説明

液圧制御装置

【課題】通気孔が外部に露出することがなく、通気孔の位置に対して直接水が当たることを回避すること。
【解決手段】ハウジング本体部68には、雄コネクタ部70aと雌コネクタ部70bとが電気的に接続されるコネクタ機構70が設けられ、雄コネクタ部70aの一側壁71aには、雌コネクタ部70bと嵌合した際、雌コネクタ部70bの側壁73aで被覆される位置に、外部空間と通気する通気孔96が形成されると共に、通気孔96を塞ぐ防水通気部材98が設けられ、防水通気部材98は、雄コネクタ部70aと雌コネクタ部70bとが嵌合したときに雌コネクタハウジング73の側壁73で被覆される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車輪ブレーキに付与されるブレーキ液圧を制御することが可能な液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車輪ブレーキのホィールシリンダに作用するブレーキ液圧を制御する液圧制御装置が知られている。この種の液圧制御装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、ハウジングに取り付けられたケースに、ケース室内の空気を外気に排出し、または外気をケース室内に導入する連通口が設けられている。この連通口には、非透水性で、且つ気体透過性を有する膜が装着されている。
【0003】
また、特許文献2の液圧制御装置においては、ハウジング内の収納室と外部(大気)とを連通させる通気路が基体の下面の凹部に開口するように設けられ、前記凹部には、空気の出入りを許容しつつ水の出入りを阻止する透湿防水素材が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−99924号公報
【特許文献2】特開2008−105628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示された構造では、膜や透湿防水部材を備えた通気孔の位置が、外部に露出する部位(外部から視認可能な部位)に配置されているため、例えば、ノズルから高圧で吐出される洗浄水によってエンジンルーム内を洗浄する高圧洗浄作業を行うとき、洗浄水が通気孔の位置に直接当たるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、通気孔が外部に露出することがなく、通気孔の位置に対して直接水が当たることを好適に回避することが可能な液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために創案された本発明は、基体と、前記基体の一面に取り付けられ、電気部品を内部に収容するハウジングとを備え、前記ハウジングには、ハーネスが接続されたコネクタと嵌合するコネクタ部が形成された液圧制御装置において、前記コネクタと前記コネクタ部とが嵌合することによって、コネクタ室が区画されて形成され、前記コネクタ部の側壁には、前記コネクタと嵌合した際、前記コネクタの側壁で被覆される位置に、少なくとも前記コネクタ室と外部空間とを通気する通気孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ハーネスが接続されたコネクタとコネクタ部とが嵌合した際、コネクタ部の側壁には、コネクタの側壁で被覆される位置に通気孔が形成されている。このため、前記通気孔が外部に露出することがなく、コネクタ及びコネクタ部の嵌合構造によって通気孔を覆うようにしてコネクタ室と外部空間と通気させることができる。
【0009】
また、コネクタ部の側壁には、通気孔を塞ぐ防水通気部材が設けられ、前記防水通気部材は、コネクタ部とコネクタとが嵌合した際、前記コネクタの側壁で被覆されるとよい。このようにすると、高圧洗浄水を吹き付けた場合であってもコネクタの側壁で遮蔽されるようになり、通気孔の位置及び防水通気部材に直接水が当たることがないため、防水通気部材の機能を良好に維持することができる。
【0010】
さらに、防水通気部材は、コネクタ部の側壁に凹設された凹部内に直接固定されているとよい。このようにすると、防水通気部材を凹部内に位置決めすることによって、製造時における組み付け性を向上させることができると共に、防水通気部材とコネクタ及びコネクタ部の側壁とが干渉することがなく、コネクタ部とコネクタとを円滑に嵌合させることができる。
【0011】
さらにまた、コネクタの側壁及びコネクタ部の側壁の少なくとも一方に、通気孔と外部空間とを通気可能な窪み部が形成されるとよい。このようにすると、コネクタ部とコネクタとを嵌合した際、窪み部によって通気孔と外部空間とを効果的に通気させることができる。なお、窪み部は、例えば、溝部や凹部等を含み、通気孔と外部空間とが連通可能な形状であればよい。
【0012】
またさらに、通気孔を被覆するコネクタの側壁におけるコネクタ部との着脱方向の寸法は、前記コネクタの他の側壁における着脱方向の寸法と比較して大きく設定されているとよい。このようにすると、通気孔に対向して前記通気孔を被覆するコネクタの側壁は、コネクタの他の側壁と比較して着脱方向の寸法が大きく設定されているため、通気孔に水が進入することを確実に防止することができる。
【0013】
またさらに、コネクタ室と、電気部品が収容されたハウジング内のハウジング室とを通気させる呼吸通路が設けられるとよい。このようにすると、電気部品が収容されたハウジング内のハウジング室を、呼吸通路を通じて大気圧に保持することができ、温度変化に起因するハウジング室の圧力変化を抑制して、ハウジング内にコネクタ室及びコネクタに接続されるハーネスからの水等が吸入されることを防止することができる。
【0014】
またさらに、基体には、回転駆動源の給電部を挿通させる挿通孔が設けられ、ハウジング室は、前記給電部と前記挿通孔との間の間隙を通じて前記回転駆動源の内部の回転駆動室と通気可能に設けられるとよい。このようにすると、回転駆動源の内部の回転駆動室を大気圧に保持することができ、温度変化に起因する回転駆動室の圧力変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通気孔が外部に露出することがなく、通気孔の位置に対して直接水が当たることを回避することが可能な液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の分解斜視図である。
【図2】図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置の縦断面図である。
【図3】(a)は、図1に示す車両ブレーキ液圧制御装置を構成するコントロールハウジングの斜視図であり、(b)は、(a)の反対側から見たコントロールハウジングの斜視図である。
【図4】(a)は、雄コネクタ部と雌コネクタ部とが嵌合した状態における横断面図であり、(b)は、通気機構を示した部分拡大横断面図である。
【図5】(a)は、他の実施形態に係る通気機構が設けられた横断面図であり、(b)は、他の実施形態に係る通気機構を示した部分拡大横断面図である。
【図6】(a)は、雄コネクタハウジングの上面部に通気機構を設けた状態を示す一部省略斜視図であり、(b)は、雄コネクタハウジングの下面部に通気機構を設けた状態を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)10は、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)、自動四輪車などの車両に好適に用いられるものであり、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ制御装置10を図示しない自動二輪車に適用した例について説明するが、ブレーキ制御装置10が搭載される車両を限定する趣旨ではない。
【0019】
図1に示されるように、ブレーキ制御装置10は、基本的に、後記する電磁弁等の各種部材が装着される基体12と、モータ(回転駆動源)14と、コントロールハウジング(ハウジング)16とを備え、これらが一体的に組み付けられたユニットとして構成されている。基体12とコントロールハウジング16との間には、シール部材18が介装されている。
【0020】
なお、シール部材18は、例えば、メタルガスケット、表面にゴムコーティングが被覆されたメタルガスケット、紙ガスケット、ゴム等の弾性部材や、シリコーン系等の液状ガスケットからなる液状シール剤によって形成されるとよい。また、このシール部材18は、基体12の他側面12bとコントロールハウジング16の周壁部20との間で挟持されてシール機能を発揮する。
【0021】
モータ14は、略直方体状に形成された基体12の横方向に沿った一側面12aに組み付けられ、一方、コントロールハウジング16は、前記一側面12aと反対側の基体12の他側面12bに組み付けられ、その内部に後記する電気部品等を収容している。
【0022】
モータ14は、図2に示されるように、モータハウジング22と、固定子(ステータ)24と、回転軸26と一体的に所定方向に回転する回転子(ロータ)28と、コンミュテータ(整流子)30と、前記回転軸26を回転自在に軸支する複数のベアリング32a〜32c等を含む。なお、前記モータ14は、ブラシモータ又はブラシレスモータのいずれであってもよい。
【0023】
また、モータ14には、回転軸26と略並行に突出した棒状体からなる給電部(モータ用バスバー)34が設けられる。この給電部34には、導電体からなり、基端部がモータ側接続端子(図示せず)と電気的に接続される帯状の二つの給電片36a、36b(図1中では、一方のみを図示)が絶縁体38の両側に配設される。モータ14を基体12に組み付けたとき、基体12の挿通孔40を貫通した給電部34の先端部はコントロールハウジング16の接続端子42と電気的に接続される。
【0024】
図2に示されるように、基体12の挿通孔40(内壁)とモータ14の給電部34との間には、間隙44が設けられる。この間隙44を通じて、モータハウジング22内のモータ室(回転駆動室)46と、コントロールハウジング16内の後記するハウジング室48とが連通するように設けられる。
【0025】
図1に戻って、モータ14が設けられた基体12の一側面12aの左右側上端部には、一対の入口ポート(接続ポート)50、50が開口して形成されている。また、基体12の上面12cには、一対の出口ポート(接続ポート)52、52が開口して形成されている。
【0026】
基体12は、略直方体を呈する金属製の部材からなり、内部には、流体であるブレーキ液が流通する図示しない流体通路や、モータ14の回転軸収容穴54及びモータ14の給電部34が貫通する挿通孔40や、ポンプ収容孔56等が形成されている。回転軸収容穴54は、基体12の一側面12aに開口する断面円形状の有底の穴で、モータ14の回転軸26やベアリング32b、32c等が収容される(図2参照)。
【0027】
一対のポンプ収容孔56は、回転軸収容穴54から基体12の左右側面までそれぞれ貫通し、回転軸収容穴54の両側にそれぞれ形成される。また、一対のポンプ収容孔56は、それぞれ同軸状に配置され、左右側面に対して面法線の方向(直角方向)に延在するように設けられる。この場合、基体12の左右側面にそれぞれ形成された一対のポンプ収容孔56、56を通じて図示しないポンプが組み付けられる。さらに、基体12の他側面12bには、電磁弁57を取り付けるための図示しない電磁弁取付穴がブレーキ液の流路に連通して形成される。
【0028】
図1に示されるように、基体12には、一対のハウジング取付用貫通孔58とモータ取付穴60が形成されている。ハウジング取付用貫通孔58は、基体12の一側面12aから他側面12bまで貫通する孔部によって構成される。この場合、ハウジング取付用貫通孔58に挿通されたハウジング取付ねじ62の雄ねじ部がコントロールハウジング16の後記するハウジング固定穴20bに締結されることによって、コントロールハウジング16が基体12に固定される。
【0029】
モータ取付穴60は、モータ取付ねじ66が螺入される有底孔部からなる。この場合、モータ取付穴60に形成された雌ねじ部にモータ取付ねじ66の雄ねじ部が螺合することにより、モータ14が基体12に固定される。ハウジング取付用貫通孔58とモータ取付穴60は、ポンプ収容孔56と干渉しない近接位置で、ポンプ収容孔56を間にして上下方向で跨ぐように配置される。
【0030】
なお、入口ポート50、50には、図示しないマスタシリンダ等の液圧源からの配管(図示せず)が接続され、前記液圧源からブレーキ液が導入される。また、入口ポート50、50は、図示しない流体通路を介して電磁弁取付穴に連通するように設けられる。出口ポート52、52には、車輪ブレーキに至る配管(図示せず)が接続され、この出口ポート52、52は、図示しない流体通路を介して電磁弁取付孔に連通するように設けられる。
【0031】
基体12の流体通路には、配管を通じて図示しない一対のリザーバが接続される。このリザーバは、車輪ブレーキの減圧制御時に、電磁弁57が開放されることによって、基体12の流体通路に連通する連通路を流通して逃がされるブレーキ液(すなわち、車輪ブレーキのホィールシリンダ側から流出したブレーキ液)を一時的に貯溜するものである。
【0032】
図1に示されるように、コントロールハウジング16は、後記する各種電気部品と、ハウジング本体部68と、コネクタ機構70とを備える。コネクタ機構70は、ハウジング本体部68と一体的に設けられた雄コネクタ部(コネクタ部)70aと、前記雄コネクタ70aと嵌合可能に設けられ、後記するワイヤハーネス部106が接続された雌コネクタ部(ハーネスが接続されたコネクタ)70bとを有する。コントロールハウジング16には、電気部品として、電磁弁57に装着されるコイル組立体72や、電磁弁57の作動を制御する制御基板74(図2参照)等が含まれている。なお、本実施形態では、ハウジング本体部68側に雄コネクタ部70aを設け、ワイヤハーネス部106側に雌コネクタ部70bを設けているが、雄雌コネクタ部70a、70bをそれぞれ逆転させて配置してもよい。
【0033】
ハウジング本体部68は、樹脂製材料によって形成される。図3(b)に示されるように、このハウジング本体部68には、周壁部20が設けられる。前記周壁部20には、シール部材18(図1、図2参照)を介して基体12側と接続される開口部68aが形成される。また、前記周壁部20には、外方に向かって突出する厚肉のフランジ部20aが形成される。前記フランジ部20aには、ハウジング取付ねじ62が螺入される一対のハウジング固定穴20bと、補強リブ20cが設けられる。
【0034】
また、図2に示されるように、ハウジング本体部68には、基体12側の面と反対側に形成された開口部を閉塞する蓋体76が設けられる。ハウジング本体部68の内部には、ハウジング室48が形成される。さらに、ハウジング本体部68には、基体12を貫通したモータ14の給電部34の先端部が挿入されて電気的に接続される接続端子42が設けられる。
【0035】
図3(b)に示されるように、ハウジング固定穴20bは、ハウジング本体部68に対してインサート成形されたブッシュ78によって構成される。このブッシュ78は、金属製の円筒体からなり、円筒体の内周面に雌ねじが刻設されている。ハウジング固定穴20bは、コントロールハウジング16を基体12に組み付けた際、ハウジング取付用貫通孔58と同軸状に位置するように配置されている。
【0036】
なお、一対のハウジング固定穴20b、20bのうち、後記する雄コネクタハウジング71から離間する一方のハウジング固定穴20bを構成するブッシュ78(図3(b)の向かって右側のブッシュ78)の端部は、ハウジング本体部68内で閉止されている。また、後記する雄コネクタハウジング71に近接する他方のハウジング固定穴20bを構成するブッシュ78(図3(b)の向かって左側のブッシュ78)の端部は、ハウジング本体部68内のハウジング室48と連通可能に設けられる。
【0037】
補強リブ20cは、ハウジング固定穴20bの周辺部位から周壁部20の角部に向かって平面視して略L字状に延在するように設けられる。補強リブ20cと周壁部20との間には、軽量化を達成するための肉抜き孔部20dが設けられる。
【0038】
前記ハウジング室48内には、コイル組立体72や制御基板74等の電気部品が収容される。コイル組立体72は、ボビンに電線が巻回されて構成されたソレノイドコイルや可動鉄心及び固定鉄心等を含む。制御基板74は、図示しない電子回路がプリントされた矩形状の基板本体に、例えば、半導体チップ等の電子部品が実装される。
【0039】
図2に示されるように、制御基板74は、ワイヤボンディング78によって、ハウジング本体部68に設けられた端子部80と電気的に接続されている。この制御基板74は、車両に設けられた図示しない各種センサから得られた検出情報や、予め記憶されたプログラム等に基づいて、電磁弁57やモータ14等を制御するように設けられている。
【0040】
図1及び図3(b)に示されるように、雄コネクタ部70aは、ハウジング本体部68と一体的に形成された有底筒状の雄コネクタハウジング71と、雌コネクタ部70b側に向かって突出した複数のコネクタピン82とを有する。
【0041】
一方、雌コネクタ部70bは、前記雄コネクタハウジング71と着脱自在に設けられた有底筒状の雌コネクタハウジング73と、前記雄コネクタ部70aのコネクタピン82が挿入されて電気的に接続されるピン受け部84(図4参照)とを有する。
【0042】
図4に示されるように、前記雄コネクタ部70aと前記雌コネクタ部70bとが一体的に嵌合されて、雄コネクタハウジング71と雌コネクタハウジング73との間で閉塞されたコネクタ室86が区画されて形成される。なお、インナ部材88を介して雌コネクタハウジング73側にシール部材90が保持され、前記シール部材90が雄コネクタハウジング71の内壁面と雌コネクタハウジング73の内部突起の外壁面との間で挟持されてシール機能が発揮される。
【0043】
雄コネクタハウジング71の外部に露出する一側面71a(以下、一側壁71aともいう)には、コネクタ室86と外部空間(大気)とを通気(連通)させる通気機構92が設けられる。この通気機構92は、一側壁71aに形成された円形状の凹部94と、前記凹部94の略中心部に形成され、コネクタ室86まで貫通して前記コネクタ室86と通気する円形状の通気孔96とを有する。
【0044】
また、通気機構92は、前記通気孔96を被覆する防水通気部材98を備える。前記防水通気部材98は、固着手段を介して外部空間側から凹部94の底壁94aに固着されている。さらに、通気機構92は、前記凹部94に連続して形成され、前記通気孔96と外部空間とを通気させる溝部(窪み部)100が設けられる。
【0045】
なお、本実施形態では、通気機構92を構成する凹部94、通気孔96及び溝部100を雄コネクタハウジング71の幅広な一側面71aに設けているが(図1参照)、これに限定されるものではない。通気機構92を雄コネクタハウジング71の他の側面、例えば、雄コネクタハウジング71の幅狭な上面部(上部側の側壁)71b(図6(a)参照)や下面部(下部側の側壁)71c(図6(b)参照)等に設けるようにしてもよい。また、通気機構92を雄コネクタハウジング71の一つの側面に複数設けてもよいし、あるいは、複数の側面にそれぞれ配置して複数設けるようにしてもよい。
【0046】
前記防水通気部材98は、空気の出入りを許容しつつ水の出入りを阻止する機能を有する。この防水通気部材98は、例えば、ゴアテックス(登録商標)等のガス透過性多孔質膜からなり、通気孔96からコネクタ室86内への水や塵埃等の進入を防止することができる。
【0047】
この場合、図4(b)に示されるように、雄コネクタハウジング71の一側壁71aに設けられた通気孔96及び防水通気部材98は、雄コネクタ部70aと雌コネクタ部70bとが嵌合した際、雌コネクタ部70bの雌コネクタハウジング73の側壁73aによって被覆される部位(位置)に設けられる。
【0048】
また、凹部94に連続する溝部100の一部は、雌コネクタハウジング73の側壁73aの端面(図4(b)においては下端面)よりも離間間隔Dだけオフセットして外部に露出し、雄コネクタハウジング71の一側壁71a(外壁面)と雌コネクタハウジング73の側壁73a(内壁面)との間で外部空間と通気するクリアランス102が設けられる。この場合、図4(b)に示されるように、外部空間側からみて、凹部94の深さ寸法は、溝部100の深さ寸法よりも大きく設定されている(凹部94の深さ寸法>溝部100の深さ寸法)。なお、雄コネクタハウジング71を囲繞し、防水通気部材98と対向する雌コネクタハウジング73の内壁面は、平坦面に形成されている。
【0049】
換言すると、雄コネクタハウジング71の凹部94に連続する溝部100は、雌コネクタハウジング73の側壁73aによってその全部が被覆されることがなく、外部に露出する溝部100の一部が凹部94(通気孔96)と外部空間とを通気(連通)させる案内部として形成される。
【0050】
これに対して、雄コネクタハウジング71に形成された凹部94及び前記凹部94の底壁94aに固着された防水通気部材98は、雌コネクタハウジング73の側壁73aによってその全部が完全に遮蔽(被覆)されているため、外部空間に露出することがなく外部から視認不可能な部位に配置されている。
【0051】
この結果、本実施形態では、後記するように、エンジンルーム内の高圧洗浄作業を行った場合であっても、洗浄水が通気孔96の位置及び防水通気部材98に直接当たることが好適に回避される。
【0052】
通気孔96を設けてコネクタ室86が大気圧に保持されることにより、温度変化に起因するコネクタ室86の圧力変化(気圧変化)を抑制して、コネクタ室86内に雌コネクタハウジング73に接続されるワイヤハーネス部106からの水等が吸入されることを防止することができる。さらに、雄コネクタハウジング71及び雌コネクタハウジング73の変形を回避して、雄コネクタハウジング71と雌コネクタハウジング73との良好な密着性を保持することができる。
【0053】
ハウジング本体部68及び雄コネクタハウジング71は、図示しない金型装置によって樹脂製材料で一体成形され、通気機構92を構成する凹部94、通気孔96及び溝部100を図示しない金型装置で容易に形成することができる。
【0054】
また、図4に示されるように、ハウジング本体部68には、コネクタ機構70側のコネクタ室86と制御基板74等が収容されたハウジング室48とを連通させる呼吸通路104が設けられる。
【0055】
この呼吸通路104は、コネクタ室86側からハウジング室48側に向かって徐々に内径が拡径する断面テーパ状の貫通孔によって形成される。コネクタ室86とハウジング室48とを通気する呼吸通路104を設けることにより、ハウジング室48内の気圧を大気圧に保持することができる。
【0056】
ハウジング室48内が負圧になることを防止することができるため、例えば、雌コネクタ部70bから外部に延出されたワイヤハーネス部106の先端部に接続された図示しない車輪速度センサ等の部品とワイヤハーネス部106の被膜との間から、毛細管現象によって水が進入することを好適に回避することができる。換言すると、電気部品が収容されたハウジング室48内を、呼吸通路104を通じて大気圧に保持することができるため、温度変化に起因するハウジング室48の圧力変化を抑制して、ハウジング本体部68内にコネクタ室86及び雌コネクタハウジング73に接続されるワイヤハーネス部106からの水等が吸入されることを防止することができる。
【0057】
さらに、図2に示されるように、ハウジング本体部68のハウジング室48は、基体12の挿通孔40(内壁)とモータ14の給電部34との間に形成された間隙44を介して、モータハウジング22内のモータ室46と通気(連通)するように設けられる。この結果、呼吸通路104を介してハウジング室48とコネクタ室86とが通気するように設けられ、さらに、通気孔96及び溝部100(クリアランス102)を介してコネクタ室86と外部空間とが通気するように設けられている。このため、モータハウジング22内のモータ室46は、外部空間と通気して大気圧に保持される。
【0058】
防水通気部材98を凹部94の底壁94aに直接固着する固着手段としては、例えば、超音波溶着や、電気抵抗体に電流を流したジュール熱で凹部94の底壁94aの樹脂を溶融する熱溶着(例えば、IMPULSE WELDING)等がある。
【0059】
このような固着手段によって防水通気部材98を雄コネクタハウジング71の凹部94に対して直接固着することができる。また、他の固着手段としては、例えば、接着剤等の粘着性物質を使用することにより、雄コネクタハウジング71の凹部94の底壁94aに対して防水通気部材98を直接貼着してもよい。
【0060】
このように、防水通気部材98を雄コネクタハウジング71の凹部94に対して直接固着することにより、例えば、防水通気部材98を凹部94内に固定するための金具等が不要となり、部品点数を削減して製造コストを低減することができる。
【0061】
ここで、他の実施形態に係る通気機構92aを図5に示す。なお、図4に示す通気機構92と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
この他の実施形態に係る通気機構92aでは、雄コネクタハウジング71側の凹部94の底壁94aに防水通気部材98が固着されている点は、前記通気機構92と共通しているが、案内部として機能し外部空間と通気させる溝部(窪み部)100aが、雄コネクタハウジング71の一側壁71aと対向する雌コネクタハウジング73の側壁73bの内壁面に形成されている点で相違している。
【0063】
このように、雌コネクタハウジング73(雌コネクタ部70b)の側壁73b(内壁)及び雄コネクタハウジング71(雄コネクタ部70a)の一側壁71a(外壁)の少なくとも一方に、通気孔96と外部空間とを通気可能な溝部100、100aが形成されるとよい。このようにすると、雄コネクタ部70aと雌コネクタ部70bとを嵌合した際、溝部100、100aによって通気孔96と外部空間とを効果的に通気させることができる。なお、本実施形態では、窪み部として溝部100、100aを例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、凹部等を含み、通気孔96と外部空間とが連通可能な形状であればよい。
【0064】
また、図5(a)に示されるように、他の実施形態に係る通気機構92aでは、通気孔96を被覆する雌コネクタハウジング73(雌コネクタ部70b)の側壁73bにおける雄コネクタ部70aとの着脱方向の寸法T1が、前記雌コネクタハウジング73(雌コネクタ部70b)の他の側壁73cにおける着脱方向の寸法T2と比較して大きく設定されている(T1>T2)。
【0065】
このように設定すると、通気孔96に対向して前記通気孔96を被覆する雌コネクタ部70bの側壁73bは、雌コネクタ部70bの他の側壁73cと比較して着脱方向の寸法T1が大きく設定されているため(T1>T2)、通気孔96に水が進入することを確実に防止することができる。
【0066】
換言すると、雄コネクタ部70aの側部を囲繞する雌コネクタ部70bの4つの側壁のうち、通気機構92aが設けられた1つの側壁における着脱方向の寸法(図5(a)中における縦方向の寸法)T1を、他の3つの側壁における着脱方向の寸法T2よりも大きく設定している(T1>T2)。このため、他の側壁よりも長く形成された側壁が、雌コネクタ部70bを雄コネクタ部70aに嵌め込むときの位置決めとなり、誤組付を防止して組付性を向上させることができる。
【0067】
本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0068】
本実施形態では、雄コネクタ部70a(雄コネクタハウジング71)と雌コネクタ部70b(雌コネクタハウジング73)とが嵌合した際、雄コネクタハウジング71の一側壁71aには、雌コネクタハウジング73の側壁73aで被覆される位置に通気孔96が形成されている。このため、前記通気孔96が外部に露出することがなく(外部から視認されることがなく)、雄雌コネクタ部70a、70bの嵌合構造によって通気孔96を覆うようにしてコネクタ室86と外部空間と通気させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、雄コネクタ部70a(雄コネクタハウジング71)の一側壁71aに、通気孔96を塞ぐ防水通気部材98が設けられ、前記防水通気部材98は、雄コネクタ部70a(雄コネクタハウジング71)と雌コネクタ部70b(雌コネクタハウジング73)とが嵌合した際、雌コネクタハウジング73の側壁73aで被覆される。このように構成すると、防水通気部材98により確実に防水することができると共に、雌コネクタハウジング73の側壁73aで遮蔽されて防水通気部材98に直接水が当たることがない。
【0070】
この結果、本実施形態では、例えば、ノズルから高圧で吐出される洗浄水によってエンジンルーム内を洗浄する高圧洗浄作業を行うとき、洗浄水が通気孔96の位置及び防水通気部材98に直接当たることが好適に回避されて、前記防水通気部材98を保護することができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、防水通気部材98が、雄コネクタハウジング71の一側壁71aに凹設された凹部94内に収容して直接固定されている。このように構成すると、防水通気部材98を凹部94内に位置決めすることによって、製造時における組み付け性を向上させることができると共に、防水通気部材98と雄雌コネクタハウジング71、73の側壁71a、73aとが干渉することがなく、雄コネクタ部70a(雄コネクタハウジング71)と雌コネクタ部70b(雌コネクタハウジング73)とを円滑に嵌合させることができる。
【0072】
またさらに、本実施形態では、雄コネクタ部70aと雌コネクタ部70bとが嵌合することによって、コネクタ機構70とハウジング本体部68との間で通気孔96と通気するコネクタ室86が設けられる。前記ハウジング本体部68には、制御基板74等の電気部品が収容されたハウジング本体部68内のハウジング室48と前記コネクタ室86とを通気させる呼吸通路104が設けられている。
【0073】
このように構成すると、電気部品が収容されたハウジング本体部68内のハウジング室48を、呼吸通路104を通じて大気圧に保持することができ、温度変化に起因するハウジング室48の圧力変化を抑制して、ハウジング室48内に水等が吸入されることを防止することができる。
【0074】
またさらに、本実施形態では、基体12に、モータ(回転駆動源)14の給電部34を挿通させる挿通孔40が設けられ、ハウジング室48は、前記給電部34と前記挿通孔40との間の間隙44を通じて前記モータ14内のモータ室(回転駆動室)46と通気可能に設けられている。このように構成すると、モータ14内のモータ室46を大気圧に保持することができ、温度変化に起因する回転駆動室の圧力変化を抑制することができる。
【0075】
なお、上記の説明では、自動二輪車に好適に用いられるブレーキ制御装置10を例示しているが、前記した技術的事項を自動四輪車に用いられるブレーキ制御装置に適用しても差し支えない。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用ブレーキ液圧制御装置(液圧制御装置)
12 基体
14 モータ(回転駆動源)
16 コントロールハウジング(ハウジング)
34 給電部
40 挿通孔
44 間隙
48 ハウジング室
54 モータ室(回転駆動室)
72 コイル組立体(電気部品)
74 制御基板(電気部品)
86 コネクタ室
92、92a 通気機構
94 凹部
96 通気孔
98 防水通気部材
70 コネクタ機構
70a 雄コネクタ部(コネクタ部)
70b 雌コネクタ部(コネクタ)
71a、73a、73b 側壁
100、100a 溝部(窪み部)
104 呼吸通路
106 ワイヤハーネス部(ハーネス)
T1、T2 着脱方向の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体の一面に取り付けられ、電気部品を内部に収容するハウジングとを備え、前記ハウジングには、ハーネスが接続されたコネクタと嵌合するコネクタ部が形成された液圧制御装置において、
前記コネクタと前記コネクタ部とが嵌合することによって、コネクタ室が区画されて形成され、
前記コネクタ部の側壁には、前記コネクタと嵌合した際、前記コネクタの側壁で被覆される位置に、少なくとも前記コネクタ室と外部空間とを通気する通気孔が形成されていることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の液圧制御装置において、
前記コネクタ部の側壁には、前記通気孔を塞ぐ防水通気部材が設けられ、
前記防水通気部材は、前記コネクタと前記コネクタ部とが嵌合した際、前記コネクタの側壁で被覆されることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の液圧制御装置において、
前記防水通気部材は、前記コネクタ部の側壁に凹設された凹部内に固定されていることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の液圧制御装置において、
前記コネクタの側壁及び前記コネクタ部の側壁の少なくとも一方には、前記通気孔と外部空間とを通気可能な窪み部が形成されていることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の液圧制御装置において、
前記通気孔を被覆する前記コネクタの側壁における前記コネクタ部との着脱方向の寸法は、前記コネクタの他の側壁における着脱方向の寸法と比較して大きく設定されていることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の液圧制御装置において、
前記コネクタ室と、前記電気部品が収容された前記ハウジング内のハウジング室とを通気させる呼吸通路が設けられることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の液圧制御装置において、
前記基体には、回転駆動源の給電部を挿通させる挿通孔が設けられ、前記ハウジング室は、前記給電部と前記挿通孔との間の間隙を通じて前記回転駆動源の内部の回転駆動室と通気可能に設けられることを特徴とする液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−76556(P2012−76556A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222385(P2010−222385)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】