説明

液体貯蔵タンク

【課題】運送手段の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超過した容積を実現し得る液体貯蔵タンクを提供すること。
【解決手段】筒状部材111〜114のそれぞれは、順次に積み重ねられ、接合部151〜153において、機械的結合具によって互いに接合されている。筒状部材111〜114のそれぞれは、分割片131〜134に分割され、分割片131〜134のそれぞれが、機械的結合具によって互いに接合されている。底板部3は、底板分割片311〜315に分割されており、底板分割片311〜315のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、機械的結合具によって筒部1の底部に接合されている。蓋部5は、蓋分割片511〜515に分割されており、蓋分割片511〜515のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、筒部1の上部に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体貯蔵タンクに関する。本発明に係る液体貯蔵タンクは、例えば、放射能汚染水を貯蔵するタンクとして有用なものである。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日に発生した東日本大震災及び巨大津波によって、燃料棒のメルトダウンという極めて深刻なダメージを受けた原子力発電所では、原子炉冷却に用いられた大量の放射能汚染水をどのようにして貯蔵するかが、喫緊の課題になっている。
【0003】
毎日、大量に生じている放射能汚染水の貯蔵という観点からは、できるだけ大容量のタンクが必要になる。しかし、タンク製造工場から原子力発電所のある場所まで、運送車両等の運送手段によってタンクを運搬しなければならない。
【0004】
このため、大容量の放射能汚染水貯蔵タンクが求められているにも関わらず、その容量が、運送手段の運送限界によって定まってしまうという問題点を抱えている。
【0005】
放射能汚染水貯蔵タンクは、我が国の原子力発電の歴史において、初めて必要になったものであり、上述したような問題点を解決し得る先行技術文献は存在しない。例えば、特許文献1に、放射性廃棄物貯蔵タンクが開示されているが、このタンクは、原子力発電所の放射線核種に汚染された放射性廃棄物を貯蔵することを目的としたものであって、原子炉冷却に用いられた大量の放射能汚染水を貯蔵することまでは考慮に入れていないし、大きさ(容積)について、運送車両等による運送限界の問題を論じていない。
一方、特許文献2〜5には、運送可能な組立式のタンクが開示されているが、いずれも筒部の分割片を、直接、ボルトとナット等によって結合するものであり、分割片の機械的強度の向上及び軽量化等の設計自由度の改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−66133号公報
【特許文献2】特開2009−12849号公報
【特許文献3】特開2010−111395号公報
【特許文献4】特開2001−278385号公報
【特許文献5】特開平8−337293公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、運送手段の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超過した容積を実現し得る液体貯蔵タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る液体貯蔵タンクは、筒部と、底板部と、蓋部とを含む。前記筒部は、複数の筒状部材に分割されており、前記筒状部材のそれぞれは、順次に積み重ねられ、機械的結合具によって互いに接合されている。前記筒状部材のそれぞれは、複数の分割片に分割されている。
前記底板部は、複数の底板分割片に分割されている。前記底板分割片のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、機械的結合具によって前記筒部の底部に接合されている。
【0009】
前記蓋部は、複数の蓋分割片に分割されており、前記蓋分割片のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、前記筒部の上部に取り付けられている。
さらに、前記分割片のそれぞれは、補強板と、本体とを含み、前記補強板は、ベース部と、接合リブと、多数の補強リブとを含む。前記接合リブは、前記ベース部の一端部の全体に起立して設けられており、前記補強リブのそれぞれは、相互に間隔をおいて前記ベース部の一面から起立し、前記接合リブの起立した面を直角方向から支持している。前記補強板は、前記ベース部の一面が外側を向き、前記接合リブが前記分割片それぞれの周方向の両端部となるように、前記本体の外面に接合されている。
【0010】
隣接する前記分割片は、それぞれの前記補強板の前記接合リブを、互いに対向させて、前記補強リブの相互間隔内で、機械的結合具によって接合されている。
上述したように、本発明に係る液体貯蔵タンクは、筒部を含んでおり、この筒部は、複数の筒状部材に分割され、更に、筒状部材のそれぞれが、複数の分割片に分割される。この結果、筒部に関して、筒状部材への分割、更に、筒状部材の分割片への分割という、2段階分割がなされる。このため、タンク容積を決める主要な役割を担う筒部を、運送車両等の運送限界よりも小さな形状、大きさを持つ分割片まで細分化されることになる。
【0011】
筒部を構成する筒状部材の個数及びその内周半径を増大させ、最終的に得られるタンク容積を増大させた場合でも、分割片の大きさを選定することにより、運送可能な大きさに保つことができる。
【0012】
よって、運送車両の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超える大容積の液体貯蔵タンクを組み立てることが可能になる。
複数に分割された筒状部材のそれぞれは、順次に積み重ねられ、機械的結合具によって互いに接合されており、隣接する筒状部材の分割片も、機械的結合具によって互いに接合されている。したがって、製造現場から、取り付け設置現場に運送された分割片を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって接合することにより、筒状部材として組み立て、更に、こうして得られた複数の筒状部材を順次に積み重ね、それぞれを、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって接合することにより、筒部を構成することができる。
【0013】
さらに、分割片のそれぞれは、補強板と、本体とを含み、補強板は、本体の外面に接合されている。この場合、補強板と本体を別工程で製造することができるので、設計自由度の高い分割片を実現することができる。
【0014】
補強板は、ベース部と、接合リブと、多数の補強リブとを含む。接合リブは、ベース部の一端部の全体に起立して設けられており、補強リブのそれぞれは、相互に間隔をおいてベース部の一面から起立し、接合リブの起立した面を直角方向から支持している。補強板は、ベース部の一面が外側を向き、接合リブが分割片それぞれの周方向の両端部となっており、隣接する分割片は、それぞれの補強板の前記接合リブを、周方向に互いに対向させて、補強リブの相互間隔内で、機械的結合具によって接合されている。このような構造によると、分割片の接合部分の機械的結合力が増大し、筒状部材の内圧に対する強度を高めることができる。
【0015】
筒部及びその構成部材たる筒状部材は、代表的には、円筒状となる。円筒状であると、その内部に貯蔵された液体から受ける内圧が、全周にわたって均一化される。また、円筒状部材を分割する場合、どのよう位置(分割角度)で分割しても、分割片を組み合わせることにより、筒状部材を構成し得る。
【0016】
次に、底板部は、筒部の底部に接合されている。これにより、有底の液体貯蔵タンクが得られる。底板部は、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって前記筒部の底部に接合されるから、その接合作業を、一般的な工具を用いて、容易に実行することができる。
【0017】
底板部は、複数の底板分割片に分割されているから、筒状部材の大径化に対応して、底板部が大径化された場合、大径化された底板部を、運送に適した形状、大きさを持つ底板分割片に分割し得る。
【0018】
底板分割片のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合されているから、製造現場から、取り付け設置現場に運送された底板分割片を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって互いに接合することにより、底板として組み立て、更に、こうして得られた底板を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって筒部に接合することができる。したがって、底板部に関しても、運送手段の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超える大容積の液体貯蔵タンクを組み立てることが可能になる。
【0019】
前記蓋部は、複数の蓋分割片に分割されており、前記蓋分割片のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、前記筒部の上部に取り付けられている。これにより、有底蓋つきの液体貯蔵タンクが得られる。蓋部は、複数の蓋分割片に分割されているから、筒状部材の大径化に対応して、蓋部が大径化された場合、大径化された蓋部を、運送に適した形状、大きさを持つ蓋分割片に分割し得る。したがって、蓋部に関しても、運送手段の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超える大容積の液体貯蔵タンクを組み立てることが可能になる。
【0020】
蓋分割片のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合されているから、製造現場から、取り付け設置現場に運送された蓋分割片を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって互いに接合することにより、蓋として、容易に組み立てることができる。
【0021】
機械的接合具のそれぞれは、機械的強度が、筒部の上部から筒部の底部に近づくほど大きいことが好ましい。タンク内部では、底部ほど水圧が高くなり、漏水の可能性が大きくなるが、このような機械的結合具によって各分割片が接合さると、内部の水圧上昇に応じた、高い耐圧性のタンクを実現し、漏水防止効果を高めることができる。
本発明によれば、1200m以上の大容積を有する液体貯蔵タンクであっても、耐圧性を確保しながら、容易に実現することができる。このような大容量の液体貯蔵タンクは、特に、放射能汚染水を貯蔵する用途で、緊急に要求されているものである。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、運搬可能性を充たす中で、最大の容積を確保し得る液体貯蔵タンクを提供することができる。
【0023】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る液体貯蔵タンクの正面図である。
【図2】図1の液体貯蔵タンクにおいて、筒部の接合構造を拡大して示す図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図1に示した液体貯蔵タンクを構成する分割片の平面図である。
【図5】図4に示した分割片の正面図である。
【図6】図1の液体貯蔵タンクにおいて、筒状部材の積層相互関係を示す図である。
【図7】図1に示した液体貯蔵タンクを構成する底板部の平面図である。
【図8】図7の底板部において、その底板分割片の接合構造を拡大して示す図である。
【図9】図1に示した液体貯蔵タンクを構成する蓋部の平面図である。
【図10】図1に示した液体貯蔵タンクを構成する歩廊部の一部欠損平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、本発明に係る液体貯蔵タンクは、筒部1と、底板部3と、蓋部5とを含む。図1には、更に、人間が歩くことのできる歩廊部7及び歩廊部7に登るための梯子9が図示されている。これらは、全て、鉄などの金属材料によって構成されている。
【0026】
筒部1は、同一直径(内径)D1を持つ第1筒状部材111〜第4筒状部材114の4個に分割されている。第1筒状部材111〜第4筒状部材114のそれぞれは、順次に積み重ねられ、接合部151〜153において互いに接合(結合)されている。筒部1は、円筒状である。放射能汚染水を貯蔵する場合に好ましい寸法は、内径D1が、例えば12m以上、筒部1の高さH1が、例えば、10m以上である。この内径D1及び高さH1によれば、1200m以上の大容量の液体貯蔵タンクを実現することができる。このような大容量の放射能汚染水貯蔵タンクは知られていない。もっとも、第1筒状部材111〜第4筒状部材114は、4個に限定されるものではなく、要求されるタンク容積に対応して、より多くの筒状部材を積み重ねることができるし、内径D1も、より大径の値に選定することができる。
【0027】
上述したような大容量の液体貯蔵タンクは、完成した状態では、現在知られている最大積載量の運送車両によっても、これを製造工場から設置現場へ運送することができない。この問題点を解決することが、本発明の目的である。したがって、以下の説明は、この問題を解決するための具体的構造に向けられている。
【0028】
図1の実施の形態では、底部を底板部3によって閉じた第1筒状部材111の上に、第2筒状部材112を積み重ね、第2筒状部材112の上に第3筒状部材を積み重ね、第3筒状部材113の上に第4筒状部材114を積み重ね、その積み重ねの合わせ面において第1筒状部材111〜第4筒状部材114を、接合部151〜153において接合してある。
【0029】
接合部151〜153は、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって実現される。より具体的には、図2及び図3に図示するように、第1筒状部材111〜第4筒状部材114の軸方向の上下端に、第1鍔部191及び第2鍔部192を突出させてあり、第1鍔部191及び第2鍔部192を突き合わせたうえで、上述した機械的結合具21によって、両者を締め付け固定してある。第1鍔部191及び第2鍔部192の対向面間には、漏れ止め用のパッキンを介在させることができる。
【0030】
また、第1筒状部材111〜第4筒状部材114のそれぞれは、第1分割片131〜第4分割片134の4つに分割されている。図4及び図5に図示するように、第1筒状部材111〜第4筒状部材114を、分割角度θ=90度で分割して、第1分割片131〜第4分割片134とする。そして、図2及び図3に図示したように、これらの第1分割片131〜第4分割片134を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具23を用いて接合してある。第1分割片131〜第4分割片134の大きさは、運送車両等の運送手段による運送限界形状を下回る寸法になる。
【0031】
機械的結合具21及び機械的接合具23は、機械的強度が、筒部の上部から底部に近づくほど大きくすることが好ましい。すなわち、機械的結合具21及び機械的接合具23の機械的強度は、第4筒状部114の接合部171〜174、接合部153、第3筒状部113の接合部171〜174、接合部152、第2筒状部112の接合部171〜174、接合部151、第1筒状部111の接合部171〜174の順に大きい。
【0032】
例えば、機械的結合具21及び機械的接合具23として用いられるボルトの直径を第1筒状部111の接合部171〜174及び接合部151で18mm程度、第2筒状部112の接合部171〜174及び接合部152で15mm程度、第3筒状部113の接合部171〜174及び接合部153で12mm程度、第4筒状部114の接合部171〜174で12mm程度又はそれ以下のサイズを採用することができる。また、接合部ごとに、鉄鋼やステンレス等の材質を使い分けるなど材料選択によって機械的強度を調整することもできる。
【0033】
図2及び図3は、第1筒状部材111〜第4筒状部材114の接合構造、及び、第1分割片131〜第4分割片134の接合構造のうち、第2筒状部材112と第3筒状部材113の接合構造、及び、第2筒状部材112における第1分割片131及び第4分割片134の接合構造を、代表的に示している。
【0034】
図を参照すると、第2筒状部材112の上端側に設けられた第2鍔部192と、第3筒状部材113の下端側に設けられた第1鍔部191とを、接合部152において、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具21によって締め付け固定してある。機械的結合具21の配置ピッチは、限定するものではないが、140〜150mm前後であることが好ましい。
【0035】
第2筒状部材112における第1分割片131及び第4分割片134の接合構造については、第4分割片134の本体181及び第1分割片131の本体181それぞれの接合端部において、その外面に、補強板182,183を接合してある。
この補強板182、183は、第1分割片131、第4分割片134のそれぞれの周方向の両端部であり、溶接によって接合してある。溶接の際には、この接合部分にショットスピーニング等の残留応力を軽減させる加工を施すことにより、溶接による強度低下を軽減することができる。また、補強板は、分割片本体とは別工程で製造できるので、補強板部分の強度を調整することによって、分割片本体が軽量化された形態など設計自由度の高い分割片を実現できる。
【0036】
補強板182、183のベース部194,196の表面には、多数の補強リブ197,198と、接合リブ193,195が設けられており、補強リブ197,198のない領域において、第1分割片131の接合リブ193と第4分割片134の接合リブ195とを、機械的結合具23によって締め付け、両者を接合する。
【0037】
この接合リブ193、195は、ベース部194、196の一端部の全体に起立して設けられており、第1分割片131と第4分割片134の間において、互いに対向するとともに、第1分割片131と第4分割片134それぞれの両端部となっている。補強リブ197、198のそれぞれは、相互に間隔をおいてベース部194、196の一面から起立し、接合リブ193、195の起立した面を直角方向から支持している。また、補強リブ197、198が起立しているベース部194、196の一面は、外側を向いて配置される。接合リブ193、195及び補強リブ197、198は、溶接等の手法によって、ベース部194,196に接合することができる。
【0038】
第1筒状部材111と第2筒状部材112との間、第3筒状部材113と第4筒状部材114との間の機械的接合構造も、上に述べた構造となっている。また、第1分割片131と第2分割片132、第2分割片132と第3分割片133、第3分割片133と第4分割片134との間の機械的接合構造も、第1分割片131と第4分割片134との接合構造と同じである。
【0039】
第1筒状部材111〜第4筒状部材114の積み上げ接合にあたっては、図6に示すように、第1段となる第1筒状部材111に対して、第2筒状部材112を、平面角で45度回転させた状態で積み重ねる。第2筒状部材112に対する第3筒状部材113の関係、及び、第3筒状部材113に対する第4筒状部材114の関係も同様である。これにより、筒部1を平面視したとき、積み上げ方向に向かって、接合部171〜174を45度の角度で順次に配置したバランスの良い構造が実現される。
【0040】
次に、底板部3は、図7及び図8に図示されているように、第1底板分割片311〜第5底板分割片315の5つに分割されている。第1底板分割片311〜第5底板分割片315の分割数は、第1底板分割片311〜第5底板分割片315のうちの最大のものが、運送車両等の運送限界よりも小さくなるように、選定される。
【0041】
第1底板分割片311〜第5底板分割片315のそれぞれは、機械的結合具25によって互いに接合される。そして、図1に示したように、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって筒部1の底部に接合部154が形成される。
機械的結合具25としてのボルトは、第1筒状部材111における接合部171〜174のボルトの直径以上であることが好ましい。例えば、接合部171〜174におけるボルトの直径が18mm程度の場合、それ以上の直径となる。
【0042】
図8に図示するように、第1底板分割片311〜第5底板分割片315のそれぞれには、分割方向と直交する方向に、多数の補強リブ333が設けられている。図8には、第1底板分割片311〜第5底板分割片315のうち、第2底板分割片312と第3底板分割片313について、その接合構造の詳細が図示されている。図8を参照すると、第2底板分割片312の接合リブ331と、第3底板分割片313の接合リブ332とを、機械的結合具25によって接合してある。補強リブ333のピッチ間隔、及び、そのピッチ間隔内に入る機械的結合具25の個数は、任意である。この実施例では、一例として、補強リブ33のピッチ間隔内に5個の機械的結合具25を配置した構造となっている。
【0043】
蓋部5は、図9に図示するように、第1蓋分割片511〜第5蓋分割片515に分割されており、第1蓋分割片511〜第5蓋分割片515のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、筒部1の上部に取り付けられている。蓋部5の具体的な構造は、底板部3と類似している。第1蓋分割片511〜第5蓋分割片515の分割数は、第1蓋分割片511〜第5蓋分割片515のうちの最大のものが、運送車両等の運送限界形状よりも小さくなるように選定される。
【0044】
第1蓋分割片511〜第5蓋分割片515のそれぞれには、分割方向と直交する方向に、多数の補強リブ533が設けられている。補強リブ533のピッチ間隔及び、そのピッチ間隔内に入る機械的結合具の個数は、任意である。
更に、図10を参照すると、歩廊部7は、中心部に抜け孔73を有するドーナツ状であって、抜け孔73の周りに、金網等によって構成された踏み面71を設けた構造となっている。踏み面71は、その下側から、支持腕72によって支えられている。この歩廊部7は、図1に図示するように、筒部1の上部に配置され、筒部1の外周面に当接させた支持腕71によって、筒部1の上部に安定的に配置され、支持される。
【0045】
上述したように、本発明に係る液体貯蔵タンクは、筒部1を含んでおり、この筒部1は、複数の筒状部材111〜114に分割され、更に、筒状部材111〜114のそれぞれが、複数の分割片131〜134に分割される。この結果、筒部1に関しては、筒状部材111〜114へ分割し、更に、筒状部材111〜114を複数の分割片131〜134に分割するという、2段階分割がなされる。このため、タンク容積を決める主要な役割を担う筒部1が、運送車両等によって運送し得る大きさを持つ分割片まで細分化されることになる。
【0046】
筒部1を構成する分割片131〜134の個数及びその内径D1を増大させ、最終的に得られるタンク容積を増大させた場合でも、2段階分割における分割数を設定し、得られる分割片131〜134の大きさを選定することにより、運送可能な大きさに保つことができる。したがって、筒部1に関しては、運送手段の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超える大容積の液体貯蔵タンクの組み立てることが可能になる。
【0047】
複数に分割された分割片131〜134のそれぞれは、接合リブ193、195を介して、機械的結合具23によって互いに接合されており、筒状部材111〜114のそれぞれも、機械的結合具21によって互いに接合されている。したがって、分割片131〜134の形態で、製造現場から取り付け設置現場に運送し、設置現場において、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具23によって接合することにより、筒状部材111〜114として組み立て、更に、こうして得られた複数の筒状部材111〜114を順次に積み重ね、それぞれを、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具21によって接合することにより、筒部1を構成することができる。分割片131〜134は、補強板181、182を有することにより、補強板182、183の機械的強度を調整し、本体181の軽量化が可能である。従って、分割片131〜134の軽量化が実現され、運搬コストの低減等が可能となる。
【0048】
実施例において、筒部1及びその構成部材たる筒状部材111〜114は、円筒状となっている。円筒状であると、その内部に貯蔵された液体から受ける内圧が、全周にわたって均一化される。また、円筒状部材111〜114を分割する場合、どのよう位置(分割角度)で分割しても、分割片131〜134を組み合わせることにより、筒状部材111〜114を構成し得る。
【0049】
次に、底板部3は、筒部1の底部に接合されている。これにより、有底の液体貯蔵タンクが得られる。底板部3は、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって筒部1の底部に接合されるから、その接合作業を、一般的な工具を用いて、容易に実行することができる。
【0050】
しかも、底板部3は、複数の底板分割片311〜315に分割されているから、筒状部材111〜114の大径化に対応して、底板部3が大径化された場合、大径化された底板部3を、運送に適した形状、大きさを持つ底板分割片311〜315に分割し得る。したがって、底板部3に関しては、運送手段の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超える大容積の液体貯蔵タンクの組み立てに資することが可能になる。
【0051】
底板分割片311〜315のそれぞれは、機械的結合具25によって互いに接合されているから、製造現場から、取り付け設置現場に運送された底板分割片311〜315を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具25によって互いに接合することにより、底板として組み立て、更に、こうして得られた底板25を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって筒部1に接合することができる。
【0052】
蓋部5は、複数の蓋分割片511〜515に分割されており、蓋分割片511〜515のそれぞれは、底板部3と同様に、機械的結合具によって互いに接合され、筒部1の上部に取り付けられている。これにより、有底蓋つきの液体貯蔵タンクが得られる。このように、蓋部5は、複数の蓋分割片511〜515に分割されているから、筒状部材111〜114の大径化に対応して、蓋部5が大径化された場合、大径化された蓋部5を、運送に適した形状、大きさを持つ蓋分割片511〜515に分割し得る。したがって、蓋部3に関しても、運送手段の運送限界内で運送し、設置現場において、運送限界を超える大容積の液体貯蔵タンクの組み立てに資することが可能になる。
【0053】
蓋分割片511〜515のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合されているから、製造現場から、取り付け設置現場に運送された蓋分割片を、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具によって互いに接合することにより、蓋として、容易に組み立てることができる。歩廊部9についても、同様に、運送車両等の運送限界よりも小さな形状にすることができる。
【0054】
したがって、本発明によれば、1200m以上の大容積を有する液体貯蔵タンクであっても、設置現場において、容易に組み立てることができる。このような大容量の液体貯蔵タンクは、特に、放射能汚染水を貯蔵する用途で、現在、緊急に要求されているものである。
【0055】
分割片131〜134、それを結合した筒状部材111〜114、底板分割片311〜315、それを組み合わせた底板部3、蓋部7及び歩廊部9は、何れも鉄等の金属で構成された重量物である。したがって、組み立て工程では、クレーン車等を用いる必要はあるが、結合に当たっては、ナット、ネジ又はボルト等の機械的結合具21〜25を操作する容易な作業工程となるから、組み立て上の困難性はない。
【0056】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0057】
1 筒部
111〜114 筒状部材
131〜134 分割片
181 本体
182、183 補強板
193、195 接合リブ
194、196 ベース部
197、198 補強リブ
3 底板部
311〜315 底板分割片
5 蓋部
511〜515 蓋分割片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部と、底板部と、蓋部とを含む液体貯蔵タンクであって、
前記筒部は、複数の筒状部材に分割されており、
前記筒状部材のそれぞれは、順次に積み重ねられ、機械的結合具によって互いに接合されており、
前記筒状部材のそれぞれは、複数の分割片に分割されており、
前記底板部は、複数の底板分割片に分割されており、
前記底板分割片のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、機械的結合具によって前記筒部の底部に接合されており、
前記蓋部は、複数の蓋分割片に分割されており、
前記蓋分割片のそれぞれは、機械的結合具によって互いに接合され、前記筒部の上部に取り付けられており、
さらに、前記分割片のそれぞれは、補強板と、本体とを含んでおり、
前記補強板は、ベース部と、接合リブと、多数の補強リブとを含み、
前記接合リブは、前記ベース部の一端部の全体に起立して設けられており、
前記補強リブのそれぞれは、相互に間隔をおいて前記ベース部の一面から起立し、前記接合リブの起立した面を直角方向から支持しており、
前記補強板は、前記ベース部の一面が外側を向き、前記接合リブが前記分割片それぞれの周方向の両端部となるように、前記分割片本体の外面に接合されており、
隣接する前記分割片は、それぞれの前記補強板の前記接合リブを、互いに対向させて、前記補強リブの相互間隔内で、機械的結合具によって接合されている、
液体貯蔵タンク。
【請求項2】
請求項1に記載された液体貯蔵タンクであって、
前記機械的接合具のそれぞれは、機械的強度が、前記筒部の上部から前記筒部の底部に近づくほど大きい、
液体貯蔵タンク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された液体貯蔵タンクであって、
前記筒部は、円筒状であり、
前記底板部及び前記蓋部は、外形が円形状である、
液体貯蔵タンク。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載された液体貯蔵タンクであって、1200m以上の容積を有する、液体貯蔵タンク。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された液体貯蔵タンクであって、放射能汚染水を貯蔵するものである、液体貯蔵タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−35599(P2013−35599A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37495(P2012−37495)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(596074029)東京機材工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】