説明

液体貯蔵用タンク

【課題】 地上に設置される液体貯蔵用タンクであって、地震による揺れが生じても内部の液面のスロッシングの発生を抑制し、タンクから液が溢れ出る危険性のない円形タンクを提供する。
【解決手段】 液体貯蔵用の円形タンク1において、タンク内に同心的に少なくとも一個の円筒状隔壁2を設け、この円筒状隔壁2の下端部に、円筒状隔壁2の内外で液体が流通するように開口部3を存在させる。これにより、地震などの揺れにより生じる、タンクの底から液面に向かってタンクの直径方向に大きく渦巻き状に広がる波を、タンクの内壁と円筒状隔壁の外壁の間、又は円筒状隔壁間という小さな距離に分散させることにより、液面の変動は極端に小さくなり、スロッシングにより、タンクから液が溢れる危険性がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油など液体貯蔵用のタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液体貯蔵用タンクは巨大化しているが、地震による揺れで発生する液面のスロッシング減少により、タンクから液が溢れ出す危険性がある。石油タンクにおいては、大火災を生ずる恐れがあるため、タンク内の液の揺れを制御することが求められる。
【0003】
船舶に搭載される角型タンク(カーゴタンクなど)においては、スロッシング現象の低減策として、種々の試みがなされている(特許文献1,2参照)。しかし、地上の円形タンクの耐震性については、そのタンク自体の耐震性を高めるための工夫はされているが(特許文献3,4参照)、スロッシングに対する対応としては、特許文献5に示されるようにタンク内の液体の波の衝撃力を外に逃がすような手段が提示されているに過ぎない。
【特許文献1】特開平9−99996号公報
【特許文献2】特開平9−249292号公報
【特許文献3】特開平9−125738号公報
【特許文献4】特開平11−256865号公報
【特許文献5】特開平7−242295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、地上に設置される液体貯蔵用タンクであって、地震による揺れが生じても内部の液面のスロッシングの発生を抑制し、タンクから液が溢れ出る危険性のない円形タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、液体貯蔵用の円形タンクにおいて、タンク内に同心的に少なくとも一個の円筒状隔壁を設け、この円筒状隔壁の下端部に、円筒状隔壁の内外で液体が流通するように開口部を存在させることによって、上記課題を解決した。
【0006】
すなわち、本発明では、円形タンク内をドーナツ状に円筒状隔壁で区切ることにより、地震などの揺れにより生じる、タンクの底から液面に向かってタンクの直径方向に大きく渦巻き状に広がる波を、タンクの内壁と円筒状隔壁の外壁の間、又は円筒状隔壁間という小さな距離に分散させることにより、液面の変動は極端に小さくなり、スロッシングにより、タンクから液が溢れる危険性がなくなった。
【0007】
また、角のない円形タンクであり、その中に設ける隔壁も円筒型をなすものであるため、地震などの揺れで生ずる波は、一箇所に強く圧力を掛けることなく、圧力を均一に分散するので、その点においても、液が溢れたり、またタンクが破壊される危険性は少ない。
【0008】
円筒状隔壁は、円形タンクの大きさによって、2〜5個設けられても良い。この場合、隔壁間が等間隔となるようにしてもよいが、長周期及び短周期いずれの振動にも効果的に効果を発揮するためには、外側から間隔が1/2ずつ小さくなるようにするのが好ましい。例えば、直径80mのタンクでは、直径40m、20m、10m、5m、2.5mというように円筒状隔壁を設けるのがよい。この場合、タンク内壁と第一の隔壁の間隔が20m、第一の隔壁と第二の隔壁の間隔が10m、第二の隔壁と第三の隔壁の間隔が5m、第三の隔壁と第四の隔壁の間隔が2.5m、第四の隔壁と第五の隔壁の間隔が1.25mとなる。なお、中心にはタンクの支柱として機能する直径1m前後の隔壁棒を設けるのがよい。
【0009】
。25本発明では、かかる円筒状隔壁の下端部に、開口部を少なくとも一個(好ましくは等間隔に2個以上)設けることにより、タンク内を液は自由に移動できるようになっている。従って、タンク内の液の出し入れは、一箇所で実施することができ、従来法がそのまま適用可能である。
【0010】
タンク内の液面には、液面を覆う浮き蓋を設けるのが好ましく、また、円形タンクの中心に隔壁棒を設け、これがタンクの支柱としても役立つようにするのがよい。この隔壁棒は、支柱となるため、耐圧性が必要であるが、中空で、内部に一部液体を含み、加圧密閉されたもの(例えば2〜3気圧)とするのが扱いやすい。
タンクの外装及び設置手段などは従来公知のものでよい。
【0011】
更に、本発明では、円筒状隔壁の下端は、タンクの底面に溶接またはボルトで固定し、上端は、タンクの壁面と中心の支柱との間で全て定位置に固定でできるように、複数のワイヤーで固定されるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、円形タンクに同心的な円筒状の隔壁を設け、しかも隔壁の下端部の開口を通して、タンク全体に液が移動できるようにしているため、タンクへの液の流入流出は容易であり、しかも、地震などの揺れにより生じる、タンクの液面の波は、タンクの内壁と円筒状隔壁の外壁の間、又は円筒状隔壁間という小さな距離に分散させることにより、液面の変動は極端に小さくなり、スロッシングにより、タンクから液が溢れる危険性がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のタンクの一例を図1に示す。
このタンク1内には、同心的に円筒状隔壁2が設けられており、中心には隔壁棒5が設けられている。また、円筒状隔壁2の下端部には、タンク内で液が自由に移動できるように、開口部3が等間隔で3個設けられており、タンク1内部の液面には浮き蓋が設けられている。すなわち、タンク1の内壁と隔壁2の外壁の間と、隔壁2と隔壁棒5の間にそれぞれドーナツ状の浮き蓋4,4aが設けられている。
【0014】
本来、タンク内の液は、地震などの震動で、底の部分は揺れず、滑るように上にいく程、激しく揺れ、溢れるようになるが、本発明のタンクでは、隔壁2の存在によって、この揺れのエネルギーが分散され、液面は激しく波立つことなく、さざ波が立つ程度となり、スロッシングにタンクからの液の溢れが防止できる。
【0015】
なお、図1の例は、直径40mのタンク1に、直径13mの円筒状隔壁2と直径1mの隔壁棒5を設けたものであり、図2の例は、直径80mのタンク1に、直径40mの円筒状隔壁2a、直径20mの円筒状隔壁2b、直径10mの円筒状隔壁2c、直径5mの円筒状隔壁2d、直径2.5mの円筒状隔壁2eを設け、中心に直径1mの隔壁棒5を設けたものである。隔壁棒5には、約1/4の体積で油を入れ、二気圧の加圧下で密閉することにより、支柱として機能するようにしている。隔壁2a〜2eの下端には、それぞれ等間隔に4個以上の開口部3が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一例におけるタンクの壁面と円筒状隔壁の一部を破断した斜視図である。
【図2】図2は、本発明の他の一例のタンクの断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 タンク
2 円筒状隔壁
3 開口部
4 浮き蓋
5 隔壁棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯蔵用の円形タンクであって、前記タンク内に同心的に少なくとも一個の円筒状隔壁が設けられており、前記円筒状隔壁の下端部に、前記円筒状隔壁の内外で液体が流通するように開口部が存在することを特徴とする液体貯蔵用タンク。
【請求項2】
前記タンク内の液体上に、液体を覆う浮き蓋が設けられている請求項1の液体貯蔵用タンク。
【請求項3】
円形タンクの中心に隔壁棒が設けられている請求項1又は2の液体貯蔵用タンク。
【請求項4】
前記隔壁棒が中空で、内部に一部液体を含み、加圧密閉されたものである請求項3の液体貯蔵用タンク。

【図1】
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【図2】
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