説明

液体用容器

【課題】従来のバリヤー性能を重視した容器はステンレス等の金属板を溶接組み立てしたリジッドな構造の内部容器が採用されているため、折畳むことができない。また折畳み可能な外部ケーシングに柔軟な樹脂製の内部容器を入れたものでは、内部容器の樹脂の水分透過性が劣るため、リチウムイオン二次電池の非水系電解液などを運搬・貯蔵するのに必要な水準のバリヤー性能が得られない。
【解決手段】蛇腹形状の側壁により上下方向に伸縮可能な胴部材と、胴部材の下側開口部に取り付けられ開閉自在な排出口を備えた底板部材と、前記胴部材の上側開口部に取り付けられた開閉自在の充填口を備えたフタ部材からなる金属製の内部容器と、前記底板部材に取り付けられた架台とフタ部材に取り付けられた上側フレームを接続する伸縮自在でかつ所定の位置で固定可能な固定手段を備えた外部ケーシングで構成された液体用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬品、特には非水系電解液等を運搬・貯蔵する際に使用するのに適した液体用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を運搬・貯蔵する容器としては、例えば特許第3661917号に記載の上部充填口と下部排出口を供えた内部容器と、内部容器を取り囲むパレット状架台を備えたケーシングよりなる容器が開示されている。このような液体運搬・貯蔵用容器において、内容物を排出した後に容器を減容する手段としては、外部ケーシングを折畳み可能な構造とし、内部容器を樹脂製の折畳みあるいは交換可能なものとしたものが提案されている(特開平8−26338)。また、対象とする液体が水蒸気等の水分の浸入を極端に嫌うリチウムイオン二次電池用の非水系電解液等の場合、内容器をステンレス鋼板等の金属製とすることにより、内部の液体の保護するバリヤー性能に重点を置いた容器が使用されている(例えば太陽シールパック株式会社・液体コンテナ、(株)日本物流機器・ステンレス製1000リットル角型運搬容器SUS−CON−III−C型、(株)キューシー・ステンレス製コンテナ危険物用 型式 QCMD−K9−SHS等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3661917号公報
【特許文献2】特開平8−26338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池用の非水系電解液に代表される優れたバリヤー性能を有する内部容器が必要な液体を運搬・貯蔵する容器において、液体を抜いた後に運搬・貯蔵用容器の外寸を減じてリターン時の運搬効率を高めようとする場合、従来のバリヤー性能を重視した容器はステンレス等の金属板を溶接組み立てしたリジッドな構造の内部容器が採用されているため、折畳むことができない。また折畳み可能な外部ケーシングに柔軟な樹脂製の内部容器を入れたものでは、内部容器の樹脂の水分透過性が劣るため、必要な水準のバリヤー性能が得られない。さらに、耐久性や耐圧性の面で性能が劣るという問題もある。
本発明は、上記の問題を解決するために、バリヤ性能を維持したまま、優れた耐久性や耐食性を有し、空荷時に減容可能な液体容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体用容器は、蛇腹形状の側壁により上下方向に伸縮可能な胴部材と、胴部材の下側開口部に取り付けられ開閉自在な排出口を備えた底板部材と、前記胴部材の上側開口部に取り付けられた開閉自在の充填口を備えたフタ部材からなる金属製の内部容器と、前記底板部材に取り付けられた架台とフタ部材に取り付けられた上側フレームを接続する伸縮自在でかつ所定の位置で固定可能な固定手段を備えた外部ケーシングで構成されていることを特徴とする。
内部容器の材質はステンレス鋼であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、金属製内部容器による高いバリヤー性能、耐久性、耐圧性を有すると共に、空荷時に減容可能な液体容器が実現でき、リチウムイオン二次電池用の非水系電解液などを低コストで輸送したり、貯蔵したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)本発明の実施例1に係る最大容量時の液体容器の外観と、(b)最小容量時の液体容器の外観。
【図2】本発明に係る内部容器の平面図。(a)丸形と、(b)コーナーR付き角形。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る液体容器の模式図であり、(a)は内容量が最大時のもの、(b)は内容物を排出して高さを半分に減じた状態を示す。図2は本発明に係る内部容器の平面図を示したもので、(a)は丸形、(b)はコーナーRを有した角形のものである。
【0009】
内部容器1は上下端が開放した筒状のもので上下方向に伸縮可能なように蛇腹形状とする。内部容器1の上側開口部にフタ2を、また下側開口部に底板3を取り付ける。内部容器1の開口部へのフタ2或いは底板3の取り付け方法は特に限定されないが、溶接や巻き締めに代表される機械的接合、フタ2及び底板3を内部容器1のそれぞれの開口部に嵌め込んで内部容器1の外側からバンドで締め付けるといった方法が適用可能である。いずれの方法においても液体容器としての気密性と、衝撃や内圧が作用しても機密性を損なわない程度の強度を有していることが求められる。フタ2には液体を充填するための開閉可能な充填口やマンホール(図示せず)、底板3には液体を取り出すための開閉可能な排出口(図示せず)を設けることができる。
【0010】
図1には内部容器1の蛇腹の谷部においてフタ2及び底板3を接合する例を示しているが、接合部は蛇腹の谷部に限らず山部或いは山部と谷部の途中としても良いし、フタ2及び底板3との接合を容易にすることを目的として内部容器1の上下端に蛇腹加工を施さないストレート部分を設けても良い。蛇腹状の側壁と底板及びフタからなる内部容器の材質は、耐圧性・蛇腹への加工性・伸縮のための弾性変形能・耐久性・側壁と底板及びフタとの接合性ならびに水分透過性の観点より選定するが、金属製特にオーステナイト系或いはフェライト系ステンレス鋼が性能と価格のバランス面より好ましい。内部容器の平面形状としては、耐圧性を重視する場合は図2(a)に示す丸形が好ましく、容器全体の外寸に対する内容積を重視する場合は図2に示すコーナーRを設けた角形が好ましい。
【0011】
フタ2が取り付けられた内部容器の外寸よりも大きい外寸を有する上側フレーム6と、底板3が取り付けられた架台7を内部容器1の伸縮に応じて高さが変更可能な外部ケーシング4で結び、架台7と上側フレーム6の位置を固定する。図1には多重円筒(テレスコープ)状の外部ケーシング4の断面を示しているが、外部ケーシング4はこのような形状に限定されるものではなく、多重角筒状のものや、伸縮可能なロッド状のものや、パンタグラフ状のリンク方式のもの等、架台7と上側フレーム6の位置を固定する機能を有したものであれば良い。図1に示した多重円筒によるものは、最外層円筒4−1が架台7に取り付けられ、最内層円筒4−3が上側フレーム6に取り付けられ、図(a)の最大容量時と、図1(b)の空荷時の状態で中間円筒4−2を介して外部ケーシング固定ピン5にてそれぞれの多重円筒の位置が固定されている。架台7にはフォークリフトの爪を挿入するための穴7−1を設けても良い。また運搬時の積載性を確保するため、上側フレーム6の上面には架台の下面と干渉する突起がなく、好ましくは架台の下面と嵌め合わせ可能な形状を有しているのが好ましい。
【実施例】
【0012】
厚さ0.6mm、長さ2,300mm、直径1,100mmのSUS304ステンレス鋼製円筒を、長さ1,050mm、内径φ1,000mm、外径1,200mm(蛇腹の山高さ100mm)、蛇腹の山ピッチ105mmの蛇腹状に加工して丸形内部容器1とし、該内部容器1の上下開口部(蛇腹谷部)に、それぞれフタ2及び底板3として外径φ1,000mm、厚さ3mmのSUS304ステンレス鋼板を嵌め込んでレーザー溶接により接合した。フタ2には開閉可能な注入口を備えたマンホールを取り付け、底板3は中央を周辺よりも50mm低いすり鉢状とし、すり鉢の底部に開閉可能なバルブを備えた液体の排出口を取り付けた。
【0013】
高さ75mmの溝形鋼を外寸1,300mm×1,300mmに組んだ上側フレーム6の下面中央にフタ2を固定し、外側直径φ1,244mm、内側直径φ1,242mm、高さ370mm、厚み1mmの内層側円筒4−3を上側フレーム中央に固定した。また高さ175mmの溝形鋼を外寸1,300mm×1,300mmに組んで四方にフォークリフトの爪が入る穴7−1を設けた架台7の上面の中心に底板3を固定し、外側直径φ1,250mm、内側直径φ1,248mm、高さ370mm、厚み1mmの外層側円筒4−1を架台中央に固定した。内層側円筒4−3の下端と外層側円筒4−1の上端に外側直径φ1,247mm、内側直径φ1,245mm、高さ400mm、厚み1mmの中間円筒4−2を固定し、架台7の下面から上側フレーム6の上面の距離が1,300mmとなるように固定した。上側フレームが傾斜しないよう外部ケーシング同士はそれぞれ4箇所の固定ピン5で固定した。
【0014】
このような状態で約1,000リットルの六フッ化燐酸リチウムをベースとしたリチウムイオン電池用電解液を運搬・貯蔵した。全ての電解液を排出した状態で外層側円筒4−1の上端と中間円筒4−2の下端を固定している固定ピン5を一旦取り外して中間円筒4−2が外層側円筒4−1の中に入るよう容器の高さを低くし、外層側円筒4−1の上端と中間円筒4−2の上端付近を再び固定ピン5で固定し、引き続いて内層側円筒4−3の下端と中間円筒4−2の上端を固定している固定ピン5を一旦取り外して内層側円筒4−3を中間円筒4−2の中に挿入して容器の高さを低くして、再び内層側円筒4−3の上端と中間円筒4−2の上端を固定ピン5で固定することにより、容器全体の高さを1,300mmから650mmまで低くすることができた。
【符号の説明】
【0015】
1 内部容器
2 フタ
3 底板
4−1 外部ケーシング(外層側円筒)
4−2 外部ケーシング(中間円筒)
4−3 外部ケーシング(内層側円筒)
5 外部ケーシング固定ピン
6 上側フレーム
7 架台
7−1 フォークリフトの爪用の穴
8 液体排出口及びバルブ
9 液体充填口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹形状の側壁により上下方向に伸縮可能な胴部材と、胴部材の下側開口部に取り付けられ開閉自在な排出口を備えた底板部材と、前記胴部材の上側開口部に取り付けられた開閉自在の充填口を備えたフタ部材からなる金属製の内部容器と、前記底板部材に取り付けられた架台とフタ部材に取り付けられた上側フレームを接続する伸縮自在でかつ所定の位置で固定可能な固定手段を備えた外部ケーシングで構成された液体用容器。
【請求項2】
前記内部容器の材質がステンレス鋼である請求項1に記載の液体用容器。




































【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−75692(P2013−75692A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217524(P2011−217524)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】