説明

液化ガスタンクの断熱支持構造体

【課題】 自動車のガソリンタンクと同等以下の大きさの液化ガスタンクの実現を可能にし、断熱性能が優れた液化ガスタンクの断熱支持構造体を提供する。
【解決手段】 液化ガスタンク1の断熱支持構造体10を、内槽3の長手方向の一端側から他端側に気密に貫通する貫通管3aと、上記貫通管3a内の長手方向中央部に対峙して固定される一対の内部ボス3b・3bと、前記外槽2の内壁に固設され上記内部ボス3b・3bに対向する一対の外部ボス2a・2aと、上記外部ボス2a・2aと上記内部ボス3b・3bとに亘って架設された一対の低熱伝導支持部材11・11とから構成し、各低熱伝導支持部材11を、上記内部ボス3bと上記外部ボス2aとに亘って架設された断熱支持筒11aと、上記断熱支持筒11a内に挿通されて当該断熱支持筒11aの撓みを補強するとともに、当該断熱支持筒11a内に侵入する輻射熱を遮断する輻射熱遮断ユニット13とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスタンクの断熱支持構造体の改善に係り、より詳しくは、燃料電池自動車に装備され、燃料電池の燃料となる液化水素を収納する液化ガスタンク内への大気からの入熱を効果的に抑制することを可能ならしめる液化ガスタンクの断熱支持構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料とする燃料電池自動車の場合には、走行中は水素が消費されるため、液化ガスタンク内の圧力が上昇することがない。ところが、長時間走行しないと、水素が消費されないため、液化ガスタンク内への入熱により液体水素が蒸発し、この蒸発したガス(以下単に「BOG」と略記する)により液化ガスタンク内の圧力が上昇する。そして、液化ガスタンク内の圧力が予め設定された圧力を超えると、安全弁からのBOGの放出により液化ガスタンク内の圧力が低下する。BOGの無駄な放出をできるだけ少なくするために、液化ガスタンク内への入熱量をできる限り少なくする必要がある。
【0003】
液化酸素、液化窒素、液化水素、液化ヘリウム等の極低温の液化ガスの蒸発潜熱は小さいため、これらの液化ガスを収納する液化ガスタンクは、何れも共通の手段により断熱されるように構成されている。一般に液化ガスタンクへの熱侵入は、いわゆる対流、輻射、伝導によっている。従って液化ガスタンクでは、気体の対流による熱伝達量をゼロにするために、内槽と外槽とからなる二重構成にし、これら内槽と外槽との間を真空にしている。また、輻射による熱伝達量を少なくするために、内槽の外周部を輻射率の小さい材料からなる薄シートと熱絶縁性の高い材料からなる薄シートを交互に積層してなる積層断熱材により囲繞するようにしている。さらに、外層の内部に内槽を支持するため断熱支持構造体を用いている。断熱支持構造体を介しての固体熱伝導量を小さくするために、断熱支持構造体は、例えば機械的強度が優れ、熱伝導率が小さなガラス繊維強化プラスチックが用いられている。
【0004】
液化ガスを収納する液化ガスタンクの内槽を支持する断熱支持構造体としては、例えば下記のような従来例1乃至3の構成によるものが公知である。以下、これら従来例に係る従来技術の断熱支持構造体の概要を説明する。
【0005】
従来例1は、「超伝導磁石を収納する内槽を、矢ばね断熱支持構造により外槽に支持するようにしたものである。より詳しくは、高剛性の中間支持体の外側に一端部が結合され、その他端側が外槽の内周面部に設けられた支持受け座に結合されて、放射状に配置された複数枚の常温側支持板を備えている。また、前記中間支持体の内面側に一端部が結合され、その他端側が内槽の端面外周部に設けられた支持受け座に結合されて、放射状に配置された複数枚の低温側支持板を備えている。常温側支持板および低温側支持板は機械的強度が高く、かつ熱伝導率が小さい繊維強化プラスチックからなる帯状板から製造されている。また、常温側支持板、低温側支持板と中間支持体、常温側支持板と外槽の支持受け座、低温側支持板と内槽の支持受け座間の結合には、押さえ座を介したボルト・ナットが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
従来例2に係る「低温容器(液化ガスタンク)の断熱支持装置」は、超伝導磁石を収納する内槽の長手方向の中間部を貫通する状態で、内槽を外槽の内部中心位置に断熱固定支持する中間固定支持機構を備えている。また、内槽の長手方向の端部のそれぞれに突設された支持筒の先端を摺動可能に支持し、先端が外槽の内周面に設けられた取付座に連結された放射状の支持板の中心部に支持されてなる両端スライド支持機構とから構成されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
従来例3に係る「超伝導磁石用クライオスタット」の断熱支持装置は、超伝導磁石を収納する内槽を外槽の内部中心位置に懸架する懸架ロッドを備えている。また、超伝導磁石を収納する内槽の下部に、内槽を水平方向から支持する水平サポート機構を備えている。熱伝導による内槽への入熱量を少なくするために、前記懸架ロッドは長さが長く、かつ断面積は小さく設定され、また水平サポート機構は熱伝導距離を大きく採り、かつ内槽を水平に保持するコイルスプリング力をボールの曲面を介して押圧するように設定されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開昭58−21305号公報
【特許文献2】特開昭62−200708号公報
【特許文献3】特開平6−267740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料電池自動車の場合、燃料となる液化水素を収納する液化ガスタンクには、ガソリン自動車のガソリンタンクと同等以下の大きさが要求される。また、長時間走行しない場合におけるBOGによる内槽の内圧の上昇を少なくするために、上記のとおり内槽内への入熱量を少なくする必要がある。このような観点から上記従来例1乃至3を検討すると、これら従来例には以下のような難点がある。
【0009】
上記従来例1に係る矢ばね断熱支持構造は、上記のとおり、常温側支持板、低温側支持板と中間支持体、常温側支持板と外槽の支持受け座、低温側支持板と内槽の支持受け座間の結合には、押さえ座を介したボルト・ナットで結合されている。そのため、常温側支持板、低温側支持板の幅を10mm以上にする必要がある。従って、この従来例1に係る技術を、燃料電池自動車の液化水素を収納する液化ガスタンクに適用すると、内槽への入熱量が多くなり、断熱支持構造としては好ましくない。
【0010】
上記従来例2に係る技術を、燃料電池自動車の液化水素を収納する液化ガスタンクに適用すると、中間固定支持機構と両端スライド支持機構が液化ガスタンクの外槽を大きくし、液化ガスタンクが大容量となるため乗用車の乗車スペースが犠牲になり居住性が損なわれる。
【0011】
上記従来例3に係る技術を燃料電池自動車の液化水素を収納する液化ガスタンクに適用すると、懸架ロッドと水平サポート機構が液化ガスタンクの外槽を大きくし、液化ガスタンクが大容量となるため、記従来例2に係る技術の場合と同様に、乗用車の乗車スペースが犠牲になり居住性が損なわれる。
【0012】
従って、本発明の目的は、ガソリン自動車のガソリンタンクと同等以下の大きさの液化ガスタンクの実現を可能ならしめ、断熱性能が優れた液化ガスタンクの断熱支持構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記難点を解決するために、液化ガスタンクの断熱支持構造体を下記のように構成したものである。即ち、請求項1に記載の発明は、外槽2内の断熱空間に極低温の液化ガスが充填される内槽3を支持する液化ガスタンクの断熱支持構造体10であって、上記断熱支持構造体10は、前記内槽3の長手方向の一端側から他端側に気密に貫通する貫通管3aと、上記貫通管3a内の長手方向中央部に対峙して固定される一対の内部ボス3b・3bと、前記外槽2の内壁に固設され上記内部ボス3b・3bに対向する一対の外部ボス2a・2aと、上記外部ボス2a・2aと上記内部ボス3b・3bとに亘って架設された一対の低熱伝導支持部材11・11とから成り、上記各低熱伝導支持部材11は、上記内部ボス3bと上記外部ボス2aとに亘って架設された断熱支持筒11aと、上記断熱支持筒11a内に挿通されて当該断熱支持筒11aの撓みを補強するとともに、当該断熱支持筒11a内に侵入する輻射熱を遮断する輻射熱遮断ユニット13とから成ることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の液化ガスタンクの断熱支持構造体において、前記各輻射熱遮断ユニット13は、前記断熱支持筒11a内に挿入され低熱伝導部材からなるロッド13aと、このロッド13aに所定の間隔を隔てて外嵌され、外周面が前記断熱支持筒11aの内周面に接触すると共に、径方向の中心に前記ロッド13aが貫通する貫通穴を有する複数の低輻射率の金属板13bとから成り、前記金属板13bのそれぞれは、前記ロッド13aに螺刻されたネジに螺着されたナット13cにより挟圧固定されて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1または2に係る液化ガスタンクの断熱支持構造体では、上記のとおり、液化ガスタンクの内槽を、この内槽の長手方向の一端側から他端側に気密可能に貫通する貫通管内の長手方向の中央部を支持する断熱支持構造体の断熱支持筒により支持する。そして、この断熱支持筒に嵌合されている輻射熱遮断ユニットは、外周面が断熱支持筒の内周面に接触する複数の低輻射率の金属板を備えている。
【0016】
そのため、断熱支持構造体に理想的な積層断熱材に近い輻射熱に対する断熱性能を付与することができ、そしてこの断熱支持構造体の長さを長くしても、この断熱支持構造体の内槽からの突出長さを短くすることができる。従って、本発明の請求項1または2に係る液化ガスタンクの断熱支持構造体によれば、液化ガスタンクの外槽の大型化を防止することができ、液化ガスタンクをコンパクにすることができるから、従来例2または3のように、乗用車の乗車スペースが犠牲になり居住性が損なわれるという不具合が生じることがない。
【0017】
また、本発明の請求項2に係る液化ガスタンクの断熱支持構造体では、断熱支持筒に挿通される輻射熱遮断ユニットが、ロッドと、このロッドに外嵌され、外周面が断熱支持筒の内周面に接触する複数の低輻射率の金属板とから構成されているので、ロッドと金属板とが耐曲げ補強部材となり、断熱支持構造体の曲げ強度を向上させるから、断熱支持構造体をそれほど太くする必要がない。これによって、断熱支持構造体を介しての熱伝導による入熱量も少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の形態に係る液化ガスタンクの断熱支持構造体を、燃料電池自動車に装備され、燃料電池の燃料となる、60〜100リットルの液化水素を収納する容量の液化ガスタンクである場合を例として、添付図面を参照しながら説明する。図1は断熱支持構造体で支持した液化ガスタンクの模式的断面図、図2は図1中の要部詳細図である。
【0019】
図1に示す符号1は、液化水素を収納する液化ガスタンクであって、この液化ガスタンク1は外槽2を備え、この外槽2内の断熱空間内には内槽3が本発明に係る断熱支持構造体10で支持されている。上記内槽3は輻射率の小さい材料からなる薄シートと熱絶縁性の高い材料からなる薄シートを交互に積層してなる積層断熱材4で囲繞されている。
【0020】
上記断熱支持構造体10は、上記内槽3の長手方向の一端側から他端側に気密可能に貫通する金属製円管からなる貫通管3aと、この貫通管3aの長手方向の中央部の対峙する位置に溶接されている金属管製の一対の内部ボス3b・3bと、前記外槽2の鏡面に形成された内壁に固設され上記内部ボス3b・3bに対向する位置に設けられた一対の外部ボス2a・2aと、上記外部ボス2a・2aと上記内部ボス3b・3bとに亘って架設された一対の低熱伝導支持部材11・11とから構成されている。
【0021】
この実施形態においては、液化ガスタンク1が高圧であるため、貫通管3aとして断面形状が円形の金属製円管を使用している。なお、外槽2の内周面と、内槽3の外周面との間に形成される断熱空間内は、従来と同様に、気体の対流による熱伝達量をゼロにするために真空引きされる。
【0022】
図2に示すように、断熱支持構造体10を構成する各低熱伝導支持部材11は、上記内部ボス3bと上記外部ボス2aとに亘って架設された断熱支持筒11aと、上記断熱支持筒11a内に挿通されて当該断熱支持筒11aの撓みを補強するとともに、当該断熱支持筒11a内に侵入する輻射熱を遮断する輻射熱遮断ユニット13とから構成されている。上記各断熱支持筒11aは、その一端部が前記貫通管3a内の内部ボス3bに固着され、前記貫通管3aから突出する他端部が外槽2の鏡面に設けられた外部ボス2aに軸芯方向へ遊動可能に支持されている。これは液化ガスによる内槽3の収縮を吸収できるように意図したものであり、各断熱支持筒11aの端部のいずれか一方を固定し、他方を軸芯方向へ遊動可能に支持すれば良い。また、この断熱支持筒11aは低熱伝導部材である繊維強化プラスチックから構成されている。
【0023】
前記断熱支持筒11aの内部には、輻射熱遮断ユニット13が挿通されている。前記断熱支持筒11aを構成する繊維強化プラスチックは、ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、アラミド繊維等とエポキシ系樹脂の複合材料が使用される。繊維の含有率は60%程度である。なお、前記外部ボス2aの外部開口を閉塞してなるものはキャップ2bであって、この外部ボス2aの外部開口を気密可能に閉塞するものである。このような断熱支持筒11aを用いることにより、燃料電池自動車の急発進、急ブレーキ、および凹凸路走行時等における加振力により発生する曲げモーメントに耐えることができ、しかも内槽3への入熱量を少なくすることができる。
【0024】
前記輻射熱遮断ユニット13は、前記断熱支持筒11a内に挿入され低熱伝導部材からなるロッド13aと、このロッド13aに所定の間隔を隔てて外嵌される複数の金属板13bとから構成されている。上記ロッド13aは、その先端が前記固定金具12の雌ネジに螺着され、その外周部に雄ネジが螺刻されている。上記金属板13bは、外周面が断熱支持筒11aの内周面に接触すると共に、径方向の中心位置に前記ロッド13aが貫通する貫通穴を有し、輻射率が小さく、所定の間隔を隔ててこのロッド13aに対して直角に外嵌されている。また、このロッド13aには、前記複数の金属板13bのそれぞれを挟む両側にナット13cが螺着されており、これらナット13cによって金属板13bのそれぞれが挟圧されてロッド13aに固定されている。
【0025】
例えば、断熱支持筒11a内に輻射熱遮断ユニット13が内設されていない場合には、断熱支持筒11aの内側を通じて大気から直接内槽3に輻射熱が侵入する。概算によると、燃料電池の燃料となる液化水素を収納する液化ガスタンクの場合には、輻射熱の入熱量は全入熱量の30%程度であって、到底無視することのできない量である。
【0026】
断熱支持筒11aからの輻射熱の入熱量を少なくするために、例えば前記内槽3を囲繞する積層断熱材4のように、断熱支持筒11a内の全長にわたって、輻射率の小さい材料からなる薄シートと熱絶縁性の高い材料からなる薄シートを交互に積層して充填する構成にすることが可能である。しかしながら、薄シートを円形に切断して交互に整然と充填する作業は煩雑で、工業的な見地から好ましくない。そこで、上記のような構成の輻射熱遮断ユニット13を挿入することにより、輻射熱を遮断することとしたものである。
【0027】
輻射率が小さい前記金属板13bは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等から構成される。これらの金属板13bは輻射率を小さくするために、バフ研磨、化学研磨、電解研磨等によって表面の汚れ、酸化物が除去される。なお、金属板13bの材質としてステンレス鋼板を用いることができる。但し、ステンレス鋼板を用いる場合には、ステンレス鋼板の表面に輻射率の小さな金属めっき、例えば金、銀等でめっきするのが好ましい。
【0028】
前記ロッド13aの材質としては、例えばナイロン、四フッ化エチレン樹脂等の合成樹脂、繊維強化プラスチック等が使用される。繊維強化プラスチックとしては、例えばガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、アラミド繊維等のエポキシ系樹脂の複合材料が使用される。このようなエポキシ系樹脂の複合材料の繊維の含有率は60%程度である。また、ナット13cの材質としては、ステンレス鋼、黄銅、繊維強化プラスチック等が一般的である。
【0029】
ところで、この実施形態の場合にあっては、上記のとおり、金属板13bのそれぞれは一対ずつのナット13cによりロッド13aに固定されている。しかしながら、このような構成に限らず、内部ボス3b側の金属板13bの外側と、外部ボス2a側の金属板13bの外側にナットを配し、各金属板13bの間に筒状の低熱伝導率材料からなる間隔管(カラー)を介装し、前記外側に配したナットを締付けて各金属板13bを固定することができる。また、前記ロッド13aが、接着不可能な四フッ化エチレン樹脂、ナイロンでなく、例えば繊維強化プラスチックから製造されている場合には、金属板13bをエポキシ系接着剤によりロッド13aに固定することもできる。
【0030】
因みに、このような構成になる断熱支持構造体10を備えた液化水素用の液化ガスタンク1は、下記のような手順で組み立てられる。
(1)貫通管3aの長手方向の中央部の対峙する位置に、金属製の一対の内部ボス3bを溶接する。
(2)断熱支持筒11aの一端側に螺刻されてなる雄ネジにエポキシ系接着剤を塗布し、貫通管3aの端部開口のそれぞれから挿入すると共に、それぞれの断熱支持筒11aの先端の雄ネジを前記左右の内部ボス3bの雌ねじに羅着する。
(3)断熱支持筒11aが取付けられた貫通管3aを、内槽3の鏡板の径方向の中心に設けられた抜き穴に挿通して、抜き穴と貫通管3aの端部を気密可能に溶接して、この貫通管3aを内槽3と一体構成にする。
(4)内槽3を積層断熱材で囲繞する。
(5)内槽3の外部に外槽2を取付け、断熱支持筒11aの貫通管3aからの突出端を外部ボス2aに架着する。
(6)断熱支持筒11aに輻射熱遮断ユニット13を挿通し、ロッド13aの先端の雄ネジを断熱支持筒11a内に設けられている固定金具12の雌ネジに螺着して組付ける。
(7)外部ボス2aにキャップ2bを溶接して、開口を気密可能に閉塞する。
【0031】
以下、本発明の上記実施形態に係る液化ガスタンクの断熱支持構造体10の作用態様を説明する。本発明では、液化ガスタンクの内槽3を本発明に係る断熱支持構造体10で支持する。この断熱支持構造体10は、内槽3の長手方向の一端側から他端側に気密可能に貫通する貫通管3aと、貫通管3a内に挿通されてその長手方向の中央部を支持する断熱支持部材11とから構成し、断熱支持部材11を構成する断熱支持筒11aによって支持する。そして、この断熱支持筒11aに挿通されている輻射熱遮断ユニット13は、外周面が断熱支持筒11aの内周面に接触する複数の輻射率が小さい金属板13bを備えている。
【0032】
上記構成により断熱支持構造体10として理想的な積層断熱材に近い断熱性能を付与することができ、そしてこの断熱支持構造体10の全長を長くしつつも、この断熱支持構造体10の内槽3からの突出長さを短くすることができる。従って、本発明の実施形態によれば、液化ガスタンク1の外槽2の大型化を防止することができ、液化ガスタンク1をコンパクトにすることができる。これにより従来例2又は従来例3のように乗用車の乗車スペースが犠牲になり居住性が損なわれることがない。
【0033】
また、上記実施形態によれば、断熱支持筒11aに嵌合される輻射熱遮断ユニット13は、ロッド13aと、このロッド13aに外嵌され、外周面が断熱支持筒11aの内周面に接触する複数の低輻射率の金属板13bとから構成されているので、ロッド13aと金属板13bとが耐曲げ補強部材となり、断熱支持部材11、ひいては断熱支持構造体10の曲げ強度を向上させるから、断熱支持構造体をそれほど太くする必要がない。
【0034】
以上では、本発明の液化ガスタンクの断熱支持構造体に係る技術的思想を、液化水素を収納する燃料電池自動車に装備される液化ガスタンクに適用した場合を例として説明したが、本発明はこれに限らず、例えば液化酸素、液化窒素、液化炭酸ガス等を収納する液化ガスタンクに対しても適用することができる。従って、本発明は上記実施形態に係る液化ガスタンクの用途に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る断熱支持構造体を備えた液化ガスタンクの模式的断面図である。
【図2】図1中の要部詳細図である。
【符号の説明】
【0036】
1…液化ガスタンク、
2…外槽、2a…外部ボス、2b…キャップ、
3…内槽、3a…貫通管、3b…内部ボス、
4…積層断熱材、
10…断熱支持構造体、
11…低熱伝導支持部材、
11a…断熱支持筒、
12…固定金具、
13…輻射熱遮断ユニット、13a…ネジロッド、13b…金属板、13c…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽(2)内の断熱空間に極低温の液化ガスが充填される内槽(3)を支持する液化ガスタンクの断熱支持構造体(10)であって、
上記断熱支持構造体(10)は、前記内槽(3)の長手方向の一端側から他端側に気密に貫通する貫通管(3a)と、上記貫通管(3a)内の長手方向中央部に対峙して固定される一対の内部ボス(3b・3b)と、前記外槽(2)の内壁に固設され上記内部ボス(3b・3b)に対向する一対の外部ボス(2a・2a)と、上記外部ボス(2a・2a)と上記内部ボス(3b・3b)とに亘って架設された一対の低熱伝導支持部材(11・11)とから成り、
上記各低熱伝導支持部材(11)は、上記内部ボス(3b)と上記外部ボス(2a)とに亘って架設された断熱支持筒(11a)と、上記断熱支持筒(11a)内に挿通されて当該断熱支持筒(11a)の撓みを補強するとともに、当該断熱支持筒(11a)内に侵入する輻射熱を遮断する輻射熱遮断ユニット(13)とから成る、
ことを特徴とする液化ガスタンクの断熱支持構造体。
【請求項2】
前記各輻射熱遮断ユニット(13)は、前記断熱支持筒(11a)内に挿入され低熱伝導部材からなるロッド(13a)と、このロッド(13a)に所定の間隔を隔てて外嵌され、外周面が前記断熱支持筒(11a)の内周面に接触すると共に、径方向の中心に前記ロッド(13a)が貫通する貫通穴を有する複数の低輻射率の金属板(13b)とから成り、前記金属板(13b)のそれぞれは、前記ロッド(13a)に螺刻されたネジに螺着されたナット(13c)により挟圧固定されて成ることを特徴とする請求項1に記載の液化ガスタンクの断熱支持構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−349134(P2006−349134A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179236(P2005−179236)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】