説明

液体貯留設備

【課題】簡単な構成でポンプモータのモータ部ケーシング外周部に炭酸カルシュームが析出し堆積するのを防止できる液体貯留設備を提供すること。
【解決手段】岩盤地下に設けられた液体貯留槽内に配置されたポンプモータ23を備え、液体貯留槽内に貯留された液体(仕様液)11をポンプモータ23で送液すると共に、該送液によりモータ部21を冷却するように構成した液体貯留設備であって、液体貯留槽の壁面から流出するCa分が析出するのを防止する薬液を注入する薬液注入管40を備え、薬液注入管40の薬液吐出口40aをポンプモータ23の最下端部又は該最下端部より下方に配置した。ポンプモータ外周を囲んで、保護管20が配置され、モータ部21の外周面と保護管20の内周面の間に仕切り管43を配置し、薬液の混入した仕様液11はモータ部21の外周面と保護管20の内周面の間を通り流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油やLPGなどの液体を岩盤地下に設けられた液体貯留槽に備蓄する液体貯留設備に関し、特に液体貯留槽内に設置されたポンプモータのモータ部が当該液体貯留槽から送られる送液により冷却されるように構成された液体貯留設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は上記岩盤地下に設けられた液体貯留槽にポンプモータを設置した液体貯留設備の構成例を示す図である。石油やLPGなどの液体を貯留する液体貯留槽1は岩盤層2を掘削して設けられ、底部3に底水(地下水等)10が導入されており、底水10の上部に石油やLPGなどの液体(以下「仕様液」という)11が貯留されている。この液体貯留槽1内には上下方向に延びる筒状の保護管20が設置され、該保護管20内にはモータ部21及びポンプ部22からなるポンプモータ23が配置されている。ポンプモータ23のポンプ部22の吐出口には揚液管24が接続されている。
【0003】
保護管20は地上に突出し、上端にヘッドプレート25が取付けられ閉塞されている。揚液管24はヘッドプレート25を貫通した、その上端が吐出口26となっている。保護管20が岩盤層2を貫通する部分には、プラグ(閉鎖体)6及び封水部7が設けられ、保護管20と岩盤層2の間を密封し、液体貯留槽1内に貯留された石油やLPGなどの液体がガス化して地上に漏れ出ないようにしている。
【0004】
一方、保護管20の下端部の周囲には、液体貯留槽1の底部3に立設されたスカート8が設けられている。スカート8の高さ寸法は上端部8aが通常時において底水10の上面よりも高い位置になるように設定されており、スカート8によって保護管20の下端開口部の周囲に底水10が流入しないようになっている。保護管20の下端開口部の周囲は仕様液11で満たされている。また、ポンプモータ23の下端には短管27を介してチェッキバルブ機構30が設けられ、保護管20の下端開口部の外周と保護管20の下端内周の間にはシール機構31が設けられている。
【0005】
上記構成の液体貯留設備において、貯留液吐出運転ないしスタンバイ状態でチェッキバルブ機構30は開(油圧等の加圧機構により弁が開状態となり、必要時圧力を除去、ないし削減して弁を閉止する)となる。ポンプモータ23を運転することで、チェッキバルブ機構30内に仕様液11が流入し、短管27の開口27aから保護管20内に流出し、ポンプモータ23のポンプ部22の吸込口22aから吸い込まれ、揚液管24を通って地上の所定の場所に送液される。この時仕様液はポンプモータ23のモータ部21のケーシング外周に接液し、該仕様液とケーシングの間で熱交換が行われモータ部21は冷却される。
【0006】
上記のように石油やLPGなどの液体を岩盤地下に設けられた液体貯留槽1内に備蓄する場合に、液体の漏洩防止や岩盤の剥離を防止するために、液体貯留槽1の岩盤内壁面にコンクリートの補強層(図示せず)を施すが、該コンクリートの補強層からは多くのCa分の流出が想定される。液体貯留槽1内の貯留液のPh状態(アルカリ度大)、Ca量が多い場合に炭酸カルシューム等が析出し易くなる。炭酸カルシューム等が析出することで回転機械のメカニカルシール部等の回転摺動部に析出物が固着したり、隙間のある部分が埋まったりして回転機械としての機能を損なう。
【0007】
そこで、ポンプモータ23のモータ部21とポンプ部22の間に設置されたメカニカルシール(図示せず)等の回転摺動部に薬液注入部を設け、薬液注入管40から炭酸カルシューム等の析出を防止する薬液41を注入し、メカニカルシール部等の回転摺動部に炭酸カルシューム等が析出し、析出物が付着するのを防止している。
【特許文献1】特開2006−061797号公報
【特許文献2】特開2006−226335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記液体貯留設備であっては、ポンプモータ23の回転摺動部のみならずモータ部21の冷却に重要な機能を持つ仕様液11の接液するモータ部21のケーシング表面にも炭酸カルシューム等の析出物が付着するという問題がある。このようにケーシング表面に炭酸カルシューム等の熱伝導率の低い析出物が付着すると、モータ部21と仕様液11の間の熱交換機能が徐々に低下する。特にモータ部21が封入水封式自己循環冷却方式を採用している場合は、本来の熱交換機能を阻害し、最悪の場合モータコイルが焼損に至る事故を起こす。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、簡単な構成でポンプモータのモータ部ケーシング外周部に炭酸カルシュームが析出して堆積するのを防止することができる液体貯留設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、岩盤地下に設けられた液体貯留槽、該液体貯留槽内に配置されたポンプモータを備え、該液体貯留槽内に貯留された液体を前記ポンプモータで送液すると共に、該送液により少なくともポンプモータのモータ部を冷却するように構成した液体貯留設備であって、前記液体貯留槽壁面から流出するCa分が析出するのを防止する薬液を注入する薬液注入管を備え、前記薬液注入管の薬液吐出口を前記ポンプモータの最下端部又は該最下端部より下方に配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体貯留設備において、前記ポンプモータ外周を囲んで、保護管が配置されており、前記送液は前記ポンプモータのモータ部外周面と前記保護管の内周面の間を通って流れるように構成され、前記薬液注入管の薬液吐出口は前記保護管内の前記ポンプモータの最下端部又は該最下端部より下方に配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体貯留設備において、前記ポンプモータのモータ部外周面と前記保護管内周面の間に仕切り管を配置し、前記薬液注入管から吐出された薬液の混入した前記送液は前記モータ部外周面と前記保護管内周面の間を通って流れるように構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液体貯留設備において、前記仕切り管内の下端部は前記薬液注入管の薬液吐出口を覆うように構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載された液体貯留設備において、前記仕切り管の材質は前記ポンプモータのモータ部外周面を構成する材料の材質より腐食しやすい材質であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5の何れか1項に記載された液体貯留設備において、前記ポンプモータのモータ部外周面は滑らかに形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体貯留設備において、前記液体貯留槽内に貯留される液体は、石油又はLPGであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び2に記載の発明によれば、薬液注入管の薬液吐出口をポンプモータのモータ部の最下端部又は該最下端部より下方に配置したので、Ca分の析出を防止する薬液がモータ部最下端部又は該最下部より下方にある仕様液に注入されることになり、該薬液の混入した送液(仕様液)がモータ部のケーシング外表面に接液しながら上昇することになり、該ケーシング外表面に炭酸カルシューム等の析出物が付着することを抑制できる。従って、長期間にわたってポンプモータのモータ部と送液との間の良好な熱交換作用が維持でき、モータ部が発熱により焼損等の事故を防止できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ポンプモータのモータ部外周面部と保護管内周部の間に仕切り管を配置し、薬液注入管から吐出された薬液の混入した送液はモータ部外周部と保護管内周部の間を通って流れるように構成したので、モータ部外周に薬液の混入した送液が接液することになるから、炭酸カルシューム等の析出が抑制され、該析出物のモータ部外周面への付着も抑制できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、仕切り管内の下端部は薬液注入管の薬液吐出口を覆うように構成されているので、薬液の混入した送液が効果的にモータ部外周と仕切り管内周の間を流れることになり、炭酸カルシューム等の析出物のモータ部ケーシング表面への付着を抑制できる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、仕切り管の材質はポンプモータのモータ部外周面を構成する材料の材質より腐食しやすい材質であるので、炭酸カルシューム等の析出物はモータ部外周より付着し易くなり、その結果モータ部外周への析出物の付着は抑制される。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、ポンプモータのモータ部外周面は滑らかに形成したので、炭酸カルシューム等の析出物のモータ部外周への付着は抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図2は本発明に係る液体貯留設備のポンプモータ部の構成例を示す図である。なお、液体貯留設備の概略構成は、図1に示す液体貯留設備と同じであるので、その図示と説明は省略する。図2において、図1と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示す。図示するように、薬液注入管40の薬液吐出口40aをポンプモータ23の最下端部に配置している。図ではポンプモータ23のモータ部21の最下端部より下方に配置した短管27の開口27a近傍に配置している。また、ポンプモータ23のモータ部21の外周部にはステー42を介して仕切り管43が配置されている。
【0023】
ポンプモータ23を運転することで、チェッキバルブ機構30内に仕様液11が流入し、短管27の開口27aから保護管20内に仕様液が流出し、その一部は仕切り管43の外周面と保護管20の内周面の間を通ってポンプ部22の吸込口22aに流入する。また、薬液吐出口40aから吐出された薬液41が混入した仕様液はモータ部21のケーシング外周面と仕切り管43の内周面の間を通ってポンプ部22の吸込口22aに流入する。これによりモータ部21のケーシング外周面には薬液41の混入した仕様液が接液することになり、ケーシング外周面に炭酸カルシューム等が析出物が付着するのを抑制できる。
【0024】
仕切り管43はモータ部21の外周に仕様液が十分に流れモータ部21の冷却作用を向上させるために取り付けるものである。従って、仕切り管43の形状は、薬液注入管40の薬液吐出口40aから吐出された薬液が混入した仕様液が容易にモータ部21の外周に流れるように仕切り管43の先端部43aは薬液注入管40の薬液吐出口40aを包み込む形状となっている。仕切り管43はポンプモータ23のモータ部21のケーシング材質より腐食し易い材質とし、モータ部21のケーシングの材質はステンレススチール等の錆び難い材料とし、且つその表面を滑らかに加工する。
【0025】
ここで仕切り管43をモータ部21のケーシング材質より腐食し易い材質としたのは、腐食し易い材質は初期の炭酸カルシューム等の析出物の付着がステンレススチール等に比べて速いことによる。また、モータ部21のケーシングの表面を滑らかに加工するのは、炭酸カルシューム等の析出物が固着しにくいことによる。これによりポンプモータ23のモータ部21のケーシング外表面に炭酸カルシューム等の析出物は極力付着しなくなり、長時間に亘り、仕様液とモータ部21の間の良好な熱交換機能が維持され、モータ部21は効率よく冷却される。特にモータ部21に封入水封式自己循環冷却方式を採用した場合に効果的である。
【0026】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。本発明に係る液体貯留設備において、貯留対象となる液は主にLPG、石油(原油)であるが、液としては地下水、地熱水等でもよく、同様な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】岩盤地下に設けられた液体貯留設備の概略構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る液体貯留設備のポンプモータ部分の概略構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 液体貯留槽
2 岩盤層
3 底部
6 プラグ(閉鎖体)
7 封水部
8 スカート
10 底水
11 仕様液
20 保護管
21 モータ部
22 ポンプ部
23 ポンプモータ
24 揚液管
25 ヘッドプレート
26 吐出口
27 短管
30 チェッキバルブ機構
31 シール機構
40 薬液注入管
41 薬液
42 ステー
43 仕切り管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤地下に設けられた液体貯留槽、該液体貯留槽内に配置されたポンプモータを備え、該液体貯留槽内に貯留された液体を前記ポンプモータで送液すると共に、該送液により少なくともポンプモータのモータ部を冷却するように構成した液体貯留設備であって、
前記液体貯留槽壁面から流出するCa分が析出するのを防止する薬液を注入する薬液注入管を備え、
前記薬液注入管の薬液吐出口を前記ポンプモータの最下端部又は該最下端部より下方に配置したことを特徴とする液体貯留設備。
【請求項2】
請求項1に記載の液体貯留設備において、
前記ポンプモータ外周を囲んで保護管が配置されており、
前記送液は前記ポンプモータのモータ部外周面と前記保護管の内周面の間を通って流れるように構成され、
前記薬液注入管の薬液吐出口は前記保護管内の前記ポンプモータの最下端部又は該最下端部より下方に配置したことを特徴とする液体貯留設備。
【請求項3】
請求項2に記載の液体貯留設備において、
前記ポンプモータのモータ部外周面と前記保護管内周面の間に仕切り管を配置し、前記薬液注入管から吐出された薬液の混入した前記送液は前記モータ部外周面と前記保護管内周面の間を通って流れるように構成したことを特徴とする液体貯留設備。
【請求項4】
請求項3に記載の液体貯留設備において、
前記仕切り管の下端部は前記薬液注入管の薬液吐出口を覆うように構成されていることを特徴とする液体貯留設備。
【請求項5】
請求項3又は4に記載された液体貯留設備において、
前記仕切り管の材質は前記ポンプモータのモータ部外周面を構成する材料の材質より腐食しやすい材質であることを特徴とする液体貯留設備。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか1項に記載された液体貯留設備において、
前記ポンプモータのモータ部外周面は滑らかに形成されていることを特徴とする液体貯留設備。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体貯留設備において、
前記液体貯留槽内に貯留される液体は、石油又はLPGであることを特徴とする液体貯留設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−248854(P2008−248854A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93825(P2007−93825)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】