合には、アンモニア、モノアミンもしくはポリアミンでの還元的アミノ化によって得られるポリエーテルもしくはポリエーテルアミンである。係る生成物は、特にEP310875号A1、EP356725号A1、EP700985号A1及びUS4,877,416号に記載されている。ポリエーテルの場合に、係る生成物は、キャリヤオイル特性をも有する。これらの典型的な例は、トリデカノールブトキシレート、イソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレート及びポリイソブテノールブトキシレート及びプロポキシレート並びにまたアンモニアとの相応の反応生成物である。
【0097】
カルボン酸エステル基(vii)を含む添加剤は、有利には、モノ−、ジ−もしくはトリカルボン酸と長鎖アルカノールもしくはポリオールとのエステル、特に100℃で2mm2/sの最低粘度を有するものであり、例えばそれは、DE3838198号A1に記載されている。使用されるモノカルボン酸、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸は、脂肪族もしくは芳香族の酸であり、特に好適なエステルアルコールもしくはエステルポリオールは、例えば6〜24個の炭素原子を有する長鎖の代表物である。エステルの典型的な代表物は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール及びイソトリデカノールのアジピン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル及びトリメリト酸エステルである。無水コハク酸から誘導される部を有し、かつヒドロキシル基及び/又はアミノ基および/またはアミド基及び/又はイミド基(viii)を有する添加剤は、有利には、慣用の又は高反応性のMN=300〜5000を有するポリイソブテンと無水マレイン酸とを熱的経路によって又は塩素化ポリイソブテンを介して反応させることによって得られる、ポリイソブテニルコハク酸無水物の相応の誘導体である。エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンもしくはテトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミンを有する誘導体に特に関心が持たれる。係るガソリン燃料添加剤は、特にUS4,849,572号に記載される。
【0098】
フェノール性ヒドロキシル基とアルデヒド及びモノ−もしくはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られる部(ix)を含む添加剤は、有利には、ポリイソブテン置換されたフェノールとホルムアルデヒド及びモノ−もしくはポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンもしくはジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物である。ポリイソブテニル置換されたフェノールは、慣用のもしくは高反応性のMN=300〜5000を有するポリイソブテンに由来してよい。係る"ポリイソブテン−マンニッヒ塩基"は、特にEP831141号A1に記載されている。
【0099】
個々に詳説した添加剤のより厳密な定義に関しては、前記の従来技術文献の開示に明記されている。
【0100】
成分c)としての分散剤は、例えばポリイソブテンコハク酸無水物のイミド、アミド、エステル及びアンモニウム並びにアルカリ金属塩である。これらの化合物は、特に潤滑油において使用されるが、時として、燃料組成物中の清浄剤としても使用される。
【0101】
パッケージの成分d)として適宜存在してよい更なる添加剤及び助剤は、
有機溶剤、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノールもしくはヘキサノール、例えばグリコール、例えば1,2−エチレングリコール、1,2−もしくは1,3−プロピレングリコール、1,2−、2,3−もしくは1,4−ブチレングリコール、ジ−もしくはトリエチレングリコール又はジ−もしくはトリプロピレングリコール、例えばエーテル、例えばメチル t−ブチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノメチルエーテル又は1,2−エチレングリコールジメチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノエチルエーテルもしくは1,2−エチレングリコールジエチルエーテル、3−メトキシプロパノール、3−イソプロポキシプロパノール、テトラヒドロフランもしくはジオキサン、例えばケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンもしくはジアセトンアルコール、例えばエステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルもしくは酢酸ブチル、例えばラクタム、例えばN−メチルピロリジノン(NMP)、例えば脂肪族もしくは芳香族の炭化水素並びにその混合物、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、石油エーテル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、デカリン、ジメチルナフタレン又は石油スピリット及び、例えば鉱油、例えばガソリン、ケロシン、ディーゼル油もしくは加熱油、
腐食防止剤、例えば非鉄金属腐食保護の場合における皮膜形成傾向を有する有機カルボン酸のアンモニウム塩もしくは複素環式芳香族化合物を基礎とする腐食防止剤、
酸化防止剤もしくは安定化剤、例えばアミン、例えばp−フェニレンジアミン、ジシクロヘキシルアミンもしくはその誘導体又はフェノール、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェノールもしくは3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸を基礎とする酸化防止剤もしくは安定化剤、
解乳化剤、
静電防止剤、
メタロセン、例えばフェロセン又はメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、
潤滑向上剤(潤滑添加剤)、例えば一定の脂肪酸、アルケニルコハク酸エステル、ビス(ヒドロキシアルキル)脂肪アミン、ヒドロキシアセトアミド又はひまし油、
燃料のpHを増大させるためのアミン、
一般式(I)の化合物以外の更なるマーカー、及び
色素
である。
【0102】
成分a)、すなわち一般式(I)の少なくとも1つの化合物の、本発明によるパッケージ中での濃度は、一般に、鉱油に該パッケージを添加した後に、所望のマーカー濃度がそこに存在する程度で選択される。鉱油中でのマーカーの典型的な濃度は、例えば、0.01質量ppmから数十質量ppmまでの範囲である。
【0103】
成分b)、すなわち少なくとも1つのキャリヤオイルは、該パッケージ中に、一般に1〜50質量%、特に5〜30質量%の濃度で存在し、そして成分c)、すなわち少なくとも1つの清浄剤及び/又は少なくとも1つの分散剤は、一般に、25〜90質量%で、特に30〜80質量%で存在する、これらの濃度は、それぞれの場合に成分a)〜c)と、存在すればd)との全量に対するものであり、その際、成分a)〜c)と、適宜、d)の個々の濃度の合計は、足して100質量%となる。
【0104】
成分d)として、腐食防止剤、酸化防止剤もしくは安定化剤、解乳化剤、静電防止剤、メタロセン、潤滑向上剤及び燃料のpHの低下用のアミンが、該パッケージ中に存在する場合には、それらの濃度の合計は、一般に、該パッケージの全質量(すなわち成分a)〜c)及びd)の全量)に対して、10質量%を超過しない。その際、腐食防止剤及び解乳化剤の濃度は、一般にそれぞれの場合に、該パッケージの全量の約0.01〜0.5質量%の範囲にある。
【0105】
成分d)として、付加的な有機溶剤(すなわち残りの成分と一緒にまだ導入されていない)が該パッケージ中に存在する場合に、それらの濃度の合計は、一般に、該パッケージの全量に対して20質量%を超過しない。これらの溶剤は、一般に、マーカー及び/又は色素の溶液に由来し、それらは、該パッケージに、より厳密な計量性の観点で、純粋なマーカー及び/又は色素ではなく添加される。
【0106】
成分d)として、一般式(I)の化合物以外の更なるマーカーが該パッケージ中に存在する場合に、その濃度はまた、鉱油中に該パッケージを添加した後に有すべき含量を基礎とする。成分a)について規定したことが、必要な変更を加えて適用される。
【0107】
成分d)として、色素が本発明によるパッケージ中に存在する場合には、その濃度は、一般に、例えば該パッケージの全量に対して0.1〜5質量%である。
【0108】
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の発明主題を制限するものではない。
【0109】
実施例:
実施例における一般式(I)の化合物は、文献から公知の当業者によく知られた前記の公知法によって製造した。
【0110】
トリデシルアミン異性体混合物は、BASF株式会社製の市販製品である。
【0111】
実施例1: 1,4−ジアミノ−N−トリデシル−2,3−アントラキノンジカルボキシイミド(異性体混合物)の製造
12.8g(0.042モル)の1,4−ジアミノ−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドを、64gのo−ジクロロベンゼン中に懸濁させた。該反応混合物を、140℃に加熱し、簡潔に撹拌し(約10分間)、次いで60℃に冷却した。60℃で、19.9g(0.1モル)のトリデシルアミン異性体混合物を、前記反応混合物に添加した。該反応混合物を、次いで、120℃に加熱し、そしてこの温度で約7時間にわたり保持した。次いで、該混合物を再び60℃に冷却し、そして2.0g(0.01モル)のトリデシルアミン異性体混合物を添加した。引き続き、該反応混合物を、再び120℃に加熱し、そしてこの温度で約3.5時間にわたり保持した。その後に、更に2.0g(0.01モル)のトリデシルアミン異性体混合物を添加した。120℃で更に17.5時間後に、該反応混合物を室温に冷却し、そして濾過し、それにより固体が残留するので、その固体を洗浄し、真空乾燥キャビネット中で乾燥させた。約200mlのメタノールを添加することによって、更なる固体が、濾液から沈殿し、そしてそれを濾別し、洗浄し、そして真空乾燥キャビネット中で乾燥させた。
【0112】
合した固体を、シリカゲル上での溶出剤としてのジクロロメタンを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。溶剤を除去した後に、11.3gの青色の固体が得られた。
【0113】
該生成物の分光測定データ(吸収スペクトル)を測定した:
UV/Vis:λmax(ε)=676nm(15400)、トルエン中。
【0114】
実施例2: THF中での蛍光の検出によるマーカーの検出
マーカーである1,4−ジアミノ−N−イソプロピル−2,3−アントラキノンジカルボキシイミド
【化2】

を、種々の濃度でテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させ、そして励起された蛍光を測定することによって検出した。このために、マーカーの溶液を、出力3mWと励起波長660nmを有するレーザダイオードを用いて励起させた。蛍光は、シリコンホトダイオードを用いて、励起ビームに対して直角で、エッジ波長695nmを有する市販のエッジフィルタ(ロングパス)によって積分検出した。以下の結果が得られた:
【表1】

【0115】
測定される相対蛍光強度(スケール目盛,SKT)は、使用される濃度と非常に良好な線形の相関を有する。相関係数の二乗は、0.998である。
【0116】
実施例3: ガソリン中での蛍光の検出によるマーカーの検出
実施例1からのマーカーを、ARAL(登録商標)Ultimateガソリン中に溶解させた。蛍光強度について以下の結果が得られた:
【表2】

【0117】
この実施例においても、蛍光シグナル(相対強度:スケール目盛,SKT)は、その濃度と良好な線形の相関を有する。相関係数の二乗は、0.995である。
【0118】
実施例4: 幾つかのマーカーの吸収波長
マーカーを、塩化メチレン(MCL)中に溶解させ、そして個々の物質の最長波長吸収極大λmaxを測定した。
【0119】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、記号は、それぞれ以下の通り定義される:
X、Yは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、O、NR4、複素環であり、
A、Bは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、O、NR5であり、
Mは、アルカリ金属であり、
1、R2は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
3は、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルキルカルボニル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルケニルカルボニル、C2〜C20−アルキニル、C2〜C20−アルキニルカルボニル、C3〜C15−シクロアルキル、C3〜C15−シクロアルキルカルボニル、アリール、アリールカルボニル、複素環であり、
4は、H、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
5は、H、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
6、R7、R8、R9は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルキルカルボニル、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルコキシカルボニル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルケニルカルボニル、C2〜C20−アルキニル、C2〜C20−アルキニルカルボニル、C3〜C15−シクロアルキル、C3〜C15−シクロアルキルカルボニル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、複素環、NR12、ハロゲン、CN、NO2であり、
その際、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8もしくはR9は、それぞれ任意の位置で、1つ以上のヘテロ原子によって中断されていてよく、その際、これらのヘテロ原子の数は、10個以下であり、有利には8個以下であり、より有利には5個以下であり、特に3個以下であり、かつ/又はそれぞれの場合に、NR12、CONR12、COOM、COOR1、SO3M、SO31、CN、NO2、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、アリール、アリールオキシ、複素環、ヘテロ原子もしくはハロゲンによって、任意の位置であるが、5箇所以下で、有利には4箇所以下で、より有利には3箇所以下で置換されていてよく、その際、後者の置換基は、同様に、それらの基によって2箇所以下で、有利には1箇所以下で置換されていてよい]で示される化合物を、液体用マーカーとして用いる使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、式中の記号がそれぞれ以下の通り定義されることを特徴とする使用:
X、Yは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、O、NR4であり、
A、Bは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、NH、Oであり、
1、R2は、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、アリールであり、
3は、C1〜C20−アルキル、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、複素環であり、
4は、H、C1〜C20−アルキル、アリール、複素環であり、
6、R7、R8、R9は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、C3〜C15−シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、NR12、ハロゲン、CN、NO2である。
【請求項3】
請求項1に記載の使用であって、式中の記号がそれぞれ以下の通り定義されることを特徴とする使用:
X、Yは、両者とも同一でNR4であり、
A、Bは、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、NH、Oであり、
1、R2は、それぞれHであり、
3は、C1〜C20−アルキル、C3〜C15−シクロアルキル、アリールであり、
4は、Hであり、
6、R7、R8、R9は、それぞれ無関係に、同一もしくは異なって、H、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、アリール、アリールオキシ、NR12、F、Cl、Br、CN、NO2である。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用であって、液体がオイルであることを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用であって、液体が鉱油であることを特徴とする使用。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用であって、液体が添加剤濃縮物であることを特徴とする使用。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1つの化合物をマーカーとして含む液体。
【請求項8】
請求項7に記載の液体であって、該液体がオイルであることを特徴とする液体。
【請求項9】
請求項7に記載の液体であって、該液体が鉱油であることを特徴とする液体。
【請求項10】
請求項7に記載の液体であって、該液体が添加剤濃縮物であることを特徴とする液体。
【請求項11】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1つの化合物を、好適な波長の放射線での照射で検出可能な蛍光を励起させるのに十分な量で含む液体中のマーカーの検出のための方法において、
a)波長500〜900nmの電磁放射線で液体を照射することと、
b)500〜1000nmの範囲の放射線を検出するための装置で励起された蛍光放射線を検出すること
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1つの化合物を、好適な波長の放射線での照射で検出可能な吸収を示すのに十分な量で含む液体中のマーカーの検出のための方法において、
a)波長500〜900nmの電磁放射線で液体を照射することと、
b)500〜900nmの範囲の放射線を検出するための装置で放射線a)の吸収を検出すること
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法であって、液体がオイルであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の方法であって、液体が鉱油であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11又は12に記載の方法であって、液体が添加剤濃縮物であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1つの化合物を、好適な波長の放射線での照射で検出可能な蛍光を励起させるのに十分な量で含む液体を同定するための方法において、
a)液体を、波長500〜900nmの電磁放射線で照射することと、
b)電磁放射線a)の吸収を、放射線検出用の装置で検出することと、
c)励起された蛍光放射線を、500〜1000nmの範囲の放射線を検出するための装置で検出することと、
d)液体を、吸収b)及び/又は蛍光c)によって同定することと、
e)一般式(I)の化合物の液体中での濃度を、蛍光放射線c)によって決定すること
を特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、該液体がオイルであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、該液体が鉱油であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、液体が添加剤濃縮物であることを特徴とする方法。
【請求項20】
一般式(I)で示される化合物であって、1,4−ジアミノ−N−トリデシル−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドであり、かつトリデシル置換基が、種々のトリデシルの異性体混合物であってもよい化合物。
【請求項21】
一般式(I)で示される化合物であって、1,4−ジアミノ−N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドである化合物。
【請求項22】
一般式(I)で示される化合物であって、1,4−ジアミノ−N−(4−ドデシルフェニル)−2,3−アントラキノンジカルボキシイミドであり、かつドデシル置換基が、種々のドデシルの異性体混合物であってもよい化合物。
【請求項23】
一般式(Ia)
【化2】

で示される化合物。

【公表番号】特表2010−513633(P2010−513633A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541995(P2009−541995)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063813
【国際公開番号】WO2008/074709
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】